(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6748635
(24)【登録日】2020年8月12日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】アクティブマトリクスアレイ装置の製造方法とこれにより製造されたアクティブマトリクスアレイ装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20200824BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20200824BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20200824BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20200824BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 308Z
G09F9/00 338
G02F1/1368
H01L29/78 618B
H01L29/78 612Z
H01L29/78 627D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-514231(P2017-514231)
(86)(22)【出願日】2016年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2016063615
(87)【国際公開番号】WO2016171285
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2018年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-85644(P2015-85644)
(32)【優先日】2015年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513104479
【氏名又は名称】パイクリスタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山口 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政隆
(72)【発明者】
【氏名】姓本 憲和
(72)【発明者】
【氏名】上松 美奈
【審査官】
西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−118441(JP,A)
【文献】
特開2012−048094(JP,A)
【文献】
特開2004−228373(JP,A)
【文献】
特開2003−289136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30
G02F 1/1368
G09F 9/00
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクス基板上に、相互に直交する複数の行配線と複数の列配線と、縦方向および横方向に配列された複数のマトリクス要素とが形成されたアクティブマトリクスアレイ装置の製造方法であって、
前記マトリクス要素の制御回路を、前記アクティブマトリクス基板とは別の別基板におけるフィルム膜上に複数個形成する第1の工程と、
複数個の前記制御回路を、一つずつ前記フィルム膜ごと切り離す第2の工程と、
前記切り離された複数個の制御回路それぞれを、前記アクティブマトリクス基板上の前記マトリクス要素が形成される領域に配置して、前記行配線と前記列配線、および、前記マトリクス要素の電極部分と接続する第3の工程と、を有すること特徴とするアクティブマトリクスアレイ装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において形成された前記制御回路それぞれに対して所定の動作試験を行い、
前記第3の工程において、良品の前記制御回路のみを選択して前記アクティブマトリクス基板上に配置する、請求項1に記載のアクティブマトリクスアレイ装置の製造方法。
【請求項3】
前記制御回路が有機半導体で形成された有機TFTである、請求項1または2に記載のアクティブマトリクスアレイ装置の製造方法。
【請求項4】
前記別基板は、ガラス基板上に前記フィルム膜を貼り付けて構成されており、前記制御回路を前記フィルム膜ごと切り離す際に、前記ガラス基板を切断せずに、前記ガラス基板から前記制御回路と前記フィルム膜とを剥離する、請求項1〜3のいずれかに記載のアクティブマトリクスアレイ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクスアレイ装置の製造方法に関するものであり、各マトリクス要素に設けられる制御回路を、アクティブマトリクスアレイ装置とは別の基板上に形成し、各マトリクス要素に配置するようにアクティブマトリクスアレイ装置上に実装する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクスアレイ装置は、表示・発光デバイス、センサ、メモリ、アクチュエータ等の機能を持ったデバイスをマトリクスアレイ状に並べたもので、様々な分野・用途で使用されている。
