(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸張層は、ベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面と前記心線の中心との中間位置よりも前記外面に近い位置に配置された前記補強層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のラップドVベルト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般産業用機械(コンプレッサー、発電機、ポンプ等)や農業機械(草刈機等)には、ラップドVベルトが広く用いられている。また、草刈機の集草装置における集草爪の駆動等にラップドVベルトを適用するにあたって、ベルト本体を外被布で被覆して加硫した後に、ベルト厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、貫通孔に集草爪の固定具の凸部を挿入してベルトを走行させ、集草爪を駆動することが考えられる。この場合、特にベルトの屈曲により繰り返し伸張動作が行われるベルト外面側において、周囲の伸張や搬送物の負荷等の影響で、貫通孔が変形して広がり、固定具にがたつきが生じ得る。さらには、ベルトの屈曲に伴いベルト外面側に応力が集中すると、ベルト外面側において貫通孔を起点に亀裂が生じ、ベルトが破断し得る。
【0005】
本発明の目的は、ベルト厚み方向に貫通する貫通孔が形成されているラップドVベルトにおいて、特にベルト外面側における貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制し得る、ラップドVベルト及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によると、ベルト長手方向と直交する断面がV字状に形成されたベルト本体と、前記ベルト本体の前記断面の周囲を被覆する外被布と、を備えたラップドVベルトにおいて、前記ベルト本体は、ベルト内面側に配置された圧縮層であって、ゴム組成物で構成される圧縮ゴム層を有する圧縮層と、ベルト外面側に配置された伸張層であって、ゴム組成物で構成される伸張ゴム層を有する伸張層と、前記圧縮層と前記伸張層との間に埋設された心線と、を有し、前記伸張層は、
布帛と前記布帛に付着したゴム組成物とでそれぞれ構成される複数層のゴム付き布帛層がベルト厚み方向に互いに積層された補強層をさらに有し、前記伸張ゴム層及び前記補強層がベルト厚み方向に互いに積層されており、ベルト厚み方向に貫通
し且つ集草爪の固定具の凸部が挿入される貫通孔が形成され
ており、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面に最も近い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第1長さが、前記ラップドVベルトの厚みの80〜98%であり、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面から最も遠い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第2長さが、前記ラップドVベルトの厚みの76〜96%で且つ前記第1長さよりも短いことを特徴とする、ラップドVベルトが提供される。
【0007】
本発明の第2観点によると、ベルト長手方向と直交する断面がV字状に形成されたベルト本体を作製するベルト本体作製工程と、前記ベルト本体作製工程の後、前記ベルト本体の前記断面の周囲を外被布で被覆する被覆工程と、前記被覆工程の後、前記ベルト本体の加硫を行う加硫工程と、を備えたラップドVベルトの製造方法において、前記ベルト本体作製工程は、
布帛と前記布帛に付着したゴム組成物とでそれぞれ構成される複数層のゴム付き布帛層がベルト厚み方向に互いに積層された補強層を作製する補強層作製工程と、前記補強層作製工程の後、成形ドラムに、圧縮ゴム層を構成する未加硫のゴム組成物シート、心線、伸張ゴム層を構成する未加硫のゴム組成物シート、及び、前記補強層を順に巻き付け、ベルト内面側に前記圧縮ゴム層を有する圧縮層が配置され、ベルト外面側に、前記伸張ゴム層と前記補強層とを有する伸張層が配置され、且つ、前記伸張ゴム層及び前記補強層がベルト厚み方向に互いに積層され、前記圧縮層と前記伸張層との間に前記心線が埋没された、前記ベルト本体の前駆体を作製する前駆体作製工程と、前記前駆体作製工程の後、前記前駆体を切断し、前記断面をV字状に形成する切断工程と、を有し、前記加硫工程の後、ベルト厚み方向に貫通
し且つ集草爪の固定具の凸部が挿入される貫通孔を形成する貫通孔形成工程をさらに備え
