特許第6749124号(P6749124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6749124-扉装置 図000002
  • 特許6749124-扉装置 図000003
  • 特許6749124-扉装置 図000004
  • 特許6749124-扉装置 図000005
  • 特許6749124-扉装置 図000006
  • 特許6749124-扉装置 図000007
  • 特許6749124-扉装置 図000008
  • 特許6749124-扉装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749124
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】扉装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/02 20060101AFI20200824BHJP
   E05D 11/10 20060101ALI20200824BHJP
   E05D 7/081 20060101ALI20200824BHJP
   E05D 5/10 20060101ALI20200824BHJP
   E05D 5/16 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   F25D23/02 306F
   E05D11/10
   E05D7/081
   E05D5/10 A
   E05D5/16
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-70254(P2016-70254)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180977(P2017-180977A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義康
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐基
(72)【発明者】
【氏名】福井 敬助
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−006119(JP,Y1)
【文献】 特開平11−257835(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0059126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
E05D 5/10
E05D 5/16
E05D 7/081
E05D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一扉および前記第一扉の下方に配される第二扉を含み、筐体に形成された開口を開閉する複数の扉と、
前記第一扉の下方でかつ前記第二扉の上方に配されるように前記筐体に固着され、前記第二扉の上縁および前記第一扉の下縁を支持する支持部材と、を備え、
前記第二扉の上縁および前記第一扉の下縁は、当該扉および前記支持部材のうち何れか一方に設けられたヒンジピンが、他方に設けられた軸受孔にクリアランスを有して嵌合されることで、前記第一扉もしくは前記第二扉の縦縁に沿うように配された回動軸周りの回動自在に支持された扉装置において、
前記第一扉および前記第二扉に設けられた、前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔は、同軸上に配される一方
前記支持部材に設けられて前記第二扉の上縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心は、同支持部材に設けられて前記第一扉の下縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心に対して、前記縦縁側にシフトして設けられている扉装置。
【請求項2】
前記支持部材には、上向きに突出する上向ヒンジピンと、下向きに突出する下向ヒンジピンと、が設けられ、
前記第一扉の下縁には前記上向ヒンジピンが嵌合される第一扉下縁軸受孔が、前記第二扉の上縁には前記下向ヒンジピンが嵌合される第二扉上縁軸受孔が、設けられ、
