【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、請求項1に記載のばねの設計によって、目的が実現される。従属請求項では、好適な実施形態が開示される。
【0014】
具体的には、以下の3つの下位の目的を実現することにより、前記目的が実現される。
【0015】
・プライは経済的要件に基づいて選択し、したがって具体的には、高充填の炭素繊維プライを、引張荷重される繊維プライに使用する。
【0016】
・引張プライおよび圧縮プライを、均一に荷重する。
【0017】
・マトリックス材のクリープと、その結果として生じるばね全体の長期間の変形とを防止するために、マトリックスによってプライ間で伝達される剪断力または剪断応力を最小化する。
【0018】
ねじり荷重された長尺構成要素の範囲に含まれるのはばねの支持構造のみであり、荷重導入要素、例えば適切に設計されたばね板上の領域およびばねの拘束手段の領域は含まれない。
【0019】
さらに以下の表現が、後述の説明において使用される。
【0020】
−引張方向:符号+に続く
−圧縮方向:符号−に続く
−長手方向軸線:−ばね素線の長手方向に沿った、ばね素線の中心の軸線であり、ばね素線軸線ともいう。
【0021】
−繊維角度α
j:−繊維角度とは、繊維配向方向と長手方向軸線との間の角度である。
【0022】
−プライL
i:−1つのプライは、複数の層を組み合わせることができ、例として一般に、多軸敷設スクリム/ヘリカル巻/組布のプライが、繊維配向が異なる2つの層を備える(+層および−層がそれぞれ1つずつ、例えば+−45°)。通常、プライの層は相互に連結される(例えば、圧着、編込、縫合、または密着接合)。
【0023】
−それに対して、UD(一方向)敷設スクリムプライは一般に、配向された繊維の配向方向に1つの層のみを備える。
【0024】
−しかしながら、複数のプライが層を形成することもできる(同一角度の配向方向および同一のプライ材料を備える、隣接する複数のUDプライがUD層を形成する)。
【0025】
−プライは一般に、無機強化繊維(例えば玄武岩繊維、ガラス繊維)、金属製強化繊維(例えば鋼繊維)、有機性強化繊維(例えば炭素繊維、アラミド繊維)、または天然繊維(例えば麻繊維)から構成される。
【0026】
−プライは関連するプライ肉厚LW
iを有する。
【0027】
−プライはまた、非耐荷重として分類される、強化繊維を含まない均質なプラスチックプライであってもよい(例えば、配列の外面の終端)。
【0028】
−プライはまた、配列の有する繊維が優先方向を持たない短繊維強化プラスチックプライまたは長繊維強化プラスチックプライであってもよく、前記プライは非耐荷重として分類される。
【0029】
−プライはまた、金属製材料から構成することもできる(例えば、金属シート製の終端プライ)。
【0030】
−プライ数iは、内側から外側に向かって増加する。
【0031】
−層S
j:−連続繊維強化層/織布繊維強化層の場合は、層S
jの全ての繊維が均一な角度の配向方向α
jを有する。
【0032】
−しかしながら、相互に並んで、または層内で混合して存在する異なる材料M
jの繊維があってもよい。
【0033】
−層はまた、強化繊維を含まない均質なプラスチックプライ、短繊維強化プラスチックまたは長繊維強化プラスチックを備えるプライ、金属製プライなどであってもよい。
【0034】
−層の数jは、内側から外側に向かって増加する。
【0035】
−繊維角度が引張方向(+)に20°から70°の範囲、または圧縮方向(−)に−20°から−70°の範囲である層は、耐荷重層と称する(引張方向(+)に30°から60°、または圧縮方向(−)に−30°から−60°であることが好ましい)。
【0036】
−耐荷重層は、繊維方向の引張応力(符号+)または圧縮応力(符号−)のどちらかに優先して対応するように働く。
【0037】
−引張方向(+)に20°から70°の角度範囲外、または圧縮方向(−)に−20°から−70°の角度範囲外の角度を備える層は全て、非耐荷重として分類される。
【0038】
−断面積A
sj:−各層が、関連する断面積A
sjを有する。
【0039】
−断面積には、長手方向軸線が直交する。
【0040】
−断面積は、例として円環状の断面の場合は、その円環内に含まれる面積を求める式によって計算される。
【0041】
−層軸線:−各層は、長手方向軸線に対して繊維角度α
