【文献】
Aubry F et al,Single-stranded positive-sense RNA viruses generated in days using infectious subgenomic amplicons,J Gen Virol,2014年 7月,95,2462-2467
【文献】
Aubry F et al,Flavivirus reverse genetic systems, construction techniques and applications: A historical perspective,Antiviral Research,2014年12月12日,114,67-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フラビウイルスは、日本脳炎ウイルス(JEV)、ウエストナイルウイルス(WNV)、デングウイルス(DENV)、黄熱病ウイルス(YFV)、およびダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)からなる群から選択され;
前記アルファウイルスはチクングニアであり;
前記エンテロウイルスはコクサッキーである、
請求項3に記載の方法。
前記宿主細胞はSW13細胞株およびBHK−21細胞株、HEK293細胞株およびVero細胞株からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
ステップc)は、ステップb)で得られたcDNAフラグメントを含むプラスミドまたはベクターをトランスフェクトするステップであって、各cDNAフラグメントは個々に
別々のプラスミドまたはベクター中にあるステップである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記方法は、ステップb)の後かつステップc)の前に、前記重複cDNAフラグメントを精製するステップb’)をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
ステップc)のトランスフェクトしたcDNAフラグメントは、インキュベーションステップd)中に前記宿主細胞内で自発的に組換わる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、各々ウイルスゲノムの一部を包含する重複二本鎖DNAフラグメントにより、トランスフェクション後に完全なウイルスゲノムのDNAコピーの自発的な組換えおよび合成が可能になることを見出した。この驚くべき発見に基づき、本発明者らは、細菌への全長cDNAのクローニングおよび増殖を必要としない感染性RNAウイルスを生成するための新規なアプローチを開発した。
【0015】
したがって第1の態様では、本発明は、以下のステップ:
a)RNAウイルスの全ゲノムの5’位にDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター、ならびに任意に3’位にターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を導入するステップ;
b)少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、4つ、5つまたは6つの重複cDNAフラグメントにおいて、前記プロモーター、ならびに任意に前記ターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を含む、ステップa)で調製された全ウイルスゲノムを増幅するステップ;
c)前記cDNAフラグメントを宿主細胞にトランスフェクトするステップ;
d)ステップc)の宿主細胞をインキュベートするステップ;ならびに
e)前記インキュベートした宿主細胞から感染性RNAウイルスを回収するステップ
を含む感染性RNAウイルスを生成するための方法に関する。
【0016】
本発明者らは、自身の徹底的な研究に基づき:
− 全ウイルスゲノムを包含する全長cDNAを構築すること;および/または
− そうした全長cDNAを含むプラスミドもしくはベクターの使用;および/または
− 宿主細胞へのトランスフェクション前に全長cDNAもしくは全ウイルスゲノムを再構築する必要性;および/または
− 非天然の組換えもしくは制限酵素部位を組み込むなどウイルスゲノムを改変すること;および/または
− ヘルパーウイルスもしくは他のウイルスタンパク質の使用
から解放する方法を開発することにより技術的偏見を克服した。
【0017】
したがって、「感染性サブゲノム単位複製配列」または「ISA(Infectious Subgenomic Amplicon)」とも呼ばれる本発明の方法は、既存の感染性クローン、ウイルスRNAまたは新規合成されたDNAゲノム配列を含む種々の初期供給源を出発物質としてウイルスの配列を完全に制御し、数日以内に感染性RNAウイルスの産生を促進することができる非常に簡便な手順である。従来技術で開示された他の無菌のアプローチと異なり、本発明の方法は、cDNAフラグメントの調製以外に任意の追加ステップを必要としない。構築物のアセンブリは、トランスフェクションの前にギブソンアセンブリまたは環状ポリメラーゼ伸長クローニング(circular polymerase extension cloning)によりin vitroで行わず、in celluloで直接起こる組換えプロセスで行うことで、この方法は非常に容易になり、短縮する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「感染性RNAウイルスの生成」という表現は、本発明の方法による野生型形態または遺伝子改変形態のRNAウイルスの産生をいう。「感染性ウイルス」という用語は、複製する能力を有する、すなわち宿主細胞でウイルスゲノムを増幅すること、細胞内でのウイルスゲノムのパッケージングおよび/または細胞からの感染性ウイルス粒子の放出ができるウイルスをいう。ウイルスが病原性でもあるいは非病原性でもよく、なお感染性であり得ることは、注目に値する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「非天然の組換え部位」という表現は、Cre−LoxまたはFLP−FRT組換えシステムを例示することができる、部位特異的な組換えを許容する配列をいう。制限酵素部位とは、NotIまたはAluIエンドヌクレアーゼを例示することができる制限酵素による二本鎖DNAの部位特異的切断を許容する配列をいう。
【0020】
