【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年7月20日に一般社団法人日本建築学会が発行した2016年度大会(九州)学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集で公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
駅舎等の建物の中には、外壁をフレキシブルボード等の板状の外壁材で構成したものが多く見られる。こうした外壁材を建物の骨組みへ固定する際には、ビスを用いるのが一般的である。すなわち、外壁材の外面側からビスを貫入させ、背後の骨組みに螺合させることで外壁材を固定する、というものである。
しかし、ビスは、時間が経つにつれて締め付けが緩み、頭部が浮いてきたり、ひどい場合には抜け落ちてしまったりすることがある。ビスの浮きや抜け落ちが増えてくると、残りのビスだけで外壁材を支持することができず、外壁材が落下してしまう場合がある。
【0003】
外壁材の落下を防止するには、日頃からビスの状態を確認しておくことが重要となる。従来は、ビスを目視で確認していた。特に、建物の高い箇所のビスは、足場を組んで近づいてから目視したり、遠くから双眼鏡を用いて壁面を拡大して目視したりしていた。
また、近年では、ポールと、ポールの先端に取り付けられた撮像部と、パソコン等の画像表示部と、撮像部と画像表示部とを接続する映像伝送部と、を備えた外壁点検装置を用いた点検方法(特許文献1参照)も提案されている。具体的には、作業員がポールの先端に取り付けられた撮像部を壁面に沿って移動させながら外壁の状態を撮影していき、それを他の作業員が画像表示部を見ながら点検する、というものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような点検方法を用いれば、高い箇所のビスを点検する際に、足場を組む手間がかかる、双眼鏡を動かすと対象のビスを見失ってしまう、といった問題点を解消することは可能である。
しかし、特許文献1に記載の点検方法では、依然として一つ一つのビスを順次撮影し、点検していく必要があるため、やはり大変な手間がかかってしまう。
また、ポールの長さは限られているため、橋上駅舎のように、下方に軌道が存在し、かなり高い位置にある建物の外壁を点検する場合には、やはり足場が必要になり、手間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、外壁材が複数のビスによって固定されている建物の外壁を点検する際の手間を大幅に低減することのできる外壁点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明は、建物の外壁を撮影し、撮影した外壁の壁面画像を出力することが可能な撮像装置と、前記撮像装置から出力された壁面画像を読み込み、読み込んだ壁面画像を処理するとともに表示部に表示することが可能な画像処理装置と、を備え、外壁材が複数のビスによって固定されている建物の外壁の状態を点検することが可能な外壁点検装置であって、前記画像処理装置は、前記壁面画像に映っている前記複数のビスの画像を形成する画素を特定の色に変更する塗りつぶし手段と、前記塗りつぶし手段によって前記特定の色に塗りつぶされた前記複数のビスの画像の真円度をそれぞれ算出する真円度算出手段と、前記真円度算出手段によって算出された前記複数のビスの画像の真円度を一覧表示する結果表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数のビスを一度に撮影し、その画像を処理することで、複数のビスの画像の真円度の一覧が表示される。そして、一覧の中から比較的大きい値を探し、対応するビスの画像を壁面画像上で確認することにより、頭部の浮きの有無あるいは浮きの程度を高い確率で判定することができる。一方、真円度の一覧において、小さい値は、頭部の浮きが無い、あるいは浮きの程度が問題ない程度に小さいものということになるため、画像での確認を省くことができる。つまり、頭部の浮きが疑われるビスに絞って点検できる。このため、従来のように、頭部の浮きの有無に関係なく一つ一つのビスを順次点検していた従来に比べ、ビスの状態を点検する際の手間を大幅に低減することができる。
また、複数のビスを写し込める程度に離れた箇所から撮影した壁面画像を用いて点検を行うことができるため、外壁が高い位置にある等の理由で、従来は足場を設けなければ点検を行うことができなかった外壁も、足場を組むことなく容易に点検することができる。
