(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態における通信システムは、無線送信装置(アクセスポイント、基地局装置: Access point、基地局装置)、及び複数の無線受信装置(ステーション、端末装置: station、端末装置)を備える。また、基地局装置と端末装置とで構成されるネットワークを基本サービスセット(BSS: Basic service set、管理範囲)と呼ぶ。また、基地局装置と、端末装置をまとめて、無線装置とも呼称する。
【0023】
BSS内の基地局装置及び端末装置は、それぞれCSMA/CA(Carrier sense multiple access with collision avoidance)に基づいて、通信を行なうものとする。本実施形態においては、基地局装置が複数の端末装置と通信を行なうインフラストラクチャモードを対象とするが、本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうアドホックモードでも実施可能である。アドホックモードでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりBSSを形成する。アドホックモードにおけるBSSを、IBSS(Independent Basic Service Set)とも呼称する。以下では、アドホックモードにおいてIBSSを形成する端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。
【0024】
IEEE802.11システムでは、各装置は、共通のフレームフォーマットを持った複数のフレームタイプの送信フレームを送信することが可能である。送信フレームは、物理(Physical: PHY)層、媒体アクセス制御(Medium access control: MAC)層、論理リンク制御(LLC: Logical Link Control)層、でそれぞれ定義されている。
【0025】
PHY層の送信フレームは、物理プロトコルデータユニット(PPDU: PHY protocol data unit、物理層フレーム)と呼ばれる。PPDUは、物理層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれる物理層ヘッダ(PHYヘッダ)と、物理層で処理されるデータユニットである物理サービスデータユニット(PSDU: PHY service data unit、MAC層フレーム)等から構成される。PSDUは無線区間における再送単位となるMACプロトコルデータユニット(MPDU: MAC protocol data unit)が複数集約された集約MPDU(A-MPDU: Aggregated MPDU)で構成されることが可能である。
【0026】
PHYヘッダには、信号の検出・同期等に用いられるショートトレーニングフィールド(STF: Short training field)、データ復調のためのチャネル情報を取得するために用いられるロングトレーニングフィールド(LTF: Long training field)等の参照信号と、データ復調のための制御情報が含まれているシグナル(Signal: SIG)等の制御信号が含まれる。また、STFは、対応する規格に応じて、レガシーSTF(L-STF: Legacy-STF)や、高スループットSTF(HT-STF: High throughput-STF)や、超高スループットSTF(VHT-STF: Very high throughput-STF)や、高効率STF(HE-STF: High efficiency-STF)等に分類され、LTFやSIGも同様にL−LTF、HT−LTF、VHT−LTF、HE−LTF、L−SIG、HT−SIG、VHT−SIG、HE−SIGに分類される。VHT−SIGは更にVHT−SIG−AとVHT−SIG−Bに分類される。
【0027】
さらに、PHYヘッダは当該送信フレームの送信元のBSSを識別する情報(以下、BSS識別情報とも呼称する)を含むことができる。BSSを識別する情報は、例えば、当該BSSのSSID(Service Set Identifier)や当該BSSの基地局装置のMACアドレスであることができる。また、BSSを識別する情報は、SSIDやMACアドレス以外の、BSSに固有な値(例えば、BSS Color等)であることができる。
【0028】
PPDUは対応する規格に応じて変調される。例えば、IEEE802.11n規格であれば、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal frequency division multiplexing)信号に変調される。
【0029】
MPDUはMAC層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれるMAC層ヘッダ(MAC header)と、MAC層で処理されるデータユニットであるMACサービスデータユニット(MSDU: MAC service data unit)もしくはフレームボディ、ならびにフレームに誤りがないかをどうかをチェックするフレーム検査部(Frame check sequence: FCS)で構成されている。また、複数のMSDUは集約MSDU(A-MSDU: Aggregated MSDU)として集約されることも可能である。
【0030】
MAC層の送信フレームのフレームタイプは、装置間の接続状態等を管理するマネージメントフレーム、装置間の通信状態を管理するコントロールフレーム、及び実際の送信データを含むデータフレームの3つに大きく分類され、それぞれは更に複数種類のサブフレームタイプに分類される。コントロールフレームには、受信完了通知(Ack: Acknowledge)フレーム、送信要求(RTS: Request to send)フレーム、受信準備完了(CTS: Clear to send)フレーム等が含まれる。マネージメントフレームには、ビーコン(Beacon)フレーム、プローブ要求(Probe request)フレーム、プローブ応答(Probe response)フレーム、認証(Authentication)フレーム、接続要求(Association request)フレーム、接続応答(Association response)フレーム等が含まれる。データフレームには、データ(Data)フレーム、ポーリング(CF-poll)フレーム等が含まれる。各装置は、MACヘッダに含まれるフレームコントロールフィールドの内容を読み取ることで、受信したフレームのフレームタイプ及びサブフレームタイプを把握することができる。
【0031】
なお、Ackには、Block Ackが含まれても良い。Block Ackは、複数のMPDUに対する受信完了通知を実施可能である。
【0032】
