【文献】
Cancer Immunol. Immunother.,2012年,Vol.61,pp.19-29
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2010年,Vol.107,pp.4275-4280
【文献】
Biotechnol. Appl. Biochem.,2004年,Vol.39,pp.313-318
【文献】
日経メディカル Oncology ニュース,2011年,URL,https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201111/522495.html&pr=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組換えオルソポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス、MVA−BNまたはMVA−BNの誘導体から選択される、請求項1記載の免疫原性組み合わせ物。
前記癌が乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、メラノーマ、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、または結腸直腸癌である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組み合わせ物。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一つまたは複数の腫瘍関連抗原(TAA)を発現するよう改変されたワクシニア、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)、及び鶏痘系ベクターを用いた療法が、多くの最近の治験で取り入れられている。これらのベクターを単独またはプライム・ブースト戦略で使用し様々な癌に対する能動免疫応答を生じさせる。PROSTVAC(登録商標)はPSA及びTRICOM(商標)を発現するワクシニア及び鶏痘を用いたプライム・ブースト戦略を採用し、去勢抵抗性転移前立腺癌のグローバルフェーズ3治験(PROSPECT)で現在使用されている。CV301またはCV−301はMUC−1抗原、CEA、及びTRICOM
TMを発現するワクシニア及び鶏痘を用いた異種性プライム・ブースト戦略を採用し、膀胱癌のフェーズ2治験で現在使用されている。
【0040】
MVA−BN−HER2(Mandlら,2012)はHER−2陽性乳癌の治療を目的としたフェーズ1治験で使用されている。この組換えベクターはMVA−BNとして知られる高度に弱毒化した修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスに由来する。MVA−BN−HER2は、破傷風毒素(TTp2及びTTp30)由来の2つのユニバーサルT細胞エピトープを有するよう設計されたHER−2の細胞外ドメインからなる修飾型HER−2(特定のHER2)を発現し、それによりHER−2に対する効果的な免疫応答の誘導を容易にする。
【0041】
さらにポックスウイルス系免疫療法の抗腫瘍有効性を高めるために、MVA−BN−HER2をCTLA−4の活性を遮断するモノクローナル抗体であるT細胞活性化をダウンレギュレートする免疫チェックポイントタンパク質と組み合わせた。CT26−HER−2実験用肺転移モデルにおいて、抗CTLA−4治療自体による生存期間に対する恩恵はあまり認められなかったものの、生存期間の中央値は未処置マウスの30日間からMVA−BN−HER2処置マウスの49.5日間に増加した。(生存期間中央値35日間)。対照的に、抗CTLA−4併用のMVA−BN−HER2では、50%超のマウスで100日間を超える有意な生存期間の増加を認めた(p<0.0001)。100日目に生存マウスを調べたところ腫瘍は観察されなかった。
【0042】
様々な腫瘍モデルにおけるPD−1及びLAG−3に対する様々なアンタゴニスト抗体を併用し、PROSTVAC(登録商標)及びMVA−BN−CV301(TRICOM有りまたは無しでのCEA及びMUC−1発現MVA)をそれぞれ試験した。併用によりPROSTVAC(登録商標)及びMVA−BN−CV301の効果が高められることが分かった。
【0043】
CTLA−4のアンタゴニスト及び他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを用いた癌治療の毒性及び副作用(Mellmanら,Nature 2011を参照)を考慮して、MVA−BN−HER2等の腫瘍関連抗原をコード化する組換えポックスウイルスをCTLA−4活性を遮断するモノクローナル抗体と併用して用量漸増アッセイを行った。本明細書に図示及び記載の通り、CTLA−4阻害と組み合わせたMVA−BN−HER2等の組換えポックスウイルス療法により、CTLA−4阻害単独または組換えポックスウイルス療法単独の癌治療と比較して、治療効果の増大を達成できた。最も重要なことは、治療有効性が低投与量であっても組み合わせ治療により維持されたことであった。
【0044】
付加的免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを用いたポックスウイルス系免疫療法の抗腫瘍有効性の向上を測定するために、MVA−BN−HER2にPD−1に対するアンタゴニスト抗体と同様にCTLA−4の活性を遮断するモノクローナル抗体を組み合わせた。本明細書に図示及び記載の通り、組換えポックスウイルス療法にCTLA−4抗体及びPD−1アンタゴニストを併用した場合、CTLA−4併用及びPD−1阻害単独または組換えポックスウイルス療法単独での癌治療と比較して治療効果の増大を達成できた。最も重要なことは、治療有効性が低投与量であっても組み合わせ治療により維持されたことであった。
【0045】
さらに付加的免疫チェックポイントアンタゴニスト及びアゴニストを用いたポックスウイルス系免疫療法の抗腫瘍有効性の向上を測定するために、MVA−BN−HER2等の腫瘍関連抗原をコード化する組換えポックスウイルスを本明細書に記載の様々な付加的免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して用量漸増アッセイを行った。本明細書に図示及び記載の通り、本明細書における免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した組換えポックスウイルス療法では、治療効果の増大を達成できた。最も重要なことは、治療有効性が低投与量であっても組み合わせ治療により維持されたことであった。
【0046】
少なくとも一つの態様において、本発明の方法及び組成物は、低投与量でも優位な治療有効性を有し、現在の癌療法で認められる有害な副作用を最小限にしつつ免疫チェックポイント及びポックスウイルス癌療法の治療上の利益を最大化するようデザインされている。一つの実施形態において、副作用の低減を伴う治療上の利益は、ポックスウイルス療法を併用した低投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト(例えば、CTLA−4アンタゴニスト抗体)の投与により達成される。本発明により提供される通り、ポックスウイルス療法を併用した場合、免疫チェックポイントアゴニスト及びアンタゴニストは低投与量であっても治療有効性を維持する。意義深いことに、低投与量で治療有効性が維持される場合、単独療法として治療有効量以下で免疫チェックポイントアゴニストまたはアンタゴニストを投与する場合も含まれる。
【0047】
その他の実施形態では、本発明は、ポックスウイルス療法及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを投与する一つまたは複数の投与処方及び方法を含む。少なくとも一つの態様では、本明細書で提示する投与処方及び方法は、癌療法に関連した有害な副作用を最小限としつつ免疫チェックポイント及びポックスウイルス癌療法の治療上の利益を最大化するようデザインされている。
【0048】
腫瘍抗原を含むポリペプチドをコード化するポックスウイルス
本発明の一つの実施形態において、少なくとも一つの腫瘍抗原もしくは腫瘍関連抗原を含むポリペプチドをコード化する及び/または発現する組換えポックスウイルスをヒト癌患者に投与すること、少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記患者に投与することを含む方法がある。
【0049】
一つの実施形態において、腫瘍抗原を発現する組換えポックスウイルスは限定されないが、好ましくはワクシニアウイルス、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス、またはMVA−BNといったオルソポックスウイルスである。
【0050】
ワクシニアウイルス株の例として、天壇(Temple of Heaven)株、コペンハーゲン株、パリ株、ブダペスト株、大連(Dairen)株、ガム(Gam)株、MRIVP株、パー(Per)株、タシケント株、TBK株、トム(Tom)株、ベルン(Bern)株、パトワダンガル(Patwadangar)株、BIEM株、B−15株、リスター(Lister)株、EM−63株、ニューヨーク市公衆衛生局(New York City Board of Health)株、エルストリー(Elstree)株、池田(Ikeda)株及びWR株が挙げられる。好ましいワクシニアウイルス(VV)株はWyeth(DRYVAX)株(米国特許第7,410,644号)である。他の好ましいVV株は修飾されたワクシニアウイルスアンカラ(MVA)(Sutter,G.ら[1994],Vaccine 12:1032−40)である。他の好ましいVV株はMVA−BNである。
【0051】
本発明の実施に有用でありブダペスト条約の規定に従って寄託されているMVAウイルス株の例として、ヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャーズ(European Collection of Animal Cell Cultures:ECACC)(Vaccine Research and Production Laboratory、Public Health Laboratory Service、Centre for Applied Microbiology and Research、Porton Down、Salisbury、Wiltshire SP4 0JG、United Kingdom)に受託番号ECACC 94012707で寄託されている(1994年1月27日)MVA 572、同様にヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャーズ(ECACC)に寄託されているMVA575(受託番号ECACC 00120707、2000年12月7日寄託)及びMVA−BN(受託番号V00083008、2000年8月30日寄託)、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0052】
高い安全性(低複製コンピテント)からMVA−BNが好ましいが、すべてのMVAが本発明に適している。本発明の実施形態によれば、MVA株はMVA−BN及びその誘導体である。MVA−BN及びその誘導体の定義は、本明細書に参照として組み入れるPCT/EP01/13628に記載の通りである。
【0053】
一つの実施形態において、本発明は、癌療法のための組換えオルソポックスウイルス、好ましくはワクシニアウイルス(VV)、Wyeth株、ACAM 1000、ACAM 2000、MVA、またはMVA−BNの使用を包含する。組換えオルソポックスウイルスは、オルソポックスウイルスに異種性配列を挿入することにより作製される。
【0054】
いくつかの実施形態では、オルソポックスウイルスは少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む。好ましい実施形態では、TAAには、限定されるものではないが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury抗原が含まれる。
【0055】
さらなる実施形態では、腫瘍関連抗原が一つまたは複数の外来T
Hエピトープを含むように修飾を行う。様々な癌免疫療法剤が本明細書に記載される。少なくとも一つの態様では、本発明により、そうした製剤を免疫不全患者を含むヒト及び他の哺乳類のプライム/ブーストワクチン接種処方に使用し、既存のTh2環境におけるTh1免疫応答誘導等の液性及び細胞免疫応答を誘導可能である。
【0056】
いくつかの実施形態では、MVAは受託番号V00083008MVA−BNでヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャーズ(ECACC)に2000年8月30日に寄託された国際PCT公報WO2002042480に記載のMVA−BNである(米国特許第6,761,893号及び6,913,752号参照)。これら特許文献に記載の通り、MVA−BNは293、143B、HeLa及びHaCatの細胞株において繁殖的に複製されない。特に、MVA−BNは、ヒト胚腎臓細胞株293において0.05〜0.2の応答倍率を示す。ヒト骨肉腫細胞株143Bでは、MVA−BNは、0.0〜0.6の応答倍率を示す。ヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLaでは、MVA−BNは、0.04〜0.8の応答倍率を示し、ヒト角化細胞細胞株HaCatでは0.02〜0.8の応答倍率を示す。アフリカミドリザル腎臓細胞(CV1:ATCC No.CCL−70)では、MVA−BNは0.01〜0.06の応答倍率を示す。
【0057】
国際PCT公報WO2002042480(例えば米国特許第6,761,893号及び6,913,752号を参照)に記載されるように、ニワトリ胚線維芽細胞では、MVA−BNの応答倍率は1より大きい(CEF:初代培養)。このウイルスはCEFの初代培養において500倍超に簡単に繁殖及び増幅可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、組換えMVAはMVA−BNの誘導体である。このような「誘導体」には、基本的に寄託株(ECACC No.V00083008)と同じ複製特性を示すが、MVAのゲノムの一つまたは複数の部分において異なるウイルスが含まれる。寄託ウイルスと同様の「複製特性」を有するウイルスは、CEF細胞及びHeLa、HaCat及び143B細胞株において寄託株と同様の応答倍率で複製し、例えばAGR129トランスジェニックマウスモデルにおいて特定される同様の複製特性をインビボで示すウイルスである。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記ポックスウイルスは、ポックスウイルスに対して異種性を示す付加的塩基配列を含む組換えワクシニアウイルスである。そのようないくつかの実施形態では、異種性配列は免疫システムにより応答を誘導するエピトープをコード化する。よって、いくつかの実施形態では、組換えポックスウイルスは、該エピトープを含むタンパク質または製剤に対してワクチン接種する目的で使用される。一つの実施形態において、該エピトープは腫瘍関連抗原、好ましくはHER−2である。一つの実施形態において、HER−2抗原は配列番号2の配列を含む。
【0060】
その他の実施形態では、前記エピトープは、限定されるものではないが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury等の抗原から選択される腫瘍関連抗原である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の腫瘍関連抗原をコード化する異種性核酸配列は、前記ウイルスゲノムの非必須領域に挿入される。それらのいくつかの実施形態では、PCT/EP96/02926に記載される通り、異種性核酸配列はMVAゲノムの天然欠失部位に挿入される。異種性配列をポックスウイルスゲノムに挿入する方法は当業者に周知である。
【0062】
別の実施形態では、腫瘍抗原を発現する組換えポックスウイルスは、限定されるものではないが、鶏痘ウイルス等のアビポックスウイルスである。
【0063】
ここで「アビポックスウイルス」とは、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、ジュンコ痘ウイルス、マイナ痘ウイルス、鳩痘ウイルス、オウム痘ウイルス、ウズラ痘ウイルス、クジャク痘ウイルス、ペンギン痘ウイルス、スズメ痘ウイルス、ムクドリ痘ウイルス及び七面鳥痘ウイルスなど、任意のアビポックスウイルスを指す。好ましいアビポックスウイルスは、カナリア痘ウイルス及び鶏痘ウイルスである。
【0064】
カナリア痘ウイルスの一例はレンチュラー(Rentschler)株である。ALVACと呼ばれるプラーク精製されたカナリア痘ウイルス(米国特許第5,766,598号)は、ブダペスト条約の規定に基づいて、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に受託番号VR−2547として寄託された。もう1つのカナリア痘ウイルス株は、LF2 CEP 524 24 10 75と呼ばれる市販のカナリア痘ワクチン株であり、Institute Merieux,Inc.から入手することができる。
【0065】
鶏痘ウイルスの例はFP−1、FP−5及びTROVAC(米国特許第5,766,598号)株及びPOXVAC−TC(米国特許第7,410,644号である。FP−1は、一日齢のニワトリにワクチンとして使用するために改変されたデュベット(Duvette)株である。この株は、O DCEP 25/CEP67/2309 October 1980と呼ばれる市販の鶏痘ウイルスワクチン株であり、Institute Merieux,Inc.から入手することができる。FP−5は、ニワトリ胚由来の市販の鶏痘ウイルスワクチン株であり、American Scientific Laboratories(Division of Schering Corp.),Madison,Wisconsin,United States Veterinary License No.165,serial No.30321から入手することができる。
【0066】
ワクシニアウイルスの例は、天壇(Temple of Heaven)株、コペンハーゲン株、パリ株、ブダペスト株、大連(Dairen)株、ガム(Gam)株、MRIVP株、パー(Per)株、タシケント株、TBK株、トム(Tom)株、ベルン(Bern)株、パトワダンガル(Patwadangar)株、BIEM株、B−15株、リスター(Lister)株、EM−63株、ニューヨーク市公衆衛生局(New York City Board of Health)株、エルストリー(Elstree)株、池田(Ikeda)株及びWR株である。好ましいワクシニアウイルス(VV)株にWyeth(DRYVAX)株(米国特許第7,410,644号)、ACAM1000、またはACAM2000が含まれてもよい。他の好ましいVV株は修飾ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)(Sutter,G.ら[1994],Vaccine 12:1032−40)である。他の好ましいVV株はMVA−BNである。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記アビポックスウイルスに、少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)が含まれる。好ましい実施形態では、TAAに、限定されるものではないが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury抗原が含まれる。
【0068】
その他の実施形態では、腫瘍抗原を発現する組換えポックスウイルスは、腫瘍抗原を発現するワクシニアウイルス及び腫瘍抗原を発現する鶏痘等のアビポックスウイルスの組み合わせである。ワクシニアウイルス及び鶏痘ウイルスの組み合わせを異種性プライム・ブースト処方として投与可能であると考えられる。ある非限定的な例では、異種性プライム・ブースト処方はPROSTVAC(登録商標)またはCV301である。
【0069】
ワクチンの作製において、ポックスウイルスを生理学的に許容可能な形態に変換できる。いくつかの実施形態では、そうしたワクチン作製は、例えば、Stickl,H.ら,Dtsch.med.Wschr.99,2386−2392(1974)に記載のように天然痘に対するワクチン接種に使用するポックスウイルスワクチンの作製における経験に基づく。
【0070】
作製例を以下の通り記載する。精製ウイルスを−80℃、力価5´10
8TCID
50/mlで10mM Tris及び140mM NaClにpH7.4で配合する。ワクチンショットの作製では、例えば、10
2〜10
8個のウイルス粒子を、アンプル、好ましくはガラスアンプル内で2%ペプトン及び1%ヒトアルブミンの存在下でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に加え凍結乾燥することができる。あるいは、ワクチンショットを、製剤中のウイルスを段階的に凍結乾燥して作製することもできる。いくつかの実施形態では、製剤はマンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトース、ポリビニルピロリドンといった付加的添加剤を含み、また限定されるものではないが、インビボ投与に適した抗酸化剤や不活性ガス、安定剤や組換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)等の他の添加剤を含む。該アンプルをその後封止し、適切な温度、例えば4°C〜室温で数ヶ月間保存可能である。しかし、必要なければアンプルを温度−20℃未満で保存することが好ましい。
【0071】
ワクチン接種または療法に関する様々な実施形態、凍結乾燥物を0.1〜0.5mlの水性溶液、好ましくは生理食塩水またはTris緩衝液に溶解し、全身的または局所的に、すなわち非経口、皮下、経静脈、筋肉内、経鼻、皮内投与、または当業者に周知の他の任意の投与経路により投与する。投与形態、用量、及び投与回数は当業者の技術及び知識範囲内である。
【0072】
いくつかの実施形態では、弱毒化ワクシニアウイルス株は、免疫力が低下した動物、例えばSIVに感染したサル(CD4<血液400/μl)または免疫力が低下したヒトにおける免疫応答の誘導に有用である。ここで「免疫力が低下した」とは、不完全な免疫応答のみ示すまたは病原体に対する防御の効率性が低下した個体の免疫システムの状態を指す。
【0073】
一定の例示的腫瘍関連抗原
ある実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原に対する免疫応答を、対象内で生じさせる。そのような実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原が腫瘍関連抗原である。
【0074】
ここで「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により結合した二つ以上のアミノ酸のポリマーを指す。該アミノ酸は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、または天然アミノ酸の化学的アナログであってもよい。該用語はまたタンパク質、すなわち少なくとも一つのポリペプチドを含む機能的生体分子を指し、少なくとも二つのポリペプチドを含む場合、これらポリペプチドは複合体を形成してもよく、共有結合または非共有結合していてもよい。タンパク質のポリペプチドは、グリコシル化及び/または脂質付加可能であり及び/または接合団を含むことができる。
【0075】
好ましくは腫瘍関連抗原には、限定されるものではないが、HER−2、PSA、PAP、CEA、MUC−1,サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury単独もしくはそれらの組み合わせが含まれる。そういった組み合わせ例にCEA及びCV301としても知られるMUC−1が含まれても良い。他の組み合わせ例ではPAP及びPSAが含まれる。
【0076】
多数の腫瘍関連抗原が当技術分野において周知である。腫瘍関連抗原の例として、限定されるものではないが、5アルファリダクターゼ、アルファ−フェトプロテイン、AM−1、APC、April、BAGE、ベータカテニン、Bcl12、bcr−abl、CA−125、CASP−8/FLICE、Cathepsins、CD19、CD20、CD21、CD23、CD22、CD33 CD35、CD44、CD45、CD46、CD5、CD52、CD55、CD59、CDC27、CDK4、CEA、c−myc、Cox−2、DCC、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、FGF8b、FGF8a、FLK−1/KDR、葉酸受容体、G250、GAGEファミリー、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、GD2/GD3/GM2、GnRH、GnTV、GP1、gp100/Pmel17、gp−100−in4、gp15、gp75/TRP−1、hCG、ヘパランス(heparanse)、Her2/neu、HMTV、Hsp70、hTERT、IGFR1、IL−13R、iNOS、Ki67、KIAA0205、K−ras、H−ras、N−ras、KSA、LKLR−FUT、MAGEファミリー、マンマグロビン(mammaglobin)、MAP17、melan−A/MART−1、メソテリン(mesothelin)、MIC A/B、MT−MMP、ムチン、NY−ESO−1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン(melanotransferrin)、PAI−1、PDGF、uPA、PRAME、プロバシン(probasin)、プロゲニポエチン(progenipoientin)、PSA、PSM、RAGE−1、Rb、RCAS1、SART−1、SSX−family、STAT3、STn、TAG−72、TGF−アルファ、TGF−ベータ、チモシン−ベータ−15、TNF−アルファ、TYRP−、TYRP−2、チロシナーゼ、VEGF、ZAG、p16INK4、及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼが挙げられる。
【0077】
好ましいPSA抗原は、本明細書に参照として組み込む米国特許第7,247,615号に記載の155番目のイソロイシンをロイシンに置換したアミノ酸を含む。
【0078】
腫瘍関連抗原の一例はHER−2である。これまでのところ、HER−2は四つの異なる受容体(c−erbB−1(EGFr)、c−erbB−2(HER−2、c−Neu)、c−erbB−3及びc−erbB−4)からなる前記上皮成長因子受容体ファミリー(c−erbB)の一員である(Salomonら,1995)。c−erbB−3及びc−erbB−4はEGFr及びHER−2ほど特徴が明らかにされていない。HER−2は複合膜糖タンパク質である。この成熟タンパク質は分子量が185kDであり、構造的特徴がEGFr受容体に非常に似ている(Prigentら,1992)。EGFrもまた一つのサブユニットからなる複合膜受容体である。EGFrは見かけの分子量が170kDであり、621個のアミノ酸の表面リガンド結合ドメイン、23個のアミノ酸の単一の疎水性膜貫通ドメイン、及び542個のアミノ酸の高度に保存された細胞質チロシンキナーゼドメインからなる。該タンパク質はN−グリコシル化されている(Prigentら,1994)。
【0079】
