特許第6749093号(P6749093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6749093超親水性被膜付基材と、その塗布液および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749093
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】超親水性被膜付基材と、その塗布液および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20200824BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20200824BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20200824BHJP
   B32B 7/10 20060101ALI20200824BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200824BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20200824BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200824BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20200824BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20200824BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B32B3/30
   B32B5/16
   B32B9/00 A
   B32B7/10
   B05D7/24 303B
   B05D7/24 301E
   B05D5/00 Z
   C09D201/00
   C09D7/61
   C09D7/62
   C09D5/02
【請求項の数】20
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-235332(P2015-235332)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-100358(P2017-100358A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096459(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141150(WO,A1)
【文献】 特開2015−049281(JP,A)
【文献】 特開2011−148120(JP,A)
【文献】 特開2002−080830(JP,A)
【文献】 特開2004−211049(JP,A)
【文献】 特開2015−136669(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1302489(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00− 43/00
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に超親水性の被膜を有する親水性基材であって、前記被膜が無機酸化物粒子を含む粒子層と、該無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材の間隙に介在する接着層からなり、該無機酸化物粒子が無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子(以下、ヒマワリ状粒子と云う)であり、該ヒマワリ状粒子の表面が親水性であって、該無機酸化物粒子の上部が前記接着層から露出した凹凸構造を前記被膜表面に有することを特徴とする超親水性被膜付基材。
【請求項2】
前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)が20〜600nmであって、接着層の膜厚(U)が6〜400nmであり、該ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)に対する接着層の膜厚(U)の比(U/D)が1/3〜2/3であって、該ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)の1/3〜2/3が接着層から露出していることを特徴とする請求項1に記載する超親水性被膜付基材。
【請求項3】
該ヒマワリ状粒子表面の微細凹凸の凸部平均高さ(TFF)が0.5〜10nmの範囲であり、該微細凹凸の凸部間の平均距離(ピッチ幅)(WFF)が1〜30nmの範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項4】
親水性被膜表面の凹凸構造の凸部平均高さ(T)が10〜300nmの範囲であり、凸部間の平均距離(ピッチ幅)(W)が1〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項5】
親水性被膜の膜厚が20nm〜700nmであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項6】
該ヒマワリ状粒子が多孔質であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項7】
該ヒマワリ状粒子の表面が、SiXの式(式中、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素)で示される加水分解性有機ケイ素化合物による親水基で修飾されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項8】
水との接触角が10°以下であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項9】
該ヒマワリ状粒子がSiO、Al、Sb、ZrO、TiO、Fe、CeO、AgO、CuO、CuO、およびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項10】
接着層が、エマルジョン用樹脂であって、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【請求項11】
無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子を含み、該無機酸化物粒子は無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状であって該粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子であり、該ヒマワリ状粒子と該樹脂エマルジョン粒子が、極性溶媒中に混在して単分散していることを特徴とする超親水性被膜形成用塗布液。
【請求項12】
前記樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が、前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことを特徴とする請求項11に記載する超親水性被膜形成用塗布液。
【請求項13】
前記ヒマワリ状粒子の量(G)と、樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])が0.5〜0.98の範囲であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載する超親水性被膜形成用塗布液。
【請求項14】
粒子表面が親水性の前記ヒマワリ状粒子が極性溶媒に分散した分散液と、前記樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒に懸濁した懸濁液との二液からなり、前記分散液と前記懸濁液の混合によって該ヒマワリ状粒子と該樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒中に混在して単分散した状態になる請求項11〜請求項13の何れかに記載する超親水性被膜形成用塗布液。
【請求項15】
粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に分散し懸濁している被膜形成用塗布液を基材に塗布して該ヒマワリ状粒子相互の間隙に前記樹脂エマルジョン粒子が介在した粒子層を形成し、塗布後、加熱乾燥して該樹脂エマルジョン粒子の崩壊によって前記ヒマワリ状粒子相互の間隙および該ヒマワリ状粒子と前記基材との間隙に樹脂を入り込ませて接着層を形成し、該ヒマワリ状粒子の上部が該接着層から露出した凹凸構造を有する超親水性被膜を基材上に形成することを特徴とする超親水性被膜付基材の製造方法。
【請求項16】
粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子の分散液と、樹脂エマルジョン粒子の懸濁液とを混合して、該ヒマワリ状粒子と該樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に混在し単分散している被膜形成用塗布液を調製し、該塗布液を基材に塗布する請求項15に記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【請求項17】
被膜形成用塗布液に含まれる樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【請求項18】
被膜形成用塗布液に含まれるヒマワリ状粒子の量(G)と、樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])が0.5〜0.98の範囲であることを特徴とする請求項15〜請求項17の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【請求項19】
エマルジョン用樹脂として、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂からなる樹脂エマルジョン粒子を極性溶媒に懸濁させた樹脂エマルジョン粒子懸濁液と、前記ヒマワリ状粒子を極性溶媒に分散させたヒマワリ状粒子分散液を混合して被膜形成用塗布液を調製することを特徴とする請求項15〜請求項18の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【請求項20】