ビーコンフレームには、ビーコンが送信される周期(Beacon interval)やSSIDを記載するフィールド(Field)が含まれる。基地局装置は、ビーコンフレームを周期的にBSS内に報知することが可能であり、端末装置はビーコンフレームを受信することで、端末装置周辺の基地局装置を把握することが可能である。端末装置が基地局装置より報知されるビーコンフレームに基づいて基地局装置を把握することを受動的スキャニング(Passive scanning)と呼ぶ。一方、端末装置がプローブ要求フレームをBSS内に報知することで、基地局装置を探査することを能動的スキャニング(Active scanning)と呼ぶ。基地局装置は該プローブ要求フレームへの応答としてプローブ応答フレームを送信することが可能であり、該プローブ応答フレームの記載内容は、ビーコンフレームと同等である。
【0033】
端末装置は基地局装置を認識したあとに、該基地局装置に対して接続処理を行なう。接続処理は認証(Authentication)手続きと接続(Association)手続きに分類される。端末装置は接続を希望する基地局装置に対して、認証フレーム(認証要求)を送信する。基地局装置は、認証フレームを受信すると、該端末装置に対する認証の可否等を示すステータスコードを含んだ認証フレーム(認証応答)を該端末装置に送信する。端末装置は、該認証フレームに記載されたステータスコードを読み取ることで、自装置が該基地局装置に認証を許可されたか否かを判断することができる。なお、基地局装置と端末装置は認証フレームを複数回やり取りすることが可能である。
【0034】
端末装置は認証手続きに続いて、基地局装置に対して接続手続きを行なうために、接続要求フレームを送信する。基地局装置は接続要求フレームを受信すると、該端末装置の接続を許可するか否かを判断し、その旨を通知するために、接続応答フレームを送信する。接続応答フレームには、接続処理の可否を示すステータスコードに加えて、端末装置を識別するためのアソシエーション識別番号(AID: Association identifier)が記載されている。基地局装置は接続許可を出した端末装置にそれぞれ異なるAIDを設定することで、複数の端末装置を管理することが可能となる。
【0035】
接続処理が行なわれたのち、基地局装置と端末装置は実際のデータ伝送を行なう。IEEE802.11システムでは、分散制御機構(DCF: Distributed Coordination Function)と集中制御機構(PCF: Point Coordination Function)、及びこれらが拡張された機構(拡張分散チャネルアクセス(EDCA: Enhanced distributed channel access)や、ハイブリッド制御機構(HCF: Hybrid coordination function)等)が定義されている。以下では、基地局装置が端末装置にDCFで信号を送信する場合を例にとって説明する。
【0036】
DCFでは、基地局装置及び端末装置は、通信に先立ち、自装置周辺の無線チャネルの使用状況を確認するキャリアセンス(CS: Carrier sense)を行なう。例えば、送信局である基地局装置は予め定められたクリアチャネル評価レベル(CCAレベル: Clear channel assessment level)よりも高い信号を該無線チャネルで受信した場合、該無線チャネルでの送信フレームの送信を延期する。以下では、該無線チャネルにおいて、CCAレベル以上の信号が検出される状態をビジー(Busy)状態、CCAレベル以上の信号が検出されない状態をアイドル(Idle)状態と呼ぶ。このように、各装置が実際に受信した信号の電力(受信電力レベル)に基づいて行なうCSを物理キャリアセンス(物理CS)と呼ぶ。なおCCAレベルをキャリアセンスレベル(CS level)、もしくはCCA閾値(CCA threshold: CCAT)とも呼ぶ。なお、基地局装置及び端末装置は、CCAレベル以上の信号を検出した場合は、少なくともPHY層の信号を復調する動作に入る。
【0037】
基地局装置は送信する送信フレームに種類に応じたフレーム間隔(IFS: Inter frame space)だけキャリアセンスを行ない、無線チャネルがビジー状態かアイドル状態かを判断する。基地局装置がキャリアセンスする期間は、これから基地局装置が送信する送信フレームのフレームタイプ及びサブフレームタイプによって異なる。IEEE802.11システムでは、期間の異なる複数のIFSが定義されており、最も高い優先度が与えられた送信フレームに用いられる短フレーム間隔(SIFS: Short IFS)、優先度が比較的高い送信フレームに用いられるポーリング用フレーム間隔(PCF IFS: PIFS)、最も優先度の低い送信フレームに用いられる分散制御用フレーム間隔(DCF IFS: DIFS)等がある。基地局装置がDCFでデータフレームを送信する場合、基地局装置はDIFSを用いる。
【0038】
基地局装置はDIFSだけ待機したあとで、フレームの衝突を防ぐためのランダムバックオフ時間だけ更に待機する。IEEE802.11システムにおいては、コンテンションウィンドウ(CW: Contention window)と呼ばれるランダムバックオフ時間が用いられる。CSMA/CAでは、ある送信局が送信した送信フレームは、他送信局からの干渉が無い状態で受信局に受信されることを前提としている。そのため、送信局同士が同じタイミングで送信フレームを送信してしまうと、フレーム同士が衝突してしまい、受信局は正しく受信することができない。そこで、各送信局が送信開始前に、ランダムに設定される時間だけ待機することで、フレームの衝突が回避される。基地局装置はキャリアセンスによって無線チャネルがアイドル状態であると判断すると、CWのカウントダウンを開始し、CWが0となって初めて送信権を獲得し、端末装置に送信フレームを送信できる。なお、CWのカウントダウン中に基地局装置がキャリアセンスによって無線チャネルをビジー状態と判断した場合は、CWのカウントダウンを停止する。そして、無線チャネルがアイドル状態となった場合、先のIFSに続いて、基地局装置は残留するCWのカウントダウンを再開する。
【0039】
受信局である端末装置は、送信フレームを受信し、該送信フレームのPHYヘッダを読み取り、受信した送信フレームを復調する。そして、端末装置は復調した信号のMACヘッダを読み取ることで、該送信フレームが自装置宛てのものか否かを認識することができる。なお、端末装置は、PHYヘッダに記載の情報(例えば、VHT-SIG-Aの記載されるグループ識別番号(GID: Group identifier、Group ID))に基づいて、該送信フレームの宛先を判断することも可能である。
【0040】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものと判断し、そして誤りなく送信フレームを復調できた場合、フレームを正しく受信できたことを示すACKフレームを送信局である基地局装置に送信しなければならない。ACKフレームは、SIFS期間の待機だけ(ランダムバックオフ時間は取られない)で送信される最も優先度の高い送信フレームの一つである。基地局装置は端末装置から送信されるACKフレームの受信をもって、一連の通信を終了する。なお、端末装置がフレームを正しく受信できなかった場合、端末装置はACKを送信しない。よって基地局装置は、フレーム送信後、一定期間(SIFS+ACKフレーム長)の間、受信局からのACKフレームを受信しなかった場合、通信は失敗したものとして、通信を終了する。このように、IEEE802.11システムの1回の通信(バーストとも呼ぶ)の終了は、ビーコンフレーム等の報知信号の送信の場合や、送信データを分割するフラグメンテーションが用いられる場合等の特別な場合を除き、必ずACKフレームの受信の有無で判断されることになる。