【0009】
なお、上記発明において、前記塗りつぶし手段は、周囲の画素との輝度差に基づいて、前記壁面画像に映っている前記複数のビスの画像の輪郭をなす輪郭画素を抽出する輪郭抽出手段と、前記輪郭抽出手段によって抽出された輪郭画素、及び前記輪郭画素によって囲まれた画素を特定の色に変更するとともに、前記輪郭画素の外側にある画素を前記特定の色とは異なる他の色に変更する色分け手段を備えるものとしてもよい。
このようにすれば、二値化による塗りつぶし等の手法に比べ、壁面画像からビスの画像を形成する画素をより高確率で抽出することができ、真円度をより正確に算出することができる。
【0010】
また、上記発明において、前記画像処理装置は、前記真円度算出手段によって算出された前記複数のビスの画像の真円度のうち所定の閾値以上のものを選別するフィルター手段と、前記結果表示手段に、前記フィルター手段によって選別された真円度に対応するビスの画像を前記特定の色で塗りつぶされた状態で表示させる選別表示処理手段と、を備えるものとしてもよい。
このようにすれば、閾値を頭部の浮きが無いことを示す0よりも大きく設定することで、大多数の頭部が浮いていないビスの画像や真円度が表示されなくなるため、その確認を省くことができる。また、閾値を上げていけば、頭部の浮きの程度が小さい(急いで対応する必要のない)ビスの画像や真円度も表示されなくなる。このように、閾値を調節することによって、点検範囲を任意の広さに設定することができる。
【0011】
また、上記発明において、前記画像処理装置は、前記建物の外壁における前記壁面画像に写し込まれた領域のサイズを設定可能なサイズ設定手段と、前記領域のサイズを前記サイズ設定手段によって設定されたサイズとした時の、前記塗りつぶし処理手段によって特定の色に塗りつぶされた前記複数のビスの画像の面積を算出する面積算出手段と、を備え、前記結果表示手段に、前記面積算出手段が算出した各ビスの画像の面積を一覧表示させるものとしてもよい。
ビスは、どんなに浮きの程度が大きくても面積の大きさは限られているため、例えば、ビス全体を真横から見たとき(完全に抜けた状態)の面積を超えるような値が表示されているものは、ビス以外のもの(例えば外壁の傷や汚れ等)を誤検出した可能性が高いということになる。このため、極端に面積の大きな画像については確認を省くことができるため、点検をより一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外壁材が複数のビスによって固定されている建物の外壁を点検する際の手間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る外壁点検装置1の概略構成について説明する。
図1は外壁点検装置1のブロック図である。
本実施形態の外壁点検装置1は、
図1に示したように、撮像装置2と画像処理装置3とで構成されている。
【0015】
撮像装置2は、例えば、デジタルスチルカメラであり、撮像部21と、撮像部21に接続された出力部22等を備えている。
撮像部21は、レンズや撮像素子等からなる。撮像素子の画素数は所定以上のものを用いるのが好ましい。
出力部22は、画像処理装置3と有線又は無線で接続し、撮影画像データを含む各種データを送信することが可能なインターフェース、又は各種データをメモリーカード等のメディアに書き込むことが可能な書込手段等で構成されている。
【0016】
画像処理装置3は、例えば、撮像装置2とは独立したパソコン、又は撮像装置2と一体化されたタブレット端末等である。画像処理装置3は、制御部31、入力部32、記憶部33、表示部34、操作部35等を備え、各部31〜35は、バス36によって接続されている。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備え、記憶部33に記憶されている各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、画像処理装置3の動作を統括的に制御するよう構成されている。
【0017】
入力部32は、撮像装置2と有線又は無線で接続し、各種データを受信することが可能なインターフェース、又は各種データが記憶されたメディアから各種データを読み込むことが可能な読込手段等で構成されている。なお、画像処理装置3が撮像装置2と一体化のものである場合は、入力部32及び撮像装置2における出力部22は不要である。
