特許第6747750号(P6747750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747750
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】燃料ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20200817BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   F02M59/44 D
   F02M59/44 K
   F04B53/00 F
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-560217(P2017-560217)
(86)(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公表番号】特表2018-515717(P2018-515717A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016061380
(87)【国際公開番号】WO2016185006
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】1508608.5
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514002684
【氏名又は名称】デルフィ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・レイティ
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ソーンスウェイト
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・トンプソン
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−068370(JP,A)
【文献】 特開平02−112643(JP,A)
【文献】 特開平07−305666(JP,A)
【文献】 特開2003−278667(JP,A)
【文献】 特開2006−250086(JP,A)
【文献】 特開2006−329180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F04B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ヘッドアセンブリ(1)であって、
第1のボア(5)およびポンピングチャンバー(6)を有する液圧ヘッド(2)と、
第2のボア(31)を有するアダプター(21)であって、前記アダプター(21)は、前記第1および第2のボア(5,31)が実質的に連続したポンピング要素ボアを形成するように前記液圧ヘッド(2)に接続されている、アダプター(21)と、
前記ポンピングチャンバー内の燃料を加圧するために前記ポンピング要素ボア内に配置されたポンピング要素(7)と、を具備し、
前記ポンピング要素(7)と前記液圧ヘッド(2)との間には第1のシール(16)が形成され、かつ、前記ポンピング要素(7)と前記アダプター(21)との間には第2のシール(17)が形成されており、
前記液圧ヘッド(2)は、それを通って前記第1のボア(5)が延びるターレット(4)を備え、前記アダプター(21)は前記ターレット(4)に接続されており、
前記アダプター(21)は、前記アダプター(21)を前記液圧ヘッドに取り付けるための取り付けセクション(22)を備えており、
前記取り付けセクション(22)は、前記ターレット(4)と協働するためのカラー(24)を備えており、
前記カラー(24)が前記ターレット(4)の外側側壁(26)と締り嵌め状態である、液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記第1のシール(16)は高圧シールであり、かつ、前記第2のシール(17)は低圧シールである、請求項1に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記アダプター(21)は、前記ポンピング要素(7)と協働するためのポリマーシールを備える、請求項1または請求項2に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記ターレット(4)と前記アダプター(21)との間に漏れ経路が形成される、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記漏れ経路と連通する回収チャンバー(35)を備える、請求項4に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記アダプター(21)はバックリークボア(44)を備える、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記バックリークボア(44)は前記アダプター(21)を通って横方向に延びる、請求項に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項8】