【0041】
端末装置は、受信した送信フレームが自装置宛てのものではないと判断した場合、PHYヘッダ等に記載されている該送信フレームの長さ(Length)に基づいて、ネットワークアロケーションベクタ(NAV: Network allocation vector)を設定する。端末装置は、NAVに設定された期間は通信を試行しない。つまり、端末装置は物理CSによって無線チャネルがビジー状態と判断した場合と同じ動作をNAVに設定された期間行なうことになるから、NAVによる通信制御は仮想キャリアセンス(仮想CS)とも呼ばれる。NAVは、PHYヘッダに記載の情報に基づいて設定される場合に加えて、隠れ端末問題を解消するために導入される送信要求(RTS: Request to send)フレームや、受信準備完了(CTS: Clear to send)フレームによっても設定される。
【0042】
各装置がキャリアセンスを行ない、自律的に送信権を獲得するDCFに対して、PCFは、ポイントコーディネータ(PC: Point coordinator)と呼ばれる制御局が、BSS内の各装置の送信権を制御する。一般に基地局装置がPCとなり、BSS内の端末装置の送信権を獲得することになる。
【0043】
PCFによる通信期間には、非競合期間(CFP: Contention free period)と競合期間(CP: Contention period)が含まれる。CPの間は、前述してきたDCFに基づいて通信が行なわれ、PCが送信権を制御するのはCFPの間となる。PCである基地局装置は、CFPの期間(CFP Max duration)等が記載されたビーコンフレームをPCFの通信に先立ちBSS内に報知する。なお、PCFの送信開始時に報知されるビーコンフレームの送信にはPIFSが用いられ、CWを待たずに送信される。該ビーコンフレームを受信した端末装置は、該ビーコンフレームに記載されたCFPの期間をNAVに設定する。以降、NAVが経過する、もしくはCFPの終了をBSS内に報知する信号(例えば、CF-endを含んだデータフレーム)が受信されるまでは、端末装置はPCより送信される送信権獲得をシグナリングする信号(例えば、CF-pollを含んだデータフレーム)を受信した場合のみ、送信権を獲得可能である。なお、CFPの期間内では、同一BSS内でのパケットの衝突は発生しないから、各端末装置はDCFで用いられるランダムバックオフ時間を取らない。
【0044】
以下では、基地局装置、端末装置を総称して、無線装置とも呼称する。また、ある無線装置が別の無線装置と通信を行なう際にやりとりされる情報をデータ(data)とも呼称する。
【0045】
無線装置は、上りリンク(UL: Uplink)における多元接続(MA: Multiple Access)をサポートしている。上りリンク多元接続(UL-MU)は、上りリンク空間分割多元接続(UL-SDMA: Uplink-Spatial Division Multiple Access、UL-MU-MIMO: Uplink Multi-User-Multiple Input Multiple Output)や上りリンク周波数分割多重(UL-FDMA: Uplink-Frequency Division Multiple Access)や非直交多元接続(NOMA: Non-Orthogonal Multiple Access)を含む。以下では、UL−MU伝送を開始する(UL-MU伝送開始期間通知用のフレームを送信する、UL-MU伝送用のポールフレームを送信する、最初にUL-MU伝送用の制御情報を含むフレームを送信する)無線装置を、開始者(Initiator)とも呼称する。また、InitiatorがUL−MU伝送を開始するために最初に送信するフレーム(UL-MUポールフレームとも呼称)、に対して、応答するフレームを送信する(例えば、UL-MU伝送へ参加するフレームを送信する、UL-MU伝送の機能情報を通知するフレームを送信する)無線装置を、反応者(Responder)とも呼称する。また、Responderが送信する応答フレームに対して、さらに応答するフレームを送信する無線装置もResponderに含まれる。なお、Initiatorを第1の端末装置とも呼称し、Responderを第2の端末装置とも呼称する。
【0046】
以下では、端末装置とは、基地局装置以外の端末装置(例えば、Non-AP STA)であっても良いし、基地局装置と端末装置を含めて、端末装置(例えば、STA)であっても良い。つまり、以下の説明においては、端末装置として説明された動作を基地局装置が行なうこともできる。また、本発明は、Initiatorが基地局装置の動作であり、Responderが端末装置であることもできるし、Initiatorが端末装置であり、Responderが端末装置であることもできる。また、本発明は、Initiatorが端末装置の動作であり、Responderが基地局装置であることもできるし、Initiatorが基地局装置であり、Responderが基地局装置であることもできる。
【0047】
[1.第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示した図である。基地局装置1−1と端末装置2a−1、2b−1、2c−1、2d−1(以下では、まとめて端末装置2−1とも呼称)が管理範囲3−1を構成する。無線通信システムは、BSS(Basic Service Set)または管理範囲と呼ばれることもできる。また、基地局装置1−1と端末装置2−1をまとめて無線装置0−1とも呼称する。
【0048】
以下では、一例としてUL−MU−MIMOを想定するが、本実施形態は一般的なUL−MU伝送において適用可能である。例えば、本実施形態はUL−OFDMA(Uplink-Orthogonal Frequency Division Multiple Access)においても適用可能である。
【0049】
図2は基地局装置1−1の装置構成の一例を示した図である。基地局装置1−1は、上位層部10001−1と、自律分散制御部10002−1と、送信部10003−1と、受信部10004−1と、アンテナ部10005−1と、を含んだ構成である。
【0050】
上位層部10001−1は、他のネットワークと接続され、自律分散制御部10002−1にトラフィックに関する情報を通知することができる。トラフィックに関する情報とは、例えば、装置宛ての情報であっても良いし、マネージメントフレームやコントロールフレームに含まれる制御情報でも良い。
【0051】
図3は、自律分散制御部10002−1の装置構成の一例を示した図である。自律分散制御部10002−1は、CCA部10002a−1と、バックオフ部10002b−1と、送信判断部10002c−1とを含んだ構成である。
【0052】
CCA部10002a−1は、受信部10004−1から通知される、無線リソースの受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報(復号後の情報を含む)のいずれか一方、または両方を用いて、当該無線リソースの状態判断(busyまたはidleの判断を含む)を行なうことができる。CCA部10002a−1は、当該無線リソースの状態判断情報を、バックオフ部10002b−1及び送信判断部10002c−1に通知することができる。
