(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の架台を渡すようにしてレールを設けるとともに当該レールに沿って移動するトロリを設け、当該トロリを用いて前記アニュラプレートの構成部材及び前記側板の1段目を所定の周方向位置にまで搬送する、請求項1乃至3のうちいずれか一の項に記載の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、平底円筒型タンクにおける工期短縮を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る施工方法は、平底円筒型タンクにおける内槽の施工方法であって、複数の架台を底板上に配置する工程と、前記架台の下でアニュラプレートを形成する工程と、前記架台の下で前記アニュラプレートの上に側板の1段目を形成する工程と、前記架台の上で側板の2段目以降を順に形成してゆく工程と、前記架台を撤去し、前記側板の1段目と前記側板の2段目以降を溶接する工程と、を含み、前記アニュラプレートを形成する工程及び前記アニュラプレートの上に側板の1段目を形成する工程のうちの一方又は両方に並行して、前記側板の2段目以降を順に形成してゆく工程を行う。
【0007】
この施工方法によれば、アニュラプレートを形成する工程及びアニュラプレートの上に側板の1段目を形成する工程のうちの一方又は両方に並行して、側板の2段目以降を順に形成してゆく工程を行うため、複数の工程を同時に行うことができることから、平底円筒型タンクの工期短縮が可能である。
【0008】
なお、上記の「側板の2段目以降を順に形成していく工程」には、側板の同じ段を構成する部分側板同士を溶接する作業のみならず、異なる段の部分側板を溶接する作業も含まれる。つまり、上記の施工方法には、アニュラプレートを形成する工程及びアニュラプレートの上に側板の1段目を形成する工程のうちの一方又は両方に並行して、例えば側板の3段目の部分側板同士を溶接する作業を行う場合のみならず、側板の3段目の部分側板と2段目の部分側板を溶接する作業を行う場合も含まれる。いずれの場合であっても、平底円筒型タンクの工期短縮が可能である。
【0009】
また、上記の施工方法において、前記内槽の側板の内側で屋根を形成する工程をさらに含み、前記側板の2段目以降を順に形成してゆく工程に並行して、前記屋根を形成する工程を行うようにしてもよい。
【0010】
この施工方法によれば、前記側板の2段目以降を順に形成する工程に並行して、前記屋根を形成する工程を行うため、さらなる平底円筒型タンクの工期短縮が可能である。
【0011】
また、上記の施工方法において、前記屋根を形成する工程において、前記屋根を支持する屋根サポートを、支持部材を介して前記側板の1段目で支持するようにしてもよい。
【0012】
この施工方法によれば、屋根サポートを側板の1段目で支持するため、屋根サポートを支持する構造体を減らし又は無くすことができる。さらに、支持部材を足場の骨組みとして使用すれば、足場を支持する構造体を減らし又は無くすことができる。これにより、上記の構造体の設置及び撤去する作業を減らし又は無くすことにより、さらなる平底円筒型タンクの工期短縮が可能となる。
【0013】
また、上記の施工方法において、前記複数の架台を渡すようにしてレールを設けるとともに当該レールに沿って移動するトロリを設け、当該トロリを用いて前記アニュラプレートの構成部材及び前記側板の1段目の構成部材を所定の周方向位置にまで搬送するようにしてもよい。
【0014】
この施工方法によれば、アニュラプレートの構成部材及び側板の1段目の構成部材を所定の周方向位置にまで速やかに搬送することができるため、さらなる平底円筒型タンクの工期短縮が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記の施工方法によれば平底円筒型タンクの工期短縮が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
<平底円筒型タンクの構造>
はじめに、平底円筒型タンク100の構造について説明する。
図1は平底円筒型タンク100の断面図である。本実施形態の平底円筒型タンク100は、液化天然ガスや液化石油ガスのような低温液体を貯蔵するタンクである。
【0019】
平底円筒型タンク100は、地面に敷設されたコンクリート製の底版10と、コンクリート製で円筒状の側壁11とを備えている。さらに、平底円筒型タンク100は、底版10及び側壁11の内側に位置する外槽20と、外槽20の内側に位置する内槽30とを備えている。
