(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電動モータ装置において、前記ハウジングに対して前記回転子に予圧を与えて前記回転子の軸方向位置を保持する軸方向予圧手段を備え、前記回転子摺動手段は、前記軸方向予圧手段の与圧に抗して前記回転子を前記軸方向に摺動させる電動モータ装置。
請求項1または請求項2に記載の電動モータ装置において、前記回転子および前記固定子は、磁極の向きが前記回転軸と平行に配置され、前記回転子摺動手段は、前記固定子と前記回転子に作用する前記軸方向の電磁力により、前記回転子を前記軸方向に摺動させる電動モータ装置。
請求項3に記載の電動モータ装置において、前記回転子が永久磁石を有する界磁機構であり、前記固定子が、三相交流電流に対応する磁気回路を構成するコイルを有する励磁機構であり、
前記回転子摺動手段は、前記界磁機構の磁極の向きと一致する方向の励磁磁束に相当する電流成分により前記電磁力を発生させる電動モータ装置。
請求項1または請求項2に記載の電動モータ装置において、前記回転子はこの軸方向端面に磁性体を有し、前記回転子摺動手段は、前記磁性体に対向して設けられた電磁石である電動モータ装置。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電動モータ装置において、前記係合部が前記回転子の軸方向端面に設けられ、前記被係合部が前記ハウジングにおける、前記回転子の軸方向端面に対向する面に設けられ、これら前記係合部および前記被係合部は、円周方向に互いに接触可能な接触面を有する電動モータ装置。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電動モータ装置において、前記係合部が前記回転子の外周面に設けられ、前記被係合部が前記ハウジングにおける、前記回転子の外周面に対向する内周面に設けられ、前記係合部および前記被係合部は、円周方向に互いに接触可能な接触面を有する電動モータ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1,2のような、電動アクチュエータを使用した電動ブレーキ装置では、パーキングブレーキの用途において、ブレーキ摩擦材の押圧力の反力に伴う電動モータへの逆入力に対して電力を極力消費せずに押圧力を保持する逆入力保持手段が求められる。
このとき、例えば、上記特許文献のように、ロック機構をソレノイド等の駆動機構および爪車等の係合構造で外部に構成する場合、前記ソレノイドおよび係合構造のコストや搭載スペースが増加する場合がある。
【0005】
また、例えば、特許文献2のように減速機にロック機構の係合部を設ける場合、アクチュエータの設計要件にかかわらず減速機が必要となる。この減速機の設計において、前記ロック機構が係合可能であることが設計上の制約となるため、本来であれば不要な減速機を搭載せざるを得なくなる場合がある。
【0006】
この発明の目的は、逆入力保持手段を備えた電動ブレーキ装置において、スペースの低減および部品点数の低減を図り、またコスト低減を図ることができる電動ブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の電動ブレーキ装置は、ハウジングと、このハウジングに固定される固定子と、前記ハウジングに支持され前記固定子に対して回転する回転子と、を備える電動モータ装置において、
前記回転子が
前記回転子の回転軸の軸方向に摺動可能に構成され、前記回転子を前記軸方向に摺動させる回転子摺動手段と、前記回転子の回転を少なくとも一方向に対して阻止する逆入力保持手段と、を備え、
この逆入力保持手段は、
前記回転子に設けられる係合部、および前記ハウジングに設けられ前記回転子摺動手段により前記回転子を軸方向一方に摺動させた状態で前記係合部に係合される被係合部を有し、且つ、
前記係合部と前記被係合部が係合状態のとき、前記回転子に外力として作用する逆入力の負荷に対して、前記係合部と前記被係合部との係合状態が維持されて前記回転子の回転角度を保持する。
【0008】
この構成によると、回転子による通常の回転動作を行う場合、回転子の軸方向位置が保持されて、回転子が固定子に対して回転自在である。操作者のスイッチ操作等に応じて、逆入力保持手段により回転子の回転を少なくとも一方向に対して阻止するとき、回転子摺動手段により回転子を軸方向一方に摺動させる。これにより回転子の係合部と、ハウジングの被係合部が係合状態となる。逆入力保持手段は、この係合状態のとき、例えば、ブレーキ摩擦材の押圧力の反力に伴って回転子に外力として作用する逆入力の負荷に対して、係合部と被係合部との係合状態が維持されて回転子の回転角度を保持する。
【0009】
