特許第6749145号(P6749145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国化工株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

特許6749145ポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749145
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   C08G77/06ZNM
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-109855(P2016-109855)
(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公開番号】特開2017-214503(P2017-214503A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591288528
【氏名又は名称】中国化工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】阿南 和浩
(72)【発明者】
【氏名】富永 信雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 令晋
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−171465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物の加水分解物、水及びアニオン性界面活性剤(s1)を含む加水分解液(a)と、
CH3Si(OR)3・・・(1)
[式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
水、塩基触媒及びアニオン性界面活性剤(s2)を含む析出液(b)とを混合する工程を含むポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記加水分解液(a)が、さらに酸触媒を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(1)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤(s1)との質量比(アニオン性界面活性剤(s1)/式(1)で表される化合物)が、0.0005以上0.05以下である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加水分解液(a)のpHが、2.0以上5.5以下である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記析出液(b)のpHが、8.0以上13.0以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤(s2)が、分子内にオキシアルキレン単位を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記ポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径が、0.005μm以上10.0μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記析出液(b)が、さらにポリメチルシルセスキオキサンシード粒子を含む請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、生産効率が高く粒子径の揃ったポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より球状のポリメチルシルセスキオキサン微粒子を得る方法として、様々な方法が知られており、近年では、ミクロンサイズのポリメチルシルセスキオキサン微粒子だけではなくサブミクロンサイズ、あるいはナノサイズといった微小な粒子径を有するポリメチルシルセスキオキサン微粒子の製造方法についても開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、塩酸等の無機酸を添加して0.5〜200mS/mの電気伝導度に調整した酸水溶液中でメチルトリアルコキシシランを加水分解した後、この水溶液をアルカリ水溶液に滴下して粒子径0.1〜1μmのポリメチルシルセスキオキサン微粒子を製造する方法が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、オルガノトリアルコキシシランを酸水溶液中で加水分解・部分縮合させる工程と、加水分解・部分縮合液を静置して上層と下層に分離し、下層部を取り出して有機溶媒と混合する工程と、有機溶媒混合加水分解・部分縮合物をアルカリにて縮合する工程を含む、粒子径1μm以下のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、水系溶媒存在下に分散安定剤、塩基触媒、及びメチルトリメトキシシランを混合しメチルトリメトキシシランの加水分解縮合を行うことによりポリメチルシルセスキオキサン微粒子の水分散体を製造した後、この水分散体のpHを2〜9に調整し有機溶媒に置換するポリメチルシルセスキオキサン微粒子有機溶媒分散液の製造方法が記載されている。
【0006】
さらに特許文献4には、特定の酸触媒の存在下でメチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応を同時に行わせてポリメチルシルセスキオキサン微粒子を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−178357号公報
【特許文献2】特開2008−208158号公報
【特許文献3】国際公開第2006/70846号
【特許文献4】特開2006−89514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、これら従来の製造方法では、いずれも得られるポリメチルシルセスキオキサン微粒子の凝集物が製造工程で発生し、粒子製造後の濾過工程で目詰まりを起こしやすくなって生産性が低下するという問題があり、該ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の有機溶媒への分散安定性も十分でない場合があった。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、粒子径の均一性と有機溶媒への分散安定性を両立可能なポリメチルシルセスキオキサン粒子を高い生産性で製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の前駆体とアニオン性界面活性剤とを含む加水分解液と、水、及びアニオン性界面活性剤とを含む析出液とを混合することで、粒子径が均一で凝集物が少なく、有機溶媒への分散安定性も良好なポリメチルシルセスキオキサン粒子を製造できることを見出した。すなわち本発明は、以下の発明を含む。
【0010】
[1]式(1)で表される化合物の加水分解物、水及びアニオン性界面活性剤(s1)を含む加水分解液(a)と、
CH3Si(OR)3・・・(1)
[式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
水、塩基触媒及びアニオン性界面活性剤(s2)を含む析出液(b)とを混合する工程を含むポリメチルシルセスキオキサン粒子の製造方法。