記憶部33は、たとえばHDD(Hard Disk Drive)、半導体の不揮発性メモリー等からなり、各種プログラムや各種データ等が記憶されている。また、記憶部33は、撮像装置2から取り込んだ画像データを記憶することが可能に構成されている。
【0018】
表示部34は、例えば液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)等であり、制御部31から入力される制御信号に基づいて、撮像装置2からデータとして取り込んだ撮影画像を含む各種画像を表示する表示手段として機能する。
操作部35は、画像処理装置3をパソコンで構成した場合には、キーボードやマウス、タブレット端末で構成した場合には、表示部34に設けられることになるタッチパネルとなる。
【0019】
次に、画像処理装置3の動作について説明する。
図2は画像処理装置3が表示する表示画面の一例を示した図であり、
図3は画像処理装置3が実行するビス浮き検査処理を示したフローチャートである。
画像処理装置3は、制御部31が、記憶部33に記憶されている画像処理プログラムを実行することにより、表示部34に
図2に示したような設定入力画面を表示するとともに、
図3に示したようなビス浮き検査処理を実行する。
【0020】
画像処理装置3が起動すると、制御部31は、まず、表示部34にメイン画面を表示させる。メイン画面としては、例えば
図2(a)に示したように、読み込んだ壁面画像を表示する写真表示部34a、ビス浮き検査処理を開始するための検査開始ボタン34bや、設定画面を呼び出すための設定ボタン34c、点検の対象となる(写真表示部34aに表示される)画像の格納先を表示する点検対象表示部34d、処理結果を表示する結果表示部34e等が含まれたものを表示するようにする。
【0021】
メイン画面が表示されると、画像処理装置3は、撮像装置2から壁面画像データの読み込みが可能な状態、あるいは、記憶部33に記憶されている壁面画像データを読み込むことが可能な状態となる。
壁面画像データが読み込まれると、制御部31は、読み込んだ壁面画像データを画像化した壁面画像を表示部34の写真表示部34aに表示する。
【0022】
また、制御部31は、設定画面の呼び出し指示(設定ボタン34cのクリック又はタップ)を検知すると、表示部34に設定画面を表示させる。設定画面としては、例えば
図2(b)に示したように、メイン画面と同様の写真表示部34aの他、各ビスの座標を表示する座標表示部34fや、フィルタリングするための閾値を表示する閾値表示部34g、点検対象の壁面における壁面画像に映された領域のサイズ(縦横の長さ、以下壁面サイズ)を表示するサイズ表示部34h、設定内容(閾値表示部34gに表示された閾値やサイズ表示部34hに表示された壁面サイズ等)を登録するための登録ボタン34i、メイン画面へ戻るための閉ボタン34j等が含まれたものを表示するようにする。
【0023】
設定画面が表示されると、画像処理装置3は、ビス浮き検査処理で用いる各種数値の入力が可能な状態となる。具体的には、閾値表示部34gに各種閾値を入力したり、サイズ表示部34hに壁面サイズを入力したりする操作が可能となる。つまり、画像処理装置3は、本発明におけるサイズ設定手段として機能する。
設定終了の指示(閉ボタン34jのクリック又はタップ)を検知すると、制御部31は、表示部34の表示をメイン画面に戻す。
【0024】
また、制御部31は、検査開始の指示(検査開始ボタン34bのクリック又はタップ)を検知すると、ビス浮き検査処理を実行する。ビス浮き検査処理では、
図3に示したように、まず、エッジ処理(ステップS1)を行う。エッジ処理では、読み込んだ壁面画像を構成する各画素の中から、隣接する画素との輝度差が大きい画素を抽出する。ビスは外壁材に比べて暗く映る(輝度が低い)ため、こうすることで、壁面画像から、ビスの輪郭(頭部の浮きが無いものは頭部のみ、浮きがあるものは頭部及び軸部)に対応する画素(以下輪郭画素)が高確率で抽出される。
【0025】
次に、色分け処理(ステップS2)を行う。色分け処理では、ステップS1で抽出した輪郭画素を特定の色(例えば赤)に変更し、輪郭画素以外の画素を特定の色以外の色(例えば黒:以下他の色)に変更する。
次に、クロージング処理(ステップS3)を行う。クロージング処理では、輪郭画素が環状に繋がっていない場合に、途切れた箇所を繋ぎ合わせる(途切れた輪郭線の一端をなす輪郭画素と、もう一端をなす輪郭画素との間にある他の色の画素を特定の色に変更する)することで、途切れていた輪郭を繋ぎ合わせて閉じる。
【0026】