アクティブマトリクスアレイ装置の構造は、表示やセンサ等のデバイスとこれを制御する回路が一つのセットとなったマトリクス要素と、個々のマトリクス要素に制御信号等を伝送するためにマトリクスの行方向と列方向に張り巡らされた導体(配線)群からなったものを基本としている。各行配線及び列配線は、マトリクス要素内或はその隣接領域で交差されている。マトリクス要素を構成する制御回路はトランジスタ1つのものから複雑な回路まで用途によって異なる。また、マトリクス要素のデバイスがセンサの場合、センサの出力信号を伝送するための配線がこの基本構造に追加される。
アクティブマトリクスアレイ装置の応用として現在最も普及している分野はディスプレイ分野である。その中でも液晶ディスプレイが最も普及している。液晶ディスプレイの場合、電極で挟まれた液晶層とそこに電圧印加するための薄膜トランジスタ(TFT)からなる画素がマトリクス要素に相当し、また行配線はゲートライン、列配線はデータライン等と呼ばれている。今後の新しい応用例としてはセンサをアクティブマトリクスアレイ化した装置が期待されている。
加えて近年、有機材料を用いた半導体技術が進み、有機半導体を用いた有機TFTをマトリクス要素の制御回路に適用できる見通しがたってきた。有機TFTは柔らかく曲げられるフィルム上に低コストで形成することが可能なため、フレキシブルなアクティブマトリクスアレイ装置という新しい応用分野の創出が期待される。
例えば既に成熟期に入っている従来のディスプレイ分野の場合、TFTの形成には高温を要するため、熱耐性の高いガラス基板上にアクティブマトリクスアレイ装置を作る必要性があることから、装置軽量化の限界や製造プロセス技術或は製造コストの面で大型化が困難であった。しかし有機TFT技術を採用して基板を軽量化することでこの問題を回避できるため、屋外や大型商業施設・ホール等への設置を目的とする大型ディスプレイをアクティブマトリクスアレイ方式で作ることが可能になる。
このように新たな応用分野の創出が期待されるアクティブマトリクスアレイ装置だが、応用分野に関係しない共通の課題がある。それは、マトリクス要素の制御回路を形成するためのプロセスと他の部分を形成するプロセスや、これらの材料の間に類似性或は親和性が少ない点である。このことは、材料の選択やプロセス条件に関して、制御回路と他の部分が相互に制約要因となり、結果として装置の製品仕様への制限や製造コストの増加に反映される。また制御回路は、マトリクスアレイ全体に配置されるにも係らず、装置全体に対する面積比率が小さい場合が一般的である。このことは、材料の無駄の発生や直接的には見えない隠れた製造コスト増につながっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクティブマトリクスアレイ装置において、その制御回路と他の部分の形成プロセスの相違点や材料の特質の違いに起因して、アクティブマトリクスアレイ装置の製品仕様に生じる制約や製造コストの増加を抑制することが、本発明が解決する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来のアクティブマトリクスアレイ装置の製造は、同一基板上に種々のプロセス工程を重ねることで装置を作り上げる。その中の一部のプロセス工程によりトランジスタを含む制御回路部も形成される。これに対して、本発明はアクティブマトリクスアレイ装置の制御回路部を他の部分(マトリクスアレイ本体)とは別の基板上に形成し、マトリクスアレイ本体の製造プロセス工程の途中或は最終工程後に、各マトリクス要素上に実装することを主たる特徴として上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アクティブマトリクスアレイ装置全体と比べて大幅に小さい面積の基板上に制御回路部のみをまとめて形成することが可能になるため、この部分に係る製造装置を小規模化することが可能になる。また、形成した制御回路で良品のみを選択して実装することが可能になるため、装置全体の良品歩留りを向上させることが可能になる。これらは製造コストの大幅削減につながる。特にアクティブマトリクスアレイ装置のサイズが大きいほど、あるいは制御回路が複雑なほどこの効果は大きくなる。加えて、制御回路とマトリクスアレイ本体のそれぞれの材料の特質や製造プロセスの違いから生じる制約によって実現することが困難であった装置、例えば屋外設置の大型のディスプレイを従来の液晶、有機EL、電子ペーパー等の技術で実現すること等が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の基本概念を示す図
図2はアクティブマトリクスアレイ装置上の一つのマトリクス要素を示す図
図3は本発明の一実施の形態における液晶パネルの断面構造の概略を示す図
図4aは同マトリクス要素制御回路の上面図
図4bは同マトリクス要素制御回路を
図4a中の線Aに沿って切出した断面図
図4cは同マトリクス要素制御回路を
図4a中の線Bに沿って切出した断面図
図5は同マトリクス要素制御回路をマトリクス要素に実装した状態を線Cに沿って見た断面図