前記筐体において、前記第一扉の上方には第一扉上縁用ヒンジピンが、前記第二扉の下方には第二扉下縁用ヒンジピンが、配され、
前記第一扉の上縁には前記第一扉上縁用ヒンジピンが嵌合される第一扉上縁軸受孔が、前記第二扉の下縁には前記第二扉下縁用ヒンジピンが嵌合される第二扉下縁軸受孔が、設けられ、
前記第一扉は、前記上向ヒンジピンと前記第一扉下縁軸受孔、前記第一扉上縁用ヒンジピンと前記第一扉上縁軸受孔が、前記第二扉は、前記下向ヒンジピンと前記第二扉上縁軸受孔、前記第二扉下縁用ヒンジピンと前記第二扉下縁軸受孔が、それぞれクリアランスを有して嵌合されることで、回動自在に支持され、
前記第一扉上縁軸受孔、前記第一扉下縁軸受孔、前記第二扉上縁軸受孔、および前記第二扉下縁軸受孔は、同軸上に配される一方、
前記下向ヒンジピンの軸心は、前記上向ヒンジピンの軸心に対して、前記縦縁側にシフトして設けられている請求項1に記載の扉装置。
【請求項3】
前記支持部材に設けられて前記第二扉の上縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心の、同支持部材に設けられて前記第一扉の下縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心に対するシフト量は、前記クリアランスに基づいて設定される請求項1または請求項2に記載の扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、筐体に形成された開口に取り付けられる扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の扉を上下に並べて取付けた貯蔵庫が、広く用いられている。例えば下記特許文献1に記載の貯蔵庫では、貯蔵庫本体を形成する筐体の前面に、上下左右に仕切られた合計4つの開口(出入口)が形成され、各開口に1枚ずつ計4枚の扉が、縦軸回りの観音開き式に取り付けられている。各扉は、筐体の開口縁部に固着した支持部材(支持プレート)に設けたヒンジピンを、当該扉の上縁もしくは下縁に設けた軸受孔に嵌合させた、いわゆるヒンジ機構を介して支持される。上側扉の上縁および下側扉の下縁は、それぞれに対応する支持部材によって支持されるが、上側扉の下縁および下側扉の上縁は、1個の支持部材によって併せて支持されている。具体的には、上側扉の下方かつ下側扉の上方に配されるように筐体に固着した1個の支持部材において、上向きに立設したヒンジピンを上側扉の下縁に設けた軸受孔に、下向きに突設したヒンジピンを下側扉の上縁に設けた軸受孔に、それぞれ嵌合させることで、この支持部材の上下に2枚の扉が回動自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−257837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒンジ機構では、扉のスムーズな回動を目的として、ヒンジピンと軸受孔との間にクリアランスが設定される。このため、扉の自重等によってヒンジ機構とは逆側の縦縁が下がり、扉が傾いてしまうことがある。こうした扉の傾きは、些少であっても様々な不具合を招く。例えば、観音開き式に設置された左右の扉の対向縁部にマグネットおよびシール部材を取り付けて、マグネットの磁力とシール部材の弾性によって左右扉間のシールを実現しているような冷蔵庫においては、扉の下部では、左右の扉の間隔が広がるためにマグネットの磁力が不足して隙間が生じ、冷気漏れや庫内霜付きを招く可能性がある。逆に扉の上部では、左右の扉の間隔が狭くなりすぎてシール部材同士が干渉して閉まらなくなったり、両扉を閉止した状態から片方を開いただけで反対側の扉も一緒に開いてしまったりすることがある。
【0005】
扉が傾いた場合の対応としては、傾いた扉を支持する支持部材の固着位置を変更して、扉の傾きを調整することが考えられる。しかしながら、上記のように、1個の支持部材によって上下に2枚の扉を支持している場合、例えば下側扉の傾きを解消すべくこの支持部材の固着位置を変更すると、上側扉の支持状態も変わってしまうため、支持部材の固着位置を変えて扉の傾きを調整することは困難である。また、この支持部材の位置を変えずに、上側扉の上縁や下側扉の下縁を支持する支持部材の固着位置を変更すると、上側扉と下側扉とが左右方向においてずれた位置に配されることとなり、開閉状態を良好に保てなくなる虞がある。
