特許第6748468号(P6748468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6748468舗装コンクリートの施工方法および舗装コンクリート
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  • 特許6748468-舗装コンクリートの施工方法および舗装コンクリート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6748468
(24)【登録日】2020年8月12日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】舗装コンクリートの施工方法および舗装コンクリート
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/14 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   E01C7/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-69581(P2016-69581)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-179928(P2017-179928A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【弁護士】
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 紳也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 藤和
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−138505(JP,A)
【文献】 特開2016−023103(JP,A)
【文献】 特開平04−132648(JP,A)
【文献】 特開2009−215136(JP,A)
【文献】 特開2005−082416(JP,A)
【文献】 特開2011−016681(JP,A)
【文献】 特開平09−143912(JP,A)
【文献】 特開2001−317002(JP,A)
【文献】 特開2011−173202(JP,A)
【文献】 特開昭54−001329(JP,A)
【文献】 特開2004−299128(JP,A)
【文献】 特開平03−141145(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0001506(US,A1)
【文献】 特開2015−117166(JP,A)
【文献】 特開2012−140777(JP,A)
【文献】 特開2016−102318(JP,A)
【文献】 特開2010−185201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01C 21/00−23/24
C04B 2/00−32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層構造物と下層構造物とを有する早期交通解放可能なコンクリート舗装の施工方法であって、
下層構造物として、速硬コンクリートを打設し、
該速硬コンクリートが硬化する前に、
上層構造物として、寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるモルタルを打設し、
前記上層構造物のモルタルが、下記に記載の速硬ポリマーセメントモルタルである
ことを特徴とするコンクリート舗装の施工方法。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量
【請求項2】
上層構造物と下層構造物とを有する早期交通解放可能なコンクリート舗装の施工方法であって、
下層構造物として、速硬コンクリートを打設し、
該速硬コンクリートが硬化する前に、
上層構造物として、寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるコンクリートを打設し、
前記上層構造物のコンクリートが、下記に記載の速硬ポリマーセメントコンクリートである
ことを特徴とするコンクリート舗装の施工方法。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量部
(E)粗骨材:最大寸法が13mm、かつ80〜500質量部
【請求項3】
前記ポリマーがスチレンブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート舗装の施工方法。
【請求項4】
前記下層のコンクリートがポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜3に記載のコンクリート舗装の施工方法。
【請求項5】
早期交通解放可能なコンクリート舗装あって、
速硬コンクリートからなる下層構造物と、
寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるモルタルからなる上層構造物と、
を備え
前記上層構造物のモルタルが、下記に記載の速硬ポリマーセメントモルタルである