好ましくは、本方法が生成しようとする感染性RNAウイルス(本明細書では「標的ウイルス」とも呼ばれる)は、プラスまたはマイナス一本鎖RNAウイルスである。一層好ましくは、前記ウイルスは、プラス一本鎖RNAウイルスである。一層好ましくは、前記ウイルスは、フラビウイルス、アルファウイルスおよびエンテロウイルスからなる群から選択される。
【0021】
フラビウイルスの非限定的なリストは、デングウイルス(DENV)、黄熱病ウイルス(YFV:Yellow fever virus)、セントルイス脳炎(SLEV:St Louis encephalitis)、日本脳炎ウイルス(JEV:Japanese encephalitis viruses)、マレー渓谷脳炎(MVEV:Murray Valley encephalitis)、ウエストナイルウイルス(WNV)、ロシオ(ROCV:Rocio)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、オムスク出血熱(OMSKV:Omsk hemorrhagic fever)、キャサヌール(Kyasanr Forrest)森林病(KFDV:Kyasanur Forest disease)、ポワッサン(POWV:Powassan)を含む。好ましくは、前記フラビウイルスは:
− 日本脳炎ウイルス(JEV);たとえば遺伝子型I株(JEV I)または遺伝子型III株(JEV III)、
− ウエストナイルウイルス(WNV)、たとえば遺伝子型2株;
− デングウイルス(DENV)、たとえば血清型4株;
− 黄熱病ウイルス(YFV)、たとえば南アメリカ野生型株;および
− ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、たとえば極東サブタイプ株
からなる群から選択される。
【0022】
一層好ましくは、前記フラビウイルスはデングウイルスである。
【0023】
アルファウイルスの非限定的なリストは、チクングニアウイルス(CHIK:Chikungunya virus)、東部ウマ脳炎(EEE:Eastern equine encephalitis)、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE:Venezuelan equine encephalitis virus)、マヤロウイルス(MAY:Mayaro virus)、オニョンニョンウイルス(ONN:O’nyong’nyong virus)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バーマフォレストウイルス、ロスリバーウイルス、ウナウイルス、トナテ(Tonate)ウイルスを含む。好ましくは、前記アルファウイルスはチクングニアウイルスである。
【0024】
エンテロウイルスの非限定的なリストは、コクサッキー、エコーウイルス、ポリオウイルスおよびライノウイルスを含む。好ましくは、前記エンテロウイルスはコクサッキーであり、一層好ましくはコクサッキーBウイルスである。
【0025】
あるいは、前記ウイルスは一本鎖マイナス鎖RNAウイルスである。一層好ましくは、前記ウイルスは、パラミクソウイルス、アレナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルスまたはインフルエンザウイルスである。
【0026】
本発明の方法は、RNAウイルスの全ゲノムの5’位にDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーターを導入するステップa)を含む。任意に、前記ステップa)は、RNAウイルスの全ゲノムの3’位にターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列の導入をさらに含む。
【0027】
アルファウイルスゲノムなどの標的ウイルスのゲノムがポリアデニル化されるときに、ステップa)がRNAウイルスの全ゲノムの5’位にDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター、ならびに3’位にターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を導入するステップであることは、注目に値する。
【0028】
第1のcDNAフラグメントの5’末端に、DNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター、ならびに最後のcDNAフラグメントの3’末端にリボザイム配列およびRNAポリ−アデニル化のシグナル配列を含ませることにより、cDNAフラグメントが、標準の5’および3’末端を有する全長RNAゲノムとして転写される。
【0029】
好ましくは、5’位のDNA依存性RNAポリメラーゼの前記プロモーターは、配列番号1に示したヒトサイトメガロウイルスプロモーター(pCMV)である。好ましくは、前記ターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列は、それぞれ肝炎デルタリボザイムおよびサルウイルス40ポリアデニル化シグナル(HDR/SV40pA)である。HDR/SV40pAの配列は、配列番号2に示す。
【0030】
したがって、ステップa)は、5’および3’でそれぞれヒトサイトメガロウイルスプロモーター(pCMV)(配列番号1)と、肝炎デルタリボザイム、その後のサルウイルス40ポリアデニル化シグナル(HDR/SV40pA)(配列番号2)とに挟まれた、生成しようとする感染性RNAウイルスの完全なウイルスゲノムを用意する。
【0031】
本発明の方法は、いくつかの重複cDNAフラグメントで全ウイルスゲノムを増幅するステップb)を含む。
【0032】
ステップb)では、全ウイルスゲノムは、ステップa)で調製された、すなわち前記プロモーターならびに任意に前記ターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を含む、全ウイルスゲノムに相当する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「単位複製配列」または「DNAサブゲノムフラグメント」または「サブゲノム単位複製配列」とも呼ばれる「重複cDNAフラグメント」、「cDNAフラグメント」という表現は、RNAウイルスのウイルスゲノムの一部のみを包含する二本鎖DNAフラグメントである。こうしたフラグメントは「サブゲノムフラグメント」に相当する。本発明者らは、こうしたフラグメントが細胞内にトランスフェクトされたとき、驚いたことにin celluloで自発的に組換わり、全ウイルスゲノムを再構成することを明らかにした。前記組換えは、ウイルスゲノムが、追加の非天然の組換え部位を組み込むために遺伝子改変されていない場合でも起こる。言い換えれば、前記組換えは野生型ウイルスゲノムを用いて起こる。