複数の前記液圧ヘッド(2)と複数の前記アダプター(21)とを備える、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記液圧ヘッド(2)および前記アダプター(21)はインライン形態で配置される、請求項8に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の液圧ヘッドアセンブリ(1)を一つ以上備えるポンプ(P2;P3)。
【請求項11】
液圧ヘッドアセンブリ(1)のためのアダプター(21)であって、
前記アダプター(21)を液圧ヘッド(2)に取り付けるための取り付けセクション(22)と、
ポンピング要素(7)を受け入れるために、それ自体に形成された第のボア(31)を有するシーリングセクション(23)であって、前記シーリングセクション(23)は、前記ポンピング要素(7)と少なくとも一つのシールを形成するよう構成されている、シーリングセクション(23)と、を具備し、
前記アダプター(21)は、前記液圧ヘッド()に取り付けられたとき、前記第のボア(31)が、実質的に連続したポンピング要素ボア(32)を形成するよう前記液圧ヘッド()に形成された第のボア()と整列するよう構成されている、アダプター(21)。
【請求項12】
前記シーリングセクション(23)は、前記ポンピング要素(7)と低圧シールを形成するよう構成される、請求項11に記載のアダプター(21)。
【請求項13】
前記ポンピング要素(7)と協働するためのポリマーシール(18)を備える、請求項11または請求項12に記載のアダプター(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料ポンプ装置に関する。より詳細には、これには限定されないが、本開示は液圧ヘッドアセンブリ、液圧ヘッドアセンブリを備えるポンプ、そして液圧ヘッドアセンブリのためのアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のための燃料噴射システムに燃料を供給するよう構成された公知の燃料潤滑ポンプP1が図1に示されている。燃料潤滑ポンプP1は、潤滑媒体として圧送される燃料に依存する。燃料潤滑ポンプP1は、複数の燃料インジェクターに接続されたコモンレール(図示せず)に高圧のディーゼル燃料を供給するよう構成される。燃料潤滑ポンプP1は、ポンプハウジングH1内に配置された液圧ヘッドアセンブリ101を備える。図2に示すように、液圧ヘッドアセンブリ101は、本体103およびターレット104を有する液圧ヘッド102を備える。ターレット104は、本体103と一体に形成された円筒状突出部を備える。第1のボア105およびポンピングチャンバー106が液圧ヘッド102内に形成される。第1のボア105は長手方向軸線Xを有し、ターレット104を通って延びる。ポンピングチャンバー106は、第1のボア105よりも大きな直径を有する。プランジャの形態のポンピング要素107が、ポンピングチャンバー106内の燃料を加圧するために第1のボア105内に配置される。ポンピング要素107は、ローラーシューアセンブリを介して回転カムと協働し、ポンピング要素107を第1のボア105内で往復運動させる。入口バルブ108が、ポンピングチャンバー106内への燃料の導入を制御するために設けられる。入口バルブ108は、入口バルブシート110と協働するよう構成された入口バルブ部材109を備える。第1のスプリング要素111が入口バルブ部材109と協働する。出口バルブ112が、ポンピングチャンバー106からコモンレールへの燃料の排出を制御するために設けられる。出口バルブ112は、出口バルブシート114と協働するように配置された出口バルブ部材113を備える。第2のスプリング要素115が、出口バルブ部材113を出口バルブシート114内の着座位置へと付勢し、これによって出口バルブ112を閉じるために設けられる。出口バルブ112は、ポンピングチャンバー106内の燃料の圧力が、第2のスプリング要素115によって出口バルブ部材113に加えられるスプリング付勢およびコモンレール内の燃料圧力に打ち勝つときに開放される。第1のボア105およびポンピング要素107は、第1のシール116を形成するような寸法とされる。第1のシール116は高圧シールであり、ターレット104によって延長された高圧漏れ制御長さL2を有する。