このように回転子を軸方向一方に摺動させることにより、回転子の係合部とハウジングの被係合部が係合状態となる構造を採ることで、外部にソレノイド等のロック機構を設ける必要がなくなる。よって、省スペースで部品点数の低減を図れる。また減速機等の不要な構成を省略できる分、スペースの低減および部品点数の低減を図れるうえ、コスト低減を図れる。また回転子に逆入力の負荷が作用しているとき、例えば、係合部と被係合部の接触面に発生する摩擦力により、回転子を軸方向一方に摺動させた状態が維持されることから、前記係合状態が維持される。モータに投入する電力を遮断ないし低下させた場合においても、前記係合状態が維持されて、回転子の回転角度が保持される。したがって、この電動ブレーキ装置を搭載する車両、装置等の電費を低く抑えることが可能となる。
【0010】
前記ハウジングに対して前記回転子に予圧を与えて前記回転子の軸方向位置を保持する軸方向予圧手段を備え、前記回転子摺動手段は、前記軸方向予圧手段の与圧に抗して前記回転子を前記軸方向に摺動させるものであっても良い。
前記予圧は、設計等によって任意に定める予圧であって、少なくとも回転子の軸方向位置が保持されて回転子が固定子に対して回転自在となる条件等を充足する予圧が、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により設定される。
【0011】
この構成によれば、回転子による通常の回転動作を行う場合、軸方向予圧手段がハウジングに対して回転子に予圧を与えることで、回転子の軸方向位置を確実に保持することができる。回転子の回転を少なくとも一方向に対して阻止するとき、回転子摺動手段が、軸方向予圧手段の与圧に抗して回転子を軸方向に摺動させることで、係合部と被係合部を係合状態に切換えることができる。したがって、回転子の軸方向位置を容易に且つ確実に切換えることができる。
【0012】
前記回転子および前記固定子は、磁極の向きが前記回転軸と平行に配置され、前記回転子摺動手段は、前記固定子と前記回転子に作用する前記軸方向の電磁力により、前記回転子を前記軸方向に摺動させるものであっても良い。
前記「平行」とは、厳密に平行である状態だけでなく、厳密に平行である場合と同様の効果を奏する状態も含む。
【0013】
この電動モータ装置は、回転子および固定子は磁極の向きが回転軸と平行に配置されるいわゆるアキシアルギャップモータである。このようなアキシアルギャップモータは、例えば、回転軸径方向の磁極を有するラジアルギャップモータと比較して、強力な電磁力を発生し得る。この構成によれば、回転子摺動手段は、既存の固定子と回転子を用いたアキシアルギャップモータの軸方向の電磁力により、回転子を軸方向に摺動させることができる。このように既存の固定子と回転子を用いて回転子を軸方向に摺動させることができるため、例えば、外部にソレノイドや電磁石等のロック機構を追加する構成等よりも、省スペースで部品点数の低減を図れ、またコスト低減を図れる。
【0014】
前記回転子が永久磁石を有する界磁機構であり、前記固定子が、三相交流電流に対応する磁気回路を構成するコイルを有する励磁機構であり、
前記回転子摺動手段は、前記界磁機構の磁極の向きと一致する方向の励磁磁束に相当する電流成分により前記電磁力を発生させるものであっても良い。
前記「電流成分」は、永久磁石同期モータの電流ベクトル制御におけるd軸電流に相当する電流成分である。
【0015】
例えば、励磁磁束を弱めるd軸電流を印加した場合、固定子と回転子の間には軸方向に斥力が発生し、励磁磁束を強めるd軸電流を印加した場合、固定子と回転子の間には軸方向に引力が発生する。この構成によると、前記回転子摺動手段は、回転子を軸方向に摺動させる電磁力が発生するよう、固定子におけるd軸電流を調整する。このように、回転子を摺動させる専用の機構等を設けることなく、回転子を軸方向に摺動させることができる。
【0016】
前記回転子はこの軸方向端面に磁性体を有し、前記回転子摺動手段は、前記磁性体に対向して設けられた電磁石であっても良い。この場合、電磁石の吸引力により回転子を軸方向に摺動させ、係合部を被係合部に係合させることができる。
【0017】
前記係合部が前記回転子の軸方向端面に設けられ、前記被係合部が前記ハウジングにおける、前記回転子の軸方向端面に対向する面に設けられ、これら前記係合部および前記被係合部は、円周方向に互いに接触可能な接触面を有するものであっても良い。この場合、係合部と被係合部を係合状態にすることで回転子の回転が阻害され、逆入力の負荷に対して、係合部の接触面と被係合部の接触面が互いに接触することで、これら接触面に摩擦力が発生する。これにより回転子の回転角度が保持される。
【0018】
前記係合部が前記回転子の外周面に設けられ、前記被係合部が前記ハウジングにおける、前記回転子の外周面に対向する内周面に設けられ、前記係合部および前記被係合部は、円周方向に互いに接触可能な接触面を有するものであっても良い。この場合にも、係合部と被係合部を係合状態にすることで回転子の回転が阻害され、逆入力の負荷に対して、係合部の接触面と被係合部の接触面が互いに接触することで、これら接触面に摩擦力が発生する。これにより回転子の回転角度が保持される。
【発明の効果】
【0019】
この発明の電動モータ装置は、ハウジングと、このハウジングに固定される固定子と、前記ハウジングに支持され前記固定子に対して回転する回転子と、を備える電動モータ装置において、前記回転子が