[2]前記加水分解液(a)が、さらに酸触媒を含む[1]に記載の製造方法。
[3]式(1)で表される化合物と、アニオン性界面活性剤(s1)との質量比(アニオン性界面活性剤(s1)/式(1)で表される化合物)が、0.0005以上0.05以下である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記加水分解液(a)のpHが、2.0以上5.5以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記析出液(b)のpHが、8.0以上13.0以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記アニオン性界面活性剤(s2)が、分子内にオキシアルキレン単位を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記ポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径が、0.005μm以上10.0μm以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記析出液(b)が、さらにポリメチルシルセスキオキサンシード粒子を含む[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子は、粒子径が均一でありながら、ポリメチルシルセスキオキサン粒子同士が凝集することなく、濾過工程での目詰まり等が抑制されるため、生産性が非常に高くなり、有機溶媒への分散安定性が良好である。
さらに本発明の製造方法によれば、粒子径が均一なポリメチルシルセスキオキサン粒子をミクロンサイズ、サブミクロンサイズ、さらにはナノサイズの領域にわたって、工業的に有利な方法で効率よく製造することができる。このため本発明の製造方法により得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、粒子径の均一性と有機溶媒への分散安定性を両立可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法は、式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という場合がある)の加水分解物、水及びアニオン性界面活性剤(s1)を含む加水分解液(a)と、
CH3Si(OR)3・・・(1)
[式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
水、塩基触媒及びアニオン性界面活性剤(s2)を含む析出液(b)とを混合する工程を含むことを特徴とする。
加水分解液(a)と析出液(b)のいずれにもアニオン性界面活性剤が含まれていることにより、加水分解液(a)と析出液(b)とを混合する際に反応液を均一に混合することが容易となり、前記化合物(1)の加水分解物の縮合反応が均一に進みやすくなる。その結果、ナノサイズからミクロンサイズまでのポリメチルシルセスキオキサン粒子を均一な粒子径で製造することができ、該ポリメチルシルセスキオキサン粒子の分散安定性も良好となる。
【0013】
加水分解液(a)には、化合物(1)の加水分解物、水およびアニオン性界面活性剤(s1)が含まれる。
【0014】
上記式(1)において、Rは炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)のアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
化合物(1)としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。
【0015】
化合物(1)の加水分解物とは、−ORの加水分解により形成された−OH(シラノール基)を含む化合物であり、CH3Si(OR)2(OH)、CH3Si(OR)(OH)2、CH3Si(OH)3等が挙げられ、CH3Si(OH)3を含むことが好ましい。また前記化合物(1)の加水分解物は、加水分解物に含まれる−OH(シラノール基)の一部が縮合してSi−O−Si結合を形成している化合物(以下、「部分縮合物」という場合がある。)を含んでいてもよい。加水分解物に含まれる−OH(シラノール基)の一部が縮合していても、加水分解液(a)及び析出液(b)にアニオン性界面活性剤が含まれているため、反応を均一に進めることができる。
【0016】
加水分解液(a)中、化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子のモル濃度は、0.1mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは1mmol/g以上、さらに好ましくは2mmol/g以上であり、10mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは7mmol/g以下、さらに好ましくは5mmol/g以下である。
【0017】
前記アニオン性界面活性剤(s1)としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸油等のカルボン酸型アニオン性界面活性剤;ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホこはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン性界面活性剤;アルキルりん酸塩、アルキルりん酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルりん酸塩等のりん酸エステル型アニオン性界面活性剤;等が挙げられ、スルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤が好ましく、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0018】
アニオン性界面活性剤(s1)としては、具体的には、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル硫酸ナトリウム(好ましくは、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキル(C12,13)エーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルスルホこはく酸塩;ポリオキシエチレンスチレン化フェニエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルりん酸塩;オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリなどの脂肪酸油;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、などが挙げられる。
【0019】
また、前記アニオン性界面活性剤(s1)としては、分子内にオキシアルキレン単位(−R1O−単位(R1は、炭素数2〜3のアルキレン基を表し、好ましくはエチレン基を表す))を含むことが好ましい。ポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径をよりいっそう均一にしやすくなるとともに、得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子をより真球状に近づけることが容易となる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルりん酸塩等のオキシエチレン単位を含むアニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩がより好ましく、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウムがさらに好ましい。