被膜形成用塗布液を基材に塗布した後に60〜200℃に加熱乾燥して樹脂エマルジョン粒子を崩壊させることを特徴とする請求項15〜請求項19の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れた被膜付基材およびその製造方法に関し、水処理用およびその他の用途に好適な親水性に優れた被膜を基材上に有する超親水性被膜付基材と、その塗布液および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性被膜について、例えば、自動車や建物の窓ガラス、鏡面などの表面に生じる結露などを防止するために親水性被膜を設けることが知られており、(イ)チタニア粒子とシリカ粒子の分散液を塗布し焼成してなる被膜、(ロ)シリカ前駆体とチタニアゾルの混合液を塗布し焼成してなる被膜などが知られている。しかし、前記被膜(イ)はバインダーがないため基板との結合力が低く耐摩耗性に劣り、前記被膜(ロ)はチタニア粒子をシリカ前駆体が覆い光触媒としての親水性が発現し難く、親水性を長期間持続するのが難しいなどの問題が指摘されている(特許文献1)。
【0003】
また、親水性被膜は防汚材料として用いられており、(ハ)酸化チタン等の光触媒微粒子を含有する親水性被膜、(ニ)ゾルゲル法等で形成されるシリカ質被膜、(ホ)珪素とジルコニウムの複合酸化物と水、または酸化珪素と酸化ジルコニウムの混合物と水を含有する親水性被膜などが知られている。しかし、前記被膜(ハ)はバインダーが粒子を覆うため親水性が十分でなく、前記被膜(ニ)は低温処理のためシロキサン結合が発達せず、耐水性が弱く、前記被膜(ホ)は樹脂基板上での密着強度が十分ではないことが指摘されている(特許文献2)。
【0004】
さらに、水処理用に好適な親水性被膜付基材が知られている。特許文献3には、基材と該基材表面の親水性透明被膜からなり、該親水性透明被膜が無機酸化物微粒子を含む無機酸化物微粒子層と該無機酸化物微粒子層上の結合材層とからなり、該親水性透明被膜表面が凹凸構造を有し、該凸部の平均高さが30〜500nmの範囲であって平均凸部間距離(ピッチ幅)が50〜1000nmの範囲にあり、水との接触角が20°以下であることを特徴とする親水性透明被膜付基材が記載されている。
【0005】
特許文献3に記載されている親水性被膜付基材は、基材との密着性、透明性、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、ヘーズ等に優れており、例えば、ガラス基材上に前記被膜を設けた場合、該被膜に滴下した水滴が速やかに被膜表面で拡散して透明な状態を維持し、また、RO膜や不織布上に該被膜を設けた場合、ファウリングを抑制することができ、水処理に好適であるなどの利点を有している。
【0006】
一方、特許文献3の親水性被膜付基材は、無機酸化物微粒子層上に結合材層が設けられているので、無機酸化物微粒子によって形成された被膜表面の凹凸構造が結合層によって覆われるために凹凸構造による効果が十分に発揮され難い場合がある。また、無機酸化物微粒子の粒子層を形成した後に結合層を塗布する工程が必要であり、さらに基材上に下地の接合層を設けた後に粒子層を形成し、この粒子層の上に表面接合層を積層する場合には、接合層の塗布工程が多くなり、コストが高い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−176426号公報
【特許文献2】特開2007−161770号公報
【特許文献3】特開2015−136669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の前記(イ)〜前記(ホ)の親水性被膜の問題を解消し、また特許文献3の親水性被膜付基材について、被膜の凹凸構造がその上側の結合層などによって覆われずに凹凸構造による効果を十分に発揮できるようにし、さらに製造工程を簡略化すると共に被膜の密着強度を高めたものであり、本発明によれば、優れた親水性を長期間保ち、耐摩耗性を有すると共に、被膜中の粒子相互および被膜と基材の密着強度に優れた親水性被膜付基材と、その塗布液および製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超親水性被膜付基材は以下の構成を有する。
〔1〕基材表面に超親水性の被膜を有する親水性基材であって、前記被膜が無機酸化物粒子を含む粒子層と、該無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材の間隙に介在する接着層からなり、該無機酸化物粒子が無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子(以下、ヒマワリ状粒子と云う)であり、該ヒマワリ状粒子の表面が親水性であって、該無機酸化物粒子の上部が前記接着層から露出した凹凸構造を前記被膜表面に有することを特徴とする超親水性被膜付基材。
〔2〕前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)が20〜600nmであって、接着層の膜厚(U)が6〜400nmであり、該ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)に対する接着層の膜厚(U)の比(U/D)が1/3〜2/3であって、該ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)の1/3〜2/3が接着層から露出していることを特徴とする前記[1]に記載する超親水性被膜付基材。
〔3〕該ヒマワリ状粒子表面の微細凹凸の凸部平均高さ(TFF)が0.5〜10nmの範囲であり、該微細凹凸の凸部間の平均距離(ピッチ幅)(WFF)が1〜30nmの範囲であることを特徴とする前記[1]または前記[2]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔4〕親水性被膜表面の凹凸構造の凸部平均高さ(T)が10〜300nmの範囲であり、凸部間の平均距離(ピッチ幅)(W)が1〜1000nmの範囲であることを特徴とする前記[1]〜前記[3]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔5〕親水性被膜の膜厚が20nm〜700nmであることを特徴とする前記[1]〜前記[4]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔6〕該ヒマワリ状粒子が多孔質であることを特徴とする前記[1]〜前記[5]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔7〕該ヒマワリ状粒子の表面が、SiXの式(式中、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素)で示される加水分解性有機ケイ素化合物による親水基で修飾されていることを特徴とする前記[1]〜前記[6]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔8〕水との接触角が10°以下であることを特徴とする前記[1]〜前記[7]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔9〕該ヒマワリ状粒子がSiO、Al、Sb、ZrO、TiO、Fe、CeO、AgO、CuO、CuO、およびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]〜前記[8]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
〔10〕接着層が、エマルジョン用樹脂であって、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]〜前記[9]の何れかに記載する超親水性被膜付基材。
【0010】
本発明は以下の構成からなる超親水性被膜形成用塗布液を含む。
〔11〕無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子を含み、該無機酸化物粒子は無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状であって該粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子であり、該ヒマワリ状粒子と該樹脂エマルジョン粒子が、極性溶媒中に混在して単分散していることを特徴とする超親水性被膜形成用塗布液。
〔12〕樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が、該ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことを特徴とする前記[11]に記載する超親水性被膜形成用塗布液。
〔13〕前記ヒマワリ状粒子の量(G)と、樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])が0.5〜0.98の範囲であることを特徴とする前記[11]または前記[12]に記載する超親水性被膜形成用塗布液。
〔14〕粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子が極性溶媒に分散した分散液と、樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒に懸濁した懸濁液との二液からなり、前記分散液と前記懸濁液の混合によってヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒中に混在して単分散した状態になる前記[11]〜前記[13]の何れかに記載する超親水性被膜形成用塗布液。
【0011】
本発明は以下の構成からなる超親水性被膜付基材の製造方法を含む。
〔15〕粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に分散し懸濁している被膜形成用塗布液を基材に塗布して該ヒマワリ状粒子相互の間隙に前記樹脂エマルジョン粒子が介在した粒子層を形成し、塗布後、加熱乾燥して該樹脂エマルジョン粒子の崩壊によって前記ヒマワリ状粒子相互の間隙および該ヒマワリ状粒子と前記基材との間隙に樹脂を入り込ませて接着層を形成し、該ヒマワリ状粒子の上部が該接着層から露出した凹凸構造を有する超親水性被膜を基材上に形成することを特徴とする超親水性被膜付基材の製造方法。
〔16〕粒子表面が親水性のヒマワリ状粒子の分散液と、樹脂エマルジョン粒子の懸濁液とを混合して、該ヒマワリ状粒子と該樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に混在し単分散している被膜形成用塗布液を調製し、該塗布液を基材に塗布する前記[15]に記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
〔17〕被膜形成用塗布液に含まれる樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことを特徴とする前記[15]または前記[16]に記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
