特許第6747985号(P6747985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6747985TNFR:Fc融合タンパク質の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747985
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】TNFR:Fc融合タンパク質の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20200817BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20200817BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20200817BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20200817BHJP
   C12N 9/50 20060101ALN20200817BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20200817BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20200817BHJP
【FI】
   C07K1/16
   C07K1/22
   C07K1/20
   C07K1/18
   !C12N9/50
   !C07K14/715
   !C07K19/00
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-572703(P2016-572703)
(86)(22)【出願日】2015年6月13日
(65)【公表番号】特表2017-521389(P2017-521389A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】IB2015054494
(87)【国際公開番号】WO2015189832
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月5日
(31)【優先権主張番号】1919/MUM/2014
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】516225854
【氏名又は名称】ルピン アトランティス ホールディングス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】バナージー,アビール
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシー,チャンドラナス
(72)【発明者】
【氏名】モディ,ラストム,ソラブ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,アショク
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0128577(US,A1)
【文献】 中国特許第102911250(CN,B)
【文献】 国際公開第2014/043103(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/009526(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/078627(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/025079(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/176158(WO,A1)
【文献】 特表2010−501622(JP,A)
【文献】 特表2011−514895(JP,A)
【文献】 特表2011−500757(JP,A)
【文献】 特表2012−507557(JP,A)
【文献】 Biotechnol. Bioeng., 2009, Vol.104, No.6, p.1132-1141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
A61K 38/00−38/58;41/00−45/08;48/00;50/00;51/00−51/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、採集細胞培養液から取得すること;
b)タンパク質混合物をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムを2回以上洗浄すること、ここで、該洗浄は
a')結合したTNFR:Fc融合タンパク質を、pH8〜pH9の範囲のpHを有する緩衝液で洗浄すること、及び
b')結合したTNFR:Fc融合タンパク質を、pH4〜pH5の範囲のpHを有する緩衝液で洗浄すること
を含んでなる
d)TNFR:Fc融合タンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
e)第2のタンパク質混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに適用すること;
f)TNFR:Fc融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第3のタンパク質混合物中に存在すること;
g)第3のタンパク質混合物をアニオン交換クロマトグラフィーカラムに適用すること;
h)TNFR:Fc融合タンパク質をアニオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第4のタンパク質混合物中に存在すること;
i)第4のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
j)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に含まないこと
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とタンパク質分解酵素を含有する少なくとも1つのHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法。
【請求項2】
混合モードクロマトグラフィーがフロースルーモードで行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)において、タンパク質混合物がpH6〜pH6.8の範囲の適切なpHでの混合モードクロマトグラフィーカラムに適用される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)において、タンパク質混合物が30mS/cm〜42mS/cmの範囲の適切な導電率での混合モードクロマトグラフィーカラムに適用される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
TNFR:Fc融合タンパク質がエタネルセプトである請求項1に記載の精製方法。
【請求項6】
工程(c)において、a')の緩衝液が50mS/cm〜75mS/cmの範囲の導電率を有し、b')の緩衝液が10mS/cm〜30mS/cmの範囲の導電率を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1の工程(d)において、TNFR:Fc融合タンパク質が線形グラジエント若しくはステップグラジエント又はそれらの組合せで溶出される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
線形グラジエントが2〜3.5の範囲のpHを有する溶出緩衝液及び4〜5の範囲のpHを有する洗浄緩衝液を適切な比で混合することにより達成される請求項に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質分解酵素が少なくとも90%除去される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a.TNFR:Fc融合タンパク質と、適切なプロテアーゼ活性検出アッセイにより決定されるタンパク質分解活性を有する少なくとも1つのHCPとを含む採集細胞培養液を取得すること;
b.(a)の採集細胞培養液を、2以上の洗浄工程を含む少なくとも1つのプロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程に供して、TNFR:Fc融合タンパク質を含む第1のタンパク質組成物を取得すること、ここで、前記洗浄工程は
a')結合したTNFR:Fc融合タンパク質を、pH8〜pH9の範囲のpHを有する緩衝液で洗浄すること、及び
b')結合したTNFR:Fc融合タンパク質を、pH4〜pH5の範囲のpHを有する緩衝液で洗浄すること
を含んでなる
c.第1のタンパク質組成物を、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程に供して、TNFR:Fc融合タンパク質を含む第2のタンパク質組成物を取得すること;
d.第2のタンパク質組成物を、アニオン交換クロマトグラフィー工程に供して、TNFR:Fc融合タンパク質を含む第3のタンパク質組成物を取得すること;
e.第3のタンパク質組成物を、混合モードクロマトグラフィー工程に供して、TNFR:Fc融合タンパク質を含み、ゼラチンザイモグラフィーにより決定されるタンパク質分解活性を実質的に有さない最終タンパク質組成物を取得すること;
