特許第6749102号(P6749102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749102
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】軟体動物用忌避材
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/34 20060101AFI20200824BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20200824BHJP
   A01N 43/42 20060101ALI20200824BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20200824BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20200824BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20200824BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20200824BHJP
   C08K 5/3437 20060101ALI20200824BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200824BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20200824BHJP
【FI】
   A01N25/34 AZBP
   A01P17/00
   A01N43/42
   A01N25/10
   A01M29/12
   C08L67/04
   C08L67/02
   C08K5/3437
   B32B27/00 A
   !C08L101/16
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-18861(P2016-18861)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-137261(P2017-137261A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年12月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166649
【氏名又は名称】五洋紙工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 有希
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】小西 優也
(72)【発明者】
【氏名】川原 央
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−155116(JP,A)
【文献】 特開2002−171892(JP,A)
【文献】 特開2005−151862(JP,A)
【文献】 特開平11−286402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/34
A01M 29/12
A01N 25/10
A01N 43/42
A01P 17/00
B32B 27/00
C08K 5/3437
C08L 67/02
C08L 67/04
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムからなり、サポニンの含有量が全体重量を基準として10〜50重量%であることを特徴とする軟体動物用忌避材。
【請求項2】
生分解性プラスチックが脂肪族ポリエステル系縮重合体であることを特徴とする請求項1に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項3】
生分解性プラスチックがコハク酸と1,4−ブタンジオールを主成分とする縮重合体であることを特徴とする請求項1に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項4】
生分解性プラスチックがポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系縮重合体とからなる樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項5】
生分解性プラスチックのフィルムの厚さが3〜80μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項6】
生分解性プラスチックフィルムのいずれかの面に粘着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の軟体動物用忌避材が基材層上に積層されていることを特徴とする軟体動物用忌避材。
【請求項8】
基材層が紙であることを特徴とする請求項に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項9】
基材層の厚さが10〜150μmであることを特徴とする請求項又はに記載の軟体動物用忌避材。
【請求項10】
基材層に粘着剤層が設けられていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項11】
