(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00−28/00 29/00−29/06 43/00−45/00
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
[車両構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用電源装置10が搭載された車両11の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、動力源であるエンジン12を備えたパワーユニット13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(電動モータ)16が機械的に連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。
【0011】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。スタータジェネレータ16は、クランク軸14に回転駆動される発電機として機能するだけでなく、クランク軸14を回転駆動する電動機として機能する。例えば、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合や、発進時や加速時等においてエンジン12をアシスト駆動する場合には、スタータジェネレータ16は電動機として力行状態に制御される。
【0012】
スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ21と、フィールドコイルを備えたロータ22と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータおよびマイコン等からなるISGコントローラ23が設けられている。ISGコントローラ23によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、スタータジェネレータ16の発電電圧、発電トルク、力行トルク等が制御される。
【0013】
[電源回路]
車両用電源装置10が備える電源回路30について説明する。
図2は電源回路30の一例を簡単に示した回路図である。
図2に示すように、電源回路30は、スタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(第1蓄電体)31と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(第2蓄電体)32と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ32を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ32の端子電圧は、鉛バッテリ31の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ32を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ32の内部抵抗は、鉛バッテリ31の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0014】
スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン33が接続され、リチウムイオンバッテリ32の正極端子32aには正極ライン34が接続され、鉛バッテリ31の正極端子31aには正極ライン35を介して正極ライン36が接続される。これらの正極ライン33,34,36は、接続点37を介して互いに接続されている。また、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン38が接続され、リチウムイオンバッテリ32の負極端子32bには負極ライン39が接続され、鉛バッテリ31の負極端子31bには負極ライン40が接続される。これらの負極ライン38,39,40は、基準電位点41を介して互いに接続されている。
【0015】
鉛バッテリ31の正極ライン35には、正極ライン42が接続されている。この正極ライン42には、各種アクチュエータや各種コントローラ等の電気機器43からなる電気機器群44が接続されている。また、鉛バッテリ31の負極ライン40には、バッテリセンサ(充放電検出部)45が設けられている。バッテリセンサ45は、鉛バッテリ31の充放電状況を検出する機能を有している。鉛バッテリ31の充放電状況としては、例えば、鉛バッテリ31の充放電電流、端子電圧、充電状態SOC等が挙げられる。なお、充電状態SOC(State Of Charge)とは、バッテリの設計容量に対する蓄電量の比率である。
【0016】
また、電源回路30には、鉛バッテリ31および電気機器43からなる第1電源系51が設けられており、リチウムイオンバッテリ32およびスタータジェネレータ16からなる第2電源系52が設けられている。そして、第1電源系51と第2電源系52とは、通電経路である正極ライン36を介して互いに接続されている。この正極ライン36には、過大電流によって溶断する電力ヒューズ53が設けられるとともに、ON状態(導通状態)とOFF状態(遮断状態)とに制御される第1スイッチ(スイッチ)SW1が設けられている。また、リチウムイオンバッテリ32の正極ライン34には、ON状態とOFF状態とに制御される第2スイッチSW2が設けられている。
【0017】
