特許第6748764号(P6748764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6748764
(24)【登録日】2020年8月12日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】マニホールド及びセルスタック装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20200824BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20200824BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200824BHJP
【FI】
   H01M8/2484
   H01M8/02
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102C
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-111362(P2019-111362)
(22)【出願日】2019年6月14日
(65)【公開番号】特開2020-92078(P2020-92078A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2019年6月14日
【審判番号】不服2020-773(P2020-773/J1)
【審判請求日】2020年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2018-219504(P2018-219504)
(32)【優先日】2018年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆平
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/079665(WO,A1)
【文献】 特表2007−522607(JP,A)
【文献】 特開2017−17023(JP,A)
【文献】 特開2016−110781(JP,A)
【文献】 特開2003−59524(JP,A)
【文献】 特開平2−192664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて配置される複数の燃料電池セルにガスを供給するためのマニホールドであって、
側壁と、
前記燃料電池セルが取り付けられるように構成された天壁と、
前記天壁に向かって開口するガス供給口を有する底壁と、
前記側壁、前記天壁及び前記底壁によって画定されるガス供給室内に配置される気流変更部材と、
を備え、
前記ガス供給室は、前記燃料電池セルの配列方向において、中心より第1端部側の第1領域と、前記中心より第2端部側の第2領域と、を有し、
前記気流変更部材は、前記ガス供給口から供給される前記ガスを、前記ガス供給室内に供給する供給部を有し、
前記供給部は、前記第1領域に位置し、かつ、前記側壁のうち前記第1領域を画定する第1側壁部に向かうように、前記ガスを供給し、
前記ガス供給口は、前記第1領域に開口しており、
前記気流変更部材は、前記ガス供給口を覆い、
前記供給部は、前記第1側壁部のみに向かって開口する開口部であり、
平面視において、前記ガス供給口の断面積に対する、前記気流変更部材の内部空間の断面積の比は、2.26以上であり、
前記マニホールドの内部空間の高さに対する、前記気流変更部材の内部空間の高さの比は、0.78以下である、
マニホールド。
【請求項2】
前記気流変更部材は、前記底壁から前記天壁に向けて延びる側部を有し、
前記開口部は、前記側部に形成されている、
請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記気流変更部材は、外周部に形成され、かつ前記底壁と接続されるフランジを有する、
請求項1又は請求項2に記載のマニホールド。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載のマニホールドと、
前記マニホールドから延びる燃料電池セルと、
を備える、セルスタック装置。
【請求項5】
前記マニホールドは、ガス回収室をさらに含み、
前記燃料電池セルは、
前記ガス供給室と連通し、前記燃料電池セルの基端部から先端部に延びる少なくとも1つの第1ガス流路と、
前記ガス回収室と連通し、前記燃料電池セルの基端部から先端部に延びて前記燃料電池セルの先端部において前記第1ガス流路と連通する、少なくとも1つの第2ガス流路と、を有する、
請求項に記載のセルスタック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールド及びセルスタック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルスタック装置は、マニホールドと、複数の燃料電池セルと、ガス供給管とを備えている。マニホールドは、各燃料電池セルにガスを供給している(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1のマニホールドは、ガス供給管の他端と接合されている。ガス供給管の他端は、マニホールドにガスを供給する。マニホールドは、ガス供給管の他端と離隔して、かつ他端を覆う整流板を有している。整流板は、開口部を有している。開口部は、複数の燃料電池セルのうち整流板から離れた端部の燃料電池セルに向かってガスが流出するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/079665号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の燃料電池セルのうち整流板から離れた端部の燃料電池セルに向かって、整流板の開口部からガスが流出する。この場合、流速の大きいガスが供給される燃料電池セルと、流速の小さいガスが供給される燃料電池セルとが存在する。