【0003】
燃料潤滑ポンプP1の限界は、例えば異なる領域で利用可能な燃料の等級の違いによる、低い潤滑性の燃料に対するロバストネスの潜在的な欠如である。入口バルブシート110を長さL1にわたって正確に機械加工する必要があるため、高圧漏れ制御長さL2の長さには、さらなる潜在的限界がある。
【0004】
燃料ポンプに潤滑媒体、典型的にはオイルを供給することが知られており、これは燃料とは別個に維持される。公知のオイル潤滑ポンプP2が図3に示されている。オイル潤滑ポンプP2は、複数の燃料インジェクターに接続されたコモンレール(図示せず)に高圧のディーゼル燃料を供給するように構成されている。オイル潤滑ポンプP2は、ポンプハウジングH2内に配置された液圧ヘッドアセンブリ201を備える。図4に示すように、液圧ヘッドアセンブリ201は、本体203とターレット204とを有する液圧ヘッド202を備える。第1のボア205とポンピングチャンバー206とが液圧ヘッド202内に形成される。ポンピングチャンバー206は第1のボア205よりも大きな直径を有する。プランジャの形態のポンピング要素207がポンピングチャンバー206内の燃料を加圧するために第1のボア205内に配置される。ポンピング要素207は、ローラーシューアセンブリ(図示せず)を介して回転カムと協働し、ポンピング要素207を第1のボア205内で往復運動させる。入口バルブ208が、ポンピングチャンバー206内への燃料の導入を制御するために設けられる。入口バルブ208は、入口バルブシート210と協働するよう配置された入口バルブ部材(図示せず)を備える。出口バルブ212が、ポンピングチャンバー206からコモンレールへの燃料の排出を制御するために設けられる。出口バルブ212は、出口バルブシート214と協働するよう配置された出口バルブ部材213を備える。第1のボア205およびポンピング要素207は、第1のシール216および第2のシール217を形成するような大きさとされる。第1のシール216は高圧シールであり、高圧漏れ制御長さL2を有する。第2のシール217は低圧シールであり、低圧漏れ制御長さL3を有する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)リップシールの形態の第3のシール218が、第2のシール217の下に配置される。第1のシール216と第2のシール217との間の液圧ヘッド202内には環状チャンバー219と戻りライン220とが形成される。第2のシール217は、第3のシール218のためのバックアップシールとして機能する。オイル潤滑ポンプP2は、エンジンブロックに直接配置されたダイレクトユニットポンプ(DUP)を形成するよう組み立てることができる。液圧ヘッドアセンブリ201はまた、図3に示すように、オイル潤滑ポンプを形成するために、カムボックス内に配置することもできる。
【0005】
第1のシール216の高圧漏れ制御長さL2は、ポンピング効率を維持するのに十分でなければならない。そして低圧漏れ制御長さL3は、オイルの燃料への混入を抑制するのに十分な長さでなければならない。しかしながら、入口バルブシート210を正確に機械加工する必要性は、第1および第2のシール216,217の高圧および低圧漏れ制御長さL2,L3を制限する。
【0006】
オイル潤滑ポンプP2は、異なるグレードの燃料に対して改善されたロバストネスを提供する。それにもかかわらず、オイル潤滑ポンプの生産量は比較的低いままであると予想される。より少ない生産量は、オイル潤滑ポンプP2の生産のための規模の経済性を低下させる。これは、液圧ヘッド202の特定の設計に関する必要性の観点から特に問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から本発明が想到された。少なくとも特定の実施形態では、本発明は、既知の燃料ポンプに関連する問題の少なくとも一部を克服するかまたは改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は液圧ヘッドアセンブリに関する。より詳細には、これに限定されないが、本発明は、アダプターを有する液圧ヘッドアセンブリ、液圧ヘッドアセンブリを備えたポンプ、そして液圧ヘッドアセンブリのためのアダプターに関する。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、液圧ヘッドアセンブリが提供され、当該液圧ヘッドアセンブリは、
第1のボアとポンピングチャンバーとを有する液圧ヘッドと、