〔18〕被膜形成用塗布液に含まれるヒマワリ状粒子の量(G)と、樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])が0.5〜0.98の範囲であることを特徴とする前記[15]〜前記[17]の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
〔19〕エマルジョン用樹脂として、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂からなる樹脂エマルジョン粒子を極性溶媒に懸濁させた樹脂エマルジョン粒子懸濁液と、前記ヒマワリ状粒子を極性溶媒に分散させたヒマワリ状粒子分散液を混合して被膜形成用塗布液を調製することを特徴とする前記[15]〜前記[18]の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
〔20〕被膜形成用塗布液を基材に塗布した後に60〜200℃に加熱乾燥して樹脂エマルジョン粒子を崩壊させることを特徴とする前記[15]〜前記[19]の何れかに記載する超親水性被膜付基材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超親水性被膜付基材は、無機酸化物粒子(ヒマワリ状粒子)を含む粒子層と、該無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材の間隙に介在する接着層によって前記被膜が形成されており、親水性の無機酸化物粒子表面の上部が該接着層から露出している。この露出している無機酸化物粒子表面に水滴が引き付けられ、さらに無機酸化物粒子の露出によって高低差(凸部の平均高さ)の大きな凹凸構造が被膜表面に形成されているので、粒子表面に引き付けられた水滴が崩れやすくなり、優れた親水性を有するようになる。具体的には、例えば、凸部平均高さ(T)が10〜300nmであって凸部間の平均距離(ピッチ幅)(W)が1〜1000nmの凹凸構造を被膜表面に有することによって、水との接触角が10°以下、好ましくは5°以下の超親水性を有することができる。
【0013】
また、本発明の超親水性被膜付基材は、無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材の間隙に接着層が介在しているので、無機酸化物粒子相互および該無機酸化物粒子と前記基材の密着性が良く、これらの接合強度が大きいので、親水性を長期間維持することができ、また耐摩耗性に優れている。
【0014】
本発明の超親水性被膜は透明であるので、ガラスやプラスチックなどの透明基材上に該被膜を形成したものは、建物や自動車あるいは観測装置の窓やメータの表示部分の透明材料として好適に用いることができる。
【0015】
また、本発明の超親水性被膜付基材は水処理用の分離膜等にも好適に用いることができる。一般に水処理用として、濾過膜や浸透膜などの用途に応じた細孔を有する親水性や疎水性の分離膜が用いられる。水処理用の細孔を有するポリスルホンやポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の不織布基材表面に本発明の超親水性被膜を形成したものは、水処理用基材として好適である。
【0016】
さらに本発明の超親水性被膜付基材は、ナイロンやポリエステル、綿等の繊維上や外装建材、屋根瓦などを基材として超親水性被膜を形成することによって、汚れを流水で流れ落とす防汚材としても好適に用いることができる。また、ナイロンやポリエステル、外装建材などは防藻や抗菌性も必要な場合があり、このような場合は無機酸化物粒子にAg、Cu、Zn等の金属を担持させた複合酸化物微粒子を用いることによって親水性と共に防藻や抗菌性の複数の機能を有することができる。
【0017】
本発明の被膜形成用塗布液は、無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子とが混在して単分散した状態で使用することによって、被膜形成時に粒子が凝集することなく単分散状態で配列し、接着層から無機酸化物粒子が露出した超親水性被膜を容易に基板上に形成することができる。また、前記塗布液には接着層を形成する樹脂エマルジョン粒子が無機酸化物粒子と共に含まれているので、別途、接着層を塗布する必要がなく、作業工程を簡略化することができる。
【0018】
本発明の親水性被膜付基材の製造方法は、粒子表面が親水性の無機酸化物粒子の分散液と樹脂エマルジョン粒子の懸濁液を混合した被膜形成用塗布液を用いるので、接着成分は樹脂エマルジョン粒子の状態で無機酸化物粒子分散液と共に塗布されるので、塗布作業が少なく、親水性被膜を容易に形成することができる。
【0019】
本発明の親水性被膜付基材の製造方法は、無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材との間隙に樹脂エマルジョン粒子を介在させ、この樹脂エマルジョン粒子を崩壊させ、これらの間隙に樹脂を入り込ませて接着層を形成するので、無機酸化物微粒子の微細凹凸がマトリックス成分で埋もれることがなく、無機酸化物粒子相互および該無機酸化物粒子と前記基材とが強固に接合されるため、密着強度の大きな親水性被膜を形成することができる。さらに無機酸化物粒子が一層に配列した形態であるので、透明性が高く、風合いを損なわない基材が得られる。
【0020】
本発明の親水性被膜付基材の製造方法では、樹脂エマルジョン粒子は無機酸化物粒子相互の間隙に介在し、無機酸化物粒子が樹脂エマルジョン粒子によって覆われないので、無機酸化物粒子の上部が接着層から露出した高低差の大きな凹凸構造を形成することができる。例えば、無機酸化物粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)平均粒子径(De)の樹脂エマルジョン粒子の懸濁液を用いれば、乾燥時に平均粒子径の大きな無機酸化物粒子と基材との間のメニスカスに存在する溶媒の張力によって、樹脂エマルジョン粒子がメニスカスに引き込まれ、確実に無機酸化物粒子が樹脂エマルジョン粒子によって覆われないようにすることができ、例えば、無機酸化物粒子の平均粒子半径の1/3〜2/3が露出した被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の超親水性被膜付基材の模式断面図。
図2】本発明の超親水性被膜付基材の水との接触角を示す説明図。
図3】ひまわり状無機酸化物粒子の模式断面図。
図4】ヒマワリ状粒子を用いた超親水性被膜付基材の模式断面図。
図5】本発明の超親水性被膜付基材の製造工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔超親水性被膜付基材〕
本発明の超親水性被膜付基材は、
基材表面に超親水性の被膜を有する親水性基材であって、前記被膜が無機酸化物粒子を含む粒子層と、該無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材の間隙に介在する接着層からなり、該無機酸化物粒子が無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子(以下、ヒマワリ状粒子と云う)であり、該ヒマワリ状粒子の表面が親水性であって、該無機酸化物粒子の上部が前記接着層から露出した凹凸構造を前記被膜表面に有することを特徴とする超親水性被膜付基材である。
【0023】
本発明の超親水性被膜付基材の一例を図1に示す。図示するように、超親水性被膜付基材10は、基材1と、該基材1の表面に形成された超親水性の被膜2を有している。該被膜2は粒子層3と接着層4によって形成されている。該粒子層3は多数の無機酸化物粒子5が基材表面に分散して配列して並んだ層であり、基本的には単層に形成されている。前記接着層4は接着成分からなる層であり、前記無機酸化物粒子5の相互の間隙および該無機酸化物粒子5と前記基材1の間隙に介在している。該接着層4は前記無機酸化物粒子5の相互の間隙および該無機酸化物粒子5と前記基材1の間隙に介在した樹脂エマルジョン粒子の崩壊によって形成される。該無機酸化物粒子は無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子(ヒマワリ状粒子と云う)であり、該無機酸化物粒子の表面が親水性であって、該無機酸化物粒子5の上部は前記接着層4の表面から露出しており、無機酸化物粒子5の上部が露出していることによって高低差の大きな凹凸構造が形成されている。
【0024】
無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)は20〜600nmの範囲が好ましい。該無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)が20nm未満では、接着層4の膜厚(U)が下記膜厚範囲の上限値に近いときに、該無機酸化物粒子5の大部分が接着層4に取り込まれ、接着層4から露出する凸部の高さが小さくなり、十分な高低差の凹凸構造が得られない。また、該無機酸化物粒子の平均粒子径(D)が600nmを上回ると、凹凸構造の凸部の平均高さが所望の範囲外になる場合があり、目的の凹凸構造が得られない。なお、無機酸化物粒子の平均粒子径(D)は粒子層3の層厚になる。
【0025】
接着層4の層厚(U)は6〜400nmの範囲が好ましい。接着層4の膜厚(U)が6nm未満では、無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)が前記粒径範囲の上限に近いときに、該無機酸化物粒子5の該接着層4に埋まる深さが少なくなり、接着強度が十分に得られない。接着層4の膜厚(U)が400nmを上回ると、無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)が前記粒径範囲の下限に近いときに、該無機酸化物粒子5が該接着層4から露出する高さが小さくなり、高低差の大きな凹凸構造が得られない。
【0026】
該無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)に対する接着層の層厚(U)の比(U/D)は1/3〜2/3が好ましく、従って、該無機酸化物粒子5の平均粒子径(D)の1/3〜2/3が接着層4から露出しているのが好ましい。このように無機酸化物粒子5の平均粒子径D)の1/3〜2/3が接着層4から露出していることによって、被膜2の表面に高低差の大きな凹凸構造が形成されることになり、被膜2の表面が高い親水性を有するようになる。
【0027】