を順次含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質組成物内のプロテアーゼ活性を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はTNFR:Fc融合タンパク質の精製に関する。より具体的には、HCPが減少したTNFR:Fc融合タンパク質の精製に関する。本発明は、HCPに存在する少なくとも1つのタンパク質分解酵素を実質的に含まないTNFR:Fc融合タンパク質を製造するための、混合モードクロマトグラフィー及び/又はアフィニティークロマトグラフィーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タンパク質は、糖尿病(例えば、インスリン)、ガン(例えば、インターフェロン、モノクローナル抗体)、心発作、卒中、嚢胞性線維症(例えば、酵素、血液因子)、炎症疾患(例えば、腫瘍壊死因子)、貧血(例えば、エリスロポエチン)、血友病(例えば、血液凝固因子)などを含む疾患を治療するために広く用いられているので、バイオ医薬品において重要である。重要な難題の1つは、これらタンパク質の大規模精製のための効率的で適格な方法の開発である。採集細胞培養液(HCCF)からの興味対象タンパク質の大規模精製には多くの方法が利用可能であるが、精製した興味対象タンパク質と共に、依然として幾らかの不純物が残留し、このような不純物は、興味対象タンパク質の長期安定性及び品質にとって有害であることが証明されている。興味対象タンパク質は、一連のクロマトグラフィー技法及び限界ろ過/透析ろ過技法を用いてHCCFから精製される。
【0003】
HCCFからTNFR:Fc融合タンパク質を精製するための多くの方法が開発されてきたにもかかわらず、細胞発現系のバラツキに起因して、一般的な精製法は、多くの場合、プロセス関連不純物から興味対象タンパク質を適切に精製することができないことが観察されている。細胞培養又は発酵の間に宿主細胞が産生する興味対象タンパク質は、宿主細胞由来タンパク質(HCP)、宿主細胞DNA、プロセス添加物、外来物質、トキシン及び或る種のプロダクト関連物質から精製しなければならない。これら不純物は、精製した興味対象タンパク質には望ましくなく、そのレベルは、該生成物がヒト治療用途にとって安全な許容レベルに保たれる必要がある(Wangら,2009 Jun 15,Biotechnol Bioengineering 103(3):446-58)。
【0004】
腫瘍壊死因子(TNF)は、強力なサイトカインであり、細胞表面レセプターへの結合により媒介される広範な生物学的応答を誘発する。TNFは、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、SLE、クローン病などのような多くの炎症性障害の病因に関与する(Hohmannら,1989,J Biol Chem. 25, 14927-34)。生物学的薬剤によるTNF-αの直接阻害は、慢性関節リウマチ治療の有意な進歩をもたらし、この炎症誘発性サイトカインの細胞外阻害を有効な治療法として確証する。組換えTNFR:Fc融合タンパク質は、サイトカインTNFに結合し、TNFの活性をブロックする。TNF阻害剤の例として、TNFR:Fc融合タンパク質(エタネルセプト)及び抗TNFモノクローナル抗体(アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ及びセルトリズマブペゴル)が挙げられる。
【0005】
エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結した、ヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子レセプター(TNFR、タイプII)の細胞外リガンド結合部分からなる二量体融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分は、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びヒンジ領域からなり、CH1ドメインは存在しない(米国特許第7648702号)。エタネルセプトは、組換えDNA技術によりチャイニーズハムスター卵巣哺乳動物細胞で製造される。エタネルセプトは、934アミノ酸からなり、約130キロダルトンの見掛けの分子量を有する。その独特な構造に起因して、エタネルセプトは、TNFαに、内因性レセプターより効率的に結合する(Gofeeetら,2003,J Am AcadDermatol. 49,S105-111;Strober,2005,SeminCutan Med Surg. 24:28-36)。
【0006】
米国特許第7294481号は、プロテインAクロマトグラフィーに続く疎水性相互作用クロマトグラフィーによるTNFR:Fcタンパク質の精製を開示する。
EP2729482A1は、プロテインAクロマトグラフィーに続くカチオン交換クロマトグラフィー、続いてアニオン交換クロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製を開示する。
WO2004076485は、プロテインAクロマトグラフィーに続くアニオン交換クロマトグラフィー、続いてカチオン交換クロマトグラフィーによる抗体の精製を教示する。
WO2013176754は、フロースルーモードでの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)による、興味対象タンパク質からの少なくとも1つのプロセス関連不純物及び/又はプロダクト関連物質の低減方法を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
1つの実施形態において、本発明は、混合モードクロマトグラフィーをフロースルーモードで行うことによりTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
別の1つの実施形態において、本発明は、混合モードクロマトグラフィーをフロースルーモードで行うことによりTNFR:Fc融合タンパク質からHCPを低減させる方法に関する。
別の1つの実施形態において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィーを含んでなるクロマトグラフィー法によりHCPを低減させる方法に関する。
【0008】
更に別の1つの実施形態において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィーを行い、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を行い、続いてアニオン交換クロマトグラフィーを行い、続いて混合モードクロマトグラフィーを行うことによりTNFR:Fc融合タンパク質からHCPを低減させる方法に関する。
更に別の実施形態において、本発明は、HCP、凝集体及びミスフォールド体を低減させて実質的に純粋なTNFR:Fc融合タンパク質(サイズ排除-高圧液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)により99%純粋なTNFR:Fc融合タンパク質、疎水性相互作用(HI)-HPLCにより>80%純粋なTNFR:Fc融合タンパク質)を取得する方法に関する。
1つの実施形態において、本発明は、HCPに存在する少なくとも1つのタンパク質分解酵素を実質的に含まないTNFR:Fc融合タンパク質を製造するための混合モードクロマトグラフィーの使用に関する。
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、TNFR:Fc融合タンパク質とHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法であって、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に含まないこと
を含んでなる方法に関する。
【0010】
別の1つの実施形態において、本発明は、TNFR:Fc融合タンパク質とタンパク質分解酵素を含有する少なくとも1つのHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法であって、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第3のタンパク質混合物中に存在すること;
f)第3のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
g)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的含まないこと
を含んでなる方法に関する。
【0011】
別の1つの実施形態において、本発明は、TNFR:Fc融合タンパク質とタンパク質分解酵素を含有する少なくとも1つのHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法であって、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第3のタンパク質混合物中に存在すること;
f)第3のタンパク質混合物をアニオン交換クロマトグラフィーカラムに適用すること;
g)TNFR:Fc融合タンパク質をアニオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第4のタンパク質混合物中に存在すること;
h)第4のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
i)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物が実質的に含まないこと
を含んでなる方法に関する。
【0012】