、前記前駆体作製工程において、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面に最も近い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第1長さを、前記ラップドVベルトの厚みの80〜98%とし、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面から最も遠い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第2長さを、前記ラップドVベルトの厚みの76〜96%で且つ前記第1長さよりも短くすることを特徴とする、ラップドVベルトの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第1及び第2観点によれば、少なくとも1層の布帛を含む補強層が、外被布におけるベルト外面側の部分と心線との間に配置される。これにより、後に実施例で示すように、ベルト外面側における貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制することができる。
【0009】
さらに本発明の第1及び第2観点によれば、補強層は
、布帛と前記布帛に付着したゴム組成物とで
それぞれ構成される
複数層のゴム付き布帛
層がベルト厚み方向に互いに積層され
たものである。当該構成によれば、補強層が1層の布帛だけを含む場合に比べ、より確実に、ベルト外面側における貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制することができる。また、布帛と布帛に付着したゴム組成物とで構成されるゴム付き布帛層を補強層に用いることで、加硫工程において、ゴム組成物の加硫反応に伴い、ゴム付き布帛層とその周囲(伸張ゴム層や外被布)との接着やゴム付き布帛層同士の接着を容易且つ確実に行うことができる。
【0010】
さらに本発明の第1及び第2観点によれば、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面に最も近い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第1長さが、前記ラップドVベルトの厚みの80〜98%であり、前記ラップドVベルトの内面から、前記補強層を構成する前記複数層のゴム付き布帛層のうちベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面から最も遠い位置にあるゴム付き布帛層までの、ベルト厚み方向の長さである第2長さが、前記ラップドVベルトの厚みの76〜96%で且つ前記第1長さよりも
短い。ラップドVベルトの走行時におけるベルト屈曲に伴う応力は、ベルト厚み方向に関して、特に第1長さで規定された範囲と第2長さで規定された範囲との間の部分に集中する。したがって、上記構成によれば、当該部分に補強層を配置することで、より確実に、応力集中に伴う貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制することができる。
【0011】
前記伸張層は、ベルト厚み方向に関して前記ベルト本体の外面と前記心線の中心との中間位置よりも前記外面に近い位置に配置された前記補強層を含んでよい。当該構成によれば、より効果的に、ベルト外面側における貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制することができる。
【0012】
前記布帛は、経糸と緯糸との交差角度の中心方向がベルト長手方向と平行になるよう配置された平織りの織物であってよい。当該構成によれば、ベルトの屈曲性の低下を抑制することができる。
【0013】
前記交差角度は、110°〜130°であってよい。当該構成によれば、織物が伸縮しやすくなり、ベルトの屈曲性の低下をより確実に抑制することができる。
【0014】
前記ベルト内面側において前記圧縮層と前記外被布との間に、
アラミドシート、アラミドメッシュ、アラミドバンド、アラミド・ナイロン複合シート及びカーボンシートの少なくともいずれかで構成される耐亀裂層が設けられてよい。当該構成によれば、貫通孔に挿入した部材(後述のタイン5等)を当該ラップドVベルトに固定するためにベルト内面側に固定具(後述の止め板6等)を配置した場合において、当該固定具が圧縮層を貫通する問題を抑制することができる。
【0015】
前記ベルト内面側において前記外被布の前記圧縮層とは反対側の面に、
アラミドシート、アラミドメッシュ、アラミドバンド、アラミド・ナイロン複合シート及びカーボンシートの少なくともいずれかで構成される耐亀裂層が設けられてよい。当該構成によれば、貫通孔に挿入した部材(後述のタイン5等)を当該ラップドVベルトに固定するためにベルト内面側に固定具(後述の止め板6等)を配置した場合において、当該固定具が圧縮層を貫通する問題を抑制することができる。
【0016】
前記耐亀裂層のベルト幅方向の長さは、前記ベルト内面側における当該ラップドVベルトのベルト幅方向の長さの70〜95%であってよい。当該構成によれば、耐亀裂層の材料コストを抑制しつつ、上記効果(固定具が圧縮層を貫通する問題を抑制する効果)を得ることができる。
【0017】
前記外被布は、内層と、前記内層の外側に設けられた外層とを含み、少なくとも前記外層が