このファミリーのタンパク質はすべてチロシンキナーゼである。リガンドとの相互作用により受容体の二量体化が起こり、チロシンキナーゼの触媒的作用が増大する(Bernard.1995,Chantry 1995)。該ファミリーのタンパク質は、ホモ二量化及びヘテロ二量化可能であり、この点が活性に重要である。EGFrは増殖促進効果を伝達し、グルコース及びアミノ酸の細胞による取り込みを刺激する(Prigentら,1992)。HER−2は増殖促進シグナルも伝達する。
【0080】
正常組織上に発現される上皮成長因子受容体の量は少ないが、多くの癌種において過剰発現される。EGFrは乳癌(Earpら,1993,Eppenberger 1994)、グリオーマ(Schlegelら,1994)、胃癌(Tkunagaら,1995)、皮膚扁平上皮癌(Fujii,1995)、卵巣癌(van Damら,1994)及び他の癌で過剰発現される。正常ヒト組織上に発現するHER−2はわずかであり、最も特徴的には分泌上皮において発現する。HER−2の過剰発現は、乳癌、胃癌、膵癌、膀胱癌及び卵巣癌の約30%に生じる。
【0081】
これらの受容体の発現は、腫瘍及び癌種の分化の度合いにより異なり、例えば、乳癌では、両方の受容体が原発巣で過剰発現する一方、胃癌では、過剰発現は転移腫瘍の後期に起こる(Salomonら,1995)。患者から単離したいくつかの頭頸部癌、外陰癌、乳癌及び卵巣癌細胞株では、腫瘍細胞で過剰発現した受容体の数は10
6/細胞よりも多い(Deanら,1994)。
【0082】
受容体のEGFrファミリーが腫瘍免疫療法の適切なターゲットとなる理由はいくつかある。一つ目に、該受容体は多くの癌種で過剰発現され、腫瘍に対する免疫応答を指示する。二つ目に、腫瘍はこの受容体のファミリーのリガンドをしばしば発現または過剰発現し、いくつかはリガンドが介在する増殖効果に過敏である。三つ目に、増殖因子受容体を過剰発現する腫瘍を有する患者はしばしば予後が不良である。過剰発現は特に乳癌、肺癌、及び膀胱癌における予後不良に密接に関連しており、浸潤/転移表現型とも関連すると考えられ、従来療法よりもより集中的にみられる(Ecclesら,1994)。
【0083】
修飾腫瘍関連抗原
いくつかの実施形態では、細胞関連ポリペプチド抗原が修飾されることにより、CTL応答がポリペプチド抗原由来のエピトープをその表面に提示する細胞に対して誘導され、この場合、該エピトープはAPC表面でMHCクラスI分子と会合して存在する。そのようないくつかの実施形態では、少なくとも一つの第一の外来THエピトープが存在する場合、該エピトープはAPC表面のMHCクラスII分子と会合する。そのようないくつかの実施形態では、細胞関連抗原は腫瘍関連抗原である。
【0084】
エピトープを提示可能なAPCの例として樹状細胞及びマクロファージが含まれる。その他のAPCの例として、1)MHCクラスI分子に結合したCTLエピトープ及び2)MHCクラスII分子に結合したT
Hエピトープを同時に提示可能な任意の飲作用性または食作用性APCが含まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書で提示される一つまたは複数の腫瘍関連抗原(TAA)、例えば限定されるものではないがCEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury等を修飾することによって、対象に投与後、ポリクローナル抗体を一つまたは複数のTAAと優位に反応するように誘導する。このような抗体は転移細胞が転移に発展するのを防ぐと同時に腫瘍細胞を攻撃及び除去できると考えられる。この抗腫瘍効果のエフェクターメカニズムは補体及び抗体依存的細胞障害性により調節される。さらに、誘導された抗体は、増殖因子依存的オリゴ二量体化及び受容体の内部移行を阻害することにより癌細胞増殖を阻害することも可能と考えられる。いくつかの実施形態では、こうした修飾TAAは、腫瘍細胞に提示される既知及び/または予測されるTAAエピトープに対するCTL応答を誘導可能と考えられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、修飾TAAポリペプチド抗原は、細胞関連ポリペプチド抗原及び変異体のCTLエピトープを含み、該変異体は外来T
Hエピトープの少なくとも一つのCTLエピトープを含む。非限定的な例において、特定のそのような修飾TAAには、少なくとも一つのCTLエピトープを含む一つまたは複数のHER−2ポリペプチド抗原及び外来T
Hエピトープの少なくとも一つのCTLエピトープを含む変異体がふくまれ、その製造方法は米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958号及び2006/0008465号に記載されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、外来T
Hエピトープは天然「乱交雑性」T細胞エピトープである。乱交雑性T細胞エピトープは、動物種及び動物集団の個体の多くで活性化している。いくつかの実施形態では、ワクチンはそのような乱交雑性T細胞エピトープを含む。そのようないくつかの実施形態では、乱交雑性T細胞エピトープの使用により、同一のワクチンにおける多数の異なるCTLエピトープの必要性が低減する。乱交雑性T細胞エピトープの例として、限定されないが、破傷風毒素のエピトープがあげられ、前記P2及びP30エピトープ(Panina−Bordignonら, 1989)、ジフテリア毒素、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、及びP. falciparum CS抗原が挙げられる。
【0088】
その他の乱交雑性T細胞エピトープに、異なるHLA−DRにコード化されるHLA−DR分子の大部分に結合可能なペプチドが含まれる。例えば、以下を参照:WO 98/23635(Frazer IHら, assigned to The University of Queensland);Southwood S ら,1998,J.Immunol.160:3363 3373;Sinigaglia Fら,1988,Nature 336:778 780;Rammensee HGら,1995,Immunogenetics 41:4 178 228;Chicz RMら,1993,J. Exp. Med 178:27 47;Hammer Jら,1993,Cell 74:197 203;Falk Kら,1994,Immunogenetics 39: 230 242。後者の文献ではHLA−DQ及び−DPリガンドについても扱っている。これら文献に列挙されるすべてのエピトープは本明細書に記載の天然エピトープの候補として関連性があり、これらエピトープは共通のモチーフを有する。
【0089】
その他の特定の実施形態では、乱交雑性T細胞エピトープは、ハプロタイプの大部分に結合可能な人工T細胞エピトープである。そのようないくつかの実施形態では、人工T細胞エピトープは、WO95/07707及び対応文献のAlexander Jら,1994,Immunity 1:751 761に記載のpan DRエピトープペプチド(「PADRE」)である。
【0090】
mHER2
様々な修飾HER−2ポリペプチド抗原及びそれらの製造方法は、本明細書に組み入れる米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958及び2006/0008465号に記載されている。これら文献にはHER−2ポリペプチドの異なる位置で乱交雑性T細胞エピトープを含む様々な修飾HER−2ポリペプチド抗原が記載されている。
【0091】
ヒトHER−2配列をタンパク質の一次構造のみに基づいてドメイン数に分割することができる。ドメインは以下のとおりである。細胞外(受容体)ドメインは1−654番目のアミノ酸に相当し以下のいくつかのサブドメインを有する:1−173番目のアミノ酸に相当するドメインI(成熟ポリペプチドのN末端ドメイン);174−323番目のアミノ酸に相当するドメインII(システインリッチドメイン、24システイン残基);324−483番目のアミノ酸に相当するドメインIII(前記相同性EGF受容体におけるリガンド結合ドメイン);及び484−623番目のアミノ酸に相当するドメインIV(システインリッチドメイン、20システイン残基)。膜貫通残基は654−675番目のアミノ酸に相当する。細胞内(キナーゼ)ドメインは655−1235番目のアミノ酸に相当し、655−1010番目のアミノ酸に相当する(725−992番目のアミノ酸に相当するコアTKドメイン)チロシンキナーゼドメイン及び1011−1235番目のアミノ酸に相当するC末端ドメインを含む。
【0092】
P2またはP30ヒトTヘルバーエピトープのいずれかに提示されるHER−2のアミノ酸配列における部位の選択については、米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958及び2006/0008465号に記載されている。要約すると以下のパラメーターが考慮される。
【0093】
1.既知及び予測されるCTLエピトープ
2.相同性と関連する受容体(特にEGFR)
3.システイン残基の保存
4.予測されるループ、αヘリックス及びβシート構造
5.可能性のあるN−グリコシル化部位
6.暴露及び埋没アミノ酸残基の予測
7.ドメイン組織化
【0094】
CTLエピトープは、ドメインI、ドメインIII、TMドメイン、及びTKドメインにおいては2つまたは3つの「ホットスポット」にクラスター化されるとみられる。米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958及び2006/0008465号に記載のとおり、これらは大部分が保存されるはずである。
【0095】
他の受容体との相同性が高い領域は、HER−2の「全体」三次構造、ひいては抗体認識にとって構造上重要となりやすい一方で、相同性が低い領域は構造の局所的変更のみ起こりうる。
【0096】
システイン残基は、分子内ジスルフィド架橋形成に関わることが多いことから前記三次構造に関与しているため、変更するべきではない。αヘリックスまたはβシート構造を形成すると予測される領域は、タンパク質のフォールディングに関与すると考えられるため、外来性エピトープの挿入位置として避けるべきである。
【0097】
前記タンパク質のマンノシル化が望ましい場合、可能性のあるN−グリコシル化部位を保存する。
【0098】
好ましくは、前記分子内に存在すると予測される領域(疎水性に基づく)はフォールディングに関与している可能性があるため保存されるべきである。対照的に、溶媒暴露領域はモデルT
HエピトープP2及びP30の挿入位置候補となりうる。
【0099】
最終的に、前記タンパク質のドメイン組織化は、タンパク質構造及び機能の関連性から考慮されるべきである。
【0100】
米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958号及び2006/0008465号に記載のとおり、前記戦略の焦点は、抗体を中和するためのターゲットとして関連性のあるタンパク質の一部であるHER−2の細胞外部分の構造を可能な限り保存することにあった。それに反して、癌細胞表面の生体膜結合HER−2の細胞内部分は液性免疫システムにアクセス不可能である。
【0101】
HER−2の様々なドメインに挿入された破傷風毒素のP2及びP30エピトープを用いたコンストラクトの様々な例が米国特許第7,005,498号及び米国特許公開公報第2004/0141958号及び2006/0008465号に挙げられている。一例である「mHER2」と呼ばれる修飾HER−2ポリペプチド抗原は、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの9個のアミノ酸、修飾HER−2ポリペプチドの273〜287番目のアミノ酸残基に相当するドメインIIに挿入されたP2エピトープ、及び修飾HER−2ポリペプチドの655〜675番目のアミノ酸残基に相当するドメインIVに挿入されたP30エピトープを含む。
【0102】
組換えMVA−BN−mHER2
非限定的な実施形態では、例えばMVA−BN−mHER2といった腫瘍関連抗原含む組換えMVAは以下のように構築される。例えばCEF細胞といった複製に許容可能な細胞型を用いた細胞培養による組換えで初代ウイルス株を作製する。細胞に、MVA−BNといった弱毒化ワクシニアウイルスを接種し腫瘍関連抗原(例えばmHER2)のウイルスゲノム配列及びフランキング領域をコード化する組換えプラスミド(例えば、pBN146)でトランスフェクトする。非限定的な一施形態では、プラスミドpBN146は、MVA−BN(14L及び15Lオープンリーディングフレーム)にも存在する配列を有する。mHER2配列はMVA−BN配列に挿入されることによりMVA−BNウイルスゲノムの組換えを可能にする。いくつかの実施形態では、前記プラスミドは一つまたは複数の選択遺伝子を含む選択カセットを有することによりCEF細胞での組換えコンストラクトの選択を可能にする。好ましい実施形態では、組換えMVAは配列番号2のポリペプチドをコード化する。
【0103】
培養物の同時感染及びトランスフェクションにより、ウイルスゲノム及び組換えプラスミド間の相同組換えを起こす。インサート担持ウイルスをその後単離し特徴づけ、ウイルス株を作製する。いくつかの実施形態では、ウイルスを選択条件下でCEF細胞培養で継代し、選択遺伝子gpt及びEGFPをコード化する領域を欠失させる。
【0104】
免疫チェックポイント分子のアンタゴニスト
本明細書に記載のとおり、少なくとも一つの態様では、本発明は免疫チェックポイントアンタゴニストの使用を包含する。このような免疫チェックポイントアンタゴニストには、細胞障害性T−リンパ球抗原4(CTLA−4)、Programmed Cell Death Protein 1(PD−1)、Programmed Death−Ligand 1(PDL−1)、Lymphocyte−activation gene 3(LAG−3)、及びT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM−3)といった免疫チェックポイント分子のアンタゴニストが含まれる。CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、またはTIM−3のアンタゴニストはそれぞれCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、またはTIM−3機能に干渉する。
【0105】
上記CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3アンタゴニストは、特異的にCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3に結合し、それぞれ生物活性及び機能を阻害及び/または遮断する抗体を含むことができる。
【0106】
CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3の他のアンタゴニストは以下を含む:CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3の発現に干渉するアンチセンス核酸RNA;CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3の発現に干渉する低分子干渉RNA;及びCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3の小分子阻害剤。
【0107】
CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3の候補アンタゴニストを、当技術分野で周知の及び/または本願記載の様々な手技によって、インビトロまたはマウスモデルにおいてCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3機能に対する干渉能等の機能面でスクリーニングできる
【0108】
ICOSのアゴニスト
本発明は、ICOSのアゴニストをさらに包含する。ICOSのアゴニストはICOSを活性化する。ICOSは活性化T細胞に発現されそのリガンドに結合した陽性同時刺激分子で、T細胞の増殖を促進する(Dong,Nature 2001;409:97−101)。
【0109】
一つの実施形態において、前記アゴニストはICOS−LやICOSの天然リガンドである。アゴニストは、結合及び活性化の性質を維持するICOS−L変異型とすることができる。ICOS−Lの変異型は、インビトロでICOSを刺激する活性によりスクリーニングできる。
【0110】
抗体
一つの実施形態において、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、及びTIM−3のアンタゴニスト及びICOSのアゴニストは抗体である。抗体は、当技術分野で周知の技術で作製される合成、モノクローナル、またはポリクローナル抗体とすることができる。このような抗体は、抗体の抗原−結合部位を介してCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSに特異的に結合する(非特異的結合と対照的)。CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSポリペプチド、断片、変異体、融合タンパク質等は免疫反応性抗体を作製する免疫原として利用できる。より具体的には、該ポリペプチド、断片、変異体、融合タンパク質等は、抗体形成を誘発する抗原性決定因子またはエピトープを有する。
【0111】
これらの抗原性決定因子またはエピトープは直線状または立体構造(非連続的)であってもよい。直線状エピトープは前記ポリペプチドのアミノ酸の一つのセクションから構成され、一方で立体構造または非連続的エピトープはタンパク質フォールディング時に近接するポリペプチド鎖の異なる領域のアミノ酸の複数のセクションから構成される(C.A.Janeway, Jr. and P.Travers,Immuno Biology 3:9(Garland Publishing Inc.,第二版.1996))。折り畳まれたタンパク質は複雑な表面を有するため、利用可能なエピトープ数は非常に大きいが、タンパク質の構造及び立体障害により、エピトープに実際に結合する抗体数は利用可能なエピトープ数よりも少ない(C.A.Janeway,Jr. and P. Travers,Immuno Biology 2:14(Garland Publishing Inc.,第二版.1996))。エピトープは当技術分野で周知の上記いずれかの方法によって特定できる。
【0112】
本発明は、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSに特異的に結合してその機能を遮断する(「アンタゴニスト抗体」)またはその機能を高める/活性化する(「アゴニスト抗体」)scFV断片を含む抗体を包含する。このような抗体は従来の手段により作製できる。
【0113】
一つの実施形態において、本発明は、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOS免疫チェックポイント分子を遮断(「アンタゴニスト抗体」)または高める/活性化する(「アゴニスト抗体」)CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSそれぞれに対するモノクローナル抗体を包含する。PD−1に対するブロッキングモノクローナル抗体の例は、本明細書に参照として組み入れるWO2011/041613に記載されている。
【0114】
抗体は高活性及び高特異性によってターゲットに結合可能となる。抗体は比較的大きい分子(〜150kDa)で、抗体結合部位がタンパク質−タンパク質相互作用部位に近接する場合、二つのタンパク質(例えばPD−1及びそのターゲットリガンド)の相互作用を立体的に阻害できる。本発明は、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSリガンド結合部位に近接してエピトープに結合する抗体をさらに包含する。
【0115】
様々な実施形態において、本発明は、分子内相互作用(例えば分子中の立体構造変化)を撹乱する抗体だけでなく分子間相互作用(例えばタンパク質−タンパク質相互作用)に干渉する抗体も同様に包含する。抗体は、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSの生物活性またはリガンドへのCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSの結合、及び/または他の性質を遮断または高める/活性化する能力に基づいてスクリーニングできる。
【0116】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体のどちらも従来技術により作製できる。
【0117】
CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSのアミノ酸配列に基づくCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOS及びペプチドを利用して、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSに特異的に結合する抗体を作製できる。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、F(ab’)2及びFab断片、単鎖可変断片(scFv)、単ドメイン抗体断片(VHHまたはナノボディ)、二価抗体断片(二重特異性抗体)等の抗体断片、及び組換え及び合成により作製された結合相手を意味する。
【0118】
抗体は、約10
7M
−1Ka以上でCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチドに特異的に結合すると定義される。結合相手または抗体の親和性は、例えばScatchardら,Ann. N.Y. Acad. Sci.,51:660(1949)に記載の従来技術により簡単に決定できる。
【0119】
ポリクローナル抗体は、様々なソース例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、またはラットから当技術分野の周知技術により簡単に作製できる。通常、適切に接合したCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSのアミノ酸配列に基づく精製CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSまたはペプチドを、主に注射等により宿主動物に投与する。CTLA−4、PD−1、PDL−1,LAG−3、TIM−3、及びICOSの免疫原性は、フロイント完全または不完全なアジュバントといったアジュバントを使用して高めることができる。追加免疫後、血清の少量のサンプルを回収し、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチドに対する反応性を試験する。このような測定に有用な様々なアッセイの例に、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(編),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載のものや、対向免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、ラジオ免疫沈降、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、及びサンドイッチアッセイ(米国特許第4,376,110号及び4,486,530号参照)といった測定法が含まれる。
【0120】
モノクローナル抗体は周知の技術を用いて簡単に作製できる(例えば、米国特許第RE32,011号,4,902,614号,4,543,439号及び4,411,993号;Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKeam,and Bechtol(編纂),1980に記載の方法を参照)。
【0121】
例えば、マウス等の前記宿主動物に、単離及び精製CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSまたは接合したCTLA−4、PD−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSペプチドを約3週間間隔で少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回腹腔内投与する。アジュバントの存在下で投与してもよい。マウス血清はその後従来技術のドットブロット法または抗体捕捉(antibody capture)(ABC)でアッセイし融合するのに最適な動物を決定する。約2〜3週間後、マウスに経静脈的にCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSまたは接合したCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSペプチドを追加投与する。マウスをその後屠殺し、確立されたプロトコールに従って脾臓細胞をAg8.653(ATCC)等の市販のミエローマ細胞と融合する。簡潔には、ミエローマ細胞を数回培地で洗浄し、マウス脾臓細胞に、ミエローマ細胞1個に対し脾臓細胞が3個となるように融合する。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)といった当技術分野で使用されるいかなる融合剤も使用できる。前記融合細胞の選択的増殖が可能な培地を含むプレートに融合物を広げる。融合細胞は約8日間増殖可能である。得られたハイブリドーマの上清を回収し、最初にヤギ抗マウスIgを塗布したプレートに加える。洗浄後、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチド等の標識を加えた後培養する。その後陽性のウェルを検出できる。陽性クローンはバルク培養で増殖でき、上清はその後Protein Aカラム(Pharmacia)で精製する。
【0122】
本発明のモノクローナル抗体は、本明細書に参照として組み入れる文献(Alting−Meesら,「Monoclonal Antibody Expression Libraries:A Rapid Alternative to Hybridomas」,Strategies in Molecular Biology 3:1−9(1990))に記載のその他の方法でも作製できる。同様に、組換えDNAを用いて結合相手をコンストラクトし、特異的結合抗体をコード化する遺伝子の可変領域を組み入れることができる。この方法はLarrickら,Biotechnology,7:394(1989)に記載されている。
【0123】
従来技術で作製できる上記抗体の抗原結合断片もまた、本発明に包含される。そのような断片の例として、限定されるものではないが、Fab及びF(ab’)2断片が挙げられる。遺伝子工学的手法により製造される抗体断片及び誘導体もまた提供される。
【0124】
本発明のモノクローナル抗体には、例えばヒト化したマウスモノクローナル抗体等のキメラ抗体が含まれる。そのようなヒト化抗体は周知の手法で作製でき、該抗体をヒトに投与した場合に免疫原性が低下する点で有利である。一つの実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変領域(または単に抗原結合部位)及びヒト抗体由来の定常領域を含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位及びヒト抗体由来の可変領域断片(抗原−結合部位を持たない)を含むことができる。キメラ及びさらに改変モノクローナル抗体を作製する手順には、Riechmannら(Nature 332:323,1988)、Liuら(PNAS 84:3439,1987)、Larrickら(Bio/Technology 7:934,1989)、及びWinter and Harris(TIPS 14:139,May,1993)に記載の方法が挙げられる。抗体遺伝子導入により抗体を作製する手法は、本明細書に参照として組み入れるGB2,272,440、米国特許第5,569,825号及び5,545,806号に記載されている。