別の1つの実施形態において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィーカラム後の任意の工程で行うことができる混合モードクロマトグラフィーカラムを用いて、タンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
別の1つの実施形態において、本発明は、TNFR:Fc融合タンパク質とHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法であって、以下:
a)TNFR:Fc融合体と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
d)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用しない方法による場合と比較して、HCP不純物の含有量が減少していること
を含んでなる方法に関する。
【0013】
更に別の1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に低減させ、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%低減させ、より好ましくは許容可能な限度を満たす程度にまで低減させる。
更に別の1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に低減させ、TNFR:Fc融合タンパク質を、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも1月間、より好ましくは少なくとも6月間、最も好ましくは少なくとも1年間安定化させる。
1つの実施形態において、本発明は、混合モードクロマトグラフィーをフロースルーモードで行うことによりTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
【0014】
以下に記載する本発明の1又は2以上の実施形態の詳細は、本質的に例示目的であり、本発明の範囲を制限する意図ではない。本発明の他の特徴、目的及び利点は本発明の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、中間洗浄工程を含まないプロテインAクロマトグラフィーによるプロテインA溶出物中にプロテアーゼ活性が存在することを示すゼラチンザイモグラムを説明する。図1(B)は、中間洗浄工程を含むプロテインAクロマトグラフィーによるプロテインA溶出物中にプロテアーゼ活性が存在しないことを示すゼラチンザイモグラムを説明する。
図2図2(A)は、精錬工程として混合モードクロマトグラフィーを含まない下流精製のサイズ排除-HPLCによる加速プロテアーゼ分解試験分析を説明する。図2(B)は、混合モードクロマトグラフィーを含む下流精製のサイズ排除-HPLCによる加速プロテアーゼ分解試験分析を説明する。
図3図3は、HCPの検出における、加速安定性試験とザイモグラム及びELISAとの感度の比較を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、流加(fed-batch)及び/又は灌流技術により得られるHCCFからTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
本発明は、HCP中に存在する少なくとも1つのタンパク質分解酵素を実質的に含まないTNFR:Fc融合タンパク質を製造するための混合モードクロマトグラフィーの使用に関する。
本発明は、プロテインA及び混合モードクロマトグラフィーを含んでなる中間クロマトグラフィー工程により、興味対象タンパク質から不純物、特にHCPを低減させる方法に関する。HCPは90%低減され、より具体的にはHCPは99%低減される。好ましくは、HCPは許容可能な限度を満たす程度まで低減される。
HCPは、100ppm程度の低レベルで患者において免疫応答を引き起こし得る。HCPは、従来の精製法では完全に排除されないので、通常、薬剤物質及び医薬品中に少量存在する。HCPを可能な限り多く除去するために、当業界で多くの努力及び費用が費やされている。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞タンパク質(HCP)」は、宿主細胞に由来する、プロテアーゼであるタンパク質分解酵素及び他の非標的タンパク質に関連するタンパク質性不純物を含んでなる。HCPクリアランスは、HCPの1又は2以上がプロテアーゼであるときには尚更に有意義である。なぜならば、プロテアーゼは、興味対象タンパク質を加水分解し(崩壊させ)得るからである。プロテアーゼの存在は、非常に低いレベルでさえ、興味対象タンパク質の長期安定性を損ない得る。タンパク質分解酵素に加えて、HCPは、凝集体、ミスフォールドしたタンパク質及びフラグメントを含む(これらに限られない)不純物を含有する。
【0018】
任意のプロテインAクロマトグラフィー樹脂は、TNFR:Fc融合タンパク質及び他のモノクローナル抗体の捕捉工程として用いられる場合、HCCFから大部分の不純物を除去することができるが、幾らかの量のHCP(1又は2以上のプロテアーゼ、例えば、マトリクスメタロプロテアーゼ(好ましくはゼラチナーゼ)を含む)が、プロテインA樹脂への非特異的結合に起因して、依然として興味対象タンパク質と共溶出することがある。異なるクロマトグラフィー工程の組合せは、プロテインAクロマトグラフィー後に依然として存在する痕跡量のプロテアーゼの除去に更に役立つ。
本明細書で使用する場合、用語「結合-溶出モード」とは、カラムにロードされたとき、興味対象タンパク質がクロマトグラフィー樹脂に結合し、その後溶出緩衝液と溶出する、クロマトグラフィーによる精製のモードをいう。
本明細書で使用する場合、用語「フロースルーモード」とは、ロードされたとき、高分子量不純物、HCP及びエンドトキシンがクロマトグラフィー樹脂に結合し、興味対象タンパク質が貫流するクロマトグラフィーによる精製のモードをいう。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「融合タンパク質」には、エタネルセプト、アバタセプト、アレファセプト、リロナセプト、ベラタセプト、アフリベルセプトが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、用語「TNFR」とは、TNFレセプターファミリーに属するタンパク質の細胞外可溶性フラグメントを完全に又は部分的に含む生物学的に活性な糖タンパク質である。TNFレセプターファミリーの幾つかの例は、腫瘍壊死因子レセプターI(TNFRI)、腫瘍壊死因子レセプターII(TNFRII)、OX40抗原、CD40Lレセプター、FASLレセプターである。TNFR1は、ヒト55キロダルトン(p55)の細胞外リガンド結合部分からなり、TNFRIIは、ヒト75キロダルトン(p75)の細胞外リガンド結合部分からなる。
【0020】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、言及された値よりおよそ10〜20%大きい又は小さい範囲をいうものとする。或る特定の状況において、当業者は、言及された値の性質に起因して、用語「約」が当該値からの10〜20%逸脱より大きいか又は小さいことを意味することがあり得ることを認識する。
句「ウイルス低減/不活化」は、本明細書で使用する場合、特定サンプル中のウイルス粒子の数の減少(「低減」)及び特定サンプル中のウイルス粒子の活性(例えば[これらに限られないが]、感染性又は複製能力)の低下(「不活化」)をいうものとする。このようなウイルス粒子の数の減少及び/又は活性の低下は、約1%〜約99%、好ましくは約20%〜約99%、より好ましくは約30%〜約99%、より好ましくは約40%〜約99%、更により好ましくは約50%〜約99%、更により好ましくは約60%〜約99%、尚より好ましくは約70%〜約99%、尚より好ましくは約80%〜99%、尚より好ましくは約90%〜約99%のオーダーであり得る。
【0021】
本明細書で使用する用語「凝集体」は、2又は3以上の個々の分子の凝塊形成又はオリゴマー形成を意味し、タンパク質の二量体、三量体、四量体、オリゴマー及び他の高分子量種を含むがこれらに限定されない。タンパク質凝集体は可溶であることも不溶であることもある。
本明細書で使用する用語「タンパク質分解酵素」は、宿主細胞タンパク質に由来し、興味対象タンパク質を分解する不純物を意味する。「タンパク質分解酵素」は、プロテアーゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ、ゼラチナーゼを含むがこれらに限定されない。
用語「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」及び「CHOP」は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物に由来する宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物をいうものとして互換的に用いられる。HCP又はCHOPは、一般に、細胞培養培地又は溶解物(例えば、CHO細胞に発現させた興味対象タンパク質[例えばTNFR:Fc融合タンパク質]を含む採集細胞培養液(「HCCF」))に不純物として存在する。興味対象タンパク質を含む混合物中に存在するCHOPの量は、興味対象タンパク質の純度の目安を提供する。HCP又はCHOPは、宿主細胞、例えばCHO宿主細胞が発現した興味対象タンパク質を含むがこれに限定されない。代表的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、当該混合物中の興味対象タンパク質の量に対するppm(parts per million)で表される。
【0022】