【0053】
バックオフ部10002b−1は、無線リソースの状態判断情報を用いて、バックオフ処理を行なう機能を備える。バックオフ部10002b−1は、CWを生成することができ、さらにCWのカウントダウンすることができる。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に、CWのカウントダウンを実行し、無線リソースの状態判断情報がbusyを示す場合に、CWのカウントダウンを停止することができる。バックオフ部10002b−1は、CWの値を送信判断部10002c−1に通知することができる。
【0054】
なお、以下では、MU開始フレーム(あるいは、MU Information)を含むフレームを受信しない場合の通常のバックオフ部10002b−1の動作を、第1のバックオフ(あるいは、第1のバックオフ部)とも呼称し、MU開始フレーム(あるいは、MU Information)を受信した場合のバックオフ部10002b−1の動作を、第2のバックオフ(あるいは、第2のバックオフ部)とも呼称する。なお、MU開始フレーム、及びMU Informationについては後述する。また、以下では、バックオフ部10002b−1がCWを生成する場合に、CWによる送信待機が終了する時刻が設定されることを、バックオフ部が無線リソース確保時間を指示する、とも呼称する。つまり、バックオフ部10002b−1の動作は、CWを生成して無線リソース確保時間を基地局装置1−1に対して指示する、と言い換えることができる。
【0055】
また、以下では、MU開始フレーム(あるいは、MU Information)を含むフレームを受信しない場合の通常の自律分散制御部10002−1の動作を、第1の自律分散制御(あるいは、第1の自律分散制御部、第1の無線リソース確保)とも呼称し、MU開始フレーム(あるいは、MU Information)を受信した場合の自律分散制御部10002−1の動作を、第2の自律分散制御(あるいは、第2の自律分散制御部、第2の無線リソース確保)とも呼称する。
【0056】
送信判断部10002c−1は、無線リソースの状態判断情報、またはCWの値のいずれか一方、あるいは両方を用いて送信判断を行なう。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示し、CWの値が0の時に送信判断情報を送信部10003−1に通知することができる。また、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に送信判断情報を送信部10003−1に通知することができる。
【0057】
送信部10003−1は、物理層フレーム生成部10003a−1と、無線送信部10003b−1とを含んだ構成である。物理層フレーム生成部10003a−1は、送信判断部10002c−1から通知される送信判断情報に基づき、物理層フレームを生成する機能を有する。物理層フレーム生成部10003a−1は、物理層フレームに対して誤り訂正符号化、変調、プレコーディングフィルタ乗算等を施す。物理層フレーム生成部10003a−1は、生成した物理層フレームを無線送信部10003b−1に通知する。
【0058】
無線送信部10003b−1は、物理層フレーム生成部10003a−1が生成する物理層フレームを、無線周波数(RF: Radio Frequency)帯の信号に変換し、無線周波数信号を生成する。無線送信部10003b−1が行なう処理には、デジタル・アナログ変換、フィルタリング、ベースバンド帯からRF帯への周波数変換等が含まれる。
【0059】
受信部10004−1は、無線受信部10004a−1と、信号復調部10004b−1を含んだ構成である。受信部10004−1は、アンテナ部10005−1が受信するRF帯の信号から受信信号電力に関する情報を生成する。受信部10004−1は、受信信号電力に関する情報と、受信信号に関する情報をCCA部10002a−1に通知することができる。
【0060】
無線受信部10004a−1は、アンテナ部10005−1が受信するRF帯の信号をベースバンド信号に変換し、物理層信号(例えば、物理層フレーム)を生成する機能を有する。無線受信部10004a−1が行なう処理には、RF帯からベースバンド帯への周波数変換処理、フィルタリング、アナログ・デジタル変換が含まれる。
【0061】
信号復調部10004b−1は、無線受信部10004a−1が生成する物理層信号を復調する機能を有する。信号復調部10004b−1が行なう処理には、チャネル等化、デマッピング、誤り訂正復号化等が含まれる。信号復調部10004b−1は、物理層信号から、例えば、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報とを取り出すことができる。信号復調部10004b−1は、取り出した情報を上位層部10001−1に通知することができる。なお、信号復調部10004b−1は、物理層ヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、送信フレームが含む情報のいずれか、あるいは全てを取り出すことができる。
【0062】
アンテナ部10005−1は、無線送信部10003b−1が生成する無線周波数信号を、無線装置0−1に向けて、無線空間に送信する機能を有する。また、アンテナ部10005−1は、無線装置0−1から送信される無線周波数信号を受信する機能を有する。
【0063】
端末装置2−1は、基地局装置1−1と同様の装置構成であるため、説明を省略する。
【0064】
図4は、第1の実施形態に係るUL−MU伝送の手順の一例を示すシーケンスチャートである。なお、
図4に示す一例は任意のMU上限数において適用可能である。MU上限数とは、複数の端末装置2−1がUL−MU伝送により同時送信した場合の、基地局装置1−1が同時受信可能な端末装置2−1の数の上限値である。例えば、UL−MU−MIMOでは、MU上限数は基地局装置1−1のアンテナ素子数以下になることが好適である。UL−OFDMAでは、MU上限数は、周波数帯域の分割数(Granularity: グラニュアリティ)によって決定されることができる。なお、非直交アクセス(同一無線リソースに複数端末装置を多重する方法)を適用の場合、MU上限数はこの限りではなく、UL−MU−MIMOの場合においてもアンテナ素子数より大きい値となることができる。また、MU上限数は、最大多重ユーザ数、最大同時送信端末数、許容多重ユーザ数、許容多重送信端末数等とも呼称する。
【0065】
図4に示す一例では、端末装置2a−1がUL−MU伝送の手続きを開始している。端末装置2a−1は、端末装置2b−1及び端末装置2c−1に対してMU開始フレームを送信する(ステップS101)。MU開始フレームは、送信元アドレス(
図4に示す一例では端末装置2a−1のアドレス)に関する情報と、UL−MU伝送開始時刻に関する情報を含むことが好適であるが、含まなくても良い。MU開始フレームは、基地局装置1−1及び端末装置2−1が送信することができる。また、MU開始フレームの送信者をInitiatorとも呼称し、MU開始フレームの受信者をResponderとも呼称する。なお、MU開始フレーム構成の詳細は後述する。