前記回転子の回転軸の軸方向に摺動可能に構成され、前記回転子を前記軸方向に摺動させる回転子摺動手段と、前記回転子の回転を少なくとも一方向に対して阻止する逆入力保持手段と、を備え、この逆入力保持手段は、前記回転子に設けられる係合部、および前記ハウジングに設けられ前記回転子摺動手段により前記回転子を軸方向一方に摺動させた状態で前記係合部に係合される被係合部を有し、且つ、前記係合部と前記被係合部が係合状態のとき、前記回転子に外力として作用する逆入力の負荷に対して、前記係合部と前記被係合部との係合状態が維持されて前記回転子の回転角度を保持する。このため、逆入力保持手段を備えた電動ブレーキ装置において、スペースの低減および部品点数の低減を図り、またコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施形態に係る電動モータ装置を
図1ないし
図6と共に説明する。この電動モータ装置は、例えば、車両に搭載される。
図1に示すように、この電動モータ装置1は、電動モータ2と、直動機構3とを軸方向に直列に接続したアクチュエータである。この電動モータ装置1は、アクチュエータ本体AHと、後述の制御装置CUとを備える。アクチュエータ本体AHは、電動モータ2と、直動機構3と、ハウジング4とを備える。この例の電動モータ2は、ダブルステータ型のアキシアルギャップモータである。直動機構3は、電動モータ2の回転運動を直進運動に変換する。ハウジング4は円筒形状に形成され、直動機構3および電動モータ2を支持する。
【0022】
電動モータ2の概略構造について説明する。
電動モータ2は、トルクに寄与する鎖交磁束を発生する磁極の向きが、この電動モータ2における回転軸L1と平行に配置された固定子7および回転子8を備えた、いわゆるアキシアルギャップ型である。固定子7は、ハウジング4に対して静的に固定される。回転子8は、直動機構3の回転入出力軸5に対して静的に固定され、固定子7との鎖交磁束により回転トルクを発生する。回転子8は、この回転子8の軸方向の両面にそれぞれトルク発生面を有する界磁機構である。前記各「静的に」とは、すきま等の影響を除いて概ね運動が同期する(換言すれば、相対的に拘束された)関係を意味する。
【0023】
ハウジング4について説明する。
ハウジング4は、ハウジング本体4Hとモータカバー45とを有する。ハウジング本体4Hには、直動機構3の大部分を収容する直動機構収容部4aと、電動モータ2の一部を収容するモータ収容部4bと、これら直動機構収容部4a,モータ収容部4bを仕切る隔壁4cとが設けられている。モータ収容部4bは、ハウジング本体4H内における軸方向一端側に設けられ、直動機構収容部4aは、ハウジング本体4H内における軸方向他端側に設けられている。
【0024】
隔壁4cは、回転入出力軸5の軸方向に対して垂直に設けられ、直動機構収容部4aからモータ収容部4bへの回転入出力軸5の侵入を許す貫通孔が形成されている。モータカバー45は、ハウジング本体4Hにおける電動モータ2側の開口端を塞ぐ有底円筒形状である。これらハウジング本体4Hとモータカバー45とは、印籠嵌合により互いに同軸に連結されている。この例では、ハウジング本体4Hの開口端における環状の段差部となる外周面と、モータカバー45の開口端における環状の段差部となる内周面とが印籠嵌合される。
【0025】
電動モータ2の詳細構造について説明する。
図2(A)に示すように、固定子7は、界磁機構の軸方向の両面にそれぞれ配置される第1および第2の励磁機構7A,7Bを備えている。第1,第2の励磁機構7A,7Bは、それぞれ三相交流電流に対応する磁気回路を構成するコイル11A,11Bを有する。コイル11A,11Bとして、例えば、マグネットワイヤ巻線が適用される。第1の励磁機構7Aは、磁性体コア10Aと、この磁性体コア10Aの外周に巻回されたコイル11Aと、磁性体バックヨーク9Aとを有する。第2の励磁機構7Bは、磁性体コア10Bと、この磁性体コア10Bの外周に巻回されたコイル11Bと、磁性体バックヨーク9Bとを有する。
【0026】
第1の励磁機構7Aについて説明すると、ハウジング本体4H内におけるモータ収容部4bにおいて、隔壁4cに当接するように磁性体バックヨーク9Aが設けられ、この磁性体バックヨーク9Aから軸方向に突出する磁性体コア10Aが設けられている。磁性体コア10Aは、円周方向一定間隔おきに複数設けられている。各磁性体コア10Aにコイル11Aがそれぞれ巻回されている。
【0027】
第2の励磁機構7Bについて説明すると、モータカバー45内において、このモータカバー45の底部に当接するように磁性体バックヨーク9Bが設けられ、この磁性体バックヨーク9Bから軸方向に突出する磁性体コア10Bが設けられている。この磁性体コア10Bも円周方向一定間隔おきに複数設けられている。その他磁性体コア10B、コイル11B、および磁性体バックヨーク9Bは、前述の第1の励磁機構7Aにおける磁性体コア10A、コイル11A、および磁性体バックヨーク9Aと同様の構成である。