本発明の超親水性被膜付基材10は、具体的には、例えば、図1に示すように、被膜2の表面の凹凸構造は、凸部平均高さ(T)は10〜300nmの範囲が好ましく、凸部間の平均距離(ピッチ幅)(W)は1〜1000nmの範囲が好ましい。凸部平均高さ(T)が10nm未満では、該凹凸構造の高低差が小さくなり被膜の親水性を高めるのが難しくなる。一方、凸部平均高さ(T)が300nmより大きくても親水性はあまり変わらなくなる。また、前記凸部間のピッチ幅(W)が1nm未満では、凹部が狭くなり、該凸部間のピッチ幅(W)が1000nmを上回る場合には凹部が広すぎるので何れの場合も凹凸構造の効果が不十分になり、被膜の親水性を高めるのが難しくなる。
【0028】
親水性被膜の膜厚は20nm〜700nmの範囲が好ましく、40〜600nmの範囲がさらに好ましい。該膜厚が20nmより薄いと耐久性が低下し、また表面に十分な凹凸構造を形成することが難しい。一方、該膜厚が700nmより大きくても親水性の効果はあまり変わらない。
【0029】
〔基材〕
基材1の材質は制限されない。例えば、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等、繊維等、不織布等やモルタル材、スレート材、コンクリート等を用いることができる。接着層4はエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、スチレン樹脂、および、これらの共重合体樹脂から選ばれる少なくとも1種によって形成することができる。
【0030】
〔無機酸化物粒子〕
無機酸化物粒子5は、例えば、SiO、Al、Sb、ZrO、TiO、Fe、CeO、AgO、CuO、CuO、およびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの無機酸化物粒子5の表面は一般に親水性であり、該無機酸化物粒子5の上部が接着層4から露出しているので、従来の凹凸構造のない被膜に比べて親水性の範囲が広い。このため、図2に示すように、被膜2の表面に接触する水滴6は無機酸化物粒子表面との親和力によって該表面に引き付けられ、しかも該表面は高低差の大きな凹凸構造になっているので水滴6は崩れやすくなり、被膜2の表面は高い親水性を示すようになる。具体的には、水滴6と被膜2の表面との接触角θが5°以下の超親水性を有することができる。
【0031】
無機酸化物粒子5は表面処理によって親水性を高めたものを用いることができる。このような親水性表面処理剤として、例えば、SiXの式(式中、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素)で示される加水分解性有機ケイ素化合物を用いることができる。該加水分解性有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
無機酸化物粒子5の形状は、無機酸化物の基体粒子と該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子からなり、該無機酸化物粒子表面が該微細粒子による微細凹凸を有する該粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子(ヒマワリ状粒子)が好ましい。該ヒマワリ状粒子は多孔質であってもよい。
ヒマワリ状粒子は粒子表面に適度な凹凸を有し、さらに該凹凸の表面に微細な凹凸を有するので、親水性に優れた親水性被膜を得ることができる。該ヒマワリ状粒子の平均粒子径は長軸の長さを基準にして定められる。なお、無機酸化物粒子として、多孔質球状無機酸化物粒子または金平糖状無機酸化物粒子を参考例として以下に示す。
【0033】
多孔質球状無機酸化物粒子
多孔質球状無機酸化物粒子は、無機酸化物粒子の子表面に多数の孔が存在する球状の微粒子である。多孔質球状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)は10〜600nm、さらには10〜1300nmの範囲にあることが好ましい。多孔質球状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)が10nm未満では、比表面積が大きくなるため得ることが困難である。平均粒子径(D)が600nmを超えると親水性被膜の強度、硬度、基材との密着性が不十分となる場合がある。
【0034】
多孔質球状無機酸化物粒子は、ミクロ細孔(PD)を有するので、比表面積(SA)が大きい。比表面積(SA)はBET法により測定される比表面積であり、ミクロ細孔(PD)も同様な方法で測定することが出来る。多孔質球状無機酸化物微粒子の比表面積(SA)は、粒子径により異なるが、100〜1500mが好ましい。比表面積(SA)が100mより小さいと、粒子表面の微細凹凸構造が少なく、被膜にした際に充分な親水性が得られない場合がある。比表面積(SA)が1500mを超える場合は、十分な親水性は得られるが、比表面積が大きいために粒子どうしの相互作用が大きくなり、安定な塗料が得られない場合がある。
【0035】
多孔質球状無機酸化物微粒子の細孔径(PD)は、粒子径により異なるが、0.1〜5nmが好ましい。細孔径(PD)が0.1nmより小さいと、被膜にした際の微細凹凸構造が少なく、被膜にした際に充分な親水性が得られない場合がある。細孔径(PD)が5nmを超えると、十分な親水性は得られるが、粒子の強度が弱く、被膜を得た際の強度が弱くなる場合がある。
【0036】
金平糖状無機酸化物粒子
金平糖状無機酸化物粒子は、その粒子表面に多数の疣状突起を有する球状の微粒子であり、その構造は概ね金平糖に類似したものである。金平糖状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)は10〜150nm、さらには10〜130nmの範囲にあることが好ましい。金平糖状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)が10nm未満では、疣状突起を有する粒子としては得ることが困難であり、所望の微細凹凸が形成することが難しい。また、金平糖状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)が150nmを超えると親水性被膜の強度、硬度、基材との密着性が不十分となる場合がある。
【0037】
金平糖状無機酸化物粒子の疣状突起の平均高さ(H)は0.3〜45nmの範囲が好ましく、0.5〜40nmの範囲がさらに好ましい。疣状突起の平均高さ(H)が0.3nm未満では親水性被膜の親水性が不十分となる場合がある。疣状突起の平均高さ(H)が45nmを超えると疣状突起が大き過ぎ、粒子表面の疣状突起の数が少なくなるので微細凹凸の数が減少する。
【0038】
金平糖状無機酸化物粒子の疣状突起の平均高さ(H)と金平糖状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)との比(H)/(D)は0.03〜0.30の範囲が好ましく、0.05〜0.27の範囲がさらに好ましい。該比(H)/(D)が0.03未満の場合は親水性被膜の親水性が不十分となる場合がある。一方、該比(H)/(D)が0.30を超えると、疣状突起が大き過ぎ、粒子表面の疣状突起の数が少なくなるので微細凹凸の数が減少する。
【0039】
金平糖状無機酸化物粒子の疣状突起によって形成される表面粗度は下記式(1)によって示すことができる。なお、(SA)はBET法により測定される比表面積であり、(SA)は下記式(2)で表される等価球換算式で計算される比表面積であり、dは金平糖状無機酸化物粒子の密度であり、6000は換算係数である。
金平糖状無機酸化物粒子の表面粗度=(SA)/(SA) ・・・(1)
(SA)=6000/(D)×d・・・・・・(2)
【0040】
ここで比表面積は単位質量当りの表面積を示すから、表面粗度(SA)/(SA)の値については、粒子が球状であって、粒子表面の疣状突起が多いほど、(SA)/(SA)の値は大きくなり、一方、粒子表面の疣状突起が少なく、平滑であるほど、(SA)/(SA)の値は小さくなり、その値は1に近くなる。
【0041】
本発明に用いる金平糖状無機酸化物粒子の表面粗度(SA)/(SA)は1.7〜5.0の範囲が好ましい。表面粗度が1.7未満の場合、疣状突起の割合が少ないか、あるいは疣状突起自体が金平糖状無機酸化物粒子の粒子径に比べて極めて小さくなり、球状微粒子に近くなる。一方、表面粗度の値が5.0を超える場合は、調製が困難である。表面粗度の範囲は1.8〜4.5の範囲がさらに好ましい。
【0042】
金平糖状無機酸化物粒子の平均粒子径(D)および疣状突起の平均高さ(H)は走査型電子顕微鏡写真(SEM)の画像解析により測定することができる。具体的には、走査型電子顕微鏡によって撮影した投影図の、例えば、任意の50個の粒子について、その最大径を測定して平均値を平均粒子径(D)とすればよい。また、任意の疣状突起の頂点から疣状突起と球状粒子部分との接点までの距離を3箇所ずつ測定し、その平均値を疣状突起の平均高さ(H)とすればよい。
【0043】
ヒマワリ状無機酸化物粒子
ヒマワリ状無機酸化物粒子(以下、ヒマワリ状粒子とも云う。)の断面を図3に示す。図示するように、ヒマワリ状粒子20は無機酸化物の基体粒子21と、該基体粒子表面を被覆する無機酸化物の微細粒子22によって形成されている。図示する基体粒子21は、模式的に球状を示しているが、異形、板状、多面体状であってもよい。微細粒子22は球状粒子であり、粒子全体の断面がヒマワリ状の粒子である。ヒマワリ状粒子20は基体粒子21の表面が前記微細粒子22による微細な凹凸を有するので高い親水性が得られ、密着性が強く、親水被膜によるファウリングや劣化が効果的に抑制され、防汚性を示し、長期にわたって高い親水性を維持することができる。
【0044】
該微細凹凸の凸部平均高さ(TFF)は0.5〜10nmの範囲が好ましく、該微細凹凸の凸部間の平均距離(ピッチ幅)(WFF)は1〜30nmの範囲が好ましい。凸部平均高さ(TFF)が前記範囲よりも小さいと十分な微細凹凸が形成され難く、前記範囲を超えると微細凹部が深過ぎるので、被膜表面に水滴が接触したときに該微細凹部に空気が残留しやすくなり、親水性の膜が得られ難いので好ましくない。また、微細凹凸の凸部間の平均距離(ピッチ幅)(WFF)が前記範囲よりも小さいと十分な微細凹凸が得られ難く、前記範囲を超えるものは微細粒子22の粒子径が大きいので、基体粒子21の表面を覆う微細粒子22の数が限られるようになり、基体粒子表面に十分な微細凹凸が形成され難くなる。
【0045】
ヒマワリ状粒子の基体粒子21の平均粒子径(DC1)は40〜600nmの範囲が好ましく、50〜500nmの範囲がさらに好ましい。この平均粒子径(DC1)が小さいと、基材上に塗布した際に凸部の高さ、凸部間距離(ピッチ幅)が小さくなりすぎる場合があり、高い親水性が得られ難い。一方、該平均粒子径(DC1)が大きすぎても、凸部の高さおよび凸部間距離(ピッチ幅)が大きくなり過ぎるため高い親水性被膜が得られ難い。
【0046】