幅が0.5〜30cmのテープ状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の軟体動物用忌避材。
【請求項12】
請求項11に記載のテープ状の軟体動物用忌避材を果菜類の幹又は枝に巻き付けることを特徴とする軟体動物用忌避材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟体動物用忌避材に関し、更に詳しくは、環境に優しい材料からなり、植物の新芽、花、葉、果実などに食害を与えるナメクジ類、カタツムリ類などの腹足類に属する軟体動物に対する忌避材に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、食用きのこ、花木など多くの植物が露地栽培やハウス栽培などで栽培されている。これらの植物は、新芽、花、葉、果実などがナメクジやカタツムリの被害にあうことが多い。特にハウス栽培では散水の頻度が高く、湿潤した環境下でナメクジやカタツムリなどが寄生し、特に新芽のときに食害を受けるという問題がある。
これらの食害を防ぐ方法として、パラホルムアルデヒドやメタアルデヒドを有効成分とする合成薬剤が知られている。しかし、この薬剤は、害虫の駆除、殺虫を目的としたもので、薬効が強い反面、植物に付着した場合、植物を傷める可能性があること、散布に際しては、安全性の面から人体や家畜、ペットなどへの影響を避ける必要性があること、散水や降雨によって洗い流され効果が持続しないこと、などの多くの問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、ツバキ科植物の種子などから植物油を搾油した後の絞り粕がナメクジやカタツムリに対して忌避効果があり、絞り粕を造粒したものを忌避剤として使用することも知られている(特許文献1)。この忌避剤の薬効成分はサポニンであると考えられている。しかし、これら固体状の搾油絞り粕は、風による飛散や土中への埋没による薬効の低下が起こる。また、その造粒物は、土中への埋没の他、施薬の偏りによる効果の不均一が起こる。更に、経時による薬効の低下も大きく、特に降雨によって、薬効成分が流出してしまい、その後の効果の低下が大きい。
【0004】
また、粘着剤を裏面に塗布した合成樹脂のテープやシートにサポニンを付着させることが提案されている(特許文献2)。しかし、サポニンを合成樹脂のテープやシートの表面に付着させる場合は、前記と同様に経時による薬効の低下や、降雨や散水後の薬効の劣化が大きい。
【0005】
更に、上記の諸課題を解決する手段として、ツバキ科植物の種子を搾油した搾油粕からの抽出物を、水系樹脂、例えば水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、水溶性アルキド樹脂、水溶性エポキシ樹脂などに含有させたコーティング液をシート状部材に塗布し、乾燥及び/又は熱処理したり、樹脂を架橋など硬化させて強度や耐水性を改善した軟体動物忌避シートが開示されている(特許文献3)。しかし、この忌避シートは製造工程が煩雑であり、また硬化樹脂は剛性が高く取扱い性が悪いだけでなく、地面への馴染みもないために、薬効の発揮も悪い。また水系樹脂の硬化物は硬化過程で、分散剤である水分の蒸発が起こるため、水による微細な小孔が表面に発生し、初期の薬効は発揮されるが、降雨や散水後の効果の低下が大きく、持続性が十分とは云い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−175925号公報
【特許文献2】特開2002−171892号公報
【特許文献3】特開2013−155116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点が解消され、使用後は微生物により分解されるので、環境に優しく、また、風による飛散や土中への埋没による薬効の低下や、散水や降雨による薬効の低下がないので長期に亘って均一な薬効を発揮し、更に、曲げ弾性率の低い生分解性プラスチックからなる場合は柔軟性に富むので、地表面への馴染み性が良好であるばかりでなく、果菜類の幹や枝に巻き付けることができ、更にまた、押出成形や押出ラミネート加工により製造可能な軟体動物用忌避材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、サポニンを含有する生分解性プラスチックのフィルムからなる軟体動物用忌避材、又は、該忌避材を基材上に積層した軟体動物用忌避材が上記課題を悉く解消し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、下記を特徴とするものである。
1.サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムからなり、サポニンの含有量が全体重量を基準として10〜50重量%であることを特徴とする軟体動物用忌避材
.生分解性プラスチックが脂肪族ポリエステル系縮重合体であることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.生分解性プラスチックがコハク酸と1,4−ブタンジオールを主成分とする縮重合体であることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.生分解性プラスチックがポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系縮重合体とからなる樹脂組成物であることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.生分解性プラスチックフィルムの厚さが3〜80μmであることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.生分解性プラスチックフィルムのいずれかの面に粘着剤層が設けられていることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.上記の軟体動物用忌避材が基材層上に積層されていることを特徴とする軟体動物用忌避材。
