【文献】
SANG, M. K. et al.,Priming-mediated systemic resistance in cucumber induced by Pseudomonas azotoformans GC-B19 and Paenibacillus elgii MM-B22 against colletotrichum orbiculare,Phytopathology,2014年,Vol. 104,pp. 834-842
【文献】
FANG, Y. et al.,Complete genome sequence of Pseudomonas azotoformans S4, a potential biocontrol bacterium,J. Biotechnol.,2016年 4月11日,Vol. 227,pp. 25-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>本発明の微生物
本発明の微生物は、植物病害に対する防除能を有するシュードモナス アゾトフォルマンス(Pseudomonas azotoformans)W−14−1株、及び、当該菌株から人為的な操作によらずに自然の突然変異により得られる変異株又は当該菌株から人為的な変異誘発操作により得られる変異株であって、植物病害に対する防除能を有する変異株を包含する。
「植物病害に対する防除能を有する」とは、いずれかの植物の病害の病原菌に対して拮抗作用を有していることを意味する。本発明の微生物は、植物病害の病原菌に対して拮抗作用を発揮することにより、その病原菌により引き起こされる植物の病害を予防又は治癒するが、特に、植物の病害を予防する効果に優れている。
「植物の病害を予防する」とは、植物病害の病原菌が感染していないか又は病徴が現れていない植物若しくはその栽培土壌に、本発明の微生物を処理すること以外は同じ好適な条件で栽培した場合に、本発明の微生物を処理しなかった植物より、本発明の微生物を処理した植物のその病害の度合いが低いことをいう。
「植物の病害を治癒する」とは、植物病害の病原菌が感染して病徴が現れている植物を、本発明の微生物を処理すること以外は同じ好適な条件で栽培した場合に、本発明の微生物を処理しなかった植物より、本発明の微生物を処理した植物におけるその病害の度合いが低いことをいう。
「病害の度合いが低い」とは、例えば、発病度(又は率)が低い、防除価が0より大きいことを意味する。防除価は、より大きい値が好ましく、30以上であれば優れており、50以上であればより優れており、60又は70以上であれば特に優れている。
【0012】
シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株は、2016年10月12日付で、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に国際受託番号NITE BP−02371として国際寄託されている。
【0013】
本発明の微生物であるシュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株(以下、「本微生物」と呼ぶ)の菌学的性質は以下のとおりである。
本微生物は、グラム陰性の桿菌で芽胞は形成せず、細胞の全長は1.5〜2.5μm、全幅は0.8μm程度で、運動性が認められる。標準寒天培地上で粗面不規則のコロニーを呈し、キングB培地で蛍光性色素を産生する。41℃での生育は認められず、カタラーゼ活性は陽性、OF培地テストは酸化、硝酸塩の還元は陰性、インドール産生は陰性、ウレアーゼ活性は陰性、ゼラチンの分解は陽性、β−ガラクトシダーゼ活性は陰性、β−グルコシダーゼ活性は陰性である。また、LOPAT試験に於いて、レバン産生は陽性、ジャガイモ塊茎腐敗は陰性、タバコ過敏感反応は陰性、オキシダーゼ活性は陽性、アルギニンの分解は陽性である。デンプン資化性は陰性であり、糖、有機酸等の炭素化合物の資化性に関しては、D−グルコースは陽性、L−アラビノースは陽性、D−マンノースは陽性、D−マンニトールは陽性、N−アセチル−D−グルコサミンは陽性、マルトースは陰性、グルコン酸カリウムは陽性、n−カプリン酸は陽性、アジピン酸は陰性、DL−リンゴ酸は陽性、クエン酸ナトリウムは陽性、酢酸フェニルは陰性、シュクロースは陽性、トレハロースは陽性、リビトール(アドニット)は陽性、ソルビトールは陽性、酪酸は陰性、プロピオン酸は陽性、プロピレングリコールは陰性である。
【0014】
各項目の測定方法等は、特に限定されるものではなく、一般的に知られている方法を用いることができる。例えば、特許文献1に記載されている方法を用いることができる。
【0015】
本微生物は、16S rDNA遺伝子の配列(配列番号3参照)及び/又は該菌株の上述の菌学的性質を指標にして単離した後、この菌体を培養することにより得ることができる。
【0016】
本微生物は、シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株の栄養細胞を始めとする、シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株の生菌が示すいずれの形態(例えば休眠細胞)の菌体であってもよい。
【0017】
(培養法)
本微生物の培養方法としては、特に限定されないが、例えば、固体培養の場合、標準寒天培地、普通寒天培地、ポテトデキストロース寒天培地等を用いて20〜35℃で静置培養をする方法を挙げることができ、液体培養の場合、上記寒天培地から寒天を除いた各種液体培地等を用いて20〜35℃で振盪攪拌培養する方法を挙げることができる。
【0018】
(植物病害)
本微生物は、偏性好気性細菌類、微好気性細菌類、通性嫌気性細菌類等に属する細菌に由来する植物病害の防除に使用でき、
藻菌類(Oomycetes)、子のう(嚢)菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)等に属する糸状菌に由来する植物病害の防除に使用できる。
例えば、本微生物は、軟腐病、腐敗病、斑点細菌病、斑葉細菌病、かいよう病、穿孔細菌病、黒斑細菌病、褐斑細菌病、茎えそ細菌病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、青枯病、白葉枯病、黒腐病、火傷病などの細菌病害、
灰色かび病、灰星病、菌核病、褐斑病、黒星病、斑点落葉病、黒斑病、夏疫病、輪紋病、葉かび病、すすかび病、そうか病、炭疽病、うどんこ病、さび病、黒点病、疫病、べと病などの糸状菌病害などに対して防除能を有している。ただし、本微生物による防除の対象はこれらのみに限定されない。
【0019】
また、防除の対象となる植物病害(病原菌)の例を以下に示す。
テンサイ:褐斑病(Cercospora beticola)、黒根病(Aphanomyces cochlioides)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)など
ラッカセイ:褐斑病(Mycosphaerella arachidis)、汚斑病(Ascochyta sp.)、さび病(Puccinia arachidis)、立枯病(Pythium debaryanum)、さび斑病(Alternaria alternata)、白絹病(Sclerotium rolfsii)黒渋病(Mycosphaerella berkeleyi)など
キュウリ:うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、炭そ病(Colletotrichum orbiculare)、黒星病(Cladosporium cucumerinum)、褐斑病(Corynespora cassiicola)、苗立枯病(Pythium debaryanum、Rhizoctonia solani Kuhn)、ホモプシス根腐病(Phomopsis sp.)斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. Lechrymans)など
トマト:灰色かび病(Botrytis cinerea)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans)、半身萎凋病(Verticillium albo-atrum、 Verticillium dahliae)、うどんこ病(Oidium neolycopersici)、輪紋病(Alternaria solani)、すすかび病(Pseudocercospora fuligena)など
ナス:灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒枯病(Corynespora melongenae)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、半身萎凋病(Verticillium dahliae)、褐紋病(Phomopsis vexans)など
イチゴ:灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Sphaerotheca humuli)、炭そ病(Colletotrichum acutatum、Colletotrichum fragariae)、疫病(Phytophthora cactorum)、軟腐病(Rhizopus stolonifer)、萎黄病(Fusarium oxysporum)、萎凋病(Verticillium dahliae)など
タマネギ:灰色腐敗病(Botrytis allii)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、白斑葉枯病(Botrytis squamosa)、べと病(Peronospora destructor)、白色疫病(Phytophthora porri)など
キャベツ:根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、軟腐病(Erwinia carotovora)、黒腐病(Xanthomonas campesrtis pv. campestris)、黒斑細菌病(Pseudomonas syringae pv. maculicola、P. s. pv. alisalensis)、べと病(Peronospora parasitica)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒すす病(Alternaria brassicicola)、灰色かび病(Botrytis cinerea)など
レタス:軟腐病(Erwinia carotovora)、斑点細菌病(Xanthomonas axonopodis pv. vitians)など
ハクサイ:軟腐病(Erwinia carotovora)など
インゲン:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、炭疽病(Colletotrichum lindemuthianum)、角斑病(Phaeoisariopsis griseola)など
【0020】
りんご:うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、モニリア病(Monilinia mali)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、腐らん病(Valsa mali)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭そ病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、褐斑病(Diplocarpon mali)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、すす斑病(Gloeodes pomigena)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、灰色かび病(Botrytis cinerea)など
ウメ:黒星病(Cladosporium carpophilum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、灰星病(Monilinia mumecola)など
カキ:うどんこ病(Phyllactinia kakicola)、炭そ病(Gloeosporium kaki)、角斑落葉病(Cercospora kaki)など
モモ:灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、穿孔細菌病(Xanthomonas campestris pv. pruni)など
アーモンド:灰星病(Monilinia laxa)、斑点病(Stigmina carpophila)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、葉ぶくれ病(Polystigma rubrum)、斑点落葉病(Alternaria alternata)、炭疽病(Colletotrichum gloeospoides)など
オウトウ:灰星病(Monilinia fructicola)、炭そ病(Colletotrichum acutatum)、黒斑病(Alternaria sp.)、幼果菌核病(Monilinia kusanoi)など