なお、基体用粒子11の平均粒子径(DC1)および微細粒子22の平均粒子径(DC2)は下記式(3)で表される等価球換算式で求められる平均粒子径である。なお、Dは平均粒子径(nm)、SAはBET法で測定された比表面積(m/g)、dは粒子の密度(g/cm)、6000は換算係数である。また、該平均粒子径は動的光散乱法(日機装(株)製:マイクロトラックUPA)を用いて測定することができる。通常の比表面積の実測値はBET法で測定される。
D=6000/SA×d・・・・(3)
【0047】
微細粒子22の平均粒子径(DC2)は4〜60nmの範囲が好ましく、5〜40nmの範囲がさらに好ましい。該平均粒子径(DC2)が小さいと、安定に単分散したヒマワリ状無機酸化物粒子を得ることが難しい。該平均粒子径(DC2)が大きすぎても、微細凹凸が大きくなり、ヒマワリ状無機酸化物粒子の比表面積も低くなるので、充分な親水性が得られ難くなる。
【0048】
基体粒子21の平均粒子径(DC1)と微細粒子22の平均粒子径(DC2)との比(DC2)/(DC1)は0.007〜0.5の範囲が好ましく、0.008〜0.4の範囲がさらに好ましい。該比(DC2)/(DC1)が前記範囲よりも小さいと微細凹凸が小さくなり、充分な親水性が得られ難い。該比(DC2)/(DC1)が前記範囲を超える微細凹凸が大きくなり、充分な親水性が得られ難い。
【0049】
基体粒子21の微細粒子22による被覆率は下記式(4)によって表される。該被覆率は30〜100%の範囲が好ましく、50〜100%の範囲がさらに好ましい。該被覆率が小さいと、微細凹凸が充分に形成できない。基体粒子21の表面に微細粒子22が被覆したヒマワリ状粒子の平均粒子径は、被覆率によっても異なるが、概ね48〜720nmの範囲である。
【0050】
被覆率(%)={[ヒマワリ状無機酸化物粒子の実測の比表面積(SC1)−基体用無機酸化物粒子の実測の比表面積(S)]/[100%被覆したとした場合のヒマワリ状無機酸化物粒子の計算上の比表面積(SC)−基体用無機酸化物粒子の実測の比表面積(S)]}×100・・・・・・・(4)
【0051】
(S)=ヒマワリ状無機酸化物粒子1個当たりの表面積×単位重量(1g)当たりの粒子数。
ヒマワリ状無機酸化物粒子1個当たりの表面積=4π・[(DC1)/2+(DC2)/2]
単位重量(1g)当たりの基体粒子の個数=1/[4/3・π[(DC1)/2]・d]
dは基体粒子の粒子密度(g/ml)を表す。シリカの粒子密度は2.2g/mlである。
【0052】
基体粒子21および微細粒子22の成分は同一であっても異なっていてもよく、SiO、Al、Sb、ZrO、TiO、Fe、CeO、AgO、CuO、Cu2O、およびこれらの複合酸化物または混合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの成分の粒子は粒子径が前記範囲にある球状粒子を容易に得ることができ、化学的にも安定であるので好適に用いることができる。なかでも、SiOからなる粒子が好ましい。SiO粒子は、粒子径の大小に拘わらず均一な粒子径を有する球状粒子が得られ、化学的に安定である。
【0053】
ヒマワリ状粒子は、正または負の表面電位を有する基体粒子の水分散液と、これと反対の表面電気を有する微細粒子の水分散液を混合してpHを弱酸性に調整し、該混合液をイオン交換樹脂に通液して陰イオンを除去し、pHをほぼ中性の範囲に調整し、乾燥することによって得ることができる。
【0054】
無機酸化物粒子5としてヒマワリ粒子20を用いた超親水性被膜付基材の断面図を図4に示す。被膜2の表面は基体粒子21によって大きな凹凸構造が形成されており、この基体粒子21の表面には微細粒子22によって微細な凹凸が形成されている。これらの表面は親水性であるので、被膜2の表面に接触する水滴はこれら親水性の表面に引き付けられる。さらに、水滴が引き付けられている表面は基体粒子21による大きな凹凸構造と微細粒子22による微細凹凸との二重の凹凸構造になっているので、この凹凸構造に引き付けられた水滴は容易に崩れやすくなり、より高い親水性を示すようになる。
【0055】
無機酸化物粒子表面の親水性は、粒子表面の−OH基の数が多くなると親水性が高くなり、さらに−OH基の数以外に、無機酸化物粒子表面にナノサイズの微細凹凸を有することによって親水性がさらに高くなる。
【0056】
なお、無機酸化物粒子の粒子層を形成した後に、金属アルコキシドの部分加水分解物や有機樹脂のモノマーやポリマーの分子状のマトリックス成分を該粒子層にコートして粒子と基材を接着させる場合、あるいは、無機酸化物粒子より大きなエマルジョン樹脂粒子と無機酸化物粒子とを混合したマトリックス成分を含む塗布液を用いて粒子層を形成する場合、前記マトリックス成分が微細凹凸を埋めると超親水性膜が得られない。また、このようなマトリックス成分を使用するときに、無機酸化物粒子をクラスター状にして被膜を形成することが知られているが、被膜の密着性が不十分であったり、繊維に被膜を形成すると繊維の風合いを損ねたり、透明被膜を得たいときに透明性の低い膜になる場合がある。
【0057】
一方、本発明の超親水性被膜は、粒子層の上側にトップコートが無いので、粒子の露出による凹凸構造およびヒマワリ状粒子の微細粒子による微細凹凸がトップコートによって埋め込まれることが無く、高い親水性を発揮する。また、被膜の密着性に優れており、繊維上に被膜を形成しても繊維の風合いが損なわれず、また透明性の高い被膜を得ることができる。
【0058】
〔超親水性被膜形成用塗布液〕
本発明の超親水性被膜付基材を製造する被膜形成用塗布液として、粒子表面が親水性の無機酸化物粒子と、樹脂エマルジョン粒子が、極性溶媒中に混在して単分散していることを特徴とする塗布液を用いると良い。該塗布液において、樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)は、無機酸化物粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことが好ましい。樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が無機酸化物粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことによって、無機酸化物粒子が樹脂エマルジョン粒子によって覆われ難くすることができる。樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が無機酸化物粒子の平均粒子径(D)より大きいと、樹脂エマルジョン粒子が崩壊したときに、無機酸化物粒子が崩壊した樹脂によって被覆される場合がある。
【0059】
前記塗布液において、無機酸化物粒子の量(G)と樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])は0.5以上(無機酸化物粒子量Gが50重量%以上)の範囲が好ましく、0.5〜0.98の範囲がさらに好ましい。該量比(G/[G+M])が前記範囲より小さいと被膜中の無機酸化物粒子の数が少なくなり、被膜の親水性および耐久性が不十分になる懸念がある。一方、該量比(G/[G+M])が前記範囲より大きいと相対的に樹脂量が少なくなり、接着強度が低下する懸念がある。
【0060】
前記塗布液は、粒子表面が親水性の無機酸化物粒子が極性溶媒に分散した分散液と、樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒に懸濁した懸濁液との二液からなるものでも良い。この二液からなる塗布液は、無機酸化物粒子分散液と樹脂エマルジョン粒子懸濁液とを混合することによって、無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に混在し分散した塗布液にして用いる。二液にすることによって保存性を高めることができる。前記(ロ)の塗布液は使用時に二液を混合する必要が無いので作業性が良い。
【0061】
無機酸化物粒子分散液の調製
前記無機酸化物粒子分散液は粒子表面が親水性の無機酸化物粒子を極性溶媒に分散した液である。無機酸化物粒子を極性溶媒に加え、ミキサーなどで撹拌して無機酸化物粒子分散液を調製する。該無機酸化物粒子の平均粒子径(D)は20〜600nmの範囲が好ましい。無機酸化物微粒子分散液の固形分濃度は0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜15重量%がさらに好ましい。
【0062】
前記無機酸化物粒子分散液の極性溶媒は、例えば、以下の溶媒(イ)〜(ト)を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
(イ)メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類。
(ロ)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピル、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類。
(ハ)エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類。
(ニ)ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プルピレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル類。
(ホ)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類。
(ヘ)トルエン等、N−メチルピロリドン等。
(ト)水
【0063】
樹脂エマルジョン粒子懸濁液の調製
樹脂エマルジョン粒子懸濁液は樹脂エマルジョン粒子が極性溶媒に懸濁した懸濁液である。エマルジョン用樹脂としては、エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、またはスチレン系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂が好ましい。被膜形成工程で樹脂エマルジョン粒子を崩壊させて接着層を形成するので、これらの樹脂は接着層の成分になる。
【0064】
前記樹脂を極性溶媒に加え、ミキサー等で撹拌すれば極性溶媒中で樹脂エマルジョン粒子が形成され、樹脂エマルジョン粒子懸濁液を得ることができる。極性溶媒は無機酸化物粒子分散液と同様のものを使用することができる。界面活性剤やpH調整剤を添加して高速撹拌することによって、樹脂エマルジョン粒子の粒子径を調整することができる。界面活性剤やpH調整剤の添加量、撹拌速度は樹脂および極性溶媒の種類、分散液中の樹脂量などによって樹脂エマルジョン粒子が目的の粒子径になるように調整すればよい。なお、樹脂エマルジョン粒子懸濁液は市販品を用いることができる。
【0065】
被膜形成用塗布液の調製