【0034】
本発明によるcDNAフラグメントは:
− たとえばPCRによる増幅によって得られたDNAフラグメント;だけでなく
− 新規に得られたDNAフラグメント
を包含する。
【0035】
典型的には、前記cDNAフラグメントは感染性でもあるいは非感染性でもよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、「全長cDNA」という表現は、1つの断片にウイルスの全ウイルスゲノムを含むDNAをいう。
【0037】
本明細書で使用する場合、「全ウイルスゲノムの一部を包含するcDNAフラグメント」という表現は、全ウイルスゲノムの一部を含むDNAフラグメントをいう。典型的には、本発明によるcDNAフラグメントは、トランスフェクション時に細胞内で自発的に組換わり、5’末端でDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーターに、ならびに3’末端で終結配列およびRNAポリ−アデニル化のシグナル配列に、挟まれた全ウイルスゲノムのDNAコピーを構成する。この構築物は、細胞機構により標準の5’および3’末端を有する全長RNAゲノムとして転写される。
【0038】
一方、「全ウイルスゲノムを包含する全長cDNA」は、ウイルスゲノムの全体をコードする単一のcDNAである。
【0039】
好ましくは、本発明の方法のステップb)は、2〜15の重複cDNAフラグメント、好ましくは3つ、4つ、5つまたは6つの重複cDNAフラグメントの産生を可能にする。典型的には、前記cDNAフラグメントは約2kb〜約6kb、好ましくは約4kbであり、cDNAフラグメントは各々、70〜100bpの重複領域を有する。
【0040】
好ましくは、ステップb)の前記重複cDNAフラグメントは:
− PCRにより増幅されなかった感染性クローンのフラグメント;
− PCRにより増幅された感染性クローンのフラグメント;
− PCRにより増幅されなかった非感染性クローンのフラグメント;
− PCRにより増幅された非感染性クローンのフラグメント;
− PCRにより増幅されなかった新規に合成されたフラグメント;
− PCRにより増幅された新規に合成されたフラグメント;および
− ウイルスゲノムから逆転写PCRにより得られたフラグメント
である。
【0041】
好ましい実施形態では、前記重複cDNAフラグメントは、生成しようとする標的ウイルスに応じて、以下の通り表に開示されたプライマーによって得ることができる:
【0043】
前記プライマーは、PCRにより重複cDNAフラグメントを得るのに有用である。
【0044】
したがって、一実施形態では、本発明の方法のステップb)は、ステップa)で調製された全ウイルスゲノムを:
− 前記感染性RNAウイルスがJEV Iである場合、配列番号3〜配列番号8に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて、もしくは配列番号39〜50に示したプライマーを用い6つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性ウイルスRNAがJEV IIである場合、配列番号9〜配列番号14に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがWNVである場合、配列番号15〜配列番号20に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがTBEVである場合、配列番号21〜配列番号26に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがYFVである場合、配列番号27〜配列番号32に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがDENV−4である場合、配列番号33〜配列番号38に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがCHIKVである場合、配列番号51〜配列番号56に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて;または
− 前記感染性RNAウイルスがCV−B3である場合、配列番号57〜配列番号62に示したプライマーを用い3つの重複cDNAフラグメントにおいて
増幅するステップである。
【0045】
本発明の方法は、前記cDNAフラグメントを宿主細胞にトランスフェクトするステップc)を含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」という用語は、真核細胞もしくは原核細胞または生体への核酸(DNAまたははRNA)の導入をいう。外来の核酸を取り込んだ細胞は、「宿主細胞」または「トランスフェクト細胞」という。トランスフェクションは、リン酸カルシウム−DNA共沈殿、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、ポリブレン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染および遺伝子銃を含む当該技術分野において公知の種々の手段により達成することができる。
【0047】
好ましくは、ステップc)の宿主細胞は、感染性ウイルスの回収を可能にする許容細胞である。典型的には、本発明の方法に利用される許容細胞は、cDNAフラグメントのトランスフェクション時に、ウイルス粒子の産生を含むウイルスの完全な複製サイクルを実現することができる細胞である。好ましくは、前記宿主細胞は、SW13細胞株、BHK−21細胞株、HEK293細胞株およびVero細胞株からなる群から選択される。
【0048】