【0020】
アニオン性界面活性剤(s1)の含有量は、加水分解液(a)に用いられる化合物(1)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、特に好ましくは5質量部以上、さらには10質量部以上であってもよく、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。また、後述するように析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、アニオン性界面活性剤(s1)の含有量は、加水分解液(a)に用いられる化合物(1)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
アニオン性界面活性剤の使用量を増やすとポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径が均一になりやすくなり、また、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の凝集を抑制しやすくなる。また、アニオン性界面活性剤の使用量が抑制されていると、反応液の発泡を低減しやすくなり、粗大粒子の生成を抑制しやすくなる。
【0021】
加水分解液(a)は、さらに酸触媒を含むことが好ましい。加水分解液(a)に酸触媒が含まれることで、化合物(1)及びその加水分解物の加水分解反応の制御が容易となる。加水分解液(a)に含まれる酸触媒としては、有機酸、無機酸のいずれも使用可能であり、好ましくはそれらの水溶液が用いられる。さらに具体的には、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸などが例示され、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などが例示されるが、入手が容易で取り扱い性にも優れる点で有機酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
加水分解液(a)に酸触媒が含まれる場合、その含有量は、化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子100モルに対して、0.001モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.01モル以上であり、0.5モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.3モル以下、さらに好ましくは0.1モル以下である。
【0022】
加水分解液(a)のpHは、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、5.5以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0023】
加水分解液(a)に用いられる水と化合物(1)との仕込み比(水/化合物(1))は、モル基準で、2以上であることが好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上であり、20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0024】
前記加水分解液(a)には、アルコール(ROH)が含まれていてもよい。アルコールとしては、Rとして例示した基に−OHが結合した基が挙げられる。
アルコールの含有率は、加水分解液(a)100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは37質量%以下である。
【0025】
化合物(1)の加水分解物と、水と、必要に応じて用いられる酸触媒と、アニオン性界面活性剤(s1)と、必要に応じて含まれるアルコールの合計の含有率は、加水分解液(a)100質量%中、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。
【0026】
前記加水分解液(a)は、化合物(1)と、水と、アニオン性界面活性剤(s1)と、必要に応じて用いる酸触媒を混合することにより製造することができる。酸触媒を用いて化合物(1)を加水分解することにより、加水分解反応が均一に進みやすくなる。
また、化合物(1)と、水と、必要に応じて用いる酸触媒とを混合して、予備加水分解液を調製する工程と、該予備加水分解液とアニオン性界面活性剤(s1)とを混合して加水分解液(a)を調製する工程とにより製造することが好ましい。予め予備加水分解液を調製し、この予備加水分解液とアニオン性界面活性剤(s1)とを混合することで、アニオン性界面活性剤(s1)による加水分解反応への影響が抑制され、得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径の制御が容易となる。
【0027】
前記予備加水分解液には、化合物(1)の加水分解物と、必要に応じて用いる酸触媒と、水とが含まれており、アルコール(ROH)が含まれていてもよい。
【0028】
前記予備加水分解液のpHは、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、5.5以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0029】
化合物(1)と、水と、必要に応じて用いる酸触媒と、必要に応じて同時に混合するアニオン性界面活性剤(s1)とを混合する温度は、0℃以上であることが好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上であり、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
また、化合物(1)と、水と、必要に応じて用いる酸触媒と、必要に応じて同時に混合するアニオン性界面活性剤(s1)とを混合する時間は、10分以上であることが好ましく、より好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上であり、200分以下であることが好ましく、より好ましくは120分以下、さらに好ましくは90分以下である。
化合物(1)を加水分解すると、化合物(1)に含まれる−ORが順次−OHに変換され、生成した−OH同士が縮合してSi−O−Si結合が生じる。これらの加水分解・縮合反応は、並行して進行する場合があり、調製時の温度や時間を上記範囲に制御することで、加水分解液(a)と析出液(b)とを混合する際に、化合物(1)の加水分解・縮合反応の程度を適切な範囲に制御することが容易となる。
【0030】
析出液(b)は、水、塩基触媒及びアニオン性界面活性剤(s2)を含む。析出液(b)に塩基触媒を用いることで、縮合反応の速度を高めることができる。
【0031】
塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物(好ましくはアルカリ金属水酸化物);アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類;が挙げられる。中でも、生成するポリメチルシルセスキオキサン粒子の用途を制限するような不純物を低減することができ、粒子からの除去も容易な点から、アミン類が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0032】