無機酸化物粒子分散液と樹脂エマルジョン粒子懸濁液を混合し、撹拌して無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子とが極性溶媒中に混在し分散している被膜形成用塗布液を調製する。無機酸化物粒子分散液に珪酸液を添加し、加熱熟成させた後に樹脂エマルジョン粒子懸濁液を混合すると良い。珪酸液を添加するとヒマワリ粒子の微細粒子と基体粒子が良く固着して微細粒子が脱落しない。なお、樹脂エマルジョン粒子懸濁液を調製せずに、無機酸化物粒子分散液に樹脂を直接に添加し、撹拌して樹脂エマルジョン粒子を形成させて被膜形成用塗布液を調製してもよい。
【0066】
前記塗布液には、架橋材や架橋抑制材などを入れ、エマルション粒子が崩壊・固着する温度を制御してもよい。さらにレベリング剤や分散剤を入れ、塗膜をより綺麗にすることができる。また必要に応じて光重合開始剤や熱硬化促進剤を入れてもよい。
【0067】
被膜形成用塗布液において、無機酸化物粒子濃度は0.1〜10重量%の範囲が好ましく、0.5〜8重量%の範囲がさらに好ましい。該濃度が前記範囲より低いと、無機酸化物粒子層の厚みが薄く、所望の凹凸が形成できない場合があり、また、無機酸化物粒子層の無い塗布ムラが生じやすいため、充分な親水性、強度、硬度、耐擦傷性が得られない場合がある。一方、該濃度が前記範囲より高いと、塗布方法によっても異なるが、塗工性が低下して所望の凹凸を形成できない場合がある。また、無機酸化物粒子層が厚くなり過ぎて透明性が低下し、またヘーズが高くなる場合がある。
【0068】
塗布液の樹脂エマルジョンの濃度は0.1〜10重量%の範囲が好ましく、0.5〜8重量%の範囲がさらに好ましい。樹脂エマルジョン濃度が前記範囲より低いと、十分な膜厚の接着層を形成することができず、接着強度も低下する懸念がある。一方、樹脂エマルジョン濃度が前記範囲より高いと、相対的に無機酸化物粒子濃度が低くなり、無機酸化物粒子層の厚みが薄く、所望の凹凸が形成できない場合がある。
【0069】
被膜形成用塗布液に含まれる樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)は無機酸化物粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことが好ましい。樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が無機酸化物粒子の平均粒子径(D)と同等か小さい(De≦D)ことによって、無機酸化物粒子が樹脂エマルジョン粒子によって覆われ難くすることができ、例えば、無機酸化物粒子の平均粒子半径の1/3〜2/3が接着層から露出した被膜を形成することができる。樹脂エマルジョン粒子の平均粒子径(De)が無機酸化物粒子の平均粒子径(D)より大きいと、樹脂エマルジョン粒子が崩壊したときに、無機酸化物粒子が崩壊した樹脂によって被覆される場合があるので好ましくない。
【0070】
被膜形成用塗布液に含まれる無機酸化物粒子の量(G)と樹脂エマルジョン粒子の量(M)との量比(G/[G+M])は0.5以上(無機酸化物粒子量Gが50重量%以上の範囲が好ましく、0.5〜0.98の範囲がさらに好ましい。該量比(G/[G+M])が前記範囲より小さいと被膜中の無機酸化物粒子の数が少なくなり、被膜の親水性および耐久性が不十分になる懸念がある。一方、該量比(G/[G+M])が前記範囲より大きいと相対的に樹脂量が少なくなり、接着強度が低下する懸念がある。
【0071】
〔超親水性被膜付基材の製造方法〕
本発明の超親水性被膜付基材は、前記被膜形成用塗布液を用い、該塗布液を基材に塗布して前記無機酸化物粒子相互の間隙に前記樹脂エマルジョン粒子が介在した粒子層を形成し、塗布後、加熱乾燥して該樹脂エマルジョン粒子の崩壊によって前記無機酸化物粒子相互の間隙および該無機酸化物粒子と前記基材との間隙に樹脂を入り込ませて接着層を形成し、該無機酸化物粒子の上部が該接着層から露出した凹凸構造を有する超親水性被膜を基材上に形成することによって製造される。
【0072】
超親水性被膜付基材の製造方法の概略を図5に示す。図示する製造工程は、下記の(I)無機酸化物粒子分散液調製工程、(II)樹脂エマルジョン粒子懸濁液調整工程、(III)前記分散液と前記懸濁液を混合して塗布液を調製する工程、(IV)塗布工程、(V)接着層形成工程を有している。なお、(I)工程〜(III)工程に代えて予め調整した被膜形成用塗布液を用い、(IV)塗布工程、(V)接着層形成工程によって被膜を形成してもよい。
【0073】
(I)無機酸化物粒子5が極性溶媒31に分散した分散液30を調整する工程(無機酸化物粒子分散液調製工程)。
(II)樹脂エマルジョン粒子32を極性溶媒33に懸濁させた樹脂エマルジョン粒子懸濁液34を調製する工程(樹脂エマルジョン粒子懸濁液調整工程)。
(III)分散液30と懸濁液34を混合して被膜形成用塗布液35を調製する工程(塗布液調製工程)。
(IV)塗布液35を基材1に塗布し、無機酸化物粒子5の相互の間隙に樹脂エマルジョン粒子32が介在した粒子層を形成する工程(塗布工程)。
(V)塗布液を加熱乾燥して樹脂エマルジョン粒子34を崩壊させて無機酸化物粒子5の相互間隙および無機酸化物粒子5と基材1との間隙に樹脂を入り込ませて、無機酸化物粒子の上部が露出した接着層4を形成する工程(接着層形成工程)。
【0074】
前記製造工程(IV)〜(V)を詳しく説明する。
(IV)塗布工程:塗布液を基材に塗布し、無機酸化物粒子相互の間隙に樹脂エマルジョン粒子が介在した粒子層を形成する。塗布方法は特に制限されず、例えば、バーコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、グラビアコート法、スリットコート法、加圧塗布法等を用いることができる。前記塗布液には無機酸化物粒子と共に樹脂エマルジョン粒子が含まれているので、一度の塗布作業で無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子を基材上に塗布することができる。また、塗布液中で無機酸化物粒子と樹脂エマルジョン粒子は均一に分散しているので、この塗布作業によって、無機酸化物粒子相互の間隙に樹脂エマルジョン粒子が介在した状態の粒子層を形成することができる。
【0075】
(V)接着層形成工程:塗布した液を加熱乾燥し、樹脂エマルジョン粒子を崩壊させて無機酸化物粒子の相互間隙および無機酸化物粒子と基材との間隙に樹脂を入り込ませる。加熱温度は樹脂エマルジョン粒子が崩壊する温度であれば良い。樹脂の種類によって異なるが、一般には60〜200℃に加熱すれば樹脂エマルジョン粒子が崩壊して樹脂が流れ出す。その後、必要に応じて、UV照射等やアニールを行って硬化を促進させてもよい。
【0076】
以上の工程によって製造された親水性被膜付基材は、無機酸化物粒子表面の親水性と共に、無機酸化物粒子が露出することによって形成されている高低差の大きな凹凸構造、さらには無機酸化物粒子表面の微細凹凸による形状特性との相乗的な効果によって高い親水性を有している。具体的には、水との接触角が10°以下、好ましくは5°以下の超親水性を有することができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0078】
〔実施例1〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂量標準、アクリル−スチレン〕
無機酸化物粒子(ヒマワリ状粒子)分散液[A1]の調製
(基体粒子の調製)
シリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイドSI−80P、平均粒子径80nm、表面電位−60mV、SiO濃度20重量%、pH10.2)750gに、陽イオン交換樹脂(ROHMHARS社製:デュオライト)150gを混合し、0.5時間撹拌した。ついで、陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学社製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌した後に該陰イオン交換樹脂を分離して、SiO濃度20重量%の精製シリカゾル750gを調製した。
(基体粒子分散液の調製)
精製シリカゾル750gに、ポリ塩化アルミニウム(多木化学社製:タキバイン#1000、Al濃度23.55重量%)5.1gを添加し、常温で0.5時間撹拌した。ついで、純水2903gを添加して希釈してSiO濃度4.1重量%のシリカからなる基体粒子分散液3658gを調製した。該基体粒子分散液のpHは3.7であった。
(微細粒子の添加)
前記基体粒子分散液(SiO濃度4.1重量%)3658gに、被覆用の微細粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイドSN−350、平均粒子径7nm、表面電位−23mV、SiO濃度16.6重量%、pH3.7)294gを混合した。この混合分散液のSiO濃度は5.0重量%、pHは3.5であった。
(ヒマワリ状粒子分散液の調製)
前記混合分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌し、ついで、陰イオン交換樹脂を分離し、ロータリーエバポレーターによりSiO濃度10重量%のシリカからなるヒマワリ状粒子分散液[A]を調製した。該分散液のHは7.0であった。
(平均粒子径Dの測定)
前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、10個の長径を測定し、その平均値とした。
(被覆率の測定)
前記ヒマワリ状粒子の分散液を120℃に加熱して乾燥し、該ヒマワリ状粒子の比表面積をBET法で測定し、被覆率を求めた。被覆率は前記式(4)に従って求めた。
基体用無機酸化物粒子の種類と平均粒子径、被覆用無機酸化物微粒子の種類と平均粒子径、ヒマワリ状粒子等の無機酸化物粒子の平均粒子径(Dp)、実測表面積、被覆率、粒子径比率、濃度を表1に示した。
【0079】
被膜形成用塗布液[C1]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)を2g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C1]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
【0080】
親水性被膜付基材[D1]の製造
被膜形成用塗布液[C1]を、ガラス基板(浜新社製品:FL硝子、厚さ:3mm、屈折率:1.51)にバーコーター法で塗布し、80℃で10分間乾燥して、親水性被膜付基材[D1]を製造した。製造した親水性被膜の膜厚、該被膜の凹凸構造の凸部平均高さ(T)、凸部間のピッチ幅(W)、接着層膜厚(U)、(U)/(D)比を表2に示す。
【0081】
凸部平均高さ(T)、ピッチ幅(W)は親水性被膜断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、10個の凸部の高さ、ピッチ間距離を測定してその平均値とした。無機酸化物粒子層膜厚(D)、接着層膜厚(U)も同様に親水性被膜断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、これらの10個所の厚さを測定しその平均値とし、この平均値を用いて膜厚比(U/D)を算出した。
