特許第6748880号(P6748880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6748880
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20200824BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B29C45/26
   B22D17/22 B
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-78821(P2019-78821)
(22)【出願日】2019年4月17日
(65)【公開番号】特開2020-55292(P2020-55292A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】107134646
(32)【優先日】2018年10月1日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506255902
【氏名又は名称】中原大學
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】陳 夏宗
(72)【発明者】
【氏名】張 詠翔
(72)【発明者】
【氏名】魏 子翔
(72)【発明者】
【氏名】王 國瑞
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−144939(JP,A)
【文献】 特開昭58−137721(JP,A)
【文献】 特開昭62−204915(JP,A)
【文献】 特開平01−146720(JP,A)
【文献】 特開平07−273051(JP,A)
【文献】 特開昭63−216719(JP,A)
【文献】 特開平07−164496(JP,A)
【文献】 米国特許第06514444(US,B1)
【文献】 米国特許第05741446(US,A)
【文献】 特開2019−181921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
G01J 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠キャビティ(110a)及び内面(111)を有し、前記内面(111)は前記型枠キャビティ(110a)に対向する、型枠(110、110'、110")と、
前記型枠キャビティ(110a)内に材料を射出するように適合された射出デバイス(120)と、
前記型枠(110、110'、110")に全体が組み込まれた温度感知デバイス(130、130')であって、当該温度感知デバイス(130、130')は前記型枠キャビティ(110a)内の材料の温度を感知するように適合され、温度感知デバイス(130、130')及び前記内面(111)はそれらの間に距離(d)を有する、少なくとも1つの温度感知デバイス(130、130')と
を備えることを特徴とする、射出成形装置(100)。
【請求項2】
前記内面(111)は、前記温度感知デバイス(130、130')と前記型枠キャビティ(110a)の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の射出成形装置(100)。
【請求項3】
前記型枠(110、110'、110")は、第1型枠(112、112'、112")及び第2型枠(114)を備え、前記型枠キャビティ(110a)は、前記第1型枠(112、112'、112")と前記第2型枠(114)の間に形成され、前記温度感知デバイス(130、130')は、前記第1型枠(112、112'、112")に配置され、前記内面(111)は、前記第1型枠(112、112'、112")内に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の射出成形装置(100)。
【請求項4】
前記温度感知デバイス(130、130')は、赤外線感知デバイス又は超音波感知デバイスであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の射出成形装置(100)。
【請求項5】
前記型枠(110、110'、110")は、透明部分(112a)を備え、前記透明部分(112a)は、少なくとも前記型枠キャビティ(110a)と前記温度感知デバイス(130、130')の間に配置されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の射出成形装置(100)。
【請求項6】
前記透明部分(112a)の材料は、強化ガラスを備えることを特徴とする、請求項5に記載の射出成形装置(100)。
【請求項7】
前記透明部分(112a)は、前記型枠(110、110'、110")の他の部分に対して並進方向(D1)に移動するように適合されることを特徴とする、請求項5に記載の射出成形装置(100)。
【請求項8】
前記型枠(110、110'、110")は、離型方向(D2)に開放されるように適合され、前記並進方向(D1)は、前記離型方向(D2)に対して垂直であることを特徴とする、請求項7に記載の射出成形装置(100)。
【請求項9】
更に少なくとも1つの圧力感知デバイス(140)を備え、前記圧力感知デバイス(140)は、前記型枠(110、110'、110")に配置され、前記型枠キャビティ(110a)内の材料の圧力を感知するように適合されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の射出成形装置(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの圧力感知デバイス(140)の数は複数であり、前記少なくとも1つの温度感知デバイス(130、130')の数は複数であり、前記圧力感知デバイス(140)は、前記型枠(110、110'、110")内の複数の位置(110a1、110a2、110a3)にそれぞれ対応し、前記型枠(110、110'、110")内の前記位置(110a1、110a2、110a3)に対応する前記材料の圧力をそれぞれ感知し、前記温度感知デバイス(130、130')は前記型枠(110、110'、110")内の前記位置(110a1、110a2、110a3)にそれぞれ対応し、前記型枠(110、110'、110")内の前記位置に対応する前記材料の温度をそれぞれ感知することを特徴とする、請求項9に記載の射出成形装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形装置に関し、特に射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、熱可塑性又は熱硬化性のプラスチックからなる部品を製造する処理である。プラスチックは加熱され、射出成形機のバレル内で流動状態に溶融される。次に、プランジャ又はスクリューからの加圧下で、プラスチックは圧縮され、前方に移動させ、続いてバレルの前端においてノズルを介して、より低い温度を有する閉じた型枠内に非常に高速で射出される。冷却及び硬化の期間の後、型枠は開かれ射出成形製品を獲得する。