析出液(b)に含まれる塩基触媒の含有量は、加水分解液(a)中の化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子100モルに対して、0.01モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.05モル以上であり、さらに好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは1モル以上であってもよく、20モル以下であることが好ましく、より好ましくは15モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
【0033】
また、前記析出液(b)のpHは、8.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上であり、13.0以下であることが好ましく、より好ましくは12.5以下、さらに好ましくは12.0以下である。
【0034】
前記アニオン性界面活性剤(s2)としては、アニオン性界面活性剤(s1)と同一でも異なっていてもよく、アニオン性界面活性剤(s1)として例示したものと同様の化合物が挙げられる。なかでもスルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤が好ましく、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0035】
また、前記アニオン性界面活性剤(s2)としては、分子内に−R1O−単位(R1は、炭素数2〜3のアルキレン基を表し、好ましくはエチレン基を表す)を含むことが好ましい。ポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径をよりいっそう均一にしやすくなる。
【0036】
アニオン性界面活性剤(s2)の含有率は、析出液(b)100質量%中、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上、さらには0.2質量%以上であってもよく、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0037】
前記析出液(b)には、ポリメチルシルセスキオキサンシード粒子(以下、単に「シード粒子」という場合がある)が含まれていてもよい。シード粒子が共存していることで、シード粒子に含まれる−OH基(シラノール基)と化合物(1)に含まれる−OH基(シラノール基)とが縮合して、シード粒子の周囲にポリメチルシルセスキオキサンが形成されるため、得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径の制御が容易となる。特に、サブミクロンサイズ、ミクロンサイズのポリメチルシルセスキオキサン粒子を製造することが可能となる。シード粒子としては、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(化合物(1)の単独重合体)が好ましい。
【0038】
前記シード粒子の個数平均粒子径は、目的とする粒子径に応じて調整すればよく、例えば0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
シード粒子の粒子径は、個数平均粒子径が1μm未満の場合、光散乱法により測定することができ、個数平均粒子径が1μm以上の場合、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置により測定することができる。
【0039】
また前記シード粒子の粒子径の変動係数は、最終的に得られるポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粒度分布を狭くする点から40%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下であり、小さいほど好ましいが、例えば2%以上、さらには3%以上であることも許容される。
前記粒子径の変動係数は、下記式で表される値とする。
粒子径の変動係数(%)=(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)×100
【0040】
析出液(b)にシード粒子が含まれている場合、シード粒子の割合は、析出液(b)100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0041】
析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、析出液(b)中のシード粒子に含まれるケイ素原子は、加水分解液(a)中の化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子1モルに対して0.01モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.05モル以上、さらに好ましくは0.1モル以上であり、5モル以下であることが好ましく、より好ましくは3モル以下、さらに好ましくは2モル以下である。
【0042】
また、析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、析出液(b)に含まれる塩基触媒の含有量は、加水分解液(a)中の化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子100モルに対して、0.01モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.05モル以上であり、10モル以下であることが好ましく、より好ましくは5モル以下、さらに好ましくは1モル以下である。
【0043】
また、析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、酸触媒が含まれていてもよい。酸触媒としては、加水分解液(a)に用いられる酸触媒と同様の触媒が挙げられ、有機酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。酸触媒の含有量は、加水分解液(a)中の化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子1モルに対して0.00001モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.00005モル以上、さらに好ましくは0.0001モル以上であり、0.1モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.05モル以下、さらに好ましくは0.01モル以下である。
【0044】
また、析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、析出液(b)のpHは、8.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.5以上であり、13.0以下であることが好ましく、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは11.0以下である。
【0045】