【0125】
キメラ及びヒト化モノクローナル抗体等の遺伝子工学的方法により製造される抗体は、標準的な組換えDNA手技により作製されるヒト及び非ヒト部分の両方を含む。そのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で周知の標準的なDNA技術を用いた遺伝子工学的手法により製造できる。それらの手法には以下の文献記載の方法が含まれる(Robinsonら,国際公報WO87/02671;Akiraら,欧州特許出願第0184187号;Taniguchi,M.,欧州特許出願第0171496号;Morrisonら,欧州特許出願第0173494号;Neubergerら,PCT国際公報WO86/01533;Cabillyら,米国特許第4,816,567号;Cabillyら,欧州特許出願第0125023号;Betterら,Science 240:1041 1043,1988;Liuら,PNAS 84:3439 3443,1987;Liuら,J. Immunol.139:3521 3526,1987;Sunら,PNAS 84:214 218,1987;Nishimuraら,Canc. Res. 47:999 1005,1987;Woodら,Nature 314:446 449,1985;Shawら,J. Natl. Cancer Inst.80:1553 1559,1988;Morrison,S.L.,Science 229:1202 1207,1985;Oiら,BioTechniques 4:214,1986;Winter米国特許第5,225,539号;Jonesら,Nature 321:552 525,1986;Verhoeyanら,Science 239:1534,1988;及びBeidlerら,J.Immunol.141:4053 4060,1988)。
【0126】
合成及び半合成抗体に関連して、これら用語は限定されるものではないが、抗体断片、アイソタイプスイッチ型抗体、ヒト化抗体(例えば、マウス−ヒト、ヒト−マウス)、ハイブリッド、複数の特異性を有する抗体、及び完全合成抗体様分子を意味する。
【0127】
治療的用途では、ヒト定常及び可変領域を有する「ヒト」モノクローナル抗体は、該抗体に対する患者の免疫応答を最小限にすることが好ましいことが多い。そのような抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物を免疫することにより作製できる(Jakobovitsら,Ann NY Acad Sci 764:525−535(1995))。
【0128】
CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチドに対するヒトモノクローナル抗体は、対象のリンパ球由来のmRNAから作製した免疫グロブリン軽鎖及び重鎖cDNAを用いてFabファージディスプレイライブラリーまたはscFvファージディスプレイライブラリーといったコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーを構築することによって作製することもできる(例えば、McCaffertyら,PCT公報WO92/01047;Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581 597;及びGriffthsら(1993)EMBO J 12:725 734参照)。さらに、抗体可変領域のコンビナトリアルライブラリーを公知のヒト抗体に変異導入することにより作製することができる。例えば、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSに結合することが知られているヒト抗体の可変領域に、例えばランダムに変更された変異誘発オリゴヌクレオチドを用いて変異導入することにより、変異導入された可変領域のライブラリーを作製しCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSへの結合についてスクリーニングすることができる。イムノグロビン重鎖及び/または軽鎖のCDR領域におけるランダムな変異誘発を誘発する方法、ランダム化した重鎖及び軽鎖を交差してペアを形成する方法、及びスクリーニング方法は、例えば以下の文献に記載されている(Barbasら,PCT公報WO96/07754;Barbasら(1992)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4457 4461)。
【0129】
ディスプレイパッケージ(好ましくは繊維状ファージに由来)の集団に免疫グロブリンライブラリーを発現させて抗体ディスプレイライブラリーを形成することができる。抗体ディスプレイライブラリー作製時に特に許容可能な方法及び試薬の例は以下の文献に挙げられている(Ladnerら,米国特許第5,223,409号;Kangら,PCT公報WO92/18619;Dowerら,PCT公報WO91/17271;Winterら,PCT公報WO92/20791;Marklandら,PCT公報WO92/15679;Breitlingら,PCT公報WO93/01288;McCaffertyら,PCT公報WO 92/01047;Garrardら,PCT公報WO92/09690;Ladnerら,PCT公報WO90/02809;Fuchsら(1991),Bio/Technology 9:1370 1372;Hayら(1992),Hum Antibod Hybridomas 3:81 85;Huseら(1989),Science 246:1275 1281;Griffthsら(1993),supra;Hawkinsら(1992),J Mol Biol 226:889 896;Clacksonら(1991),Nature 352:624 628;Gramら(1992),PNAS 89:3576 3580;Garradら(1991),Bio/Technology 9:1373 1377;Hoogenboomら(1991),Nuc Acid Res 19:4133 4137;及びBarbasら(1991),PNAS 88:7978 7982)。ディスプレイパッケージ(例えば、繊維状ファージ)表面にディスプレイされると、抗体ライブラリーがスクリーニングされ、CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、またはICOSポリペプチドに結合する抗体を発現するパッケージを特定及び単離する。好ましい実施形態では、前記ライブラリーの初回スクリーニングには、固定化CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチドによるパニングが含まれ、固定化CTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSポリペプチドに結合する抗体を発現するディスプレイパッケージが選択される。
【0130】
上記に記載のCTLA−4、PD−1、PDL−1、LAG−3、TIM−3、及びICOSアンタゴニスト及びアゴニストに加え、前記アンタゴニスト及びアゴニストに、当技術分野で周知のアンタゴニスト及びアゴニストが含まれていても良い。例えば、イピリムマブ(登録商標)及びトレメリムマブは公知のCTLA−4抗体である。さらに、ランブロリズマブ(ペンブロリズマブ)、アンプリミューン−224(AMP−224)、アンプリミューン−514(AMP−514)、ニボルマブ、MK−3475、及びB7H1は公知のPD−1である。PDL−1の抗体のいくつかの例として、MPDL3280A(Roche)、MED14736(AZN)、MSB0010718C(Merck)が挙げられる。
【0131】
免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを小分子、ペプチド、可溶性受容体タンパク質、及び他の種類の融合タンパク質から構成できることが本開示により予測される。
【0132】
腫瘍抗原を発現するポックスウイルス及び及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストによる併用療法
少なくとも一つの態様において、本発明は、腫瘍抗原をコード化する組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを採用する治療方法を包含する。
【0133】
本発明の一つの実施形態において、前記腫瘍関連抗原であるHER−2抗原をコード化するオルソポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルスであるWyeth、ACAM1000、ACAM2000、MVA、またはMVA−BN)またはアビポックスウイルス(例えば,鶏痘ウイルス、POXVAC−TC)及び一つまたは複数の免疫チェックポイント抗体、アゴニスト、またはアンタゴニストとの組み合わせにより、腫瘍関連抗原HER−2を過剰発現する細胞が介在する癌(例えば、乳癌)の患者を治療可能である。好ましい実施形態では、前記MVAはMVA−BNである。特に好ましい実施形態では、前記MVAは配列番号2の配列を含むポリペプチドをコード化する。
【0134】
本発明の一つの実施形態において、PSA及び/またはPAP抗原をコード化するオルソポックスウイルス(限定されるものではないが、ワクシニアウイルスであるWyeth、ACAM1000、ACAM2000、MVA、またはMVA−BN等)またはアビポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス、POXVAC−TC)及び一つまたは複数の抗体、アゴニスト、またはアンタゴニストとの組み合わせにより、前立腺癌患者を治療可能である。特に好ましい実施形態では、前記ワクシニアウイルスはPROSTVAC(登録商標)の一部である。
【0135】
本発明の一つの実施形態において、CEA及び/またはMUC−1抗原をコード化するオルソポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルスであるWyeth、ACAM1000、ACAM2000、MVA、またはMVA−BN Wyeth、またはMVA)またはアビポックスウイルス(例えば、鶏痘ウイルス、(例えばPOXVAC−TC)及び一つまたは複数の抗体、アゴニスト、またはアンタゴニストとの組み合わせにより、腫瘍関連抗原CEA及び/またはMUC−1を過剰発現する細胞が介在する癌(例えば、乳、結腸直腸、肺、及び卵巣癌)の患者を治療可能である。
【0136】
前記組換えポックスウイルスは、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、経鼻、皮内、乱切といった全身的または局所的投与法、または任意の他の当業者に周知の投与経路によって投与可能である。好ましくは、乱切により投与される。より好ましくは、皮下注射により投与される。一つの実施形態において、10
5〜10
10TCID
50の前記組換えポックスウイルスを前記患者に投与する。好ましくは、10
7〜10
10TCID
50の前記組換えポックスウイルスを前記患者に投与する。より好ましくは、10
8〜10
10TCID
50の前記組換えポックスウイルスを前記患者に投与する。最も好ましくは、10
8〜10
9TCID
50の前記組換えポックスウイルスを前記患者に投与する。
【0137】
好ましくは前記癌には、限定されるものではないが、前立腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、膵癌、膀胱癌、または卵巣癌が含まれる。好ましい実施形態では、前記癌は転移乳癌である。
【0138】
前記癌患者は、マウスまたはラットを含む任意の哺乳類とすることができる。好ましくは前記癌患者は霊長類であり最も好ましくはヒトである。
【0139】
一つまたは複数の実施形態において、前記組換えポックスウイルスを免疫チェックポイントアゴニスト及び/またはアンタゴニスト投与日または投与後1、2、3、4、5、6、または7日間以内以内に投与する。前記組換えポックスウイルスを、前記免疫チェックポイントアゴニスト及び/またはアンタゴニストの前後で投与可能である。
【0140】
本発明の一つの実施形態において、本発明の一つまたは複数の免疫チェックポイント抗体、アゴニスト、またはアンタゴニスト及び腫瘍抗原を含むポリペプチドをコード化する前記ポックスウイルスを同時に投与する。該組み合わせ治療は、それぞれの単独治療よりも優れている。
【0141】
一つまたは複数の好ましい実施形態では、前記免疫チェックポイントアンタゴニスト及びアゴニスト投与前に、前記組換えポックスウイルスを投与する。
【0142】
相同性/異種性プライム・ブースト処方を用いた併用療法
上記に定義される通り、前記組換えポックスウイルスの単回投与により免疫応答を誘導することが可能である。本発明の前記ポックスウイルスを、相同性プライム・ブースト処方の一部として使用してもよい。前記相同性プライム・ブースト処方においては、第一のプライミングワクチン接種後に、一回または複数回の後続ブースティングワクチン接種を行う。前記ブースティングワクチン接種は、第一のワクチン接種で使用したものと同じ組換えポックスウイルスを投与することによって第一のワクチン接種による免疫応答を強化するものである。
【0143】
本発明の前記組換えポックスウイルスを、異種性プライム・ブースト処方に使用してもよい。異種性プライム・ブースト処方では、本明細書に定義されるポックスウイルスで一つまたは複数の初回プライムワクチン接種を行い、他のウイルスワクチンやタンパク質または核酸ワクチンといった異なるワクチンで一回または複数回の後続ブースティングワクチン接種を行う。
【0144】
一つの実施形態において、異種性プライム・ブースト処方の一回または複数回の後続ブースティングワクチン接種では、前記初回プライムワクチン接種とは異なる属のポックスウイルスから選択される。ある非限定的な例では、前記第一または初回ポックスウイルスワクチンに、ワクシニアが含まれる場合、前記第二及び後続ポックスウイルスワクチンは、ワクシニアとは免疫原性が異なるスイポックス、アビポックス、カプリポックスまたはオルソポックスといった異なる属のポックスウイルスから選択される。
【0145】
一つの例示的実施形態では、第一の投与量として、HER2に限定されない一つまたは複数の腫瘍関連抗原(TAA)を発現するMVA−BNといったポックスウイルスを、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、相同性プライム・ブースト処方を用いてもよい。一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用するHER2に限定されない一つまたは複数のTAAを発現するMVA−BNの一回または複数回の後続投与により、前記第一の投与による免疫応答を強化できる。好ましくは、前記第二及び後続投与のMVA−BNにおける一つまたは複数のTAAは、前記第一の投与におけるTAAと同一または類似である。
【0146】
他の例示的実施形態において、一つまたは複数のTAAを発現するワクシニア等のポックスウイルスを第一の用量として、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与するために、異種性プライム・ブースト処方を採用してもよい。この第一の用量の後に、一つまたは複数のTAAを発現する鶏痘等の異なるポックスウイルスを一回または複数回投与する。好ましくは、鶏痘ウイルスにおける前記一つまたは複数のTAAは、前記第一の投与のワクシニアウイルスに含まれるTAAと同一または類似である。さらに、付加的に例示する異種性プライム・ブースト処方について、本明細書に参照として組み入れる米国特許第6,165,460号、7,598,225号、及び7,247,615号に記載されている。
【0147】
一つの好ましい実施形態において、前記異種性プライム・ブースト処方における前記一つまたは複数のTAAには、前立腺特異抗原(PSA)及び/または前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)抗原が含まれる。一つのより好ましい実施形態において、前記PSA抗原には、本明細書に参照として組み入れる米国特許第7,247,615号及び7,598,225号に記載のPSA抗原が含まれる。ある非限定的な例では、PSAを含む前記異種性プライム・ブースト処方はPROSTVAC(登録商標)である。
【0148】
さらに他の好ましい実施形態では、前記異種性プライム・ブースト処方における前記一つまたは複数のTAAに、Aムチン1、細胞表面関連(MUC1)抗原及び癌胎児性抗原(CEA)が含まれる。一つのより好ましい実施形態において、MUC1及びCEA抗原には、本明細書に参照として組み入れる米国特許第7,118,738号、7,723,096号及びPCT出願番号PCT/US2013/020058に記載のものが含まれる。ある非限定的な例では、MUC−1抗原及びCEAを含む前記異種性プライム・ブースト処方はCV301である。
【0149】
さらに他の好ましい例示的実施形態では、一つまたは複数のTAAを発現するMVAまたはMVA−BN等のポックスウイルスを第一の用量として、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する異種性プライム・ブースト処方を採用してもよい。この第一の用量の後に、一つまたは複数のTAAを発現する鶏痘等の異なるポックスウイルスを一回または複数回投与する。好ましくは、鶏痘ウイルスにおける一つまたは複数のTAAは、前記第一の投与のMVAまたはMVA−BNウイルスに含まれるTAAと同一または類似である。
【0150】
本明細書に記載の前記相同性及び異種性プライム・ブースト処方に、本発明の一つまたは複数の用法・用量の実施形態を組み入れ可能であることが本開示により理解される。例として、前記相同性及び異種性プライム・ブースト処方のどちらかまたは両方において、治療有効量(または投与量)以下の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、本明細書に記載のとおり投与可能である。
【0151】
さらに一例として、前記相同性及び異種性プライム・ブースト処方のどちらかまたは両方において、TAAをコード化する組換えポックスウイルスの後に、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、本明細書に記載の通り投与可能である。
【0152】
さらに一例として、前記相同性及び異種性プライム・ブースト処方のどちらかまたは両方において、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二の投与量または投与回数を、第一の投与量または投与と比較して増加可能である。
【0153】
いくつかの実施形態では、前記初回プライミングワクチン接種後、数日間、数週間、数ヶ月間の間隔で前記一つまたは複数のブースティングワクチン接種を行う。いくつかの実施形態では、前記初回プライミングワクチン接種後1、2、3、4、5、6、7日間もしくはそれ以上の間隔で、前記一つまたは複数のブースティングワクチン接種を行う。いくつかの実施形態では、前記初回プライミングワクチン接種後1、2、3、4、5、6、7、8週間もしくはそれ以上の間隔で、前記一つまたは複数のブースティングワクチン接種投与を行う。いくつかの実施形態では、前記初回プライミングワクチン接種後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間もしくはそれ以上の間隔で、前記一つまたは複数のブースティングワクチン接種を行う。いくつかの実施形態では、前記初回プライミングワクチン接種後に、任意の投与間隔の組み合わせにより前記一つまたは複数のブースティングワクチン接種を行う(例えば、1、2、3、4、5、6、7日間もしくはそれ以上、1、2、3、4、5、6、7、8週間もしくはそれ以上、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間もしくはそれ以上)。
【0154】
組換えポックスウイルス治療と併用する免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの用法・用量
本明細書に記載及び図示される通り、組換えポックスウイルスベクターを一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用した癌治療は、様々な投与量で効果的である。特に、当技術分野における理解とは対照的に、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを低投与量で投与する場合でも、腫瘍関連抗原をコード化する組換えポックスウイルスベクターを併用した免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは癌治療に効果的であることが本開示により実証される。こうした低投与量治療により、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを用いた現在の癌治療で見受けられる多くの有害な副作用を低減及び/または除外することができる。
【0155】
本開示の様々な態様においては、本明細書に記載の患者へのアゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり約0.1mg/kg〜約100mg/kgとすることができる。好ましくは、患者への投与量は、患者の体重あたり約0.1mg/kg〜約20mg/kg、より好ましくは約1mg/kg〜約10mg/kg、さらに好ましくは約3mg/kg〜約10mg/kg、最も好ましくは約1mg/kg〜約3mg/kgである。ヒトへの高い投与量での免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療の副作用を考慮し、アゴニストまたはアンタゴニストの最も好ましい投与量は、患者の体重あたり約1mg/kg〜約3mg/kgである。
【0156】
組換えポックスウイルス療法と組み合わせた低投与量の免疫チェックポイントアゴニスト及びアンタゴニストの有効性を考慮し、別の実施形態においては、前記アゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり約0.1mg/kg〜約3mg/kg、約0.1mg/kg〜約2mg/kg、または約0.1mg/kg〜約1mg/kgである。付加的実施形態においては、前記アゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、または約3mg/kgである。
【0157】
本開示の付加的態様においては、本明細書に記載の患者へのアゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり0.1mg/kg〜100mg/kgとすることができる。好ましくは、患者に対する投与量は、患者の体重あたり0.1mg/kg〜20mg/kg、より好ましくは1mg/kg〜10mg/kg、さらに好ましくは3mg/kg〜10mg/kg、最も好ましくは1mg/kg〜3mg/kgである。高投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストによるヒトの治療の副作用を考慮し、最も好ましいアゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり1mg/kg〜3mg/kgである。
【0158】
組換えポックスウイルス療法と組み合わせた低投与量の免疫チェックポイントアゴニスト及びアンタゴニストの有効性を考慮し、別の実施形態においては、前記アゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり0.1mg/kg〜3mg/kg、0.1mg/kg〜2mg/kg、または0.1mg/kg〜約1mg/kgである。付加的実施形態においては、前記アゴニストまたはアンタゴニストの投与量は、患者の体重あたり0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、または3mg/kgである。
【0159】
効果的療法に必要な有効成分の量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、及び投与される他の薬剤といった多くの異なる要因によるものである。よって、安全性、忍容性、及び有効性を最適化するために、治療投与量を滴定により決定する。一般的に、インビトロでの投与量により、有効成分のin situ 投与における有効量の有用な指針が規定される。特定の疾病の治療における効果的な用量のための動物試験により、ヒト投与量の予想適用量が規定される。様々な検討が、例えば、Goodman and Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,第7版(1985),MacMillan Publishing Company,New York,及びRemington’s Pharmaceutical Sciences 18th Edition,(1990)Mack Publishing Co,Easton Paに記載されている。これら文献に記載の投与方法には、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、経鼻、イオン導入投与等が含まれる。
【0160】
本発明の組成物は、投与方法により様々な単位剤形で投与可能である。例えば、経口投与に適した単位剤形には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、及び糖衣錠等の固形剤形及びリキシル剤、シロップ、及び懸濁剤等の液体剤形が含まれる。有効成分を、滅菌液体剤形として非経口的に投与することも可能である。ゼラチンカプセルは、有効成分及び添加物としてグルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、スターチ、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルク、及び炭酸マグネシウム等の粉末担体を含有する。望ましい色、味、安定性、緩衝能、分散または他の周知の望ましい性質を付与する付加的添加物の例としては、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、及び食用白インク等が挙げられる。同様の希釈剤を用いて圧縮錠剤を製造可能である。錠剤及びカプセルのどちらも、数時間にわたり薬剤を連続的に放出するための徐放性製品として製造可能である。圧縮錠剤は、いかなる不快な味をも隠し、大気から錠剤を保護するために糖衣錠またはフィルム錠とすることができ、または消化管における選択的崩壊のために腸溶性剤とすることもできる。経口投与のための液体剤形は、着色剤や矯味剤を含有することにより、患者に受け入れられやすくできる。
【0161】
前記製剤処方における本発明の組成物濃度は、幅広く変更可能である。すなわち、選択される特定の投与形態により、約0.1重量%未満、または通常少なくとも約2重量%以上最大20〜50重量%以上の範囲で主に液量や粘度等に基づいて選択される。
【0162】