【0003】
射出成形処理において、射出圧、成形温度、圧力保持時間、及び環境温度等のファクタは、射出成形製品の品質に影響を及ぼす可能性がある。既存の射出成形機では、射出成形製品の品質は、プラスチックの圧力を感知し、型枠の温度を感知することによって推定できる。温度センサは通常、型枠の内面に配置され、型枠内のプラスチックの温度を感知する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、型枠の内面に配置される温度センサは内面に望ましくない又は不均一な形状をもたらし、射出成形製品の品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本開示は、射出成形製品の品質を改善できる射出成形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の射出成形装置は、型枠、射出デバイス、及び少なくとも1つの温度感知デバイスを含む。型枠は型枠キャビティ及び内面を有し、内面は型枠キャビティに対向する。射出デバイスは、型枠キャビティ内に材料を射出するように適合される。温度感知デバイスは型枠に配置され、型枠キャビティ内の材料の温度を感知するように適合される。温度感知デバイス及び内面は、それらの間にある距離を有する。
【0007】
本開示の一実施形態において、内面は温度感知デバイスと型枠キャビティの間に配置される。
【0008】
本開示の一実施形態において、型枠は第1型枠と第2型枠を含む。型枠キャビティは第1型枠と第2型枠の間に形成される。温度感知デバイスは第1型枠に配置される。内面は第1型枠に形成される。
【0009】
本開示の一実施形態において、温度感知デバイスは赤外線感知デバイス又は超音波感知デバイスである。
【0010】
本開示の一実施形態において、型枠は透明部分を含む。透明部分は、少なくとも型枠キャビティと温度感知デバイスの間に配置される。
【0011】
本開示の一実施形態において、透明部分の材料は強化ガラスを含む。
【0012】
本開示の一実施形態において、透明部分は型枠の他の部分に対して並進方向に移動するように適合される。
【0013】
本開示の一実施形態において、型枠は離型方向に開放されるように適合され、並進方向は離型方向に対して垂直である。
【0014】
本開示の一実施形態において、射出成形装置は少なくとも1つの圧力感知デバイスを更に含む。圧力感知デバイスは型枠に配置され、型枠キャビティ内の材料の圧力を感知するように適合される。
【0015】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つの圧力感知デバイスの数は複数であり、少なくとも1つの温度感知デバイスの数は複数である。圧力感知デバイスは型枠内の複数の位置にそれぞれ対応し、型枠内の位置に対応する材料の圧力をそれぞれ感知する。温度感知デバイスは型枠内の複数の位置にそれぞれ対応し、型枠内の位置に対応する材料の温度をそれぞれ感知する。
【発明の効果】
【0016】
以上に基づいて、本開示の射出成形装置において、温度感知デバイスは型枠に組み込まれ、ある距離だけ型枠の内面から間隙を介している。従って、温度感知デバイスを配置することで型枠の内面に望ましくない又は不均一な形状を提供せず、射出成形製品の品質を改善できる。
【0017】
本開示の上記の特徴及び利点をより理解可能にするために、図面を伴う例が以下のように詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態による射出成形装置の概略図である。
図2図1の射出成形装置のいくつかの部品のブロック図である。
図3】本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略図である。
図4】本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略図である。
図5】本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本開示の一実施形態による射出成形装置の概略図である。図1を参照すると、本実施形態の射出成形装置100は、型枠110、射出デバイス120、及び少なくとも1つの温度感知デバイス130を含む。型枠110は型枠キャビティ110a及び内面111を有し、内面111は型枠キャビティ110aに対向する。射出デバイス120は、型枠キャビティ110a内に材料(プラスチック等)を射出するように適合される。温度感知デバイス130は型枠110に配置され、型枠キャビティ110a内の材料の温度を感知するように適合される。
【0020】
図1に示したように、温度感知デバイス130は型枠110に組み込まれ、型枠110の内面111から距離(d)だけ間隙を介している。従って、温度感知デバイス130を配置することで型枠110の内面111に望ましくない又は不均一な形状を提供せず、射出成形製品の品質を改善できる。
【0021】
詳細には、本実施形態の型枠110は第1型枠112及び第2型枠114を含む。型枠キャビティ110aは、第1型枠112と第2型枠114の間に形成される。温度感知デバイス130は第1型枠112に配置される。内面111は第1型枠112に形成され、内面111は温度感知デバイス130と型枠キャビティ110aの間に配置される。
【0022】
本実施形態において、温度感知デバイス130は、例えば、赤外線感知デバイス(例えば、フォトレジスタ)である。それに応じて、型枠110は透明部分112aを含む。透明部分112aは少なくとも型枠キャビティ110aと温度感知デバイス130の間に配置され(透明部分112aは第1型枠112の全体であると示されている)、赤外線感知デバイスは透明部分112aを介して型枠キャビティ110a内の材料の温度を感知できる。透明部分112aの材料は石英強化ガラス又は他の適切な透明材料であってもよく、それは本開示では限定されない。