【0006】
本明細書に開示する技術は、上記事情に基づいて完成されたものであり、1個の支持部材の上下にヒンジ機構を介して支持された複数の扉について、扉の開閉状態を良好に維持しつつ傾きを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される扉装置は、第一扉および前記第一扉の下方に配される第二扉を含み、筐体に形成された開口を開閉する複数の扉と、前記第一扉の下方でかつ前記第二扉の上方に配されるように前記筐体に固着され、前記第一扉の下縁および前記第二扉の上縁を支持する支持部材と、を備え、前記第一扉の下縁および前記第二扉の上縁は、当該扉および前記支持部材のうち何れか一方に設けられたヒンジピンが、他方に設けられた軸受孔にクリアランスを有して嵌合されることで、前記第一扉もしくは前記第二扉の縦縁に沿うように配された回動軸周りの回動自在に支持され、前記支持部材に設けられて前記第二扉の上縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心は、前記支持部材に設けられて前記前記第一扉の下縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心に対して、前記縦縁側にシフトして設けられている。
【0008】
上記構成によれば、第二扉の上縁を支持するヒンジピンもしくは軸受孔の軸心、すなわち第二扉上縁の支持軸を、当該第二扉の回動軸が近接して配される縦縁側にシフトして設けたことにより、第二扉の傾きを軽減できる。この際、支持部材の固着位置を変更するのとは異なり、第一扉下縁の支持軸(第一扉の下縁を支持するヒンジピンもしくは軸受孔の軸心)は通常位置に維持できるため、第一扉の支持状態に影響を与えることなく、第二扉の傾きを軽減できる。この結果、開口を確実に閉止するとともに、扉の開閉に支障が生じる事態を抑制できる。上記構成の扉装置は、従来の構成の扉装置と比較して、支持部材に設けるヒンジピンもしくは軸受孔の位置を変更するだけで構成でき、構成部品点数や製造工程を増加させたり、コストアップを招いたりすることもない。
【0009】
本明細書によって開示される扉装置において、前記支持部材に設けられて前記第二扉の上縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心の、同支持部材に設けられて前記第一扉の下縁を支持する前記ヒンジピンもしくは前記軸受孔の軸心に対するシフト量は、前記クリアランスに基づいて設定されてもよい。
【0010】
上記構成のように、第一扉下縁の支持軸に対する第二扉上縁の支持軸のシフト量は、各関連部材の設計値から算出され、或いは測定されるクリアランスに基づいて設定することができる。このようにすれば、第二扉上縁の支持軸を適正量だけシフトさせて、上記のような効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書によって開示される技術によれば、1個の支持部材の上下にヒンジ機構を介して支持された複数の扉について、扉の開閉状態を良好に維持しつつ傾きを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態係る扉装置を備えた貯蔵庫の一実施形態を示す外観斜視図
図2】ヒンジプレートの取付部分を示す拡大分解斜視図
図3】ヒンジプレートによる、第一扉下縁および第二扉上縁の支持構造を示す分解斜視図
図4】ヒンジピンを取付けた状態のヒンジプレートの正面図
図5】ヒンジピンを取付けた状態のヒンジプレートの側面図
図6】ヒンジピンを取付けた状態のヒンジプレートの平面図
図7】第一扉および第二扉の支持状態を模式的に示した断面図
図8】従来の扉装置における、第一扉および第二扉の支持状態を模式的に示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る扉装置を備えた貯蔵庫の一実施形態を、図1から図6に基づいて説明する。以下の説明では、図1における紙面手前左側を前(正面)、紙面手前右側を右、上側を上とする。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については省略することがある。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の扉装置10を備えた貯蔵庫S1は、4ドア冷蔵庫であって、断熱箱体からなる筐体1が、底面の四隅に設けられた脚11によって支持され、内部が貯蔵室12とされている。筐体1の前面に形成された開口部には、十字形をなす仕切枠13が取り付けられることで、上下左右に合計4つの開口2が形成され、各開口2に扉3が装着されている。