用語「線形グラジエント」は、本明細書では、pH及び/又は導電率が、pH若しくは導電率又はその両方に関して異なる少なくとも2つの緩衝液を用いて徐々に増加又は減少する条件をいうものとして用いられる。
用語「グラジエント溶出」は、本明細書では、一般に、pH及び/又は導電率が、pH若しくは導電率又はその両方に関して異なる少なくとも2つの緩衝液を用いて増加又は減少する条件をいうものとして用いられる。
用語「精製」、「分離」又は「単離」は、本明細書で交換可能に用いられ、当該ポリペプチドと1又は2以上の不純物又は夾雑物(少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含む)とを含むタンパク質混合物からの興味対象のポリペプチド若しくはタンパク質又は標的タンパク質の純度を増大させることをいう。代表的には、標的タンパク質の純度は、組成物から少なくとも1つの不純物を(完全又は部分的に)除去することにより増大させる。
「精製工程」又は「単位操作」は、「均質な」組成物又はサンプルをもたらす、全体的精製プロセスの部分であり得る。「均質な」組成物又はサンプルは、本明細書では、興味対象タンパク質を含む組成物中に1000ppm未満のHCP、或いは、900ppm未満、800ppm未満、700ppm未満、600ppm未満のHCPを含む組成物又はサンプルをいうために用いられる。用語「精製」、「分離」又は「単離」は、本明細書で交換可能に用いらされ、当該ポリペプチドと1又は2以上の不純物又は夾雑物とを含む組成物又はサンプルからの興味対象のポリペプチド若しくはタンパク質又は標的タンパク質の純度を増大させることをいう。
【0023】
代表的には、標的タンパク質の純度は、組成物から少なくとも1つの不純物を(完全又は部分的に)除去することにより増大させる。標的タンパク質の純度は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%である。
本明細書で使用する用語「タンパク質混合物」とは、本発明で用いられる1又は2以上のクロマトグラフィー工程から得られる溶出組成物をいう。用語「タンパク質混合物」は更に、本発明においては、用いるクロマトグラフィーカラム及びタンパク質混合物中に存在し得る不純物(例えば、不完全Fc含有タンパク質フラグメント、凝集体及び宿主細胞タンパク質(HCP)並びにタンパク質分解酵素)の程度に応じて、「第1のタンパク質混合物」、「第2のタンパク質混合物」、「第3のタンパク質混合物」、「第4のタンパク質混合物」、「第5のタンパク質混合物」として規定される。しかし、用語「第1のタンパク質混合物」、「第2のタンパク質混合物」、「第3のタンパク質混合物」、「第4のタンパク質混合物」、「第5のタンパク質混合物」は、精製ストラテジで用いるクロマトグラフィーカラムのシフト又は省略に応じて互換可能である。
【0024】
1つの実施形態において、TNFR:Fc融合タンパク質はエタネルセプトである。エタネルセプトの等電点(pI)値は約4.8〜5.2から選択される。
或る特定の実施形態において、採集細胞培養液(HCCF)は、適切な哺乳動物系、好ましくはCHO細胞培養物から得られる。HCCFの浄化は遠心分離及び/又はろ過技法で行うことができる。0.2ミクロンフィルターを用いて、浄化採集細胞培養液(HCCF)を作製する。浄化HCCFは、本発明に記載するクロマトグラフィー技法により更に精製することができる。
或る特定の実施形態において、本発明は、混合モードクロマトグラフィーを用いることによりTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。具体的実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程(好ましくはプロテインAクロマトグラフィー工程)及び少なくとも1つの混合モードクロマトグラフィー工程を用いる。
或る特定の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程と、少なくとも1つの混合モードクロマトグラフィー工程と、少なくとも1つ又は2つ以上の追加のクロマトグラフィー工程とを用いる。追加のクロマトグラフィー工程は、イオン交換クロマトグラフィー(好ましくはアニオン交換クロマトグラフィー)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)から選択することができる。
1つの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、プロテインA樹脂、プロテインG樹脂から選択され、好ましくはプロテインA樹脂である。プロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂は、MabSelect Sure LX、MabSelectSuRe、MabSelectXtra、ProSep Ultra Plus、Toyopearl AF-rProtein A HC-650から選択される。
【0025】
1つの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィー工程は、適切な哺乳動物発現系から得た浄化採集細胞培養液(HCCF)を含んでなる。HCCFのpHは、アフィニティーカラムへのローディング直前に、2M Tris塩基で、約pH8〜約pH9から選択されるpH、好ましくはpH8.5に調整する。プロテインAカラムは、サンプルローディング前に適切な緩衝液で平衡化する。適切な緩衝液は、約pH8〜約pH9から選択されるpH、好ましくはpH8.5のTris-Cl緩衝液、HEPES、トリエタノールアミン、ボレート、グリシン-NaOHから選択され、好ましくはTris-Cl緩衝液であり、導電率は約10mS/cm〜約30mS/cmから選択され、好ましくは約18mS/cmである。緩衝液の濃度は、約30mM〜約60mMのTris-Cl緩衝液から選択され、好ましくは50mM Tris-Clであり、約120mM〜約150mM NaCl、好ましくは150mM NaCl及び約2mM〜約6mM EDTA、好ましくは5mM EDTAの添加物を含有する。プロテインAカラムは、適切な緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは2カラム容量の間平衡化する。興味対象タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCPとを含むpH調整済みタンパク質混合物をプロテインAカラムにロードする。流速は、約50cm/時〜約300cm/時から選択することができ、好ましくは100cm/時であり得る。プロテインAカラムのローディング後、カラムを、平衡化緩衝液又は異なる緩衝液を用いて1回又は複数回洗浄することができる。プロテインAカラムは、先ず、平衡緩衝液で少なくとも2カラム容量の間洗浄する。この洗浄の後、随意に、1回又は2回以上の洗浄を続けることができる。好ましい実施形態において、プロテインAカラムは、先ず、平衡緩衝液で少なくとも2カラム容量の間洗浄し、その後、洗浄緩衝液Aと呼ぶ中間洗浄緩衝液で少なくとも1カラム容量より長い間、好ましくは少なくとも3カラム容量、より好ましくは少なくとも6カラム容量の間洗浄する。ここで、洗浄緩衝液Aは、約pH8〜約pH9から選択されるpH、好ましくはpH8.5のTris-Cl、HEPES、トリエタノールアミン、ボレート、グリシン-NaOHから選択され、好ましくはTris-Clである適切な緩衝液中に、次の添加物 尿素、Tween 80及びイソプロパノール、NaCl、EDTAの少なくとも1つを含んでなり、導電率は約50mS/cm〜約75mS/cmから選択され、好ましくは約65mS/cmである。洗浄緩衝液Aの濃度は、約30mM〜約60mM Tris緩衝液から選択され、好ましくは50mM Tris緩衝液であり、約1M〜約2M尿素、好ましくは1.5M尿素、約1.5% Tween 80、約7.5%イソプロパノール、約0.5M〜約2M NaCl、好ましくは1M NaCl及び約2mM〜約6mM EDTA、好ましくは5mM EDTAを含有する。
【0026】
洗浄緩衝液Aに続いて、プロテインAカラムを、洗浄緩衝液Bと呼ぶ中間洗浄緩衝液で少なくとも1カラム容量の間更に洗浄する。ここで、洗浄緩衝液Bは、約pH4〜約pH5から選択されるpH、好ましくはpH4.5のクエン酸三ナトリウム二水和物、アセテート、グリシン-HCl、好ましくはクエン酸三ナトリウム二水和物を含んでなり、導電率は約8mS/cm〜約25mS/cmから選択され、好ましくは約12mS/cmである。洗浄緩衝液Bの濃度は約30mM〜約60mMのクエン酸三ナトリウム二水和物から選択され、好ましくは50mMである。洗浄緩衝液Bに続いて、プロテインAカラムを、洗浄緩衝液Cと呼ぶ中間洗浄緩衝液で更に洗浄する。ここで、洗浄緩衝液Cは90%の洗浄緩衝液Bと10%の溶出緩衝液とを含んでなり、洗浄緩衝液CのpHは約4である。
その後、プロテインAカラムは適切な緩衝液を用いて溶出させることができる。溶出緩衝液は1種類の緩衝液又は2以上の緩衝液の混合物であることができる。タンパク質は、酸化不純物を除去するため、線形グラジエントとステップグラジエントとの組合せにより溶出させる。線形グラジエントは、pH約2〜3.5から選択される溶出緩衝液とpH約4〜5から選択される洗浄緩衝液を適切な比率で用いて達成する。
線形グラジエントは、約0〜100%、好ましくは10〜90%の溶出緩衝液を溶出緩衝液と共に用いて、少なくとも1カラム容量より長い間達成する。好ましくは、線形グラジエントは、約10%の溶出緩衝液を90%の洗浄緩衝液Bと共に用いて、少なくとも1カラム容量より長い間、好ましくは少なくとも3カラム容量、より好ましくは少なくとも6カラム容量の間達成する。ステップグラジエントは、約pH2〜約pH3.5から選択されるpH、好ましくはpH3のクエン酸三ナトリウム二水和物を含んでなり、導電率が約5mS/cm〜約15mS/cmから選択され、好ましくは約12mS/cmである溶出緩衝液を用いて達成する。クエン酸三ナトリウム二水和物の濃度は、約30mM〜約60mMクエン酸三ナトリウム二水和物から選択され、好ましくは50mMである。回収した画分は第2のタンパク質混合物であり、随意に、低pH処理に付することができる。