【0082】
さらに、無機酸化物粒子について、微細凹凸(TFF)、微細凹凸のピッチ幅(WFF)を表2に示す。微細凹凸(TFF)はAFMを用い500nm範囲を測定した。さらに単粒子上の表面粗さ(Ra)を3点測定しその平均値を微細凹凸とした。微細凹凸のピッチ幅(WFF)は、走査電子顕微量(SEM)を撮影し、10個の凸部の高さ、ピッチ間距離を測定し、その平均値とした。
【0083】
得られた膜の鉛筆硬度、密着性、親水性(接触角)、汚れ落ち性、全光線透過率、およびヘーズを測定した。結果を表2に示す。全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(スガ試験機社製)によって測定した。なお、未塗布のガラスは全光線透過率が92.0%、ヘーズが0.1%であった。
【0084】
被膜の親水性、鉛筆硬度、密着性、汚れ落ち性は以下の方法で測定した。
(イ)親水性
親水性は全自動接触角計(協和界面科学社製DM700)を用いて5μL水との接触角を測定した。
(ロ)鉛筆硬度
鉛筆硬度はJIS−K−5600に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。評価基準を以下に示す。
2H以上:◎ H〜2H:○
B〜H :△ B以下 :×
(ハ)密着性
密着性は親水性透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付けて100個の升目を作り、これにセロファンテープを接着、剥離したときの被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。評価基準を以下に示す。
残存升目の数100個: ◎ 残存升目の数95〜99個:○
残存升目の数90〜94個:△ 残存升目の数89個以下 :×
(ニ)汚れ落ち性
汚れ落ち性は親水性透明被膜付基材[C1]の表面に三菱油性マーカー(細字 ピース赤)を用いて3cm線を書き、その後に流水で3分流した際のインクの残りを目視で確認して評価した。評価基準を以下に示す。
インクが完全に落ちる :◎ インクがよく見ると残っている:○
インクがやや残っている:△ インクが明らかに残っている :×
【0085】
〔実施例2〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂少量、アクリル−スチレン〕
被膜形成用塗布液[C2]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC株式会社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)を0.2g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C2]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D2]の製造
被膜形成用塗布液[C2]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D2]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0086】
〔実施例3〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂多量、アクリル−スチレン〕
被膜形成用塗布液[C3]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)を5g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C3]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D3]の製造
被膜形成用塗布液[C3]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D3]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0087】
〔実施例4〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂量標準、エマルシ゛ョン粒子径小、アクリル−スチレン〕
エマルション樹脂粒子懸濁液[B2]の調製
樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)100gに1%塩酸と純水を添加してpH4.5の20%希釈液250gを調製した。その後、ホモミキサーを用いて1500rpmで15分撹拌して、エマルション樹脂粒子懸濁液[B2]を調製した。この樹脂エマルション懸濁液[B2]について、TEMを用いて観察したところ、平均粒子径30nmの樹脂エマルションであった。
被膜形成用塗布液[C4]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B2]を5g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C4]を得た。該塗布液のpHは6.0であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D4]の製造
被膜形成用塗布液[C4]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D4]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0088】
〔実施例5〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂量標準、アクリル−ウレタン〕
被膜形成用塗布液[C5]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B3](DIC社製CG-5010EF:粒子サイズ100nm:濃度45重量%、アクリル−ウレタン)を2.22g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C5]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D5]の製造
被膜形成用塗布液[C5]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D5]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0089】
〔実施例6〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂量標準、アクリル−シリコーン〕
被膜形成用塗布液[C6]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B4](DIC社製SA-6360:粒子サイズ150nm:濃度50重量%、アクリル−シリコーン)を2g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C6]を得た。該塗布液のpHは8.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D6]の製造
被膜形成用塗布液[C6]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D6]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0090】
〔実施例7〕
〔小粒子ヒマワリ状粒子、樹脂量標準、アクリル−スチレン〕
無機酸化物粒子(ヒマワリ状粒子)分散液[A2]の調製
(基体粒子の調製)
シリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイドSI―45P、平均粒子径45nm、表面電位−60mV、SiO濃度20重量%、pH10.2)750gに陽イオン交換樹脂(ROHMHARS社製:デュオライト)150gを混合し、30℃で0.5時間撹拌した。ついで、陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学社製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌し、ついで、陰イオン交換樹脂を分離して、SiO濃度20重量%の精製シリカゾル750gを調製した。ついで、精製シリカゾル750gにポリ塩化アルミニウム(多木化学社製:タキバイン#1000、Al濃度23.55重量%)9.2gを添加し、常温で0.5時間撹拌した。ついで、純水2903gを添加して希釈したSiO濃度4.1重量%のシリカからなる基体用金属酸化物粒子分散液[a-2]3662gを調製した。ついで、この基体用金属酸化物粒子分散液[a-2]3662gに、シリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイドSN−350、平均粒子径7nm、表面電位−23mV、SiO濃度16.6重量%、pH3.7)595gを混合した。このとき、混合分散液のpHは3.5であった。ついで、混合分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌し、ついで、陰イオン交換樹脂を分離し、ロータリーエバポレーターによりSiO濃度10重量%のシリカからなる無機酸化物粒子(ヒマワリ状粒子)分散液[A2]を調製した。分散液のpHは6.5であった。
被膜形成用塗布液[C7]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A2]90gを使用した以外は実施例1と同様にして被膜形成用塗布液[C7]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D7]の製造
被膜形成用塗布液[C7]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D7]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0091】
参考例8
〔金平糖粒子、樹脂量標準、アクリル−スチレン〕
被膜形成用塗布液[C8]の調製
金平糖シリカ粒子分散液(日揮触媒化成社製:カタロイドCO-80A、平均粒子径80nm、比表面積43m/g、表面電位−60mV、SiO濃度40重量%、pH10.2)22.5gを使用した以外は実施例1と同様にして被膜形成用塗布液[C8]を得た。該塗布液のpHは9.5であった。金平糖粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、金平糖粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔金平糖粒子/(金平糖粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D8]の製造