【0015】
冷蔵庫本体の上面には、機械室14が設けられており、機械室14の内部に、圧縮機、凝縮器等からなる図示しない冷凍ユニットが設置されている。この冷凍ユニットが、貯蔵室12の天井部等に配された図示しない冷却器と冷媒配管で接続されて、周知の冷凍サイクルが構成されている。冷凍ユニットの制御運転により、貯蔵室12内がほぼ一定の冷却温度に維持されるとともに、扉3を開閉しつつ、開口2から貯蔵室12内に貯蔵物が出し入れされるようになっている。
【0016】
図1に示すように、合計4枚の扉3のうち、上段の開口2に装着される扉を第一扉31、下段の開口2に装着される扉を第二扉32とする。以下、4枚の扉を区別せず総称する場合は扉3とし、上段と下段の扉を区別する場合は、第一扉31または第二扉32とする。本実施形態では、各2枚の第一扉31および第二扉32は、観音開き式に取り付けられており、回動軸が扉の右縦縁に沿って配される第一扉31、第二扉32と、回動軸が扉の左縦縁に沿って配される第一扉31、第二扉32とは、左右反転させた同様の構造によって支持されるため、以下では、主として右縦縁に沿って回動軸が設けられた右側の第一扉31および第二扉32について説明する。
【0017】
図1に示すように、扉装置10において、扉3は、当該扉3の上縁および/または下縁がヒンジ機構を介して支持されることで、筐体1に取り付けられる。以下、第一扉31上縁を支持するヒンジ機構をヒンジ機構4A、第一扉31上縁と第二扉32下縁を併せて支持するヒンジ機構をヒンジ機構4B、第二扉32の下縁を支持するヒンジ機構をヒンジ機構4Cとする。各ヒンジ機構4A,4B,4Cにおいて、扉3は、開口2の上縁および/または下縁に沿って配設されるヒンジプレート(支持部材)40にヒンジピンを突設して、扉3の上縁および/または下縁に設けた軸受孔に回転自由に挿通させることにより、扉3の一方の縦縁である基端縁39(請求項における縦縁に相当する)に沿って配される回動軸周りの回動自在に支持される。なお、各ヒンジ機構4A,4B,4Cは、いずれもリフトヒンジ機構である。
【0018】
第一扉31下縁および第二扉32上縁を支持するヒンジ機構4Bについて、図2から図6を参照しつつ説明する。
ヒンジプレート40は、ステンレス製であって、鉛直方向の板面を備えた取付部41の下縁に、水平方向の板面を備えた支持部42が直角曲げして形成された概形をなす。図4に示すように、ヒンジプレート40において、取付部41の両側部には、取付ネジ15を挿通させるための貫通孔43が1個ずつ形成されている。図2に示すように、ヒンジ機構4Bに係るヒンジプレート40は、筐体1前面において、上段の開口2の下縁と下段の開口2の上縁との間でかつ扉3の基端縁39が配される側縁寄りの位置に形成されたネジ孔と、前述の貫通孔43とを整合させつつ、取付ネジ15を取り付けることで、支持部42が水平をなすように筐体1に固着される。
【0019】
支持部42には、2つの取付孔(図示しない)が開口されており、図2に示すように、上向ヒンジピン51および下向ヒンジピン52が、それぞれ支持部42の上面もしくは下面から突出するように嵌着される。図6に示すように、下向ヒンジピン52は、上向ヒンジピン51に対して、後方でかつ右方(基端縁39に対応する側)に所定のシフト量Dだけシフトした位置に嵌着されるが、これらの配置については後述する。また、下向ヒンジピン52が嵌着される取付孔よりも、さらに後方かつ右方には、後述するピン側カラー50を上向ヒンジピン51の周囲に取り付けるための行止り状の差込孔46が形成されている。支持部42の前縁は段差状をなし、右側の端部には係止部47が形成されて、この係止部47に、後述する第一扉31のストッパ35が当接することで、扉の開度が規制されるようになっている。
【0020】