jで通り、長手方向軸線に沿って螺旋状に、層プロファイルに従って回転する軸線を有する。
【0042】
−層径D
j:−対応する層の内径と外径から算術平均して導き出された直径。
【0043】
−圧着された層(例えば組布)の場合で、2つの層が得られるときは、その2つの層の層径は同じである。
【0044】
−層剛性E
Sj:層剛性E
Sjは、長手方向軸線に対して+/−45°の配向方向に変換された、それぞれの層の全ての繊維成分およびマトリックス成分の、個々の係数または組み合わせた係数である(古典積層理論の混合規則に従う(例えば、Puck、Tsai、Niederstadt、Geier)。
【0045】
−絶対値のみ使用される。
【0046】
−層剛性E
Sjの計算式:
【数1】
【0047】
E
Sj−層剛性、E
1−材料の繊維に対して縦方向の剛性
M
j、E
2−材料M
jの繊維方向に対して垂直の剛性、
G
12−材料の剪断係数
M
j、v
12−材料の主ポアソン比
M
j、v
21−材料M
jの従ポアソン比。
【0048】
−グループG
k:−荷重方向(引張配向方向または圧縮配向方向)に互いに接触する1つまたは複数の耐荷重層が、それぞれ合わさってグループG
kを形成する。
【0049】
−グループの編成は、使用される材料、または特定のプライへの割り当てに依存しない。
【0050】
−層間またはプライ間の接触についての判断では、非耐荷重として分類されたものは無視され、したがって、物理的に互いに接触しない層も、互いに接触するものとして見なされることがある。
【0051】
−グループは内側から付番される。
【0052】
−グループ軸線:−各グループは、引張配向方向または圧縮配向方向に従って、長手方向軸線に対して+45°(引張)または−45°(圧縮)で通り、長手方向軸線に沿って螺旋状に、層プロファイルに従って回転するグループ軸線を有する。
【0053】
−グループ剛性E
Gk:−グループ剛性E
Gkは、それぞれのグループの全ての繊維成分およびマトリックス成分の、グループ軸線の方向に変換された、面積で重み付けした個々の係数または組み合わせた係数に対応する。(古典積層理論の混合規則に従う(例えば、Puck、Tsai、Niederstadt、Geier)。
【0054】
−絶対値のみ使用される。
【0055】
−グループ剛性E
Gkの計算式:
【数2】
【0056】
E
Gk−グループkのグループ剛性、
E
Sj−層jの層剛性、
A
Sj−層jの断面積。
【0057】
−グループ引張剛性F
Gk:−グループのグループ剛性と関連する断面積との積
−グループ引張剛性F
Gkの計算式:
【数3】
【0058】
F
Gk−グループkのグループ引張剛性、
E
Gk−グループkのグループ剛性、
A
Sj−層jの断面積。
【0059】
−対P
n:−互いに接触する2つのグループがそれぞれ一対を形成する。(グループの編成は必ず、+45°と−45°のグループ軸線を持つ2つのグループが一対を構成するものとなる必要がある。)
−層間またはプライ間の接触についての判断では、非耐荷重として分類されたものは無視され、したがって、物理的に互いに接触しないグループも、互いに接触するものとして見なされることがある。
【0060】
−対の編成は最も内側のグループから始まり、外側へ向かって連続的に続く。
【0061】
−既に正常に一対に割り当てられているグループは、そのグループと接触する他のグループと一対を形成することができない。
【0062】
−グループ比率GV
n:−グループ比率は、次のように一対のグループに割り当てられる。+45°のグループ軸線を持つグループのグループ引張剛性を、−45°のグループ軸線を持つグループのグループ引張剛性で除算する(グループ剛性の計算で使われるのは絶対値のみであるため、ここではグループ引張剛性値の前に符号を付さない)。
【0063】
−対比率PV
n:−対比率は、次のように互いに接触する二対に割り当てられる。内側の対の剛性を、接触する対の剛性で除算する。
【0064】
−混合繊維−種々の材料の単繊維から構成される、ロービングまたは繊維束。
【0065】
設計方法またはばね素線の繊維配列に関する以下の考察は、製造された構成要素における、計算された、または定義された繊維角度α
jの理想的な一致に基づくものである。形成工程(例えば、伸びたばね素線をばね軸線に沿って螺旋状にする巻回)、設備特有の製造公差(例えば、巻回設備の回転速度の変動)、または取扱い工程に起因する変位(例えば、中間製品の手作業での運搬)を原因として、製造された構成要素の+方向および−方向のそれぞれで起こり得る、計算された値からの角度変位は、角度差の絶対値が20°未満、好ましくは10°未満、特に好ましくは5°未満である限り、提案される設計方法の目的にとって重要なものではない。
