(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の再帰反射シートでは結合部が他の部分に比べて硬くなる傾向にあるため、当該再帰反射シートを折り曲げると隣り合う結合部間の部位が屈曲し易い。そのため、再帰反射シートを折り曲げて曲面に設ける場合、隣り合う結合部間の部位が屈曲することにより、当該屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子同士が衝突するので十分に屈曲せず、曲面に追従し難いという懸念があった。また、再帰反射素子同士の衝突により、再帰反射素子が変形する場合や損傷する場合などの事態が生じうるため、再帰反射シートの反射性能が低減する懸念もあった。
【0007】
そこで、本発明は、反射性能を低減することなく、曲面追従性を向上し得る再帰反射シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の再帰反射シートは、板状の保持体部及び前記保持体部の一面に設けられる複数の再帰反射素子を有する再帰反射層と、前記再帰反射層の再帰反射素子側の面に対向して配置される層であって、前記再帰反射層と結合する結合部を部分的に有する結合材層と、を備え、前記結合材層の弾性率は、前記保持体部の弾性率よりも低く、前記保持体部の一面には前記複数の再帰反射素子が設けられていない領域が設けられるとともに、前記領域には前記保持体部の一面とは反対側の他面に向かって凹む凹部が設けられ、前記結合部は、前記凹部内に配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の再帰反射シートでは、保持体部に凹部が設けられている分だけ、結合部が配置される部位の保持体部の厚さが薄くなり、当該凹部には保持体部の弾性率よりも低い結合部が配置されている。
このため、再帰反射シートは結合部付近で屈曲し易くなる。したがってこの再帰反射シートでは、当該再帰反射シートの屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子同士が衝突したり、この衝突により再帰反射素子が変形や損傷したりする場合などの事態が低減される。
こうして、反射性能を低減することなく、曲面追従性を向上し得る再帰反射シートを提供することができる。
【0010】
前記凹部の開口縁は前記領域の境界の内側にあり、当該開口縁と境界との間に前記複数の再帰反射素子はないことが好ましい。
【0011】
このようにした場合、結合部の開口縁の周囲に再帰反射素子が設けられている場合に比べて、再帰反射シートを折り曲げた場合に再帰反射素子と結合部付近の結合材層とが衝突する事態が低減される。この結果、再帰反射シートの反射性能を低減することなく、曲面追従性がより向上する。
【0012】
また、前記凹部は、前記保持体部を貫通しており、前記結合部は、前記保持体部の一面と反対側の他面まで延在することが好ましい。
【0013】
このようにした場合、保持体部を貫通していない凹部に結合部が配置される場合に比べて、結合部が配置される部位に保持体部がなくなるため、再帰反射シートが結合部付近でより屈曲し易くなる。したがって、この再帰反射シートでは、当該再帰反射シートの屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子同士が衝突することがより低減され、この結果、再帰反射シートの反射性能を低減することなく、曲面追従性がより向上する。
【0014】
前記再帰反射シートの前記結合部が配置されている部位の少なくとも一部に、前記保持体部の前記他面から前記一面の方向に向かって、スリットが設けられていることが好ましい。
【0015】
このようにした場合、スリットが設けられていない場合に比べて、再帰反射シートが結合部付近でより屈曲し易くなる。したがって、この再帰反射シートでは、当該再帰反射シートの屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子同士が衝突することがより低減され、この結果、再帰反射シートの反射性能を低減することなく、曲面追従性がより向上する。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、反射性能を低減することなく、曲面追従性を向上し得る再帰反射シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に好適となる実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1)第1実施形態