第2のボアを有するアダプターであって、第1および第2のボアが実質的に連続したポンピング要素ボアを形成するように液圧ヘッドに接続されたアダプターと、
ポンピングチャンバー内の燃料を加圧するためにポンピング要素ボア内に配置されたポンピング要素とを具備し、
ポンピング要素と液圧ヘッドとの間には第1のシールが形成され、ポンピング要素とアダプターとの間には第2のシールが形成される。アダプターは、液圧ヘッドをオイルなどの別個の潤滑媒体と共に使用することを可能にする。第1のシールは、ポンピングチャンバーからの燃料の漏れを低減または抑制するように作用する。第2のシールは、別個の潤滑媒体がポンピング要素を通過して漏れるのを低減または抑制するように作用する。
【0010】
液圧ヘッドは、本体とターレットとを備えることができる。第1のボアは、ターレットを通って本体内に延びることができる。ターレットは、本体からの円筒形突出部とすることができる。アダプターはターレットに接合することができる。
【0011】
アダプターは、当該アダプターを液圧ヘッドに取り付けるための取り付けセクションを備えることができる。取り付けセクションは、ターレットと協働するためのカラーを備えることができる。カラーは、ターレットの外側側壁と締り嵌め状態とすることができる。
【0012】
第1のシールは高圧シールであってもよい。第2のシールは低圧シールであってもよい。
【0013】
アダプターは、ポンピング要素と協働するためのポリマーシールを備えることができる。ポリマーシールは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シールであってもよい。
【0014】
ターレットとアダプターとの間に漏れ経路を形成することができる。漏れ経路と連通して回収チャンバーを設けることができる。
【0015】
アダプターは、バックリークボアを備えることができる。バックリークボアはアダプターを通って横方向に延在することができる。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載されたタイプの一つ以上の液圧ヘッドアセンブリを備えた燃料ポンプが提供される。
【0017】
燃料ポンプは、複数の液圧ヘッドアセンブリを備えることができる。液圧ヘッドアセンブリは、インライン形態で配置することができる。燃料ポンプは、例えば、直列に配置された第1および第2の液圧ヘッドおよびアダプターを備えることができる。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、液圧ヘッドアセンブリのためのアダプターが提供され、当該アダプターは、
アダプターを液圧ヘッドに取り付けるための取り付けセクションと、
ポンピング要素を受け入れるためにそれ自体に形成された第1のボアを有するシーリングセクションであって、ポンピング要素と少なくとも一つのシールを形成するよう構成されたシーリングセクションとを具備し、
アダプターは、液圧ヘッドに取り付けられたとき、第1のボアが液圧ヘッドに形成された第2のボアと整列して実質的に連続的なポンピング要素ボアを形成するように構成される。
【0019】
シーリングセクションは、ポンピング要素と共に低圧シールを形成するよう構成することができる。
【0020】
シーリングセクションは、ポンピング要素と協働するためのポリマーシールを備えることができる。
【0021】
本出願の範囲内で、先の段落、請求項および/または以下の説明および図面に記載されたさまざまな態様、実施形態、実施例および代替物、そして特にその個々の特徴は、独立してまたは組み合わせて採用され得ることが明確に意図される。すなわち、全ての実施形態および/または実施形態の特徴は、そのような特徴が相容れない場合を除いて、何らかの方法および/または組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、そのように最初に出願されてはいないが別な請求項に従属しかつ/またはその特徴を含むように最初に出願された請求項を補正する権利を含む、最初に出願された請求項を変更し、あるいは適宜新しい請求項を出願する権利を有する。
【0022】
本発明の一つ以上の実施形態について、添付図面を参照して、単なる例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】燃料噴射システムに高圧燃料を供給するための公知の燃料潤滑ポンプの断面図である。
図2図1に示す燃料潤滑ポンプの液圧ヘッドアセンブリを示す図である。
図3】燃料噴射システムに高圧燃料を供給するための公知のオイル潤滑ポンプの断面図である。
図4図3に示すオイル潤滑ポンプの液圧ヘッドアセンブリを示す図である。