ことを特徴とするコンクリート舗装。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量
【請求項6】
早期交通解放可能なコンクリート舗装あって、
速硬コンクリートからなる下層構造物と、
寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるコンクリートからなる上層構造物と、
を備え
前記上層構造物のコンクリートが、下記に記載の速硬ポリマーセメントコンクリートである
ことを特徴とするコンクリート舗装。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量
(E)粗骨材:最大寸法が13mm、かつ80〜500質量部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート舗装およびその施工方法および関する。
【背景技術】
【0002】
我が国における舗装技術として、アスファルト舗装が一般的である。アスファルト舗装は、舗装作業開始から交通開放までの期間が短いことが特徴であるが、一方で、路面に轍等ができやすく、耐久性の面では課題がある。
【0003】
一方、耐久性に優れる舗装として、コンクリート舗装が知られている。しかしながら、コンクリート舗装は、コンクリートが硬化して十分な強度を発現するまでに養生等を行う必要があり、舗装作業の開始から交通開放までに時間を要することが課題となっている。
【0004】
この課題を解決する方策として、長期強度の発現性に優れるとともに、初期強度の発現性にも優れ、寿命が長く、かつ舗装作業の開始から極めて早期に交通開放をすることができるコンクリート舗装が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011‐214231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンクリート舗装の普及率は、高速道路で5.6%、一般国道で3.9%とわずかであり、十分に普及しているとは言い難い。今後さらなる普及を達成させるためには、早期交通解放可能であり、かつ耐久性のある材料面での性能向上、また施工方法の面で改善など、まだ解決すべき課題を残しているといえる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、早期交通解放可能なコンクリート舗装に係る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、上層構造物と下層構造物とを有するコンクリート舗装の施工方法であって、下層構造物として、速硬コンクリートを打設し、該速硬コンクリートが硬化する前に、上層構造物として、寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるモルタルまたはコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート舗装の施工方法である。
【0009】
このように施工されたコンクリート舗装では、施工時間を短縮できる結果、早期交通解放が可能になる。また、充分な耐久性を実現できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記上層構造物のモルタルが、下記に記載の速硬ポリマーセメントモルタルである。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量
【0011】
本発明において、好ましくは、前記上層構造物のコンクリートが、下記に記載の速硬ポリマーセメントコンクリートである。
(A)速硬セメント組成物 100質量部に対し、
(B)細骨材:100〜400質量部、
(C)ポリマー:固形分換算で10〜30質量部、
(D)水:25〜40質量部
(E)粗骨材:最大寸法が13mm、かつ80〜500質量部
【0012】
これにより、上層は充分な寸法安定性を有する。また、上層と下層において充分な付着性を有する。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記ポリマーがスチレンブタジエンゴムである。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記下層のコンクリートがポリマーを含む。
【0015】
これにより、上層と下層における付着性が向上する。
【0016】
上記課題を解決する本発明のコンクリート舗装は、速硬コンクリートからなる下層構造物と、寸法安定性が、基長を材齢2時間として、材齢28日において、0.050%以下となるモルタルまたはコンクリートからなる上層構造物と、を備える。
【0017】
これにより、主に、下層構造物が早期強度を確保し、上層構造物が耐久性を実現する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では施工時間の短縮化が可能である。これにより早期交通解放が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のコンクリート舗装の概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
〜概要〜
図1は、本発明の一実施形態のコンクリート舗装の概略図である。