ブドウ:灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Uncinula necator)、晩腐病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、べと病(Plasmopara viticola)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、褐斑病(Pseudocercospora vitis)、黒腐病(Guignardia bidwellii)、白腐病(Coniella castaneicola)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)など
ナシ:黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)、黒斑病(Alternaria kikuchiana)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、うどんこ病(Phyllactinia mali)、胴枯病(Phomopsis fukushii)、褐色斑点病(Stemphylium vesicarium)、炭そ病(Glomerella cingulata)など
チャ:輪斑病(Pestalotiopsis longiseta、 P. theae)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis)、網もち病(Exobasidium reticulatum)など
カンキツ:そうか病(Elsinoe fawcettii)、青かび病(Penicillium italicum)、緑かび病(Penicillium digitatum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒点病(Diaporthe citri)、かいよう病(Xanthomonas campestris pv.Citri)、うどんこ病(Oidium sp.)など
【0021】
コムギ:うどんこ病(Blumeria graminis f.sp. tritici)、赤かび病(Gibberella zeae)、赤さび病(Puccinia recondita)、褐色雪腐病(Pythium iwayamai)、紅色雪腐病(Monographella nivalis)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐大粒菌核病(Myriosclerotinia borealis)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、麦角病(Claviceps purpurea)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、裸黒穂病(Ustilago nuda)など
オオムギ:斑葉病(Pyrenophora graminea)、網斑病(Pyrenophora teres)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U.nuda)など
イネ:いもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、苗立枯病(Pythium graminicola)、白葉枯病(Xanthomonas oryzae)、苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、褐条病(Acidovorax avenae)、もみ枯細菌病(Burkholderia glumae)、すじ葉枯病(Cercospora oryzae)、稲こうじ病(Ustilaginoidea virens)、褐色米(Alternaria alternata、Curvularia intermedia)、腹黒米(Alternaria padwickii)、紅変米(Epicoccum purpurascens)など
タバコ:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、疫病(Phytophthora nicotianae)、など
チューリップ:灰色かび病(Botrytis cinerea)など
ヒマワリ:べと病(Plasmopara halstedii)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)など
シバ:雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、ラージパッチ(Rhizoctonia solani)、ブラウンパッチ(Rhizoctonia solani)、ダラースポット(Sclerotinia homoeocarpa)、いもち病(Pyricularia sp.)、赤焼病(Pythium aphanidermatum)、炭そ病(Colletotrichum graminicola)など
オーチャードグラス:うどんこ病(Erysiphe graminis)など
ダイズ:紫斑病(Cercospora kikuchii)、べと病(Peronospora manshurica)、茎疫病(Phytophthora sojae)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、炭そ病(Colletotrichum truncatum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)など
ジャガイモ:疫病(Phytophthora infestans)、夏疫病(Alternaria solani)、黒あざ病(Thanatephorus cucumeris)、半身萎凋病(Verticillium albo−atrum、V. dahliae、V. nigrescens)など
バナナ:パナマ病(Fusarium oxysporum)、シガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、M. musicola)など
ナタネ:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、根朽病(Phoma lingam)、黒斑病(Alternaria brassicae)など
コーヒー:さび病(Hemileia vastatrix)、炭疽病(Colletotrichum coffeanum)、褐眼病(Cercospora coffeicola)など
サトウキビ:褐さび病(Puccinia melanocephala)など
トウモロコシ:ひょう紋病(Gloeocercospora sorghi)、さび病(Puccinia sorghi)、南方さび病(Puccinia polysora)、黒穂病(Ustilago maydis)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、すす紋病(Setosphaeria turcica)など
ワタ:苗立枯病(Pythium sp.)、さび病(Phakopsora gossypii)、白かび病(Mycosphaerella areola)、炭疽病(Glomerella gossypii)など
【0022】
(適用植物)
本微生物の適用対象となる植物としては、本微生物が防除能を発揮し得る植物である限り特に制限されない。
本微生物は、穀物類;野菜類;根菜類;イモ類;果樹類、茶、コーヒー、カカオなどの樹木類;牧草類;芝類;ワタなどの植物に対して用いることができる。
【0023】
例えば、アブラナ科、ナス科、ウリ科、ユリ科、マメ科、キク科、アカザ科、イネ科、バラ科、ナデシコ科、サクラソウ科、ミカン科、ブドウ科、マタタビ科、カキ科、セリ科、ヒルガオ科、又はサトイモ科に属する植物を挙げることができ、中でも、ハクサイ等のアブラナ科に属する植物、レタス等のキク科に属する植物、ジャガイモ等のナス科に属する植物、レモン、ネーブル等のミカン科に属する植物、ナシ等のバラ科に属する植物などを好ましく挙げることができる。
【0024】
本微生物は、植物類の各部位、例えば、葉、茎、柄、花、蕾、果実、種子、スプラウト、根、塊茎、塊根、苗条、挿し木などに施用することができる。また、これら植物類の改良品種・変種、栽培品種、さらには突然変異体、ハイブリッド体、遺伝子組み換え体(GMO)を対象とすることもできる。
【0025】
本微生物は、花卉、芝、牧草を含む農園芸作物に発生する種々の病害の防除をするために行われる種子処理(Seed treatment)、種芋消毒(Seed tuber treatment)、茎葉散布、土壌施用、水面施用などに使用することができる。
【0026】
<2>本微生物を含有する植物病害の防除剤
本微生物を含有する植物病害の防除剤は、シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株又はその変異株の菌体を含有している限り特に制限されない。以下、「本防除剤」は、本微生物を含有する植物病害の防除剤の事を示す。
【0027】
(形状)
本微生物は、本微生物の菌体自体、該菌体を含む懸濁液、該菌体を含む培養液、又はこれらの培養物、濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物等のいずれの形態であっても本防除剤に用いることができる。
【0028】
(予防、治癒)
本防除剤は、本微生物が、植物病害の病原菌に対して拮抗作用を発揮することにより、その病原菌により引き起こされる植物の病害を予防又は治癒することができる。本防除剤は、植物病害の予防剤や植物病害の治療剤として用いることができるが、植物病害の予防剤としての効果に特に優れている。
【0029】
(希釈濃度)
本防除剤に含まれる本微生物の濃度は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、本防除剤を1000〜2000倍に希釈した場合に、菌体濃度に換算して、1×10
2〜1×10
11cfu/ml、好ましくは1×10
4〜1×10
9cfu/mlの範囲内とすることを好ましく挙げることができる。
【0030】
(添加剤)
本防除剤は、本発明の効果を損なわない限り、本微生物以外に、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等を挙げることができる。特に、少なくとも界面活性剤を添加するのが好ましい。また、必要に応じて、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐剤などを添加することができる。
さらに本微生物に影響を与えない範囲で殺菌剤、殺虫剤、除草剤、成長調整剤等の化学農薬を混合することもできる。また、本微生物に影響を与える殺菌剤、殺虫剤、除草剤、成長調整剤等の化学農薬であっても、数日間の散布間隔を空けることで使用することができる。
【0031】
(本微生物の含有量)
本微生物の含有量は、特に限定されないが、本防除剤100質量部に対し、0.001〜99質量部であり、好ましくは0.01〜80質量部であり、さらに好ましくは0.1〜70質量部であり、さらに好ましくは1〜50質量部である。
【0032】
(添加剤:担体)
担体としては、炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩類;クエン酸、リンゴ酸、ステアリン酸等の有機酸及びそれらの塩;グルコース、乳糖、ショ糖等の糖類;アルミナ粉、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、クレー、珪藻土、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト等の固体担体を挙げることができる。
担体の含有量は、特に限定されないが、本微生物が1質量部に対し、担体の配合割合が、0.01〜30質量部であり、好ましくは、0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜10質量部である。
【0033】
(添加剤:界面活性剤又は分散剤)
界面活性剤(分散剤としても使用できる)としては、通常の農園芸用製剤に使用できるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、以下の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤がある。
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18)、POEソルビタン脂肪酸エステル(C12〜18)、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖エステル型界面活性剤;POE脂肪酸エステル(C12〜18)、POE樹脂酸エステル、POE脂肪酸ジエステル(C12〜18)などの脂肪酸エステル型界面活性剤;POEアルキルエーテル(C12〜18)等のアルコール型界面活性剤;POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテル、POEジアルキル(C8〜12)フェニルエーテル、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホルマリン縮合物などのアルキルフェノール型界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;アルキル(C12〜18)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤;POEアルキルアミン(C12〜18)、POE脂肪酸アミド(C12〜18)などのアルキルアミン型界面活性剤;POE脂肪酸ビスフェニルエーテルなどのビスフェノール型界面活性剤;POAベンジルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテル、POAスチリルフェニル(又はフェニルフェニル)エーテルなどの多芳香環型界面活性剤;POEエーテル及びエステル型シリコン及びフッ素系界面活性剤などのシリコン系、フッ素系界面活性剤;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油などの植物油型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート(C12〜18、Na、NH4、アルカノールアミン)、POEアルキルエーテルサルフェート(C12〜18、Na、NH4、アルカノールアミン)、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(C12〜18、NH4、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルサルフェート(Na、NH4、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート(Na、NH4、アルカノールアミン)などのサルフェート型界面活性剤;パラフィン(アルカン)スルホネート(C12〜22、Na、Ca、アルカノールアミン)、AOS(C14〜16、Na、アルカノールアミン)、ジアルキルスルホサクシネート(C8〜12、Na、Ca、Mg)、アルキルベンゼンスルホネート(C12、Na、Ca、Mg、NH4、アルキルアミン、アルカノール、アミン、シクロヘキシルアミン)、モノ又はジアルキル(C3〜6)ナフタレンスルホネート(Na、NH4、アルカノールアミン、Ca、Mg)、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物(Na、NH4)、アルキル(C8〜12)ジフェニルエーテルジスルホネート(Na、NH4)、リグニンスルホネート(Na、Ca)、POEアルキル(C8〜12)フェニルエーテルスルホネート(Na)、POEアルキル(C12〜18)エーテルスルホコハク酸ハーフエステル(Na)などのスルホネート型界面活性剤;カルボン酸型脂肪酸塩(C12〜18、Na、K、NH4、アルカノールアミン)、N−メチル−脂肪酸サルコシネート(C12〜18、Na)、樹脂酸塩(Na、K)などPOEアルキル(C12〜18)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEモノ又はジアルキル(C8〜12)フェニルエーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、POEベンジル(又はスチリル)化フェニル(又はフェニルフェニル)エーテルホスフェート(Na、アルカノールアミン)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(Na、アルカノールアミン)、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキル(C8〜12)ホスフェートなどのホスフェート型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0035】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(C12〜18)、メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド(C12〜18)、アルキル・N-メチルピリジウムブロマイド(C12〜18)、モノ又はジアルキル(C12〜18)メチル化アンモニウムクロライド、アルキル(C12〜18)ペンタメチルプロピレンジアミンジクロライドなどのアンモニウム型界面活性剤;アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド(C12〜18)、ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)などのベンザルコニウム型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0036】
両性界面活性剤としては、ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルベタイン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤;ジアルキル(C8〜12)ジアミノエチルグリシン、アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルグリシンなどのグリシン型界面活性剤;等を挙げることができる。
【0037】
界面活性剤及び/又は分散剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
界面活性剤及び/又は分散剤の含有量は、特に限定されないが、本微生物が1質量部に対し、界面活性剤の配合割合が、0.01〜30質量部であり、好ましくは、0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜10質量部である。
【0038】
(添加剤:補助剤)
補助剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、澱粉等を挙げることができる。
【0039】
(製剤形態)
本防除剤の形態は特に制限されず、通常の農園芸用薬のとり得る形態、例えば、粉剤(DP、Dustable Powder)、水和剤(WP、Wattable Powder)、乳剤(EC、Emulsifiable Concentrate)、フロアブル剤(FL、flowable)、懸濁剤(SC、Suspension Concentrate)、水溶剤(SP、Water Soluble Powder)、顆粒水和剤(WG、Water Dispersible Granule)、錠剤(Tablet)、粒剤(GR、Granule)、SE剤(Suspo Emulsion)、OD剤(Oil Dispersion)、EW剤(Emulsion oil in water)等の形態を採用することができる。製剤への調製方法は、特に制限されず、剤形に応じて公知の調製方法を採用することができる。
以下に本微生物の製剤処方の例を示す。
【0040】
(製剤1:水和剤)
本微生物 40部
珪藻土 53部
高級アルコール硫酸エステル 4部、および
アルキルナフタレンスルホン酸塩 3部
を均一に混合して微細に粉砕して、有効成分40%の水和剤を得る。
【0041】
(製剤2:乳剤)
本微生物 30部
キシレン 33部
ジメチルホルムアミド 30部、および
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 7部
を混合溶解して、有効成分30%の乳剤を得る。
【0042】
(製剤3:粒剤)
本微生物 5部
タルク 40部
クレー 38部
ベントナイト 10部、および
アルキル硫酸ソーダ 7部
を均一に混合して微細に粉砕後、直径0.5〜1.0mmの粒状に造粒して有効成分5%の粒剤を得る。
【0043】
(製剤4:粒剤)
本微生物 5部
クレー 73部
ベントナイト 20部
ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩 1部、および
リン酸カリウム 1部
をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥して有効成分5%の粒剤を得る。
【0044】
(製剤5:懸濁剤)
本微生物 10部
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル 4部
ポリカルボン酸ナトリウム塩 2部
グリセリン 10部
キサンタンガム 0.2部、および
水 73.8部
を混合し、粒度が3ミクロン以下になるまで湿式粉砕し、有効成分10%の懸濁剤を得る。
【0045】
(本防除剤の植物病害及び適用植物) 本防除剤の対象となる植物病害及び適用植物は、本微生物の対象となる植物病害及び適用植物と同じである。
【0046】
<3>本防除剤による、植物病害の防除方法
本防除剤による植物病害の防除方法は、本防除剤を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する方法であれば特に制限されるものではなく、通常の化学農薬を用いる場合と同様に、植物の病害の種類や適用植物の種類等によって適宜選択することができる。
【0047】
(散布方法)
例えば、本防除剤を、植物体に直接塗布又は散布等することによって、本防除剤を植物に処理してもよいし、本防除剤を植物を栽培する土壌(植物の栽培土壌)に混和、散布又は潅注等することによって、本防除剤を植物の栽培土壌に処理してもよい。本防除剤を植物の栽培土壌に処理する場合、本防除剤を土壌に処理してから植物を植えてもよく、植物を土壌に植えた後でその土壌に本防除剤を処理してもよい。また、特開2001−302407号公報記載のように、施設内に送風する送風装置の送風口付近に本防除剤を設置し、送風口から送出される空気とともに農薬を散布することもできる。さらに、本防除剤により植物の種子や塊茎などをコーティング、粉衣、浸漬することなどもでき、植物苗の根部を浸漬することで処理することもできる。
【0048】
(土壌散布濃度)
本防除剤を、植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する際には、本防除剤をそのままの状態で使用することもできるし、適当量の水等で希釈して使用することもできる。本防除剤を植物及び/又は該植物の栽培土壌に処理する量としては、植物病害の種類、適用植物の種類等によって異なるため一概には規定できないが、土壌に散布処理する場合は、本微生物の菌体濃度に換算して、通常1×10
2〜1×10
11cfu/ml、好ましくは1×10
4〜1×10
9cfu/mlの範囲とすることができる。
【0049】
本防除剤には、他の成分として、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、植物調節剤、共力剤、肥料、土壌改良剤、動物用飼料などを混合又は混用することができる。このような他の成分を含有することによって、相乗効果を奏することがある。
【0050】
本防除剤と混用または併用することができる、殺菌剤の具体例を以下に示す。
(1)核酸生合成阻害剤:
(a)RNAポリメラーゼI阻害剤: ベナラキシル(benalaxyl)、ベナラキシル-M(benalaxyl-M)、フララキシル(furalaxyl)、メタラキシル(metalaxyl)、メタラキシル-M(metalaxyl-M)、オキサジキシル(oxadixyl)、クロジラコン(clozylacon)、オフレース(ofurace);
(b)アデノシンデアミナーゼ阻害剤: ブピリメート(bupirimate)、ジメチリモール(dimethirimol)、エチリモール(ethirimol);
(c)DNA/RNA合成阻害剤: ヒメキサゾール(hymexazol)、オクチリノン(octhilinone);
(d)DNAトポイソメラーゼII阻害剤: オキソリン酸(oxolinic acid)。
【0051】
(2)有糸核分裂阻害剤および細胞分裂阻害剤:
(a)β−チューブリン重合阻害剤: ベノミル(benomyl)、カルベンダジム(carbendazim)、クロルフェナゾール(chlorfenazole)、フベリダゾール(fuberidazole)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チオファネート(thiophanate)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、ジエトフェンカルブ(diethofencarb)、ゾキサミド(zoxamide)、エタボキサム(ethaboxam);
(b)細胞分裂阻害剤: ペンシクロン(pencycuron);
(c)スペクトリン様タンパク質の非局在化阻害剤: フルオピコリド(fluopicolide)。
【0052】
(3)呼吸阻害剤:
(a)複合体I NADH酸化還元酵素阻害剤: ジフルメトリム(diflumetorim)、トルフェンピラド(tolfenpyrad);
(b)複合体IIコハク酸脱水素酵素阻害剤: ベノダニル(benodanil)、フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)、イソフェタミド(isofetamid)、フルオピラム(fluopyram)、フェンフラム(fenfuram)、フルメシクロックス(furmecyclox)、カルボキシン(carboxin)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、チフルザミド(thifluzamide)、ベンゾビンジフルピル(benzovindiflupyr)、ビキサフェン(bixafen)、フルキサピロキサド(fluxapyroxad)、フラメトピル(furametpyr)、イソピラザム(isopyrazam)、ペンフルフェン(penflufen)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、セダキサン(sedaxan)、ボスカリド(boscalid)、ピラジフルミド(pyraziflumid);