析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、アニオン性界面活性剤の含有率は、析出液(b)100質量中、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0046】
シード粒子を含む析出液(b)としては、水、塩基触媒及びアニオン性界面活性剤(s2)と、シード粒子とを混合することにより調製したものを用いてもよいし、シード粒子を調製した反応液を析出液(b)として用いてもよい。
【0047】
シード粒子は、粒子径の均一性の観点から、例えば、化合物(1)と、酸触媒と、水と、アニオン性界面活性剤を混合して化合物(1)の加水分解物を含む反応液(d)を得た後、この反応液(d)と塩基触媒とを混合することにより製造することができる。前記反応液(d)は、化合物(1)と、酸触媒と、水と、アニオン性界面活性剤とを同時に混合することにより調製してもよいし、化合物(1)と、酸触媒と、水とをまず混合した後に、アニオン性界面活性剤と混合することにより調製してもよい。得られたシード粒子は、必要に応じて、ろ過、乾燥、解砕等により乾燥粉体としてから使用してもよい。
【0048】
反応液(d)を調製する際、水の仕込み量は、化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子1モルに対して、10モル以上であることが好ましく、より好ましくは20モル以上、さらに好ましくは30モル以上であり、200モル以下であることが好ましく、より好ましくは150モル以下、さらに好ましくは120モル以下である。
【0049】
さらに、反応液(d)と塩基触媒とを混合することで、化合物(1)の加水分解物に含まれる−OH基(シラノール基)間で縮合が進み、シード粒子が形成される。−OH基(シラノール基)の縮合度を高めるため、シード粒子の熟成を行うことが好ましい。熟成温度は、20℃以上であることが好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましい。
また、熟成時間は、30分以上であることが好ましく、より好ましくは50分以上であり、200分以下であることが好ましく、より好ましくは120分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0050】
上記加水分解液(a)と、析出液(b)とを混合することにより、化合物(1)の加水分解物に含まれる−OH基(シラノール基)の縮合反応が進行してSi−O−Si結合が形成され、ポリメチルシルセスキオキサン粒子を得ることができる。加水分解液(a)と析出液(b)の両方にアニオン性界面活性剤が含まれているため、混合の当初から均一に混合することが容易となり、縮合反応が均等に進むためか、粒子径の均一なポリメチルシルセスキオキサン粒子を得ることが可能となる。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子は、反応液中で分散状態にあることが好ましい。
【0051】
加水分解液(a)と析出液(b)の混合方法としては特に限定されず、1)加水分解液(a)及び析出液(b)を調製したのち、加水分解液(a)を一括添加、連続滴下、或いはノズルなどを介して前記析出液(b)に送入する方法、2)加水分解液(a)及び析出液(b)を調製したのち、析出液(b)を一括添加、連続滴下、或いはノズルなどを介して加水分解液(a)に送入する方法など任意の方法を適用することができる。
【0052】
中でも、加水分解液(a)及び析出液(b)を調整したのち、加水分解液(a)を前記析出液(b)に連続滴下する方法が、粒子径を均一に制御し粒子同士の凝集を効率的に防止できる点で好ましい。
ここで加水分解液(a)を連続滴下する場合の滴下時間は10分〜300分が好ましく、より好ましくは30〜200分である。また、加水分解液(a)の滴下速度は、0.5g/分以上であることが好ましく、より好ましくは1g/分以上、さらに好ましくは1.5g/分以上であり、10g/分以下であることが好ましく、より好ましくは7g/分以下、さらに好ましくは5g/分以下である。
【0053】
加水分解液(a)は、析出液(b)100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0054】
また、加水分解液(a)と析出液(b)を混合して得られる混合液(c)において、水と化合物(1)の加水分解物に含まれるケイ素原子のモル比(水/Si)は、20以上であることが好ましく、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であり、120以下であることが好ましく、より好ましくは100以下、さらに好ましくは90以下である。
【0055】
前記混合液(c)のpHは、8.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9.0以上であり、13.0以下であることが好ましく、より好ましくは12.5以下、さらに好ましくは12.0以下である。
【0056】
加水分解液(a)と析出液(b)とを混合することで、化合物(1)の加水分解物の脱水縮合が進行し、ポリメチルシルセスキオキサン粒子が析出する。析出時の反応温度は10℃以上であることが好ましく、より好ましくは15℃以上であり、40℃以下であることが好ましく、より好ましくは35℃以下である。析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、反応温度は10℃以上であることが好ましく、より好ましくは15℃以上であり、70℃以下であることが好ましい。
【0057】
さらに化合物(1)の加水分解物の脱水縮合を促進する観点から、加水分解液(a)を全量添加した後に熟成を行うことが好ましい。熟成温度は25℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上であり、70℃以下であることが好ましく、より好ましくは65℃以下である。析出液(b)にシード粒子が含まれる場合、25℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上であり、70℃以下であることが好ましく、より好ましくは65℃以下である。
【0058】
得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径は、0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、10.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましく、もっとも好ましくは2.5μm以下である。
ポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径は、個数平均粒子径が1μm未満の場合、光散乱法により測定することができ、個数平均粒子径が1μm以上の場合、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置により測定することができる。
また、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の粒子径の変動係数は、50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下であり、小さいほど好ましいが、例えば2%以上、さらには3%以上であることも許容される。
【0059】