固形組成物には、従来の非毒性固形担体である、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウム等を使用可能である。経口投与には、医薬的に許容される非毒性組成物を、上記担体等の通常使用される任意の賦形剤及び、通常10%−95%及び好ましくは25%−75%濃度の本発明の一つまたは複数の組成物である有効成分を含有するよう作製する。
【0163】
噴霧投与では、本発明の組成物は、好ましくは界面活性剤及び推進剤とともに微細粉末形で提供される。本発明の組成物の好ましい割合は、0.01〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。いうまでもなく、前記界面活性剤は、非毒性であり好ましくは前記推進剤に可溶性でなくてはならない。そのような成分の代表例として、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物を添加したカプロン酸、オクタン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸及びオレイン酸等の炭素数6〜22の脂肪酸のエステルまたは部分エステルが挙げられる。混合または天然グリセリド等を使用することもできる。前記界面活性剤は、前記組成物の0.1〜20重量%、好ましくは0.25〜5重量%とすることができる。前記組成物の残余分は通常推進剤である。望ましくは、経鼻送達用のレシチン等の担体と共に含有される。
【0164】
本発明のコンストラクトを、当技術分野で公知の技術であるデポー型システム、カプセル型剤形、またはインプラントにより付加的に送達することができる。同様に、前記コンストラクトを、対象の組織にポンプで送達することも可能である。
【0165】
上述のいかなる製剤も、本発明による治療及び療法に好適であるが、前記製剤における活性薬剤は、該製剤により不活性化されず前記製剤は生理学的に適合性があるとする。
【0166】
いくつかの実施形態では、本発明の組換えポックスウイルスを一つまたは複数の医薬組成物と組み合わせることができる。TAAをコード化する組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストに加えて、医薬組成物に一つまたは複数の医薬的に許容される及び/または承認された担体、添加物、抗生物質、保存料、アジュバント、希釈剤及び/または安定化剤が含まれてもよい。このような添加剤には、限定されるものではないが、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤剤または乳化剤、及びpH緩衝物質が含まれる。例示される担体は、一般的に分子量が大きく代謝速度が遅い分子であり、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、または脂質凝集体等が挙げられる。
【0167】
免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与処方
本発明の付加的実施形態においては、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量、濃度、及び投与処方を、癌患者または癌患者群(例えば癌転移前後)の腫瘍サイズ、腫瘍容積、癌ステージといった一つまたは複数の癌関連要因に基づいて設定する。また、一つまたは複数の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量、濃度、及び投与処方を、限定されるものではないが、ForssmanまたはsCD27抗体といった関連バイオマーカーまたは抗体の有効性をモニタリング及び検討することにより設定できる。本態様により、ヒト癌患者またはヒト癌患者群にたいしてより効果的な投与処方を設定可能となる。少なくとも一つの態様では、本明細書に記載の通り提供されるより効果的な投与処方によれば、過多または過小量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが治療で患者または患者群に投与される頻度を低減できる。
【0168】
本明細書に定義される「投与処方」とは、時間単位あたりの治療薬の用量のスケジュールとして定義されるものであり、投与間の時間または投与時刻及び各具体的な時点において投与される薬剤または治療薬の量も包含される。
【0169】
少なくとも一つの態様では、本明細書に開示の方法を、例えば特定の投与処方に関して、本開示の前記組み合わせの治療上の利益を最大限にしつつ有害な副作用を最小限にするよう設定する。一つの実施形態において、一つまたは複数のTAAをコード化する組換えポックスウイルスの投与日に、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを患者に投与する。付加的実施形態においては、以下の段落に記載の通り、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、一つまたは複数のTAAをコード化する組換えポックスウイルスの投与後に患者に投与する。
【0170】
組換えポックスウイルス療法後の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与により癌治療の有効性が高まる
図14〜17及び実施例32〜35に示すように、TAAを含む組換えポックスウイルスを対象に投与後、TIM−3、LAG−3、ICOS、及びPD−1といった免疫チェックポイント分子の発現レベルを一定の間隔で測定した。治療に対して、当初免疫チェックポイント発現にほとんど増加は認められなかった。しかし約1〜2日後、T細胞における免疫チェックポイント分子発現が増加した。約3日目から12日目にかけて、免疫チェックポイント発現は劇的に増大した。約18日目まで発現増加を認めた。さらにこの免疫チェックポイント発現増加は、CD4T細胞と比較してCD8T細胞においてより強く認められた(
図14〜17参照)。
【0171】
図14〜17及び実施例32〜35の結果から、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト投与の最も効果的な時期は、組換えポックスウイルスによる治療後である。例えば、
図14に示すように、約1〜3日目から約18日目の間に、治療後に免疫チェックポイント分子TIM−3のMVA−BN−HER2発現レベルが増加し、約3日目〜約14日目の間に最も顕著な増加を認めた。よって、より効果的なTIM−3アンタゴニスト投与時期は、組換えポックスウイルス治療後の上記発現増加が生じる期間である。
【0172】
図15〜17に示すように、MVA−BN−HER−2による治療後、免疫チェックポイント分子ICOS、PD−1、及びLAG−3において同様の発現上昇が認められた。この発現結果により、より高い治療有効性を達成するためには、免疫チェックポイントアンタゴニスト(例えば、TIM−3、PD−1、PDL−1、及びLAG−3)またはアゴニスト(例えば、ICOS)のそれぞれを組換えポックスウイルス治療後に癌患者に投与する。
【0173】
少なくとも一つの態様では、免疫チェックポイント分子発現が少なくとも部分的に上昇する上記期間に、より高い治療有効性が認められるが、これは発現上昇により、前記投与される免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが結合可能な基質が増加し、それにより前記免疫チェックポイント分子のブロッキングまたは活性化がより強く生じるからである。
【0174】
他の態様では、
図14〜17に示す結果は、組換えポックスウイルス治療後に免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与することが有効性を高めるために重要であることを示している。この重要性は、組換えポックスウイルス治療後に免疫チェックポイント分子発現が上昇する時期により明らかに実証される。
【0175】
本開示の記載において、一実施形態における癌治療方法は、限定されるものではないが少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンを所定の投与量で患者に投与すること、(b)所定投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記患者に投与することを含み、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記投与量の治療用癌ワクチン後に投与する方法である。
【0176】
一実施形態では、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後に同日中に投与することが理解される。また、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後、約1〜18日間、約2〜17日間、約3〜16日間、約3〜14日間、約3〜12日間、約3〜10日間、約3〜8日間、約3〜7日間、約4〜15日間、約4〜14日間、約4〜13日間、または約4〜12日間投与されることが理解される。一つのより好ましい実施形態において、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後約3〜15日間投与される。一つのより好ましい実施形態において、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後約3〜7日間投与される。さらにより好ましい実施形態では、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後3日間または7日間投与される。
【0177】
また、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与日または投与後1〜18日間、2〜17日間、3〜16日間、3〜15日間、3〜14日間、3〜12日間、4〜15日間、4〜14日間、4〜13日間、または4〜12日間投与されることが理解される。一つのより好ましい実施形態において、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後3〜15日間投与される。一つのより好ましい実施形態において、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後3〜7日間投与される。さらにより好ましい実施形態では、前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後3日間または7日間投与される。
【0178】
付加的実施形態においては、本開示には、後続(前記段落における投与量に対する)または第二の投与量の限定されるものではないが少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンを患者に投与すること、(b)後続(前記段落における投与量に対する)または第二の投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記患者に投与することを含み、前記後続投与量の治療用癌ワクチン投与後に前記後続投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与することを含む。前記後続投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、前記後続投与量の治療用癌ワクチン後に同様の間隔(例えば、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後約1〜18日間、約2〜17日間、約3〜16日間、約3〜15日間、約3〜14日間、約3〜12日間、約4〜15日間、約4〜14日間、約4〜13日間、または約4〜12日間)で投与できることが理解される。
【0179】
組換えポックスウイルス療法等の治療用癌ワクチン投与後の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト投与による治療有効性の向上は、実施例26から実施例31においてさらに実証される。
【0180】
一つの実施形態において、前記治療用癌ワクチンには、少なくとも一つのTAAを含む組換えポックスウイルスが含まれる。他の好ましい実施形態において、前記組換えポックスウイルスには、少なくとも一つのTAAを含むオルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスが含まれる。他の好ましい実施形態において、前記オルソポックスウイルスは、ワクシニア、MVA、またはMVA−BNを含む。別の実施形態では、前記アビポックスウイルスには鶏痘ウイルスが含まれる。
【0181】
別の実施形態では、CTLA−4アンタゴニストを、前記投与量の治療用癌ワクチン投与日または投与後約1〜3日間投与することが理解される。
【0182】
さらに他の実施形態において、PD−1アンタゴニストまたはPDL−1アンタゴニストを、前記投与量の治療用癌ワクチン投与後約2〜18日間投与することが理解される。
第2回目の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト投与の治療有効量の増加は癌治療の有効性を向上させる
図14〜17及び実施例32〜35に記載される通り、対象にTAAを含む組換えポックスウイルスを1日目及び15日目に投与した。TIM−3、LAG−3、ICOS、及びPD−1といった免疫チェックポイント分子の発現レベルを一定の間隔で測定した。1日目の治療に対し、初期の免疫チェックポイント発現増加はほとんど認められなかった。しかし、1日目の治療後約1〜2日間で免疫チェックポイント分子のT細胞発現に増加を認めた。約3日目から約12日目にかけて、免疫チェックポイント発現は劇的に増加した。発現増加は約18日目まで認められた。
【0183】
とりわけ、組換えポックスウイルスによる第二または後続治療の15日目以降、T細胞によるさらなる免疫チェックポイント分子発現増加が生じた。この免疫チェックポイント発現増加は、CD4T細胞と比較してCD8T細胞においてより顕著に認められた(
図14〜17参照)。例えば
図12に示すように、15日目におけるMVA−BN−HER−2による治療後わずかな発現減少を認めた。その後TIM−3の発現レベルは18日目に顕著に増加した。TIM−3発現結果によれば、第一の投与量と比較してTIM−3アンタゴニストの第二または後続投与量を増加することによりさらに高い治療有効性が達成される。
【0184】
図14〜17に示すように、15日目のMVA−BN−HER−2による第二の組換えポックスウイルス治療後、免疫チェックポイント分子であるICOS、PD−1、及びLAG−3の発現増加が同様に生じた。さらにこの発現増加は、第一のMVA−BN−HER2処置と比較して有意に高かった。上記発現結果によれば、免疫チェックポイントアンタゴニスト(例えば、TIM−3、PD−1、PDL−1、LAG−3)またはアゴニスト(例えば、ICOS)の投与量を増加して第二または後続組換えポックスウイルス後に癌患者に投与する。
【0185】
少なくとも一つの態様では、第二または後続治療において、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量(または量)を第一の投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと比較して高くすることにより、治療有効性の向上が達成される。これは少なくともある程度達成可能である。なぜなら第二の治療後の発現増加により、投与される免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが結合可能な基質が増え、前記免疫チェックポイント分子のブロッキングまたは活性化がより強く生じるためである。
【0186】
他の態様では、
図14〜17に示す結果より、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二または後続投与量を第一の投与量と比較して増やすことが、組換えポックスウイルス療法と併用した免疫チェックポイントアンタゴニスト治療の有効性を高めるために重要であることがわかる。この重要性は、本明細書に記載の組換えポックスウイルスによる第二の治療後の免疫チェックポイント分子発現増加期間からも裏付けられる。
【0187】
さらなる態様においては、免疫チェックポイントアンタゴニストT細胞受容体占有率(RO)を示す最近のデータをふまえると、本明細書に記載の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二または後続投与において投与量を増加することにより、治療有効性が大幅に向上する。免疫チェックポイントアンタゴニストである抗PD−1抗体の第一の投与量投与後、T細胞上における受容体占有率(RO)をFACS(CD45陽性、CD3ゲート)により測定した(データ未記載)。得られたデータは、前記免疫チェックポイントアンタゴニストであるPD−1の様々な投与量(例えば、0.1mg/kg、0.4mg/kg、1.4mg/kg、及び5mg/kg)において血流中のT細胞上のPD−1 ROのパーセンテージ(RO:0.1mg/kg=65%、RO:0.4mg/kg=84%、RO:1.4mg/kg=96%、及びRO:5mg/kg=89%)が高かったことを示す。前記血液でのRO割合を比較したところ、腫瘍に見られるT細胞のROは低かった(RO:0.1mg/kg=9%、RO:0.4mg/kg=41%、RO:1.4mg/kg=58%、及びRO:5mg/kg=65%)。
【0188】
組換えポックスウイルスと併用する免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの初回投与量の投与中、高い割合の腫瘍特異的T細胞(CD8T細胞)が、主に血液及びリンパ節といった周辺領域に見られると考えられる。血液中のT細胞上の免疫チェックポイントアンタゴニストにおけるRO増加を考慮すると、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第一の投与は低投与量においてより効果的である。組換えポックスウイルスと併用した免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二または後続投与量における有効性向上のために、腫瘍におけるT細胞上でのROが低いことから第一の用法・用量と比較して高い投与量で投与する。
【0189】
本開示の記載によれば、付加的実施形態において、本開示は、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した治療用癌ワクチンを利用したヒト癌患者の治療方法であって、(a)組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用した第一の投与を前記患者に提供すること、及び(b)治療用癌ワクチンを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用した第二の投与を前記患者に提供すること、を含み、前記第二の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの用量が、前記第一の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと比較して高い、前記方法を提供する。
【0190】
また本開示は、一連の投与を患者に提供する方法であって、一連の提供に所定の投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用する組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンの投与が含まれ、前記第二の投与における投与量が、前記第一の投与における投与量と比較して高い、前記方法を提供すると理解される。
【0191】
様々な実施形態では、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二の投与における投与量(または量)を、前記第一の投与における投与量に比べて約2〜約100倍、約3〜約100倍、約5〜約100倍、約10〜約100倍、約5〜約90倍、約10〜約80倍、約10〜約70倍、約10〜約60倍、または約10〜約50倍に増加する。好ましい実施形態では、前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて約10〜約100倍に増加する。他の好ましい実施形態において、前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて約10〜約50に増加する。さらに他のより好ましい実施形態では、前記第二の投与における投与量を約3、約10、約30、または約100倍に増加する。
【0192】
様々な付加的実施形態では、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて2〜100倍、3〜100倍、5〜100倍、10〜100倍、5〜90倍、10〜80倍、10〜70倍、10〜60倍、または10〜50倍に増加する。好ましい実施形態では、前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて10〜100倍に増加する。他のより好ましい実施形態では、前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて10〜50倍に増加する。さらに他のより好ましい実施形態では、前記第二の投与における投与量を3、10、30、または100倍に増加する。
【0193】
いくつかの例示的実施形態では、限定されるものではないが組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンと免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第一の投与に、治療投与量以下または治療有効量以下の投与量での投与が含まれ、その後に限定されるものではないが組換えポックスウイルス等の治療用癌ワクチンとの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第二または後続投与に、本明細書に記載の前記投与処方に記載の通り増加した投与量での投与が含まれると理解される。ある非限定的な例では、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの第一の投与に、約0.1mg/kg〜約1mg/kg投与量での投与が含まれる。この第一の投与後に、約3mg/kg〜約10mg/kgに増加した投与量での一つまたは複数の後続投与を伴う。
【0194】
一つの好ましい実施形態において、前記治療用癌ワクチンは、少なくとも一つのTAAを含む組換えポックスウイルスを含む。他の好ましい実施形態において、前記組換えポックスウイルスは、少なくとも一つのTAAを含むオルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスを含む。他の好ましい実施形態において、前記オルソポックスウイルスはワクシニア、MVA、またはMVA−BNを含む。別の実施形態では、前記アビポックスウイルスは、鶏痘ウイルスを含む。第一の投与量と比較して増加した第二または後続投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与により治療有効性が高められることは、実施例26〜31によってさらに実証される。
【0195】
治療用癌ワクチンは、特異的に腫瘍及び/または腫瘍細胞を標的化する患者または患者群自身の免疫システムを刺激する一つまたは複数の独自の免疫学的性質を提示するワクチンである。これらの独自の免疫学的性質は、主に腫瘍または腫瘍細胞に関連する抗原である。少なくとも一つの態様において、治療用癌ワクチンは、癌細胞増殖を遅らせるまたは止める機能を有することにより、腫瘍を縮小させ、癌再発を防ぎ、または他の治療により死滅しなかった癌細胞を除外する。
【0196】
一つの好ましい実施形態において、前記治療用癌ワクチンは、ウイルス系ワクチンである。治療用癌ワクチンとして有用なウイルスのいくつかの非限定的実施例には、ポックスウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パルボウイルス、レオウイルス、及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)が含まれる。一つのより好ましい実施形態において、治療用癌ワクチンは、ポックスウイルス系治療薬である。
【0197】
表1に現在開発中のウイルス系治療用癌ワクチンのいくつかの非限定的実施例を示す。
【0199】
別の実施形態では、治療用癌ワクチンは、酵母系ワクチンとしてもよい。Cancer Immunol Immunother.2014 Mar;63(3):225−34等参照。ある非限定的な例では、酵母系治療用癌ワクチンに、現在第II相治験中の組換え酵母−CEAワクチン(GI−6207)が含まれる。J Clin Oncol 31,2013(suppl;abstr TPS3127)参照。
【0200】
さらに他の実施形態では、治療用癌ワクチンは、細菌系ワクチンとしてもよい。ある非限定的な例では、細菌系癌ワクチンに、コーリーワクチンが含まれる。Clin Cancer Res.2012 Oct 1;18(19):5449−59参照。
【0201】
異種性プライム・ブーストにおけるブースト投与量後の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト投与は癌治療の有効性を高める
PROSTVAC(登録商標)は異種性プライム・ブースト処方からなり、PROSTVAC−V(PSA発現ワクシニアウイルス及びTRICOM
TM)の単回プライム投与後に一つまたは複数の連続ブースティング用量PROSTVAC−F(PSA発現鶏痘ウイルス及びTRICOM(商標))が投与され、本明細書に参照として組み入れるJ Clin Oncol 2010,28:1099−1105にも記載されている。
【0202】
図21〜23及び実施例40〜43に図示及び記載の通り、癌治療において、異種性PROSTVAC(登録商標)投与処方により、同一ベクターの相同性投与と比較して、PSA特異的T細胞応答の程度及び質は非常に高められる。また、上記図及び実施例により、PROSTVAC−Vによるプライミング及びPROSTVAC−Fによるブースティングにより、PSA及び標的腫瘍抗原指向性かつワクシニアベクター反指向性の高機能CD8CTL免疫応答にフォーカスするさらなる効果がもたらされることが実証される。
【0203】
少なくとも一つの態様では、一つまたは複数の投与量の組換えポックスウイルスを癌治療の一環として投与する場合、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを第二または後続投与の組換えポックスウイルスと併用することにより、より高い治療有効性が達成される。
【0204】
より具体的な態様では、本発明の一つまたは複数の投与量の組換えポックスウイルスを癌治療の一環として異種性プライム・ブースト処方の一部として投与する場合、少なくとも一つのチェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを第二または後続ブースト投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルスと併用して投与することにより、より高い治療有効性が達成される。より高い治療有効性は少なくともある程度達成される。なぜなら前記第二または後続ブースト投与量の異種性プライム・ブースト処方の投与中及び投与後で、患者の免疫T細胞応答が組換えポックスウイルスよりも腫瘍抗原にフォーカスされる。その結果、少なくとも一つの態様では、前記ブースティング投与量の投与中の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与は、腫瘍抗原に対する患者免疫応答を高める機能があり、それにより腫瘍により特異的な患者免疫応答が増加する。