【0020】
外槽20は、底版10の上面を覆う底板21と、側壁11の内周面を覆う側部22と、球面を有する外槽屋根23と、を有している。このうち、外槽20の側部22は、周方向に並んだ側部ライナ24の列を鉛直方向に複数段重ねて形成されている。なお、本実施形態の外槽20は、炭素鋼によって形成されているが、これ以外の材料で形成されていてもよい。
【0021】
内槽30は、外槽20と相似形であって、底板31と、円筒状の側板32と、底板31と側板32の間に位置する環状のアニュラプレート33と、内槽屋根34と、側板32と内槽屋根34の間に位置する環状のナックルプレート35と、を有している。このうち、内槽30の側板32は、周方向に並んだ部分側板36の列を鉛直方向に複数段重ねて形成されている。なお、本実施形態の内槽30は、9%ニッケル鋼によって形成されているが、7%ニッケル鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、炭素鋼等、他の材料で形成されていてもよい。
【0022】
外槽20の底板21と内槽30の底板31との間には、軽量気泡コンクリート及びあわガラス等によって形成された中央保冷部40が設けられている。また、外槽20の底板21と内槽30のアニュラプレート33との間には、構造用軽量コンクリート及びパーライトコンクリート等によって形成されたリング保冷部41が設けられている。さらに、外槽20の側部22と内槽30の側板32との間、及び、外槽屋根23と内槽屋根34との間には、粒子状のパーライトが挿入されている。
【0023】
前述のとおり、内槽30の側板32は部分側板36を複数段重ねて形成されている。以下では、側板32のうち、最も下方側(底版10に最も近い側)の部分側板36によって形成された部分を「側板32の1段目」と呼び、同様にして下方側から2段目の部分側板36によって形成された部分から順に「側板32の2段目」、「側板32の3段目」、・・・と呼ぶこととする。また、外槽屋根23及び内槽屋根34を合わせたものを、単に「屋根13」と呼ぶこととする。
【0024】
<施工方法>
次に、本実施形態に係る内槽30の施工方法について説明する。
図2〜
図4は、本実施形態に係る施工方法を示した図である。以下、各工程について、
図2〜
図4に沿って順に説明する。なお、
図2〜
図4における(a)〜(c)のそれぞれにおいて、紙面左側が平底円筒型タンク100の径方向外側であり、紙面右側が平底円筒型タンク100の径方向内側である。
【0025】
まず、
図2(a)に示すように、本実施形態に係る内槽30の施工方法では、底版10及び底板21を施工した後、複数の架台101を底板21上に配置する工程を行う。
図2(a)では、複数の架台101のうちの1つを図示しているが、底版10の外周部分に沿って複数の架台101を周方向に等間隔で配置する。なお、後述するように架台101は側板32を支持するため、架台101の間隔は部分側板36の幅方向寸以下とする。本実施形態における架台101の間隔は、部分側板36の幅方向寸と同じとする。
【0026】
本実施形態の架台101は、矩形状の梁部材102と、梁部材102の四隅に位置し梁部材102を支える4本の脚部103と、を有している。また、梁部材102の下面には、各架台101を渡すようにして径方向内側及び径方向外側の2本のレール104を設けているとともに、各レール104沿って移動するトロリ105(
図2(b)(c)参照)をそれぞれ設けている。
【0027】
続いて、
図2(b)に示すように、コンクリートを下方側から順に打設して側壁11を形成するとともに、側部ライナ24を下から順に接続して側部22を形成する工程を行う。
【0028】
また、側壁11及び側部22を形成する工程に並行して、架台101の下でリング保冷部41及びアニュラプレート33を形成する工程を行う。本実施形態では、複数の部分アニュラプレート37を周方向に接合することによりアニュラプレート33を形成する。アニュラプレート33の構成部材である部分アニュラプレート37は、側壁11及び側部ライナ24に形成された図外の開口部から側部ライナ24の内側へと搬入する。そして、側部ライナ24の内側に搬入された部分アニュラプレート37は、径方向内側のレール104に沿って移動するトロリ105を用いて、所定の周方向位置まで搬送する。径方向内側のレール104は、部分アニュラプレート37の重心位置上に位置しているため、部分アニュラプレート37を水平状態で搬送することができる。
【0029】