ヒンジプレート40に嵌着された上向ヒンジピン51の周囲には、図2および図3に表されているように、ピン側カラー50が取り付けられる。ピン側カラー50は合成樹脂製の部材であって、図3に示すように、各ヒンジピンの周囲に嵌着される部分に平面環形をなすカム面55が配され、カム面55から延出する基板部が次第に先細りとなる略三角形状をなすように形成されている。カム面55の中心には、上向ヒンジピン51もしくは下向ヒンジピン52を挿通する挿通孔56が開口されている。カム面55には、3つの凸部57が形成され、各凸部57の両側には、下り勾配をなす傾斜部が形成され、それぞれ凹部を挟んで連なっている。
【0021】
例えば上向ヒンジピン51の周囲にピン側カラー50を配設する際には、挿通孔56を上向ヒンジピン51に挿通させ、基板部の下面に形成された図示しない廻止め突起を差込孔46に嵌め込むことで、ヒンジプレート40の上面にピン側カラー50を取り付ける。
【0022】
一方、第一扉31下縁および第二扉32上縁には、基端縁39寄りの位置に前後方向を長径とする長円形の嵌合孔が設けられ、この嵌合孔に、図2および図3に示すように孔側カラー60が圧入固定されている。孔側カラー60は、合成樹脂材によって平面視長円形をなすように形成された部材であって、前述の上向ヒンジピン51および下向ヒンジピン52を若干のクリアランスをもって挿通可能な2つの軸受孔、第一軸受孔61および第二軸受孔62が形成されている。孔側カラー60において、第一軸受孔61および第二軸受孔62の回りには、平面環形のカム面65が設けられ、凸部67、傾斜部、凹部が周方向に繰り返し形成されている。第一扉31下縁に装着される孔側カラー60では、前側の第一軸受孔61に上向ヒンジピン51が嵌合され、第二扉32上縁に装着される孔側カラー60では、後側の第二軸受孔62に下向ヒンジピン52が嵌合されて、上向ヒンジピン51もしくは下向ヒンジピン52の周囲に取り付けられたピン側カラー50のカム面55に各カム面65が当接した状態で、第一扉31および第二扉32が支持される。各カム面は、第一扉31および第二扉32を閉止した状態において、カム面55の凸部57と、カム面65の凹部とがかみ合うように設定されている。また、第一扉31下縁には、図2に示すようにストッパ35が前縁に沿って取り付けられ、第一扉31が所定の開度まで開かれると、前述のヒンジプレート40端部に形成された係止部47にストッパ35が当接することで、第一扉31の開き過ぎが規制されるようになっている。
【0023】
このようなリフトヒンジ機構では、ピン側カラー50に対して孔側カラー60が相対的に回転することによって、扉3が昇降しつつ開閉されるようになっている。
例えば第一扉31を閉じられた状態から開くと、第一扉31の下縁に装着された孔側カラー60のカム面65は、ヒンジプレート40上面に取り付けられたピン側カラー50のカム面55上で回転する。これにより、両カム面の凸部と凹部とが互いにかみ合っている状態から、上側の凸部67が移動して下側の凹部から隣接する傾斜部に沿って凸部57上に乗り上げ、第一扉31は上昇しつつ開放される。反対に、開いている第一扉31を閉じると、孔側カラー60のカム面65は、ピン側カラー50のカム面55の上で、開扉時とは逆の方向に回転移動する。これにより、両カム面の凸部同士が係合して上昇位置で開放されている状態から、上側の凸部67が移動して下側の凸部57から隣接する傾斜部に沿って凹部に滑り落ち、第一扉31はカム面55に倣って下降して閉止される。
なお、第一扉31を、両カム面の凸部同士が係合して上昇位置で開放されている状態からさらに開く方向に回動させると、上側の凸部67が傾斜部に沿って凹部に滑り落ち、所定角度に開いた状態で維持できるようになっている。
【0024】
なお、本実施形態の扉装置10では、ヒンジ機構4Aおよびヒンジ機構4Cでも、ヒンジ機構4Bに係るものと同様のヒンジプレート40を使用することができる。例えばヒンジ機構4Aでは、筐体1上段の開口2の上縁に沿って固着したヒンジプレート40に下向ヒンジピン52のみを嵌着し、第一扉31上縁に圧入固定した孔側カラー60の第二軸受孔62に、下向ヒンジピン52を挿通させる。また、ヒンジ機構4Cでは、筐体1下段の開口2の下縁に沿って固着したヒンジプレート40に上向ヒンジピン51のみを嵌着し、この周囲にピン側カラー50を装着する一方、第二扉32下縁に孔側カラー60を圧入固定して、第一軸受孔61に上向ヒンジピン51を挿通させる。なお、ヒンジ機構4Cに係るヒンジプレート40としては、ヒンジ機構4A,4Bに係るものとは左右対称に形成されたものを、取付部41の上縁に支持部42が配される姿勢で筐体1に固着して用いることができる。