図6は同マトリクス要素制御回路をマトリクス要素に実装した状態を線Dに沿って見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施例では、アクティブマトリクスアレイ装置として大型の液晶ディスプレイパネルを、マトリクス要素である画素の制御回路として有機TFTとした場合の応用例について説明する。
図1は本発明の基本概念を示したもので、液晶ディスプレイパネル本体100、マトリクス要素制御回路としての有機TFT300、複数の有機TFTを形成した基板400を上面から見た図である。マトリクス要素制御回路は本実施例においては有機TFT一つのみの構成になっており、別基板上400に有機TFTプロセスにより形成を行う。
図1においては、形成した有機TFTを基板400から分離して、液晶ディスプレイパネル本体100上の所定の位置にフェイスダウンで実装した様子を示している。
図2はマトリクス要素である画素上に有機TFT300をフェイスダウン実装した状態の上面を示している。図では示されていないが、ゲート線210、データ線220、画素電極230は、有機TFT300のそれぞれゲート電極、ソース電極、ドレイン電極に電気的に接続される。
図3は本実施例である液晶ディスプレイパネル100の断面構造の概略を示している。図では液晶ディスプレイパネルの表示面が下側になっており、本実施例の製造工程において液晶ディスプレイパネルの基板層110,液晶層120,配線・電極層130,有機TFT300,カバーフィルム層140が示されている。本図においては、液晶ディスプレイパネルを構成する上で必要な偏光板やカラーフィルタ等の一般的な部材は省略されている。即ち、基板層110は偏光板,透明基板,カラーフィルタ,対抗電極,配向膜等が積層されており、配線・電極層130は配向膜上に画素電極230,ゲートライン210,データライン220が所定のレイアウトで作り込まれており、カバーフィルム層140は有機TFTの封止膜上に偏光板を積層したものとなっている。
液晶ディスプレイパネル100の製造工程において、有機TFT300は配線・電極層130を形成した後に実装を行い、その上部にカバーフィルム層140を形成する。本実施例においては、あらかじめ形成した基板層110と、配線・電極層130に有機TFT300を実装しカバーフィルム層140を形成した積層基板との間に液晶を注入する方法と採った。しかし、これらの工程の順序は本発明の本質とは関係が無く、使用する材料等に応じて工程順は最適化され得るものであり、本発明の適用範囲を制限するものではない。
図4aは有機TFT300を上から見た図である。図中の線A及び線Bに沿って切出した断面構造を
図4b及び
図4cに示している。本実施例においては、有機TFT300はボトムゲート・トップコンタクト型の構造を採用しており、ガラス基板400の上にポリミド系の薄膜フィルム300bを貼付けた基板上に有機TFTプロセスにより形成される。
図4a,4b,4cにおいて、ゲート電極310,ゲート絶縁膜320,有機半導体330,ソース電極340,ドレイン電極350,絶縁カバー膜360,ゲート電極引出しビアメタル370,ソース電極引出しビアメタル380,ドレイン電極引出しビアメタル390が示されている。
ガラス基板400上に形成した有機TFTはダイシング等で一つずつ分離する。その際に、ガラス基板は完全に切断せずにポリミド系薄膜フィルム300bから上部の有機TFTの層にのみに切り込みを入れ、ポリミド系薄膜フィルム300bから上部を有機TFT300としてガラス基板400から剥がして、アクティブマトリクスアレイ装置本体100上に実装する。
図5及び
図6は有機TFTが液晶ディスプレイパネル100に実装され、有機TFTの各電極が液晶ディスプレイパネル100の配線や画素電極に接続されている様子を示した図で、それぞれ
図2中に示す線C及び線Dにそって切出した断面の構造を示している。ゲート電極310はゲート電極引出しビア370及びゲート線接続ビアメタル240を介してゲート線210と接続される。ソース電極340はソース引出しビアメタル380及びデータ線接続ビアメタル250を介してデータ線220と接続される。ドレイン電極350はドレイン電極引出しビアメタル390及び画素電極接続ビア260を介して画素電極230に接続される。
図5及び6では、配向膜200及び絶縁層270も図示されている。
作用及び効果
本実施例において、画素を制御する有機TFTを液晶ディスプレイ本体とは別の基板上に作り込むため、必ずしも一枚の基板上に作り込む必要はない。必要な画素数に対して、最も生産効率の高い基板サイズにて必要な枚数を作るという方法が可能である。また、画素数を固定すれば、ディスプレイのサイズに関係なく有機TFT製造に関わるコストは一定になる。屋外用のディスプレイとして画面サイズが100インチであっても400インチであっても、TFTに関わるコストは変わらないという効果が得られる。
一方で本実施例においては、ガラス基板を用いることが必須ではないため、ロールツーロール方式や印刷技術等と組み合わせてディスプレイを製造することが可能になる。このことは従来のアクティブマトリクスアレイ型のディスプレイの軽量且つ巨大化を可能にするものである。