、アラミドシート、アラミドメッシュ、アラミドバンド、アラミド・ナイロン複合シート及びカーボンシートの少なくともいずれかで構成される耐亀裂層であってよい。当該構成によれば、貫通孔に挿入した部材(後述のタイン5等)を当該ラップドVベルトに固定するためにベルト内面側に固定具(後述の止め板6等)を配置した場合において、当該固定具が圧縮層を貫通する問題を抑制することができる。また、当該構成によれば、耐亀裂層を別途設けるのではなく、外被布を耐亀裂層として利用することで、製造工程の簡素化及びコスト低減を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも1層の布帛を含む補強層が、外被布におけるベルト外面側の部分と心線との間に配置される。これにより、後に実施例で示すように、ベルト外面側における貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルトの破断を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、
図1〜
図5を参照し、本発明の第1実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)100及びその製造方法について説明する。
【0021】
ベルト100は、
図1に示すように、ベルト長手方向(ベルト100の長手方向)と直交する断面がV字状に形成されたベルト本体10と、ベルト本体10のV字状の断面の周囲を被覆する外被布50と、を有する。ベルト100は、例えば、厚みHが8.0〜26.0mm、長さが20〜400インチ(508〜10,200mm)である。
【0022】
ベルト100は、例えば、
図2に示すように、プーリ1,2に巻回されて、プーリ1の駆動に伴い、走行する。このとき、ベルト100において、ベルト長手方向に沿った両側面(
図1に示すV字状の断面の左右の両側面)が、摩擦伝動面となり、プーリ1,2におけるV溝を形成する内壁面と接触し、摩擦力を用いて動力を伝達する。以下、プーリ1,2に巻回された状態におけるベルト100の内周側をベルト内面側100x、プーリ1,2に巻回された状態におけるベルト100の外周側をベルト外面側100yという。
【0023】
ベルト本体10は、
図1に示すように、ベルト内面側100xに配置された圧縮層11と、ベルト外面側100yに配置された伸張層12と、圧縮層11と伸張層12との間に埋設された心線13と、を有する。
【0024】
圧縮層11は、ゴム組成物で構成される圧縮ゴム層11aを有する。
【0025】
伸張層12は、ゴム組成物で構成される伸張ゴム層12a、及び、複数層(例えば2〜50層。本実施形態では6層)のゴム付き布帛層12bxを含む補強層12bを有する。ゴム付き布帛層12bxは、布帛12bx1(
図3参照)と、布帛12bx1に付着したゴム組成物とで構成される。本実施形態では、複数層のゴム付き布帛層12bxが、ベルト厚み方向(ベルト100の厚み方向)に互いに積層されている。伸張ゴム層12a及び補強層12bは、ベルト厚み方向に互いに積層されている。
【0026】
圧縮ゴム層11aのゴム組成物と、伸張ゴム層12aのゴム組成物と、ゴム付き布帛層12bxのゴム組成物とは、同じあってもよいし、異なってもよい。ゴム組成物を構成するゴム成分は、加硫又は架橋可能なゴムであって、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム等のジエン系ゴム、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素化ゴム等であり、これらの1種又は2種以上を組み合わせたものであってよい。また、圧縮ゴム層11aのゴム組成物、伸張ゴム層12aのゴム組成物、及び、ゴム付き布帛層12bxのゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、増強剤(カーボンブラック、含水シリカ等の酸化ケイ素等)、短繊維、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン等)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲亀裂防止剤、オゾン劣化防止剤等)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、帯電防止剤等を配合してよい。なお、金属酸化物は架橋剤として配合してもよい。
【0027】
補強層12bは、ベルト厚み方向に関して、ベルト本体10の外面10yと心線13の中心13xとの中間位置よりもベルト本体10の外面10yに近い位置に配置されている。詳細には、第1長さh1(ベルト100の内面から、補強層12bを構成する複数層のゴム付き布帛層12bxのうちベルト厚み方向に関してベルト本体10の外面10yに最も近い位置にあるゴム付き布帛層12bxまでの、ベルト厚み方向の長さ)が、ベルト100の厚み(ベルト100の内面から外面までの、ベルト厚み方向の長さ)H
の80〜98
%であり、また、第2長さh2(ベルト100の内面から、補強層12bを構成する複数層のゴム付き布帛層12bxのうちベルト厚み方向に関してベルト本体10の外面10yから最も遠い位置にあるゴム付き布帛層12bxまでの、ベルト厚み方向の長さ)が、ベルト100の厚みH