図1は、第1実施形態における再帰反射シートの断面を示す図である。
図2は、第1実施形態における再帰反射層の断面を示す図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態における再帰反射シート1は、再帰反射層10、結合材層20および表面保護層30を主な構成要素として備える。
【0020】
再帰反射層10は、保持体部11と複数の再帰反射素子12とを一体化した単一の層である。この再帰反射層10は、保持体部11側から入射した光を再帰反射素子12と、結合材層20によって形成される空間との界面IFで内部全反射し、入射した光を再帰反射させる。
【0021】
保持体部11は、再帰反射層10において板状の部位である。この保持体部11の一面F1には複数の再帰反射素子12が設けられている。複数の再帰反射素子12は、入射した光を再帰反射させるのに適した反射面を有している限り特に限定されるものではない。
【0022】
特に、三角錐などの多面体の再帰反射素子を最密充填状に配置して再帰反射素子12が形成された場合、反射性能が優れるので好ましい。
【0023】
本実施形態における保持体部11の一面F1には、複数の再帰反射素子12が設けられていない領域ARがあり、当該領域ARには保持体部11の一面F1とは反対側の他面F2に向かって凹む凹部13が設けられている。
【0024】
この凹部13は保持体部11を貫通しておらず、領域ARの幅W1と凹部13の幅W2とは同じとされる。すなわち、凹部13の開口縁は領域ARの境界と一致しており、当該凹部13に配置される結合部22とその結合部22の周縁にある再帰反射素子12とは接している。
【0025】
なお、領域ARの幅W1は、凹部13の開口を通る直線と領域ARとの交点を結ぶ線分のうち最も大きい線分の長さである。また、凹部13の幅W2は、再帰反射層10の厚さ方向の断面においてその厚さ方向とは直交する方向の直線と凹部13との交点を結ぶ線分のうち最も大きい線分の長さである。
【0026】
本実施形態の場合、領域ARは、複数の領域ARを有しており、当該領域ARそれぞれに断面略矩形状の凹部13が設けられている。
【0027】
このような再帰反射層10の材料としては、光学的特性に優れたものがよい。例えば、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。特に、フッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0028】
フッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体などが挙げられる。
【0029】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0030】
なお、耐候性及び柔軟性を向上させる観点では、フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含有する樹脂組成物で形成される再帰反射層10であることが好ましい。耐候性に優れるフッ化ビニリデン系樹脂と柔軟性に優れるアクリル系樹脂とを含む樹脂組成物により層を形成することで、再帰反射層の耐候性及び柔軟性に優れたものにすることができる。
【0031】
結合材層20は、再帰反射層10の再帰反射素子側の面に対向して配置される層であって、再帰反射層10と結合する結合部22を部分的に有する単一の層である。この結合材層20は、結合部22を介して再帰反射層10(複数の再帰反射素子12)と結合材層20自身との間に空間を形成する。
【0032】
結合部22は、保持体部11の凹部13内に配置され、凹部13の側面または底面と結合することで、再帰反射層10と結合材層20とを結合する。なお、
図1の例では、結合部22は、凹部13の側面及び底面の双方と結合することで、当該凹部13内に埋め込まれている。
【0033】
本実施形態における結合部22は、保持体部11に設けられる各凹部13の数と同じ数だけ有し、1つの凹部13に対し1つの結合部22が割り当てられている。ただし、結合部22は、保持体部11に設けられる各凹部13の数よりも少ない数であっても良い。なお、結合部22の数が凹部13の数よりも少ない場合、当該結合部22が配置されていない凹部13が存在することになる。
【0034】
このような結合材層20の弾性率は、再帰反射層10の弾性率よりも低くされる。結合材層20の材料としては、例えば、再帰反射層10と同様の樹脂などが挙げられる。
【0035】