【0066】
続いて、MU開始フレームを受信した端末装置2b−1及び端末装置2c−1は、CWのカウントダウンを行なう(ステップS102)。CWのカウントダウンにより、UL−MU伝送開始時刻内にCW=0となった端末装置(
図4に示す一例では、端末装置2b−1)は、UL−MU伝送を開始する(ステップS103)。
【0067】
一方、UL−MU伝送開始時刻内にCWが0とならない端末装置(
図4に示す一例では、端末装置2c−1)は、UL−MU伝送に参加しない。
【0068】
ステップS101〜S103の手順により、端末装置2−1は好適にUL−MU伝送を開始することができる。
【0069】
図5は、MU開始フレーム構成の一例を示した図である。PHY層フレームは、L−STFとL−LTFとL−SIGとMAC Frame(MACフレーム)を含んだ構成であり、MAC Frameは、Frame Controlフィールドと、Durationフィールドと、MU Informationフィールドと、TA(Transmitter Address)フィールドと、FCSフィールドを含んだ構成である。Frame Controlフィールドは、フレームタイプに関する情報等を含むフィールドであり、Durationフィールドは、NAVの設定に関する情報(受信完了通知を含んだ送信バースト長に関する情報)を含むフィールドである。TAフィールドは送信元のアドレスに関する情報を含むフィールドである。
【0070】
MU Informationフィールドは、MU Informationを含むフィールドである。MU Informationは、本実施形態に係るUL−MU伝送において用いられる情報を含むことができる。例えば、MU Informationは、UL−MU伝送開始時刻に関する情報や、CWの生成方法に関する情報、及びカウントダウン方法に関する情報や、端末装置2−1のグループを特定する情報を示す情報(サブグループ情報)や、LTF(または無線リソース)の生成方法に関する情報や、LTF(または無線リソース)の送信方法に関する情報のいずれか、または全てを含むことができる。
【0071】
なお、MU開始フレーム構成は、
図5に示す例に限定されるものではなく、UL−MU伝送をトリガするフレームであればどのような構成でも良い。また、MU開始フレームを受信する機能を持たない端末装置(以下では、レガシー端末装置とも呼称する)を保護するため、RTSやCTS等のコントロールフレームと同様の構成を有するフレームをMU開始フレームとすることもできる。
図5に示す一例のように、MU開始フレーム構成は、RTSやCTS等のコントロールフレームと同様の構成で、フィールドの一部の情報のみが異なっており、レガシー端末装置が受信可能なフレーム構成とすることもできる。
【0072】
MU開始フレームは、管理範囲3−1のUL−MU伝送の機能情報に基づき、UL−MU伝送参加端末装置上限数に関する情報(MU上限数情報)を含むことができる。基地局装置1−1は、BSS3−1のUL−MU伝送の機能情報として、UL−MU伝送機能を有するか否かに関する情報や、MU開始フレームを送信及び受信する機能を備えることを示す情報や、UL−MU伝送の許可に関する情報や、MU開始フレームの送信許可を示す情報や、UL−MU伝送の参加端末装置数の上限に関する情報を端末装置2−1に報知することができる。端末装置2−1が送信するMU開始フレームは、UL−MU伝送の参加端末装置数の上限に関する情報以下の値を示すMU上限数情報を含むことが好適である。なお、端末装置2−1は、それぞれ複数の無線リソースを使用することができる。ここで、MU上限数情報をNMUとし、あるUL−MU伝送において端末装置2−xが使用する無線リソース数をNxとし、当該UL−MU伝送に参加する端末装置2−1の集合をYとすれば、Nmu≧ΣxYNxであることが好適である。
【0073】
端末装置2−1(または、送信判断部10002c−1、自律分散制御部10002−1)は、UL−MU伝送開始時刻に関する情報に基づき、送信可否判断を行なう。例えば、端末装置2−1は、MU開始フレームを受信した後も、CWのカウントダウンを継続し、UL−MU伝送開始時刻内にCWが0となった場合に、UL−MU伝送を開始することができる。また、例えば、MU開始フレーム受信時点のCW値に基づき、送信可否判断を行なうこともできる。例えば、端末装置2−1はCWしきい値に関する情報をMU開始フレームに付加することができる。端末装置2−1は、MU開始フレーム内のCWしきい値に関する情報を取得し、当該端末装置2−1が保持するCW値が、CWしきい値以下の値である場合にUL−MU伝送を開始することができるとしても良いし、CWしきい値以上の値である場合にUL−MU伝送を開始することができるとしても良い。また、端末装置2−1は、MU開始フレーム内のCW生成方法に関する情報に基づき、UL−MU伝送に専用的に用いられるCW(以下では、MUCWとも呼称する)を生成することができる。UL−MU伝送に専用的に用いられるバックオフを、MUバックオフとも呼称する。MUバックオフの方法の詳細は後述する。
【0074】
なお、UL−MU伝送開始時刻に関する情報は、IFS(例えば、DIFSやSIFS等)を用いて設定されることも可能である。また、UL−MU伝送開始時刻に関する情報は、時間の区切りに関する情報(例えば、スロット(slot)数)を用いて設定されることもできる。
【0075】
端末装置2−1は、MU開始フレームに当該端末装置2−1が使用する、無線リソースに関する情報、参照信号の生成方法に関する情報、参照信号の送信方法に関する情報を付加することができる。
【0076】
例えば、Initiatorである端末装置2−1がMU開始フレームを送信し、当該端末装置2−1が使用する無線リソースがRAであったとする。当該端末装置2−1以外の端末装置2−1(Responderでも良い)は、MU開始フレームを受信し、Initiatorが使用する無線リソースRA以外の無線リソースRBを使用することで、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、
図4に示す一例では、端末装置2a−1が送信するMU開始フレームに、当該端末装置2a−1が使用する無線リソースに関する情報を付加することができる。また、端末装置2b−1は、端末装置2a−1が使用する無線リソースを知ることができるから、端末装置2a−1が使用する無線リソース以外の無線リソースを用いることにより、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、OFDMA等の周波数分割多元接続システムにおいては、無線リソースはチャネルに関する情報(例えば、チャネルの番号(インデックス))であることができる。
【0077】
また、例えば、Initiatorである端末装置2−1がMU開始フレームを送信し、当該端末装置2−1が使用する参照信号(例えば、LTF)の生成方法がGAであったとする。当該端末装置2−1以外の端末装置(Responderでも良い)は、MU開始フレームを受信し、Initiatorが使用する参照信号の生成方法GAと異なる生成方法GBを用いることで、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、