スイッチSW1をON状態つまり回路を閉じる状態に制御することにより、第1電源系51と第2電源系52とを互いに接続することができる一方、スイッチSW1をOFF状態つまり回路を開く状態に制御することにより、第1電源系51と第2電源系52とを互いに切り離すことができる。また、スイッチSW2をON状態つまり回路を閉じる状態に制御することにより、第2電源系52にリチウムイオンバッテリ32を接続することができる一方、スイッチSW2をOFF状態つまり回路を開く状態に制御することにより、第2電源系52からリチウムイオンバッテリ32を切り離すことができる。これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0018】
図1に示すように、電源回路30には、バッテリモジュール54が設けられている。このバッテリモジュール54には、リチウムイオンバッテリ32が組み込まれるとともに、スイッチSW1,SW2が組み込まれている。また、バッテリモジュール54には、マイコン等からなるバッテリコントローラ55が設けられている。バッテリコントローラ55は、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOC、充放電電流、端子電圧、セル温度、内部抵抗等を監視する機能や、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。
【0019】
[制御系]
図1に示すように、車両用電源装置10は、パワーユニット13や電源回路30等を互いに協調させて制御するため、マイコン等からなるメインコントローラ60を有している。このメインコントローラ60には、スロットルバルブやインジェクタ等のエンジン補機61を制御するエンジン制御部62、スタータジェネレータ16を制御するモータ制御部(アシスト制御部)63、スイッチSW1,SW2を制御するスイッチ制御部64、アイドリングストップ制御を実行するアイドリング制御部65、およびバッテリセンサ45の故障を検出するセンサ監視部66等が設けられている。
【0020】
メインコントローラ60や各コントローラ23,55,69は、CANやLIN等の車載ネットワーク67を介して互いに通信自在に接続されている。また、メインコントローラ60には、前述したバッテリセンサ45が接続されるだけでなく、図示しないアクセルセンサ、ブレーキセンサおよび車速センサ等が接続される。そして、メインコントローラ60は、各種コントローラやセンサからの情報に基づいて、パワーユニット13や電源回路30等を制御する。また、メインコントローラ60には、乗員に車両故障を通知する警告灯68が接続されている。
【0021】
メインコントローラ60のアイドリング制御部65は、自動的にエンジン12を停止させて再始動するアイドリングストップ制御を実行する。アイドリング制御部65は、エンジン運転中に所定の停止条件が成立した場合に、燃料カット等を実施してエンジン12を停止させる一方、エンジン停止中に所定の始動条件が成立した場合に、スタータジェネレータ16を始動回転させてエンジン12を再始動させる。エンジン12の停止条件としては、例えば、車速が所定値を下回り、かつブレーキペダルが踏み込まれることが挙げられる。また、エンジン12の始動条件としては、例えば、ブレーキペダルの踏み込みが解除されることや、アクセルペダルの踏み込みが開始されることが挙げられる。
【0022】
メインコントローラ60のモータ制御部63は、ISGコントローラ23に制御信号を出力し、スタータジェネレータ16を力行状態や発電状態に制御する。例えば、モータ制御部63は、アイドリングストップ制御においてエンジン12を再始動させる場合に、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する。また、アシスト制御部として機能するモータ制御部63は、発進時や加速時等にスタータジェネレータ16を力行状態に制御し、スタータジェネレータ16によってエンジン12を補助するモータアシスト制御を実行する。さらに、モータ制御部63は、後述するように、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCが低下すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を上げて燃焼発電状態に制御する一方、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCが上昇すると、スタータジェネレータ16の発電電圧を下げて発電休止状態に制御する。
【0023】
なお、メインコントローラ60のエンジン制御部62は、マイコン等からなるエンジンコントローラ69を介して、エンジン補機61の作動状態を制御する。また、メインコントローラ60のスイッチ制御部64は、バッテリコントローラ55を介して、スイッチSW1,SW2の作動状態を制御する。
【0024】
[スタータジェネレータの発電制御]
スタータジェネレータ16の発電制御について説明する。メインコントローラ60は、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCに基づいて、スタータジェネレータ16の目標発電電圧を設定する。そして、メインコントローラ60は、目標発電電圧をISGコントローラ23に出力し、スタータジェネレータ16を後述する燃焼発電状態や発電休止状態に制御する。
【0025】
図3はスタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCが所定の下限値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ32を充電して充電状態SOCを高めるため、エンジン動力によってスタータジェネレータ16が発電駆動される。このように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、リチウムイオンバッテリ32に印加される発電電圧が端子電圧よりも高く調整される。これにより、