の76〜96
%で且つ第1長さh1よりも短い。
【0028】
布帛12bx1は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ビニロン等の合成繊維、綿等の天然繊維、又は、これらの混紡糸の繊維からなり、コスト、汎用性及び強度の点では、綿とポリエステルの混紡糸の繊維からなることが好ましい。
【0029】
布帛12bx1は、
図3に示すように、経糸と緯糸との交差角度θ(本実施形態では、θ=110°〜130°)の中心方向がベルト長手方向と平行になるよう配置された平織りの織物である。布帛12bx1の密度は、例えば、経糸が70〜95本/5cm、緯糸が70〜95本/5cmである。布帛12bx1の厚みは、例えば、0.2〜2.0mmである。
【0030】
心線13は、ベルト長手方向に延在し、且つ、ベルト幅方向(ベルト100の幅方向に一定の間隔をなして配置されている。1本の心線13を、ベルト長手方向に沿ってスパイラル状に配置してもよいし、複数本の心線13を、それぞれベルト長手方向に延在させ且つ互いにベルト幅方向に離隔させて配置してもよい。
【0031】
心線13は、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート等のC2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維、ポリエチレンテレフタレート系繊維、エチレンナフタレート系繊維等)、アラミド繊維等の合成繊維、炭素繊維等の無機繊維からなり、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(諸撚り、片撚り、ランク撚り等)である。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば、2000〜10000デニール(好ましくは4000〜8000デニール)である。心線13の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.5〜3mm(好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm)である。
【0032】
外被布50は、布帛12bx1と同様、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ビニロン等の合成繊維、綿等の天然繊維、又は、これらの混紡糸の繊維からなり、コスト、汎用性及び強度の点では、綿とポリエステルの混紡糸の繊維からなることが好ましい。
【0033】
ベルト100には、
図4に示すように、ベルト厚み方向に貫通する複数の貫通孔80が形成されている。貫通孔80は、それぞれベルト幅方向の中心に形成され、所定のピッチでベルト長手方向に互いに離隔して配置されている。なお、貫通孔80が形成された部分では、外被布50、圧縮層11及び伸張層12が取り除かれ、心線13が切断されている。
【0034】
次いで、
図5を参照し、ベルト100の製造方法について説明する。
【0035】
先ず、ベルト本体10を作製する(S1:ベルト本体作製工程)。ベルト本体作製工程S1は、補強層作製工程S1a、前駆体作製工程S1b、及び、切断工程S1cを含む。
【0036】
補強層作製工程S1aでは、1枚の布帛12bx1に下記(1)〜(4)のいずれかの処理を行うことで、1層のゴム付き布帛層(加硫前のゴム付き布帛層12bx)を作製する。或いは、複数枚の布帛12bx1に個別に下記(1)〜(4)のいずれかの処理を行うことで、複数層のゴム付き布帛層(加硫前のゴム付き布帛層12bx)を作製した後、当該複数層のゴム付き布帛層を互いに積層し、ロール等で圧着して、積層体を作製する。
【0037】
(1)ゴムシート接着処理(シート状の未加硫のゴム組成物を布帛12bx1に積層し、これらを互いに同じ表面速度で回転するロール間に通して互いに接着させる処理)
(2)ゴム膜形成処理(未加硫のゴム組成物を溶剤に溶かしてゴム糊を生成し、当該ゴム糊を布帛12bx1の表面に塗布した後、溶剤を蒸発させることで、布帛12bx1の表面に未加硫のゴム組成物の膜を形成する処理)
(3)フリクション処理(カレンダーロールを用い、互いに異なる表面速度で回転するロール間に未加硫のゴム組成物と布帛12bx1とを同時に通過させることで、布帛12bx1の繊維間にまで未加硫のゴム組成物を擦り込む処理)
(4)ソーキング処理(希薄なゴム糊を入れた浸せき槽の中に布帛12bx1を通した後、2本のロール間に布帛12bx1を通して布帛12bx1に付着した過剰のゴム糊を除くことで、布帛12bx1の繊維内部にゴム糊を浸透させる処理)
【0038】
なお、上記(1)〜(4)の処理を行う前に、布帛12bx1の繊維と未加硫のゴム組成物との接着性を向上させるため、RFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス)液に布帛12bx1を浸漬する処理を行ってもよい。
【0039】