図5】本発明の一実施形態によるアダプターを含む液圧ヘッドアセンブリを示す図である。
図6】オイル潤滑ポンプと組み合わせて使用される図5に示す液圧ヘッドアセンブリを示す図である。
図7】本発明の一実施形態による第1および第2の液圧ヘッドおよびアダプターを備える燃料ポンプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態による液圧ヘッドアセンブリ1を図5を参照して説明する。液圧ヘッドアセンブリ1は、高圧燃料を燃料噴射システム(図示せず)に供給するためのオイル潤滑ポンプP2と共に使用されるものである。特に、液圧ヘッドアセンブリ1は、オイル潤滑ポンプP2のポンプハウジングH2に取り付けられるように構成される。オイル潤滑ポンプP2は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するための複数の燃料インジェクターに接続された高圧コモンレールにディーゼル燃料を供給するよう構成される。
【0025】
液圧ヘッドアセンブリ1は、図1および図2を参照して本明細書で説明される燃料潤滑ポンプP1の液圧ヘッド102と同じである液圧ヘッド2を備える。液圧ヘッド2は、本体3およびターレット4を備える。本実施形態のターレット4は円筒状突出部を備える。液圧ヘッド2には長手方向軸線Xを有する第1のボア5が形成されている。ポンピングチャンバー6もまた液圧ヘッド2に形成されている。ポンピングチャンバー6は、概ね円筒形であり、長手方向軸線Xと同軸上に配置された中心軸線を有する。ポンピングチャンバー6は、第1のボア5よりも大きな直径を有する。第1のボア5は、第1のボア5の長手方向軸線Xがターレット4の中心長手方向軸線と一致するように、ターレット4を通って延びている。プランジャの形態のポンピング要素7は、ポンピングチャンバー6内の燃料を加圧するために第1のボア5内に配置される。ポンピング要素7は、ローラーシューアセンブリを介して回転カムと協働し、ポンピング要素7を第1のボア5の長手方向軸線Xに沿って往復運動させる。ポンピングチャンバー6への燃料の導入を制御するための入口バルブ8が設けられる。入口バルブ8は、入口バルブシート10と協働するよう配置された入口バルブ部材9を備える。第1のスプリング要素11が入口バルブ部材9と協働する。出口バルブ12が、ポンピングチャンバー6からコモンレールへの燃料の排出を制御するために設けられる。出口バルブ12は、出口バルブシート14と協働するよう配置された出口バルブ部材13を備える。出口バルブ部材13を出口バルブシート14内の着座位置へと付勢し、これによって出口バルブ12を閉鎖するための第2のスプリング要素15が設けられる。ポンピングチャンバー6内の燃料の圧力が、第2のスプリング要素15によって出口バルブ部材13に加えられるスプリング付勢およびコモンレール内の燃料圧力に打ち勝つとき、出口バルブ12は開放される。第1のボア5およびポンピング要素7は、第1のシール16を形成するサイズとされる。第1のシール16は高圧シールであり、図5に示すように高圧漏れ制御長さL2を有する。第1のシール16はポンピングチャンバー6からの燃料漏れを低減あるいは抑制する。
【0026】
液圧ヘッドアセンブリ1は、(図3および図4を参照して説明したような)オイル潤滑ポンプP2と共に使用するための(図1および図2を参照して説明したような)燃料潤滑オイルポンプP1の液圧ヘッド102を適合させるためのアダプター21を備える。アダプター21は、オイルなどの潤滑媒体の別個の供給源と共に液圧ヘッド2を使用することを可能にする。したがって、アダプター21は、液圧ヘッドアダプターと呼ぶことができる。アダプター21は、ターレット4に接続されたスリーブの形態である。アダプター21は、取り付けセクション22およびシーリングセクション23を備える。取り付けセクション22は、筒状であってかつターレット4の周囲に位置するカラー24を備える。カラー24の内側側壁25は、ターレット4の外側側壁26と締り嵌めを形成する。外側側壁26の上部は、第1の干渉接合部28を形成するためにカラー24の内側側壁25と係合するための拡大された直径を有する第1の環状バンド27を備える。内側側壁25の下部は、第2の干渉接合部30を形成するためにターレット4の外側側壁26と係合するための縮小された直径を有する第2の環状バンド29を備える。
【0027】