.基材層が紙であることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
.基材層の厚さが10〜150μmであることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
10.基材層に粘着剤層が設けられていることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
11.幅が0.5〜30cmのテープ状であることを特徴とする上記の軟体動物用忌避材。
12.上記のテープ状の軟体動物用忌避材を果菜類の幹又は枝に巻き付けることを特徴とする軟体動物用忌避材の使用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軟体動物用忌避材(以下、単に忌避材と記す場合がある)は、生分解性プラスチックからなり、使用後は自然界の微生物により分解され自然に還るので環境を悪化させることがない。特に、植物など再生可能な原料からなるバイオマスは、分解時や燃焼時には二酸化炭素を排出するが、成長時には光合成により大気中の二酸化炭素を吸収・固定するので実質的に二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが達成され、循環型社会の実現に大きく貢献することができる。
また、風による飛散や土中への埋没による薬効の低下が起きることがなく、更に、散水や降雨によってサポニンが洗い流されることがないので、薬効が長時間に亘って持続する。
【0011】
また、樹脂を架橋したり熱硬化しないので、柔軟性に富み、特に曲げ弾性率の低い生分解性プラスチックフィルムを用いる場合は地表面への馴染み性が良好であるばかりでなく、また、果菜類の幹や枝に容易に巻き付けることができるので、薬効が効果的に発揮される。
【0012】
また、基材層と積層することにより忌避材の製造が容易となり、また、強度も大きくなる。基材層として紙を使用すると紙の繊維と繊維との隙間からサポニンが放出され薬効を発揮するので好都合である。
【0013】
また、忌避材をテープ状とすることにより、果菜類の幹や枝に容易に巻き付け易くなるので、薬効が直接的且つ効果的に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いられるサポニンは、サポゲニンと糖から構成される配糖体で、サボンソウなど種々の植物に含まれる。純粋のものは白色の粉末で親水性、親油性の両親媒性の物質であるが、ツバキ、茶、サザンカなどツバキ科植物の種子の搾油後の搾油粕からも抽出して得られる粉末が使用できる。また、市販品としては、東京化成工業株式会社から商品名「サポニン」として販売されており、これを使用することができる。
【0015】
本発明で用いられる生分解性プラスチックとは、使用中は通常のプラスチックと同様に使えて、使用後は自然界の微生物により水と二酸化炭素に分解されて自然に還るプラスチックとされている。空気中、土中、水中で種類により分解速度が異なるが、概ね、フィルム状で、数週間から数カ月、板状で1年から数年で分解するとされ、使用用途によって種類を使い分けることができる。
生分解性プラスチックは、化学合成系、微生物生産系、天然物系に分類される。化学合成系としては、とうもろこし、ジャガイモ、サトウキビから得られる糖類や澱粉を発酵させて得た乳酸を重合させたポリ乳酸樹脂(例えば、ユニチカ株式会社製テラマック、三井化学社製レイシア)、澱粉から製造されるコハク酸と1,4−ブタンジオールを原料とするポリブチレンサクシネート(例えば三菱化学社製GS Pla)、ひまし油を原料とするポリアミド11(例えばアルケマ社製リルサンB)が挙げられる。微生物生産系としては、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(例えば三菱ガス化学社製ビオグリーン)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の共重合体(例えばカネカ社製PHBH)が挙げられる。天然物系としては、酢酸セルロース(例えばダイセル化学社製セルグリーンPCA)、エステル化澱粉(例えば日本コーンスターチ社製コーンポール)、キトサン/セルロース/澱粉(例えばアイセロ化学社製ドロンCC)、澱粉/変性ポリビニルアルコール(例えばノバモント社製Mater−Bi)等が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ、2種以上組み合わせて用いられる。特に、二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが達成される環境型材料として注目されているバイオマスプラスチックが好ましい。
【0016】