【0205】
少なくとも他の態様では、異種性プライム・ブースト処方を含む癌治療の一環として、少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記第二または後続ブースト投与量の組換えポックスウイルスと併用投与することにより、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療上の利益が最大化され、かつ免疫チェックポイント治療で認められた有害な副作用が最小化される。
【0206】
本開示の記載を考慮すると、付加的実施形態において、前記本発明に、ヒト癌患者の治療方法であって、(a)限定されるものではないが少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む第一の組換えポックスウイルス等の第一の治療用癌ワクチン及び(b)限定されるものではないが少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む第二の組換えポックスウイルス等の第二の組換えポックスウイルスを前記患者に投与することを含み、前記第二の組換えポックスウイルスを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、前記方法が含まれる。別の実施形態では、前記第二の組換えポックスウイルスは、前記第一の組換えポックスウイルスと異なる。他の実施形態では、前記第二の組換えポックスウイルスは、前記第一の組換えポックスウイルスとは異なる属に由来する。
【0207】
別の実施形態では、異種性プライム・ブースト処方として、互いに異なるまたは属が異なる前記第一及び第二の組換えポックスウイルスが投与され、前記異種性プライム・ブースト処方が、a)第一のプライム用量として前記第一の組換えポックスウイルスを投与すること及びb)一つまたは複数のブースト用量として前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して前記第二の組換えポックスウイルスを投与することを含む。好ましい実施形態では、前記異種性プライムブースト処方は、PROSTVAC(登録商標)、CV301またはMVA−BN−CV301から選択される。
【0208】
さらに他の実施形態において、初回またはプライム用量の前記第一の組換えポックスウイルスまたは前記組換えポックスウイルスに免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが含まれないと理解される。
【0209】
前記第一及び第二の組換えポックスウイルスは任意のポックスウイルスであってよく限定されるものではないが、本開示に例示されるものであることがさらに理解される。前記少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)は任意のTAAであってよく限定されるものではないが、本開示に例示されるTAAであることがさらに理解される。
【0210】
付加的実施形態においては、癌患者に(a)限定されるものではないが少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む第一の組換えポックスウイルス等の第一の治療用癌ワクチン及び(b)第二の治療用癌ワクチンを含む異種性プライム・ブースト処方を投与する方法であって、前記第二の治療用癌ワクチンを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、前記方法が挙げられる。前記記載されている異種性プライム・ブースト処方が企図される。
【0211】
一つまたは複数の実施形態において、前記第二または後続投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルス投与日または投与後1、2、3、4、5、6、または7日間以内以内に少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する。好ましい実施形態では、前記第二または後続ブースト投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルス投与日または投与後1、2、3、4、5、6、または7日間以内以内に少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを異種性プライム・ブースト処方の一部として投与する。
【0212】
一つまたは複数の実施形態において、前記第二または後続投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルス投与後に、少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する。好ましい実施形態では、前記第二または後続ブースト投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルスの後に、異種性プライム・ブースト処方の一部として少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する。前記第二または後続ブースト投与量の組換えポックスウイルスの後に、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与間隔には、本開示に例示される間隔が含まれると理解される。
【0213】
第二または一つまたは複数の後続ブースト投与量の少なくとも一つのTAAをコード化する組換えポックスウイルスと併用して投与される場合、本開示に記載される投与量または濃度で少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与可能であることがさらに理解される。
【0214】
治療用組成物及びその用途
本発明はさらに、腫瘍エピトープに対する免疫学的反応の発生及び改善を誘導するまたはそれらに寄与することが可能な治療用組成物またはワクチンの作製のための本発明の前記ポックスウイルスベクターの使用に関する。よって本発明により、薬剤またはワクチンとして有用なベクターが提供される。
【0215】
その結果、本発明は、本発明の一つまたは複数の抗体、アゴニスト、またはアンタゴニストと併用される本発明のMVAベクターを含む免疫原性組成物に関する。
【0216】
よって、本発明の前記MVAベクターを癌治療のための治療用組成物の作製に使用することができる。
【0217】
本発明は、特に抗癌治療としての腫瘍の治療のために予防的及び/または治療用ワクチン接種プロトコールにおいて使用される組成物を包含する。
【0218】
一つの実施形態において、本発明は、特に限定されるものではないが乳癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、または結腸直腸癌といった癌の患者に対する投与または治療目的で使用される組成物を包含する。
【0219】
一つの実施形態において、本発明は、患者、特に乳癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、または結腸直腸癌から選択される癌の患者に対する投与または治療目的で組成物を投与することを包含する。
【0220】
付加的実施形態においては、本発明は、癌特に乳癌の患者に対する投与または治療目用途の組成物またはその組成物の使用を包含する。
【0221】
一つの実施形態において、同時または連続投与される前記組成物は、本発明のMVAベクター及び本発明の一つまたは複数の抗体、アゴニスト、またはアンタゴニストを含む。
【0222】
さらに付加的な実施形態において、本発明は、癌特に前立腺癌の患者に対する投与または治療目用途の組成物またはその組成物の使用を包含する。
【0223】
一つの実施形態において、同時または連続投与される前記組成物は、本発明のPROSTVAC(登録商標)ベクター及び本発明の一つまたは複数の抗体、アゴニストまたはアンタゴニストを含む。
【0224】
別の実施形態では、本発明は、癌の治療方法であって、(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記患者に投与することを含み、前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、前記組み合わせの前記治療効果が増大する、前記方法を包含する。
【0225】
本発明の前記様々な実施形態によると、癌治療において、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストをTAAをコード化するポックスウイルスベクターと併用した場合、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが治療上効果的な投与量は、1)前記ポックスウイルスベクターを併用しない治療上有効な投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストまたは2)治療上有効な投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独の場合と比較して、少ないもしくは減少する。このように、治療上有効な投与量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを低投与量で投与することが可能であり、それにより先行技術における治療で見られる毒性のある有害な副作用を低減または除外可能である。
【0226】
「治療有効量」とは、治療対象において所望の治療または臨床効果を達成するのに十分な組成物の量である。例えば、発現制御配列作動可能に連結した腫瘍関連抗原(TAA)核酸(限定されるものではないがCEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、tyrp1、tyrp2、またはBrachyury抗原等)を含むポックスウイルスベクターの治療有効量は、TAA−特異的免疫応答の誘発、腫瘍サイズまたは負荷の低減、腫瘍転移数の低減、癌の進行の遅延、または癌患者または癌患者集団の全生存期間延長に十分な量である。
【0227】
また例として、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量は、標的化免疫チェックポイント分子の機能阻害、標的化免疫チェックポイント分子への結合、腫瘍サイズまたは負荷の低減、腫瘍転移数の低減、癌の進行の遅延、または癌患者または癌患者集団の全生存期間延長に十分な量となるであろう。
【0228】
「治療効果」とは、対象における所望の治療または臨床効果である。癌治療における「治療効果」は、腫瘍サイズ、腫瘍量、または全身腫瘍組織量の低減、腫瘍転移数の低減、癌の進行の遅延、または癌患者または癌患者集団の全生存期間延長等に特徴付けられる。
【0229】
組換えポックスウイルスを併用した免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストによる癌治療により低用量のアンタゴニストまたはアゴニストで治療有効性が得られる
本明細書に図示及び記載のとおり、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストをTAAコード化するポックスウイルスベクターと組み合わせた場合、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが治療上効果的な投与量は、少ないもしくは減少する。様々な付加的実施形態において、本開示には、(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせをヒト癌患者に投与することが含まれる。本実施形態では、前記治療有効量以下の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、前記少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの前記治療効果の増大が達成される。
【0230】
少なくとも一つの態様において、前記治療有効量以下の投与量は、先行技術における免疫チェックポイント治療で見られる有害な副作用を最小にしつつ治療上の利益を最大とするように設定されている。
【0231】
「治療有効量以下の」とは、単独治療用または単独療法に投与される場合または他のまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与される場合に、「治療効果」という点において前記免疫チェックポイントアンタゴニストが効果的でない投与量または量である。
【0232】
一つの実施形態において、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の約99%〜約5%、約90%〜約5%、約85%〜約5%、約80%〜約5%、75%〜約5%、約70%〜約10%、約65%〜約15%、約60%〜約20%、約55%〜約25%、約50%〜約30%、または約50%〜約10%に相当する。好ましい実施形態では、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量における約99%〜約30%の減少に相当する。他の好ましい実施形態において、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量における約90%〜約30%の減少に相当する。さらに他の好ましい実施形態では、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量における約99%、約90%、または約30%の減少に相当する。
【0233】
別の実施形態では、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の99%〜5%、90%〜5%、85%〜5%、80%〜5%、75%〜5%、70%〜10%、65%〜15%、60%〜20%、55%〜25%、50%〜30%、または50%〜10%に相当する。好ましい実施形態では、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量における99%〜30%の減少に相当する。他の好ましい実施形態において、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の約90%〜約30%の減少に相当する。他の好ましい実施形態では、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量における99%、90%、または30%の減少に相当する。
【0234】
一つまたは複数の実施形態において、本明細書に記載の異種性または相同性プライム・ブースト処方の一部として、治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、少なくとも一つのTAAを含む組換えポックスウイルスと併用してもよい。
【0235】
キット
一つの実施形態において、本発明は、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含むキットを包含する。前記組換えポックスウイルス及び前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、それぞれバイアルまたは容器に収容できる。一つの実施形態において、前記組換えポックスウイルスは本明細書に記載のとおり腫瘍関連抗原(TAA)をコード化する。別の実施形態では、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストは、本明細書に記載の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストから選択される。様々な実施形態では、ワクチン接種のためのキットは、第一のバイアルのセットまたは容器の第一のワクチン接種(「プライミング」)及び第二または第三のバイアルまたは容器の第二または第三のワクチン接種(「ブースティング」)のための組換えポックスウイルス及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含む。
【0236】
一つの実施形態において、前記キットは、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせ及び癌予防のための前記組み合わせの投与の指示を含む。一つの実施形態において、前記キットは一つまたは複数の腫瘍関連マーカーの上昇が検出された場合の前記組み合わせ及び癌予防のための前記組み合わせの投与の指示を含む。
【0237】
一つの実施形態において、前記キットは、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせ及び治療有効量の前記ポックスウイルス及び治療有効量の少なくとも一つの前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する指示を含んでいてもよく、少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独、少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較して、前記ポックスウイルスを併用した前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療効果が増大する。
【0238】
別の実施形態では、前記キットは、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせ及び治療域以下の投与量の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する指示を含んでいてもよく、前記治療有効投与量(量)以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの治療効果が増大する。
【0239】
別の実施形態では、前記キットは、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせ及び前記患者に前記組換えポックスウイルス及び前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの一連の投与を提供する指示をさらに含んでいてもよく、前記指示が前記一連の投与においての第一の投与の投与量と比較して第二の投与の投与量を増加することを含む。
【0240】
別の実施形態では、前記キットは、組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせ及び組換えポックスウイルス及び少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを第二の投与を前記患者に提供する指示を含んでいてもよく、前記指示に、治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせの第一の投与を提供した後第二の投与を提供することを含み、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量を本明細書に記載の通り増加させることを含む。
【0241】
本開示により、提供される前記一つまたは複数の指示は、キット単体に組み合わせてもよいことが理解される。本明細書において提供される前記一つまたは複数の指示に、本出願において提供される一つまたは複数の前記投与処方が含まれることさらに理解される。
【0242】
組み合わせまたは薬剤の付加的実施形態
付加的実施形態においては、本開示は、ヒト癌患者治療に使用する組み合わせまたは薬剤を包含する。該組み合わせまたは薬剤には、組換えポックスウイルスベクター、前記少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含むポックスウイルスベクター、(b)PD−1アンタゴニスト、及び(c)CTLA−4アンタゴニストが含まれる。前記PD−1アンタゴニスト及び前記CTLA−4アンタゴニストに、抗PD−1アンタゴニスト抗体及び抗CTLA−4抗体がそれぞれ含まれてもよい。
【0243】
さらに付加的実施形態において、本開示に、ヒト癌患者治療に使用する組み合わせまたは薬剤であって、該組み合わせまたは薬剤は(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを前記患者に投与することを含み、前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する前記組み合わせまたは薬剤が含まれてもよい。さらに他の実施形態では、前記組み合わせまたは薬剤に、CTLA−4アンタゴニスト、PD−1アンタゴニスト、PDL−1アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはICOSアゴニストから選択される免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが含まれてもよい。前記様々な免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを一つまたは複数の抗体と組み合わせ可能であることが理解される。
【0244】
別の実施形態では、本開示に、ヒト癌患者の全生存期間を増加するために使用する組み合わせまたは薬剤であって、前記組み合わせまたは薬剤が(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含むポックスウイルス、(b)PD−1アンタゴニスト、及び(c)CTLA−4アンタゴニストを含む、前記組み合わせまたは薬剤が含まれてもよい。前記PD−1アンタゴニスト及び前記CTLA−4アンタゴニストに、抗PD−1アンタゴニスト抗体及び抗CTLA−4抗体がそれぞれ含まれてもよい。
【0245】
さらに他の実施形態では、本開示に、ヒト癌患者の全生存期間を増加するために使用する組み合わせまたは薬剤であって、前記組み合わせまたは薬剤が(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含むポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含み、前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記組み合わせまたは薬剤が含まれていてもよい。
【0246】
さらに付加的実施形態において、本開示に、ヒト癌患者の全生存期間を増加するために使用する組み合わせまたは薬剤であって、前記組み合わせまたは薬剤が(a)治療有効量の少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含み、前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、前記少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの前記治療効果が増大する、前記組み合わせまたは薬剤が含まれてもよい。前記組み合わせまたは薬剤に、CTLA−4アンタゴニスト、PD−1アンタゴニスト、PDL−1アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはICOSアゴニストから選択される免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが含まれていてもよいことが理解される。前記様々な免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを一つまたは複数の抗体と組み合わせ可能であることが理解される。
【0247】
さらに付加的実施形態において、本開示に、ヒト癌患者の全生存期間を増加するために使用する組み合わせまたは薬剤であって、前記組み合わせまたは薬剤が(a)治療有効量の少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量のまたは治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含み、前記治療有効量のまたは治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが前記治療有効量の組換えポックスウイルスの後に投与され、前記組換えポックスウイルスと組み合わせた治療有効量のまたは治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記組み合わせまたは薬剤が含まれていてもよい。
【0248】
さらに他の実施形態において、本開示に、ヒト癌患者の治療に使用する組み合わせまたは薬剤であって、前記組み合わせまたは薬剤の少なくとも第一及び第二の投与量において、各投与量に(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが含まれ、前記第二の投与量の治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記第一の投与量の治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと比較して増加し、前記ポックスウイルスと組み合わせた前記治療有効量または治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、治療有効量または治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記組み合わせまたは薬剤が含まれていてもよい。
【0249】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の前記組み合わせまたは薬剤における前記TAAをコード化する組換えポックスウイルスを、PROSTVAC(登録商標)とすることができる。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の前記組み合わせまたは薬剤における前記TAAをコード化する組換えポックスウイルスを、CV301とすることができる。
【0250】
さらなる付加的実施形態において、本開示に、医薬組成物または薬剤の作製における(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス、(b)PD−1アンタゴニスト;及び(c)CTLA−4アンタゴニストの使用が含まれてもよい。前記PD−1アンタゴニスト及び前記CTLA−4アンタゴニストに、抗PD−1アンタゴニスト抗体及び抗CTLA−4抗体がそれぞれ含まれてもよい。付加的実施形態においては、前記開示された医薬組成物または薬剤を、前記ヒト癌患者の治療に使用可能である。
【0251】
さらに付加的実施形態において、本開示に、医薬組成物または薬剤の作製における(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの使用において、前記ポックスウイルスベクターと組み合わせた前記治療有効量の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記使用が含まれていてもよい。
【0252】