好ましい実施形態では、ステップc)は、ステップb)で得られたcDNAフラグメントそれ自体を直接トランスフェクトするステップであり、ステップc)は、ステップb)の直後に行われる。この特定の実施形態では、cDNAフラグメントそれ自体は、宿主細胞にトランスフェクトされる。前記フラグメントは、in celluloで自発的に組換わり、5’末端でDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーターに、ならびに3’末端で終結配列およびRNAポリ−アデニル化のシグナル配列に、挟まれた全ウイルスゲノムのDNAコピーになる。既に述べたように、本発明の方法はそのように、全ウイルスゲノムを包含する全長cDNAをトランスフェクトすることから解放するため、技術的偏見を克服する。加えて本方法は、そのような前記全長cDNAを含むプラスミドもしくはベクターの使用、および/または宿主細胞へのトランスフェクション前に完全なcDNAもしくは全ウイルスゲノムを再構築する必要性がない。一方、本方法は、各々ウイルスゲノムの一部を含む重複cDNAフラグメントのトランスフェクションに依存する。RNAウイルスの全ゲノムを包含する重複二本鎖DNAフラグメントの許容細胞へのトランスフェクションにより、in celluloで完全なウイルスゲノムのDNAコピーの組換えおよび合成が可能になる。
【0049】
代替の実施形態では、ステップc)は、各々ステップb)で得られたcDNAフラグメントを含むプラスミドをトランスフェクトするステップであって、各cDNAフラグメントが個々に別々のプラスミドまたはベクターに組み込まれているステップである。この実施形態では、各cDNAフラグメントは、個々に別々のプラスミドまたはベクターに組み込まれている。各プラスミドまたはベクターは、cDNAの単一のフラグメントを含む。この実施形態では、全ウイルスゲノムはトランスフェクション後に再構成される。
【0050】
一実施形態では、本発明の方法は、ステップb)の後かつ重複cDNAフラグメントの精製のステップc)の前にさらなるステップb’)を含む。前記精製は、任意の公知の技術により、好ましくはクロマトグラフィーカラムを通して行うことができる。
【0051】
本発明の方法は、好ましくは3〜9日間続く、宿主細胞をインキュベートするステップd)を含む。前記インキュベーションステップ中、トランスフェクトしたcDNAフラグメントは、宿主細胞において自発的に組換わり、5’末端でDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーターに、ならびに3’末端で終結配列およびRNAポリ−アデニル化のシグナル配列に、挟まれた全ウイルスゲノムのDNAコピーを構成する。この構築物は、細胞機構により標準の5’および3’末端を有する全長RNAゲノムとして転写される。
【0052】
代替の実施形態では、本発明は、感染性RNAウイルスをin vivoで生成するための方法に関する。
【0053】
この実施形態では、前記方法は、以下のステップ:
a)RNAウイルスの全ゲノムの5’位にDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター、ならびに任意に3’位にターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を導入するステップ;
b)少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、4つ、5つまたは6つの重複cDNAフラグメントにおいて、前記プロモーター、ならびに任意に前記ターミネーターおよびRNAポリアデニル化配列を含む、ステップa)で調製された全ウイルスゲノムを増幅するステップ;
c’)前記cDNAフラグメントを動物モデルに接種するステップ;
e’)前記動物から得られた生物学的サンプルから感染性RNAウイルスを回収するステップ
を含む。
【0054】
前に開示された技術データはすべてここに適用することができる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「動物モデル」という表現は、従属栄養性の多細胞真核生物、好ましくは哺乳動物、一層好ましくは非ヒト哺乳動物である。好ましい実施形態では、前記動物モデルは齧歯動物、一層好ましくはマウスである。
【0056】
本明細書で使用する場合、「生物学的サンプル」という用語は、本明細書で使用する場合、動物モデルから得られた任意の生物学的サンプルをいう。本発明の方法では、サンプルは、任意の体液を含んでもよい。試験サンプルの例として、血液、血清、血漿、乳頭吸引液、尿、唾液が挙げられる。あるいは、前記生物学的サンプルは、前記動物モデルから得られた組織である。好ましくは、前記生物学的サンプルは、脂肪組織、メサンギウム組織、肝臓組織、膵臓組織、筋肉組織、血管組織、神経組織ならびに脳および脾臓組織からなる群から選択される。一層好ましくは、前記生物学的サンプルは、脳および脾臓組織である。
【0057】
本明細書で使用する場合、「個体」という用語は動物をいい、いくつかの実施形態では哺乳動物、いくつかの実施形態ではヒトをいう。
【0058】
典型的には、「前記cDNAフラグメントを動物モデルへ接種」するステップc’)とは、cDNAフラグメントが動物モデルへ投与されるステップに関連する、ステップをいう。言い換えれば、前記ステップは好ましくは、動物モデル内または前記モデルの細胞内にcDNAフラグメントを導入することを可能にする。cDNAフラグメントは、種々の手段、以下に限定されるものではないが、経口手段、皮内手段、点眼手段、舌下手段、口腔内手段、筋肉内手段、静脈内手段、動脈内手段、経鼻手段、腹腔内手段、頭蓋内手段、脳室内手段、脳内手段、膣内手段、子宮内手段、直腸手段、非経口手段を用いて被検体または細胞に送達しても、あるいは投与してもよい。好ましくは、ステップc’)は、腹腔内注射、皮内注射または脳内注射により行われる。
【0059】
第2の態様では、本発明は、本明細書に開示された感染性RNAウイルスを生成するための方法の使用、および/または逆遺伝学的解析のため前記方法に従って得られたRNAウイルスの使用に関する。
【0060】
本発明の方法は、RNAウイルスに関する大きな逆遺伝学的実験計画を作成する可能性がある。本発明の方法はさらに、実験手順から回収されたウイルスの特徴を特異的に調節する能力も有する。加えて、DNAサブゲノムフラグメントはPCRにより都合よく得られるため、本方法は、ウイルスRNAを出発材料としたときにウイルス集団の遺伝的多様性を保存する可能性がある。たとえば様々な実験の選択条件下に適応したウイルスの選択を容易にするため、人工のウイルスの不均一性を惹起するのにError−prone PCRをさらに使用してもよく、逆に、産生されるウイルスのクローン性の度合いを制御するため、忠実度の高いポリメラーゼおよびクローン増幅鋳型を使用してもよい。
【0061】
前に開示された技術データはすべてここに適用することができる。
【0062】