補強層作製工程S1aの後、前駆体作製工程S1bを行う。前駆体作製工程S1bでは、成形ドラムに、圧縮ゴム層11aを構成する未加硫のゴム組成物シート、心線13、及び、伸張ゴム層12aを構成する未加硫のゴム組成物シート、及び、S1aで作製した補強層12b(1層のゴム付き布帛層、又は、上記積層体)を順に巻き付ける。このとき、1層のゴム付き布帛層又は積層体を成形ドラムに所定回数巻き付け、複数層のゴム付き布帛層12bxを形成する。これにより、ベルト内面側100xに圧縮ゴム層11aを有する圧縮層11が配置され、ベルト外面側100yに、伸張ゴム層12aと複数層のゴム付き布帛層12bxを含む補強層12bとを有する伸張層12が配置され、伸張ゴム層12a及び補強層12bがベルト厚み方向に互いに積層され、且つ、圧縮層11と伸張層12との間に心線13が埋没された、ベルト本体10の前駆体を作製する。
【0040】
前駆体作製工程S1bの後、切断工程S1cを行う。切断工程S1cでは、前駆体作製工程S1bで成形された前駆体を切断して、所定の幅とし、さらに、ベルト長手方向と直交する断面をV字状に形成する。
【0041】
ベルト本体作製工程S1の後、ベルト本体10のV字状断面の周囲を外被布50で被覆する(S2:被覆工程)。
【0042】
被覆工程S2の後、ベルト本体10の加硫を行う(S3:加硫工程)。
【0043】
加硫工程S3の後、貫通孔80を形成する(S4:貫通孔形成工程)。貫通孔形成工程S4では、ベルト外面側100yから機械加工(切削、打ち抜き等)により貫通孔80を形成する。
【0044】
以上に述べたように、本実施形態によれば、少なくとも1層の布帛12bx1を含む補強層12bが、外被布50におけるベルト外面側100yの部分と心線13との間に配置される。これにより、後に実施例で示すように、ベルト外面側100yにおける貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルト100の破断を抑制することができる。
【0045】
補強層12bは、布帛12bx1と布帛12bx1に付着したゴム組成物とで構成されるゴム付き布帛層12bxを複数層含み、複数層のゴム付き布帛層12bxがベルト厚み方向に互いに積層されている。当該構成によれば、補強層12bが1層の布帛12bx1だけを含む場合に比べ、より確実に、ベルト外面側100yにおける貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルト100の破断を抑制することができる。また、布帛12bx1と布帛12bx1に付着したゴム組成物とで構成されるゴム付き布帛層12bxを補強層12bに用いることで、加硫工程S3において、ゴム組成物の加硫反応に伴い、ゴム付き布帛層12bxとその周囲(伸張ゴム層12aや外被布50)との接着やゴム付き布帛層12bx同士の接着を容易且つ確実に行うことができる。
【0046】
第1長さh1(ベルト100の内面から、補強層12bを構成する複数層のゴム付き布帛層12bxのうちベルト厚み方向に関してベルト本体10の外面10yに最も近い位置にあるゴム付き布帛層12bxまでの、ベルト厚み方向の長さ)が、ベルトの厚みHの80〜98%であり、第2長さh2(ベルト100の内面から、補強層12bを構成する複数層のゴム付き布帛層12bxのうちベルト厚み方向に関してベルト本体10の外面10yから最も遠い位置にあるゴム付き布帛層12bxまでの、ベルト厚み方向の長さ)が、ベルト100の厚みHの76〜96%で且つ第1長さh1よりも短い。ベルト100の走行時におけるベルト屈曲に伴う応力は、ベルト厚み方向に関して、特に第1長さh1で規定された範囲と第2長さh2で規定された範囲との間の部分に集中する。したがって、上記構成によれば、当該部分に補強層12bを配置することで、より確実に、応力集中に伴う貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルト100の破断を抑制することができる。
【0047】
伸張層12は、ベルト厚み方向に関してベルト本体10の外面10yと心線13の中心13xとの中間位置よりもベルト本体10の外面10yに近い位置に配置された補強層12bを含む。当該構成によれば、より効果的に、ベルト外面側100yにおける貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生を抑制し、ひいてはベルト100の破断を抑制することができる。
【0048】
布帛12bx1は、経糸と緯糸との交差角度θの中心方向がベルト長手方向と平行になるよう配置された平織りの織物である(
図3参照)。当該構成によれば、ベルト100の屈曲性の低下を抑制することができる。
【0049】
交差角度θは、110°〜130°である。当該構成によれば、織物が伸縮しやすくなり、ベルト100の屈曲性の低下をより確実に抑制することができる。
【0050】
続いて、
図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)200について説明する。
【0051】
本実施形態に係るベルト200は、伸張層12の構成を除き、第1実施形態のベルト100と略同じ構成である。
【0052】