このため、各燃料電池セルに対するガス供給量の差が大きいという問題があった。そこで本発明は、燃料電池セルへのガス供給量の差を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係るマニホールドは、互いに間隔をあけて配置される複数の燃料電池セルにガスを供給するためのマニホールドである。マニホールドは、側壁、天壁、底壁、及び気流変更部材を備える。天壁は、燃料電池セルが取り付けられるように構成されている。底壁は、天壁に向かって開口するガス供給口を有する。気流変更部材は、側壁、天壁及び底壁によって画定されるガス供給室内に配置される。ガス供給室は、燃料電池セルの配列方向において、中心より第1端部側の第1領域、及び中心より第2端部側の第2領域を有する。気流変更部材は、ガス供給口から供給されるガスを、ガス供給室内に供給する供給部を有する。供給部は、第1領域に位置する。供給部は、側壁のうち第1領域を画定する第1側壁部に向かうように、ガスを供給する。
【0007】
この構成によれば、気流変更部材によって、ガス供給口から供給されるガスの流れる方向を、供給部に近い第1領域の第1側壁部に向かうように変更できる。このため、ガス供給室内に供給されたガスは、供給部近傍の側壁に衝突するので、その流速を低減させる。流速を低減したガスが、各燃料電池セルに供給される。この結果、燃料電池セルへのガス供給量の差を低減することができる。
【0008】
好ましくは、気流変更部材は、ガス供給口を覆う。また供給部は、第1側壁部に向かって開口する開口部である。
【0009】
好ましくは、気流変更部材は、底壁から天壁に向けて延びる側部を有する。開口部は、側部に形成されている。
【0010】
好ましくは、平面視において、ガス供給口の断面積に対する、気流変更部材の内部空間の断面積の比は、2.26以上である。
【0011】
好ましくは、マニホールドの内部空間の高さに対する、気流変更部材の内部空間の高さの比は、0.78以下である。
【0012】
好ましくは、気流変更部材は、フランジを有する。フランジは、外周部に形成され、かつ底壁と接続される。
【0013】
本発明のある側面に係るセルスタック装置は、マニホールド、及び燃料電池セルを備える。燃料電池セルは、マニホールドから延びる。
【0014】
好ましくは、マニホールドは、ガス回収室をさらに含む。燃料電池セルは、少なくとも1つの第1ガス流路及び第2ガス流路を有する。第1ガス流路は、ガス供給室と連通し、燃料電池セルの基端部から先端部に延びる。第2ガス流路は、ガス回収室と連通し、燃料電池セルの基端部から先端部に延びて燃料電池セルの先端部において第1ガス流路と連通する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料電池セルへのガス供給量の差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】セルスタック装置の斜視図。
図2】マニホールドの断面図。
図3】マニホールドの上面図。
図4】セルスタック装置の断面図。
図5】気流変更部材の斜視図。
図6】燃料電池セルの斜視図。
図7】燃料電池セルの断面図。
図8】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
図9】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
図10】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
図11】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
図12】変形例に係るマニホールドの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、燃料電池セルの一例として固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)を用いて説明する。図1はセルスタック装置を示す斜視図、図2はマニホールドの断面図である。なお、図1及び図2において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0018】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2と、複数の燃料電池セル10と、ガス供給管とを備えている。
【0019】
[マニホールド]
図2に示すように、マニホールド2は、燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。マニホールド2は、ガス供給室21とガス回収室22とを有している。ガス供給室21には、燃料処理器から燃料ガスが供給される。ガス回収室22は、各燃料電池セル10にて使用された燃料ガスを回収する。
【0020】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。マニホールド本体部23は、天壁231、側壁232及び底壁233を有している。天壁231、側壁232及び底壁233は、マニホールド本体部23の内部空間を画定している。
【0021】
底壁233は、平面視(x軸方向視)において、矩形状である。側壁232は、第1側壁232a、第2側壁232b、第3側壁232c、及び第4側壁232dを有している。第1〜第4側壁232a〜232dは、底壁233の周縁部から上方に延びている。第1側壁232a及び第3側壁232cは、マニホールド本体部23の内部空間の奥行き方向(z軸方向)において、互いに対向するように配置されている。また、第2側壁232b及び第4側壁232dは、マニホールド本体部23の内部空間の幅方向(y軸方向)において、互いに対向するように配置されている。
【0022】