【0027】
或る特定の実施形態において、本発明は、プロテインAクロマトグラフィーカラムのみで実施することができる。しかし、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質の純度は1又は2以上の洗浄工程に依存し、洗浄工程の省略又は削減はタンパク質分解酵素の濃度を増大させる。
別の1つの実施形態において、本発明は、以下:
a)TNFR:Fc融合体と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
d)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用しない方法による場合と比較して、HCP不純物の含有量が減少していること
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
【0028】
実施形態において、ウイルス不活化は低pH処理で行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーから得られる溶出物(第2のタンパク質混合物)のpHは約pH2〜約pH5から選択され、好ましくはpH3.5である。pHは、クエン酸、酢酸、カプリル酸を含むがこれらに限定されない適切な酸又は他の適切な酸により調整することができる。3.5未満の場合、pHは2M Tris塩基を用いて3.5に調整する。適切なpH3.5を達成後、タンパク質混合物を少なくとも10分間、好ましくは45分間、室温でインキュベートする。ウイルス不活化後、2M Tris塩基を用いて溶液のpHを約6.5とする。低pH処理済み画分で人工プールを調製し、プロテインA HPLCで不純物プロフィール(好ましくは酸化種)を検査する。
或る特定の実施形態において、本発明はまた、興味対象タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCPとを含む混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製するためにの、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程の使用を具現化する。
アフィニティークロマトグラフィーカラムから得られる(随意に低pH処理後の)第2のタンパク質混合物は、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに付することができる。HICカラムから得られる溶出物は、第3のタンパク質混合物(HCP及びタンパク質分解酵素のレベルが低減している)と呼ぶ。
1つの実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、Butyl Toyopearl 650 M樹脂、Toyopearl Phenyl-650、Butyl Sepharose 6 Fast Flow、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(High Sub)から選択される。
【0029】
1つの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーカラムから得られる(随意に低pH処理後の)第2のタンパク質混合物は、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに付する。HICは結合-溶出モードで行う。ローディング前に、適切な高塩緩衝液を、第2のタンパク質混合物に、導電率が約40mS/cm〜約70mS/cm、好ましくは約50mS/cmに達するまで徐々に加える。適切な高塩緩衝液は、約pH6〜約pH7から選択されるpH、好ましくはpH6.5のリン酸水素二ナトリウム無水物、クエン酸三ナトリウム二水和物、ヒスチジン-HCl、イミダゾール、ビス-Tris、マレエートから選択される少なくとも1つ又は任意の塩の組合せから、好ましくはリン酸水素二ナトリウム無水物、クエン酸三ナトリウム二水和物から選択され、導電率は約50mS/cm〜約80mS/cmより選択され、好ましくは約65mS/cmである。高塩緩衝液の濃度は、約0.01M〜約1M、好ましくは0.05Mリン酸水素二ナトリウム無水物、約0.1M〜約2M、好ましくは0.8Mクエン酸三ナトリウム二水和物より選択される。HICカラムはサンプルローディング前に適切な緩衝液で平衡化する。適切な平衡緩衝液は、導電率が約40mS/cm〜約70mS/cm、好ましくは約50mS/cmに達するまで注射用水(WFI)で希釈した高塩緩衝液から選択する。第2のタンパク質混合物をHICカラムにロードする。流速は約50cm/時〜約300cm/時より選択することができ、好ましくは150cm/時であり得る。
【0030】
HICカラムのローディング後、カラムを、平衡緩衝液又は異なる緩衝液を用いて1回又は複数回洗浄することができる。HICカラムは、平衡緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは1.5カラム容量の間洗浄する。この洗浄後、随意に1回又は2回以上の洗浄を続けることができる。好適な実施形態において、HICカラムは、平衡緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは1.5カラム容量の間洗浄し、その後、第2の洗浄緩衝液での洗浄を続ける。ここで、第2の洗浄緩衝液は少なくとも約10%〜25%のリン酸水素二ナトリウム無水物を含んでなり、pHは約pH6〜約pH7より選択され、好ましくはpH6.5であり、導電率は約5mS/cm〜約10mS/cmより選択され、好ましくは約8mS/cmである。リン酸水素二ナトリウム無水物の濃度は約0.01M〜約1Mより選択され、好ましくは0.05Mである。第2の洗浄は、少なくとも1カラム容量、好ましくは少なくとも3カラム容量、より好ましくは少なくとも6カラム容量の間又は吸光度が安定するまでのいずれかの条件が最初に生ずるまで行う。その後、HICカラムは適切な緩衝液を用いて溶出させることができる。溶出緩衝液は、1種類の緩衝液又は2以上の緩衝液の混合物であることができる。40%〜70%、好ましくは65%の第2の洗浄緩衝液と少なくとも75%以上の第2の洗浄緩衝液とのステップグラジエントを付することによりタンパク質を溶出させる。溶出したタンパク質は、複数画分で回収される第3のタンパク質混合物である。回収した画分で人工プールを調製する。人工プールを分析してHI-HPLCによるミスフォールド種の%及びELISAによるHCPレベルを検査する。
【0031】
或る特定の実施形態において、疎水性相互作用クロマトグラフィーからの溶出タンパク質(第3のタンパク質混合物)は、随意に、6透析ろ過容量の間又は残留物のpH及び導電率がそれぞれ5.8未満及び3.0mS/cm未満に達するまで、20mMヒスチジン塩酸塩(pH5.5)緩衝液に対する30kDaカットオフ膜による透析ろ過に付する。
或る特定の実施形態において、本発明はまた、興味対象タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCPとを含む混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製するための、アニオン交換クロマトグラフィー(HIC)工程の使用を具現化する。
HICカラムから得られる(随意に透析ろ過後の)第3のタンパク質混合物は、アニオン交換クロマトグラフィーカラムに付することができる。アニオン交換カラムから得られる溶出物は第4のタンパク質混合物(HCP及びタンパク質分解酵素のレベルが低減している)と呼ぶ。
1つの実施形態において、アニオン交換クロマトグラフィーは、DEAE sepharose fast flow、Fractogel(登録商標) EMD DEAE(M)、Toyopearl DEAE-650、Toyopearl DEAE-650から選択する。
【0032】
1つの実施形態において、HICカラムから得られる(随意に透析ろ過後の)第3のタンパク質混合物はアニオン交換クロマトグラフィーカラムに付する。アニオン交換は結合-溶出モードで行う。アニオン交換カラムはサンプルローディング前に適切な緩衝液で平衡化する。適切な平衡緩衝液は、約4.5〜約pH6より選択されるpH、好ましくはpH5.5のヒスチジン塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩から選択され、好ましくはヒスチジン塩酸塩である;導電率は約1mS/cm〜約10mS/cmより選択され、好ましくは2mS/cmである。ヒスチジン塩酸塩の濃度は10mM〜50mMより選択され、好ましくは20mMである。第3のタンパク質混合物をアニオン交換カラムにロードする。流速は約50cm/時〜約300cm/時より選択することができ、好ましくは150cm/時であり得る。