シーリングセクション23は、第1のボア5と同じ直径を有する第2のボア31を備える。第1および第2のボア5,31は、長手方向軸線Xに沿って同軸上に配置される。これにより、第1および第2のボア5,31は、ポンピング要素7を受け入れるための連続的なポンピング要素ボア32を形成する。ポンピング要素7および第2のボア31は、第2のシール17を形成するようなサイズとされる。第2のシール17は、本明細書に記載されたオイル潤滑ポンプP2の第2のシールと同じものである金属対金属クローズクリアランスシールである。第2のシール17は低圧シールであり、低圧漏れ制御長さL3を有する。第2のシール17は、ポンピング要素を通過したオイルの漏れを低減または抑制する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)リップシールの形態の第3のシール18が、第2のシール17の下に配置される。第2のシール17は、オイルが、圧送されている燃料と交じり合わないことを保証するための第3のシール18のためのバックアップである。シーリングセクション23は特定の用途のシーリング要求に応じて変更可能であることが理解されよう。特定の用途は、例えば、異なる希釈要求および/またはパッケージング要求を有することができる。第2および第3のシール17,18の形態は、特定の用途の要求を満たすように変更することができる。
【0028】
図6を参照すると、本発明による液圧ヘッドアセンブリ1が、オイル潤滑ポンプP2における使用状態で示されている。本実施形態では、液圧ヘッド2は、ポンプハウジングH2に形成された取り付け孔33内に配置される。ターレット4、アダプター21およびポンプハウジングH2によって、回収チャンバー35が形成される。使用時には、回収チャンバー35は、(図5に破線の矢印で示す)ターレット4とアダプター21との間の漏れを回収する。回収チャンバー35は、その上端において、ポンプハウジングH2と本体3の下側に形成されたガスケット面36との間のインターフェースによってシールされ、そしてその下端において、Oリング37とポンプハウジングH2との間のインターフェースによってシールされる。Oリング37は、アダプター21の取り付けセクション22と一体に形成された位置決めチャネル38内に配置される。回収チャンバー35内に回収された燃料は、バックリーク戻りライン(図示せず)を介してタンク(図示せず)へと戻される。
【0029】
アダプター21は、入口バルブシート10の加工が完了した後、液圧ヘッド2に取り付けられる。アダプター21を収容するために、製造工程中に液圧ヘッド2に何らかの修正が加えられる。特に、液圧ヘッド2は、アダプター21との締り嵌めを可能にするために、ターレット4の外側側壁26に対して追加のハードステージ作業を必要とする。アダプター21が取り付けられた後、その中でポンピング要素7が往復運動する連続的なポンピング要素ボアを形成するために、第1および第2のボア5,31の内部で仕上げ作業が実施される。この仕上げ作業は、第1および第2のボア5,31間に必要な同心性およびボア形状が維持されることを保証するのに役立つ。
【0030】
本発明によるアダプター21は、同じ液圧ヘッド2が燃料およびオイル潤滑ポンプの両方のために使用されることを可能にすることが理解されよう。入口バルブ8の機械加工性を損なうことなく低圧バックアップシールを提供するために、第2のシール17をアダプター21に組み込むことができる。さらに、アダプター21は、さまざまなポンプ形態に適合するように変更することができる。少なくともいくつかの実施形態では、本発明の液圧ヘッドアセンブリ1は、本明細書に記載のオイル潤滑ポンプP2と比較して、パッケージサイズを小さくすることができる。(駆動シャフト軸線から液圧ヘッドの上端までを測定して)液圧ヘッドアセンブリ1の高さの約20mmの低減が達成可能である。
【0031】
オイル潤滑ポンプP2は単一のポンピングチャンバー6を有する。しかしながら、本明細書に記載のアダプター21は、複数のポンピングチャンバー6を含むインラインオイル潤滑ポンプP3のために変更することができる。図7を参照すると、インラインオイル潤滑ポンプP3は、ポンプハウジングH3内に配置された第1および第2の液圧ヘッドアセンブリ1−1,1−2を備える。第1および第2の液圧ヘッドアセンブリ1−1,1−2は、直列に配置されたそれぞれの第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2を有する。それぞれの第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2には、第1のアダプター21−1および第2のアダプター(図示せず)が関連付けられる。第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2ならびに第1および第2のアダプター21−1,21−2はポンプハウジングH3内に設けられる。ポンプハウジングH3内に形成された供給ライン39は、第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2を入口計量バルブ40に接続する。