【0066】
本発明の好ましいばね設計方法によって提供されるのは、以下の通りである。
【0067】
経験から得た値に基づき、従来技術に従って、ばねを予め設計すること。このばねのパラメータは、ばねを最適化するための開始パラメータとして、本発明の方法によって使用される。
【0068】
ループベースの工程で、必要とされる設計基準の全てを満たすために、下記の設計ステップは全て、個々に反復して実行するか、または全体で繰り返し実行しなければならない。
【0069】
ステップ1:
第1のステップでは、少なくとも1つの引張荷重されるグループで、高い剛性を有する繊維材、例えば炭素繊維を使用するように、ばね素線の構造が設計される。それにより、設計工程から、最も高いグループ剛性を有する、引張荷重されるグループを識別することができる。次に、少なくとも1つの圧縮荷重されるグループを、より低いグループ剛性を有するように設計する必要がある。「低い」という分類は、圧縮荷重されるグループのグループ剛性が、引張荷重されるグループの90%以下、好ましくは80%以下、特に60%以下である場合に、その圧縮荷重されるグループに適用される。したがって、少なくとも1つの圧縮荷重されるグループのグループ剛性が、最も高いグループ剛性を有する引張荷重されるグループに対して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは40%減少している。より低いグループ剛性は、例えばガラス繊維材を使用して実現されることが好ましい。好ましくは、炭素繊維製の複数の引張荷重されるグループが、低いグループ剛性を有する圧縮荷重されるグループと互いに接触して存在する。特に好ましくは、引張荷重されるグループの全てが炭素繊維から構成され、圧縮荷重されるグループの全てがより低いグループ剛性を有する。
【0070】
例として、これは以下の案のうちの1つによって、または2つもしくは3つの組み合わせによって達成される。
【0071】
案I:異なる繊維材
−このために、引張荷重されるグループにおいて高強度繊維(例えばHTCF)を使用し、圧縮荷重されるグループにおいて低剛性繊維(例えばGF)を使用する。
【0072】
案II:異なる繊維角度
−圧縮荷重されるグループがより低いグループ剛性を有するように、繊維角度によってグループ剛性を適切に微調整することができる。
【0073】
案III:種々の繊維の混合
−別の案は、剛性の変化が繊維角度によって補償できないほど大きい場合に、圧縮荷重されるグループで必要とされる、より低いグループ剛性値を得られるように、主繊維の種類を混合した種々の材料を使用することである。
【0074】
ステップ2:
次に、内側から外側に向かって対が形成される。長期間の荷重下でのマトリックス材のクリープの問題は、一般に、ばねのグループ間における剪断応力が非常に高いことが原因である。グループ間の剪断応力を回避するため、または大幅に低減するために、一対のグループが同等のグループ引張剛性値を有するものとし、これは例として、断面積、繊維含量、繊維角度、または材料の選択による影響を受け得る。一対の2つのグループ引張剛性値から、グループ比率が計算される。グループ比率は、所定の範囲内でなければならない。本設計方法によって提供されるグループ比率GVは0.2<=GV<=5の範囲であり、好ましくは0.5<=GV<=2、特に好ましくは0.75<=GV<=1.33である。
【0075】
許容できるグループ比率を得るために、例として、適切に調整された断面積を使用して、種々の繊維種の種々の材料の剛性値を補償する必要がある。このために、繊維の負荷能力に応じて、好ましい手順で繊維剛性を選択する。例として、炭素繊維(HTCF)は圧縮荷重下においてエネルギー蓄積密度が低く、そのため引張荷重される層で好適に、効率的に使用できる。ガラス繊維は優れた圧縮率を有し、そのため圧縮荷重される層にも正常に使用できる。例として、HTCF繊維製の引張荷重されるグループと、ガラス繊維製の圧縮荷重されるグループとが、それぞれ1つの層のみを有し、一対を形成する。次に、引張荷重されるグループ(HTCF)が圧縮荷重されるグループ(GF)よりも高いグループ剛性を有する。好ましいグループ比率は、層肉厚を適切に調整することで、したがって断面積を適切に調整することで設定できる。グループ剛性と関連する断面積との積から、グループ引張剛性が得られる。HTCFとガラス繊維とによって構成される対の場合、例として、引張荷重されるグループの層肉厚を1mm、圧縮荷重されるグループの層肉厚を2.5mmとすることができる。したがって、関連する断面積によって、引張荷重されるグループおよび圧縮荷重されるグループの各グループ引張剛性値をほぼ同等にすることができ、グループ比率値が所望の範囲内となる。その結果、グループ間における剪断応力がほとんどなく、そのため、ばね素線のクリープ挙動が有利なものとなる。