【0028】
各励磁機構7A,7Bにおける、磁性体コア10A,10Bおよび磁性体バックヨーク9A,9Bは、例えば、磁束の方向と概ね平行に積層された積層鋼板を用いると、低損失で高トルクとなり好適であるが、単一の磁性材により構成することもできる。但し、磁性体コア10A,10Bを用いず空芯コイルにすることもでき、磁性体バックヨーク9A,9Bを用いずにハウジング4を磁性材で構成してバックヨークとして機能させることもでき、これら手法を適宜組み合わせて構成しても良い。
【0029】
回転子8は、永久磁石8aと、この永久磁石8aを保持する保持部8bとを有する円板状の部材である。保持部8bは、例えば、樹脂またはステンレス鋼等の非磁性材料から成る。回転子8は、回転入出力軸5の先端部分に結合されている。この例では、回転入出力軸5のうち、モータ収容部4bおよびモータカバー45内に侵入している先端部分の外周面に、回転子8が軸方向に位置決めされて結合(嵌合)されている。ハウジング本体4H、モータカバー45には、それぞれ転がり軸受53,53が設けられ、これら転がり軸受53,53に回転入出力軸5の先端部分が回転自在に支持されている。なお回転子8が結合している回転入出力軸5の先端部分を、回転入出力軸5とは別部材の出力軸として、回転入出力軸5に対し同軸で且つ静的に結合しても良い。
【0030】
回転入出力軸5の先端部分の外周面には、他の箇所よりも大径の大径部5aが形成され、この大径部5aの軸方向一端面である段差部5aaに、回転子8が当接離隔可能に構成される。換言すれば、回転子8は、ハウジング4に対し、回転軸L1の軸方向に摺動可能に構成される。回転子8と回転入出力軸5の先端部分との嵌合部には、例えば、Dカット、二面幅、スプライン等のいずれか一つが設けられ、回転子8から回転入出力軸5へのトルク伝達を可能としている。また回転子8は、軸方向に摺動可能とするため、前記嵌合部に所定の隙間が設けられている。
【0031】
軸方向予圧手段54について説明する。
この電動モータ2には、軸方向予圧手段54が設けられている。この軸方向予圧手段54は、ハウジング4に対して回転子8に予圧を与えてこの回転子8の軸方向位置を保持するものである。この例の軸方向予圧手段54として、圧縮コイルばねが適用される。回転入出力軸5のうち、モータ収容部4bに侵入している先端部分の外周面に、前記圧縮コイルばねが外装される。さらにこの圧縮コイルばねの軸方向一端部が、ハウジング本体4H側の転がり軸受53の内輪端面に当接され、前記圧縮コイルばねの軸方向他端部が、回転子8の保持部8bの一側面に当接されている。
【0032】
通常時、つまり回転子8による通常の回転動作を行う場合、回転子8は、軸方向予圧手段54の与圧により、大径部5aの段差部5aaに当接した軸方向位置に拘束されている。回転子8がこの軸方向位置に拘束された状態において、回転子8の軸方向両側のギャップ(隙間)がそれぞれ所定範囲に収められる。また回転子8が前記軸方向位置に拘束された状態において、後述する係合部55が被係合部56に干渉しない位置関係となっている。回転子8の回転を阻止するとき、後述する回転子摺動手段57(
図5)が、軸方向予圧手段54の与圧に抗して回転子8を軸方向に摺動させる(
図3(A))。
【0033】
逆入力保持手段58について説明する。
図2(A),(B)に示すように、この電動モータ2には、回転子8の回転を少なくとも一方向に対して阻止する逆入力保持手段58が設けられている。この逆入力保持手段58は、回転子8の軸方向一端面に設けられる係合部55と、ハウジング4における、回転子8の軸方向一端面に対向する面に設けられる被係合部56とを有する。
図3(A),(B)に示すように、被係合部56は、回転子8を軸方向一方(
図3(A)右側)に摺動させた状態で係合部55に係合される。
【0034】
図4に示すように、係合部55として、回転子8の軸方向一端面における外径側部分に円周等配された複数の凸部(「係合凸部」と称す)が設けられている。各係合凸部は、回転子8の軸方向一端面から軸方向に所定距離突出する直方体ないし扇形形状である。
図2(B)および
図4に示すように、被係合部56として、ハウジング本体4Hの開口端に円周等配された複数の凸部(「被係合凸部」と称する)が設けられている。
【0035】
各被係合凸部は、ハウジング本体4Hの開口端から軸方向に所定距離突出する直方体ないし扇形形状である。係合凸部および被係合凸部は、円周方向に互いに接触可能な接触面55a,56aを有する。これら接触面55a,56aは、それぞれ円周方向に対して垂直な鉛直面を有する。係合凸部、被係合凸部の各寸法、および等配ピッチ等は、電動モータ2のサイズ等に応じて適宜定められる。なお係合凸部および被係合凸部を、それぞれ円周方向に不等配に配置することも可能である。
【0036】
図1に示すように、直動機構3について説明すると、直動機構3は、電動モータ2の出力により、後述するブレーキロータに対して制動力を負荷する。この直動機構3は、電動モータ2の回転運動を回転入出力軸5を介して直動部6の直進運動に変換する。