第3の態様では、本発明は、本明細書に開示された感染性RNAウイルスを生成するための方法の使用、および/または感染性RNAウイルスの安全かつ効率的な輸送のための、前記方法に従って得られたRNAウイルスの使用に関する。実際に、本発明の方法は、たとえば科学施設間でのRNAウイルスの交換の安全および保護を劇的に改善する。実際に、前記交換は、簡便な非感染性DNAサブゲノムフラグメントの室温での別々の輸送形態をとってもよい。次いで受け取る研究所が、前記フラグメントを組み合わせてトランスフェクトすることができる。したがって本方法は、感染性ウイルス株の迅速、簡便かつ安全な回収を可能にする。
【0063】
前に開示された技術データはすべてここに適用することができる。
【0064】
以下の例は、本発明の種々の実施形態を説明する目的で提供するものであり、任意の形式で本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1:ISA法
方法
細胞、ウイルス、感染性クローンおよび抗体
ベビーハムスター腎臓(BHK−21)細胞を、7%熱失活ウシ胎仔血清(FBS;ライフテクノロジーズ(Life Technologies))および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS;5000U/mLおよび5000μg/ml;ライフテクノロジーズ)と共に最小必須培地(ライフテクノロジーズ)中、37℃、5%CO2で増殖させた。ヒト胎児腎臓293(HEK−293)細胞およびアフリカミドリザル腎臓(VeroE6)細胞を、1%の非必須アミノ酸(ライフテクノロジーズ)を補充したBHK−21細胞と同じ培地中、37℃、5%CO2で増殖させた。ヒト副腎癌(SW13)細胞を、10%FBSおよび1%PSと共にRPMI1640培地(ライフテクノロジーズ)中、37℃、5%CO2で増殖させた。
【0066】
JEV遺伝子型I株JEV_CNS769_Laos_2009(KC196115)は、ラオス(Laos)16の患者の脳脊髄液から2009年6月に単離され;ヒト血清から2009年に単離されたYFV株BOL 88/1999(KF907504)は、国立熱帯病センター(CENETROP:National Center of Tropical Diseases)、サンタクルーズ(Santa−Cruz)、ボリビア(Bolivia)から好意により提供され;ヒト血清から単離されたDENV−4株Dak HD 34 460(KF907503)は、生体防御・新興感染症センター、シーリーワクチン開発センター(Center for Biodefense and Emerging Infectious Diseases−Sealy Center for Vaccine Development)(テキサス大学医学部(University of Texas Medical Branch)、ガルベストン(Galveston)、テキサス州、米国)のロバート B テッシュ(Robert B Tesh)から好意により提供され;株rp9(DQ648597)に由来するJEV遺伝子型IIIの感染性クローンは、生物医学研究所(Institute of Biomedical Sciences)、中央研究院(Academia Sinica)、台北、台湾のイ−リン−リン(Yi−Ling Lin)から好意により提供され;WNVの感染性クローンは株Ouganda 1937(M12294)由来し;TBEVの感染性クローンは、株Oshima 5.10(AB062063)に由来し;CV−B3の感染性クローンは、株2679(KJ489414)に由来した。JEV特異的免疫血清(JEVに対するワクチン接種後に得る)およびモノクローナルDENV特異抗体17を使用して直接免疫蛍光法アッセイを実施した。
【0067】
cDNAフラグメントの調製
5’および3’でそれぞれヒトサイトメガロウイルスプロモーター(pCMV)(配列番号1)と、肝炎デルタリボザイム、その後のサルウイルス40ポリアデニル化シグナル(HDR/SV40pA)(配列番号2)とに挟まれた完全なゲノムを、約4.8kb、3.0kbおよび4.3kbの3つの重複DNAフラグメント(CHIKVでは4.8kb、2.9kbおよび5.2kb、TBEVでは4.8kb、4.1kbおよび3.4kb、ならびにCV−B3では2.9kb、2.8kbおよび2.7kb)においてPCRにより増幅した(下の表1を参照)。
【0068】
WNV、TBEV、JEV IIIおよびCHIKVでは、DNAフラグメントを、感染性クローンを用いてPCRにより得た(JEV IIIでは、突然変異をフュージョンPCRを用いて修正した)。
【0069】
JEV I(すべてのDNAフラグメント)、DENV−4(第1および第3のフラグメント)およびYFV(第1および第3のフラグメント)では、DNAフラグメントを新規に合成し(ジェンスクリプト(Genscript))、PCRにより増幅した。単位複製配列は、Platinum PCR SuperMix High Fidelityキット(ライフテクノロジーズ)を用いて作製した。
【0070】
混合物(最終容量:50μL)は、45μLのスーパーミックス、1ng/μLのDNA鋳型2μL(感染性クローンまたは合成DNAフラグメント)および200nMの各プライマーからなった。DENV−4およびYFVでは、第2のDNAフラグメントを、清澄にした細胞上清からRT−PCRにより得た。核酸は、製造者の指示に従いEZ1ウイルスMiniキットv2を用いてEZ1 Biorobot(どちらもキアゲン(Qiagen))で抽出し、Superscript III One−Step RT−PCR Platinum Taq Hifiキット(ライフテクノロジーズ)を用いて増幅した。混合物(最終容量:50μL)は、25μLのReaction Mix、2μLの核酸抽出物、100nMの各プライマー、1μLのEnzyme Mixおよび20μLのヌクレアーゼフリー水を含んでいた。アッセイは、Biometra T−professional Standard Gradientサーモサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃2分間、続いて94℃15秒間、64℃30秒間、68℃5分間の40サイクル、およびRT−PCRのための50℃30分間の予備ステップ。PCR産物の大きさは、ゲル電気泳動により検証し、製造者の指示に従いAmicon Ultra−0.5mLキット(ミリポア(Millipore))を用いて精製した。プラスミドDNAを鋳型として使用した場合、トランスフェクション前に制限酵素Dpn1(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs))を用いた消化ステップにより、鋳型の完全な除去を確実なものにした。この追加ステップの効率を制御するため、本発明者らは、対照として2つのcDNAフラグメントのみ(第1および第2、最終1μg)をトランスフェクトした(下記を参照)。これらの対照は、感染性ウイルスをまったく産生しなかった。