図4に示す一例では、端末装置2a−1が送信するMU開始フレームに、当該端末装置2a−1が使用する参照信号生成方法に関する情報を付加することができる。また、端末装置2b−1は、端末装置2a−1が使用する参照信号生成方法を知ることができるから、端末装置2a−1が使用する参照信号生成方法以外の参照信号生成方法を用いることにより、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、UL−MU−MIMOやCDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)において、参照信号の生成方法とは、参照信号(例えば、チャネル推定用参照信号、LTF等)の生成方法(例えば、スクランブル方法、符号化方法、巡回シフト量等)であることができる。
【0078】
また、例えば、Initiatorである端末装置2−1がMU開始フレームを送信し、当該端末装置2−1が使用する参照信号の送信方法がTAであったとする。当該端末装置2−1以外の端末装置(Responderでも良い)は、MU開始フレームを受信し、Initiatorが使用する参照信号の送信方法TAと異なる送信方法TBを用いることで、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、
図4に示す一例では、端末装置2a−1が送信するMU開始フレームに、当該端末装置2a−1が使用する参照信号送信方法に関する情報を付加することができる。また、端末装置2b−1は、端末装置2a−1が使用する参照信号送信方法を知ることができるから、端末装置2a−1が使用する参照信号送信方法以外の参照信号送信方法を用いることにより、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。例えば、UL−MU−MIMOやCDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多元接続)において、参照信号の送信方法とは、参照信号(例えば、チャネル推定用参照信号、LTF等)の送信方法(例えば、送信時刻の指定方法、送信帯域の指定方法、送信キャリアの指定方法、送信電力の指定方法等)であることができる。
【0079】
上記の方法を用いることで、基地局装置1−1は好適に各端末装置2−1との間の伝搬路推定を実施することができる。
【0080】
例えば、MU開始フレームはMUCWの生成方法として、CWの最大値に関する情報を含むCWminと、CWの最小値に関する情報を含むCWmaxのいずれか、または両方を含むことができる。バックオフ部10002b−1は、CWminまたはCWmaxのいずれか、または両方に基づき、設定されるMUCWの範囲を決定し、ランダムな値を取得し、MUCWを設定することができる。また、バックオフ部10002b−1のMUCW生成方法はこれに限定されない。MUCW生成方法は、MU上限数より多い端末装置がUL−MU伝送に参加することを回避する方法であることが好適である。また、MUCWは他の値に基づかないランダム値でも良いし、固定値であっても良い。
【0081】
図6は、第1の実施形態に係るUL−MU伝送の手順の別の一例を示すシーケンスチャートである。なお、
図6に示す処理手順は任意のMU上限数において適用可能である。
【0082】
端末装置2a−1は、MU開始フレームを送信する(ステップS101e)。端末装置2b−1と、端末装置2c−1に係るバックオフ部10002b−1はCWのカウントダウンを実施する(ステップS102e)。CW=0となった端末装置2−1(
図6に示す一例では端末装置2b−1及び端末装置2c−1)は、UL−MU伝送を開始する(ステップS103e)。
【0083】
端末装置2b−1及び端末装置2c−1は、端末装置2a−1の無線リソースの使用方法(例えば、使用する無線リソースの選択方法、参照信号の生成方法、参照信号の送信方法)に関する情報に基づき、端末装置2a−1と異なる無線リソースを使用することができる。しかし、端末装置2b−1及び端末装置2c−1は、お互いの無線リソースの使用方法を知らないため、同一の無線リソースの使用方法を用いる可能性がある。本実施形態においては、無線リソースの使用方法を、MU上限数以上用意しておくことが好適である。この場合、端末装置2b−1及び端末装置2c−1は、端末装置2a−1の無線リソースの使用方法以外の無線リソースの使用方法のなかからランダムに一つ選択することで、同一の無線リソース選択(以下では、衝突、またはCollisionとも呼称する)を回避することができる。なお、MU開始フレームはResponderの無線リソースの使用方法を指定することもできる。
【0084】
続いて、本実施形態に係るUL−MU伝送を好適に実施する方法を説明する。UL−MU伝送においては、基地局装置1−1がAGC(Automatic Gain Control)やシンボル同期を実施するために、各端末装置2−1から到来する信号強度がかい離しないことが好適である。また、UL−MU伝送が空間的に端末装置2−1を多重することにより実施される場合、基地局装置1−1が各端末装置2−1から到来する信号を分離する性能を維持するためにも、各端末装置2−1から到来する信号強度がかい離しないことが望ましい。
【0085】
例えば、基地局装置1−1から観測される、各端末装置2−1から到来する信号強度がかい離しないための方法として、Initiatorである端末装置2−1は、MU開始フレームや、マネージメントフレームやコントロールフレームの送信電力制御を行なうことができる。
【0086】
例えば、Initiatorである端末装置2−1は、MU開始フレームの送信電力制御を行なうことができる。例えば、MU開始フレームを小電力で送信することにより、UL−MU伝送に参加可能な端末装置2−1をグルーピング(分類)することができる。グルーピングとは、各端末装置2−1の環境、位置、特性、機能等に関する情報を用いて、所定の条件を満たす端末装置2−1の一部を抽出する行為である。例えば、Initiatorである端末装置2−1は、MU開始フレームの送信電力を、小電力で送信することにより、当該MU開始フレームを受信できる端末装置2−1を限定することができる。これは、当該MU開始フレームが小電力送信されることにより、当該MU開始フレームを受信することができる端末装置2−1の範囲が狭まるためである。
【0087】
例えば、Initiatorである端末装置2−1は、MU開始フレーム送信に当たって、送信電力制御を実施することができる。また、当該端末装置2−1は、データフレーム、マネージメントフレーム、コントロールフレーム等、MU開始フレーム以外のフレームに対して低減された送信電力でMU開始フレームを送信することができる。また、MU開始フレーム送信を実施する前のフレーム(例えば、データフレーム、マネージメントフレーム、コントロールフレーム等、特に、Ackフレーム、RTSフレーム、CTSフレーム、ビーコンフレーム等)に対して低減された送信電力でMU開始フレームを送信することができる。なお、例えば、MU開始フレーム送信を実施する前のフレームが送信された後、IFS(例えば、SIFS、PIFS、DIFS、EIFS、AIFS等)期間またはそれ以外の所定の期間(スロット数で規定される期間等)だけ待機してMU開始フレームが送信されることができる。また、例えば、MU開始フレーム送信を実施する前のフレーム及びMU開始フレームの送信の間の期間は設けられなくても良いし、集約(Aggregation)されたフレームとして送信されても良い。Initiatorである端末装置2−1が送信電力制御を実施することにより、UL−MU伝送に参加する端末装置2−1の間の距離が縮まることから、基地局装置1−1から観測される、UL−MU伝送に参加する端末装置2−1(または、Initiator及びResponder)の信号強度のかい離幅が低減され、基地局装置1−1は好適にAGC及びシンボル同期ができる。