直動機構3は、電動モータ2により回転駆動される回転入出力軸5と、この回転入出力軸5の回転運動を直進運動に変換する変換機構部31とを有する。変換機構部31は、直動部6と、軸受ケース32と、環状のスラスト板であるバックプレート33と、直動部6の直進運動に伴う軸方向の荷重に対する反作用力を保持するスラスト軸受34と、ラジアル軸受35と、キャリア36と、すべり軸受37,38と、遊星ローラ39とを有する。
【0037】
直動機構収容部4aの内周面に、円筒状の直動部6が、回り止めされ且つ軸方向に移動自在に支持されている。直動部6の内周面には、径方向内方に突出し螺旋状に形成された螺旋突起が設けられている。この螺旋突起に複数の遊星ローラ39が噛合している。
直動機構収容部4aにおける直動部6の軸方向一端側に、軸受ケース32が設けられている。この軸受ケース32は、円筒状のボス部と、このボス部から径方向外方に延びるフランジ部とを有する。前記ボス部内に複数のラジアル軸受35が嵌合され、これらラジアル軸受35の内輪内径面に回転入出力軸5が嵌合されている。回転入出力軸5は、軸受ケース32に複数のラジアル軸受35等を介して回転自在に支持される。
【0038】
直動部6の内周には、回転入出力軸5を中心に回転可能なキャリア36が設けられている。キャリア36は、回転入出力軸5との間に嵌合されたすべり軸受37,38により、回転入出力軸5に回転自在に支持されている。回転入出力軸5の軸方向先端部分には、軸受ケース32に対して回転入出力軸5およびキャリア36の軸方向位置を拘束する止め輪40が設けられている。
【0039】
キャリア36には、複数のローラ軸41が周方向に間隔を空けて設けられている。キャリア36の軸方向両端部には、それぞれ軸挿入孔が複数形成されている。各軸挿入孔は、径方向に所定距離延びる長孔から成る。各軸挿入孔に各ローラ軸41の軸方向両端部が挿入されて、これらローラ軸41が各軸挿入孔の範囲で径方向に移動自在に支持される。複数のローラ軸41における軸方向両端部には、これらローラ軸41を径方向内方に付勢する弾性リング42がそれぞれ掛け渡されている。
【0040】
各ローラ軸41に、遊星ローラ39が回転自在に支持される。各遊星ローラ39の外周面には、直動部6の螺旋突起に噛合する円周溝または螺旋溝が形成されている。各遊星ローラ39は、回転入出力軸5の外周面と、直動部6の内周面との間に介在される。弾性リング42の付勢力により、各遊星ローラ39が回転入出力軸5の外周面に押し付けられる。電動モータ2により回転入出力軸5が回転することで、この回転入出力軸5の外周面に接触する各遊星ローラ39が接触摩擦により回転する。これにより直動部6が軸方向に移動することで、この直動部6の軸方向先端に設けられた摩擦パッド43(
図13)がブレーキロータ44(
図13)に対して当接離隔する。
【0041】
制御装置CUについて説明する。
図5に示すように、制御装置CUは、アクチュエータ本体AHの電動モータ2を制御する、例えば、インバータ装置である。制御装置CUに、上位制御手段である上位ECU59が接続されている。この上位ECU59として、例えば、車両全般を制御する電気制御ユニットが適用される。上位ECU59は、ブレーキペダル60の操作量に応じて変化するセンサ60aの出力に応じて、各車輪の目標とするブレーキ力すなわちブレーキ力指令値を生成し出力する。制御装置CUは、ブレーキ力指令値に従って、電動モータ2を制御してアクチュエータ本体AHを駆動する。
【0042】
上位ECU59には、例えば、パーキングブレーキスイッチ61が接続されている。車両が停止しているとき、操作者がパーキングブレーキスイッチ61を操作すると、この操作指令信号が上位ECU59に入力される。上位ECU59は、車両が停止しているか否かを、例えば、センサ60aからのセンサ出力および角度センサ62からのセンサ出力等から判断する。
図1および
図5に示すように、制御装置CUの回転子摺動手段57は、上位ECU59から与えられた操作指令信号に基づいて、軸方向予圧手段54の与圧に抗して回転子8を軸方向に摺動させる。この例では、回転子摺動手段57は、固定子7と回転子8に作用する軸方向の電磁力により、回転子8を軸方向に摺動させる。
【0043】
回転子摺動手段57は、界磁機構の磁極の向きと一致する方向の励磁磁束に相当する電流成分により前記電磁力を発生させる。前記電流成分は、永久磁石同期モータの電流ベクトル制御におけるd軸電流に相当する電流成分である。例えば、固定子7aおよび固定子7bの何れか一方に励磁磁束を弱めるd軸電流を印加した場合、固定子7aおよび固定子7bの何れか一方と回転子8の間には軸方向斥力が発生する。また、固定子7aおよび固定子7bの何れか一方に励磁磁束を強めるd軸電流を印加した場合、固定子7aおよび固定子7bの何れか一方と回転子8の間には軸方向引力が発生する。具体的には、固定子7aに励磁磁束を強めるd電流を印加し、固定子7bに励磁磁束を弱めるd軸電流を印加した場合には、回転子8は、摩擦パッド43の方向に摺動する。