図3に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31等に電流が供給され、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31が緩やかに充電される。
【0026】
図4はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。例えば、リチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCが所定の上限値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ32を積極的に放電させるため、エンジン動力を用いたスタータジェネレータ16の発電駆動が休止される。このように、スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧が引き下げられ、リチウムイオンバッテリ32に印加される発電電圧が端子電圧よりも低く調整される。これにより、
図4に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電流が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電駆動を抑制または停止させることができ、エンジン負荷を軽減することができる。
【0027】
前述したように、メインコントローラ60は、充電状態SOCに基づきスタータジェネレータ16を燃焼発電状態や発電休止状態に制御しているが、車両減速時には多くの運動エネルギーを回収して燃費性能を高めることが必要である。そこで、車両減速時には、スタータジェネレータ16の発電電圧が大きく引き上げられ、スタータジェネレータ16は回生発電状態に制御される。これにより、スタータジェネレータ16の発電電力つまり回生電力を増加させることができるため、運動エネルギーを積極的に電気エネルギーに変換して回収することができ、車両11のエネルギー効率を高めて燃費性能を向上させることができる。
【0028】
このように、スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づき決定される。つまり、アクセルペダルの踏み込みが解除される減速走行時や、ブレーキペダルが踏み込まれる減速走行時においては、エンジン12が燃料カット状態に制御される状況であるため、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。一方、アクセルペダルが踏み込まれる加速走行時や定常走行時においては、エンジン12が燃料噴射状態に制御される状況であるため、スタータジェネレータ16は燃焼発電状態や発電休止状態に制御される。
【0029】
ここで、
図5はスタータジェネレータ16を回生発電状態に制御したときの電流供給状況の一例を示す図である。スタータジェネレータ16を回生発電状態に制御する際には、前述した燃焼発電状態よりもスタータジェネレータ16の発電電圧が引き上げられ、リチウムイオンバッテリ32に印加される発電電圧が端子電圧よりも大きく引き上げられる。これにより、
図5に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31に対して大きな電流が供給されるため、リチウムイオンバッテリ32や鉛バッテリ31が急速に充電される。また、リチウムイオンバッテリ32の内部抵抗は、鉛バッテリ31の内部抵抗よりも小さいことから、発電電流の大部分はリチウムイオンバッテリ32に供給される。
【0030】
なお、
図3〜
図5に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2はON状態に保持されている。つまり、車両用電源装置10においては、スイッチSW1,SW2の切替制御を行うことなく、スタータジェネレータ16の発電電圧を制御するだけで、リチウムイオンバッテリ32の充放電を制御することが可能である。これにより、簡単にリチウムイオンバッテリ32の充放電を制御することができるとともに、スイッチSW1,SW2の耐久性を向上させることができる。
【0031】
[スイッチSW1の切替制御]
スタータジェネレータ16の力行制御に伴うスイッチSW1の切替制御について説明する。前述したように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際には、スイッチSW1,SW2が共にON状態に制御される。一方、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の作動状態に応じて消費電力が変化するため、後述するように、スタータジェネレータ16の作動状態に応じてスイッチSW1がON状態やOFF状態に制御される。
【0032】
図6はスイッチSW1の切替制御における実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図7はスタータジェネレータ16を始動回転させたときの電流供給状況の一例を示す図であり、
図8および
図9はスタータジェネレータ16をアシスト駆動させたときの電流供給状況の一例を示す図である。なお、
図6〜
図9には、スタータジェネレータ16がISGとして記載される。また、
図7〜
図9には、黒塗りの矢印を用いて電流の供給状況が示されている。
【0033】
図6に示すように、ステップS10では、アイドリングストップ制御によるエンジン再始動が実施される状況であるか否かが判定される。つまり、ステップS10においては、アイドリングストップ制御でのエンジン停止中に、所定の始動条件が成立するか否かが判定される。例えば、ステップS10において、ブレーキペダルの踏み込みが解除された場合や、アクセルペダルの踏み込みが開始された場合には、エンジン12の始動条件が成立すると判定され、スタータジェネレータ16によるエンジン再始動が実施されると判定される。