これらのうちで本発明に用いられる生分解性プラスチックは、特に曲げ弾性率の低いものがフィルム加工面、及び忌避材としての使用面から好ましい。曲げ弾性率について、例えばポリプロピレン(曲げ弾性率JIS K 7203:約1,300MPa)程度以下、好ましくは高密度ポリエチレン(同約900MPa)以下、更には低密度ポリエチレン(同:約150MPa)相当又はそれ以下のものが、成形性や畑、鉢、プランター、枝、幹など適用表面への馴染みの点で、より好ましい。
このような生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸系としてユニチカ株式会社製「テラマック TE−1070(1400MPa)」、ポリブチレンサクシネート系(コハク酸、1,4−ブタンジオール、乳酸の3成分の縮重合体)として三菱化学株式会社製 GS Pla FZ91PN(650MPa)、AZ91TN(550MPa)、AD92WN(300MPa)等が挙げられる。
【0017】
また、基材層上に積層する場合は、ポリ乳酸に、特定量の乳酸を含有する乳酸系脂肪族ポリエステルを混合使用することにより、ラミネーション時の加工安定性が著しく改善される。具体的には、ポリ乳酸(A)と、乳酸を0.7〜10重量%含有する乳酸系脂肪族ポリエステル(B)とからなり、前記(A)100重量部に対し前記(B)が20〜80重量部からなるものが好ましい。
【0018】
サポニンを上記樹脂に配合する量は、サポニンの量が多くなると忌避効果は大きくなるがフィルム成形性は低下する傾向がある。従って、所望の忌避効果と、樹脂の種類や成形方法などを勘案して適宜決定される。通常、重量基準で4〜50%が好ましく、8〜45%がより好ましく、13〜45%が更に好ましい。4%未満では忌避効果が十分でなく、50%を超えるとサポニンの吸湿性によってフィルム成形時や加工時または基材上への押出ラミネート加工時に水分による発泡が起こり、加工が難しくなる場合がある。従って、サポニンやサポニン配合樹脂を事前に十分乾燥しておくことによって50%を超えて多量に配合することも可能である。
【0019】
サポニンを含有する樹脂には、必要に応じ、更に酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、充填剤などの添加剤を添加することができる。
サポニンを含有する樹脂に充填剤を配合することにより、フィルム中からのサポニンの透過、移行、放出を調節し、忌避効果を発揮する期間を調節することができる。このような充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪藻土、シリカ、タルク、セリサイト等があげられる。
【0020】
上記の如く、サポニン及び必要に応じ添加剤を含有する樹脂は、公知の方法でフィルム化されるが、押出成形が好ましい。また、必要に応じ、このフィルムを基材層上に積層することも可能で、積層方法としては押出ラミネート加工が好ましい。
基材層としては、紙、ポリエチレン、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックなどのプラスチック製フィルム、プラスチック製フィルムの発泡体、天然繊維又は合成繊維製布帛、不織布などが使用可能であるが、これらの中では、紙、布帛、不織布が好ましく、特に、紙はサポニンを含有する樹脂との押出ラミネート加工性が良好である点で好ましい。これらを基材層とすることにより、繊維と繊維との隙間からサポニンが放出されるので、基材層と接する側からも忌避効果が得られるとともに、テープ状の忌避材の場合は、これを果菜類の幹や枝に巻き付けて使用する場合は、幹や枝の成長に合わせて、これらの基材層も伸張するので、幹や枝への追従姓が良好である。
【0021】
本発明において、サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムの厚さは特に制限されないが、余り厚すぎると忌避材の地表面や果菜類の幹や枝への馴染み性が低下し、また、テープ状忌避材の場合には幹や枝への巻き付けが困難となり、一方、余り薄すぎると強度が不十分となる傾向がある。従って、通常、3〜80μm程度が好ましく、5〜50μm程度がより好ましい。
また、サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムの幅は特に制限されないが、テープ状忌避材の場合は、余り大きすぎても余り小さすぎても、忌避材の地表面や果菜類の幹や枝への馴染み性が低下し、また、忌避材の幹や枝への巻き付けが困難となる傾向がある。従って、通常、0.5〜30cm程度が好ましく、2〜30cm程度がより好ましい。また、予め大きめの幅として、忌避材を敷設する地表面の広さや巻き付ける幹や枝に合わせて適宜切断できるようにミシン目を入れておくのも好ましい。
また、基材層の厚みも余り厚すぎると忌避材の地表面や果菜類の幹や枝への馴染み性が低下し、また、果菜類の幹や枝への巻き付け性が低下し、テープ状の忌避材の場合は幹や枝への巻き付けが困難となり、一方、余り薄すぎると強度が不十分となるので、通常、10〜150μm程度が好ましく、より好ましくは10〜130μmである。
【0022】
押出成形や押出ラミネート加工は、サポニンに熱をかけすぎると薬効を低下させたり、失効させたりするおそれがあるので、できるだけ低い温度で行うのが好ましく、生分解性プラスチックの融点〜融点+50℃程度の範囲が好ましい。例えば、ポリ乳酸(ユニチカ株式会社製テラマック:融点170℃、ガラス転移温度57℃)の場合は170〜220℃程度が適当である。必要に応じ、基材層にコロナ処理等を施してフィルムとの接着性を高めることができる。
【0023】