すなわち、回転子摺動手段57は、軸方向予圧手段54の与圧に抗して、回転子8を軸方向に摺動させる電磁力が発生するよう、d軸電流を調整する。
【0044】
回転子摺動手段57が回転子8を軸方向に摺動させることで、
図3(A),(B)に示すように、係合部55と被係合部56が係合状態となる。逆入力保持手段58は、この係合状態のとき、摩擦パッド43(
図13)の押圧力の反力に伴って回転子8に外力として作用する逆入力の負荷に対して、係合部55と被係合部56との係合状態が維持されて回転子8の回転角度を保持する。
図4に示すように、回転子8に逆入力の負荷が作用しているとき、係合部55と被係合部56の接触面55a,56aに発生する摩擦力により、回転子8を軸方向一方に摺動させた状態が維持されることから、前記係合状態が維持される。電動モータ2(
図1)に投入する電力を遮断ないし低下させた場合においても、前記係合状態が維持されて、回転子8の回転角度が保持される。
【0045】
図6は、この電動モータ装置における回転子の逆入力保持を実行する例を示すフローチャートである。
図5も参照しつつ説明する。車両が停止している条件を充足したとき本処理を開始し、上位ECU59は、回転子8(
図1)の逆入力保持を実行するか否かを判断する(ステップS1)。上位ECU59は、例えば、パーキングブレーキスイッチ61の操作の有無を判断する。パーキングブレーキスイッチ61の操作無しとの判断で(ステップS1:no)、本処理を終了する。
【0046】
パーキングブレーキスイッチ61の操作有りとの判断で(ステップS1:yes)、制御装置CUは、電動モータ2を所定のモータ角度まで回転させる(ステップS2)。この所定のモータ角度は、例えば、逆入力保持手段58(
図2)で保持したい回転子8(
図2)の回転角度に対し、係合部55(
図2)および被係合部56(
図2)のピッチおよび隙間等により影響を除去する所定角度を加算した値、等により制御装置CUで求められる。
【0047】
次に、回転子摺動手段57は、軸方向の電磁力により回転子8(
図3)を軸方向に摺動させる(ステップS4)。次に、制御装置CUはモータトルクを減少させる(ステップS5)。その後、制御装置CUは、逆入力保持手段58(
図2)が係合完了したか、つまり係合部55と被係合部56との係合状態が維持されているかを判断する(ステップS5)。このステップS5の逆入力保持手段58(
図2)の係合完了は、例えば、モータトルクおよび軸方向の電磁力を遮断した状態においても、回転子8(
図2)が回転しない状態等から判断することができる。前記回転子8(
図2)が回転しない状態は、角度センサ62のセンサ出力から判断し得る。逆入力保持手段58(
図2)の係合が完了していないとの判断で(ステップS5:no)、ステップS4に戻る。逆入力保持手段58(
図2)の係合が完了したとの判断で(ステップS5:yes)、本処理を終了する。
【0048】
作用効果について説明する。
以上説明した電動モータ装置によれば、回転子8による通常の回転動作を行う場合、回転子8の軸方向位置が保持されて、回転子8が固定子7に対して回転自在である。車両が停止している状態でパーキングブレーキスイッチ61が操作されたとき、軸方向予圧手段54の与圧に抗して、回転子摺動手段57により回転子8を軸方向一方に摺動させる。これにより回転子8の係合部55と、ハウジング4の被係合部56が係合状態となる。逆入力保持手段58は、この係合状態のとき、ブレーキ摩擦材の押圧力の反力に伴って回転子8に外力として作用する逆入力の負荷に対して、係合部55と被係合部56との係合状態が維持されて回転子8の回転角度を保持する。
【0049】
このように回転子8を軸方向一方に摺動させることにより、回転子8の係合部55とハウジング4の被係合部56が係合状態となる構造を採ることで、外部にソレノイド等のロック機構を設ける必要がなくなる。よって、省スペースで部品点数の低減を図れる。また減速機等の不要な構成を省略できる分、スペースの低減および部品点数の低減を図れるうえ、コスト低減を図れる。また回転子8に逆入力の負荷が作用しているとき、係合部55と被係合部56の接触面55a,56aに発生する摩擦力により、回転子8を軸方向一方に摺動させた状態が維持されることから、前記係合状態が維持される。電動モータ2に投入する電力を遮断ないし低下させた場合においても、前記係合状態が維持されて、回転子8の回転角度が保持される。したがって、この電動ブレーキ装置を搭載する車両、装置等の電費を低く抑えることが可能となる。
【0050】
この電動モータ装置は、回転子8および固定子7は磁極の向きが回転軸L1と平行に配置されるいわゆるアキシアルギャップモータである。このようなアキシアルギャップモータは、例えば、回転軸径方向の磁極を有するラジアルギャップモータと比較して、強力な電磁力を発生し得る。
【0051】