図3及び図4に示すように、天壁231は、側壁232の上面を塞ぐように、側壁232上に配置されている。天壁231は、各燃料電池セル10が取り付けられるように構成されている。詳細には、図3に示すように、マニホールド本体部23の天壁231には、複数の貫通孔231aが形成されている。各貫通孔231aは、マニホールド本体部23の長さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。各貫通孔231aは、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)に延びている。各貫通孔231aは、ガス供給室21及びガス回収室22と連通している。なお、各貫通孔231aは、ガス供給室21と連通する部分とガス回収室22と連通する部分とに分かれていてもよい。
【0023】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っている必要は無く、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。ガス供給室21及びガス回収室22は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)に沿って延びる。
【0024】
図2に示すように、ガス供給室21は、第1領域R1及び第2領域R2を有している。第1領域R1は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、中心Cより第1端部201側の領域である。第2領域R2は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、中心Cより第2端部202側の領域である。第1端部201及び第2端部202は、配列方向において、互いに反対側に位置する。このように、ガス供給室21は、配列方向の中心Cを基準として、配列方向に沿って、第1領域R1と第2領域R2との2つに区画される。
【0025】
本実施形態では、ガス供給室21は、底壁233、第1側壁232a、第2側壁232b、第3側壁232c、仕切板24及び天壁231によって画定されている。ガス供給室21を画定する側壁は、第1側壁232a、第2側壁232b、第3側壁232c、及び仕切板24である。側壁のうち第1領域R1を画定する第1側壁部は、第1側壁232aと、第2側壁232bにおける第1端部201側の部分と、仕切板24における第1端部201側の部分とである。側壁のうち第2領域R2を画定する第2側壁部は、第2側壁232bにおける第2端部202側の部分と、仕切板24における第2端部202側の部分と、第3側壁232cとである。
【0026】
ガス回収室22は、底壁233、第1側壁232a、第3側壁232c、第4側壁232d、仕切板24及び天壁231によって画定されている。ガス回収室22を画定する側壁は、第1側壁232a、第3側壁232c、第4側壁232d、及び仕切板24である。
【0027】
図2に示すように、ガス供給室21の底面には、ガス供給口211が形成されている。また、ガス回収室22の底面には、ガス排出口221が形成されている。ガス供給口211は、第1領域R1に開口している。すなわち、ガス供給口211は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第1端部201側に配置されている。なお、本実施形態のガス供給口211は、第1側壁232aと、間隔を隔てて設けられている。ガス供給口211は、第1側壁232aとは、例えば、6mm以上離隔している。
【0028】
一方、ガス排出口221は、例えば、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第2端部202側に配置されている。ガス供給口211及びガス排出口221は、天壁231に向かって開口している。ガス供給口211及びガス排出口221は、円形状に形成されている。
【0029】
ガス供給口211が形成された底壁233には、燃料ガス供給管P1が取り付けられる。例えば、図4に示すように、燃料ガス供給管P1は、先端面が底壁233の内側面と同一平面上に位置するように取り付けられている。そして、燃料ガス供給管P1の流路とガス供給口211とが連通している。ガス供給口211から、マニホールド2の内部空間にガスが導入される。
【0030】
ガス供給口211を介してマニホールド2の内部空間に供給するガスの流速は、ガス供給口211において、0.1〜45m/s程度とすることが好ましい。なお、この流速は、燃料電池セル10の発電時、0℃・1atm換算における流速である。流速は、ガス供給口211に導入される流量とガス供給口211の断面積とから算出することができる。
【0031】
図4に示すように、マニホールド2は、気流変更部材70をさらに備えている。気流変更部材70は、ガス供給室21内に配置されている。気流変更部材70は、ガス供給口211から供給されるガスを、ガス供給室21内に供給する図5に示す供給部71を有している。供給部71は、図2に示す第1領域R1に位置している。供給部71は、側壁のうち第1領域R1を画定する第1側壁部に向かうように、ガスを供給する。このように、気流変更部材70は、側壁のうち第1領域R1を画定する第1側壁部に向かうように、ガス供給口211から導入されるガスの流れを変更する。すなわち、気流変更部材70は、側壁のうち第2領域R2を画定する第2側壁部に向けて、ガス供給口211から導入されるガスが流れないように構成されている。詳細には、気流変更部材70によって、燃料ガス供給管P1からガス供給口211を介してガス供給室21に導入された燃料ガスは、図2に示す第1領域R1を画定する第1側壁部に向かって流れる。気流変更部材70は、供給部71に最も近い第1領域R1を画定する第1側壁232aに向かうようにガスの流れを変更することが好ましい。
【0032】
図4及び図5に示すように、気流変更部材70は、ガス供給口211を覆う。気流変更部材70は、ガス供給口211の一部を覆ってもよいが、全体を覆うことが好ましい。図5に示すように、気流変更部材70は、第1側壁部に向かって開口する供給部71を有する。供給部71と第1側壁部との最短距離は、供給部71と中心Cとの距離よりも短いことが好ましい。供給部71は、第1領域R1を画定する側壁のうち、第1側壁232aが最も近い。このため、供給部71は、第1側壁232aに向けて開口する。詳細には、図5に示すように、気流変更部材70は、下方及び側方に開口を有する箱状部材である。気流変更部材70は、マニホールド2の底壁233から天壁231に向けて延びる側部72を有している。この側部72に、供給部71が設けられている。