本実施形態において、伸張層12は、3層の伸張ゴム層12a1,12a2,12a3と、2層の補強層12b1,12b2とを有する。ベルト厚み方向に関して、伸張ゴム層12a1が最もベルト外面側200yにあり、伸張ゴム層12a3が最もベルト内面側200xにあり、伸張ゴム層12a2が伸張ゴム層12a1と伸張ゴム層12a3との間にある。補強層12b1は伸張ゴム層12a1,12a2の間、補強層12b2は伸張ゴム層12a2,12a3の間にある。補強層12b1,12b2は、それぞれ、5層のゴム付き布帛層12bxを含む。
【0053】
続いて、
図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)300について説明する。
【0054】
本実施形態に係るベルト300は、ベルト外面がアーチ状である点、及び、外被布50が2層設けられている点を除き、第1実施形態のベルト100と略同じ構成である。
【0055】
本実施形態に係るベルト300は、ベルト内面側300xの面は平坦であるが、ベルト外面側300yの面は平坦でなくアーチ状である。この場合、H,h1,h2は、ベルト幅方向の中心で規定される。
【0056】
以上に述べたように、第2及び第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果を得ることができる。
【0057】
続いて、
図8及び
図9を参照し、本発明の第4実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)400について説明する。
【0058】
本実施形態に係るベルト400は、ベルト内面側400xにおいて圧縮層11と外被布50との間に耐亀裂性を有する耐亀裂層60が設けられていることを除き、第1実施形態のベルト100と略同じ構成である。
【0059】
耐亀裂層60は、例えば、アラミドシート(一方向シート、二方向シート)、アラミドメッシュ、アラミドバンド、アラミド・ナイロン複合シート、カーボンシート(一方向シート、二方向シート)からなる。アラミドシート(一方向シート)、カーボンシート(一方向シート)としては、例えば下記表1の材料を採用してよい。
【0061】
ベルト400の各貫通孔80には、タイン(集草爪の固定具)5が挿入される。ベルト内面側400xには、金属製の止め板6が配置されている。各タイン5は、ベルト外面側400yからベルト内面側400xに亘ってベルト400を貫通し、止め板6に形成された各貫通孔6aを貫挿して、ナット7によりベルト400に対して固定される。
【0062】
耐亀裂層60のベルト幅方向の長さcは、ベルト内面側400xにおけるベルト400のベルト幅方向の長さCの70〜95%であり、且つ、止め板6のベルト幅方向の長さdの120〜160%である(
図9参照)。
【0063】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果を得ることができる他、耐亀裂層60を設けたことで、止め板6が圧縮層11を貫通する問題を抑制することができる。また、耐亀裂層60のベルト幅方向の長さcを、ベルト内面側400xにおけるベルト400のベルト幅方向の長さCの70〜95%としたことで、耐亀裂層60の材料コストを抑制しつつ、上記効果(止め板6が圧縮層11を貫通する問題を抑制する効果)を得ることができる。
【0064】
続いて、
図10を参照し、本発明の第5実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)500について説明する。
【0065】
本実施形態に係るベルト500は、耐亀裂層60の配置を除き、第4実施形態のベルト400と略同じ構成である。
【0066】
本実施形態において、耐亀裂層60は、ベルト内面側500xにおいて、圧縮層11と外被布50との間ではなく、外被布50の圧縮層11とは反対側の面(外面)に設けられている。
【0067】
本実施形態においても、第4実施形態と同様、ベルト500の各貫通孔80にタイン5が挿入され、各タイン5は、ベルト外面側500yからベルト内面側500xに亘ってベルト500を貫通し、止め板6に形成された各貫通孔を貫挿して、ナット7によりベルト500に対して固定される。耐亀裂層60のベルト幅方向の長さcは、ベルト内面側500xにおけるベルト500のベルト幅方向の長さCの70〜95%であり、且つ、止め板6のベルト幅方向の長さdの120〜160%である(
図9参照)。
【0068】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第4実施形態と同様、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果を得ることができる他、耐亀裂層60を設けたことで、止め板6が圧縮層11を貫通する問題を抑制することができる。また、耐亀裂層60のベルト幅方向の長さcを、ベルト内面側500xにおけるベルト500のベルト幅方向の長さCの70〜95%としたことで、耐亀裂層60の材料コストを抑制しつつ、上記効果(止め板6が圧縮層11を貫通する問題を抑制する効果)を得ることができる。
【0069】
続いて、本発明の第6実施形態に係るラップドVベルト(以下、単に「ベルト」という。)について説明する。
【0070】