【0025】
本実施形態に係る扉装置10は、オートクローズ方式となるように構成されている。ヒンジプレート40において、図5および図6等に示すように、下向ヒンジピン52の軸心(支持軸Z2)よりも、上向ヒンジピン51の軸心(支持軸Z1)の方が前方に配されるように設定されているため、扉装置10では、扉3において、上縁を支持するヒンジピンと下縁を支持するヒンジピンの軸心が、互いに前後方向にずれる。例えば第一扉31では、上縁を支持するヒンジ機構4Aの下向ヒンジピン52の軸心(支持軸Z2)よりも、下縁を支持するヒンジ機構4Bの上向ヒンジピン51の軸心(支持軸Z1)の方が、前方に配される。これにより、図1において一点鎖線で表されているように、第一扉31の回動軸は前後方向に傾斜し、第一扉31は、開放状態において回動軸の傾斜角度に相当する角度だけ傾斜した状態となるため、傾斜角度に起因する回動力の作用によって閉鎖方向に付勢される。この結果、容易かつ確実に扉が閉じられるようになっている。第二扉32でも同様とされている。
【0026】
続いて、扉3の傾きを軽減するための機構について、図7図8とを比較しつつ説明する。なお、図7は、本実施形態に係る扉装置10を模式的に表した図であり、図8は、従来の扉装置110を模式的に表した図である。扉装置110において、第一扉31上縁を支持するヒンジ機構をヒンジ機構104A、第一扉31上縁と第二扉32下縁を併せて支持するヒンジ機構をヒンジ機構104B、第二扉32下縁を支持するヒンジ機構をヒンジ機構104Cとする。扉装置110では、ヒンジプレート140における上向ヒンジピン51と下向ヒンジピン52の配置が、本実施形態に係るヒンジプレート40における配置とは異なっている。以下、扉装置110において扉装置10と同様の部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
ヒンジ機構を備えた扉装置10および扉装置110において、上向ヒンジピン51と第一軸受孔61の間、並びに、下向ヒンジピン52と第二軸受孔62の間には、扉3のスムーズな回動を目的として、それぞれクリアランスが設定されている。例えば、各ヒンジピンの軸の直径は10mm以下、各軸受孔の直径は10.2mm以上として設計される。
【0028】
従来の扉装置110に係るヒンジプレート140では、上向ヒンジピン51と下向ヒンジピン52の軸心が左右方向において同軸上に重畳するように設定されており、図8に示すように、扉装置110では、各ヒンジ機構104A,104B,104Cに係る上向ヒンジピン51および下向ヒンジピン52の全ての軸心が、左右方向において同軸(支持軸Z1)上に重畳するように構成される。このような扉装置110では、例えば図8における第二扉32について示すように、第二扉32の自重等によって左縦縁(基端縁39とは逆の縦縁)側を下降させようとする力が働くと、下向ヒンジピン52と第二軸受孔62との間のクリアランスによってこうした動きが許容され、第二扉32が傾いてしまう虞がある。
このような場合において、第二扉32の傾きを軽減するために、ヒンジ機構104Bに係るヒンジプレート140を右方に移動させると、当該ヒンジプレート140から立設された上向ヒンジピン51も右方に移動する。このようにすると、第一扉31の支持状態が変化し、第一扉31の傾きが助長される虞がある。他方、ヒンジ機構104Bに係るヒンジプレート140の固定位置を維持しつつ、ヒンジ機構104Aに係るヒンジプレート140を右方に、ヒンジ機構104Cに係るヒンジプレート140を左方に、それぞれ移動させると、第一扉31全体が本来の位置よりも右方に、第二扉32全体が左方に配されることとなって、両者が上下に整列せず、それぞれ開口2を良好に閉止できなくなったり、開閉操作に支障をきたしたりする虞がある。
【0029】
これに対し、本実施形態の扉装置10に係るヒンジプレート40では、下向ヒンジピン52の軸心が、上向ヒンジピン51の軸心に対して、左右方向において基端縁39側にシフトするように設定されている。図7に示すように、扉装置10では、第一扉31および第二扉32の上縁に設けられた第二軸受孔62に挿通される下向ヒンジピン52の軸心(支持軸Z2)が、第一扉31および第二扉32の下縁に設けられた第一軸受孔61に挿通される上向ヒンジピン51の軸心(支持軸Z1)よりも、右方(基端縁39側)にシフトして設けられた構成とされている。このような扉装置10では、例えば第二扉32の左縦縁側を下降させようとする力が働いた場合であっても、ヒンジ機構104Bの下向ヒンジピン52が、第二扉32上縁に設けられた第二軸受孔62の基端縁39側の縁部に当接することにより、第二扉32の傾きが規制される。