【0034】
ステップS10において、エンジン再始動が実施されると判定された場合には、ステップS11に進み、スイッチSW1がOFF状態に制御され、スイッチSW2がON状態に制御される。続いて、ステップS12に進み、スタータジェネレータ16によってエンジン12の始動回転であるクランキングが実行される。ここで、
図7に示すように、スタータジェネレータ16を始動回転させる場合には、スイッチSW1がON状態からOFF状態に切り替えられ、第1電源系51と第2電源系52とが互いに切り離される。すなわち、スタータジェネレータ16を始動回転させる際には、スタータジェネレータ16の消費電力が急増することから、第1電源系51と第2電源系52とが互いに切り離されている。これにより、鉛バッテリ31からスタータジェネレータ16に電流が流れることはなく、鉛バッテリ31から電気機器群44に対して適切に電流を供給することができる。したがって、電気機器群44に対する瞬間的な電圧低下つまり瞬低を防止することができ、電気機器群44を適切に機能させることができる。
【0035】
一方、
図6に示されるステップS10において、エンジン再始動が実施されないと判定された場合には、ステップS13に進み、スタータジェネレータ16によるエンジン12のアシスト駆動、つまりモータアシスト制御が実施される状況であるか否かが判定される。ステップS13においては、車速、アクセル操作量、エンジン回転数、およびリチウムイオンバッテリ32の充電状態SOC等に基づき、モータアシスト制御が実施される状況であるか否かが判定される。例えば、発進時や加速時等においては、モータアシスト制御が実施される状況であると判定される。
【0036】
ステップS13において、モータアシスト制御が実施されると判定された場合には、ステップS14に進み、スイッチSW1,SW2が共にON状態に制御され、ステップS15に進み、スタータジェネレータ16のアシスト駆動が実施される。ここで、
図8に示すように、スタータジェネレータ16をアシスト駆動させる場合には、スイッチSW1がON状態に保持されることから、電気機器群44に対して鉛バッテリ31とリチウムイオンバッテリ32との双方が接続される。これにより、鉛バッテリ31に異常が発生した場合であっても、後述するように、電気機器群44を適切に機能させることができ、車両用電源装置10の信頼性を向上させることができる。
【0037】
ここで、スタータジェネレータ16をアシスト駆動させる際の消費電力は、スタータジェネレータ16を始動回転させる際の消費電力よりも抑制される。つまり、スタータジェネレータ16の始動回転とは、停止中のエンジン12をスタータジェネレータ16によって回転させ始める作動状態であり、要求されるモータトルクが大きくスタータジェネレータ16の消費電力が増加し易い作動状態である。これに対し、スタータジェネレータ16のアシスト駆動とは、回転中のエンジン12をスタータジェネレータ16によって補助的に駆動する作動状態であり、要求されるモータトルクが小さくスタータジェネレータ16の消費電力が抑制される作動状態である。このように、スタータジェネレータ16のアシスト駆動においては、スタータジェネレータ16の消費電力が抑制されることから、スイッチSW1をON状態に保持したとしても、鉛バッテリ31からスタータジェネレータ16に大電流が流れることはなく、鉛バッテリ31やリチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に対して十分に電力を供給することができる。
【0038】
前述したように、スタータジェネレータ16をアシスト駆動させる場合には、スイッチSW1がON状態に保持されるため、電気機器群44に対して鉛バッテリ31とリチウムイオンバッテリ32との双方が接続される。これにより、鉛バッテリ31に異常が発生した場合であっても、電気機器群44を適切に機能させることができ、車両用電源装置10の信頼性を向上させることができる。すなわち、
図9に示すように、スタータジェネレータ16のアシスト駆動中に、鉛バッテリ31に端子外れ等の異常が発生した場合であっても、リチウムイオンバッテリ32から電気機器群44に電力供給を継続することができるため、電気機器群44を適切に機能させることができ、車両用電源装置10の信頼性を向上させることができる。
【0039】
[バッテリセンサ故障に伴うフェイルセーフ制御]
前述したように、スタータジェネレータ16をアシスト駆動させる場合には、スイッチSW1がON状態に保持される。つまり、スタータジェネレータ16と鉛バッテリ31とが互いに接続されるため、スタータジェネレータ16の消費電力やリチウムイオンバッテリ32の充電状態SOCによっては、
図8に破線の矢印αで示すように、鉛バッテリ31からスタータジェネレータ16に電流が流れてしまう虞がある。そこで、メインコントローラ60は、バッテリセンサ45を用いて鉛バッテリ31の充放電状況を監視し、鉛バッテリ31の過放電を防止しつつモータアシスト制御を実行している。例えば、鉛バッテリ31が過度に放電していた場合には、モータトルクを下げることでスタータジェネレータ16の消費電力が下げられている。しかしながら、バッテリセンサ45が故障していた場合には、鉛バッテリ31の充放電状況を監視することが困難になるため、鉛バッテリ31の過放電を招いてしまう虞がある。そこで、メインコントローラ60は、鉛バッテリ31の過放電を防止するため、バッテリセンサ45が故障した場合に、以下のフェイルセーフ制御を実行している。
【0040】