また、サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムは、細孔を設けることにより、フィルム内のサポニンの放出性や徐放性を高めることができる。
細孔は、サポニンと炭酸カルシウム等の充填剤を含有する生分解性プラスチックフィルムを延伸して充填剤を除去することにより細孔を設けたり、針で孔を開ける等により設けることができる。細孔は余り大きすぎると徐放性が期待できず、また、降雨や散水後に薬効が劣化し、忌避効果の持続性に問題が生じる虞れがある。従って、細孔は小さいほうが良く、通常、細孔の平均径は0.02〜5μm程度が好ましく、0.1〜2μm程度がより好ましい。
【0024】
本発明の忌避材は、サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルムに、又は、基材層を有する場合は基材層にそれぞれ粘着剤層を設けることができる。
粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系等のいずれでも良くこれらの中では分解性が良い点でゴム系又はウレタン系が好ましい。
粘着剤層の厚さは、余り薄すぎると粘着力が不十分となり、一方、余り厚すぎると、たとえば、忌避テープを所望の形状に打ち抜くの際に粘着剤のはみ出しや打ち抜き不良が起こりやすく加工性が劣る傾向がある。従って、通常、2〜30μm程度が好ましく、2〜20μm程度がより好ましい。
【0025】
粘着剤層は、サポニンを含有する生分解性プラスチックフィルム、又は、基材層上に、粘着剤を流延したり塗工することにより塗布し、乾燥することにより形成される。
塗布法としては、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が採用される。また、粘着剤層の上に、更に剥離紙などを積層して使用上の便宜を図ることができる。
【0026】
本発明の忌避材は、ナメクジ等を忌避(近づくのを阻止)したい場所に配すれば良く、たとえば、畑、鉢やプランター等に使用されるが、特に、テープ状の忌避材の場合は果菜類の幹や枝に巻き付けることにより、直接的且つ効果的に忌避させることができる。巻き付け方法としては、粘着剤層を有しない忌避材は、果菜類の幹や枝に巻き付けた後、両端部をホッチキスや粘着テープで止めたり接着剤で接着する方法、粘着剤層を有する忌避材は、該粘着剤層により果菜類の幹や枝に貼着する方法等が採用できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、シート状忌避材の実施例及び比較例を示し、ついでテープ状忌避材の実施例、比較例及び使用例を示す。
なお、忌避材の忌避効果については、シート状忌避材、テープ状忌避材のそれぞれについて、下記の試験方法により評価した。
【0028】
シート状忌避材の試験方法:
40cm×40cm×(高さ)30cmの木製の箱の底に排水口を設け、その中央部に30cm×30cmのシート状忌避材のサンプルを置いた。箱の中央部に軟体動物の誘引剤として約10gの市販の菜種油の搾油粕を置いた。箱の中のサンプルの周りに10匹のナメクジを置き、温度25℃、相対湿度65%で6時間放置した。試験開始後3時間の時点で園芸用のジョウロで散水した。試験開始から12時間経過後に誘引剤上にいるナメクジの数を数えた。なお、ナメクジは農家のハウス畑の中で採取したものを用いた。
【0029】
テープ状忌避材の試験方法:
40cm×40cm×30cm(高さ)の木製の箱の底に排水口を設け、その中央部に長さ30cm×幅5cmのテープ状の忌避材を用いて外側長さが30cm、内側長さが20cmで幅5cmの四角形枠状(ロ字状)の忌避材を配置した。該枠状テープ状忌避材の内側中央部には、軟体動物の誘引剤として約10gの市販の菜種油の搾油粕を置いた。また、該枠状のテープ状忌避材の外側には10匹のナメクジを置き、温度25℃、相対湿度65%で6時間放置した。試験開始後3時間の時点で園芸用のジョウロで散水した。試験開始から12時間経過後に、該枠状のテープ状忌避材の内側中央部に置いた誘引剤上にいるナメクジの数を数えた。なお、ナメクジは農家のハウス畑の中で採取したものを用いた。
【0030】
実施例1
ポリブチレンサクシネート系生分解性プラスチック(三菱化学株式会社製 GS Pla AD92WN、曲げ弾性率:300MPa)にサポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を5重量%配合しペレット化した後、T-ダイ押し出し機を用いてダイス温度150℃で厚さ約20μmのフィルムを押し出し、フィルム単体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0031】
実施例2
ポリブチレンサクシネート系生分解性プラスチック(三菱化学株式会社製 GS Pla AD92WN、曲げ弾性率:300MPa)にサポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を10重量%配合しペレット化した後、坪量84g(厚さ約110μm)の未晒しクラフト紙にサポニン配合の前記樹脂組成物をT-ダイ押し出し機を用いてダイス温度150℃で押し出し、前記クラフト紙の片面にコロナ処理をしながら、ラミネート厚さ約20μmになるようラミネートし、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0032】
実施例3
サポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を15重量%配合しペレット化した以外は、実施例2と同様にして、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0033】
実施例4
ポリ乳酸(A)(ユニチカ株式会社製、テラマックTE−2000C)100重量部に対して、コハク酸と1,4−ブタンジオール各100モル%に対して乳酸2モル%(0.86重量%)を共縮合させた乳酸系脂肪族ポリエステル(B)(三菱化学株式会社製、GS Pla FZ81PD)を25重量部混合した樹脂組成物にサポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を20重量%配合しペレット化した以外は、実施例1と同様にして、未晒しクラフト紙にサポニン配合の樹脂組成物をT-ダイ押し出し機を用いてダイス温度210℃で押し出し、前記クラフト紙の片面にコロナ処理をしながら、ラミネート厚さ約20μmになるようラミネートし、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0034】
実施例5
ポリブチレンサクシネート系生分解性プラスチック(三菱化学株式会社製、GS Pla FZ91PN、曲げ弾性率:650MPa)を用い、サポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を30重量%配合しペレット化し、未晒しクラフト紙にサポニン配合の樹脂組成物をT-ダイ押し出し機を用いてダイス温度160℃で押し出した以外は実施例2と同様にして、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0035】
実施例6
サポニン(東京化成工業株式会社製 商品名:サポニン)を重量比で40重量%配合しペレット化した以外は、実施例5と同様にして、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0036】
実施例7
実施例4において、未晒しクラフト紙を用いず、樹脂組成物にサポニンを20重量%配合し、T-ダイ押し出し機を用いてダイス温度210℃で厚さ30μmのフィルムを押出し、フィルム単体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0037】
比較例1
樹脂組成物にサポニンを配合しなかった他は実施例4と同様にして、フィルムと基材層の積層体からなる軟体動物用忌避材を作製した。
【0038】
上記実施例1〜7及び比較例1で得られた軟体動物用忌避材から30cm×30cmのシ−ト状サンプルを切り出し、上記シート状忌避材の試験方法に従い忌避効果の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜7に代表される本発明の軟体動物用忌避材は、優れた忌避効果を発揮する。尚、実施例4(積層体)と実施例7(フィルム単体)との比較から、積層体からなる軟体動物用忌避材とフィルム単体からなる軟体動物用忌避材との間には忌避効果の大きな差異は認められない。
【0041】
実施例8〜14、比較例2
上記実施例1〜7及び比較例1で得られた軟体動物用忌避材シートを長さ30cm×幅5cmにスリットしたテープ状忌避材より作製した実施例8〜14及び比較例2の上記四角形枠状の忌避材を用い、上記テープ状忌避材の試験方法にしたがって試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果から明らかなように、実施例8〜14に代表される本発明のテープ状の軟体動物用忌避材は、優れた忌避効果を発揮する。尚、実施例11(積層体)と実施例14(フィルム単体)との比較から、積層体からなる軟体動物用忌避材とフィルム単体からなる軟体動物用忌避材との間には忌避効果の大きな差異は殆ど認められない。
【0044】
使用例
上記実施例1〜7及び比較例1で得られた軟体動物用忌避シートからサンプル(10cm×10cm)を得て、トマトの土の表面に近い幹(茎)(直径約2cm)に10cmの幅(長さ)で巻き付け、ホッチキスで止めた。
1カ月経過後にナメクジの忌避効果を調べたところ、上記忌避試験と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明の軟体動物用忌避材は、生分解性プラスチックからなり、使用後は分解され自然に還るので環境を悪化させることがない。特に、バイオマスは持続的に再生可能な有機資源であり、分解時や燃焼時には二酸化炭素を排出するが、成長時には光合成により大気中の二酸化炭素を吸収・固定するので実質的に二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルが達成され、循環型社会の実現に大きく貢献することができる。
また、風による飛散や土中への埋没による薬効の低下や、散水や降雨による薬効の低下がないので薬効が長時間に亘って持続し、また、柔軟性に富むので、地表面への馴染み性が良好であるばかりでなく、果菜類の幹や枝に巻き付けることができ、薬効が効果的に発揮される。
また、基材層と積層した場合には、製造が容易で強度が向上し、更に、基材層として紙やポリエチレン不織布等の繊維を含む基材層を用いた場合は、繊維と繊維との隙間からサポニンが放出されるので、基材層と接する側からも忌避効果が得られる。また、忌避材を果菜類の幹や枝に巻き付けて使用する場合は、幹や枝の成長に合わせて、これらの基材層も伸張するので、幹や枝への追従姓が良好である。