次に、塗りつぶし処理(ステップS4)を行う。塗りつぶし処理では、ステップS3の後も他の色となっている画素のうち、輪郭画素によって囲まれた全ての画素を特定の色に変更する。すなわち、ビスの画像の輪郭内を輪郭と同じ色に塗りつぶす。
このステップS1〜S4の処理を実行することで、写真表示部34aに表示されていた壁面画像が、特定の色で塗りつぶされたビスの画像のみ表示されたものになる。つまり、このステップS1〜S4の処理を実行する画像処理装置3は、本発明における輪郭抽出手段、色分け手段及び塗りつぶし手段として機能する。
なお、ビスの輝度と外壁材の輝度との中間値を閾値として、壁面画像を二値化することにより、ビスを黒く塗りつぶすようにしてもよい。
【0027】
設定画面において予め壁面サイズが設定されている場合には、ステップS4の後、面積算出処理(ステップS5)を行う。面積算出処理では、特定の色に塗りつぶされた各ビスの画像の面積を算出する。具体的には、設定された壁面サイズから、一つの画素が実際の壁面においてはどの程度の面積を占めることになるのかを割り出し、ビスの画像を形成する特定の色で塗りつぶされた画素の数を計数することにより、ビスの画像の面積を算出する。こうすることで、撮影倍率や撮影箇所の違いにより、壁面画像に映されるビスの大きさが異なるようなことがあっても、ビスの面積を正確に算出することができる。
【0028】
次に、真円度算出処理(ステップS6)を行う。真円度算出処理では、各ビスの画像の真円度、すなわち、ビスの画像の輪郭線を2つの同心の幾何学的円で内側と外側からそれぞれ挟んだとき、同心円の間隔が最小となる場合の、2円の半径の差を算出する。なお、ステップS6の処理はステップS5の処理の前に行ってもよい。
そして、ステップS5,S6で算出したビスの画像の面積及び真円度を、結果表示部34eに一覧表示(ステップS7)する。
上記ステップS5〜S7の処理を実行することで、画像処理装置3は、本発明における真円度算出手段、面積算出手段及び結果表示手段として機能する。
【0029】
設定画面において予め閾値が設定されている場合には、ステップS6とステップS7の処理の間においてデータのフィルタリングを行う。具体的には、ステップS5で算出した面積及びステップS6で算出した真円度のうち、入力された閾値以上の値を選別して結果表示部34eに表示するとともに、写真表示部34aに選別された数値に対応するビスの画像を所定の色で塗りつぶされた状態で表示する処理を行う。この処理を行うことにより、画像処理装置3は、本発明におけるフィルター手段として機能する。
【0030】
ビスの画像は、頭部の浮き(軸部の露出)が少ないものほど真円に近い形状を示す(真円度が0に近づく)。言い換えれば、真円度が大きい画像であるほど、頭部の浮きが大きいビスである可能性が高いということになる。したがって、真円度の閾値の下限を0よりも大きな数値に設定すると、大多数の頭部が浮いていないビスの真円度及び画像が表示されなくなり、頭部が浮いていることが疑われるビスの真円度及び画像が表示されることになる。また、閾値を上げていけば、頭部の浮きの程度が小さい(急いで対応する必要のない)ビスの画像や真円度も表示されなくなる。このように、閾値を調節することによって、点検範囲を任意の広さに設定することができる。
【0031】
また、ビス自体は小さく、どんなに頭部の浮きが大きくても面積の大きさは限られているため、例えば、ビス全体を真横から見たとき(完全に抜けた状態)の面積を閾値の上限として設定すれば、その閾値を超えた画像はビスでない(外壁の傷や汚れの)可能性が高くなるため、点検対象とする画像をより絞ることが可能となる。
また、面積が正常に締められている(頭部の浮きの無い)ビスのものより小さい場合には、既にビスが抜け落ち、ビスが貫入していた穴が写されている可能性も考えられる。したがって、面積の閾値の上限を正常に締められているビスのものより小さく設定することで、ビスが既に抜け落ちている箇所を調べることも可能である。
【0032】
次に、上述した外壁点検装置1を用いた外壁点検方法について説明する。
図4(a)は点検対象の壁面Wと撮像装置2との位置関係を示した模式図であり、
図4(b)〜(d)は撮影角度とビス浮き検出の成功率との関係を示したグラフである。
まず、点検者は、
図4(a)に示したように、撮像装置2を用いて、点検対象となる外壁の壁面Wを、複数のビスが写し込まれるように撮影する。
【0033】