【0021】
路床1の上面に、砕石等により路盤2を設ける。さらに、路盤2の上面に、コンクリート構造体3を設ける。コンクリート構造体3は下層構造物31と上層構造物32とからなる2層構造となっている。
【0022】
下層構造物31は速硬により所定の初期強度を有することを特徴とする。上層構造物32は所定の寸法安定性を満たすことを特徴とする。
【0023】
また、下層の速硬コンクリートが硬化する前に、上層のコンクリート(またはモルタル)が打設される。
【0024】
〜下層構造物〜
下層構造物は速硬コンクリートである。速硬コンクリートを用いることによって、施工時間を短縮できる。速硬コンクリートは、速硬セメントを配合して製造される。
【0025】
下層構造物については、速硬性が満たされればよく、上層構造物のような特性(後述する(1)〜(4)の特性)を満たす必要はない。このため、経済性に優れた速硬コンクリートを使用することができる。
【0026】
速硬セメントとしては、市販されている超速硬セメント(商品名「ジェットセメント」)、あるいはポルトランドセメントに速硬性混和材が添加されたものなどが挙げられる。
【0027】
前記速硬性セメントにおける速硬性成分としては、例えばカルシウムアルミネート類、硫酸アルミニウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の急硬性物質の群の中から選ばれる一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。中でもカルシウムアルミネート類を主成分とするものが特に好ましい。カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、AlをAで表示した場合、CA,CA,C12,C,CA,C又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、アルミナセメント、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したカルシウムハロアルミネート、アウイン(3CaO・3Al・CaSO)等のカルシウムサルホアルミネート、並びにこれらにSiO、Fe、MgO、KO、NaO、LiO、TiO等が固溶又は化合したもの等が含まれる。
【0028】
速硬コンクリートの特性としては、可使時間としては20分以上有し、かつ材齢6時間で20N/mm以上の圧縮強度が発現するものが好ましい。
【0029】
さらに速硬コンクリートは、セメント用ポリマーを含むとより好ましい(速硬セメントポリマーコンクリート)。セメント用ポリマーとしては、通常ポリマーセメントに用いられるポリマーであれば特に限定されないが、アクリル酸エステル系ポリマー、アクリルスチレン系ポリマー、スチレンブタジエン(SBR)系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル系ポリマー、エチレンビニルアルコール(EVA)系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル系ポリマー等が好ましい。
【0030】
セメント用ポリマーを含むことによって、靱性が高く、耐久性にも優れる舗装コンクリートが得られる。特に、上層のポリマーとの相乗効果により、一体性の高い舗装コンクリートが得られる。
【0031】
ポリマーの含有量は、上層との付着強度(後述)、及び初期強度の観点から、セメント100質量部に対して、5〜30質量部が好ましい。ただし、上層の含有量(後述)に比べて少なくともよい。
【0032】
骨材としては、通常コンクリートに用いられる細骨材及び粗骨材が使用される。細骨材の量としては、好ましくは、600〜1500kg/mであり、粗骨材の量としては、800〜1500kg/mである。また、セメント100質量部に対しては、細骨材100〜500質量部、粗骨材150〜600質量部が好ましい。
【0033】
水は、セメント100質量部に対して、20〜60質量部が好ましい。
【0034】
粗骨材の最大寸法が13mm超であることが好ましい。例えば20mm、25mm、40mmの何れかであることが好ましい。一般には20mmである。
【0035】
その他、本発明の特性を損ねない範囲で、各種混和剤(材)を併用することができる。この種の添加剤としては、例えば減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の分散剤、凝結遅延剤、強度促進材、発泡剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤、繊維等が挙げられる。
【0036】
下層の厚さとしては50〜250mmである。
【0037】
〜上層構造物〜
上層構造物は、下記の特性を満たす。
(1)寸法安定性:材齢28日において、0.050%以下(基調を材齢2時間として) より好ましくは0.025%以下 (試験法後述)
【0038】
寸法安定性はたとえば、以下のように評価する。
(1)試験体は□100×100×40mmとして,JIS A
1129 - 3 『 モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法一第3 部:ダイヤルゲージ方法』
に準拠した測定方法で実施する。