【0033】
本実施形態の気流変更部材70は、側部72、及び上部73を有する。上部73は、側部72の上端と連なる。側部72は、三方が閉じたコ字状である。側部72及び上部73は、第1側壁部に向けて延びる。側部72は、ガス供給口211を囲む。側部72において開いた一方は、第1側壁部に向かって開口する供給部71を構成する。供給部71は、側部72及び上部73で形成される気流変更部材70の内部から、気流変更部材70の外部であるガス供給室21にガスを排出する。側部72は、溶接、接合材などによって、底壁233に固定されている。
【0034】
気流変更部材70は、側部72及び上部73によって気流変更部材70の内部空間を画定する。気流変更部材70の内部空間には、ガス供給口211から供給されるガスが流れる。平面視(x軸方向視)において、ガス供給口211の断面積に対する、気流変更部材70の内部空間の断面積の比(気流変更部材70の断面積/ガス供給口の断面積)は、2.26以上であることが好ましい。面積の比が2.26以上の場合、ガス供給口211から供給される燃料ガスが第1ガス流路43に直接流れることを効果的に抑制できる。面積の比(気流変更部材70の断面積/ガス供給口の断面積)は、大きいほど好ましいが、面積の比の上限値は、例えば48である。
【0035】
なお、本実施形態の気流変更部材70の平面視における内部空間の断面積は、平面視における上部73の内壁の面積である。上記面積の比は、気流変更部材70がガス供給口211の全体を覆うように配置された状態での値である。
【0036】
図4に示すように、マニホールド2の内部空間の高さH1に対する、気流変更部材70の内部空間の高さH2の比(気流変更部材70の高さ/マニホールドの高さ)は、0.78以下であることが好ましい。高さの比が0.78以下の場合、ガス供給口211から供給される燃料ガスが第1ガス流路43に直接流れることを効果的に抑制できる。高さの比の下限値は、例えば0.08である。
【0037】
なお、高さH1、H2は、マニホールド2の底壁233から天壁231に向かう方向の距離である。本実施形態の気流変更部材70の内部空間の高さH2は、底壁233の上面から気流変更部材70の上部73の内壁までの距離である。
【0038】
気流変更部材70を構成する材料は特に限定されないが、例えば気孔率が10%以下の緻密体である。具体的には、気流変更部材70は、金属などによって構成することができる。
【0039】
ガス供給口211から気流変更部材70内に導入されたガスは、気流変更部材70によって、第1側壁部に向かうように流れる方向を変更する。このため、供給部71からガス供給室21内に供給されたガスは、第1側壁部に衝突する。第1側壁部に衝突したガスは、その流速を低減させる。流速が低減したガスは、各燃料電池セルの第1ガス流路43に到達する。すなわち、ガス供給室21に供給されたガスが第1側壁部に衝突した結果、各第1ガス流路43に供給されるガスの流速のばらつきが抑制される。したがって、各第1ガス流路43に供給されるガス供給量の差を低減することができる。
【0040】
[燃料電池セル]
図4は、セルスタック装置の断面図を示している。なお、セルスタック装置は、複数の燃料電池セル10とマニホールド2と燃料ガス供給管P1とオフガス供給管P2とから構成されている。図4に示すように、燃料電池セル10は、マニホールド2から上方に延びている。燃料電池セル10は、基端部101がマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各燃料電池セル10の基端部101を支持している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端部101は下端部を意味し、燃料電池セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0041】
図1に示すように、各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように並べられている。また、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向(z軸方向)に沿って間隔をあけて並べられている。すなわち、燃料電池セル10の配列方向は、マニホールド2の長さ方向に沿っている。なお、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0042】
図4に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4と、複数の発電素子部5と、連通部材3と、を有している。図6に示すように、各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0043】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上下方向に延びている。詳細には、支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、基端部41と先端部42とを有している。基端部41及び先端部42は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部41は下端部を意味し、支持基板4の先端部42は上端部を意味する。
【0044】
支持基板4の基端部41は、マニホールド2に取り付けられる。例えば、支持基板4の基端部41は、接合材などによってマニホールド2の天壁231に取り付けられる。詳細には、支持基板4の基端部41は、天壁231に形成された貫通孔231aに挿入されている。なお、支持基板4の基端部41は、貫通孔231aに挿入されていなくてもよい。このように支持基板4の基端部41がマニホールド2に取り付けられることによって、支持基板4の基端部41は、ガス供給室21及びガス回収室22と連結している。