【0088】
図7は本実施形態に係る無線通信システムの別の一例を示した概略図である。なお、
図7に示す無線通信システムを構成する基地局装置1−1及び端末装置2−1は、
図1に示す無線通信システムを構成する基地局装置1−1及び端末装置2−1と、位置情報(あるいは伝搬路情報)のみが異なり、同様の構成であるため、説明を省略する。なお、
図7に示す一例では、端末装置2a−1がInitiatorであり(以下、単にInitiatorとも呼称する)、MU開始フレームの送信者であると仮定する。Initiatorは、送信電力制御を行なうことができ、例えば、MU開始フレームの送信を行なう送信電力で送信される信号が到来する範囲(信号の到来に関しては限定しないが、例えば、受信する無線装置が信号を好適に復調、あるいは復号できること、またはプリアンブルを検出可能であること、等と定義することができるし、または、受信感度がX dBm以上(Xの値については限定しないし、X dBm以下でも良い)等を定義することもできる)を、範囲23−1と呼称する。また、MU開始フレーム以外のフレーム(例えば、UL-MU伝送において送信されるフレームやRTSフレーム、CTSフレーム等)に用いる送信電力で送信される信号が到来する範囲を、範囲23−2と呼称する。また、以下では、基地局装置1−1から観測される各端末装置2−1の信号強度は、端末装置2a−1(範囲23−2を定義する送信電力を用いる場合)、端末装置2c−1及び端末装置2d−1において、基地局装置1−1が好適にAGC、あるいはシンボル同期が好適に実施される程度にかい離していないものとし、端末装置2d−1の信号強度は、端末装置2a−1、端末装置2b−1及び端末装置2c−1の信号強度に対して、基地局装置1−1のAGC、あるいはシンボル同期が好適に実施されない程度にかい離しているものと仮定する。
【0089】
Initiatorが範囲23−2を定義する送信電力でMU開始フレームを送信する場合、端末装置2b−1、端末装置2c−1、端末装置2d−1及び基地局装置1−1がMU開始フレームを受信することができる。つまり、
図7に示す一例では、端末装置2b−1、端末装置2c−1、端末装置2d−1及び基地局装置1−1がResponderとなることができる。例えば、端末装置2b−1、端末装置2c−1及び端末装置2d−1がResponderとなり、基地局装置1−1がUL−MU伝送の受信を実施するものと仮定する。この場合、Initiator及びResponderがUL−MU伝送を実施するため、基地局装置1−1は好適にAGC、あるいはシンボル同期ができない。
【0090】
そこで、Initiatorは範囲23−1を定義する送信電力を用いてMU開始フレームを送信する、送信電力制御を行なうことができる。Initiatorの送信電力制御により、Responderは端末装置2b−1及び端末装置2c−1にグルーピングされることができる。また、UL−MU伝送に端末装置2d−1が参加しないため、基地局装置1−1は好適にAGC、あるいはシンボル同期を実施できる。
【0091】
なお、
図7に示す一例では、基地局装置1−1はInitiatorが送信するMU開始フレームを受信することができないため、UL−MU伝送フレームが送信されることを事前に通知されることができない。基地局装置1−1は、UL−MU伝送が開始されることを事前に通知されることが好適である。以下では、一例としてMCSの変更による基地局装置1−1へのUL−MU伝送開始の通知方法を説明する。
【0092】
Initiatorは、例えば、範囲23−2を定義する送信電力を用いてMU開始フレームを送信するが、MU開始フレーム内のMACフレームのみMCSを変更することができる。または、MU InformationのみMCSを変更して符号化及び変調することができる。例えば、MU開始フレーム内のPHYヘッダにおいて、UL−MU伝送が開始されることを通知する情報を付加し、範囲23−2内の無線装置0−1がPHYヘッダ情報を復号できるよう、適切なMCSを選択することで、基地局装置1−1はMU開始フレームの後でUL−MU伝送が開始されることを通知されることができる。また、MU Information、あるいはMACフレームを異なるMCS、例えば、端末装置2d−1は復号できないが、端末装置2b−1、端末装置2c−1が好適に復号できるMCSにより符号化、変調されることにより、端末装置2d−1にはMU開始フレームが到来するものの、MU Informationを復号することができない。以上により、UL−MU伝送に端末装置2d−1が参加しないため、基地局装置1−1は好適にAGC、あるいはシンボル同期を実施できる。
【0093】
また、コントロールフレームの送信実施により好適にUL−MU伝送を実施する別の一例を説明する。例えば、InitiatorはMU開始フレームの直前に送信要求フレーム(RTS等)、あるいは受信準備干渉フレーム(CTS)等のコントロールフレームを送信することができる。InitiatorがMU開始フレームの直前に送信するフレームを、MU送信準備フレームとも呼称する。例えば、MU送信準備フレームは、UL−MU伝送が開始される情報を含むことができる。Initiatorは、範囲23−2を定義する送信電力を用いてMU送信準備フレームを送信することにより、基地局装置1−1は、MU送信準備フレームを受信し、UL−MU伝送が開始される情報を取得することができ、基地局装置1−1はUL−MU伝送が開始されることを通知されることができる。
【0094】
MU送信準備フレームの送信は、レガシー端末装置からの保護にも使用されることができる。例えば、MU送信準備フレームは、RTSやCTS等、レガシー端末装置が復号可能なフレーム構成とすることもできる。この場合、範囲23−2内に位置するレガシー端末装置はMU送信準備フレームを受信することができる。そこで、Initiatorは、UL−MU伝送(または、UL-MU伝送終了後に基地局装置1−1が送信するAck応答)終了時刻に関する情報(例えば、Duration、length、無線リソース確保期間、無線リソース予約期間、予約期間情報、送信期間情報等とも呼称される)を、Durationフィールドに挿入することができる。なお、無線リソース確保期間は、PHYヘッダ(例えば、lengthフィールド)やMACヘッダ、あるいはデータ部等にも挿入されることができる。
【0095】