アニオン交換カラムのローディング後、カラムを、平衡緩衝液又は異なる緩衝液を用いて1回又は複数回洗浄することができる。アニオン交換カラムは、平衡緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは少なくとも2カラム容量の間洗浄する。この洗浄後、随意に1回又は2回以上の洗浄を続けることができる。好適な実施形態において、アニオン交換カラムは、平衡緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは少なくとも2カラム容量の間洗浄し、その後、第2の洗浄緩衝液での洗浄を続ける。ここで、第2の洗浄緩衝液は、酢酸ナトリウムから選択され、約4.5〜約pH6より選択されるpH、好ましくはpH5.5の緩衝液を含んでなり、導電率は1mS/cm〜約20mS/cmより選択され、好ましくは8.2ms/cmである。酢酸ナトリウムの濃度は約50mM〜125mMより選択され、好ましくは100mMである。アニオン交換カラムは、平衡緩衝液で少なくとも1カラム容量、好ましくは少なくとも3カラム容量、より好ましくは少なくとも6カラム容量、最も好ましくは少なくとも8カラム容量の間洗浄する。
【0033】
その後、アニオン交換カラムは適切な緩衝液を用いて溶出させることができる。溶出緩衝液は、1種類の緩衝液又は2以上の緩衝液の混合物であることができる。溶出緩衝液は、約4.5〜約pH6から選択されるpH、好ましくはpH5.5の酢酸ナトリウムから選択される緩衝液を含んでなり、導電率は10mS/cm〜約30mS/cmより選択され、好ましくは15mS/cmである。溶出物を回収し、第4のタンパク質混合物と呼ぶ。
好適な実施形態において、本発明は、興味対象タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCPとを含む混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製するための、混合モードクロマトグラフィー(MMC)工程の使用を具現化する。
アニオンカラムから得られる第4のタンパク質混合物は、混合モードクロマトグラフィーカラムに付することができる。混合モードクロマトグラフィーカラムから得られる溶出物を、第5のタンパク質混合物(HCP及びタンパク質分解酵素のレベルが低減している)と呼ぶ。溶出物(第5のタンパク質混合物)は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を実質的に含まない。
【0034】
混合モードクロマトグラフィーカラムは正電荷部分を含有するリガンド及び疎水性部分を含有するリガンドの両方を含んでなり、正電荷部分はアニオン交換(IEC)特性を有し、疎水性部分は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)特性を有する。IEC/HIC混合モードクロマトグラフィーは、静電相互作用及び疎水性相互作用の両方が適用されることから、向上した分離力及び選択性を有する。混合モードクロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーとHICとの組合せ又はカチオン交換クロマトグラフィーとHICとの組合せを用いて行うことができる。混合モードクロマトグラフィーカラムは、相互作用のための多くの官能性を示すCapto adhere(リガンドとしてN-ベンジル-N-メチル エタノールアミン)、Capto MMC(MMCリガンド)、MEP Hypercel(リガンドとして4-メルカプトメチル ピリジン)、HEA Hypercel(リガンドとしてヘキシルアミン)、PPA Hypercel(リガンドとしてフェニルプロピルアミン)から選択することができる。これら樹脂は相互作用のための複数の官能性を示す。最も顕著なものはイオン相互作用、水素結合及び疎水性相互作用である。
【0035】
1つの実施形態において、アニオン交換クロマトグラフィーカラムから得られる第5のタンパク質混合物は、混合モードクロマトグラフィーカラムに付する。混合モードクロマトグラフィーはフロースルーモードで行う。ローディング前に、第5のタンパク質混合物(サンプル)のpHは、約pH6〜pH7から選択するpH、好ましくは6.5に調整する。pHは、約1M〜5M、好ましくは2Mの濃度であるTris塩基を用いて調整することができる。サンプルの導電率は、2M〜8Mの塩化ナトリウムストック溶液を用いて約30mS/cm〜約42mS/cm、好ましくは35mS/cmに調整する。混合モードカラムはサンプルローディング前に適切な緩衝液で平衡化する。適切な平衡緩衝液は、約6〜約pH7より選択されるpH、好ましくはpH7のヒスチジン塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩から選択され、好ましくはヒスチジン塩酸塩であり、酢酸ナトリウム、NaClを含有し、導電率は約30mS/cm〜約42mS/cmより選択され、好ましくは35mS/cmである。ヒスチジン塩酸塩の濃度は10mM〜50mMより選択され、好ましくは20mMである。酢酸ナトリウムの濃度は180mM〜300mMから選択され、好ましくは254mMである。NaClの濃度は180mM〜300mMから選択され、好ましくは240mMである。第5のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムにロードする。流速は約20cm/時〜約100cm/時より選択することができ、好ましくは50cm/時であり得る。タンパク質はフロースルー(FT)モードで複数の画分に回収する。溶出画分は実質的に純粋な興味対象タンパク質を含有する一方、プロセス関連及びプロダクト関連不純物はカラムに効率的に結合する。回収したFT画分で人工プールを調製する。
人工プールを分析して、HI-HPLCによるミスフォールド種の%及びELISAによるHCPレベルを検査する。
【0036】
1つの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーカラムから得られる溶出物は、ウイルスろ過に付することができる。ウイルスろ過は、PALL DV20フィルターを用いるMMC FTを2〜2.5バール圧で用いて行う。
1つの実施形態において、混合モードクロマトグラフィーから得られるタンパク質は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)を用いて濃縮する。TFFはMillipore Biomax 30kDa膜であることができる。これを製剤緩衝液への緩衝液交換に用いる。続いて、興味対象タンパク質を適切な濃度に濃縮する。
1つの実施形態において、本発明は、混合モードクロマトグラフィーカラムを用いることにより、タンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。混合モードクロマトグラフィーカラムは、アフィニティークロマトグラフィーカラム後の任意の工程で行うことができる。
【0037】
1つの実施形態において、本発明は、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に含まないこと
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
【0038】
別の1つの実施形態において、本発明は、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第3のタンパク質混合物中に存在すること;
f)第3のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
g)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に含まないこと
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とタンパク質分解酵素を含有する少なくとも1つのHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
【0039】
別の1つの実施形態において、本発明は、以下:
a)TNFR:Fc融合タンパク質と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第2のタンパク質混合物中に存在すること;
d)第2のタンパク質混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムに適用すること;
e)TNFR:Fc融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第3のタンパク質混合物中に存在すること;
f)第3のタンパク質混合物をアニオン交換クロマトグラフィーカラムに適用すること;
g)TNFR:Fc融合タンパク質をアニオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出した興味対象タンパク質は、HCP不純物の含有量が減少した第4のタンパク質混合物中に存在すること;
h)第4のタンパク質混合物を混合モードクロマトグラフィーカラムに適用すること;
i)TNFR:Fc融合タンパク質を混合モードクロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に含まないこと
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とタンパク質分解酵素を含有する少なくとも1つのHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
【0040】
別の1つの実施形態において、本発明は、以下:
a)TNFR:Fc融合体と少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有する宿主細胞タンパク質(HCP)不純物とを含むタンパク質混合物を、適切な哺乳動物発現系から取得すること;
b)タンパク質混合物をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
c)1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用すること;