【0045】
支持基板4は、複数の第1ガス流路43と、複数の第2ガス流路44とを有している。第1ガス流路43は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第1ガス流路43は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第1ガス流路43と、燃料電池セル10とは、同じ方向に延びる。第1ガス流路43は、支持基板4を貫通している。各第1ガス流路43は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1ガス流路43は、等間隔に配置されていることが好ましい。支持基板4は、長さ方向(x軸方向)よりも幅方向(y軸方向)の寸法の方が長くてもよい。
【0046】
第1ガス流路43は、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第1ガス流路43は、基端部101側において、ガス供給室21と連通している。
【0047】
第2ガス流路44は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第2ガス流路44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第2ガス流路44は、第1ガス流路43と実質的に平行に延びている。
【0048】
第2ガス流路44は、支持基板4を貫通している。各第2ガス流路44は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第2ガス流路44は、等間隔に配置されていることが好ましい。
【0049】
第2ガス流路44は、燃料電池セル10の先端部102から基端部101に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第2ガス流路44は、基端部101側において、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0050】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1よりも大きい。また、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第2ガス流路44のピッチp2よりも大きい。
【0051】
第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、燃料電池セル10の先端部102側において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路43と、第2ガス流路44とが、連通部材3の連通流路30を介して連通している。
【0052】
第1ガス流路43及び第2ガス流路44は、第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失が第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失よりも小さくなるように構成されている。このような構成として、例えば、各第1ガス流路43の流路断面積は、各第2ガス流路44の流路断面積よりも大きい。なお、第1ガス流路43及び第2ガス流路44は、第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失が第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失よりも大きくなるように構成されてもよい。
【0053】
図6に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。図1に示すように、各支持基板4は、第1主面45と第2主面46とが対向するように配置されている。
【0054】
図6に示すように、支持基板4は、発電素子部5を支持している。支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0055】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1ガス流路43及び第2ガス流路44から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7と、インターコネクタ91とによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0056】
[発電素子部]
複数の発電素子部5が、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、基端部41から先端部42に向かって互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に沿って、間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、後述する電気的接続部9によって、互いに直列に接続されている。
【0057】
発電素子部5は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に延びている。発電素子部5は、支持基板4の幅方向において第1部分51と第2部分52とに区画される。なお、第1部分51と第2部分52との厳密な境界はない。例えば、燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、支持基板4の長さ方向視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界と重複する部分を、第1部分51と第2部分52との境界部とすることができる。
【0058】