撮影に際しては、撮影範囲を広げ過ぎると、ビスが小さくなりすぎて画像処理を行うことが困難になってしまう。反対に、撮影範囲を狭めすぎると、一回に検査できる壁面が小さくなり、何度も検査を行う必要が生じてしまう。また、撮影範囲の幅や高さが予め分かっていないと、ビスの画像の面積が、実際に写真表示部34aに表示されている大きさによって変動することになってしまう。したがって、壁面画像を撮影する際には、撮影位置や撮影倍率を調節することにより、壁面における壁面画像の中に写し込まれる領域のサイズ(縦横の長さ)が所定の長さとなるように撮影するとよい。
本発明の発明者が検討した結果、写し込む外壁の横幅を6500mm程度とするのが、作業効率や壁面画像の画質の観点から好ましいことが分かった。
【0034】
また、外壁材を固定するビスは、正面から(軸部が貫入する方向に向かって)見た場合、頭部しか見えないため、壁面Wと直交する方向から撮影した壁面画像では、ビスの浮きを検査することはできない。したがって、壁面画像を撮影する際には、点検対象の壁面Wに対し、所定の角度をなす位置から撮影を行う必要がある。
【0035】
本発明の発明者は、本実施形態の画像処理装置3で処理するのに最適な壁面画像を得るための試験を行った。具体的には、
図4(a)に示したように、点検対象の壁面Wの側方であって、壁面Wと15°,30°,45°の角度をなす平面上(撮影高さは壁面Wと同じでも、壁面Wより上又は下でもよい)に撮像装置2を配置し壁面Wの撮影を行った。そして、得られた各壁面画像を、上記画像処理装置3で処理し、頭部が何mm以上浮いたビスであれば確実に検出できるかを調べた。
図4(b),(c),(d)は、それぞれ角度を15°、30°、45°とした時の結果である。その結果によると、撮影角度が30°,45°以上の場合には、4mm以上のビス浮きであれば100%検出できたのに対し、15°の場合には、7mm以上浮いて初めて100%検出できた。ビスの浮きはなるべく小さいうちから検出できた方が良いため、撮影角度を壁面Wに対し30°〜45°程度傾けるのが好ましいということになる。
【0036】
また、撮影する際の時刻や天候によっては、ビスの影が大きく伸びる、あるいは、ビスと壁面Wとの輝度差が小さくなる、といった事態になることが考えられる。
影が伸びると、正常に締められているビスの真円度も大きく算出されることになるため、外壁の撮影は、できるだけ影が伸びない時刻に行うのが好ましい。
また、ビスと壁面Wとの輝度差が小さくなると、ビスの輪郭を検出するのが難しくなり、ビスが無いと誤判断してしまう虞があるため、外壁の撮影は、できるだけ晴れている時間帯に行うのが好ましい。
【0037】
外壁を撮影したら、壁面画像データを画像処理装置3に取り込む。そして、フィルタリングするための各種閾値や、面積を算出するための壁面のサイズを設定する。そして、検査を開始(検査開始ボタン34bをクリック又はタップ)すると、表示部34の結果表示部34eに、複数のビスの画像の真円度及び面積のうち、真円度が所定の閾値の下限より大きく、かつ、面積が閾値の上限及び下限の間にあるものについて一覧表示される。次に、点検者は、表示された真円度及び面積に対応する画像を写真表示部34aで確認する。その際、一旦特定の色で塗りつぶされた状態を解除し、それが本当にビスの画像であるか否かを確認するとともに、ビスであった場合には、本当に浮きがあるか否かを確認する。
【0038】
本実施形態の外壁点検装置1を用いて上述したように点検を行えば、実際には広範囲に亘って取り付けられている多数のビスの状態を、表示部34で確認することができるため、一つ一つのビスを確認していた従来に比べ、点検作業を容易に行うことができる。
また、複数のビスを写し込める程度に離れた箇所から撮影した壁面画像を用いて点検を行うことができるため、外壁が高い位置にある等の理由で、従来は足場を設けなければ点検を行うことができなかった外壁も、足場を組むことなく容易に点検することができる。
また、閾値を設定し、真円度が所定の閾値の下限より大きく、かつ、面積が閾値の上限及び下限の間にあるものを点検対象とすることで、正常に締められているビスの画像や、外壁の傷や汚れの画像の確認を省略することができ、頭部が大きく浮いていることが疑われるビスに対象を絞って確認することができるため、点検作業をより一層容易に行うことができる。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、予め撮影する壁面の領域の壁面サイズを決めておくこととしたが、壁面サイズを決めずに撮影した後、実際の壁面における壁面画像の両端に対応する2点間の距離を後で実際に測定し、その測定値を入力するようにしてもよい。