(c)複合体IIIユビキノールオキシダーゼQo阻害剤: アゾキシストロビン(azoxystrobin)、クモキシストロビン(coumoxystrobin)、クメトキシストロビン(coumethoxystrobin)、エノキサストロビン(enoxastrobin)、フルフェノキシストロビン(flufenoxystrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ピラオキシストロビン(pyraoxystrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、ピラメトストロビン(pyrametostrobin)、トリクロピリカルブ(triclopyricarb)、クレソキシム-メチル(kresoxim-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、フェナミンストロビン(fenaminstrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、ファモキサドン(famoxadone)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、フェンアミドン(fenamidone)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、マンデストロビン(mandestrobin);
(d)複合体IIIユビキノール還元酵素Qi阻害剤: シアゾファミド(cyazofamid)、アミスルブロム(amisulbrom);
(e)酸化的リン酸化の脱共役剤: ビナパクリル(binapacryl)、メプチルジノカップ(meptyldinocap)、ジノカップ(dinocap)、フルアジナム(fluazinam)、フェリムゾン(ferimzone);
(f)酸化的リン酸化阻害剤(ATP 合成酵素の阻害剤): フェンチンアセテート(fentin acetate)、塩化フェンチン(fentin chloride)、水酸化フェンチン(fentin hydroxide);
(g)ATP生産阻害剤: シルチオファム(silthiofam);
(h)複合体III:シトクロームbc1(ユビキノン還元酵素)のQx(未知)阻害剤: アメトクトラジン(ametoctradin)。
【0053】
(4)アミノ酸およびタンパク質合成阻害剤
(a)メチオニン生合成阻害剤: アンドプリム(andoprim)、シプロジニル(cyprodinil)、メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメタニル(pyrimethanil);
(b)タンパク質合成阻害剤: ブラストサイジン-S(blasticidin-S)、カスガマイシン(kasugamycin)、カスガマイシン塩酸塩(kasugamycin hydrochloride)、ストレプトマイシン(streptomycin)、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)。
【0054】
(5)シグナル伝達阻害剤:
(a)シグナル伝達阻害剤: キノキシフェン(quinoxyfen)、プロキナジド(proquinazid);
(b)浸透圧シグナル伝達におけるMAP・ヒスチジンキナーゼ阻害剤: フェンピクロニル(fenpiclonil)、フルジオキソニル(fludioxonil)、クロゾリネート(chlozolinate)、イプロジオン(iprodione)、プロシミドン(procymidone)、ビンクロゾリン(vinclozolin)。
【0055】
(6)脂質および細胞膜合成阻害剤:
(a)りん脂質生合成、メチルトランスフェラーゼ阻害剤: エジフェンホス(edifenphos)、イプロベンホス(iprobenfos)、ピラゾホス(pyrazophos)、イソプロチオラン(isoprothiolane);
(b)脂質の過酸化剤: ビフェニル(biphenyl)、クロロネブ(chloroneb)、ジクロラン(dichloran)、キントゼン(quintozene)、テクナゼン(tecnazene)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、エトリジアゾール(etridiazole);
(c)細胞膜に作用する剤: ヨードカルブ(iodocarb)、プロパモカルブ(propamocarb)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb-hydrochloride)、プロパモカルブホセチレート(propamocarb-fosetylate)、プロチオカルブ(prothiocarb);
(d)病原菌細胞膜を撹乱する微生物: バチルス ズブチリス菌(bacillus subtilis)、バチルス ズブチリスQST713株(bacillus subtilis strain QST713)、バチルス ズブチリスFZB24株(bacillus subtilis strain FZB24)、バチルス ズブチリスMBI600株(bacillus subtilis strain MBI600)、バチルス ズブチリスD747株(bacillus subtilis strain D747)、バチルス アミロリクエファシエンス(bacillus amyloliquefaciens);
(e)細胞膜を撹乱する剤: ゴセイカユプテ(ティーツリー)の抽出物(melaleuca altemifolia (tea tree) extract)。
【0056】
(7)細胞膜のステロール生合成阻害剤:
(a)ステロール生合成におけるC14位の脱メチル化阻害剤: トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、ピリソキサゾール(pyrisoxazole)、フェナリモル(fenarimol)、フルルプリミドール(flurprimidol)、ヌアリモル(nuarimol)、イマザリル(imazalil)、イマザリル硫酸塩(imazalil-sulphate)、オキスポコナゾールフマル酸塩(oxpoconazole fumarate)、ペフラゾエート(pefurazoate)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole)、ビニコナゾール(viniconazole)、アザコナゾール(azaconazole)、ビテルタノール(bitertanol)、ブロムコナゾール(bromconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジクロブトラゾール(diclobutrazol)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジニコナゾール(diniconazole)、ジニコナゾール-M(diniconazole-M)、エポキシコナゾール(epoxyconazole)、エタコナゾール(etaconazole)、フェンブコナゾール(fenbuconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルトリアホール(flutriafol)、フルコナゾール(furconazole)、フルコナゾール−シス(furconazole-cis)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イプコナゾール(ipconazole)、メトコナゾール(metconazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、ペンコナゾール(penconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、シメコナゾール(simeconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、テトラコナゾール(tetraconazole)、トリアジメホン(triadimefon)、トリアジメノール(triadimenol)、トリチコナゾール(triticonazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、メフェントリフルコナゾール(mefentrifluconazole);
(b)ステロール生合成におけるΔ14還元酵素およびΔ8→Δ7−イソメラーゼの阻害剤:
アルジモルフ(aldimorph)、ドデモルフ(dodemorph)、ドデモルフ酢酸塩(dodemorph acetate)、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、トリデモルフ(tridemorph)、フェンプロピジン(fenpropidine)、ピペラリン(piperalin)、スピロキサミン(spiroxamine);
(c)ステロール生合成系のC4位脱メチル化における3-ケト還元酵素阻害剤: フェンヘキサミド(fenhexamid)、フェンピラザミン(fenpyrazamine);
(d)ステロール生合成系のスクワレンエポキシダーゼ阻害剤: ピリブチカルブ(pyributicarb)、ナフチフィン(naftifin)、テルビナフィン(terbinafine)。
【0057】
(8)細胞壁合成阻害
(a)トレハラーゼ阻害剤: バリダマイシン(validamycin);
(b)キチン合成酵素阻害剤: ポリオキシン(polyoxins)、ポリオクソリム(polyoxorim);
(c)セルロース合成酵素阻害剤: ジメトモルフ(dimethomorph)、フルモルフ(flumorph)、ピリモルフ(pyrimorph)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、トルプロカルブ(tolprocarb)、バリフェナレート(valifenalate)、マンジプロパミド(mandipropamid)。
【0058】
(9)メラニン生合成阻害剤
(a)メラニン生合成の還元酵素阻害剤: フサライド(fthalide)、ピロキロン(pyroquilon)、トリシクラゾール(tricyclazole);
(b)メラニン生合成の脱水酵素阻害剤: カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)。
【0059】
(10)宿主植物の抵抗性誘導剤:
(a)サリチル酸合成経路に作用する剤: アシベンゾラル-S-メチル(acibenzolar-S-methyl);
(b)その他: プロベナゾール(probenazole)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、ラミナリン(laminarin)、オオイタドリ抽出液(reynoutria sachalinensis extract)。
【0060】
(11)作用性が不明な剤: シモキサニル(cymoxanil)、ホセチルアルミニウム(fosetyl-aluminium)、リン酸(リン酸塩)(phosphoric acid (phosphate))、テクロフタラム(tecloftalam)、トリアゾキシド(triazoxide)、フルスルファミド(flusulfamide)、ジクロメジン(diclomezine)、メタスルホカルブ(methasulfocarb)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、メトラフェノン(metrafenone)、ピリオフェノン(pyriofenone)、ドジン(dodine)、ドジン遊離塩基(dodine free base)、フルチアニル(flutianil)。
【0061】
(12)多作用点を有する剤: 銅 (銅塩)(copper(copper salt))、ボルドー液(bordeaux mixture)、水酸化銅(copper hydroxide)、銅ナフタレート(copper naphthalate)、酸化銅(copper oxide)、オキシ塩化銅(copper oxychloride)、硫酸銅(copper sulfate)、硫黄(sulfur)、硫黄製品(sulfur product)、多硫化カルシウム(calcium polysulfide)、ファーバム(ferbam)、マンコゼブ(mancozeb)、マネブ(maneb)、マンカッパー(mancopper)、メチラム(metiram)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロピネブ(propineb)、チラム(thiram)、ジネブ(zineb)、ジラム(ziram)、キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)、クロロタロニル(chlorothalonil)、ジクロフルアニド(dichlofluanid)、トリルフルアニド(tolylfluanid)、グアザチン(guazatine)、イミノクタジン酢酸塩(iminoctadine triacetate)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadine trialbesilate)、アニラジン(anilazine)、ジチアノン(dithianon)、キノメチオネート(quinomethionate)、フルオルイミド(fluoroimide)。