支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第1ガス流路43は、発電素子部5の第1部分51と重複している。また、支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第2ガス流路44は、発電素子部5の第2部分52と重複している。なお、複数の第1ガス流路43のうち、一部の第1ガス流路43が第1部分51と重複していなくてもよい。同様に、複数の第2ガス流路44のうち、一部の第2ガス流路44が第2部分52と重複していなくてもよい。
【0059】
図7は、第1ガス流路43に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路44に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路44の流路断面積が異なる以外は、図7と同じである。
【0060】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0061】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0062】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0063】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0064】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0065】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0066】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0067】
空気極8は、反応防止膜11上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0068】
[電気的接続部]
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ91は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0069】
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。例えば、図7の左側に配置された発電素子部5の空気極8と、図7の右側に配置された発電素子部5のインターコネクタ91とを電気的に接続するように、空気極集電膜92が配置されている。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0070】
空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0071】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の先端部42に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路43と第2ガス流路44とを連通させる連通流路30を有している。詳細には、連通流路30は、各第1ガス流路43と各第2ガス流路44とを連通する。連通流路30は、各第1ガス流路43から各第2ガス流路44まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。連通流路30の数は、第1ガス流路43の数よりも少ない。本実施形態では、一本の連通流路30のみによって、複数の第1ガス流路43と複数の第2ガス流路44とが連通されている。
【0072】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0073】
[燃料ガス供給管]
図4に示すように、燃料ガス供給管P1は、マニホールド2の底壁233に設けられたガス供給口211に連結されている。燃料ガス供給管P1は、溶接、接合材などによって、底壁233に固定されている。そして、燃料ガス供給管P1のガス流路と、マニホールド2のガス供給室21とが連通している。燃料ガス供給管P1は、ガス供給室21に燃料ガスを供給する。
【0074】
燃料ガス供給管P1は、第1ガス流路43の延びる方向と同じ方向に延びる。なお、燃料ガス供給管P1の少なくとも一部は、第1ガス流路43の延びる方向と交差する方向に延びてもよい。燃料ガス供給管P1の一端部は、改質器などの燃料処理器(図示せず)と連結される。燃料処理器は、マニホールド2のガス供給室21に供給される燃料ガスを生成する。燃料ガス供給管P1の他端部は、ガス供給口211と連結される。
【0075】
[オフガス供給管]
オフガス供給管P2は、マニホールド2の底壁233に設けられたガス排出口221に連結されている。オフガス供給管P2は、溶接、接合材などによって、底壁233に固定されている。そして、オフガス供給管P2の流路と、マニホールド2のガス回収室22とが連通している。オフガス供給管P2は、ガス回収室22からのオフガスを排出する。
【0076】
オフガス供給管P2は、第2ガス流路44の延びる方向と同じ方向に延びる。なお、オフガス供給管P2の少なくとも一部は、第2ガス流路44の延びる方向と交差する方向に延びてもよい。オフガス供給管P2の一端部は、燃料処理器(図示せず)と連結される。燃料処理器は、オフガスを燃焼する燃焼部を有している。オフガス供給管P2の他端部は、ガス排出口221と連結される。
【0077】
[発電方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、燃料処理器によって生成された燃料ガスをマニホールド2のガス供給室21に供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O2− …(1)
+O2−→HO+2e …(2)