本発明の製造方法によって得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子は、反応液中に分散して存在しており、こうした反応液をそのまま分散体(分散液)として用いることもでき、必要に応じて、さらにろ過、乾燥、解砕等の処理を施すことにより、微粉体として回収して用いることもできる。
微粉体を得るための乾燥には、スプレードライヤー、円錐型リボン混合等の乾燥機が使用できるが、得られる微粉体の溶剤や樹脂への再分散性の点から、微粉体化の乾燥温度は、110℃以下であることが好ましく、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0060】
ポリメチルシルセスキオキサン粒子を分散体(分散液)として用いる場合、反応液に含まれる水/アルコール混合溶媒を必要に応じて各種の有機溶媒に溶媒置換して、有機溶媒分散体(有機溶媒分散液)として用いることもできる。
【0061】
有機溶媒置換工程において使用可能な有機溶媒としては、使用目的に応じて適宜選択することができ、例えば飽和又は不飽和の炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒等が好ましく挙げられる。
【0062】
前記有機溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の不飽和炭化水素(芳香族炭化水素)系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒;ジオキサン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;などが挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、各種樹脂等の溶解性や相溶性にも優れ、適度な沸点で工業的に使用しやすい点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が好ましい。
【0063】
有機溶媒置換する方法としては、例えば、有機溶媒を添加して蒸留する方法、分液処理による方法などが挙げられる。
【0064】
有機溶媒置換するに先立って、反応液のpHを予め8.0以上(好ましくは8.5以上、より好ましくは9.5以上)、13.0以下(好ましくは12.5以下、より好ましくは11.5以下)に調整しておくことが好ましい。反応液のpHは、上記酸触媒或いは塩基触媒として例示した酸或いは塩基を用いて調整することができ、酸としては上記有機酸が好ましく、塩基としては上記アミン類が好ましい。
【0065】
有機溶媒置換に供する有機溶媒の量は、有機溶媒の種類に応じて調整すればよく、例えば、反応液100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。
【0066】
分液処理により有機溶媒置換する場合、前述の方法により得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子分散液(反応液)と混和しない有機溶媒を使用し二層分離させることにより溶媒置換を行うが、効率的に有機溶媒層にポリメチルシルセスキオキサン粒子を移行させる観点から、ポリメチルシルセスキオキサン粒子分散液(反応液)と混和する極性の高い溶媒を添加することが好ましく、具体的にはアルコール系溶媒を添加することが好ましい。アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、2―プロパノールが好ましく使用される。アルコール系溶媒の使用量は反応液100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0067】
また、分液処理により有機溶媒置換する場合、処理温度は使用する有機溶媒の沸点等により適宜選択されるが0℃以上であることが好ましく、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、50℃以下であることが好ましく、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
分液処理により有機溶媒置換する場合、反応液と有機溶媒とを混合して撹拌することが好ましく、撹拌速度は使用する攪拌翼の形状、大きさ、あるいは液量により適宜選択されるが5rpm以上であることが好ましく、より好ましくは10rpm以上、さらに好ましくは20rpm以上であり、300rpm以下であることが好ましく、より好ましくは250rpm以下、さらに好ましくは200rpm以下である。また、攪拌時間は10分以上であることが好ましく、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは60分以上である。
【0068】
得られるポリメチルシルセスキオキサン粒子の有機溶媒分散体(以下、単に「分散体」という場合がある。)において、ポリメチルシルセスキオキサン粒子の含有率は、有機溶媒分散体100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0069】
以上のようにして得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子は、粒子径が均一であり、且つ有機溶媒中での分散性が良好である。このため、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤;各種フィルム、成型体など高分子材料のコーティング剤、あるいはコーティング剤用の添加剤;各種樹脂の粘度、チクソ性、粘弾性、或いは強度などの改質剤;液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックスやプラスチック等の各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー;半導体用封止材、液晶用シール材、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材;光拡散フィルム、光拡散板、導光板、防眩フィルム等の光拡散剤;白色体質顔料等の化粧品用添加剤;歯科材料等が挙げられ、シリカ粒子や有機樹脂粒子などの公知の用途への適用が可能である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
各種物性の測定および評価は、以下の方法で行った。
【0071】
〔個数平均粒子径1μm未満のポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径および変動係数(CV値)の測定〕
得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子分散体をイオン交換水で希釈して光散乱粒度分布測定機(Particle Sizing Systems社製「NicompMODEL380」)にて測定して、個数平均粒子径(μm)を求め、この値をポリメチルシルセスキオキサン粒子の平均粒子径とした。また上記装置により得られた個数平均粒子径と粒子径とを基に標準偏差を算出し、下式より変動係数(CV値:%)を求めた。
変動係数(CV値:%)=100×(標準偏差/個数平均粒子径)
【0072】
〔個数平均粒子径1μm以上のポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径および変動係数(CV値)の測定〕
個数平均粒子径1μm以上のポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径を、コールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)にて測定し、30000個の個数平均粒子径(μm)を求め、この値をポリメチルシルセスキオキサン粒子の平均粒子径とした。また上記装置により得られた個数平均粒子径と粒子径とを基に標準偏差を算出し、下式より変動係数(CV値:%)を求めた。