【0062】
(13)その他の剤: DBEDC、フルオロフォルペット(fluorofolpet)、グアザチンアセテート(guazatin acetate)、ビス(8-キノリノラト)銅(II)(bis (8-quinolinolato) copper(II))、プロパミジン(propamidine)、クロロピクリン(chloropicrin)、シプロフラム(cyprofuram)、アグロバクテリウム(agrobacterium)、ベトキサジン(bethoxazin)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、メチルイソチアネート(MITC)(methyl isothiocyanate)、ミルデオマイシン(mildew-mycin)、カプサイシン(capsaicin)、クフラネブ(cufraneb)、シプロスルファミド(cyprosulfamide)、ダゾメット(dazomet)、デバカルブ(debacarb)、ジクロロフェン(dichlorophen)、フルメトベル(flumetover)、ホセチルカルシウム(fosetyl-calcium)、ホセチルナトリウム(fosetyl-sodium)、イルママイシン(irumamycin)、ナタマイシン(natamycin)、ニトロタールイソプロピル(nitrothal isopropyl)、オキサモカルブ(oxamocarb)、ピロールニトリン(pyrrolnitrin)、テブフロキン(tebufloquin)、トルニファニド(tolnifanide)、ザリラミド(zarilamide)、アルゴフェーズ(algophase)、アミカルチアゾール(amicarthiazol)、オキサチアピプロリン(oxathiapiprolin)、メチラム亜鉛(metiram zinc)、ベンチアゾール(benthiazole)、トリクラミド(trichlamide)、ユニコナゾール(uniconazole)、ミルデオマイシン(mildew-mycin)、オキシフェンチイン(oxyfenthiin)、ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)、フェンピコキサミド(fenpicoxamid)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)、キノフメリン(quinofumelin)、チウラム(thiuram)、アンバム(ambam)、アグロバクテリウム ラジオバクター(agrobacterium radiobacter)、コニオチリウム ミニタンス(coniothyrium minitans)、シュードモナス フルオレッセンス(pseudomonas fluorescens)、シュードモナス ロデシア(pseudomonas rhodesiae)、タラロマイセス フラバス(talaromyces flavus)、トリコデルマ アトロビリデ(trichoderma atroviride)、非病原性エルビニア カロトボーラ(erwinia carotovora subsp. carotovora)、バチルス シンプレクス(bacillus simplex)、バリオボラックス パラドクス(variovorax paradoxus)、ラクトバチルス プランタラム(lactobacillus plantarum)。
【0063】
本防除剤と混用または併用することができる、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺土壌害虫剤、駆虫剤などの具体例を以下に示す。
【0064】
(1)アセチルコリンエステラーゼ阻害剤:
(a)カーバメート系: アラニカルブ(alanycarb)、アルジカルブ(aldicarb)、ベンジオカルブ(bendiocarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、ブトカルボキシム(butocarboxim)、ブトキシカルボキシム(butoxycarboxim)、カルバリル(carbaryl)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノブカルブ(fenobucarb)、ホルメタネート(formetanate)、フラチオカルブ(furathiocarb)、イソプロカルブ(isoprocarb)、メチオカルブ(methiocarb)、メソミル(methomyl)、オキサミル(oxamyl)、ピリミカルブ(pirimicarb)、プロポキスル(propoxur)、チオジカルブ(thiodicarb)、チオファノックス(thiofanox)、トリアザメート(triazamate)、トリメタカルブ(trimethacarb)、XMC、キシリルカルブ(xylycarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、MIPC、MPMC、MTMC、アルドキシカルブ(aldoxycarb)、アリキシカルブ(aliyxycarb)、アミノカルブ(aminocarb)、ブフェンカルブ(bufencarb)、クロエトカルブ(cloethocarb)、メタム・ナトリウム(metam-sodium)、プロメカルブ(promecarb);
【0065】
(b)有機リン系: アセフェート(acephate)、アザメチホス(azamethiphos)、アジンホス-エチル(azinphos-ethyl)、アジンホス-メチル(azinphos-methyl)、カズサホス(cadusafos)、クロルエトキシホス(chlorethoxyfos)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、クロルメホス(chlormephos)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルピリホス-メチル(chlorpyrifos-methyl)、クマホス(coumaphos)、シアノホス(cyanophos)、デメトン-S-メチル(demeton-S-methyl)、ダイアジノン(diazinon)、ジクロルボス(dichlorvos)/DDVP、ジクロトホス(dicrotophos)、ジメトエート(dimethoate)、ジメチルビンホス(dimethylvinphos)、ジスルホトン(disulfoton)、EPN、エチオン(ethion)、エトプロホス(ethoprophos)、ファムフール(famphur)、フェナミホス(fenamiphos)、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェンチオン(fenthion)、ホスチアゼート(fosthiazate)、ヘプテノホス(heptenophos)、イミシアホス(imicyafos)、イソフェンホス(isofenphos)、イソカルボホス(isocarbophos)、イソキサチオン(isoxathion)、マラチオン(malathion)、メカルバム(mecarbam)、メタミドホス(methamidophos)、メチダチオン(methidathion)、メビンホス(mevinphos)、モノクロトホス(monocrotophos)、ナレド(naled)、オメトエート(omethoate)、オキシジメトン-メチル(oxydemeton-methyl)、パラチオン(parathion)、パラチオン-メチル(parathion-methyl)、フェントエート(phenthoate)、ホレート(phorate)、ホサロン(phosalone)、ホスメット(phosmet)、ホスファミドン(phosphamidon)、ホキシム(phoxim)、ピリミホス-メチル(pirimiphos-methyl)、プロフェノホス(profenofos)、プロペタムホス(propetamphos)、プロチオホス(prothiofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、ピリダフェンチオン(pyridaphenthion)、キナルホス(quinalphos)、スルホテップ(sulfotep)、テブピリンホス(tebupirimfos)、テメホス(temephos)、テルブホス(terbufos)、テトラクロルビンホス(tetrachlorvinphos)、チオメトン(thiometon)、トリアゾホス(triazophos)、トリクロルホン(trichlorfon)、バミドチオン(vamidothion)、ブロモホス・エチル(bromophos-ethyl)、BRP、カルボフェノチオン(carbophenothion)、シアノフェンホス(cyanofenphos)、CYAP、デメトン-S-メチルスルホン(demeton-S-methyl sulphone)、ジアリホス(dialifos)、ジクロフェンチオン(dichlofenthion)、ジオキサベンゾホス(dioxabenzofos)、エトリムホス(etrimfos)、フェンスルホチオン(fensulfothion)、フルピラゾホス(flupyrazofos)、ホノホス(fonofos)、ホルモチオン(formothion)、ホスメチラン(fosmethilan)、イサゾホス(isazofos)、ヨードフェンホス(jodfenphos)、メタクリホス(methacrifos)、ピリミホス−エチル(pirimiphos-ethyl)、ホスホカルブ(phosphocarb)、プロパホス(propaphos)、プロトエート(prothoate)、スルプロホス(sulprofos)。
【0066】
(2)GABA-作動性塩素イオンチャネルアンタゴニスト: アセトプロール(acetoprole)、クロルデン(chlordane)、エンドスルファン(endosulfan)、エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、カンフェクロル(camphechlor)、ヘプタクロル(heptachlor)、ジエノクロル(dienochlor)。
(3)ナトリウムチャンネルモジュレーター: アクリナトリン(acrinathrin)、d-シス-トランス アレスリン(d-cis-trans allethrin)、d-トランスアレスリン(d-trans allethrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、ビオアレスリン(bioallethrin)、ビオアレスリンs-シクロペンチル異性体(bioailethrin s-cyclopentyl isomer)、ビオレスメトリン(bioresmethrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータ-シフルトリン(β-cyfluthrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダ-シハロトリン(λ-cyhalothrin)、ガンマ-シハロトリン(γ-cyhalothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、アルファ-シペルメトリン(α-cypermethrin)、ベータ-シペルメトリン(β-cypermethrin)、シータ-シペルメトリン(θ-cypermethrin)、ゼータ-シペルメトリン(ζ-cypermethrin)、シフェノトリン[(1R)-トランス異性体](cyphenothrin [(1R)-trans isomer])、デルタメトリン(deltamethrin)、エンペントリン[(EZ)-(1R)-異性体](Empenthrin[(EZ)-(1R)-Isomer])、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルメトリン(flumethrin)、タウ-フルバリネート(τ-fluvalinate)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、イミプロトリン(imiprothrin)、カデスリン(kadethrin)、ペルメトリン(permethrin)、フェノトリン[(1R)-トランス異性体](phenothrin [(1R)-trans isomer])、プラレトリン(prallethrin)、ピレスラム(pyrethrum)、レスメトリン(resmethrin)、シラフルオフェン(silafluofen)、テフルスリン(tefluthrin)、テトラメトリン[(1R)-異性体](tetramethrin [(1R)-isomer])、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、アレスリン(allethrin)、ピレトリン(pyrethrins)、ピレトリンI(pyrethrin I)、ピレトリンII(pyrethrin II)、プロフルトリン(profluthrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、ビオエタノメトリン(bioethanomethrin)、ビオペルメトリン(biopermethrin)、トランスペルメトリン(transpermethrin)、フェンフルトリン(fenfluthrin)、フェンピリトリン(fenpirithrin)、フルブロシトリネート(flubrocythrinate)、フルフェンプロックス(flufenprox)、メトフルトリン(metofluthrin)、プロトリフェンブト(protrifenbute)、ピレスメトリン(pyresmethrin)、テラレトリン(terallethrin)。