【0078】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路43内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(2)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路43を出て連通部材3の連通流路30を介して第2ガス流路44へ供給される。そして、第2ガス流路44へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(2)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路44を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0079】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0080】
変形例1
上記実施形態では、ガス供給室21に燃料ガスが供給されるが、空気などの酸素を含むガスが供給されてもよい。
【0081】
変形例2
上記実施形態では、気流変更部材70の側部72が底壁233に固定されているが、これに限定されない。例えば、図8に示すように、気流変更部材70は、外周部に形成されたフランジ74をさらに有してもよい。フランジ74は、側部72の下端部から外方に延びている。フランジ74は、底壁233の内側面と平行に延びる。フランジ74は、底壁233と接続されている。フランジ74と底壁233との接続方法は限定されず、溶接、接合材などを採用できる。
【0082】
変形例3
上記実施形態では、気流変更部材70は、側部72及び上部73を有する箱状であったが、これに限定されない。例えば、図9に示すように、気流変更部材70は、半球体状であってもよい。
【0083】
変形例4
上記実施形態では、マニホールド2の底壁233に、ガス排出口221が形成されているが、ガス排出口221の形成位置はこれに限定されない。例えば、ガス排出口221は、マニホールド2の側壁232に形成されていてもよいし、マニホールド2の天壁231に形成されていてもよい。
【0084】
変形例5
上記実施形態では、燃料ガス供給管P1の先端面は底壁233の内側面と同一平面上に位置するように取り付けられているが、これに限定されない。例えば、燃料ガス供給管P1の先端面は底壁233の外側面と同一平面上に位置するように取り付けられてもよい。また、燃料ガス供給管P1の先端面は、ガス供給室21の内部空間に突出してもよい。
【0085】
変形例6
上記実施形態では、第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、連通部材3が有する連通流路30によって連通されていたが、この構成に限定されない。例えば、図10に示すように、支持基板4が、内部に連通流路30を有していてもよい。この場合、セルスタック装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この支持基板4内に形成された連通流路30によって、第1ガス流路43と第2ガス流路44とが連通されている。
【0086】
変形例7
図11に示すように、支持基板4は、第1支持基板4aと第2支持基板4bとに分かれていてもよい。この場合、第1支持基板4aに第1ガス流路43が形成され、第2支持基板4bに第2ガス流路44が形成される。
【0087】
変形例8
上記実施形態では、支持基板4は、複数の第1ガス流路43を有しているが、1つの第1ガス流路43のみを有していてもよい。同様に、支持基板4は、複数の第2ガス流路44を有しているが、1つの第2ガス流路44のみを有していてもよい。
【0088】
変形例9
上記実施形態のマニホールド2では、1つのマニホールド本体部23を仕切板24で仕切ることによって、ガス供給室21とガス回収室22とを画定しているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。例えば、2つのマニホールド本体部23によってマニホールド2を構成することもできる。この場合、1つのマニホールド本体部23がガス供給室21を有し、別のマニホールド本体部23がガス回収室22を有している。また、ガス回収室22は、省略されてもよい。
【0089】
変形例10
上記実施形態では、マニホールド2のガス供給口211が第1領域R1に形成されているが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態では、ガス供給口211が第1領域R1に位置し、気流変更部材70は、ガス供給口211が位置する第1領域R1を画定する第1側壁部に向かうように、ガスの流れを変更しているが、これに限定されない。例えば、ガス供給口211の一部または全部が第2領域R2に位置してもよい。なお、ガス供給口211は、ガス供給室21の配列方向の中心Cに位置してもよい。ガス供給口211の位置によらず、気流変更部材70の供給部71は、第1領域R1に位置する。そして、気流変更部材70は、供給部71が位置する第1領域R1を画定する第1側壁部に向かうように、ガスの流れを変更する。供給部71の位置は、例えば側部72を第1側壁部に向けて延在する形状にすることによって、任意に調整できる。一例として、ガス供給口211は中心Cに位置し、側部72及び上部73は第1側壁232aに向けて配列方向(z軸方向)に延在する形状であり、供給部71は第1側壁232aに向かって開口する。
【0090】
変形例11
図2のガス供給口211は、複数の燃料電池セル10のうち、配列方向(z軸方向)において第1端部201側に位置する燃料電池セル10(図12の第1端部セル10a)よりも、第1端部201側に形成されている。本変形例では、図12に示すように、ガス供給口211は、配列方向において第1端部セル10aよりも、第2端部202側に形成されている。そして、気流変更部材70の供給部71は、第1端部セル10aよりも第1端部201側に位置する。
【0091】
変形例12