続いて、
図2(c)に示すように、アニュラプレート33の上に側板32の1段目を形成する工程を行う。具体的には、まず、側壁11及び側部ライナ24に形成された図外の開口部から部分側板36を搬入する。そして、径方向外側のレール104に沿って移動するトロリ105を用いて、搬入した部分側板36を所定の周方向位置に搬送する。なお、径方向外側のレール104は、アニュラプレート33のうち部分側板36が溶接される部分上に位置している。その後、アニュラプレート33の上に周方向に並べて配置した各部分側板36を互いに溶接する。このようにして、側板32の1段目を形成する。
【0030】
さらに、少なくともアニュラプレート33を形成する工程、上記の側板32の1段目を形成する工程のいずれか一方又は両方に並行して、架台101の上で側板32の2段目以降を順に形成してゆく工程を行う。具体的には、はじめに2段目の部分側板36を周方向に並べて載置し、2段目の部分側板36を互いに溶接してゆき側板32の2段目を形成する。その際、側板32の2段目を架台101によって支持する。その後、側板32の2段目の上に3段目の部分側板36を周方向に並べて載置し、3段目の部分側板36を互いに溶接したうえで、側板32の2段目と溶接することにより側板32の3段目を形成する。この作業を4段目以降についても繰り返すことで、側板32の4段目以降を順に形成していく。架台101の上で形成する側板32を構成する部分側板36は、図外のクレーンを用いて平底円筒型タンク100の上側より搬入する。なお、上記の側板32の2段目以降を順に形成してゆく工程は、リング保冷部41を形成する工程とも並行して行ってもよい。
【0031】
続いて、
図3(a)に示すように、アニュラプレート33上に屋根サポート106を設置する。屋根サポート106は、外槽屋根23及び内槽屋根34(屋根13)を形成する際に、これらを支持する部材である。屋根サポート106は、架台101と干渉しないように、架台101と異なる周方向位置に配置する。また、屋根サポート106は、径方向内側に傾斜しており、支持部材107を介して側板32の1段目に支持されている。なお、支持部材107は足場の骨組みとしても利用できる。これにより、屋根サポート106及び足場を支持する構造体を減らし又は無くすことができる。
【0032】
さらに、屋根サポート106を設置する工程と並行して、後述する下降装置108を保持する保持部109を側壁11の複数の周方向位置に固定するとともに、下降装置108に保持される被保持部110を側板32の2段目以降(
図3(a)では4段目)の複数の周方向位置に固定する。
【0033】
続いて、
図3(b)に示すように、内槽屋根34の構成部材である内槽屋根骨38を屋根サポート106上で形成する工程を行う。また、この工程と並行して、側壁11に固定した各保持部109に下降装置108を取り付けるとともに、この下降装置108に側板32に固定した各被保持部110を取り付ける工程を行う。なお、下降装置108は、側壁11を利用して、側板32の2段目以降を下降させる装置であり、例えば油圧ジャッキである。
【0034】
続いて、
図3(c)及び
図4(a)に示すように、内槽屋根骨38に内槽屋根34の構成部材である内槽屋根ブロック39を取り付け、内槽屋根34を形成する工程を行う。
【0035】
さらに、上記の内槽屋根34を形成する工程に並行して、架台101を撤去し、側板32の1段目と側板32の2段目を溶接する工程を行う。具体的には、架台101を撤去した後、下降装置108を用いて側板32の2段目から5段目を下降させて、側板32の2段目の下端部と側板32の1段目の上端部を突き合わせる。そして、側板32の2段目の下端部と側板32の1段目の上端部を溶接する。
【0036】
その後、側板32の1段目の下端部とアニュラプレート33を溶接する。このように、本実施形態では、側板32の1段目とアニュラプレート33の溶接は、側板32の1段目と側板32の2段目以降を溶接した後に行っているが、側板32の1段目と側板32の2段目以降を溶接する前に行ってもよい。即ち、上記の側板32の1段目を形成する工程には、側板32の1段目をアニュラプレート33に溶接する工程が含まれていてもよいし、含まれていなくともよい。
【0037】
続いて、
図4(b)に示すように、引き続き、側板32の6段目以降を順に形成してゆく工程を行う。具体的には、側板32の5段目の上に6段目の部分側板36を周方向に並べて載置し、6段目の部分側板36を互いに溶接し、その後、側板32の5段目と6段目を溶接することで側板32の6段目を形成し、以下同様にして、側板32の7段目から10段目を順に形成する。なお、この工程を行う前には、下降装置108、保持部109、被保持部110を撤去する。