さらに付加的実施形態において、本開示に、医薬組成物または薬剤の作製における(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの医薬組成物または薬剤の使用において、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの治療効果が増大する、前記使用が含まれてもよい。前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、CTLA−4アンタゴニスト、PD−1アンタゴニスト、PDL−1アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはICOSアゴニストから選択可能であることが理解される。前記様々な免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、一つまたは複数の抗体と組み合わせ可能であることが理解される。
【0253】
さらに付加的実施形態において、本開示に、医薬組成物または薬剤の作製における(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの医薬組成物または薬剤の使用において、前記治療有効量のまたは治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが前記治療有効量の組換えポックスウイルスの後に投与され、前記組換えポックスウイルスと組み合わせた治療有効量のまたは治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、治療有効量または治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記使用が含まれていてもよい。
【0254】
さらに他の実施形態において、本開示に、医薬組成物または薬剤の作製における少なくとも第一及び第二の用法・用量の使用において、各用法・用量が(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含み、治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記第二の投与量を治療有効量または治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記第一の投与量と比較して増加し、前記ポックスウイルスと組み合わせた前記治療有効量または治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、治療有効量または治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、増大した治療効果を有する、前記使用が含まれていてもよい。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.ヒト癌患者の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含むポリペプチドをコード化する組換えポックスウイルスを前記患者に投与すること、および
(b)PD−1アンタゴニスト及びCTLA−4アンタゴニストを前記患者に投与すること、を含む前記方法。
2.前記PD−1アンタゴニスト及び前記CTLA−4アンタゴニストに、抗PD−1アンタゴニスト抗体及び抗CTLA−4抗体がそれぞれ含まれる、上記1記載の方法。
3.前記PD−1アンタゴニスト及びCTLA−4アンタゴニストが、可溶性融合タンパク質受容体、ペプチド、小分子、またはそれらの組み合わせを含む、上記1記載の方法。
4.前記ポックスウイルスがオルソポックスウイルスである、上記1〜3記載の方法。
5.前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスである、上記4記載の方法。
6.前記ワクシニアウイルスが修飾ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)である、上記5記載の方法。
7.前記MVAがMVA−BNである、上記6記載の方法。
8.前記ポックスウイルスがアビポックスウイルスである、上記1〜3記載の方法。
9.前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記8記載の方法。
10.前記少なくとも一つのTAAが、癌胎児性(CEA)、mucin 1, cell surface associated(MUC−1)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER−2)、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(tyrp1)、チロシン関連タンパク質1(tyrp2)、またはBrachyury抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
11.前記少なくとも一つのTAAがCEA抗原及びMUC−1抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
12.前記少なくとも一つのTAAがCEA抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
13.前記少なくとも一つのTAAがMUC−1抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
14.前記少なくとも一つのTAAがPAP抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
15.前記少なくとも一つのTAAがPSA抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
16.前記少なくとも一つのTAAがHER−2抗原である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
17.前記少なくとも一つのTAAがBrachyuryである、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
18.前記少なくとも一つのTAAがサバイビンである、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
19.前記少なくとも一つのTAAがtyrp1である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
20.前記少なくとも一つのTAAがtyrp2である、上記1〜9のいずれか一項に記載の方法。
21.前記癌治療が乳癌、肺癌、頭頸部癌、甲状腺、メラノーマ、胃癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、メラノーマ、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、または結腸直腸癌に対する治療である、上記1−20記載の方法。
22.前記癌治療が前立腺癌に対する治療である、上記1〜21記載の方法。
23.前記癌治療が乳癌に対する治療である、上記1〜21記載の方法。
24.前記癌治療が結腸直腸癌に対する治療である、上記1〜21記載の方法。
25.前記癌治療が肺癌に対する治療である、上記1〜21記載の方法。
26.前記癌治療が卵巣癌に対する治療である、上記1〜21記載の方法。
27.ヒト癌患者における癌の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む治療有効量の組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを前記患者に投与することを含み、
前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルスベクター単独、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較した場合、前記組み合わせの前記治療効果が増大する、前記方法。
28.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストがCTLA−4アンタゴニストを含む、上記27記載の方法。
29.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストがさらにPD−1アンタゴニストを含む、上記28記載の方法。
30.前記CTLA−4アンタゴニスト及びPD−1アンタゴニストがそれぞれ抗CTLA−4抗体及び抗PD−1抗体である、上記29記載の方法。
31.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの少なくとも一つが、前記患者の体重あたり約1mg/kg〜約10mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
32.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり約1mg/kg〜約3mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
33.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重に対し1mg/kg〜10mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
34.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重に対し1mg/kg〜3mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
35.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり約10mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
36.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり約3mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
37.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり約1mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
38.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり10mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
39.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり3mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
40.前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、前記患者の体重あたり1mg/kgの量で投与される、上記27〜30記載の方法。
41.前記治療有効量の組換えポックスウイルス及び治療有効量の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用して、相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として投与する、上記27−40記載の方法であって、
前記相同性プライム・ブースト処方が、第一のプライム用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の後続ブースト用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した同組換えポックスウイルスを含み、
前記異種性プライム・ブースト処方が、第一のプライム用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の後続ブースト用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した同組換えポックスウイルスを含む、前記方法。
42.相同性プライム・ブースト処方の一部として、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルスを投与し、前記第一のプライム用量及び前記一つまたは複数の後続ブースト用量での組換えポックスウイルスがオルソポックスウイルスを含む、上記41記載の方法。
43.前記オルソポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、MVA、またはMVA−BNから選択される、上記42記載の方法。
44.前記少なくとも一つのTAAがHER2である、上記42〜43記載の方法。
45.異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルスを投与し、前記第一のプライム用量での組換えポックスウイルスがオルソポックスウイルスを含みかつ前記一つまたは複数のブースト用量での前記組換えポックスウイルスがアビポックスウイルスを含む、上記41記載の方法。
46.前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスであり、前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記45記載の方法。
47.前記異種性プライム・ブースト処方がPROSTVACまたはCV301である、上記41、45〜46記載の方法。
48.ヒト患者における癌治療キットであって、(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含むポリペプチドをコード化する組換えポックスウイルス、(b)PD−1アンタゴニスト、及び(c)CTLA−4アンタゴニストを含む、前記キット。
49.前記PD−1アンタゴニスト及び前記CTLA−4アンタゴニストに、抗PD−1アンタゴニスト抗体及び抗CTLA−4抗体がそれぞれ含まれる、上記48のキット。
50.前記少なくとも一つのTAAが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(tyrp1)、チロシン関連タンパク質2(tyrp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記48〜49記載のキット。
51.前記少なくとも一つのTAAがPSAである、上記48〜49記載のキット。
52.前記少なくとも一つのTAAがMUC−1及びCEAである、上記48〜49記載のキット。
53.前記ポックスウイルスが、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスである、上記48〜52記載のキット。
54.前記オルソポックスウイルスが、ワクシニア、MVA、またはMVA−BNから選択される、上記53のキット。
55.前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記53のキット。
56.前記組換えポックスウイルス及び前記PD−1アンタゴニスト及びCTLA−4アンタゴニストの組み合わせが、一つまたは複数の許容可能な希釈剤、緩衝液、賦形剤、または担体と配合される、上記48〜55のキット。
57.ヒト患者における癌治療キットであって、
(a)治療有効量の少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス、
(b)治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト、及び
(c)治療有効量の前記ポックスウイルス及び治療有効量の少なくとも一つの前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する指示を含み、
少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独、少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストとの併用投与と比較して、前記ポックスウイルスを併用した前記治療有効量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療効果が増大する、前記キット。
58.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記57のキット。
59.前記少なくとも一つのTAAが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(tyrp1)、チロシン関連タンパク質2(tyrp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記57〜58記載のキット。
60.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストに先行して前記組換えポックスウイルスを投与する指示をさらに含む、上記48〜59記載のキット。
61.治療域以下の投与量の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する指示をさらに含み、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、少なくとも一つのTAAを含む前記ポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの治療効果が増大する、上記48〜59記載のキット。
62.前記患者に前記組換えポックスウイルス及び前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの一連の投与を提供する指示をさらに含み、前記指示が前記一連の投与においての第一の投与の投与量と比較して第二の投与の投与量を増加することを含む、上記48〜59記載のキット。
63.相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記治療有効量の組換えポックスウイルスを前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する指示をさらに含む、上記48〜62記載のキット。
64.前記キットにPROSTVAC(登録商標)またはCV301が含まれる、上記63のキット。
65.前記キットにMVA−BN−HER2が含まれる、上記63のキット。
66.ヒト癌患者における癌の治療方法であって、
(a)治療有効量の少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルス及び(b)治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを前記患者に投与することを含み、
前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストにより、前記少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独、前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独、または他の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの併用投与と比較して、前記組み合わせの前記治療効果が増大する、前記方法。
67.前記治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の約75%〜約5%に相当する、上記66記載の方法。
68.前記治療有効量以下の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の約50%〜約10%に相当する、上記66記載の方法。
69.前記治療有効量以下の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の75%及び5%に相当する、上記66記載の方法。
70.前記治療有効量以下の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療有効量の50%〜10%に相当する、上記66記載の方法。
71.相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記治療有効量の組換えポックスウイルスを免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、上記66〜69記載の方法。
72.前記異種性プライム・ブーストにPROSTVACまたはCV301が含まれる、上記71記載の方法。
73.前記相同性プライム・ブースト処方にMVA−BN−HER2が含まれる、上記71記載の方法。
74.ヒト癌患者における癌の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルスの投与量を前記患者に投与する、及び
(b)少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量を前記患者に投与することを含み、
前記組換えポックスウイルスの前記投与量の投与後に前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記投与量を投与する、前記方法。
75.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストポックスウイルスの前記投与量を、前記組換えポックスウイルスの前記投与量投与後約1〜約13日間投与する、上記74記載の方法。
76.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記投与量を、前記組換えポックスウイルスの前記投与量投与後約4〜約12日間投与する、上記74記載の方法。
77.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを、前記組換えポックスウイルスの前記投与量投与後1〜13日間投与する、上記74記載の方法。
78.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記投与量を、前記組換えポックスウイルスの前記投与量投与後4〜12日間投与する、上記74記載の方法。
79.前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含むことにより、前記少なくとも一つのTAAを含むポックスウイルス単独もしくは前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独投与と比較して、前記組換えポックスウイルスを併用した前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記治療効果が増大する、上記74〜78記載の方法。
80.上記74〜79記載の方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルスの後続投与量を前記患者に投与すること、及び
(b)少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの後続投与量を前記患者に投与すること、をさらに含み、
前記組換えポックスウイルスの後続投与量投与後に、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの後続投与量を投与する、前記方法。
81.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記後続投与量を、前記少なくとも一つのチェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの先行投与量に比べて増加させる、上記74〜80記載の方法。
82.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記74〜81記載の方法。
83.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記74〜81記載の方法。
84.前記少なくとも一つのTAAがCEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(trp1)、チロシン関連タンパク質2(trp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記74〜81記載の方法。
85.前記少なくとも一つのTAAがPSAである、上記74〜84記載の方法。
86.前記少なくとも一つのTAAがMUC−1及びCEAである、上記74〜84記載の方法。
87.相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記組換えポックスウイルスを前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、上記74〜84記載の方法。
88.前記異種性プライム・ブーストがPROSTVACまたはCV301を含む、上記87記載の方法。
89.前記相同性プライム・ブースト処方がMVA−BN−HER2を含む、上記87記載の方法。
90.免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した免疫療法を利用したヒト癌患者の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルスを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用した第一の投与を前記患者に提供すること、及び
(b)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルスを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用した第二の投与を前記患者に提供すること、を含み、
前記第二の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの用量が、前記第一の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと比較して高い、前記方法。
91.前記第一の投与における少なくとも一つのチェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが治療有効量以下の投与量である、上記90記載の方法。
92.前記少なくとも一つのチェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記90〜91記載の方法。
93.免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した免疫療法を利用したヒト癌患者の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む組換えポックスウイルスを投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用する一連の投与を患者に提供することを含み、
前記第二の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量が、前記第一の投与における前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量と比較して高い、前記方法。
94.前記第一の投与における少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記投与量が、治療有効量以下の投与量である、上記93記載の方法。
95.前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて約2〜約100倍に増加する、上記90〜94記載の方法。