この構成によれば、回転子摺動手段57は、既存の固定子7と回転子8を用いたアキシアルギャップモータの軸方向の電磁力により、回転子8を軸方向に摺動させることができる。つまり回転子摺動手段57は、回転子8を軸方向に摺動させる電磁力が発生するよう、固定子7におけるd軸電流を調整する。このように既存の固定子7と回転子8を用いて回転子8を軸方向に摺動させることができるため、例えば、外部にソレノイドや電磁石等のロック機構を追加する構成等よりも、省スペースで部品点数の低減を図れ、またコスト低減を図れる。
【0052】
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0053】
図7に示すように、軸方向予圧手段54として、皿ばねを適用しても良い。この例では、回転入出力軸5のうち、モータ収容部4bに侵入している先端部分の外周面に、カラー63を介して前記皿ばねが外装される。さらにハウジング本体4H側の転がり軸受53の内輪端面に、カラー63を介して皿ばねの軸方向一端部が当接され、皿ばねの軸方向他端部が、回転子8の保持部8bの一側面に当接されている。このような皿ばねである軸方向予圧手段54においても、ハウジング4に対して回転子8に予圧を与えてこの回転子8の軸方向位置を保持し得る。
【0054】
図8(A),(B)に示すように、回転子8の外周面に係合部55としての係合凸部が設けられ、ハウジング本体4Hの内周面に被係合部56としての被係合凸部が設けられても良い。これら係合凸部および被係合凸部は、円周方向に互いに接触可能な接触面55a,56aを有する。係合凸部、被係合凸部の各寸法、および等配ピッチ等は、電動モータ2のサイズ等に応じて適宜定められる。回転子8による通常の回転動作を行う場合、軸方向予圧手段54の与圧により、係合凸部が被係合凸部に対し軸方向に離れていて干渉しない非係合状態となっている。逆入力保持手段58の逆入力保持機能を用いる場合、回転子摺動手段57(
図5)が、軸方向予圧手段54の与圧に抗して回転子8を
図8(A)右側に摺動させることで、係合凸部55が被係合凸部56に係合する。これにより回転子8の回転が阻止される。
【0055】
図9(A),(B)に示すように、回転子8の外周面に、多角形(この例では八角形)から成る係合部55が設けられ、ハウジング本体4Hの内周面に、多角形(この例では八角形)から成る被係合部56が設けられても良い。回転子摺動手段57(
図5)が、軸方向予圧手段54の与圧に抗して回転子8を
図9(A)右側に摺動させることで、係合部55の平面が被係合部56の平面に接触する。これにより係合凸部が被係合凸部に係合する。したがって回転子8の回転が阻止される。
【0056】
図10に示すように、回転子8の外周面に雄螺子から成る係合部55が設けられ、ハウジング本体4Hの内周面に、雌螺子から成る被係合部56が設けられても良い。前記雄螺子および前記雌螺子のねじの向きは、例えば、回転子8に逆入力の負荷が印加された場合に、雌螺子に雄螺子が締め込まれる向きとしておくと、逆入力の負荷の大きさによらず係合状態が維持できて好適である。
【0057】
図11に示すように、ラジアルギャップモータにおいて、係合部55として、回転子8の軸方向一端面に円周等配された複数の係合凸部が設けられ、被係合部56として、ハウジング本体4Hの開口端に円周等配された複数の被係合凸部が設けられる構成としても良い。このラジアルギャップモータの例では、回転子8の軸方向一端面に対し、軸方向に対向する電磁石64がハウジング本体4Hに設けられている。回転子8は、この軸方向一端面に磁性体65を有し、回転子摺動手段57(
図5)は、磁性体65に対向して設けられたコイル64aを含む前記電磁石64である。
【0058】
ラジアルギャップモータにおいては、前述のアキシアルギャップモータと異なり基本的に固定子によって軸方向の電磁力は発生しない。このため、この
図11の実施形態では、回転子8に対し軸方向に対向して設けられた電磁石64の吸引力により、軸方向予圧手段54の与圧に抗して、回転子8が軸方向に摺動することで、被係合部56に係合部55が係合する。なお、この例の他、例えば、回転子における電磁石の対向面に永久磁石を設け、電磁石により引力と斥力の双方向の力を印加可能とすることもできる。その場合は、軸方向予圧手段を設けない構成とすることができる。これにより部品点数の低減を図り、コスト低減を図ることができる。
【0059】
図1〜
図10の電動モータ装置では、回転子摺動手段として、固定子7の励磁機構の電磁力によって回転子8を摺動させる例を示しているが、この例に限定されるものではない。
図1〜
図10の電動モータ装置において、回転子摺動手段として、例えば、
図11に示す電磁石64をハウジング本体4Hに別途設けることも可能である。
【0060】
図12(a)に示すように、係合凸部および被係合凸部は、逆入力による回転方向に対して互いに接触する接触面55a,56aのみ、それぞれ円周方向に対して垂直な鉛直面を有し、円周方向の反対側はそれぞれなだらかな斜面55b,56bとしても良い。この構成によると、例えば、電動パーキングブレーキ装置等の用途において、回転子の回転を保持する逆入力の印加方向が一方向のみである場合、車両の停止中、回転子が回転子摺動手段により誤って軸方向に摺動してしまったとき、回転子が前記逆入力とは反対側に回転したとしても、回転子は斜面に沿って軸方向に移動可能である。したがって、係合凸部と被係合凸部が固着することなく、回転子を初期の軸方向位置へ摺動させ容易に復帰させることができる。