【0071】
【表2】
【0072】
細胞トランスフェクション
PCRにより増幅されたすべてのcDNAフラグメントの最終1μgの等モルの混合物(mix)、あるいはCV−B3の1μgの感染性クローンを、600μlのOpti−MEM培地(ライフテクノロジーズ)中、12μlのリポフェクタミン2000(ライフテクノロジーズ)とインキュベートした。製造者の指示に従い、この混合物を、抗生物質を含まない1mLの培地を含む、サブコンフルエントの細胞の12.5cm2培養フラスコに加えた。インキュベーションの4時間後、細胞上清を除去し、細胞を2回洗浄し(HBSS;ライフテクノロジーズ)、3mLの新鮮培地を加えた。細胞上清を、著しい細胞変性効果(CPE:cytopathic effect)が観察されたとき(細胞型およびウイルス増殖速度に応じて3〜9日)、または非細胞変性ウイルスではトランスフェクションの9日後、採取し、遠心分離により清澄にし、アリコートに分け、−80℃で保存した。次いで各ウイルスを、DENV−4およびYFVを除いて同じ細胞型を用いて4回継代した。DENV−4およびYFVでは、それぞれVeroE6およびHEK−293を使用した。継代は、666μLの培地を含む12.5cm2培養フラスコ中、333μLの清澄にした細胞上清を細胞に接種することにより行った。インキュベーションの2時間後、細胞を2回洗浄し(HBSS)、3mLの新鮮培地を加えた。細胞上清を2〜6日後に採取し、遠心分離により清澄にし、アリコートに分け、−80℃で保存した。清澄にした細胞上清(ウイルス原液)を使用してウイルスRNAの定量、TCID50アッセイ、直接免疫蛍光アッセイおよび全ゲノムシーケンシングを行った。
【0073】
リアルタイムPCRおよびRT−PCRアッセイ
感染性ウイルスの産生を評価し、および陽性検出がcDNA混入の結果でなかったことを確認するため、逆転写酵素を用いてあるいは用いずにAccess RT−PCR Core Reagentキット(プロメガ(Promega))を使用してウイルスRNAを定量し、検出されたcDNAの量と比較した。RNAは、製造者の指示に従いEZ1 miniウイルス2.0キットおよびEZ1 Biorobot(どちらもキアゲン)を用いて抽出した。混合物(最終容量:25μL)は、標準量のAMV/Tfl 5X Reaction Buffer、0.5μMの各プライマー、0.5μLのdNTP Mix、0.5mMのMgSO4、0.5μLのAMV逆転写酵素(RT−PCRの場合のみ)、0.5μLのTfl DNAポリメラーゼ、15.5μLのヌクレアーゼフリー水および2μLの抽出核酸を含んでいた。アッセイは、以下の条件でCFX96 Touch(商標)Real−Time PCR Detection System(バイオラッド(BioRad))を用いて行った:50℃15分間、95℃2分間、続いて95℃15秒間、60℃40秒間の45サイクル。データ収集は、60℃のステップ中に行った。リアルタイムPCRアッセイとリアルタイムRT−PCRアッセイとにより得られたサイクル閾値(ct)間の相違を使用して、ウイルスRNA産生を評価した。さらに、線量検出限界(任意単位;AU:arbitrary unit)で表したウイルスRNAの量を、標準曲線から算出した(培養ウイルスの細胞上清由来の核酸を標準として使用した;5つの核酸抽出物をプールし、10μlアリコートを−80℃で保存した)。
【0074】
50%組織培養感染量(TCID50:Tissue Culture Infectious Dose 50)アッセイ
測定ごとに、1ウェル当たり100μLの培地中に20,000個のBHK−21細胞を含む96ウェルプレート培養物(接種直前に加えた)を、清澄にした細胞培養上清の50μLの10倍希釈系列に接種した。各列には、6つのウェルの同じ希釈物および2つの陰性対照があった。このプレートを7日間インキュベートし、各ウェルのCPEの有無について判断した。TCID50/mLの決定は、リード(Reed)およびミュンヒ18(Muench18)の方法を用いて行った。
【0075】
直接免疫蛍光アッセイ(dIFA:Direct Immuno−Fluorescence assay)
直接IFAは、清澄にした細胞上清を使用する前に、それぞれ2日および6日感染させた、JEV IおよびJEV III用のSW13細胞と、VeroE6細胞との12.5cm2培養フラスコを用いて行った(上記:ウイルスの継代を参照)。上清を除去し、細胞を2回洗浄し(HBSS;インビトロジェン(Invitrogen))、トリプシン処理し、採取して新鮮培地で希釈した(1/5)。150μLのこの細胞懸濁物の細胞遠心分離(3分、900rpm;サイトスピン(Cytospin)後、サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific))、スライドを乾燥させ、固定のため冷アセトンに20分浸し、乾燥させ、適切に希釈したJEV特異的免疫血清(上記を参照)またはモノクローナルDENV特異抗体と37℃で30分インキュベートし、PBSで2回洗浄し、蒸留水で1回洗浄し、乾燥させ、適切に希釈したFITCコンジュゲート二次抗体およびエバンスブルー対比染色物と37℃で30分インキュベートし、PBSで2回洗浄し、蒸留水で1回洗浄し、乾燥させ、セットして蛍光顕微鏡を用いて判定した。
【0076】
全長ゲノムの配列解析
Ion PGM Sequencer19(ライフテクノロジーズ)を用いて完全なゲノムシーケンシングを実施し、CLC Genomics Workbench 6ソフトウェアを用いて解析を行った。最初にウイルス上清を清澄にし、Benzonase nuclease HC>99%(ノバゲン(Novagen))で37℃にて一晩処理した。EZ1 miniウイルス2.0キットおよびEZ1 Biorobot(どちらもキアゲン)を用いてRNA抽出(RNAキャリアは使用せず;上記を参照)後、以前記載されたように20(described20)核酸のランダム増幅を行った。増幅したDNAは、製造者の指示に従いIon PGMシーケンサーを用いて解析した。得られたリードを:最初にクオリティスコア(quality score)を用いて、次いでランダム増幅中に使用したプライマーを除去することにより、最後に5’および3’末端(extremity)で6ヌクレオチドを系統的に除去することにより、トリムした。29ヌクレオチドを超える長さを有するリードのみを使用し、リファレンスとして使用した最初のゲノム配列にマップした。各位置ごとの突然変異頻度(突然変異を有するウイルスゲノムの比率)は単純に、リファレンスと比較した突然変異を有するリード数をその部位のリードの総数で割ったものとして計算した。