【0067】
(4)ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト: アセタミプリド(acetamiprid)、クロチアニジン(clothianidin)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、ニチアジン(nithiazine)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、スルフォキサフロール(sulfoxaflor)、ニコチン(nicotine)、フルピラジフロン(flupyradifurone)。
(5)ニコチン性アセチルコリン受容体アロステリックモジュレーター: スピネトラム(spinetoram)、スピノサド(spinosad)。
(6)クロライドチャンネル活性化剤: アバメクチン(abamectin)、エマメクチン安息香酸塩(emamectine-benzoate)、レピメクチン(lepimectin)、ミルベメクチン(milbemectin)、イベルメクチン(ivermectin)、セラメクチン(seramectin)、ドラメクチン(doramectin)、エプリノメクチン(eprinomectin)、モキシデクチン(moxidectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、ミルベマイシンオキシム(milbemycin oxime)、ネマデクチン(nemadectin)。
(7)幼若ホルモン様物質: ヒドロプレン(hydroprene)、キノプレン(kinoprene)、メトプレン(methoprene)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ジオフェノラン(diofenolan)、エポフェノナン(epofenonane)、トリプレン(triprene)。
(8)その他非特異的阻害剤: 臭化メチル(methyl bromide)、クロルピクリン(chloropicrin)、フッ化スルフリル(sulfuryl fluoride)、ホウ砂(borax)、吐酒石(tartar emetic)。
(9)同翅目選択的摂食阻害剤: フロニカミド(flonicamid)、ピメトロジン(pymetrozine)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)。
【0068】
(10)ダニ類生育阻害剤: クロフェンテジン(clofentezine)、ジフロビダジン(diflovidazin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、エトキサゾール(etoxazole)。
(11)微生物由来昆虫中腸内膜破壊剤: バチルス・チューリンゲンシス亜種イスラエレンシ(bacillus thuringiensis subsp. israelensi)、バチルス・スファエリクス(bacillus sphaericus)、バチルス・チューリンゲンシス亜種アイザワイ(bacillus thuringiensis subsp. aizawai)、バチルス・チューリンゲンシス亜種クルスタキ(bacillus thuringtensis subsp. kurstaki)、バチルス・チューリンゲンシス亜種テネブリオニス(bacillus thuringiensis subsp. tenebrionis)、Bt作物タンパク質:Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1Fa、Cry1A.105、Cry2Ab、Vip3A、mCry3A、Cry3Ab、Cry3Bb、Cry34Ab1/Cry35Ab1。
(12)ミトコンドリアATP生合成酵素阻害剤: ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、アゾシクロチン(azocyclotin)、シヘキサチン(cyhexatin)、酸化フェンブタスズ(fenbutatin oxide)、プロパルギット(propargite)、テトラジホン(tetradifon)。
(13)酸化的リン酸化脱共役剤: クロルフェナピル(chlorfenapyr)、スルフラミド(sulfuramid)、DNOC、ビナパクリル(binapacryl)、ジノブトン(dinobuton)、ジノカップ(dinocap)。
(14)ニコチン性アセチルコリン受容体チャンネルブロッカー: ベンスルタップ(bensultap)、カルタップ塩酸塩(cartap hydrochloride)、ネライストキシン(nereistozin)、チオスルタップ−ナトリウム塩(thiosultap-sodium)、チオシクラム(thiocyclam)。
(15)キチン合成阻害剤: ビストリフルロン(bistrifluron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルシクロクスロン(flucycloxuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、ノバルロン(novaluron)、ノビフルムロン(noviflumuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、トリフルムロン(triflumuron)、ブプロフェジン(buprofezin)、フルアズロン(fluazuron)。
(16)双翅目脱皮かく乱剤: シロマジン(cyromazine)。
(17)脱皮ホルモン受容体アゴニスト: クロマフェノジド(chromafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、テブフェノジド(tebufenozide)。
(18)オクトパミン受容体アゴニスト: アミトラズ(amitraz)、デミジトラズ(demiditraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)。
(19)ミトコンドリア電子伝達系複合体III阻害剤: アセキノシル(acequinocyl)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)。
(20)ミトコンドリア電子伝達系複合体I阻害剤: フェナザキン(fenazaquin)、フェンピロキシメート(fenpyroximate)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、ピリダベン(pyridaben)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、ロテノン(rotenone)。
【0069】
(21)電位依存性ナトリウムチャネルブロッカー: インドキサカルブ(indoxacarb)、メタフルミゾン(metaflumizone)。
(22)アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤: スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat)。
(23)ミトコンドリア電子伝達系複合体IV阻害剤: リン化アルミニウム(aluminium phosphide)、リン化カルシウム(calcium phosphide)、ホスフィン(phosphine)、リン化亜鉛(zinc phosphide)、シアニド(cyanide)。
(24)ミトコンドリア電子伝達系複合体II阻害剤: シエノピラフェン(cyenopyrafen)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、ピフルブミド(pyflubumide)。
(25)リアノジン受容体モジュレーター: クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、フルベンジアミド(flubendiamide)、シクラニリプロール(cyclaniliprole)、テトラニリプロール(tetraniliprole)。
(26)混合機能オキシダーゼ阻害剤化合物: ピペロニルブトキシド(piperonyl butoxide)。
(27)ラトロフィリン受容体作用薬: デプシペプチド(depsipeptide)、環状デプシペプチド(cyclodepsipeptide)、24員環状デプシペプチド(24 membered cyclodepsipeptide)、エモデプシド(emodepside)。
(28)その他の剤(作用機構が未知): アザジラクチン(azadirachtin)、ベンゾキシメート(benzoximate)、ビフェナゼート(bifenazate)、ブロモプロピレート(bromopropylate)、キノメチオネート(quinomethionate)、クリオライト(cryolite)、ジコホル(dicofol)、ピリダリル(pyridalyl)、ベンクロチアズ(benclothiaz)、硫黄(sulfur)、アミドフルメット(amidoflumet)、1,3−ジクロロプロペン(1,3-dichloropropene)、DCIP、フェニソブロモレート(phenisobromolate)、ベンゾメート(benzomate)、メタアルデヒド(metaldehyde)、クロルベンジレート(chlorobenzilate)、クロチアゾベン(clothiazoben)、ジシクラニル(dicyclanil)、フェノキサクリム(fenoxacrim)、フェントリファニル(fentrifanil)、フルベンジミン(flubenzimine)、フルフェナジン(fluphenazine)、ゴシップルア(gossyplure)、ジャポニルア(japonilure)、メトキサジアゾン(metoxadiazone)、石油(oil)、オレイン酸カリウム(potassium oleate)、テトラスル(tetrasul)、トリアラセン(triarathene)、アフィドピロペン(afidopyropen)、フロメトキン(flometoquin)、フルフィプロル(flufiprole)、フルエンスルホン(fluensulfone)、メペルフルスリン(meperfluthrin)、テトラメチルフルスリン(tetramethylfluthrin)、トラロピリル(tralopyril)、ジメフルスリン(dimefluthrin)、メチルネオデカンアミド(methylneodecanamide)、フルララネル(fluralaner)、アフォキソラネル(afoxolaner)、フルキサメタミド(fluxametamide)、5−[5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル]−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ベンゾニトリル(CAS:943137-49-3)(5-[5-(3,5-dichlorophenyl)-5-trifluoromethyl-4,5-dihydroisoxazole-3-yl]-2-(1H-1,2,4-triazole-1-yl)benzonitrile (CAS:943137-49-3))、ブロフラニリド(broflanilide)、その他のメタジアミド類、スタイナーネマ カーポカプサエ(steinernema carpocapsae)、スタイナーネマ グラセライ(steinernema glaseri)、パスツーリア ペネトランス(pasteuria penetrans)、ペキロマイセス テヌイペス(paecilomyces tenuipes)、ペキロマイセス フモソロセウス(paecilomyces fumosoroseus)、ボーベリア バシアーナ(beauveria bassiana)、ボーベリア ブロンニアティ(beauveria brongniartii)、メタリジウム アニソプリエ(metarhizium anisopliae)、バーティシリウム レカニ(verticillium lecanii)。
【0070】
(29)駆虫剤:
(a)ベンズイミダゾール系: フェンベンダゾール(fenbendazole)、アルベンダゾール(albendazole)、トリクラベンダゾール(triclabendazole)、オキシベンダゾール(oxibendazole)、メベンダゾール(mebendazole)、オクスフェンダゾール(oxfendazole)、パーベンダゾール(parbendazole)、フルベンダゾール(flubenzazole)、フェバンテル(febantel)、ネトビミン(netobimin)、チオファネート(thiophanate)、チアベンダゾール(thiabendazole)、カンベンダゾール(cambendazole);
(b)サリチルアニリド系: クロサンテル(closantel)、オキシクロザニド(oxyclozanide)、ラフォキサニド(rafoxanide)、ニクロサミド(niclosamide);
(c)置換フェノール系: ニトロキシニル(nitroxinil)、ニトロスカネート(nitroscanate);
(d)ピリミジン系: ピランテル(pyrantel)、モランテル(morantel);
(e)イミダゾチアゾール系: レバミソール(levamisole)、テトラミソール(tetramisole);
(f)テトラヒドロピリミジン系: プラジカンテル(praziquantel)、エプシプランテル(epsiprantel);