図10はフェイルセーフ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、ステップS20では、鉛バッテリ31のバッテリセンサ45が故障状態であるか否かが判定される。なお、バッテリセンサ45の故障状態としては、例えば、充放電電流等を検出することができない故障状態や、充放電電流等を送信することができない故障状態がある。ステップS20において、バッテリセンサ45が故障していると判定された場合には、ステップS21に進み、スタータジェネレータ16がアシスト駆動中であるか否かが判定される。ステップS21において、スタータジェネレータ16がアシスト駆動中であると判定された場合には、ステップS22に進み、スタータジェネレータ16のモータトルクが徐々に下げられる。その後、ステップS23に進み、モータアシスト制御が禁止され、ステップS24に進み、アイドリングストップ制御が禁止される。そして、ステップS25に進み、警告灯68を点灯させることにより、乗員にセンサ故障が通知される。
【0041】
また、ステップS21において、スタータジェネレータ16がアシスト駆動中ではないと判定された場合には、ステップS26に進み、アイドリングストップ中であるか否か、つまりアイドリングストップ制御によるエンジン停止中であるか否かが判定される。ステップS26において、エンジン停止中ではないと判定された場合、つまりモータアシスト制御およびアイドリングストップ制御が共に実行されていない場合には、ステップS23に進み、モータアシスト制御が禁止され、ステップS24に進み、アイドリングストップ制御が禁止され、ステップS25に進み、警告灯68が点灯される。
【0042】
一方、ステップS26において、エンジン停止中であると判定された場合には、ステップS27に進み、スタータジェネレータ16を始動回転させてエンジン12を再始動させる。このように、アイドリングストップ制御によるエンジン停止中に、バッテリセンサ45が故障した場合には、始動条件の成立を待つことなくエンジン12を再始動させる。すなわち、バッテリセンサ45が故障した場合には、鉛バッテリ31の充放電状況を把握することが困難であるため、鉛バッテリ31の過放電を回避する観点から、素早くエンジン12を再始動させている。そして、エンジン12が再始動されると、ステップS23に進み、モータアシスト制御が禁止され、ステップS24に進み、アイドリングストップ制御が禁止され、ステップS25に進み、警告灯68が点灯される。
【0043】
このように、メインコントローラ60は、鉛バッテリ31のバッテリセンサ45が故障した場合に、スタータジェネレータ16によるモータアシスト制御を禁止している。つまり、鉛バッテリ31の充放電状況を把握できない状況においては、スタータジェネレータ16のアシスト駆動が禁止されるため、鉛バッテリ31からスタータジェネレータ16に多くの電流が流れることはなく、鉛バッテリ31の過放電を防止することができる。また、モータアシスト制御の実行中にバッテリセンサ45が故障した場合には、スタータジェネレータ16のモータトルク(力行トルク)を徐々に低下させた後にモータアシスト制御を禁止したので、トルク変動に伴う違和感を乗員に与えることなくモータアシスト制御を禁止することができる。なお、モータトルクを徐々に低下させる際には、モータトルクを段階的に低下させても良く、モータトルクを連続的に低下させても良い。
【0044】
また、メインコントローラ60は、鉛バッテリ31のバッテリセンサ45が故障した場合に、アイドリングストップ制御を禁止している。つまり、鉛バッテリ31の充放電状況を把握できない状況においては、スタータジェネレータ16によるエンジン再始動が禁止されるため、スイッチSW1をON状態に保持して電気機器群44にリチウムイオンバッテリ32を接続することができ、電気機器群44に対する電力供給を安定させることができる。また、アイドリングストップ制御によるエンジン停止中にバッテリセンサ45が故障した場合には、スタータジェネレータ16によるエンジン始動後にアイドリングストップ制御を禁止したので、車両11の走行性能を維持しつつアイドリングストップ制御を禁止することができる。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、車両用電源装置10にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはなく、車両用電源装置10からスイッチSW2を削減しても良い。また、図示する例では、バッテリモジュール54にスイッチSW1,SW2を組み込んでいるが、これに限られることはなく、バッテリモジュール54の外にスイッチSW1,SW2を設けても良い。さらに、前述の説明では、リチウムイオンバッテリ32の正極ライン34にスイッチSW2を設けているが、これに限られることはない。例えば、
図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ32の負極ライン39にスイッチSW2を設けても良い。
【0046】
前述の説明では、第1蓄電体として鉛バッテリ31を採用し、第2蓄電体としてリチウムイオンバッテリ32を採用しているが、これに限られることはなく、他の種類のバッテリやキャパシタを採用しても良い。また、第1蓄電体と第2蓄電体とは、異なる種類の蓄電体に限られることはなく、同じ種類の蓄電体であっても良いことはいうまでもない。前述の説明では、電動モータとして、発電機としても機能するスタータジェネレータ16を採用しているが、これに限られることはなく、電動機としてのみ機能する電動モータを採用しても良い。また、前述の説明では、メインコントローラ60に、モータ制御部63、スイッチ制御部64、アイドリング制御部65を設けているが、これに限られることはない。例えば、他のコントローラや複数のコントローラに、モータ制御部63、スイッチ制御部64、アイドリング制御部65を設けても良い。