また、CCAの条件設定により好適にUL−MU伝送を実施する、別の一例を説明する。例えば、基地局装置1−1及び端末装置2−1は、UL−MU伝送に参加するための条件に関する情報(MU参加可否判断情報)を持つことができる。例えば、MU参加可否判断情報は、MU開始フレームの受信信号強度を限定する値であることができる。例えば、端末装置2d−1は、MU参加可否判断情報として、MU開始フレームの信号強度(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、RCPI(Received Channel Power Indicator)等)がY dBm以上(Yの値は限定しないし、Y dBm以下でも良い)である場合にUL−MU伝送に参加して良い、という条件を持つ場合を想定する。Initiatorが送信するMU開始フレームが、端末装置2d−1によりY dBm以下で観測される場合、端末装置2d−1はUL−MU伝送に参加できない。一方で、端末装置2b−1及び端末装置2c−1が、MU開始フレームをY dBm以上の信号強度で観測した場合には、UL−MU伝送に参加可能であり、好適にUL−MU伝送を実施することができる。
【0096】
また、例えば、InitiatorはMU参加可否判断情報を、MU開始フレームに含んで送信することができる。例えば、InitiatorはUL−MU伝送ごとにMU参加可否判断情報の内容を変更することができる。これにより、例えばInitiatorはトラフィック情報やチャネル情報に応じて、MU参加可否判断情報の内容を変更することができる。
【0097】
また、基地局装置1−1は、MU参加可否判断情報を端末装置2−1宛てに送信することができる。例えば、基地局装置1−1は、ビーコン、プローブ応答、認証応答、接続応答等にMU参加可否判断情報を含めることができる。
【0098】
MU参加可否判断情報は、信号強度の限定に関する情報に限定されない。例えば、MU参加可否判断情報は、端末装置2−1が備える機能の有無によるグルーピングに関する情報でも良いし、端末装置2−1のインデックス(指標、ID、index、AID、SID、TID等)によりグルーピングされる情報でも良いし、GIDでも良い。
【0099】
図8は、GID構成の一例を示した図である。GIDは、それぞれのブロックに各端末装置2−1を示すアドレスに関する情報が格納された構成である。
図8に示す一例では、それぞれのGID(Group ID)に対して、端末装置のグループが割り当てられている。例えば、GID1は、STA2、STA3、STA4、STA5のアドレスに関する情報を含む。また、GIDは端末装置のアドレスの順番に関する情報を含む。あるいは、GIDは端末装置の順序が理解されるような構成である。例えば、GID1とGID2は、構成する端末装置は同じであるが、端末装置構成の順序のみが異なる。以下では、GID構成の順序を区別するため、第n番目の端末装置という呼称を用いる。例えば、GID31において、第1番目の端末装置はSTA6であり、第2番目の端末装置はSTA2であり、第3番目の端末装置はSTA4であり、第4番目の端末装置はSTA8である。
【0100】
例えば、Initiatorは、MU参加可否判断情報として、GIDをMU開始フレームに含むことにより、当該MU開始フレームを受信する端末装置2−1は、UL−MU伝送への参加可否判断を行なうことができる。例えば、受信したMU開始フレームが含むMU参加可否判断情報が、当該端末装置2−1を示す情報を含む場合に、UL−MU伝送に参加することができると設定されても良いし、当該端末装置2−1を示す情報を含まない場合にUL−MU伝送に参加することができると設定されても良い。
【0101】
続いて、送信電力制御により好適にUL−MU伝送を実施する方法を説明する。UL−MU伝送において、基地局装置1−1から観測される端末装置2−1の信号強度のかい離を回避するために各端末装置2−1が送信電力制御をする方法である。
【0102】
例えば、Initiatorは、MU開始フレームに、信号強度要求情報を含んで送信することができる。信号強度要求情報とは、基地局装置1−1により観測される信号強度を示す情報である。例えば、信号強度要求情報がZ dBm(Zは限定されない)であることは、当該MU開始フレームがトリガするUL−MU伝送において、基地局装置1−1から観測される各端末装置2−1の信号強度の要求がZ dBmであることを意味する。
【0103】
例えば、端末装置2−1は、信号強度要求情報(一例として、Z dBmの信号強度であるものとする)を含むMU開始フレームを受信する。端末装置2−1は、基地局装置1−1と当該端末装置2−1との間の伝搬路(例えば、伝搬損失、パスロス、長区間中央値、短区間中央値、リンクマージン、瞬時伝搬路等)に関する情報に基づき、送信電力制御を行なう。例えば、基地局装置1−1と当該端末装置2−1の間の伝搬損失がZ2−1 dBであると仮定すれば、当該端末装置2−1は送信電力Pを、P=−Z2−1−Zより算出することができる。各端末装置2−1による送信電力制御により、基地局装置1−1から観測される各端末装置2−1の信号強度のかい離を低減できることから、好適にUL−MU伝送が実施されることができる。
【0104】
なお、信号強度要求情報は、上記に限定されない。基地局装置1−1と各端末装置2−1との間の伝搬路に関する情報であれば、どのような形態でも構わない。
【0105】
また、基地局装置1−1は、信号強度要求情報を端末装置2−1に通知することもできる。例えば、基地局装置1−1は、ビーコン、プローブ応答、認証応答、接続応答等に信号強度要求情報を含めることができる。
【0106】
以上説明してきたように、無線ネットワークに本実施形態を適用することで、好適にUL−MU伝送を実現することができる。簡易に無線ネットワーク構成を実現しつつ、周波数効率の向上を実現する。
【0107】
[2.全実施形態共通]
本発明に係る基地局装置1−1、端末装置2−1、で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであっても良い。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0108】
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における基地局装置1−1、端末装置2−1の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現しても良い。基地局装置1−1、端末装置2−1の各機能ブロックは個別にチップ化しても良いし、一部、または全部を集積してチップ化しても良い。各機能ブロックを集積回路化した場合に、それらを制御する集積回路制御部が付加される。
【0109】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0110】
なお、本願発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本願発明の基地局装置1−1、端末装置2−1は、移動局装置への適用に限定されるものではなく、屋内外に設置される据え置き型、または非可動型の電子機器、例えば、AV機器、キッチン機器、掃除・洗濯機器、空調機器、オフィス機器、自動販売機、その他生活機器等に適用出来ることは言うまでもない。
【0111】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も請求の範囲に含まれる。