【0077】
結果
本発明者らは、クローニング、細菌のcDNAの増殖またはin vitroでのRNA転写の必要なしにゲノムDNA材料からの感染性RNAウイルスの回収を容易にする簡便で多用途の逆遺伝学を開発した。それらの作業仮説は、RNAウイルスの全ゲノムを包含する重複二本鎖DNAフラグメントを許容細胞にトランスフェクトすると、完全なウイルスゲノムのDNAコピーの組換えおよび合成が自発的に可能になるというものであった。最初の(5’)DNAフラグメントの5’末端に、DNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター、および最後の(3’)DNAフラグメントの3’末端にリボザイム配列およびRNAポリ−アデニル化のシグナル配列を含ませることにより、本発明者らは、このゲノムDNAコピーが、効率的に核から運ばれると考えられる標準の5’および3’末端を有する全長RNAゲノムとして転写されるであろうと予測した(細胞質コンパートメント内で複製するウイルスの場合)。
【0078】
本発明者らは最初に、この仮定を、主要なフラビウイルスの進化系統を代表する6種のフラビウイルス(すなわち、感染細胞の細胞質内で複製するプラス極性の一本鎖RNAゲノムを有する節足動物媒介性エンベロープウイルス):2種の日本脳炎ウイルス(JEV;遺伝子型I(JEV I)および遺伝子型III(JEV III))、1種の遺伝子型2ウエストナイルウイルス(WNV)、1種の血清型4デングウイルス(DENV−4)、黄熱病ウイルス(YFV)の1種の野生株、および1種の極東サブタイプダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)で試験した(表1)。
【0079】
全ゲノムは、各々70〜100bpの重複領域を有する約4kbの3つのDNAフラグメントにおいてPCRにより増幅した。最初および最後のフラグメントを、5’および3’でそれぞれヒトサイトメガロウイルスプロモーター(pCMV)と、肝炎デルタリボザイム、その後のサルウイルス40ポリアデニル化シグナル(HDR/SV40pA)とで挟んだ(
図1)。PCR産物をカラム精製し、すべてのフラグメントの1μgの等モルの混合物(mix)を、フラビウイルスの感染性ゲノムの効率的な回収を確実にするSW13および/またはBHK−21細胞株にトランスフェクトした。これらの感染性培養物由来の細胞上清培地を、JEV I、JEV III、TBEVおよびWNVの単離を可能にする同じ細胞型を用いて4回連続継代した。より要求の厳しいウイルスでは、追加の許容細胞(たとえば、DENV−4:VeroE6細胞;YFV:HEK−293細胞)で継代することにより単離を達成できた。4回の連続継代後のウイルス複製は、以下の基準の組み合わせを用いてウイルスごとに実証した:
(i)リアルタイムRT−PCR法を用いた細胞上清培地におけるウイルスゲノムの産生、
(ii)TCID50アッセイを用いた細胞上清培地における感染性粒子の産生、
(iii)細胞変性効果(CPE)の検出、
(iv)直接免疫蛍光アッセイによるウイルス抗原の検出、および
(v)次世代シーケンシング(NGS:next generation sequencing)法を用いた完全なウイルスゲノムシーケンシング。
【0080】
さらに本方法の頑健性、柔軟性および多用途性を以下の通り検証した。第1に、本発明者らは、大きさを小さくし、トランスフェクションのために組み合わせる重複フラグメントの数を増やした。これは、約2kbの最大6つの重複単位複製配列を使用したときにISA法により感染性ウイルスが生成されたJEV Iの場合で例証した。第2に、本発明者らは、異なる科に属するプラス極性の一本鎖RNAゲノムを有するウイルス:チクングニアウイルス(CHIKV、エンベロープウイルス、トガウイルス科(Togaviridae))およびコクサッキーウイルスB3(CV−B3、非エンベロープウイルス、ピコルナウイルス科(Picornaviridae))にISA法を適用した。やはり、HEK−293細胞(CHIKV)またはBGM細胞(CV−B3)におけるトランスフェクションおよび4継代後、感染性ウイルスを単離することができた(下の表2)。さらに、本発明者らは、プラスミド含有感染性ゲノムのトランスフェクション後に得られたCV−B3を対照として使用したところ、感染力および配列データの面で同様の結果を得た(表2)。
【0081】
【表3】
【0082】
本研究において産生された様々なウイルスの概要:株の種名、第1(I)、第2(II)および第3(III)のフラグメントの産生のために鋳型として使用した初期材料の起源(DNS、新規合成;I.C.、感染性クローン;またはウイルスRNA)、トランスフェクションおよび継代のために使用した細胞株、リアルタイムRT−PCRおよびTCID50アッセイによる4代継代の細胞上清におけるウイルスRNAの量および感染価の相対定量、細胞変性効果(CPE)の有無および直接免疫蛍光アッセイ(dIFA)によるウイルス抗原の調査。完全なウイルスゲノム配列は、NGS技術を用いて得た。dNおよびdSはそれぞれ、非同義部位あたりの非同義置換数および同義部位あたりの同義置換数に相当する。*6つの重複フラグメントのトランスフェクションにより得られた結果。¶CV−B3プラスミド含有感染性クローンを直接トランスフェクトすることにより得られた結果。N/AおよびAUはそれぞれ入手不可および任意単位を意味する。
【0083】
第3に、本発明者らは、数日で遺伝子改変ウイルスを生成するISA法の能力を実証した。これは、不完全なJEV III感染性クローンのフラグメントの1つにおけるフレームシフト突然変異(1915del)のPCRを用いた修正、および対応するウイルスのその後の回収(補足法(Supplementary Methods))により例証した。本発明者らはさらに、遺伝子型IおよびIIIのJEVの第1のDNAフラグメント(構造タンパク質をコードする)を交換することによりキメラウイルスを産生することができた。第1の2つのフラグメントにおける重複領域の11個のミスマッチにも関わらず、トランスフェクションの結果、遺伝子型間(intergenotypic)JEV I/JEV IIIおよびJEV III/JEV Iキメラが産生された。4代継代で作った完全なゲノム配列の、NGSを用いた解析から、遺伝的浮動(配列変化の割合)は中程度である(固定された突然変異を考慮すると、部位あたり1.45E−03〜9.00E−05置換の範囲)ことが示された。非同義突然変異が大部分であること、異なるJEV株間で共有された突然変異が存在すること(7/85)、および突然変異がゲノム(ホットスポットおよび高度に保存された領域の両方を有する)に沿って非ランダム分布であること(10%を超える頻度で)は、細胞培養条件への適応を示した。