d)TNFR:Fc融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出させることであって、溶出したTNFR:Fc融合タンパク質は、1回より多い洗浄をアフィニティークロマトグラフィーカラムに適用しない方法による場合と比較して、HCP不純物の含有量が減少していること
を含んでなる、TNFR:Fc融合タンパク質とHCP不純物とを含むタンパク質混合物からTNFR:Fc融合タンパク質を精製する方法に関する。
この実施形態において、TNFR:Fc融合タンパク質の精製は、結合-溶出モードでのプロテインAクロマトグラフィーと、続く結合-溶出モードでの疎水性相互作用クロマトグラフィーと、続く結合-溶出モードでのアニオン交換クロマトグラフィーと、続くフロースルーモードでの混合モードクロマトグラフィーとを含んでなる。
【0041】
この実施形態において、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)及びHICの条件は、生物学的活性の維持に適合する生理学的条件に最も近いものであり、その組合せは生物学的生成物の分離に広く用いられている。混合モードクロマトグラフィーカラムは正電荷部分を含有するリガンド及び疎水性部分を含有するリガンドの両方を含んでなり、正電荷部分はアニオン交換(IEC)特性を有し、疎水性部分は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)特性を有する。IEC/HIC混合モードクロマトグラフィーは、静電相互作用及び疎水性相互作用の両方が適用されることから、向上した分離力及び選択性を有する。混合モードクロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーとHICとの組合せ又はカチオン交換クロマトグラフィーとHICとの組合せを用いて行うことができる。混合モードクロマトグラフィー工程は、市販の樹脂、例えば、相互作用のための多くの官能性を示すCapto adhere(リガンドとしてN-ベンジル-N-メチル エタノールアミン)、Capto MMC(MMCリガンド)、MEP Hypercel(リガンドとして4-メルカプトメチル ピリジン)、HEA Hypercel(リガンドとしてヘキシルアミン)、PPA Hypercel(リガンドとしてフェニルプロピルアミン)を用いて、フロースルーモードで行うことができる。これら樹脂は相互作用のための複数の官能性を示す。最も顕著なものはイオン相互作用、水素結合及び疎水性相互作用である。
【0042】
少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCPと溶脱プロテインA、凝集体、フラグメント、エンドトキシン、核酸及びウイルスを含む他の不純物とのモノクローナル抗体及びTNFR:Fc融合タンパク質からの除去は、混合モードクロマトグラフィーを、興味対象タンパク質はカラムを通過することができるが、夾雑物/不純物は吸着するフロースルーモードで用いて行うことができる。これら夾雑物/不純物には、興味対象タンパク質のものとは疎水性が異なることに起因してミスフォールド形態の興味対象タンパク質も含まれる。
HCPを除去するために代替法(すなわち、混合モードクロマトグラフィーに代えてゼラチンセファロース)を試みた。ただし、本発明の時点では、当該代替法は規制当局により認可されていない。
1つの実施形態において、残留HCPレベルは、より高感度のゼラチンザイモグラフィーを用いて検出した。ゼラチンザイモグラフィーは、細胞培養物浄化に際してHCCFに分泌されるHCPの一形態である或る種のプロテアーゼ(具体的にはマトリクスメタロプロテアーゼ、より具体的にはゼラチナーゼ)の検出において遥かにより高い感度を提供する。中間精製段階の材料における残留プロテアーゼの存在は、ゼラチンザイモグラフィーでゼラチナーゼ活性がポジティブであることから明白である。市販のHCP検出キット又はプロセス特異的HCP ELISAキットは感度がより低い(通常、1PPMを超えるHCP)。ゼラチンザイモグラフィーもまた制限があり、中間精製段階の材料又は精製された対象タンパク質において0.1PPMを超えるレベルのタンパク質分解活性を検出できるにすぎない。
【0043】
別の1つの実施形態において、残留プロテアーゼ活性は、ゼラチンザイモグラフィーにより観察されるように、興味対象タンパク質を発現する種々のCHO細胞株からのHCCF及びプロテインAクロマトグラフィー後において検出する。
別の1つの実施形態において、残留HCPについてのプロテアーゼ活性に関するより高感度な検査を、マーカータンパク質を用いる加速分解試験をインキュベーション温度>2℃で行うことにより、中間精製工程について導入する(図3)。
別の1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に低減させ、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%低減させ、より好ましくは許容可能な限度を満たす程度まで低減させる。
別の1つの実施形態において、本発明は、少なくとも1つのタンパク質分解酵素を含有するHCP不純物を実質的に低減させ、TNFR:Fc融合タンパク質を少なくとも2週間、好ましくは少なくとも1月間、より好ましくは少なくとも6月間、最も好ましくは少なくとも1年間安定化する。
【実施例】
【0044】
下記実施例は本発明の例証であり、本発明を限定することを意図するものではない。

実験の部
エタネルセプトを、マーカータンパク質の例としてのTNFR:Fc融合タンパク質モデルとして用いた。エタネルセプトは、組換えDNA技術により遺伝子操作したCHO細胞を用いる哺乳動物細胞培養により製造した。CHO細胞は流加培養プロセスで培養した。エタネルセプトは、実施例に用いた異なる製造バッチに由来した。プロテアーゼ除去効率は、ゼラチンザイモグラフィー及びマーカータンパク質の加速分解試験により評価した。
【0045】
実施例1
プロテインAクロマトグラフィーを用いるエタネルセプトの精製
浄化した採集細胞培養液(HCCF)のpHを8.2〜9.2に調整することにより予め条件付けた。予め条件付けたHCCFをプロテインAクロマトグラフィー(MabSelect Sure LX,GE Healthcare)にロードした。カラムを平衡緩衝液(50mM Tris-Cl緩衝液)で予め平衡化した。中間洗浄を洗浄緩衝液1(50mM Tris、1.5M尿素、1.5% Tween 80及び7.5%イソプロパノール、1M NaCl及び5mM EDTA、pH8.5)及び洗浄緩衝液2(50mMクエン酸三ナトリウム二水和物緩衝液、pH4.5)で行い、最後に、エタネルセプトを50mMクエン酸三ナトリウム二水和物緩衝液(pH3.5)に溶出させた。
【0046】
実施例2
プロテインAクロマトグラフィーを用いるエタネルセプトの精製
0.2ミクロンフィルターでろ過した浄化採集細胞培養液(HCCF)のpHを、アフィニティーカラムへのローディング直前に、2M Tris塩基で8.5±0.2に調整した。pH調整済み溶液を、ベッド高20cmのプロテインA(MabSelect Sure LX,GE Healthcare)カラム(動力学的結合能力:樹脂1mlあたり17mgを超えないエタネルセプト)に100cm/時にてロードし、平衡緩衝液(150mM NaCl及び5mM EDTAを含有する50mM Tris-Cl緩衝液、pH8.5、導電率:18±2mS/cm)で2カラム容量の間予め平衡化した。ロードを終えたならば、カラムを先ず平衡緩衝液で2カラム容量の間洗浄し、続いて中間洗浄緩衝液A(50mM Tris、1.5M尿素、1.5% Tween 80及び7.5%イソプロパノール、1M NaCl及び5mM EDTA pH8.5、導電率:65±5mS/cm)で6カラム容量の間洗浄し、続いて中間洗浄緩衝液B(50mMクエン酸三ナトリウム二水和物、pH4.5、導電率:12±2mS/cm)で1カラム容量の間洗浄し、続いて最後の中間洗浄緩衝液C(中間洗浄緩衝液2に対して10%緩衝液B)で1CVの間洗浄する。最後に、エタネルセプトを、線形グラジエント(6CVにわたる10〜90%溶出緩衝液)とステップグラジエント(溶出緩衝液:50mMクエン酸三ナトリウム二水和物 pH3.0、導電率:13±2mS/cm)との組合せにより溶出させる。溶出物を複数の画分に回収する。回収した画分を低pH処理に用いる。酸化種及びHCPが前記タンパク質混合物のものの少なくとも10%低減するようにプールする。
【0047】
実施例3
エタネルセプト精製のための混合モードクロマトグラフィー
アニオン交換クロマトグラフィーからの溶出タンパク質溶液のpHを2M Tris塩基で6.5に調整する。溶液の導電率を4M NaClストック溶液で35mS/cmに調整する。混合モードクロマトグラフィーは、ベッド高18cmのCapto Adhere樹脂(GE Healthcare)でネガティブ結合モードにて行う。カラムを20mMヒスチジン塩酸塩、240mM酢酸ナトリウム及び220mM NaCl(pH6.5、導電率:35±2mS/cm)で平衡化する。タンパク質溶液をカラムに流速50cm/時でロードし、フロースルー(FT)を複数の画分に回収する。なぜならば、フロースルーが純粋なエタネルセプトを含有し、プロセス関連及びプロダクト関連不純物はカラムに効率的に結合するからである。回収したFT画分で人工プールを調製する。人工プールを分析してHI-HPLCによるミスフォールド種の%及びELISAによるHCPレベルを検査する。分析報告に基いて、ミスフォールド種及びHCPが前記タンパク質混合物のものの少なくとも10%低減するようにプールする。
【0048】
実施例4
混合モードを用いないプロテインAクロマトグラフィーによるエタネルセプトの精製