被膜形成用塗布液[C8]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D8] を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0092】
参考例9
〔多孔質粒子、樹脂量標準、アクリル−スチレン〕
被膜形成用塗布液[C9]の調製
多孔質シリカアルミナ粒子分散液(日揮触媒化成社製:カタロイドUSBB−120、平均粒子径30nm、比表面積800m/g、濃度20重量%、pH11.2)22.5gを使用した以外は実施例1と同様にして被膜形成用塗布液[C9]を得た。該塗布液のpHは9.5であった。多孔質粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、多孔質粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔多孔質粒子/(多孔質粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D9]の製造
被膜形成用塗布液[C9]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D9] を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0093】
〔実施例10〕
〔実施例1の基材変更〕
親水性被膜付基材[D10]の製造
基材をスレート板に使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[D10]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表1〜に示す。
【0094】
〔実施例11〕
〔ヒマワリ状粒子AgO複合化、樹脂量標準、アクリル−スチレン〕
無機酸化物粒子(ヒマワリ状粒子)分散液[A3]の調製
(基体粒子の調製)
シリカゾル(日揮触媒化成社製:カタロイドSI−80P、平均粒子径80nm、表面電位−60mV、SiO濃度20重量%、pH10.2)750gに、陽イオン交換樹脂(ROHMHARS社製:デュオライト)150gを混合し、0.5時間撹拌した。ついで、陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学社製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌した後に該陰イオン交換樹脂を分離して、SiO濃度20重量%の精製シリカゾル750gを調製した。
(基体粒子分散液の調製)
前記精製シリカゾル750gに、ポリ塩化アルミニウム(多木化学社製:タキバイン#1000、Al濃度23.55重量%)5.1gを添加し、常温で0.5時間撹拌した。ついで、純水2903gを添加して希釈してSiO濃度4.1重量%のシリカからなる基体粒子分散液3658gを調製した。該基体粒子分散液のpHは3.7であった。
(微細粒子の添加)
前記基体粒子分散液(SiO濃度4.1重量%)3658gに、被覆用の微細粒子としてAgO-SiO-Alナノ粒子(日揮触媒化成社製:ATOMY BALL UA平均粒子径10nm、表面電位−20mV、濃度1.5重量%、pH7.0)3253gを混合した。その後ロータリーエバポレーターで濃度5.0重量に濃縮した。
(ヒマワリ状粒子分散液の調製)
前記混合分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学社製:SUNNUP−C)135gを混合し、0.5時間撹拌し、ついで、陰イオン交換樹脂を分離し、ロータリーエバポレーターによりSiO濃度10重量%のシリカからなるヒマワリ状粒子分散液[A3]を調製した。該分散液のHは7.0であった。
(平均粒子径Dpの測定)
前記ヒマワリ状粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、10個の長径を測定し、その平均値とした。
(被覆率の測定)
前記ヒマワリ状粒子の分散液を120℃に加熱して乾燥し、該ヒマワリ状粒子の比表面積をBET法で測定し、被覆率を求めた。被覆率は前記式(4)に従って求めた。
被膜形成用塗布液[C11]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A3]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)を2g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[C11]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表1に示した。
親水性被膜付基材[D11]の製造
被膜形成用塗布液[C11]を使用した以外は実施例10と同様にして親水性被膜付基材[D11]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0095】
〔実施例12〕
〔実施例1の基材変更〕
親水性被膜付基材[D12]の製造
被膜形成用塗布液[A1]をナイロン繊維(線径10μm細孔径1μm)にディップ法で、乾燥層厚が表1の値になるように塗布し、80℃で10分間乾燥して親水性被膜付基材[D12]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。ナイロンについて風合いを確認した。風合いは、塗膜前後の手による触感に基づいて評価した。評価基準を以下に示す。
塗布前後で感触が変わらないもの :◎
塗布後に僅かにゴワゴワ感があるもの :○
塗布後に少しゴワゴワ感があるもの :△
塗布後に明らかにゴワゴワ感があるもの:×
【0096】
〔実施例13〕
〔ヒマワリ状粒子AgO複合化、基材変更〕
親水性被膜付基材[D13]の製造
被膜形成用塗布液[C11]をナイロン繊維(線径10μm細孔径1μm)にディップ法で、乾燥層厚が表1の値になるように塗布し、80℃で10分間乾燥して親水性被膜付基材[D13]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表2に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
〔比較例1〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂オリゴマー(非エマルシ゛ョン)〕
接着層形成用塗布液[R1]の調製
変性アルコール(日本アルコール販売社製:ソルミックスA−11、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール)72.5gに水10.0gと濃度61重量%の硝酸0.1gを添加し、25℃で10分撹拌した。ついで、テトラエトキシシラン(多摩化学工業社製:正珪酸エチル‐A、SiO濃度28.8重量%)17.4gを添加し、30℃で30分撹拌してテトラエトキシシラン加水分解物(固形分濃度5.0重量%、分子量1000)のシリカからなる接着層形成用塗布液[R1]を調製した。
被膜形成用塗布液[R2]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、接着層形成用塗布液[R1]を20g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[R2]を得た。該塗布液のpHは3.8であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、ヒマワリ状粒子と樹脂の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表3に示した。
親水性被膜付基材[R3]の製造
被膜形成用塗布液[R2]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[R3]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表4に示す。
【0100】
〔比較例2〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂無添加〕
被膜形成用塗布液[L2]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後エタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液[L2]を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、ヒマワリ状粒子と樹脂の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表3に示した。
親水性被膜付基材[L3]の製造
被膜形成用塗布液[L2]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[L3]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表4に示す。
【0101】
〔比較例3〕
〔標準粒子径ヒマワリ状粒子、樹脂過剰量〕
被膜形成用塗布液[M2]の調製
前記ヒマワリ状粒子分散液[A1]90gに、5%珪酸液を1.8g添加し、80℃で3時間熟成した。その後、樹脂エマルジョン粒子懸濁液[B1](DIC株式会社製CG8370:粒子サイズ100nm:濃度50重量%、アクリル−スチレン)を72g添加し、次いでエタノールを添加して固形分濃度を5重量%に調製し、マグネチックスターラーで、室温下、1時間撹拌して被膜形成用塗布液(R3)を得た。該塗布液のpHは7.5であった。ヒマワリ状粒子の濃度、樹脂の種類、樹脂エマルジョン粒子の粒子径、ヒマワリ状粒子と樹脂エマルジョン粒子の量比〔ヒマワリ状粒子/(ヒマワリ状粒子+樹脂エマルジョン粒子〕、固形分濃度、pHを表3に示した。
親水性被膜付基材[M3]の製造
被膜形成用塗布液[M2]を使用した以外は実施例1と同様にして親水性被膜付基材[M3]を製造し、実施例1と同様に膜の物性を測定した。この結果を表4に示す。
【0102】
〔比較例4〜6〕
〔基材の物性〕
実施例1〜13に使用した基材(ガラス、スレート、ナイロン)の物性を測定して表4に示した。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【符号の説明】
【0105】
1−基材、2−被膜、3−粒子層、4−接着層、5−無機酸化物粒子、6−水滴、10−超親水性被膜付基材、20−ヒマワリ状粒子、21−基体粒子、22−微細粒子、30−分散液、31−極性溶媒、32−樹脂エマルジョン粒子、33−極性溶媒、34−懸濁液。
図1
図2
図3
図4
図5