(2)試験体の基長は、材齢2 時間とし、脱型は材齢100 分以降に実施することとする。なお,試験体の養生は23±2℃での気中養生とする。
(3)基調を測定した後,温度23±2℃ 、湿度60 ±10 %の恒温恒湿槽に静置する。試験体は他の試験体の影響を受けないように、周囲と2.5cm以上の間隔を取ることとする。
(4)寸法変化の測定間隔は次のとおりである。材齢6時間,1日,3日,7日,14日および28日の合計6回の測定を行う。
【0039】
上層構造物は、さらに下記の特性を満たすことが好ましい。
(2)熱膨張率:1.0×10−5/℃±0.5 JSCE-K 561 に準拠
(3)材齢28日における静弾性係数:5.0〜35.0kN/mm より好ましくは21.5〜31.5kN/mm JIS A 1149 に準拠
(4)下層の速硬コンクリートとの付着強度:1.0N/mm以上 より好ましくは1.5N/mm以上 (試験法後述)
【0040】
付着強度性はたとえば、以下のように評価する。
(1) 試験体寸法はφ75mm×高さ150mmまたはφ100mm×高さ200mmの円柱試験体とする。上層と下層との厚さ比は1 : l とする。
(2) 所定の寸法に整形した試験体の上下表面に,直接引張試験用の鋼製治具(厚み20mm以上)を接着剤により固定する。
(3) 試験体を23±2℃で養生した後(最低6 時間以上)、直接引張試験を実施する。
(4)引張試験の条件は毎秒0.06±0.04N/mm2で載荷する。なお,載荷する試験機は荷重制御が可能な試験機を用いることとする。
(5) 引張接着試験は,接着界面破壊または材料破壊するまで行う。
(6) 破壊したときの最大荷重を計測する。なお、破断面が試験治具または母材コンクリートであり、かつ基準値未満の場合は別の試験体を用いて再試験を行ってよい。
(7) 付着強度は、次の式によって算出し、JIS Z8401によって有効数字2桁の値に丸めて示す。また、破断の状態を記録し、破断面については破断部位ごとの概略の面積比を算出する。
付着強度(N/mm2)=最大引張荷重(N) /断面積(mm2)
【0041】
特性(1)(2)を満たさない場合、ひび割れが発生するおそれがある。ひび割れは水の侵入を許し、車両荷重の繰り返し載荷と併せて剥離の原因となる。
【0042】
特性(3)において所定の弾性を有さない場合、舗装表面に加わる衝撃荷重がコンクリート舗装へ伝わり易い。この結果、コンクリート舗装がひび割れ等損傷するおそれがある。一方、所定超の弾性を有する場合、衝撃加重により変形し易い。この結果、轍掘れが起こり易い。
【0043】
特性(4)を満たさない場合、上層が剥離するおそれがある。
【0044】
上記特性を有することにより、優れた耐久性を得ることができる。
【0045】
上記特性を得るためには、セメント用ポリマーを含むことが好ましい。セメント用ポリマーとしては、通常ポリマーセメントに用いられるポリマーであれば特に限定されないが、高い靱性を得る点から、アクリル酸エステル系ポリマー、アクリルスチレン系ポリマー、スチレンブタジエン(SBR)系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル系ポリマー、エチレンビニルアルコール(EVA)系ポリマー、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル系ポリマー等が好ましい。
【0046】
特に、上記のように下層の速硬コンクリートにセメント用ポリマーが含まれる場合は、同じポリマーを使用することが好ましい。同じポリマーが使用されることによって、下層の速硬コンクリートとの付着性に優れるより一体性の高いコンクリート舗装を得ることができる。
【0047】
ポリマーの含有量は、下層との付着強度、繰り返し載荷に対する耐久性、及び初期強度の観点から、セメント100質量部に対して、10〜30質量部が好ましい。
【0048】
さらに、早期交通解放の面から、速硬性を有することが好ましい。この場合、使用するセメントとして速硬セメントが使用される。速硬セメントとしては、市販されている超速硬セメント(商品名「ジェットセメント」)、あるいはポルトランドセメントに速硬性混和材が添加されたものなどが挙げられる。
【0049】
前記速硬性セメントにおける速硬性成分としては、例えばカルシウムアルミネート類、硫酸アルミニウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の急硬性物質の群の中から選ばれる一種又は二種以上を主成分とするものが挙げられる。中でもカルシウムアルミネート類を主成分とするものが特に好ましい。カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、AlをAで表示した場合、CA,CA,C12,C,CA,C又はCA等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、アルミナセメント、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したカルシウムハロアルミネート、アウイン(3CaO・3Al・CaSO)等のカルシウムサルホアルミネート、並びにこれらにSiO、Fe、MgO、KO、NaO、LiO、TiO等が固溶又は化合したもの等が含まれる。
【0050】
水は、セメント100質量部に対して、25〜40質量部が好ましい。