【0023】
本実施形態の透明部分は、型枠110の他の部分に対して並進方向(D1)に移動するように適合される。更に、型枠110は離型方向(D2)に開放されるように適合される。並進方向(D1)は離型方向(D2)に対して垂直である。
【0024】
図2は、図1の射出成形装置のいくつかの部品のブロック図である。図1図2を参照すると、本実施形態の射出成形装置100は更に、少なくとも1つの圧力感知デバイス140及び処理ユニット150を含む。圧力感知デバイス140は型枠110の第2型枠114に配置され、型枠キャビティ110a内の材料の圧力を感知するように適合される。処理ユニット150は、例えば、コンピュータ、又は計算機能を備えた他の適切なデバイスである。処理ユニット150は、圧力感知デバイス140及び温度感知デバイス130に結合され、圧力感知デバイス140によって感知される型枠110内の材料の圧力と、温度感知デバイス130によって感知される型枠110内の材料の温度とに従って、型枠110内の材料の実際の比体積を計算するように適合される。本実施形態において、圧力感知デバイス140によって感知される圧力値と、温度感知デバイス130によって感知される温度値は、データ補足カード(DAQカード)内に格納され、次に処理ユニット150に送信できる。
【0025】
更に、本実施形態の射出成形装置100は制御ユニット160を更に含む。制御ユニット160は、例えば、コンピュータ又は制御機能を備えた他の適切なデバイスである。制御ユニット160は処理ユニット150に結合され、処理ユニット150によって計算される型枠110内の材料の実際の温度及び圧力に従って、射出成形装置100の射出成形パラメータを調整するように適合される。射出成形パラメータは、射出デバイス120の射出圧、型枠110の温度、及び射出デバイス120によって実行される圧力保持時間を含んでもよい。本明細書で言及される用語「圧力保持」は、射出デバイス120が、型枠110内に材料を射出した後、適切な射出圧を加え続け、型枠110内の材料が硬化するまで型枠110内に適切な量の材料を提供することを意味し、こうして硬化中の型枠110内の材料の収縮のために、射出成形製品のサイズが期待どおりにならない状況を回避する。
【0026】
図3は、本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略図である。図3に示した実施形態は、温度感知デバイス130の数が複数であり(3個として示される)、圧力感知デバイス140の数が複数である(3個として示される)という点で、図1に示した実施形態とは異なっている。これらの圧力感知デバイス140は型枠110内の位置110a1、110a2及び110a3にそれぞれ対応し、位置110a1、110a2及び110a3に対応する型枠110内の材料の圧力を感知する。同様に、これらの温度感知デバイス130は型枠110内の位置110a1、110a2及び110a3にそれぞれ対応し、位置110a1、110a2及び110a3に対応する型枠110内の材料の温度を感知する。温度感知デバイス130及び圧力感知デバイス140を配置することによって、射出成形パラメータをより包括的に調整できる。
【0027】
具体的には、射出成形パラメータは位置110a3の材料の温度及び圧力に従って期待値まで調整でき、材料が硬化するかどうかはそれに応じて決定される。位置110a3の材料が硬化した後、射出成形パラメータは位置110a2の材料の温度及び圧力に従って期待値まで調整され、材料が硬化するかどうかはそれに応じて決定される。位置110a2の材料が硬化した後、射出成形パラメータは位置110a1の材料の温度及び圧力に従って期待値まで調整され、材料が硬化するかどうかはそれに応じて決定される。型枠110内の異なる位置の材料に対して、射出成形パラメータは上記のように段階的に順次調整される。これは、射出成形製品がこれらの位置の温度及び圧力において一貫しており、更にその品質を改善することを保証する。
【0028】
図4は、本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略部分図である。図4に示した実施形態は、型枠110’の第1型枠112’において、透明部分112aが型枠キャビティ110aと温度感知デバイス130の間にのみ配置され、第1型枠112’の他の部分は不透明であるという点で、図3に示した実施形態と異なっている。この設計下では、第1型枠112’の透明部分112aは、第1型枠112’の他の部分に対して完全に固定されるのではなく、型枠110’の他の部分に対して並進方向(D1)に移動可能であるように構成でき、並進方向(D1)は型枠110’の離型方向(D2)に対して垂直である。従って、離型中、並進方向(D1)に透明部分112aを移動させることによって、離型方向(D2)での製品と型枠110’の間の干渉によって離型が困難になることを解決できる。
【0029】
図5は、本開示の別の実施形態による射出成形装置の概略図である。図5に示した実施形態は、温度感知デバイス130’が、例えば、透明媒体を介することなく感知を実行する超音波感知デバイスであるという点で、図3に示した実施形態とは異なっている。それに応じて、型枠110”の第1型枠112”は透明部分を備えるようには設計されず、温度感知デバイス130’は、温度感知デバイス130’と、第1型枠112”の内面111との間の不透明媒体を介して、型枠キャビティ110a内の材料上で超音波温度感知を実行できる。
【0030】
つまり、本開示の射出成形装置において、温度感知デバイスは型枠に組み込まれ、ある距離だけ型枠の内面から間隙を介している。従って、温度感知デバイスを配置することで型枠の内面に望ましくない又は不均一な形状を提供せず、射出成形製品の品質を改善できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の射出成形装置は、射出成形処理に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
100 射出成形装置
110、110’、110” 型枠
110a 型枠キャビティ
110a1、110a2、110a3 位置
111 内面
112、112’、112” 第1型枠
112a 透明部分
114 第2型枠
120 射出デバイス
130、130’ 温度感知デバイス
140 圧力感知デバイス
150 処理ユニット
160 制御ユニット
d 距離
D1 並進方向
D2 離型方向
図1
図2
図3
図4
図5