【0032】
第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2はそれぞれの第1および第2のポンピングチャンバー6−1,6−2を形成する。第1および第2の液圧ヘッド2−1,2−2は、図5および図6を参照して本明細書で説明した液圧ヘッド2の変形例であり、同様の構成要素には同様の参照番号が使用されている。同様に、第1および第2のアダプター21−1,21−2は、本明細書に記載されたアダプター21の修正バージョンであり、同様の構成要素には同様の参照番号が再度使用される。第1および第2のアダプター21−1,21−2は同一の構成を有し、簡略化のために第1のアダプター21−1についてのみ説明する。
【0033】
第1のアダプター21−1は、入口計量バルブ40から計量供給された燃料を受けるための第1の燃料環41−1を形成する。第1のアダプター21−1の外側側壁に形成された環状リセス42は、第1の計量燃料環41−1を形成する。第1の燃料環41−1は、供給ライン39によって入口計量バルブ40に接続されている。ポンプハウジングH3を通って延びる垂直ボア43および第1の液圧ヘッド2−1内のボア(図示せず)は、第1の燃料環41−1を入口バルブ8と接続する。第1のアダプター21−1に形成されたクロス穿孔は、第1の液圧ヘッド2−1と第1のアダプター21−1との間のインターフェースにおいて開口し、バックリーク戻りライン44を形成する。ポンプハウジングH3内に形成された対応する戻りライン45は、漏れ燃料をタンクまたはリザーバに戻す。この構成は漏れた高圧燃料を密封する。第1のアダプター21−1のさらなる変形例は、アダプター21とポンプハウジングH3との間にシールを形成するために第1および第2のOリング37−1,37−2を設けることである。
【0034】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された液圧ヘッドアセンブリ1およびアダプター21にさまざまな変更および修正を加えることができることは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
H1 ポンプハウジング
H2 ポンプハウジング
H3 ポンプハウジング
P1 燃料潤滑ポンプ
P2 燃料潤滑ポンプ
P3 インライン燃料潤滑ポンプ
1 液圧ヘッドアセンブリ
1−1 第1の液圧ヘッドアセンブリ
1−2 第2の液圧ヘッドアセンブリ
2 液圧ヘッド
2−1 第1の液圧ヘッド
2−2 第2の液圧ヘッド
3 本体
4 ターレット
5 第1のボア
6 ポンピングチャンバー
6−1 第1のポンピングチャンバー
6−2 第2のポンピングチャンバー
7 ポンピング要素
8 入口バルブ
9 入口バルブ部材
10 入口バルブシート
11 第1のスプリング要素
12 出口バルブ
13 出口バルブ部材
14 出口バルブシート
15 第2のスプリング要素
16 第1のシール
17 第2のシール
18 第3のシール
21 アダプター
21−1 第1のアダプター
21−2 第2のアダプター
22 取り付けセクション
23 シーリングセクション
24 カラー
25 内側側壁
26 外側側壁
27 第1の環状バンド
28 第1の干渉接合部
29 第2の環状バンド
30 第2の干渉接合部
31 第2のボア
32 ポンピング要素ボア
33 取り付け孔
35 回収チャンバー
36 ガスケット面
37 リング
37−1 リング
37−2 リング
38 チャネル
39 供給ライン
40 入口計量バルブ
41−1 第1の燃料環
42 環状リセス
43 垂直ボア
44 バックリーク戻りライン
45 戻りライン
101 液圧ヘッドアセンブリ
102 液圧ヘッド
103 本体
104 ターレット
105 第1のボア
106 ポンピングチャンバー
107 ポンピング要素
108 入口バルブ
109 入口バルブ部材
110 入口バルブシート
111 第1のスプリング要素
112 出口バルブ
113 出口バルブ部材
114 出口バルブシート
115 第2のスプリング要素
116 第1のシール
201 液圧ヘッドアセンブリ
202 液圧ヘッド
203 本体
204 ターレット
205 第1のボア
206 ポンピングチャンバー
207 ポンピング要素
208 入口バルブ
210 入口バルブシート
212 出口バルブ
213 出口バルブ部材
214 出口バルブシート
216 第1のシール
217 第2のシール
218 第3のシール
219 環状チャンバー
220 戻りライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7