【0051】
また、上層がモルタルである場合、乾燥収縮、耐久性の観点から、セメント100質量部に対して細骨材100〜400質量部が好ましい。
【0052】
上層がコンクリートである場合、乾燥収縮、耐久性の観点から、セメント100質量部に対して細骨材100〜400質量部、粗骨材80〜500質量部が好ましい。粗骨材の最大寸法が13mm以下であることが好ましい。
【0053】
最大寸法を13mm以下にすることによって、1)上層の舗装厚を50mm以下にできること、2)単位セメント量を低減でき、収縮を低減できること、3)骨材の拘束効果により収縮を低減できること、4)単位セメント量を低減でき、発熱を抑え、温度ひび割れを抑制できること、5)舗装表面の滑り抵抗性を高めることができること等の利点がある。
【0054】
その他、本発明の特性を損ねない範囲で、各種混和剤(材)を併用することができる。この種の添加剤としては、例えば減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の分散剤、凝結遅延剤、強度促進材、発泡剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、消泡剤、繊維等が挙げられる。
【0055】
上層の厚さとしては10〜100mmである。好ましくは20〜50mmである。
【0056】
〜施工方法〜
まず、通常のコンクリート舗装と同様に、路床、路盤が形成される。この路盤の上に、下層の速硬コンクリートが打設される。このとき、フィニッシャーにより敷き均しをしてもよい。下層の速硬コンクリートがまだ硬化前の湿潤状態を保っている状態で、上層のコンクリート(またはモルタル)が打設される。上面はフィニッシャーにより敷き均しされる。
【0057】
ここで硬化する前とは、コンクリートの凝結の終結時間(JIS A 1147)が来る前をいう。
【0058】
下層の速硬コンクリートが湿潤状態を保っている前に上層のコンクリート(モルタル)が打設されることによって、より一体性の高いコンクリート舗装を得ることができる。
【0059】
また、下層の速硬コンクリートがまだ硬化前に上層を打設することにより、施工時間が短縮される。これにより早期交通解放が可能となる。
【0060】
〜効果まとめ〜
下層が早期強度を確保するとともに、上層も構造体として機能するため、早期交通解放が可能となる。
【0061】
施工時間の短縮化が図れるため、早期交通解放が可能となる。
【0062】
上層の特性により、耐久性や靱性に優れている。
【0063】
一体性に優れているため、弱点となる打継部からの劣化因子(水、塩化物など)の浸入を防ぐことができ、耐久性が向上する。また、車両荷重の繰り返し載荷による剥離を防ぎ、この点でも耐久性が向上する。
【0064】
上層は、表面からの劣化因子の浸入を防ぐことができ、耐久性が向上する。
【0065】
下層は大量打設に優れた経済的な速硬コンクリート、上層は耐久性等の特性重視のモルタル、コンクリートを組み合わせることにより、トータルとしてエコシステムにもかなう舗装コンクリートを提供できる。
【0066】
〜実施例〜
試験施工を行い、各物性値を確認した。特に言及がない場合、材齢28日である。
【0067】
上層のモルタル配合については、セメント100質量部に対して、水30質量部、細骨材300質量部、ポリマー18質量部とした。速硬のセメントモルタルには、カルシウムサルホアルミネート系の速硬セメントを使用した。ポリマーとしては、スチレンブタジエン系ポリマーを使用した。
【0068】
下層の速硬コンクリート配合については、カルシウムアルミネート系の速硬セメント組成物を使用し、速硬セメント組成物100質量部に対して、細骨材を180質量部、粗骨材を230質量部、水52質量部の配合とした。
【0069】
また、速硬ポリマーセメントコンクリートには、スチレンブタジエン系ポリマーを使用した。ポリマーの量は、セメント100質量部に対して16質量部とした。
【0070】
【表1】
上層のモルタルの物性値
【0071】
普通セメントモルタルおよび速硬セメントモルタルを用いた場合、上層特性(2)および特性(3)を満たすが、上層特性(1)を満たさない。一方、速硬ポリマーセメントモルタルを用いた場合、上層特性(1)(2)(3)を満たす。
【0072】
【表2】
下層の速硬コンクリートの物性値
【0073】
速硬コンクリートであっても、速硬ポリマーセメントコンクリートであっても、材齢6時間で20N/mm以上の圧縮強度が発現している。
【0074】
【表3】
上層と下層の付着性
【0075】
上層にポリマーセメントモルタルを用いれば、下層が速硬コンクリートであっても、速硬ポリマーセメントコンクリートであっても、上層特性(4)を満たす。
【0076】
ただし、下層に速硬ポリマーセメントコンクリートを用いた場合、付着性は向上する。
【0077】
〜備考〜
一般に、コンクリート床版あるいはコンクリート舗装の部分的な補修材料として、ポリマーセメントモルタルが用いられている。
【0078】
一方で、新設のコンクリート舗装や大規模補修において、ポリマーセメントモルタルを用いることはなかった。本願は、ポリマーセメントモルタルの適用範囲拡大を企図してなされたものである。
【符号の説明】
【0079】
1 路床
2 路盤
3 コンクリート構造体
31 下層構造物
32 上層構造物
図1