変動係数(CV値:%)=100×(標準偏差/個数平均粒子径)
【0073】
〔分散安定性評価〕
得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子分散体の分散安定性を以下の方法で評価した。具体的には得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子分散液を300メッシュ(JISメッシュ)の金網を用いて濾過を行った際の濾過性能を下記の基準にて評価した。また、濾過後の凝集物の有無は目視にて判定した。
○:濾過後にメッシュ上に凝集物が殆どない。
△:濾過後にメッシュ上に凝集物がある。
×:濾過中にメッシュに目詰まりが発生した。
【0074】
(実施例1/ナノ粒子の実施例)
攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水100.5質量部および10%酢酸水溶液を0.21質量部加え、室温で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と称する)100.5質量部を滴下口より添加し、MTMSの加水分解を行った。MTMS滴下終了より50分後にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液9.54質量部添加し加水分解液(a1)を得た。
【0075】
他方、上記反応釜とは異なる攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水686.6質量部および25%アンモニア水3.18質量部を加え室温下で攪拌したのち、アニオン性界面活性剤(s2)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液10.32質量部を加えてさらに室温で均一になるように攪拌し析出液(b1)とした。
次いで、前記析出液(b1)を室温にて攪拌しながら、この析出液(b1)に加水分解液(a1)を滴下口より60分間かけて滴下したところ、ポリメチルシルセスキオキサン粒子が析出し、さらに加水分解液(a1)を全量滴下した後、反応液を60℃に昇温して60℃で1時間熟成を行い、その後反応溶液を冷却して300メッシュで濾過を行い分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(1)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0076】
(実施例2/ナノ粒子の実施例)
実施例1において、加水分解液(a1)調製時のアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液をラウリル硫酸ナトリウムの20%水溶液9.54質量部に変更して加水分解液(a2)とし、析出液(b1)調製時のアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液をラウリル硫酸ナトリウムの20%水溶液10.32質量部に変更して析出液(b2)とし、それぞれ加水分解液(a1)、析出液(b1)の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様の手法により分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(2)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0077】
(実施例3/ナノ粒子の実施例)
実施例1において、加水分解液(a1)調製時のアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液をポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤社製、ニューコール(登録商標)1305−SN)の20%水溶液9.54質量部に変更して加水分解液(a3)とし、析出液(b1)調製時のアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液をポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤社製、ニューコール(登録商標)1305−SN)の20%水溶液10.32質量部に変更して析出液(b3)とし、それぞれ加水分解液(a1)、析出液(b1)の変わりに用いたこと以外は実施例1と同様の手法により分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(3)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0078】
(実施例4/ナノ粒子の実施例)
実施例1において、加水分解液(a1)調製時、メチルトリメトキシシランの滴下を行う前にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液を反応釜に添加したこと以外は実施例1と同様の手法により分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(4)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0079】
(実施例5/サブミクロン粒子の実施例)
攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水123.16質量部および10%酢酸水溶液を0.26質量部加え、室温で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と称する)123.16質量部を滴下口より一括添加し、MTMSの加水分解を行った。MTMS滴下終了より30分後にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液3.08質量部を添加し加水分解液(a5)を得た。得られた加水分解液(a5)は、メチルシルセスキオキサン粒子のシード粒子成長用に用いた。
【0080】
他方、上記反応釜とは異なる攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水607.18質量部を入れた後、10%酢酸水溶液0.09質量部を添加し攪拌により均一に混合した。次いでMTMS41.06質量部を一括添加し、20分間攪拌することによりMTMSの加水分解を行った。このとき反応液の温度は室温から60℃に昇温した。MTMS一括添加から20分後、さらにアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液1.03質量部添加し均一に混合することにより反応液(d5)を得た。次いで得られた反応液(d5)を60℃に保持した状態で、25%アンモニア水0.99質量部を一括添加し、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(シード粒子)を析出させて、シード粒子を含む析出液(b5)を得た。さらに、先に調製したシード粒子成長用の加水分解液(a5)244.79質量部を反応液に滴下し、粒子の成長を行った。加水分解液(a5)を全量滴下した後、60℃で1時間熟成を行い、その後反応溶液を冷却して300メッシュで濾過を行い分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(5)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0081】