96.前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて約10〜約100倍に増加する、上記90〜94記載の方法。
97.前記第二の投与における投与量を、前記第一の投与における投与量に比べて約30〜約100倍に増加する、上記90〜94記載の方法。
98.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記90〜94記載の方法。
99.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記90〜98記載の方法。
100.前記少なくとも一つのTAAが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(trp1)、チロシン関連タンパク質2(trp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記90〜98記載の方法。
101.相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルスを投与する上記90−100の方法であって、
前記相同性プライム・ブースト処方が、第一のプライム用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の後続ブースト用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した同組換えポックスウイルスを含み、および
前記異種性プライム・ブースト処方が、第一のプライム用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルス及び一つまたは複数の後続ブースト用量の前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した異なる組換えポックスウイルスを含む、前記方法。
102.相同性プライム・ブースト処方の一部として、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用した前記組換えポックスウイルスを投与し、前記第一のプライム用量及び前記一つまたは複数の後続ブースト用量の組換えポックスウイルスがオルソポックスウイルスを含む、上記101記載の方法。
103.前記オルソポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、MVA、またはMVA−BNから選択される、上記102記載の方法。
104.前記少なくとも一つのTAAがHER2である、上記102〜103記載の方法。
105.異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して前記組換えポックスウイルスを投与し、前記第一のプライム用量の組換えポックスウイルスがオルソポックスウイルスを含み、一つまたは複数の前記ブースト用量の前記組換えポックスウイルスがアビポックスウイルスを含む、上記101記載の方法。
106.前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスであり、前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記105記載の方法。
107.前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルス、MVA、またはMVA−BNであり、前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記105記載の方法。
108.前記異種性プライム・ブースト処方がPROSTVACまたはCV301である、上記101、105−106記載の方法。
109.ヒト癌患者の治療方法であって、
(a)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む第一の組換えポックスウイルス及び(b)少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)を含む第二の組換えポックスウイルスを前記患者に投与することを含み、
前記第二の組換えポックスウイルスを少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与する、前記方法。
110.前記第二の組換えポックスウイルスの後に前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが投与される、上記109記載の方法。
111.前記少なくとも一つのチェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記109〜110記載の方法。
112.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記109〜110記載の方法。
113.前記少なくとも一つのTAAが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(trp1)、チロシン関連タンパク質2(trp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記109〜112記載の方法。
114.異種性プライム・ブースト処方の一部として、互いに異なる前記第一及び第二の組換えポックスウイルスが投与され、
前記異種性プライム・ブースト処方が、a)第一のプライム用量として前記第一の組換えポックスウイルスを投与すること及びb)一つまたは複数のブースト用量として前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して前記第二の組換えポックスウイルスを投与することを含む、上記109〜113記載の方法。
115.前記第一の組換えポックスウイルスがオルソポックスウイルスを含み、前記第二の組換えポックスウイルスがアビポックスウイルスを含む、上記114記載の方法。
116.前記オルソポックスウイルスがワクシニアウイルスであり、前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記115記載の方法。
117.前記異種性プライム・ブースト処方がPROSTVACまたはCV301である、上記116記載の方法。
118.前記オルソポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、MVA、またはMVA−BNから選択され、前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、上記115記載の方法。
119.前記少なくとも一つのTAAがCEA及びMUC−1である、上記118記載の方法。
120.ヒト癌患者における癌の治療方法であって、
(a)投与量の治療用癌ワクチンを前記患者に投与すること、及び
(b)投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを前記患者に投与すること、を含み、
前記投与量の治療用癌ワクチンの後に前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する、前記方法。
121.前記治療用癌ワクチンがポックスウイルスである、上記120記載の方法。
122.前記ポックスウイルスが、少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)が含まれる組換えポックスウイルスである、上記120記載の方法。
123.前記投与量の前記治療用癌ワクチンの投与後約2〜約16または約4〜12日後に前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを投与する、上記120〜122記載の方法。
124.前記投与量の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、治療有効量以下の少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを含むことにより、前記治療用癌ワクチン単独または前記治療有効量以下の前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト単独投与と比較して、前記治療用癌ワクチンを併用した前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの治療効果が増大する、上記120〜123記載の方法。
125.上記120〜124記載の方法であって、
(a)治療用癌ワクチンの後続投与量を前記患者に投与すること、及び
(b)少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの後続投与量を前記患者に投与することをさらに含み、
前記治療用癌ワクチンの後続投与量の後に前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの後続投与量を投与する、前記方法。
126.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの前記後続投与量を、前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの先行投与量に比べて増加させる、上記120〜125記載の方法。
127.前記少なくとも一つの免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストが、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、TIM−3アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト、ICOSアゴニスト、またはそれらの組み合わせから選択される、上記120〜126記載の方法。
128.前記少なくとも一つのTAAが、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(trp1)、チロシン関連タンパク質2(trp2)、Brachyury抗原、またはそれらの組み合わせである、上記122〜127記載の方法。
129.相同性または異種性プライム・ブースト処方の一部として、前記免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して前記治療用癌ワクチンが投与される、上記120〜128記載の方法。
130.前記異種性プライム・ブーストがPROSTVACまたはCV301を含む、上記129記載の方法。
131.前記相同性プライム・ブースト処方がMVA−BN−HER2を含む、上記129記載の方法。
132.ヒト癌患者の全生存期間を増加する方法であって、上記1〜131の記載に従って組換えポックスウイルスベクター及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせを投与することを含む、前記方法。
【実施例】
【0255】
実施例1
MVA−BN−mHER2のコンストラクション
培養物の同時感染及びトランスフェクションにより、ウイルスゲノム及び組換えプラスミド間の相同組換えを生じさせた。インサート担持ウイルスを単離し特徴付けを行い、ウイルス株を作製した。
【0256】
プラスミドpBN146は、MVA−BN(14L及び15Lオープンリーディングフレーム)にも存在する配列を有する。mHER2配列をMVA−BN配列間に挿入し、MVA−BNウイルスゲノムへの組換えを行った。こうしてmHER2配列をポックスウイルスプロモーター、具体的にはウシポックスウイルスA型封入体遺伝子プロモーターの下流に含むように、プラスミドを構築した。プラスミドは、合成ワクシニアウイルスプロモーター(Ps)、薬剤耐性遺伝子(グアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、Ecogpt)、内部リボソーム侵入部位(IRES)、及び強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)を含む選択カセットも有していた。両方の選択遺伝子(gpt及びEGFP)をシングルバイシストロニックトランスクリプトによりコード化した。
【0257】
前記HER−2配列を、破傷風毒素エピトープp2及びp30をコード化する核酸配列を付加して修飾することにより免疫応答を高めた。MVA−BNゲノムにmHER2を挿入後、前記ウイルス「挿入領域」は以下の構造を有していた。
ATIプロモーター−mHER2配列−Psプロモーター−gpt−IRES−EGFP。前記細菌組換えプラスミドpBN146内で、前記挿入領域は、MVA−BN I4L遺伝子間領域配列(F1及びF2)に隣接していた。前記前記コンストラクトの塩基配列を以下に示す。
【0258】
【表2】
【0259】
HER2開始及び停止コドンを太字で示す。フランキング配列をイタリック体で示す。
前記コード化されたmHER2ポリペプチドの翻訳配列を以下に示す。
【0260】
【表3】
【0261】
破傷風毒素エピトープp2及びp30配列を太字で示す。
【0262】
MVA−BNをCEF培養物に接種し、pBN146プラスミドDNAによりトランスフェクトした。次に、これらの細胞培養の試料を選択薬を含有する培地におけるCEF培養物に接種し、EGFP−発現ウイルスクローンをプラーク精製により単離した。前記選択薬及び発現されたEGFPの存在下で増殖するウイルス株を、MVA−BN−mHER2とした。MVA−BN−mHER2の生成及び前記ウイルス株の作製では、5回のプラーク精製を含む12回の連続継代を行った。
【0263】
MVA−BN−mHER2を、選択薬の非存在下でCEF細胞培養物で継代した。選択薬の非存在下で、前記挿入配列から前記選択遺伝子をコード化する領域、gpt及びEGFP、及び前記関連プロモーター(選択カセット)の喪失が起こった。選択カセットの喪失に至った組換えは、F1I4L領域及び該領域のサブセクションである、プラスミドpBN146の前記選択カセットに隣接する前記F1リピート(F1rpt)に媒介される。前記複製配列は組換えを介在するように含まれ、その結果前記選択カセットの喪失が起こり、前記I4L遺伝子間領域に挿入された前記mHER2配列のみ残される。
【0264】
前記選択カセットを持たないプラーク精製ウイルスを作製した。作製に際し、5回のプラーク精製を含む15回の連続継代を行った。
【0265】
MVA−BN−mHER2株における前記mHER2配列の存在及び親MVA−BNウイルスの非存在をPCR分析により確認し、ネステッドPCRを用いて前記選択カセット(gpt及びEGFP遺伝子)の有無を検証した。
【0266】
mHER2タンパク質の発現がMVA−BN−mHER2を接種した細胞においてインビトロで実証された。
【0267】
実施例2
MVA−BN−mHER2及び抗CTLA4での処置によるIFNγの増加
メスBALB/cマウス(6〜8週齢、〜20g)はSimonsen Laboratories(カリフォルニア州ギルロイ)より購入した。1日目に、実験用肺転移モデルとして、マウスに肺に腫瘍を形成するCT26−HER−2細胞(5.0×10
4個)を含む300μLのDPBSを経静脈的に移植した。
【0268】
以下の抗体はBio X Cell(ニューハンプシャー州ウエスト・レバノン)から購入した:抗ICOSアゴニスト抗体(クローン17G9)、抗CTLA−4(9D9)、抗PD−1(RMP1−14)、及び抗LAG−3(C9B7W)。特に記載のない限り3日目及び17日目に、各抗体をマウス1匹あたり200μg含有する100μLのPBSを腹腔内注射した。特に記載のない限り4日目及び18日目に、ウイルス治療としてマウスに7.1μLの1.0×10
7Inf.U.MVA−BN−HER2(Bavarian Nordic[BN]製造,マルティンスリート、ドイツ)を乱切により投与した。
【0269】
25日目に、フローサイトメトリー分析のために全血、腫瘍/肺または脾臓をプールした(4マウス/群)。脾臓を2枚のすりガラス板で圧迫し、赤血球をACK溶解緩衝液(Life Technologies、ニューヨーク州グランドアイランド)で溶解することにより脾細胞を調製した。肺及び関連腫瘍を、〜1〜2mm
3サイズのダイス状の小片にカットしてさらに消化し、10%FBS、50U/mLDNAseI、及び250U/mLCollagenaseI(Worthington Biochemical Corporation、ニュージャージー州レイクウッド)含有DMEMで単細胞懸濁液とし37℃で1時間処理した。前記肺及び全血の両方の赤血球をRBC Lysis Buffer(eBiosceince)で溶解した。
【0270】
以下のタンパク質に対する抗体を購入した:CD3e(500A2)、CD4(RM4−5)、CD8a(53−6.7)、CD107a(1D4B)、IFN−γ(XMG1.2)(BD Bioscience、カリフォルニア州サンノゼ);CD3e(145−2C11)、IL−2(JES6−5H4)、LAG−3(C9B7W)、PD−1(CD279、29F.1A12)、Tim−3(RMT3−23)、TNF−α(MP6−XT22)(BioLegend、カリフォルニア州サンディエゴ);またはICOS(7E.17G9)、CD16/CD32(93)(eBioscience、カリフォルニア州サンディエゴ)。
【0271】
脱顆粒T細胞を特定するために、脾細胞(2×10
6細胞/ウェル)または腫瘍/肺(1×10
6細胞/ウェル)の単細胞懸濁液をRPMI−10(10%FBS、1%Pen−strep、及び0.1%β−メルカプトエタノール)に再懸濁し、抗CD107a抗体及びGolgi Stop(BD Bioscience)の存在下で37℃で一晩再刺激を行った。以下に記載のペプチドを再刺激に使用した:MVA E3L及びF2L(VGPSNSPTF及びSPGAAGYDL、各1μM)、HER2 p63(TYLPTNASL、1μM)、HER2 ECDオーバーラッピングペプチドライブラリー(HER2OPL、1μM)、及びPSA(HPQKVTKFML、1μM)(5,9−11)。5μg/mLのコンカナバリンA(ConA)を陽性対照として用いた。翌日、細胞を洗浄して抗CD16/CD32抗体でブロッキングを行い表面マーカーで染色した。その後細胞を洗浄し、BD Cytofix/Cytoperm Bufferで固定/透過処理し、細胞内のIFN−γを染色した。
【0272】
前記抗CD107a抗体を使わずGolgiStop及びGolgiPlugを添加して細胞内IFN−γ、IL−2、及びTNF−αを染色した以外は上述の通り、脾細胞の細胞内サイトカイン染色をさらに行った。
【0273】
全てのFACS試料をBD LSRIIまたはFortessaにより得てFlowJo version9.6.2(TreeStar Inc.、オレゴン州アシュランド)により分析した。
【0274】
全ての統計学的分析をGraphPad Prism version6.01 for Windows(GraphPad Software、カリフォルニア州ラホヤ)を用いて行った。
【0275】
図1に結果を示す。腫瘍抗原特異的脱顆粒細胞(HER2 p63 CD107陽性IFNγ陽性)は、MVA−BN−HER2及びCTLA−4併用療法で処置したマウスの腫瘍/肺及び脾臓で増加した。ウイルス特異的脱顆粒細胞(MVA E3L F2L CD107陽性IFNγ陽性)は、MVA−BN−HER2で処置したマウスの腫瘍/肺及び脾臓の両方で高値を示した。
【0276】
実施例3
MVA−BN−mHER2及び抗CTLA4での処置によるIFNγ及びサイトカイン産生の増加
MVA−BN−HER2での処置により、脾臓における腫瘍抗原及びウイルス特異的T細胞の規模及び質が高められた。実施例2に記載の通り、マウスにCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4で処置した。25日目に、腫瘍/肺または脾臓をプールし(4マウス/群)一晩再刺激を行ってウイルス及び腫瘍抗原特異的応答を測定した。
【0277】
図2に結果を示す。A)円グラフはCD8陽性T細胞100万個あたりのIFNγ陽性細胞数を反映するよう重み付けされた区分を示す。B)IFNγMFIは、併用両方により腫瘍抗原特異的(HER2p63)多官能性T細胞とともに増加している。
【0278】
実施例2及び3の両方において、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4の組み合わせによる処置の結果、抗原及びウイルス特異的T細胞の数及び質が高められた。さらに、前記組み合わせ治療により、腫瘍に存在する抗原及びウイルス特異的T細胞の数が増加した。
図1及び2に示されるように、腫瘍部位における抗原及びウイルス特異的T細胞の増加は、MVA−BN−HER2または抗CTLA−4治療の単独処置を上回る改善を示した。このような抗原及びウイルス特異的T細胞の量及び特異性に関する増加に基づいて、より優れた効果的なヒト癌治療を提供できる。
【0279】
さらに
図2に示すとおり、MVA−BN−HER2はIFNγを産生する腫瘍抗原特異的T細胞を誘導する。ウイルスがIFNγを分泌するTIL(腫瘍浸潤リンパ球)を誘導したことにより腫瘍細胞上でのPD−L1の増加に至ったと思われ、ウイルス治療の併用による上記経路の封鎖を裏付けることが本開示により理解される。
【0280】
実施例4
実施例2に記載のとおりマウスに経静脈的にCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4で処置した。
****p<0.0001、ログ・ランク検定。結果:
図3に示すように、上記の結果、MVA−BN−HER2または抗CTLA−4単独での癌の治療と比較して、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4による治療で対象の全生存率が有意に増加することが実証された。
【0281】
実施例5
MVA−BN−HER2は25日目までに顕著に肺腫瘍負荷を低減する
実施例2に記載のとおりマウスに経静脈的にCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4で処置した。A)マウスを安楽死させ気管からトリパンブルーをかん流した。肺を取り出して過酸化水素に短時間浸し、PBSで洗浄した。未処置及び抗CTLA−4処置マウスでは、小さな腫瘍塊が観察された。MVA−BN−HER2で処置したマウスは、肺に腫瘍は観察されなかった。スケールバーは1cmに相当。B)25日目の肺重量。
****p<0.0001、Dunnettの多重比較検定による一元配置分散分析。
【0282】
結果:
図4に示すように、上記の結果、癌の治療として未処置または抗CTLA−4単独処置と比較して、MVA−BN−HER2単独処置または抗CTLA−4併用処置により、25日目までに有意に全身腫瘍組織量が低下したことが実証された。
【0283】
実施例6
MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4治療により全生存率が増加する
実施例2に記載のとおりマウスに経静脈的にCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4で処置した。マウスに200μg(A、10mg/kg)、66μg(B、3mg/kg)、または22μg(C、1mg/kg)の抗CTLA−4を含む100μLのPBSを4日目及び18日目に腹腔内投与した。
****p<0.0001、ログ・ランク検定。
【0284】
結果:
図5に示すように、上記の結果、未処置または抗CTLA−4単独処置と比較して、MVA−BN−HER2に抗CTLA−4を併用したことにより、全生存率が各投与量濃度で増加したことが実証された。
【0285】
実施例7
MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4は腫瘍負荷を低減する
固形腫瘍モデルにおいて、メスBALB/cマウスにCT26−HER−2細胞を1日目に移植した(1.0×10
5個、背面脇腹に皮内投与)。1日目及び15日目に、マウスをMVA−BN−HER2(100μLのTBSに1E7Inf.U.含有、尾基部に皮下投与)及び22μgの抗CTLA−4(1mg/kg)で処置した。腫瘍を週2回測定して腫瘍容積を以下の式により求めた:腫瘍容積(mm3)=(長さ×幅2)/2。
【0286】
結果:
図6に示すように、上記の結果、他の治療と比較して、MVA−BN−HER2と低用量抗CTLA−4との併用によって全身腫瘍組織量が20日目までに有意に減少したことが実証された。
****p<0.0001、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0287】
実施例8
MVA−BN−HER2及び抗PD−1治療
実施例2に記載のとおりマウスに経静脈的にCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに200μg(A、10mg/kg)、66μg(B、3mg/kg)、または22μg(C、1mg/kg)の抗PD−1を含有する100μLのPBSを4日目及び18日目に腹腔内投与した。
****p<0.0001、
*p<0.05、ns=ログ・ランク検定による有意差なし。
【0288】
結果:
図7は、抗PD−1を併用したMVA−BN−HER2の結果を示す。
【0289】
実施例9
MVA−BN−HER2と抗CTLA−4及び抗1PD−1との組み合わせにより低投与量での全生存率が上昇する
実施例2に記載のとおりマウスに経静脈的にCT26−HER−2細胞(5×10
4個)を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体200μg(A、10mg/kg)、66μg(B、3mg/kg)、または22μg(C、1mg/kg)含有する100μLのPBS(各抗体)を3日目及び17日目に腹腔内投与した。
****p<0.0001、ログ・ランク検定。
【0290】
結果:
図8に示すように、上記の結果、MVA−BN−HER2または抗CTLA−4及び抗PD−1単独での処置による癌の治療と比較して、MVA−BN−HER2と抗CTLA−4及び抗PD−1との併用によって、各投与量濃度における対象の全生存率が有意に上昇したことが実証された。より重要な点は、MVA−BN−HER2または抗CTLA−4及び抗PD−1単独での処置と比較して、抗CTLA−4及び抗PD−1を併用したMVA−BN−HER2とによって体重あたり3mg/kg及び1mg/kgの低投与量の抗体で生存率が上昇した。
【0291】
実施例10
抗CTLA−4及び抗PD−1を併用したMVA−BN−CV301により全生存率が上昇する
メスC57/BL6マウス(6−8週齢、〜20g、Simonsen Laboratories、カリフォルニア州ギルロイ)に腫瘍を形成するMC38−MUC1細胞(1.0×10
6個)を含有する300μLのDPBSを1日目に経静脈的に移植した。4日目及び18日目にマウスにMVA−BN−CV301(4E5Inf.U.前記尾基部上部に皮下投与)を投与し、抗CTLA−4及び抗PD−1(各200μg)を腹腔内に投与した。
【0292】
結果:
図9に示すように、上記の結果、MVA−BN−CV301または抗CTLA−4及び抗PD−1単独での処置による癌の治療と比較して、抗CTLA−4及び抗PD−1を併用したMVA−BN−CV301によって対象の全生存率が有意に上昇したことが実証された。
【0293】
実施例11
PROSTVAC及び抗体で処置したマウスにおける抗腫瘍応答の誘導
オスBALB/cマウス(6−8週齢、〜20g、Simonsen Laboratories、カリフォルニア州ギルロイ)に、固形腫瘍を形成するE6細胞(1.5×10