再帰反射層10との密着性をより高める場合、結合材層20は、再帰反射層10に含まれる同様の樹脂を含む樹脂組成物より形成されることが好ましい。さらに、着色剤、改質剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
表面保護層30は、再帰反射層10における保持体部11の一面F1とは反対側の他面F2を保護する光透過性の層であり、当該他面F2を覆うように設けられている。この表面保護層30の材料としては、例えば、再帰反射層10と同様のものが挙げられる。なお、表面保護層30は、再帰反射シート1の外部から光が入射する側の層とされる。
【0037】
粘着剤層40は、結合材層20において結合部22が存在する側の一面とは反対側の他面に設けられる。この粘着剤層40の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂などが挙げられる。
【0038】
なお、再帰反射シート1が未使用のときには、粘着剤層40において結合材層20に対向する一面とは反対側の他面に剥離層50が積層され、当該粘着剤層40にゴミなどが付着することが防止される。一方、再帰反射シート1を使用するときには、剥離層50は粘着剤層40から剥離される。
【0039】
以上のとおり、本実施形態の再帰反射シート1では、保持体部11に凹部13が設けられている分だけ、結合部22が配置される部位の保持体部11の厚さが薄くなり、当該凹部13には保持体部11の弾性率よりも低い結合部が配置されている。
【0040】
このため、再帰反射シート1は結合部22付近で屈曲し易くなる。したがって、この再帰反射シート1では、当該再帰反射シート1の屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子12同士が衝突したり、再帰反射素子12が変形や損傷したりする場合などの事態が低減される。こうして、反射性能を低減することなく、曲面追従性を向上し得る再帰反射シートを提供することができる。
【0041】
(2)第2実施形態
図3は、第2実施形態における再帰反射シートの断面を示す図である。
図4は、第2実施形態における再帰反射層の断面を示す図である。
図3及び
図4に示すように、本実施形態における再帰反射シートでは、第1実施形態の凹部13とは異なる凹部63を有している点で、第1実施形態の再帰反射シート1と相違する。
【0042】
すなわち、第1実施形態における凹部13の底は保持体部11の他面F2に至っておらず、当該凹部13は保持体部11を貫通していなかった。
【0043】
これに対して、本実施形態における凹部63の底は保持体部11の他面F2に達しており、当該凹部63は保持体部11を貫通している。この凹部63に配置される結合部22は、保持体部11の他面F2にまで延在し、表面保護層30と結合している。また、凹部63内における結合部22の側面は隙間なく凹部の内壁と接している。
【0044】
このような本実施形態の再帰反射シートでは、保持体部11を貫通していない凹部13に結合部22が配置されている第1実施形態の場合に比べて、当該再帰反射シートが結合部22付近でより屈曲し易くなる。したがって、この再帰反射シートでは、当該再帰反射シートの屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子同士が衝突することがより低減され、この結果、再帰反射シートの曲面追従性がより向上する。
【0045】
(3)第3実施形態
図5は、第3実施形態における再帰反射シートの断面を示す図である。
図5に示すように、本実施形態における再帰反射シートは、スリット14を新たに有している点で、第1実施形態の再帰反射シート1と相違する。
【0046】
スリット14は、再帰反射シートのうち凹部内に配置された結合部22が配置される部位に、保持体部11の他面F2から一面F1方向に向かって、設けられている。言い換えると、このスリット14は、保持体部11の一面F1において凹部13の底と対向する部位に設けられており、当該凹部13とは離間している。また、スリット14は、再帰反射層10と表面保護層30とに囲まれ、当該スリット14内には空間が形成される。本実施形態の場合、スリット14の断面が略三角形状とされ、凹部13の底に近づくにしたがってスリット14の先端が徐々に細くなっている。
【0047】
このような本実施形態の再帰反射シートでは、スリット14が設けられていない場合に比べて、当該再帰反射シートが結合部22付近でより屈曲し易くなる。したがって、この再帰反射シートでは、当該再帰反射シートの屈曲部位を基準として隣接する再帰反射素子12同士が衝突することがより低減され、この結果、再帰反射シートの反射性能を低減することなく、曲面追従性がより向上する。
【0048】
(4)第4実施形態