(実施例6/ミクロン粒子の実施例)
攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水61.58質量部および10%酢酸水溶液を0.13質量部加え、室温で攪拌しながらメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と称する)61.58質量部を滴下口より添加し、MTMSの加水分解を行った。MTMS滴下終了より50分後にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液1.54質量部添加し加水分解液(a6)を得た。得られた溶液は、メチルシルセスキオキサン粒子のシード粒子成長用に用いた。
他方、上記反応釜とは異なる攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、脱イオン水669.01質量部を入れた後、10%酢酸水溶液0.22質量部を添加し攪拌により均一に混合した。次いでMTMS102.64質量部を一括添加し、30分間攪拌することによりMTMSの加水分解を行った。このとき反応液の温度は室温から40℃に昇温した。MTMS一括添加から30分後、さらにアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)の20%水溶液2.57質量部添加し均一に混合することにより反応液(d6)を得た。次いで得られた反応液(d6)を60℃に保持した状態で、25%アンモニア水0.37質量部を一括添加し、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(シード粒子)を析出させて、シード粒子を含む析出液(b6)を得た。さらに、先に調製した加水分解液(a6)121.84質量部を反応液に滴下し、粒子の成長を行った。加水分解液(a6)を全量滴下した後、30℃で50分熟成を行い、その後反応溶液を冷却して300メッシュで濾過を行い分散安定性評価を行うとともに、ポリメチルシルセスキオキサン粒子(6)が分散した分散液を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子の各評価結果を表1に示した。
【0082】
(実施例7/ナノ粒子有機溶剤分散体の実施例)
攪拌機、温度計、滴下口および冷却機を備えたガラス製の反応釜に、実施例1で得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子分散液(以下、反応液と記載、pH10.2)900.0質量部を加え、次いで有機溶剤としてメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと記載)450.0質量部を加え、攪拌回転数50rpmで室温にて攪拌した。このとき反応釜中の溶液は上層(MIBK層)、および下層(反応液層)の二層に分離していた。次に、アルコール系溶剤としてメタノール450.0質量部を3分割して加え(150.0質量部ずつ10分間毎に添加)、メタノールの全量添加後、室温で4時間攪拌を行ったところ、下層に分散していたポリメチルシルセスキオキサン粒子が上層のMIBK層に移行したことが確認された。次に上層(MIBK層)を分取したのち、分取した上層をさらに24時間静置することでわずかに水層が下層として分離することが確認された。得られた上層を分取したところ350.0質量部のMIBK層が得られ、このものにさらにMIBK350.0質量部を加えたのちエバポレーターを用いて濃縮しMIBK層中に残存する水分を留去することで、ポリメチルシルセスキオキサン粒子MIBK分散体(7)を得た。得られたポリメチルシルセスキオキサン粒子MIBK分散体(7)を分析したところ、ポリメチルシルセスキオキサン粒子は、MIBK分散体(7)100質量%中、9.8質量%含まれていた。またMIBK分散体(7)中のポリメチルシルセスキオキサン粒子の個数平均粒子径は17.2nmであり、ポリメチルシルセスキオキサン粒子は凝集することなくMIBK中に均一に分散していた。
【0083】
(比較例1/ナノ粒子の比較例)
実施例1において加水分解液(a1)調製時にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液を添加せず、析出液(b1)に添加するアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液を19.75質量部としたこと以外は実施例1と同様の手法により比較ポリメチルシルセスキオキサン粒子(1)が分散した分散液を得た。
【0084】
(比較例2/ナノ粒子の比較例)
実施例1において加水分解液(a1)調製時に添加するアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液を19.75質量部とし、析出液(b1)にアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液を添加しないこと以外は実施例1と同様の手法により比較ポリメチルシルセスキオキサン粒子(2)が分散した分散液を得た。
【0085】
(比較例3/サブミクロン粒子の比較例)
実施例4において加水分解液(a4)調製時にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液を添加せず、析出液(b4)に添加するアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液を19.75質量部としたこと以外は実施例4と同様の手法により比較ポリメチルシルセスキオキサン粒子(3)が分散した分散液を得た。
【0086】
(比較例4/ミクロン粒子の比較例)
実施例5において加水分解液(a5)調製時にアニオン性界面活性剤(s1)の水溶液を添加せず、析出液(b5)に添加するアニオン性界面活性剤(s2)の水溶液を19.75質量部としたこと以外は実施例5と同様の手法により比較ポリメチルシルセスキオキサン粒子(4)が分散した分散液を得た。
【0087】
【表1】
【0088】
表1より、本発明の製造方法により得られた粒子は、いずれも変動係数の上昇が抑制され、且つ分散安定性が良好であり、粒子径の均一性と有機溶媒への分散安定性を両立可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリメチルシルセスキオキサン粒子は、粒子径が均一であり、且つ有機溶媒中での分散性が良好である。このため、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤;各種フィルム、成型体など高分子材料のコーティング剤、あるいはコーティング剤用の添加剤;各種樹脂の粘度、チクソ性、粘弾性、或いは強度などの改質剤;液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックスやプラスチック等の各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー;半導体用封止材、液晶用シール材、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材;光拡散フィルム、光拡散板、導光板、防眩フィルム等の光拡散剤;白色体質顔料等の化粧品用添加剤;歯科材料等が挙げられ、シリカ粒子や有機樹脂粒子などの公知の用途への適用が可能である。