5個、背面脇腹に皮内投与)を1日目に移植した。マウスを1日目にPROSTVAC−Vで処置し(2E7Inf.U.、尾基部に皮下投与)、8日目及び15日目にPROSTVAC−Fで処置した(1E8Inf.U.、尾基部に皮下投与)。マウスに抗PD−1(200μg)を1日目及び15日目に腹腔内投与した。腫瘍を週2回測定して腫瘍容積を以下の式で求めた:腫瘍容積(mm3)=(長さ×幅2)/2。
【0294】
実施例12
PROSTVAC及び抗PD−1処置マウスにおける抗腫瘍応答の誘導
実施例11に記載の通りマウスにE6腫瘍を皮内移植し、PROSTVAC及び抗PD−1で処置した。
図10に結果を示す。
【0295】
実施例13
PROSTVAC及び抗LAG−3処置マウスにおける抗腫瘍応答の誘導
実施例11に記載の通りマウスにE6腫瘍を皮内移植し、PROSTVAC及び抗LAG−3で処置した。
図11に結果を示す。
【0296】
実施例14
PROSTVAC、抗PD−1、及び抗LAG−3処置マウスにおける抗腫瘍応答の誘導
実施例11に記載の通りマウスにE6腫瘍を皮内移植し、PROSTVAC、抗PD−1、及び抗LAG−3で処置した。
図12に結果を示す。
【0297】
実施例15
MVA−BN−HER2及び抗CTLA−4は腫瘍負荷を減少する
実施例7に記載のとおり、1日目にマウスにCT26−HER−2細胞を皮内移植した。マウスを7日目及び22日目にMVA−BN−HER2で処置し(1E7Inf.U.、乱切)、1、4、8、11、15、18、22、及び25日目に抗ICOSで処置した(200μg、腹腔内投与)。A)平均腫瘍増殖。B)マウス個体における腫瘍増殖。
****p<0.0001、
**p<0.01、2要因の分散分析。
図13に結果を示す。
【0298】
実施例16
抗PD−1を併用したMVA−BN−HER2により低投与量で全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載の通り、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに抗PD−1を200μg(10mg/kg)、66μg(3mg/kg)、または22μg(1mg/kg)含有する100μLのPBSを1日目及び15日目に腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0299】
実施例17
抗ICOSを併用したMVA−BN−HER2により低投与量で全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに抗ICOSを200μg(10mg/kg)、66μg(3mg/kg)、または22μg(1mg/kg)含有する100μLのPBSを1日目及び15日目に腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0300】
実施例18
抗PD−1及び抗LAG−3を併用したMVA−BN−HER2により低投与量で全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体200μg(10mg/kg)、66μg(3mg/kg)、または22μg(1mg/kg)含有する100μLのPBSを1日目及び15日目腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0301】
実施例19
抗CTLA−4及び抗ICOSを併用したMVA−BN−HER2により低投与量で全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに抗CTLA−4及び抗ICOSを各抗体200μg(10mg/kg)、66μg(3mg/kg)、または22μg(1mg/kg)含有する100μLのPBSを1日目及び15日目腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0302】
実施例20
抗CTLA−4を併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗CTLA−4を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗CTLA−4を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0303】
実施例21
抗PD−1を併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗PD−1を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗PD−1を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0304】
実施例22
抗ICOSを併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗ICOSを66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗ICOSを200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0305】
実施例23
抗CTLA−4及び抗PD−1を併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0306】
実施例24
抗PD−1及び抗LAG−3を併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0307】
実施例25
抗CTLA−4及び抗ICOSを併用したMVA−BN−HER2により全身腫瘍組織量が第二の投与量増加に伴い減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、1日目に抗CTLA−4及び抗ICOSを各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、15日目目に抗CTLA−4及び抗ICOSを各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0308】
実施例26
抗CTLA−4前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗CTLA−4との併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗CTLA−4を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗CTLA−4を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0309】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗CTLA−4を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗CTLA−4を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0310】
実施例27
抗PD−1前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗PD−1との併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗PD−1を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗PD−1を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0311】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗PD−1を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗PD−1を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0312】
実施例28
抗ICOS前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗ICOSとの併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗ICOSを66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗ICOSを200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0313】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗ICOSを66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗ICOSを200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0314】
実施例29
抗CTLA−4及び抗PD−1前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗CTLA−4及び抗PD−1との併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0315】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗CTLA−4及び抗PD−1を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0316】
実施例30
抗PD−1及び抗LAG−3前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗PD−1及び抗LAG−3との併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0317】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗PD−1及び抗LAG−3を各抗体200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0318】
実施例31
抗CTLA−4及びICOS前にポックスウイルスを投与するMVA−BN−HER2と抗CTLA−4及びICOSとの併用により全身腫瘍組織量が減少する
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、3日目に抗CTLA−4及び抗ICOSの各抗体を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、18日目目に抗CTLA−4及び抗ICOSの各抗体を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0319】
実施例7に記載のとおり、マウスにCT26−HER−2細胞を移植し、MVA−BN−HER2で処置した。マウスに、7日目に抗CTLA−4及び抗ICOSの各抗体を66μg(3mg/kg)、22μg(1mg/kg)、または2.2μg(0.1mg/kg)含有する100μLのPBSを、21日目目に抗CTLA−4及び抗ICOSの各抗体を200μg(10mg/kg)または66μg(3mg/kg)含有する100μLのPBSを腹腔内投与した。
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、2要因の分散分析。
【0320】
実施例32
MVA−BN−HER2処置によるTim−3発現の増加
メスBALB/cマウス(6−8週齢、〜20g、Simonsen Laboratories、カリフォルニア州ギルロイ)を、1日目及び15日目に7.1μLの1.0×10
7Inf.U.MVA−BN−HER2(Bavarian Nordic[BN]製造,マルティンスリート、ドイツ)を乱切により投与した。実施例2に記載の通り組織を回収、処理、染色し、さらに様々な間隔でTim−3の表面発現を測定した。
【0321】
結果:
図14に示すように、対象にMVA−BN−HER−2を投与後Tim−3発現レベルを一定の間隔で測定した。投与に反応して、初期に免疫チェックポイント発現がほんのわずか上昇した。約3日目から約12日目にかけて、TIM−3のT細胞発現は劇的に増加した。発現増加は約18日目まで認められた。15日目のMVA−BN−HER2による第二の投与により、Tim3発現が17日目から増加した。免疫チェックポイント発現の発現増加は、CD4T細胞と比較してCD8T細胞でより顕著に認められた。
【0322】
図14に示すように、MVA−BN−HER2処置により、一時的にT細胞上のTim−3発現が誘導された。一つの態様では、このT細胞上のTim−3発現誘導により、一つまたは複数のTIM−3アンタゴニストを介したTim−3経路のブロッキングにより、癌患者のT細胞応答が高められることが示された。
【0323】
実施例33
MVA−BN−HER2処置によりCD8陽性及びCD4陽性T細胞上のICOSが増加する
マウスを1日目及び15日目にMVA−BN−HER2(1E7Inf.U.、乱切)で処置した。実施例2に記載の通り組織を回収、処理、染色し、さらに様々な間隔でICOSの表面発現を測定した。
【0324】
結果:
図15に示すように、対象にMVA−BN−HER−2を投与後ICOS発現レベルを一定の間隔で測定した。投与に反応して、初期に免疫チェックポイント発現がほんのわずか上昇した。約1〜2日後、ICOSのT細胞発現はわずかに症状した。約3日目〜約12日目に、ICOSのT細胞発現は劇的に上昇した。発現上昇は、約18日目まで認められた。15日目のMVA−BN−HER2による第二の投与により、ICOS発現が17日目から増加した。免疫チェックポイント発現の発現増加は、CD4T細胞と比較してCD8T細胞でより顕著に認められた。
【0325】
図15に示すように、MVA−BN−HER2処置により、一時的にT細胞上のICOS発現が誘導された。一つの態様では、このT細胞上のICOS発現誘導により、前記ICOS経路を一つまたは複数のICOSアゴニストを介して活性化することにより、癌患者のT細胞応答が高められることが示された。
【0326】
実施例34
MVA−BN−HER2処置によりPD−1発現が増加する
マウスを1日目及び15日目にMVA−BN−HER2(1E7Inf.U.、乱切)で処置した。実施例2に記載の通り組織を回収、処理、染色し、さらに様々な間隔でPD−1の表面発現を測定した。
【0327】
結果:
図16に示すように、対象にMVA−BN−HER−2を投与後PD−1発現レベルを一定の間隔で測定した。投与に反応して、初期に免疫チェックポイント発現がほんのわずか上昇した。約1〜2日後、PD−1のT細胞発現はわずかに症状した。約3日目〜約12日目に、PD−1のT細胞発現は劇的に上昇した。発現上昇は、約18日目まで認められた。15日目のMVA−BN−HER2による第二の投与により、PD−1発現が17日目から増加した。免疫チェックポイント発現の発現増加は、CD4T細胞と比較してCD8T細胞でより顕著に認められた。
【0328】
図16に示すように、MVA−BN−HER2処置により、一時的にT細胞上のPD−1発現が誘導された。一つの態様では、このT細胞上のPD−1発現誘導により、一つまたは複数のPD−1/PDL−1アゴニストを介したPD−1/PDL−1経路のブロッキングにより、癌患者のT細胞応答が高められることが示された。
【0329】
さらに、MVA−BN−HER2によるPD−1のブロッキングが、LAG−3共発現に繋がりうること及びMVA−BN−HER2を併用した場合の前記PD−1/PD−L1及びLAG−3経路両方のブロッキングにより治療上の利益がもたらされうることが示唆される。
【0330】
実施例35
MVA−BN−HER2に対するLAG−3免疫応答
マウスを1日目及び15日目にMVA−BN−HER2(1E7Inf.U.、乱切)で処置した。実施例2に記載の通り組織を回収し、処理し、染色し、さらに様々な間隔でLAG−3の表面発現を測定した。
【0331】
結果:
図17に結果を示す。対象にMVA−BN−HER−2を投与後LAG−3発現レベルを一定の間隔で測定した。MVA−BN−HER2処置後にCD4またはCD8T細胞上のLAG−3発現の増加を認めた。
【0332】
実施例36
MVA−BN−CV301及び抗体で処置したマウスの抗腫瘍応答の誘導
メスC57BL/6マウス(6−8週齢、〜20g、Simonsen Laboratories、カリフォルニア州ギルロイ)に1日目にMC38−CEA細胞(2×105、背面脇腹に皮内投与)を移植した。マウスを1日目及び15日目にMVA−BN−CV301(1E7Inf.U.、尾基部に皮下投与)で処置した。各図や例示及び実施例2に記載の通り、マウスに抗PD−1及び/または抗LAG−3を腹腔内投与した。
【0333】
実施例37
MVA−BN−CV301及び抗PD−1で処置したマウスの抗腫瘍応答の誘導
C57/BL6マウスにMC38−CEA腫瘍を皮内移植し、実施例36に記載の通り処置した。
図18に結果を示す。
【0334】
実施例38
MVA−BN−CV301及び抗LAG−3で処置したマウスの抗腫瘍応答の誘導
C57/BL6マウスにMC38−CEA腫瘍を皮内移植し、実施例36に記載の通り処置した。
図19に結果を示す。
【0335】
実施例39
MVA−BN−CV301、抗PD−1、及び抗LAG−3で処置したマウスの抗腫瘍応答の誘導
C57/BL6マウスにMC38−CEA腫瘍を皮内移植し、実施例36に記載の通り処置した。
図20に結果を示す。
【0336】
実施例40
異種性プライムブーストによりPSA−特異的T細胞応答が増幅される
オスBALB/cマウス(5匹/群)を隔週で緩衝液(対照)、PROSTVAC−V(VVV)(2E6Inf.U.、尾基部に皮下投与)、PROSTVAC−F(FFF)(1E7Inf.U.、尾基部に皮下投与)で処置またはPROSTVAC−Vプライムを投与後2回PROSTVAC−Fブーストを投与した(VFF)。本明細書に参照として組み入れるMandlら、Cancer Immunol. Immunother(2012),61:19−29に記載の通り、プールした脾細胞をIFNγELISPOTによりPSA−特異的応答についてアッセイした。
【0337】
(A、B)フローサイトメトリーにより細胞障害活性を測定した(%CD107陽性IFNγ陽性CD8T細胞)(C)。各マウス個体の抗PSA−IgG力価をELISAにより測定した(D)。ELISPOTでは、CD4またはCD8−PSA特異的ペプチドまたは対照で脾細胞を再度刺激した(表示濃度の対照については未記載)。非常に数が多いためカウントできなかった応答については、1000スポット/100万細胞と示した。統計学的有意差は、0.01μMでテューキーのポスト検定を組み合わせた反復測定分散分析により決定した。
****P<0.001(対照と比較)(A&B)。細胞障害性CD8陽性T細胞を特定するため、脾細胞を、抗CD107抗体の存在下でPSA−CD8特異的ペプチドで一晩再刺激した。グラフは、独立して4回実施された実験の主なデータを示す。
【0338】
図21に示すように、ワクシニアウイルスを含む異種性プライム・ブースト処方後に一つまたは複数の鶏痘ウイルスブースト用量を投与することにより、VVVまたはFFF相同性投与計画と比較して、非常に高い頻度でIFNγ−産生PSA−特異的CD4T細胞(
図21A)及びCD8T細胞(
図21B及び22A)が認められた。
【0339】
さらに、ELISPOTにおいて低いペプチド濃度(0.01μM)で応答するT細胞のより高い発生頻度に証明されるように、VFF投与によりPSA−特異的T細胞はより高い活性を示した(
図21A及び21B)。重要なのは、VFF異種性プライム・ブースト処方に起因する機能的に活性化したPSA−特異的CD8CTL数、各相同性投与計画と比較して、7〜20倍高かったことである(
図21C)。
【0340】
T細胞応答と対照的に、異種性プライム・ブースト処方は、PSA特異的抗体応答を改善しなかった(
図21D)。この結果は、より高い活性及びCD8CTL活性上昇で判断されるように、異種性VFF投与により、高い規模とレベルでCD4及びCD8PSA特異的T細胞応答が生じることを示す。本明細書に記載の通り、これらの結果は、異種性PROSTVAC−V/F投与後の抗PSA特異的抗腫瘍応答の向上に寄与する。
【0341】
実施例41
異種性プライム・ブーストはPSA−特異的T細胞応答の質を向上させる
オスBALB/cマウス(5匹/群)を実施例40に記載の通り処置した。最終処置から14日後に脾臓取り出し、プールした脾細胞をPSA OPLまたは対照で一晩再刺激した(対照は記載せず)。該細胞の細胞内IFNγ、TNFα、及びIL−2をフローサイトメトリー分析先立って染色した。(A)は検出細胞数を反映するように重み付けされた円グラフを示す(T細胞100万個あたりの全PSA特異的CD8数を各チャートに示す)。(B)細胞単位のIFNγ産生量を平均蛍光強度に基づいて測定した(MFI)。グラフは独立して実施された2回の実験の主なデータを示す。
【0342】
図22に示す通り、PSA特異的CD8T細胞をフローサイトメトリーによりIFNγ、TNFα、及びIL−2のマルチサイトカイン産生について分析したところ、PSA特異的CD8T細胞応答の質におけるさらなる特徴的性質が観察された(
図22)。サイトカイン発現を使用し、CD8メモリーT細胞は、二重陽性CD8エフェクターメモリーT細胞(IFNγ陽性TNFα陽性、TEM及び三重陽性CD8セントラルメモリーT細胞(IFNγ陽性TNFα陽性IL−2陽性、TCM)、Nat Rev Immunol 2008、8:247−258を参照)として分類されている。
【0343】
前記CD8T細胞応答の規模の増加(
図21及び
図22A)に加え、前記CD8T細胞応答の質の明白な変化が、相同性投与処方と比較した異種性PROSTVAC−V/F処方の結果、二重陽性TEM及び三重陽性TCMの高い割合によって明らかになった(
図22A)。5倍のPROSTVAC−V用量のプライミングは、CD8T細胞応答規模または質にいかなる付加的利益ももたらさなかった(データ未記載)。さらに、二重陽性TEM及び三重陽性TCMCD8T細胞は、一重陽性細胞よりも細胞あたりのIFNγが高かった(
図22B)。このIFNγ産生増加は、投与処方に関わらずTEM及びTCMCD8T細胞で認められた。
【0344】
また、
図22に示すとおり、MVA−BN−HER2は、IFNγ腫瘍抗原特異的T細胞を誘導する。本開示により、ウイルスによるIFNγを分泌するTIL(腫瘍浸潤リンパ球)の誘導は、腫瘍細胞上のPD−L1増加に至りウイルス投与を併用したこの経路のブロッキングを支持することが理解される。
【0345】
実施例42
PSAに対するT細胞応答の免疫フォーカス
マウスを実施例40に記載のとおり処置した。プールした脾細胞を、最終処置後14日目に、フローサイトメトリーによりワクシニアウイルス(VV)特異的(左側パネルA及びC)またはPSA特異的(右側パネルA及びC)細胞障害活性についてアッセイした(%CD107陽性IFNγ陽性CD8T細胞)。脾細胞を、ワクシニアE3L及びF2LペプチドまたはPSAOPLで抗CD107抗体の存在下で一晩再刺激した。翌日、細胞を表面マーカーCD127及びKLRG1により細胞内IFNγについて染色した。%抗原特異的細胞障害性SLEC及びDPECを(CD8陽性CD127−KLRG1陽性)及び(CD8陽性CD127陽性KLRG1陽性)細胞にそれぞれゲーティングすることにより測定した。グラフは独立して実施された2回の実験の主なデータを示す。
図23に結果を示す。
【0346】
相同性投与と比較して、異種性PROSTVACワクシニアウイルス(鶏痘ウイルス/F)投与計画の、ベクター特異的対PSA特異的エフェクターT細胞サブセットの細胞障害性能力に対する影響を分析した。相同性VVV投与により、相対的に高い数のワクシニア特異的細胞障害性SLEC(〜50%)及びDPEC(〜20%)が得られた(
図23A及び23C)一方で、10%以下のSLECまたはDPEC細胞障害性CD8T細胞がPSA−特異的であった。逆に、65%のSLEC及び30%の高活性DPECエフェクターメモリーT細胞は異種性VFF投与のPSA特異的CTLである一方、10%未満がワクシニア特異的CTLであった(
図23A及び23C)。よって、前記異種性PROSTVAC−V/F処方により、PSA標的化SLEC及びDPECT細胞応答のワクシニア標的化SLEC及びDPECT細胞応答に対する比率が100倍改善した(
図23B及び23D)。また、5倍以上のPROSTVAC−Vによるプライミングでは、いかなる付加的利益も得られなかった(データ未記載)。
【0347】
実施例43
免疫フォーカス後のCTLA−4併用療法
実施例40に記載の通り、オスBALB/cマウス(5匹/群)を隔週で緩衝液(対照)またはPROSTVAC−Vプライム後2回のPROSTVAC−Fブースト(VFF)で処置した。マウスに、1、15及び29日目(A)、15日目及び29日目(B)、16日目及び30日目(C)、または17日目及び31日目(D)に抗CTLA−4(60μg)を腹腔内投与する。PSA特異的T細胞応答を、実施例40、41及び42に記載の通り分析した。
【0348】
本出願により本明細書に記載及び実証されるように、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストを併用したTAAを含む組換えポックスウイルス投与は、様々な投与量で治療上効果的であった。特に、本開示の組み合わせは、一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストまたはポックスウイルス療法単独の投与量よりも低用量の投与量で効果的である。
【0349】
本出願により、前記組換えポックスウイルス及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの組み合わせの有効性は、治療中の投与計画により大きく高められることが付加的に実証される。例えば、組換えポックスルイルス治療の一つまたは複数の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与により、前記組み合わせ治療の有効性が大きく高められる。さらに、第二または後続組換えポックスウイルス治療後の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストの投与量を増加することにより、本明細書に記載の前記組み合わせ治療の有効性を大きく高められる。
【0350】
本出願により、本明細書に記載前記投与計画が、前記大きく高められた前記組換えポックスウイルス及び免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニスト併用療法の有効性にとって重要であることがさらに実証される。
【0351】
特に本開示により、免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと併用して投与されるTAAを有するポックスウイルスベクターにより、ポックスウイルスベクターの種類に関係なくさらに高い治療効果が得られることが実証される。なかでも、本開示により、複数種のポックスウイルスを前記組み合わせ治療に使用することによりさらに高い治療効果が得られることが実証される。例えば、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスといったポックスウイルスが本明細書に記載の免疫チェックポイントアンタゴニストまたはアゴニストと投与される場合、治療効果が達成される。
【0352】
本明細書に記載の前記方法または組成物の詳細について、本開示の趣旨から逸脱することなく変形または修飾可能であることは明らかである。そのようなさまざまな修正及び変形は特許請求の範囲の趣旨と範囲内であることをここに主張する。