図6は、第4実施形態における再帰反射シートの断面を示す図である。
図6に示すように、本実施形態における再帰反射シートは、スリット24を新たに有している点で、第2実施形態の再帰反射シートと相違する。
【0049】
このスリット24は、結合部22に設けられており、保持体部11の一面F1にまで至っていない。また、スリット24は、再帰反射層10と表面保護層30とに囲まれ、当該スリット24内には空間が形成される。本実施形態の場合、スリット24の断面が略三角形状とされ、保持体部11の一面F1に近づくにしたがってスリット24の先端が徐々に細くなっている。
【0050】
このような本実施形態の再帰反射シートでは、上記第3実施形態の場合と同様に、スリット24が設けられていない場合に比べて再帰反射シートの曲面追従性がより向上する。
【0051】
(5)第5実施形態
図7は、第5実施形態における再帰反射シートの断面を示す図である。
図8は、第5実施形態における再帰反射層の断面を示す図である。
図7及び
図8に示すように、本実施形態における再帰反射シートでは、第1実施形態の領域ARとは異なる大きさの領域ARとなっている点で、第1実施形態の再帰反射シート1と相違する。
【0052】
すなわち、第1実施形態における領域ARの幅W1は、凹部13の幅W2と同じとされた。すなわち、凹部13の開口縁は領域ARの境界と一致しており、当該凹部13に配置される結合部22とその結合部22の周縁にある再帰反射素子12とは接していた。
【0053】
これに対して、本実施形態における領域ARの幅W10は、凹部13の幅W2よりも大きい。すなわち、凹部13の開口縁は領域ARの境界の内側にあり、当該凹部13に配置される結合部22とその結合部22の周縁にある再帰反射素子12とには隙間GPが設けられ、当該結合部22と再帰反射素子12とは離間している。言い換えると、凹部13の開口縁は領域ARの境界の内側にあり、当該開口縁と境界との間に複数の再帰反射素子12はない。
【0054】
このような本実施形態の再帰反射シートでは、結合部22とその結合部22の周縁にある再帰反射素子12とが接している第1実施形態の場合に比べて、当該再帰反射素子12と結合部22とが衝突することが低減される。この結果、再帰反射シートの曲面追従性がより向上する。
【0055】
なお、上記第2実施形態〜上記第4実施形態における保持体部11の領域ARが、本実施形態における保持体部11の領域ARとされても良い。
【0056】
(6)変形例
以上、第1実施形態〜第5実施形態が一例として挙げられた。しかしながら本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施形態では、保持体部11の他面F2側に表面保護層30が設けられた。しかしながら、表面保護層30は省略されても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、再帰反射層10における保持体部11と再帰反射素子12とが一体化された。しかしながら、再帰反射層10における保持体部11と再帰反射素子12とは一体化されていなくても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、結合材層20は単一の層とされた。しかしながら、結合材層は必要に応じて結合材層と組成が同一もしくは相異なる複数の層で構成されていても良い。
【0060】
また、上記第3実施形態では、保持体部11の一面F1において凹部13の底と対向する部位にスリット14が設けられた。しかしながら、スリット14に代えて、もしくは、当該スリット14に加えて、表面保護層30を正面視した場合に、当該表面保護層30において結合部22と重なる部位にスリットが設けられていても良い。
【0061】
また、上記第4実施形態では、結合部22にスリット24が設けられた。しかしながら、スリット24に代えて、もしくは、当該スリット24に加えて、表面保護層30を正面視した場合に、当該表面保護層30において結合部22と重なる部位にスリットが設けられていても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、凹部13又は63における断面の形状が略矩形状とされた。しかしながら、凹部13又は63における断面の形状は種々の形状を適用可能である。例えば、保持体部11の一面F1から他面F2に近づくほど凹部の側面が広がる形状、あるいは、当該保持体部11の一面F1から他面F2に近づくほど凹部の側面が狭まる形状などが適用可能である。なお、凹部13又は63の形状に応じて、当該凹部13又は63に隙間なく配置される結合部22の形状も適宜変更される。