(g)その他の駆虫薬: シクロジエン(cyclodiene)、リアニア(ryania)、クロルスロン(clorsulon)、メトロニダゾール(metronidazole)、デミジトラズ(demiditraz)、ピペラジン(piperazine)、ジエチルカルバマジン(diethylcarbamazine)、ジクロロフェン(dichlorophen)、モネパンテル(monepantel)、トリベンジミジン(tribendimidine)、アミダンテル(amidantel)、チアセタルサミド(thiacetalsamide)、メラルソミン(melarsomine)、アルセナマイド(arsenamide)。
【0071】
本防除剤と混用または併用することができる、植物調節剤の具体例を以下に示す。
アブシジン酸(abscisic acid)、カイネチン(kinetin)、ベンジルアミノプリン(Benzylaminopurine)、1,3−ジフェニルウレア(1,3-diphenylurea)、ホルクロルフェニュロン(forchlorfenuron)、チジアズロン(thidiazuron)、クロルフェヌロン(chlorfenuron)、ジヒドロゼアチン(dihydrozeatin)、ジベレリンA(gibberellin A)、ジベレリンA4(gibberellin A4)、ジベレリンA7(gibberellin A7)、ジベレリンA3(gibberellin A3)、1−メチルシクロプロパン(1-methylcyclopropane)、N−アセチルアミノエトキシビニルグリシン(別名:アビグリシン)(N-acetyl aminoethoxyvinyl glycine (aviglycine))、アミノオキシ酢酸(aminooxyacetate)、硝酸銀(silver nitrate)、塩化コバルト(cobalt chloride)、IAA、4−CPA、クロプロップ(cloprop)、2,4−D、MCPB、インドール−3−酪酸(indole-3-butyrate)、ジクロルプロップ(dichlorprop)、フェノチオール(phenothiol)、1−ナフチルアセトアミド(1-naphthyl acetamide)、エチクロゼート(ethychlozate)、クロキシホナック(cloxyfonac)、マレイン酸ヒドラジド(maleic acid hydrazide)、2,3,5−トリヨード安息香酸(2,3,5-triiodobenzoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、サリチル酸メチル(methyl salicylate)、(-)−ジャスモン酸((-)-jasmonic acid)、ジャスモン酸メチル(methyl jasmonate)、(+)−ストリゴール((+)-strigol)、(+)−デオキシストリゴール((+)-deoxystrigol)、(+)−オロバンコール((+)-orobanchol)、(+)−ソルゴラクトン((+)-sorgolactone)、4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸(4-oxo-4-(2-phenylethyl)aminobutyric acid)、エテホン(ethephon)、クロルメコート(chlormequat)、メピコートクロリド(mepiquat chloride)、ベンジルアデニン(benzyladenine)、5−アミノレブリン酸(5-amino levulinic acid)、ダミノジッド(daminozide)。
【0072】
(散布回数)
本防除剤の散布回数は、植物の病害の種類や適用植物の種類、病害の程度等によって適宜選択することができる。
【0073】
(用途)
本防除剤は、主に農用として用いることができるが、農用以外にも使用できる。農用としての用途としては、種子処理、種芋消毒、田んぼ、畑等の土壌への散布、野菜、果実やイネ等の植物への散布などを例示することができ、農用以外の用途としては、浴室、リビング等の壁面の防黴剤、ため池、プール、冷却塔等の水質改善剤、汚泥等の汚泥処理剤等を例示することができる。
【0074】
(散布方法)
本防除剤は、特に散布方法を限定せずに使用できるが、水に希釈して噴霧して散布する方法、固形剤をそのまま土壌に散布する方法、固形剤を水に入れ、徐放して効果が発揮する方法等を例示することができる。
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
〔実施例1〕菌の分離とその同定
1.候補菌株の分離及び植物病害防除能を有する菌株の選抜
圃場で採取したハクサイの葉を少量の滅菌水中でホモジナイズし、得られた懸濁液を標準寒天培地(カゼイン製ペプトン0.5%(w/v)、酵母エキス0.25%(w/v)、ブドウ糖0.1%(w/v)、カンテン1.5%(w/v)、滅菌後のpH6.9〜7.1)(日水製薬社製)上に塗抹し、25℃で2日間培養した。生育した単一の微生物コロニーを複数採取して、それぞれを候補菌株とした。このように採取した候補菌株について、レタス軟腐病の病原菌(Erwinia carotovora)に対して試験例1にて防除効果を有する数種の菌株を選抜した。選抜した菌株について、さらに試験例2の圃場試験において、ハクサイ軟腐病に対して防除効果を有する菌株を選抜した。最終的に選抜した菌株は、試験例1での防除価は86.7であり、試験例2での防除価93.8であった。この選抜した菌株をW−14−1株と名付けた。
【0077】
〔試験例1〕 レタス軟腐病(細菌病害)防除効果試験(室内試験)
300ml容三角フラスコに標準液体培地(酵母エキス0.25%,ペプトン0.5%,グルコース0.1%,pH7.0)150mlを入れ、加熱滅菌した。試験を行う培養物0.1mlを接種し、往復振盪機中30℃、100rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄し、再度遠心して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄した。このようにして、菌体懸濁液を調製した。
次にこの菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600(波長600nmの吸光度)=0.1)を調製した。処理液をレタス中肋部の切り取り葉の切り取り口に散布した。散布処理したそれぞれのレタスを、加湿条件で5時間、28℃でインキュベートした後、レタス軟腐病の病原菌(エルビニア カロトボーラ: Erwinia carotovora)の水懸濁液(A600=0.05)をそれぞれのレタスの切り取り口に接種した。接種後28℃で4日間インキュベートした後、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式1及び式2に基づいて発病度と防除価を算出した。
【0078】
基準0: 病変なし
基準1: 病変が中肋部の10%未満
基準2: 病変が中肋部の10〜50%未満
基準3: 病変が中肋部の50〜75%未満
基準4: 病変が中肋部の75%未満超
【0079】
(式1)
発病度=((1×n1+2×n2+3×n3+4×n4)/(4×全調査葉数))×100
n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する葉数
(式2)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0080】
〔試験例2〕 ハクサイ軟腐病(細菌病害)防除効果試験(圃場試験)
試験例1と同じ方法で試験を行う培養物の菌体懸濁液を調製した。
次にこの菌体懸濁液を水で希釈して処理液(A600=0.1)を調製した。処理液を圃場に定植してあるハクサイに散布処理した。散布処理は、1週間間隔で2回実施した。また、ハクサイ軟腐病の病源菌(エルビニア カロトボーラ)は、1回目散布処理当日に、その水懸濁液(A600=0.1)を散布接種した。2回目の散布から1週間後に、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式3及び式4に基づいて発病株率、発病度及び防除価を算出した。
【0081】
基準0: 発病なし
基準1: 外葉の一部に発病が認められる
基準2: 外葉と結球葉の一部に発病が認められる
基準3: 結球葉の大部分に発病が認められる
【0082】
(式3)
発病度=((1×n1+2×n2+3×n3)/(3×全調査株数))×100
n1〜n3は、基準1〜3のそれぞれに対応する株数
(式4)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0083】
2.16S rDNA遺伝子の解析
W−14−1株について、16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を解析するために、W−14−1株から16S rRNA遺伝子の増幅を試みた。具体的には、まず、常法にしたがってW−14−1株からゲノムDNAを単離した。得られたゲノムDNAをテンプレートとし、16S rRNA遺伝子増幅によく用いられる27Fプライマー(配列番号1)及び1510Rプライマー(配列番号2)を用いてPCR増幅を行った。得られたPCR産物についてシーケンスを行い、ヌクレオチド配列を解読した。さらに、得られたヌクレオチド配列の情報に基づいてアッセンブルを行い、16S rRNA遺伝子の全長のヌクレオチド配列を決定した。W−14−1株の16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を配列番号3に示す。
【0084】
W−14−1株の16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列に基づいてBLASTを用いて、相同性検索を行った。また、W−14−1株の16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を、ClustalXを用いて解析し、得られた解析結果をTree Viewを用いて処理することによって、W−14−1株に関する系統樹(
図1)を作成した。この系統樹によって、W−14−1株の分類学的位置付けが明らかになった。
その結果、W−14−1株はシュードモナス フルオレセンス グループに属する細菌であり、さらにシュードモナス ゲサルディ、シュードモナス リバネンシス、シュードモナス シンクサンサ、シュードモナス ムシドレンス及びシュードモナス アゾトフォルマンスから構成されるクレードに含まれることが判明した。中でも、特にシュードモナス アゾトフォルマンスと相同性が高かった。
【0085】
3.菌学的性質の解析
上記2.の16S rRNA遺伝子の配列の解析結果で近縁であると考えられたシュードモナス ゲサルディ、シュードモナス リバネンシス、シュードモナス シンクサンサ、シュードモナス ムシドレンス及びシュードモナス アゾトフォルマンスの標準菌株のコロニー形態を比較した。
その結果、W−14−1株は、特にシュードモナス アゾトフォルマンス、又はシュードモナス リバネンシスと形態的特徴がよく合致しており、いずれかの種であることが示唆された。
W−14−1株の種を確定するために、W−14−1株、シュードモナス アゾトフォルマンス及びシュードモナス リバネンシスのより詳細な菌学的性質を、後述の所定の方法にしたがって調べ比較した。
【0086】
まず、W−14−1株の菌学的性質は以下のとおりである。グラム陰性の桿菌で芽胞は形成せず、細胞の全長は1.5〜2.5μm、全幅は0.8μm程度で、運動性が認められる。標準寒天培地上で粗面不規則のコロニーを呈し、キングB培地で蛍光性色素を産生する。41℃での生育は認められず、カタラーゼ活性は陽性、OF培地テストは酸化、硝酸塩の還元は陰性、インドール産生は陰性、ウレアーゼ活性は陰性、ゼラチンの分解は陽性、β−ガラクトシダーゼ活性は陰性、β−グルコシダーゼ活性は陰性である。また、LOPAT試験に於いて、レバン産生は陽性、ジャガイモ塊茎腐敗は陰性、タバコ過敏感反応は陰性、オキシダーゼ活性は陽性、アルギニンの分解は陽性である。デンプン資化性は陰性であり、糖、有機酸等の炭素化合物の資化性に関しては、D−グルコースは陽性、L−アラビノースは陽性、D−マンノースは陽性、D−マンニトールは陽性、N−アセチル−D−グルコサミンは陽性、マルトースは陰性、グルコン酸カリウムは陽性、n−カプリン酸は陽性、アジピン酸は陰性、DL−リンゴ酸は陽性、クエン酸ナトリウムは陽性、酢酸フェニルは陰性、シュクロースは陽性、トレハロースは陽性、リビトール(アドニット)は陽性、ソルビトールは陽性、酪酸は陰性、プロピオン酸は陽性、プロピレングリコールは陰性である。これらの結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1の項目のうち、硝酸塩の還元、インドール産生、OF培地テスト、アルギニンの分解、ウレアーゼ活性、ゼラチンの分解、βーガラクトシダ−ゼ活性、β−グルコシダーゼ活性、D−グルコースの資化性、L−アラビノースの資化性、D−マンノースの資化性、D−マンニトールの資化性、N−アセチル−D−グルコサミンの資化性、マルトースの資化性、グルコン酸カリウムの資化性、n−カプリン酸の資化性、アジピン酸の資化性、DL−リンゴ酸の資化性、クエン酸ナトリウムの資化性、酢酸フェニルの資化性については、API20NE(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて、付属のプロトコールにしたがって試験を行った。オキシダーゼ活性はOxidase Reagent(日本ビオメリュー株式会社製)、カタラーゼ活性はID color Catalase(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて試験を行った。また、キングB培地テストに用いたキングB培地については、栄研化学株式会社製のキングB培地を用いて行った。グラム染色については、Color Gram2(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて行った。レバン産生試験については、5%シュクロース加用普通寒天培地の平板に菌株を画線移植し、25℃、3日間培養して、白色の粘性のある大きくドーム状に隆起したコロニーを形成するものを陽性と判断した。