本実施形態に係るベルトは、耐亀裂層60を別途設けるのではなく、外被布50を耐亀裂層として利用した点を除き、第4実施形態のベルト400と略同じ構成である。
【0071】
本実施形態において、外被布50は、第3実施形態と同様、内層と内層の外側に設けられた外層とを含む2層構造(
図7参照)であり、内層及び外層の両方が耐亀裂層となっている。
【0072】
本実施形態においても、第4実施形態と同様、ベルトの各貫通孔80にタイン5が挿入され、各タイン5は、ベルト外面側からベルト内面側に亘ってベルトを貫通し、止め板6に形成された各貫通孔を貫挿して、ナット7によりベルトに対して固定される。
【0073】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第4実施形態と同様、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果を得ることができる他、耐亀裂層を設けたことで、止め板6が圧縮層11を貫通する問題を抑制することができる。また、本実施形態によれば、耐亀裂層60を別途設けるのではなく、外被布50を耐亀裂層として利用することで、製造工程の簡素化及びコスト低減を実現することができる。
【実施例】
【0074】
<実施例及び比較例に係るベルトの構成>
本願発明者は、実施例として、下記の材料を用いて貫通孔形成前の第1実施形態に係るベルト100と同様のベルトを第1実施形態に係る製造方法により製造した。また、比較例として、補強層12bが無い点を除き実施例と同様のベルトを公知の製造方法により製造した。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
圧縮ゴム層11a及び伸張ゴム層12aとしては、共に、上記表2のゴム組成物を用いた。
【0078】
布帛12bx1としては、経糸及び緯糸が太さ20番手で3本撚りの綿紡績糸と太さ20番手で3本撚りのポリエステル糸との混紡糸であり、経糸及び緯糸の密度が75本/5cmであり、経糸と緯糸の交差角度θが略120度であり、厚みが0.4mmの、平織りの織物を用いた。そして、補強層作製工程S1aにおいて、RFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス)液に1枚の布帛12bx1を浸漬する処理を行った後、当該1枚の布帛12bx1に上記表3のゴム組成物を用いて上記(3)のフリクション処理を行い、1層のゴム付き布帛層(加硫前のゴム付き布帛層12bx)を作製した。その後、前駆体作製工程S1bでは、1層のゴム付き布帛層12bxを成形ドラムに6回数巻き付け、6層のゴム付き布帛層12bxを形成した。ここで、補強層12bの配置については、h1/H=97%、h2/H=84%とした。
【0079】
心線13としては、ポリエチレンテレフタレート系繊維からなり、平均線径(撚りコードの繊維径)が2.28mmのコードを用いた。
【0080】
外被布50としては、布帛12bx1と同じものを用いた。また、外被布50についても、RFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス)液に外被布50を浸漬する処理を行った後、上記表3のゴム組成物を用いて、外被布50にフリクション処理を行った。
【0081】
ベルトの厚みH=20.0mm、ベルトの長さ=183インチ(4,648mm)、ベルト外面側100yの幅=31.5mmとした。
【0082】
<貫通孔形成前後におけるベルトの引張試験>
実施例及び比較例に係るベルトを2本ずつ用意し、それぞれ長さ略600mmとなるように切断した。そして、実施例及び比較例に係るベルトそれぞれにおいて、「貫通孔無し」の試験片と「貫通孔有り」の試験片とを作製した。「貫通孔無し」の試験片は、上記のとおり長さ略600mmとなるように切断しただけで、貫通孔を形成していないものである。「貫通孔有り」の試験片は、上記のとおり長さ略600mmとなるように切断した後、2つの貫通孔80(それぞれ直径8mmであり、ベルト長手方向の中央を挟んで29mmピッチでベルト長手方向に互いに離隔して配置された2つの貫通孔80)を形成したものである。そして、各試験片について、引張試験機(アムスラー試験機)を用いて引張り速度50mm/minで試験片が破断するまで引張り、7.8kN時伸び、破断時伸び及び破断時強度を測定した(下記表4参照)。
【0083】
【表4】
【0084】
表4より、「貫通孔無し」の試験片において、実施例は比較例よりも伸びが小さく且つ破断時強度が大きい(即ち、ベルトの剛性及び強度が大きい)ことがわかる。これは、少なくとも1層の布帛12bx1を含む補強層12bを設けたことで、ベルト外面側100yの剛性が向上し、ベルト外面側100yにおける貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生が抑制されたためと推察される。
【0085】