【0030】
ここで、支持軸Z2の支持軸Z1に対するシフト量D、すなわちヒンジプレート40における下向ヒンジピン52軸心の上向ヒンジピン51軸心に対するシフト量Dは、各ヒンジピンと各軸受孔との間に設定されるクリアランスに応じて設定できる。例えば上記のように、ヒンジピンの軸径を10mm以下、軸受孔径を10.2mm以上とした場合、シフト量Dを0.13mmに設定できる。このようにすれば、第一扉31および第二扉32において、上縁を支持する下向ヒンジピン52は第二軸受孔62の基端縁39側の縁部に近接した状態で嵌合され、各扉3の傾きが効果的に軽減される。
【0031】
本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
本実施形態では、ヒンジプレート40において、この下方に位置する第二扉32の上縁を支持する下向ヒンジピン52の軸心(支持軸Z2)を、予め回動軸が近接して設けられる基端縁39側にシフトして設けたことにより、第二扉32の傾きを軽減できる。この際、ヒンジプレート40の固着位置を変更するのとは異なり、第一扉31の下縁を支持する支持軸Z1は通常位置のまま維持されるため、第一扉31の支持状態に影響を与えることなく、第二扉32の傾きを軽減できる。この結果、開口2を確実に閉止するとともに、扉3の開閉に支障が生じる事態を抑制できる。上記構成の扉装置10は、従来の構成の扉装置110と比較して、構成部品点数や製造工程を増加させることなく構成できるため、コストアップを招くこともない。また、本実施形態に係る扉装置10では、ヒンジ機構4A,4B,4Cにおいて、左右対称に構成した以外は基本的に同じ構造のヒンジプレート40を使用できる。なお、左右対称な2種類のヒンジプレート40を使用すれば、観音開き式の左右両側に配される全ての扉3を支持することができる。
【0032】
本実施形態に係る扉装置10では、軸の補正量、すなわち支持軸Z2の支持軸Z1に対するシフト量Dを、下向ヒンジピン52の軸径および第二軸受孔の孔径から算出し、或いは両者の間のクリアランスを測定して、設定できる。このようにすれば、支持軸Z2を適正量だけシフトさせて、第二扉32の良好な開閉動作を担保しつつ上記のような効果を得ることができる。
【0033】
<その他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は、上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0034】
(1)上記実施形態では、扉装置10において、ヒンジ機構4A,4B,4Cに同様の構造のヒンジプレート40を使用したが、これに限定されるものではなく、ヒンジ機構4A,4Cには従来の構造のヒンジプレートを使用してもよい。
【0035】
(2)本明細書に開示する扉装置10は、リフトヒンジ機構を備えたものに限定されない。なお、孔側カラー60のような樹脂製部材に軸受孔が設けられる構成のものでは、摩耗等によって扉3が傾き易くなるため、本技術を特に有用に適用できる。
【0036】
(3)本明細書に開示する扉装置10は、4枚扉のものや、観音開き式のものに限定されない。例えば、上下2枚の扉が片開き式に揺動開閉される貯蔵庫S1でも、好適に用いることができる。また、扉装置10は、冷蔵庫に限らず、様々な貯蔵庫S1に適用できる。なお、冷蔵庫や冷凍庫、保温庫等の恒温貯蔵庫では、高いシール性と断熱性とを実現するために扉3の重量が増加し、ヒンジ機構の摺動部が摩耗して扉3が傾きやすくなるため、本技術を特に有用に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
S1: 貯蔵庫
1: 筐体
2: 開口
10: 扉装置
31: 第一扉
32: 第二扉
39: 基端縁(縦縁)
40: ヒンジプレート(支持部材)
51: 上向ヒンジピン
52: 下向ヒンジピン
Z1: 支持軸(上向ヒンジピンの軸心)
Z2: 支持軸(下向ヒンジピンの軸心)
D: シフト量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8