プロテインAクロマトグラフィーを中間洗浄なしで行った。プロテインAクロマトグラフィーにより大部分のHCPが除去されたが、図1Aに示すゼラチンザイモグラムで観察されるバンドから明らかな、プロテインA溶出物中のポジティブなゼラチナーゼ活性から推測されるように、依然として幾らかのHCPのエタネルセプトとの共溶出が観察された。
プロテインAカラムから得たタンパク質混合物(第2のタンパク質混合物)を、HICカラムクロマトグラフィーで更に精製した。ロード調製は、高塩緩衝液(0.05Mリン酸水素二ナトリウム無水物、0.8Mクエン酸三ナトリウム二水和物、pH6.5、導電率:65±5mS/cm)をタンパク質溶液に徐々に加えて、導電率50±2mS/cmを得ることにより行った。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ベッド高25±2cmのButyl Toyopearl 650 M樹脂で行う。カラムを平衡緩衝液(導電率が50±2mS/cmとなるようにWFIで希釈した高塩緩衝液)で平衡化する。タンパク質サンプルをカラムに流速150cm/時でロードし、ローディング後、カラムを平衡緩衝液で1.5カラム容量の間洗浄する。カラムを25%の緩衝液B(緩衝液B:0.05Mリン酸水素二ナトリウム無水物、pH6.5、導電率:8±1mS/cm)で6カラム容量の間又は吸光度が安定化するまでのいずれかの条件が最初に生じた時まで洗浄する。標的タンパク質を、65%の緩衝液Bのステップグラジエントを与えることによりカラムから溶出させる。溶出タンパク質(第3のタンパク質混合物)を複数の画分に回収する。回収した画分で人工プールを調製する。人工プールを分析して、HI-HPLCによるミスフォールド種の%及びELISAによるHCPレベルを検査する。
【0049】
疎水性相互作用クロマトグラフィーからの溶出タンパク質を、20mMヒスチジン塩酸塩(pH5.5)緩衝液に対して、30kDaカットオフ膜による透析ろ過に、6透析ろ過容量の間又は残留物のpH及び導電率がそれぞれ5.8未満及び3.0mS/cm未満に達するまで付する。その後、溶出タンパク質を、アニオン交換クロマトグラフィーを用いて更に精製する。
アニオン交換クロマトグラフィーはベッド高25cmのDEAE Sepharose fast flowで行う。カラムを平衡緩衝液(20mMヒスチジン塩酸塩、pH5.5、導電率:2±1mS/cm)で平衡化する。緩衝液を交換したタンパク質溶液を、カラムに流速150cm/時にてロードし、カラムを平衡緩衝液で2カラム容量の間洗浄する。カラムを中間洗浄緩衝液(100mM酢酸ナトリウムを含有する平衡緩衝液、pH5.5、導電率:8.2±1mS/cm)で8カラム容量の間更に洗浄する。最後に、標的タンパク質を溶出緩衝液(240mM酢酸ナトリウムを含有する平衡緩衝液、pH5.5、導電率:15±2mS/cm)で溶出させる(第4のタンパク質混合物)。
【0050】
実施例5
混合モードを用いる複数カラムクロマトグラフィーを利用したエタネルセプトの精製
プロテインAカラムクロマトグラフィーは、本発明の実施例1又は実施例2に記載したように行った。このことが、HCPからの強固に結合したエタネルセプトの分離の助けとなった。プロテインA溶出物を分析すると、図1Bに示すように、ゼラチンザイモグラフィーはゼラチナーゼ活性を示さなかった。しかし、プロテインA溶出物中の痕跡量のHCP(プロテアーゼ)の存在が、マーカータンパク質の加速分解試験からのみ明らかであった。表1Aに示すデータ(実施例4)は、加速試験に際するマーカータンパク質分解の程度(2〜8℃で17%、25℃で51%)を示す。プロテインAカラムから得たタンパク質混合物(第2のタンパク質混合物)をHICカラムクロマトグラフィーで更に精製した。ロード調製は、高塩緩衝液(0.05Mリン酸水素二ナトリウム無水物、0.8Mクエン酸三ナトリウム二水和物、pH6.5、導電率:65±5mS/cm)をタンパク質溶液に徐々に加えて、導電率50±2mS/cmを得ることにより行う。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ベッド高25±2cmのButyl Toyopearl 650 M樹脂で行う。カラムを平衡緩衝液(導電率が50±2mS/cmとなるようにWFIで希釈した高塩緩衝液)で平衡化する。タンパク質サンプルをカラムに流速150cm/時でロードし、ローディング後、カラムを平衡緩衝液で1.5カラム容量の間洗浄する。カラムを25%の緩衝液B(緩衝液B:0.05Mリン酸水素二ナトリウム無水物、pH6.5、導電率:8±1mS/cm)で6カラム容量の間又は吸光度が安定化するまでのいずれかの条件が最初に生じた時まで洗浄する。標的タンパク質を、45%より多い、好ましくは65%の緩衝液Bのステップグラジエントを与えることによりカラムから溶出させる。溶出したタンパク質(第3のタンパク質混合物)を複数の画分に回収する。回収した画分で人工プールを調整する。人工プールを分析して、HI-HPLCによるミスフォールド種の%及びELISAによるHCPレベルを検査する。分析報告に基いて、ミスフォールド種及びHCPが第2のタンパク質混合物のものの少なくとも10%低減するようにプールする。
【0051】
アニオン交換クロマトグラフィーはベッド高25cmのDEAE Sepharose fast flowで行う。カラムを平衡緩衝液(20mMヒスチジン塩酸塩、pH5.5、導電率:2±1mS/cm)で平衡化する。第3のタンパク質混合物をカラムにロードし、平衡緩衝液で洗浄する。カラムを中間洗浄緩衝液(100mM酢酸ナトリウムを含有する平衡緩衝液、pH5.5、導電率:8.2±1mS/cm)で更に洗浄する。最後に、標的タンパク質を溶出緩衝液(240mM酢酸ナトリウムを含有する平衡緩衝液、pH5.5、導電率:15±2mS/cm)で溶出させる(第4のタンパク質混合物)。
第4の溶出したタンパク質混合物を、実施例2に記載のように混合モードクロマトグラフィーにより更に精製する。加速分解試験を表1B及び図2Bに示す。
【0052】
【表1】
【0053】
混合モードクロマトグラフィーは、痕跡量のプロテアーゼの除去を更に助けた。このことから、この工程による遥かにより高度なHCP除去(より具体的にはプロテアーゼ除去)が示される。表1B(実施例5)は、加速分解試験において、2週間のインキュベーション後にマーカータンパク質の分解がないことを示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例6
マーカータンパク質の加速分解試験を、実施例4及び実施例5の精製エタネルセプトについてHPLC又は任意の適切な検出ツールにより行った。両実験のサンプルを、通常2週間以内に分解を示すに十分な期間、加速分解試験に付した。マーカータンパク質の分解をHPLC又は任意の適切な検出ツールにより分析した。実施例5の精製エタネルセプトは、図2Aに示す実施例4のものと比較して、図2Bに示すとおりマーカータンパク質の分解を示さないことが観察された。このことから、実施例5に記載の精製スキームがより高度なHCP除去(好ましくはプロテアーゼ除去、更により好ましくはゼラチナーゼ除去)をもたらすことが示唆される。
上記の実施例から、混合モードクロマトグラフィーが、(混合モードクロマトグラフィーを用いない従来のクロマトグラフィープロセスを用いれば興味対象タンパク質と共に存在する)痕跡量のHCPを除去することにより、モノクローナル抗体及びTNFR:Fc融合タンパク質のための優れた中間精製及び/又は精錬工程を提供すると結論付けることができる。混合モードクロマトグラフィー工程は、モノクローナル抗体及びTNFR:Fc融合タンパク質の精製のための頑強なクロマトグラフィープラットフォームを提供する。例えばN-ベンジル-N-メチル エタノールアミン、4-メルカプトメチル ピリジン、ヘキシルアミン、フェニルプロピルアミンのような樹脂に用いられるリガンドは、宿主タンパク質の結合のための多くの官能性を示す。
【0056】
ゼラチンザイモグラフィー:
ザイモグラフィーは、プロテアーゼ活性又はゼラチナーゼ活性の検出のための電気泳動技法、一般にはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル(ポリアクリルアミドゲルマトリクス内で共重合化される基質としてゼラチンを含有する)電気泳動(SDS-PAGE)に基づく技法として知られている。サンプルは、通常、標準のSDS-PAGE処理緩衝液により、非還元条件下で、すなわち、加温及び還元剤[2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)]の不在下で調製する。電気泳動後、アッセイする酵素のタイプ及び分解する基質のタイプに応じた最適な時間及び温度で、非緩衝化Triton X-100中、続いて適切な活性化緩衝液中でのインキュベーションによりSDSをゲルから染み出させる(ザイモグラム)。その後、ザイモグラムをクーマシー染色し、青色背景中の透明領域として消化領域を識別する。プロテアーゼ(ゼラチナーゼ)という具合的場合には、ゼラチンが最も頻繁に用いられる基質の1つである。この場合、タンパク質分解活性の可視化は、クーマシー染色後、濃青色背景上の透明バントとして現れる。
【0057】
加速分解試験:
加速分解試験は、精製マーカータンパク質を2〜8℃、25℃及び40℃にて、2週間インキュベートすることにより行った。インキュベーション後、タンパク質サンプルをSE-HPLCにより分析して、マーカータンパク質の分解に際するLMW種の出現を検出した。
本出願で引用した全ての特許、特許出願及び刊行物は、あらゆる目的について、各個の特許、特許出願及び刊行物が個々にそのように言及されている場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
上記では或る特定の実施形態及び実施例を詳細に記載したが、当業者は、当該実施形態及び実施例についてその教示を逸脱することなく多くの改変が可能であることを明確に理解する。
図1
図2
図3