【0084】
突然変異率は、単離に使用した細胞によって異なり、予想通り、培養適応株に由来するウイルスより低継代株に由来するウイルスで高かった。結論として、ISA方法は、既存の感染性クローン、ウイルスRNAまたは新規合成されたDNAゲノム配列を含む種々の初期供給源を出発物質としてウイルスの配列を完全に制御し、数日以内に感染性遺伝子改変RNAウイルスの産生を促進する非常に簡便な手順である。この技術はさらに、以前に考えられなかった規模でRNAウイルスに関する大きな逆遺伝学的実験計画を作成する可能性がある。本発明の方法はさらに、実験手順から回収されたウイルスの特徴を特異的に調節する能力も有する。加えて、DNAサブゲノムフラグメントはPCRにより都合よく得られるため、この方法は、ウイルスRNAを出発材料としたときにウイルス集団の遺伝的多様性13(population13)を保存する可能性がある。たとえば様々な実験の選択条件下に適合したウイルス15(viruses15)の選択を容易にするため、人工のウイルスの不均一性を惹起するのにError−prone PCRをさらに使用してもよく、逆に、産生されるウイルスのクローン性の度合いを制御するため、忠実度の高いポリメラーゼおよびクローン増幅鋳型を使用してもよい。
【0085】
最後に、本発明の方法は、その後受け取る研究所が組み合わせてトランスフェクトすることができる簡便な非感染性(on−infectious)DNAサブゲノムフラグメントの室温での別々の輸送により、科学施設間の将来のRNAウイルスの交換の安全および保護に大変革を起こす可能性があり、感染性ウイルス株の迅速、簡便かつ安全な回収を可能にする。
【0086】
実施例2:個々に別々のプラスミド中のcDNAフラグメントを用いたISA法
本発明者らはさらに、ステップc)が、ステップb)で得られたcDNAフラグメントを含むプラスミドまたはベクターのトランスフェクションステップであって、各cDNAフラグメントは個々に別々のプラスミドまたはベクター中にあるステップである特定の実施形態においてISA法を例証した。
【0087】
この実験は、PCR増幅後にISA法により感染性ウイルスを回収するのに以前使用したのと同じ日本脳炎ウイルスゲノム(遺伝子型I、ラオス株)のフラグメントを含む3つのプラスミドを用いて行った。
【0088】
3つのプラスミドを、制限酵素Fse Iを用いた消化により直線化し、前もってPCR増幅せずに等モル量(最終1μg)でSW13細胞に直接トランスフェクトした。9日および1継代後、ウイルスを成功裏に培養から回収した。
【0089】
実施例3:ISA法のin vivo応用
RNAウイルスの全ゲノムを包含し、かつ5’および3’でそれぞれDNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーターおよびターミネーター/RNAポリアデニル化シグナルに挟まれた重複フラグメントを本発明の方法を用いて調製した。
【0090】
これらのDNAフラグメントを生きた動物に直接接種し、いくつかの動物サンプルから感染性ウイルスを回収した。さらに、動物の臨床サーベイランス(症状の出現および著しい体重減少)により、典型的な感染の徴候が観察された。
【0091】
a)実験1:ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV;フラビウイルス)
本発明者らは、ダニ媒介脳炎ウイルスの野生株(Oshima 5.10株(GenBank受託番号AB062063))を使用した。本発明者らは、本発明の方法をDNA重複フラグメントに適用した。
【0092】
5週齢C57Bl/6J雌マウスに3つのDNA重複フラグメントを接種した。
【0093】
ウイルス感染の臨床経過を、
(i)疾患の臨床症状(震え、猫背、ダーティーアイ(dirty eyes)、片または四肢不全麻痺、片または四肢麻痺);および
(ii)Fabritus L et al.,2015,Attenuation of Tick−Borne Encephalitis Virus Using Large−Scale Random Codon Re−encoding.PLoS Pathog 11(3)により記載されたのとちょうど同じようなマウスの体重に従ってモニターした。
【0094】
接種の14日後、脳および脾臓を屠殺したマウスから採取した。
【0095】
脳および脾臓をすりつぶし、遠心した。得られた上清を使用して感染性ウイルスの存在を評価した。
【0096】
感染性ウイルスの存在は、分子法(リアルタイムRT−PCR)および古典的細胞培養法(感染性ウイルスの単離)を用いて評価した。
【0097】
2〜5μgの範囲の初期量のDNA、および2つの異なる接種経路(腹腔内注射および皮内注射)を用いて、感染性ウイルスが脳および脾臓の両方から検出された。さらに疾患の臨床症状(著しい体重減少および症状)も観察した。
【0098】
b)実験2:哺乳マウスの脳内接種
本発明者らは、ダニ媒介脳炎ウイルスの野生株(Oshima 5.10株(GenBank受託番号AB062063))および日本脳炎(JEV_CNS769_Laos_2009(GenBank受託番号KC196115))を使用した。本発明者らは、本発明の方法を使用してDNA重複フラグメントを生成した。
【0099】
DNA重複フラグメントは、PBSで希釈して使用するか、またはトランスフェクション試薬と混合した。
【0100】
哺乳OF1マウスは、DNA重複フラグメントの脳内注射により接種した。ウイルス感染の臨床経過を、疾患の臨床症状(震え、嗜眠)に従ってモニターした。接種の6〜12日後、屠殺したマウスから脳を採取した。脳をすりつぶし、遠心した。得られた上清を使用して感染性ウイルスの存在を評価した。
【0101】
感染性ウイルスの存在は、分子法(リアルタイム RT−PCR)および古典的細胞培養法(感染性ウイルスの単離)を用いて評価した。
【0102】
2μgのDNAを用いて、トランスフェクション試薬を添加してあるいは添加せずに両方のウイルス(TBEVおよびJEV)について、脳内の感染性ウイルスが検出された。さらに疾患の臨床症状も観察された。