【0061】
図12(b)に示すように、係合凸部および被係合凸部は、逆入力による回転方向に対して、互いに楔状に接触する斜面から成る接触面55a,56aを設けても良い。この構成によると、係合凸部および被係合凸部の接触面55a,56aの摩擦力によらず、係合状態を維持することができる。この場合、それぞれ直方体形状の係合凸部および被係合凸部(
図4)と比較して、逆入力される力が微小であっても係合状態が維持される。
【0062】
図13は、車両に搭載されるいずれかの電動ブレーキ装置の一部破断した断面図である。この電動ブレーキ装置は、いずれかのアクチュエータ本体と、車輪と一体に回転する回転部材であるブレーキロータ44と、このブレーキロータ44と接触して制動力を発生する摩擦パッド(摩擦材)43と、電動モータを制御する図示外の制御装置とを備える。車両には、ブレーキロータ44の外周側部分を囲むようにキャリパ51がそれぞれ設けられる。キャリパ51は、電動モータのハウジング4に一体に設けられている。
【0063】
キャリパ51のアウトボード側の端部に、爪部52が設けられる。爪部52は、ブレーキロータ44のアウトボード側の側面と軸方向で対向する。この爪部52にアウトボード側の摩擦パッド43が支持されている。
キャリパ51のうち、直動機構3の直動部6のアウトボード側端に、インボード側の摩擦パッド43が支持されている。この摩擦パッド43は、ブレーキロータ44のインボード側の側面と軸方向で対向する。アクチュエータ本体は、摩擦パッド43をブレーキロータ44に対して当接離隔させる駆動を行う。
【0064】
車両における図示外のナックルに、マウント(図示せず)が支持される。このマウントの長手方向両端部には、一対のピン支持片(図示せず)が設けられる。これらピン支持片のそれぞれ端部に、軸方向に平行に延びる図示外のスライドピンが設けられる。これらスライドピンに、キャリパ51が軸方向にスライド自在に支持されている。
【0065】
前記制御装置は、図示外のブレーキペダルの操作量に応じて、電動モータを制御する。制動時、電動モータの駆動によりインボード側の摩擦パッド43がブレーキロータ44に当接して、ブレーキロータ44を軸方向に押圧する。その押圧力の反力によりキャリパ51がインボード側にスライドする。これにより、キャリパ51の爪部52に支持されたアウトボード側の摩擦パッド43がブレーキロータ44に当接する。これらアウトボード側およびインボード側の摩擦パッド43,43で、ブレーキロータ44を軸方向両側から強く挟持することで、ブレーキロータ44に制動力が負荷される。
【0066】
係合部、被係合部を設ける箇所は、前述の例に限定されるものではない。例えば、
図8の係合部、被係合部の設置例に代えて、同
図8の回転子の軸方向一端部に、円筒形状から成る回転子側円筒部をこの回転子に同軸に設けると共に、前記回転子側円筒部の内周面と径方向で対向する円筒形状から成るハウジング側円筒部をハウジング本体に設けても良い。
回転子側円筒部の内周面に、複数の係合凸部が円周等配に設けられ、ハウジング側円筒部の外周面に、複数の被係合凸部が円周等配に設けられている。回転子を軸方向一方に摺動させた状態で、被係合凸部に係合凸部が係合される。なお回転子側円筒部とハウジング側円筒部との径方向の大小関係は逆にしても良い。
【0067】
回転子は、非磁性材料から成る保持部で永久磁石を保持すると、損失が少なく好適と考えられるが、磁性材から成る保持部で永久磁石を保持することもできる。回転子は、保持部を用いずに、複数の軸方向磁極に着磁された単一の磁石を、直接、回転入出力軸に固定する構造とすることもできる。
【0068】
電動モータの構造として、前述の通り永久磁石を用いた永久磁石同期モータを構成すると、省スペースで高トルクとなり好適であるが、例えば、回転子に永久磁石を用いず、回転子が回転することによって固定子インダクタンスが変化する突極形状の鉄心を用いたリラクタンスモータを用いることもできる。また、界磁機構および励磁機構の極数は設計要件に応じて適宜定められ、角度センサやサーミスタ等のセンサや配線構造等は、設計要件に応じて適宜設けられるものとする。
【0069】
アキシアルギャップモータを適用した実施形態では、回転子の軸方向両側に固定子を配置するダブルステータ型を適用しているが、例えば、一対の固定子および回転子が軸方向に対向して配置されるシングル型であっても良い。
軸方向予圧手段を設けず、例えば、固定子により、回転子が回転入出力軸の段差部に当接するように電磁力を印加することにより、回転子が通常の回転動作を行う場合は係合部が被係合部に干渉しないように制御を行うこともできる。
【0070】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。