「貫通孔有り」の試験片において、実施例及び比較例は共に貫通孔の変形や貫通孔を起点とした亀裂が生じて破断に至ったものの、表4より、実施例は比較例よりも破断時伸び及び破断時強度が大きいことがわかる。これは、少なくとも1層の布帛12bx1を含む補強層12bを設けたことで、ベルト外面側100yが補強され、貫通孔の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生が生じても直ぐにはベルトが破断しないためと推察される。
【0086】
<貫通孔周辺の強度試験>
実施例及び比較例に係るベルトを、それぞれ掴み代を除く長さが150mmとなるよう切断し、ベルト長手方向一端に直径10mmの貫通孔を1つ形成したものを試験片とした。そして、各試験片について、引張試験機(オートグラフ)の上部に固定ピンを有する固定具を配置し、貫通孔に固定ピンを挿入し且つ試験片のベルト長手方向他端をチャックで掴み、試験片を固定した。そして、引張速度50mm/minで固定具を上方に引き上げ、試験片が破断したときの強度を測定した(下記表5参照)。
【0087】
【表5】
【0088】
表5より、実施例は比較例よりも貫通孔周辺の強度が大きいことがわかる。これは、少なくとも1層の布帛12bx1を含む補強層12bを設けたことで、ベルト外面側100yの剛性が向上し、ベルト外面側100yにおける貫通孔80の変形や貫通孔80を起点とした亀裂の発生が抑制されたためと推察される。
【0089】
<実機耐久試験>
実施例及び比較例に係るベルトにおいて、2つの貫通孔80(それぞれ直径8mmであり、ベルト長手方向の中央を挟んで29mmピッチでベルト長手方向に互いに離隔して配置された2つの貫通孔80)を形成した上で、第4〜第6実施形態のように各貫通孔80にタイン5を挿入し、圃場にて実機耐久試験を行った。実機について、機種はヘーメーカ(集草機)、タインは2列で18本、作業幅は160cm、作業速度は5〜8km/時、適応トラクターは9.5〜22kW(13〜30PS)である。実機耐久試験では、寿命を測定すると共に、寿命時の破損状況を確認した(下記表6参照)。
【0090】
【表6】
【0091】
表6より、実施例は比較例よりも寿命が長いことがわかる。
【0092】
なお、実施例に係るベルトの破損状況について、考察結果は以下の通りである。先ず、ベルトがプーリ内で屈曲されると、屈曲に対応できない止め板6(
図8〜
図10参照)が、外被布50への密着及び外被布50からの離隔を順次繰り返す。この動作により、外被布50において止め板6のエッジが当接する部分に亀裂が入り、この亀裂が進行すると、止め板6が外被布50を突き破る。さらには、止め板6が圧縮層11に亀裂を入れ、この亀裂が進行して、止め板6が圧縮層11及び伸張層12を貫通する。その結果、ベルトにおける止め板6が配置された部分が厚み方向に貫通し、タインごと抜け落ちてしまう。
【0093】
本願発明者は、上記のような破損状況を回避するため、第4〜第6実施形態のように耐亀裂層を設ける構成を考案した。
【0094】
<屈曲疲労試験>
比較例、実施例1〜
6及び
参考例1、2に係るベルトを、それぞれ外径315mmの2つのプーリに巻回し、従動側のプーリに軸荷重500kgを付与しながら、雰囲気温度23℃、負荷30ps・回転数1800rpmで回転させ、寿命を測定した(下記表7参照)。本試験においては、貫通孔80を起点とした亀裂の長さが5mm以上となったときに寿命と判断した。
【0095】
【表7】
【0096】
表7に示すように、実施例1〜
6及び参考例1、2は、h1/H及びh2/Hの値が互いに異なる。実施例1は上記実施例と同じ構成であり、実施例2〜
6及び参考例1、2は実施例1から補強層12bの配置を変えてh1/H及びh2/Hの値を変化させたものである。
【0097】
表7より、実施例1〜
6及び参考例1、2は比較例よりも寿命が長いことがわかる。また、実施例1〜
6及び参考例1、2の結果から、h1/H,h2/Hの値が小さくなるほど(補強層12bがベルト外面側100yから離れるほど)寿命が短くなることがわかる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施の形態及び実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0099】
・布帛は、平織りの織物であることに限定されず、綾織り、朱子織り等の織物、経編または緯編等の編物、又は、不織布であってもよい。
・伸張層と圧縮層との間に接着ゴム層を設けてもよい。
・圧縮層は、圧縮ゴム層以外の要素を含んでもよい。
・貫通孔の数は、1又は複数であってよく、特に限定されない。
・貫通孔は、ベルトにおける任意の位置に形成されてよい。例えば、貫通孔は、ベルト幅方向の中心にその中心が配置されることに限定されず、ベルト幅方向の中心から外れた位置にその中心が配置されてもよい。この場合、貫通孔の中心を、ベルト幅方向の中心から両側にベルトの幅の30%の範囲内に配置することで、貫通孔に棒等の凸部を挿入してベルトを走行させたときにベルトが傾いてしまう問題を抑制することができる。
・貫通孔の形状は、円形に限定されず、例えば楕円形や矩形であってもよい。
・ベルト内面側において圧縮層と外被布との間、及び、ベルト内面側において外被布の圧縮層とは反対側の面、の両方に耐亀裂層を設けてもよい。
・外被布の内層及び外層の片方を、耐亀裂層としてもよい。