【0076】
別の好ましい実施形態では、1つもしくは複数の中間層または外層を使用できる。この中間層または外層は、極めて薄いために構成要素の支持挙動にほとんど寄与しないが、例として、その繊維配向方向によってばねの横剛性に寄与するか、または環境媒体の悪影響に対抗する層の終端となる。しかしながら、本発明では、非耐荷重として分類される層が構成するのは、ばね素線の質量(コアを含まない)の25%以下、好ましくは15%、特に好ましくは5%のみであることを意図している。
【0077】
さらに好ましくは、より低いグループ剛性を有する圧縮荷重されるグループの質量が、ばね素線の圧縮荷重されるグループの全ての質量を基準として、少なくとも20%、好ましくは50%、特に好ましくは95%の割合を占めるばね素線を使用する。本発明のねじりばねの特に好ましい実施形態によって、引張荷重されるグループが、内側から外側まで同じグループ剛性(製造公差の範囲内)を有することができる。特に好ましい別の実施形態では、さらに圧縮荷重されるグループも、または圧縮荷重されるグループのみが、内側から外側まで同じグループ剛性(製造公差の範囲内)を有する。さらに好ましくは、内側に位置する少なくとも1つの圧縮荷重されるグループが、より外側に位置する引張荷重されるグループよりも低いグループ剛性を有する。
【0078】
さらに好ましくは、ばね素線の全体質量(コアを含まない)の少なくとも50%、好ましくは75%、特に好ましくは95%の割合のばね素線のグループが正常に一対に割り当てられている、ばね素線を使用する。
【0079】
さらに好ましくは、繊維強化材を含まない外面プラスチックプライまたはマトリックス材から作られたプライを適用する。しかしながら本発明の方法では、荷重が生じるとき、少なくとも75%、好ましくは85%、特に好ましくは95%の弾性エネルギーが、外面プラスチックプライではなく繊維複合材料によって蓄積される。ここでは、外面プラスチックプライは破損するが、繊維強化プライおよび備えられていてもよいコアは損傷を受けないという別の可能性も含まれる。
【0080】
本発明のばねの計算上の設計には、コンピューター支援を利用することが好ましい。本発明の方法に従って設計を行った後は、従来技術の工程によってばねを製造する。
【0081】
本発明では、圧縮荷重されるグループおよび引張荷重されるグループが少ない数の種々の繊維材から構成されるように、ばねの耐荷重断面の材料選択が設計される(非耐荷重である塗装などは無視する)。圧縮荷重されるグループには、安価な材料、例えばガラス繊維(GF)を使用することが好ましい。質量別のエネルギー蓄積密度を増加させるために、引張荷重される繊維の領域で炭素繊維(CF)を使用することもできる。
【0082】
本発明のばねのばね素線が、円形断面を有することが好ましい。しかしながら、長円形または多角形の断面でもよい。ばねには、コアが備えられていてもよい。コアは、繊維が長手方向軸線に平行して一方向に伸びる繊維複合材料から構成されることが好ましい。他の好ましい実施形態では、繊維複合材料または非強化プラスチック外殻が軸方向穴を取り囲む中空コアが提供される。さらに好ましくは、コア全体がプラスチックで構成されるか、またはコアが穴のみによって構成される。
【0083】
さらに好ましくは、隣接する対の対比率の相互の差がごくわずかであり、それにより対の間で生じる剪断応力が最小化され、したがって、ばね素線のクリープ傾向を最小限にすることができる。前記対比率は、二対のグループの剛性値から計算される。
【0084】
本発明のばねは、自動車両および鉄道車両における車両の構造で使用されることが好ましい。しかしながら、ばねに使用される材料が環境条件によって許容できない範囲まで侵されることのない、螺旋ばねまたはより一般のねじりばねの、あらゆる用途分野において使用が可能である。