上記実施形態では、第1〜第4側壁232a〜232dは底壁233から略垂直に上方に延びているが、本発明のマニホールドは、これに限定されない。例えば、第1〜第4側壁232a〜232dの少なくとも1つは、上方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。また、例えば、第1〜第4側壁232a〜232dの少なくとも1つは、下方に向かって外方に広がるように傾斜していてもよい。
【0092】
変形例13
上記実施形態の燃料電池セル10は、各発電素子部5が支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている、いわゆる横縞型の燃料電池セルであるが、燃料電池セル10の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、支持基板4の第1主面45に1つの発電素子部5が支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。この場合、支持基板4の第2主面46に一つの発電素子部5が支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【0093】
変形例14
上記実施形態では、燃料電池セル10は、複数のガス流路を有しているが、これに限定されない。例えば、マニホールド2は、ガス供給室からなり、燃料電池セル10は、1つのガス流路を有してもよい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
(サンプルNo.1〜29)
サンプルNo.1〜29は、図1図3図7及び図12に示すマニホールド2を備えるセルスタック装置100を製造した。詳細には、各サンプルについて、マニホールド本体部23を、プレス加工によって、直方体状の内部空間を有するように作製した。マニホールド本体部23の内部空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切る仕切板24を設けた。図12に示すように、ガス供給口211は、ガス供給室21の底壁233の第1領域R1の中央部に形成した。
【0096】
次に、図5に示す構造の気流変更部材70を、溶接によって底壁233に固定した。各サンプルの気流変更部材70は、ガス供給口211を囲い、かつ第1側壁232aに向かって開口していた。
【0097】
各サンプルのガス供給口211の平面視における断面積と、気流変更部材70の平面視における内部空間の断面積とを、下記の表1に示す。また、各サンプルのマニホールド2の内部空間の高さH1と、気流変更部材70の内部空間の高さH2とを、下記の表1に記載する。
【0098】
次に、ガラス接合材によって、5個の燃料電池セル10をマニホールド2の天壁231に取り付けた。各燃料電池セルの幅方向は、マニホールド2の幅方向と平行であった。各燃料電池セルは、マニホールド2の奥行き方向(z軸方向)において互いに等間隔に設置した。
【0099】
(サンプルNo.30)
サンプルNo.30のマニホールド及びセルスタック装置は、サンプルNo.1〜29と基本的には同様であったが、気流変更部材70を設けない点において異なっていた。
【0100】
(評価方法)
以上のように作製した各サンプルを以下の条件で、燃料利用率により評価した。
・マニホールド2を介して燃料ガスを供給し、各燃料電池セル10の両面に空気を供給する。なお、燃料ガスは62℃加湿水素を使用した。
・温度:750℃
・電流密度:0.003A/mm通電
(なお、電流密度はz軸方向から見た際にxy平面に形成された1つの発電素子部の空気極面積測定結果に対する値とする。)
【0101】
なお、燃料利用率は、供給する燃料ガス量に対する各発電素子部5が発電時消費する燃料ガス合計量の占める割合のことである。各燃料電池セル10は、その長手方向に間隔をあけて配置された5個の発電素子部5を有する。発電素子部5の長手方向の寸法は全て同一とした。表1において、燃料利用率が90%で発電したサンプルを◎、88%で発電したサンプルを○、85%で発電したサンプルを△、80%で発電したサンプルを×とした。
【0102】
【表1】
【0103】
(評価結果)
表1に示すように、気流変更部材70を備えていないサンプルNo.30の燃料利用率に比べて、気流変更部材70を備えるサンプルNo.1〜29の燃料利用率は大きかった。このことから、気流変更部材70によって、各燃料電池セルへの燃料ガスの供給量の差を低減できることが確認できた。
【0104】
また、面積の比が2.26未満で高さの比が0.78を超えるサンプルNo.29の燃料利用率に比べて、面積の比が2.26以上及び高さの比が0.78以下の少なくとも一方を満たすサンプルNo.1〜28の燃料利用率は大きかった。
【0105】
さらに、面積の比が2.26以上または高さの比が0.78以下のサンプルNo.1、4、8、12、19及び23の燃料利用率に比べて、面積の比が2.26以上で高さの比が0.78以下のサンプルNo.2、3、5〜7、9〜11、13〜18、20〜22、24〜28の燃料利用率は大きかった。このことから、面積の比が2.26以上で高さの比が0.78以下にすることによって、各燃料電池セルへの燃料ガスの供給量の差を特に低減できることが確認できた。
【0106】
ここで、本実施例では、ガス供給口211がガス供給室21の第1領域R1の中央部に形成されたマニホールド2について説明したが、本発明者は、ガス供給口211が第1領域R1の他の位置に形成された場合においても、同様の効果があるという知見を有している。
【0107】
また、本実施例では、第1側壁232aにおける第1端部201側の部分に向けて開口する気流変更部材70について説明したが、本発明者は、第2側壁232bにおける第1端部201側の部分、または、仕切板24における第1端部201側の部分に向かって開口する気流変更部材についても、同様の効果があるという知見を有している。
【符号の説明】
【0108】
2 マニホールド
21 ガス供給室
22 ガス回収室
10 燃料電池セル
70 気流変更部材
図1
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