【0038】
さらに、上記の側板32の6段目以降を順に形成していく工程と並行して、中央保冷部40及び底板31を形成する工程、内槽屋根ブロック39上で外槽屋根23を形成する工程、内槽屋根骨38から半径方向外側下方に向かって広がる仮屋根111を取り付ける工程を行う。なお、仮屋根111は、外槽屋根23及び内槽屋根34を空気圧で浮上させる際の空気の漏れを抑える機能を有する。
【0039】
続いて、
図4(c)に示すように、側板32の上部(本実施形態では側板32の10段目)にナックルプレート35を取り付ける工程を行う。その後、内槽屋根34の内側に圧縮空気を供給して内槽屋根34の内側に空気圧をかけ、内槽屋根34の外周部分がナックルプレート35の先端に達するまで、外槽屋根23及び内槽屋根34を浮上させる。そして、ナックルプレート35を介して側板32(部分側板36)に内槽屋根34を固定する。以上の工程を経ることで、内槽30が施工(形成)される。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る内槽30の施工方法では、アニュラプレート33を形成する工程及びアニュラプレート33の上に側板32の1段目を形成する工程と並行して、側板32の2段目以降を順に形成してゆく工程を行っている。また、側板32の2段目以降を形成する工程に並行して、屋根サポート106を設置するとともに屋根13(内槽屋根34及び外槽屋根23)を形成する工程を行っている。このように、本実施形態では、架台101により平底円筒型タンク100内の空間を上下に隔てておき、この架台101の上下で複数の工程を並行して行うことで、平底円筒型タンク100の工期短縮が可能となる。特に、アニュラプレート33は高い水平度が要求されることから、アニュラプレート33の形成には比較的時間がかかる。そのため、アニュラプレート33を形成する工程と、本来であればアニュラプレート33を形成した後に行われる工程(側板32の2段目以降を順に形成してゆく工程)を並行して行う本実施形態に係る施工方法によれば、平底円筒型タンク100の工期短縮に非常に有効である。
【0041】
なお、本実施形態では、アニュラプレート33を形成する工程及びアニュラプレート33の上に側板32の1段目を形成する工程の両方を架台101の下で行うことと並行して、側板32の2段目以降を架台101の上で順に形成してゆく工程を行っているが、アニュラプレート33を形成する工程及びアニュラプレート33に側板32の1段目を形成する工程のうちの一方と並行して、側板32の2段目以降を順に形成してゆく工程を行ってもよい。この場合であっても、複数の工程を並行して行うことになるため、平底円筒型タンク100の工期を短縮することができる。
【0042】
また、本実施形態では、架台101の脚部103がアニュラプレート33の半径方向内側と半径方向外側の両方に位置する場合について説明したが、架台101の形状はこれに限られない。例えば、
図5に示すように、脚部103はアニュラプレート33の径方向内側にのみ設け、当該脚部103によって梁部材102の径方向内側の部分を支持する一方、梁部材102の径方向外側の部分は側壁11及び側部22によって支持するように構成されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、
図3(c)及び
図4(a)で示すように、側板32の5段目を形成した後に、側板32の1段目と側板32の2段目以降を接合したが、当該接合は側板32の5段目を形成した後でなくてもよい。例えば、並行して行う工程の期間に応じて、側板32の4段目を形成した後に側板32の1段目と側板32の2段目以降を接合してもよく、側板32の6段目を形成した後に側板32の1段目と側板32の2段目以降を接合してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、内槽30の側板32を形成した後に屋根13を空気圧によって所定位置にまで浮上させ、屋根13を内槽30の側板32の上部に固定する、いわゆる内槽AR工法の場合について説明したが、本実施形態に係る施工方法は内槽AR工法を行う場合に限られない。つまり、外槽20の側部22を形成した後に屋根13を空気圧によって所定位置にまで浮上させ、屋根13を外槽20の側部22の上部に固定する、いわゆる外槽AR工法においても、本実施形態に係る施工方法を適用することができる。