【0089】
ジャガイモ塊茎腐敗試験、タバコ過敏感反応試験、デンプンの資化性試験、及び、糖や有機酸等の炭素化合物の資化性は、公知の方法で測定することができる。例えば、特許文献1に記載されている方法を用いることができる。
【0090】
W−14−1株がシュードモナス アゾトフォルマンス、シュードモナス リバネンシスのいずれであるのかを明らかにするために、公知の標準菌株であるシュードモナス アゾトフォルマンスNBRC12693株、シュードモナス リバネンシス CIP105460株について、表1の項目の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
また、両種の近縁種であるシュードモナス フルオレセンスは、トマトに対して病原性を発揮してトマト茎えそ細菌病を発症させることが知られているが、W−14−1株がトマトに対してそのような病原性を有しているかを調べるために、以下のような試験を行った。
W−14−1株をA600(波長600nmの吸光度)が1.0になるまで液体培地で培養し、その培養液を、トマトの苗の葉柄基部を中心とした主茎と葉柄部分に散布接種した。7日間栽培した後、苗を観察したところ、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。14日間栽培した後、及び21日間栽培した後にも苗を観察したが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。また、W−14−1株の前述の培養液を、トマトの苗に傷をつけた後、その部分に接種して同様の試験を行ったが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。さらに、W−14−1株の前述の培養液を注射器でトマトの苗の内部に注入接種して同様の試験を行ったが、同様に、トマト茎えそ細菌病の病徴は見られなかった。
【0092】
表1の結果から、W−14−1株が、シュードモナス リバネンシス CIP105460株と異なる点は、コロニー側面、周縁、及び表面の形態的特徴、硝酸塩の還元能、ゼラチンの分解力、アルギニン酸の分解力、シュクロースの資化性、プロピオン酸の資化性、及びプロピレングリコールの資化性の有無であった。
一方、W−14−1株が、シュードモナス アゾトフォルマンスNBRC12693株と異なる点は、硝酸塩の還元能力、ゼラチンの分解力、アジピン酸の資化性、プロピレングリコールの資化性の有無のみであった。
以上の結果より、W−14−1株はシュードモナス リバネンシスよりシュードモナス アゾトフォルマンスに相同性が高いため、W−14−1株はシュードモナス アゾトフォルマンスであると同定した。
【0093】
4.菌体懸濁液の調製
300ml容三角フラスコに標準液体培地(酵母エキス0.25%,ペプトン0.5%、グルコース0.1%、pH7.0)150mlを入れ、加熱滅菌した。シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株(NITE BP−02371)の前培養物0.1mlを接種し、往復振盪機中30℃、100rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄し、再度遠心して上清を取り除いて沈殿を水で洗浄した。このようにして、シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株の菌体懸濁液(以下、「W−14−1株の菌体懸濁液」と呼ぶ)を調製した。
【0094】
5.植物病害防除水和剤組成物の製造
W−14−1株の菌体懸濁液を凍結乾燥した。その乾燥物の生菌数は、1.0×10
11cfu/gであった。菌体乾燥物10重量部とポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム9重量部、硫酸カルシウム二水和物81重量部を均一に混合し、水和剤組成物(以下、「W−14−1株の水和剤」と呼ぶ)を得た。水和剤組成物は、シュードモナス アゾトフォルマンス W−14−1株を有効成分とした薬剤である。
【0095】
〔試験例3〕 レタス腐敗病(細菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるレタスに散布処理した。散布処理は、1週間間隔で3回実施した。また、レタス腐敗病の病原菌(シュードモナス チコリ:Pseudomonas cichorii)は、1回目散布処理当日に、その水懸濁液(A600=0.001)を散布接種した。3回目の散布から1週間後に、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式5及び式6に基づいて防除価を算出した。その結果防除価は65.0だった。
【0096】
基準0: 発病なし
基準1: 外葉の一部に発病が認められる
基準2: 外葉と結球葉の一部に発病が認められる
基準3: 結球葉の大部分に発病、もしくはそれ以上の被害が認められる
【0097】
(式5)
発病度=((1×n1+2×n2+3×n3)/(3×全調査株数))×100
n1〜n3は、基準1〜3のそれぞれに対応する株数
(式6)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0098】
〔試験例4〕 カンキツかいよう病(細菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液をネーブル樹全体に散布処理した。散布処理は展葉初期、及びその後2週間ごとに2回、計3回実施した。最終散布から9日後に、以下の基準でネーブル葉上のカンキツかいよう病(病原菌 ザントモナス キャンペストリス:Xanthomonas campestris pv. citri)の発病程度を調査し、以下の式7及び式8に基づいて発病度及び防除価を算出した。その結果防除価は62.5だった。
【0099】
基準0: 病斑なし
基準1: 病斑数が1〜3個
基準3: 病斑数が4〜10個
基準5: 病斑数が11〜20個
基準7: 病斑数が21個以上
【0100】
(式7)
発病度=((1×n1+3×n3+5×n5+7×n7)/(7×全調査葉数))×100
n1、n3、n5、及びn7は、基準1、3、5、及び7のそれぞれに対応する葉数
(式8)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0101】
〔試験例5〕 レタス斑点細菌病(細菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。散布処理は、1週間間隔で4回実施した。また、レタス斑点細菌病の病原菌(ザントモナス キャンペストリス:Xanthomonas campestris pv. vitians)は、1回目散布処理当日に、その水懸濁液(A600=0.001)を散布接種した。4回目の散布から1週間後に、以下の基準で発病の程度を調査し、以下の式9及び式10に基づいて発病度及び防除価を算出した。その結果防除価は87.9だった。
【0102】
基準0: 発病なし
基準1: 外葉の一部に発病
基準2: 外葉の大部分に発病
基準3: 外葉及び内葉に発病
基準4: 結球葉に発病
【0103】
(式9)
発病度=((1×n1+2×n2+3×n3+4×n4)/(4×全調査株数))×100
n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する株数
(式10)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0104】
〔試験例6〕 トマト灰色かび病(糸状菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるトマトに散布処理した。散布処理は、1週間間隔で4回実施した。また、トマト灰色かび病の病原菌(ボトリチス シネレア:Botrytis cinerea)は、1回目散布処理当日に、その胞子を形成させたPDA平板を圃場内に配置した。4回目の散布から6日後の最終調査を含めて5回の調査を実施し、全幼果について発病の有無を調査した。また、最終調査時に全着果数を計数し、以下の式11及び式12に基づいて発病果率及び防除価を算出した。その結果防除価は89.9だった。
【0105】
(式11)
発病果率=(発病果数/全調査果数)×100
(式12)
防除価=(1−(処理区の発病果率/無処理区の発病果率))×100
【0106】
〔試験例7〕 ナシ黒斑病(糸状菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるナシ樹全体に散布処理した。散布処理は、開花始期及び落花直後期の2回実施した。2回目の散布から2日後に、ナシ葉上のナシ黒斑病(病原菌 アルタナリア キクチアナ:Alternaria kikuchiana)の発病有無を調査し、以下の式13及び式14に基づいて発病葉率及び防除価を算出した。その結果防除価は60.5だった。
【0107】
(式13)
発病葉率=(発病葉数/全調査葉数)×100
(式14)
防除価=(1−(処理区の発病葉率/無処理区の発病葉率))×100
【0108】
〔試験例8〕 カンキツ灰色かび病(糸状菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるミカン樹全体に散布処理した。散布処理は、展葉初期及び開花始期の2回実施した。また、カンキツ灰色かび病の病原菌(ボトリチス シネレア:Botrytis cinerea)は、7分咲き期にその胞子を形成させたカボチャ果実を圃場内に配置した。落弁期に、ミカン花上の発病の有無を調査し、以下の式15及び式16に基づいて発病花率及び防除価を算出した。その結果防除価は70.3だった。
【0109】
(式15)
発病花率=(発病花数/全調査花数)×100
(式16)
防除価=(1−(処理区の発病花率/無処理区の発病花率))×100
【0110】
〔試験例9〕 カンキツそうか病(糸状菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるミカン樹全体に散布処理した。散布処理は、展葉初期、開花始期及び落弁期の3回実施した。3回目の散布から13日後に、以下の基準でミカン葉上のカンキツそうか病(病原菌 エルシノエ ファウセッティ:Elsinoe fawcettii)の発病程度を調査
し、以下の式17及び式18に基づいて発病度及び防除価を算出した。その結果防除価は68.8だった。
【0111】
基準0: 病斑なし
基準1: 病斑数が1〜5個
基準3: 病斑数が6〜20個
基準5: 病斑数が21〜50個
基準7: 病斑数が51個以上
【0112】
(式17)
発病度=((1×n1+3×n3+5×n5+7×n7)/(7×全調査葉数))×100
n1〜n7は、基準1〜7のそれぞれに対応する葉数
(式18)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0113】
〔試験例10〕 バレイショ夏疫病(糸状菌病害)防除効果試験(圃場試験)
W−14−1株の水和剤を水で1000倍に希釈して処理液を調製した。処理液を圃場に定植してあるバレイショに散布処理した。10日間隔で2回実施した。2回目の散布から4日後に、以下の基準でバレイショ葉上のバレイショ夏疫病(病原菌 アルタナリア ソラニ: Alternaria solani)発病の程度を調査し、以下の式19及び式20に基づいて発病度及び防除価を算出した。その結果防除価は52.2だった。
【0114】
基準0: 葉に病斑を認めない
基準1: 病斑面積が葉面積の5%未満
基準2: 病斑面積が葉面積の5〜25%未満
基準3: 病斑面積が葉面積の25〜50%未満
基準4: 病斑面積が葉面積の50%以上
【0115】
(式19)
発病度=((1×n1+2×n2+3×n3+4×n4)/(4×全調査株数))×100
n1〜n4は、基準1〜4のそれぞれに対応する株数
(式20)
防除価=(1−(処理区の発病度/無処理区の発病度))×100
【0116】
以上の通り、本微生物は、細菌病害として、少なくとも、レタス軟腐病、ハクサイ軟腐病、レタス腐敗病、カンキツかいよう病、レタス斑点細菌病に効果があり、糸状菌病害として、少なくとも、トマト灰色かび病、ナシ黒斑病、カンキツ灰色かび病、カンキツそうか病、及びバレイショ夏疫病に効果があることが判明した。このように細菌病害と糸状菌病害の両方に高い防除効果があることが判明した。
また、このように細菌病害と糸状菌病害の両方に防除効果があれば、バレイショでは、軟腐病(細菌)及び夏疫病(糸状菌)、カンキツでは、かいよう病(細菌)及び灰色かび病(糸状菌)、又は、かいよう病(細菌)及びそうか病(糸状菌)、レタスでは、軟腐病(細菌)及び灰色かび病(糸状菌)、腐敗病(細菌)及び灰色かび病(糸状菌)、又は、斑点細菌病(細菌)及び灰色かび病(糸状菌)に本微生物のみで同時に効果を発揮することが可能となることが判明した。