特許第6749229号(P6749229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749229
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】落石防護装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20200824BHJP
   E21F 13/08 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   E21D9/12 B
   E21F13/08
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-250821(P2016-250821)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104951(P2018-104951A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】小林 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−324594(JP,A)
【文献】 特開2003−176692(JP,A)
【文献】 特開昭54−122578(JP,A)
【文献】 実開昭60−009814(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0232280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00− 9/14
E21F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑内に架設されたベルトコンベアからこぼれ落ちたズリから下方を防護するための、落石防護装置であって、
ベルトコンベアの支持フレームに付設される複数の吊架ユニットと、
前記複数の吊架ユニットによって、ベルトコンベアの長手方向にスライド自在に保持される複数のスライドユニットと、
前記複数のスライドユニットの下部に付設される保護ユニットと、を備え、
前記保護ユニットが、平面視においてベルトコンベアの幅方向両側より外側に張り出していることを特徴とする、
落石防護装置。
【請求項2】
前記保護ユニットは、面材であることを特徴とする、請求項1に記載の落石防護装置。
【請求項3】
前記面材は、樹脂製ダンボール板であって、樹脂製ダンボール板の筋目方向がベルトコンベアの延伸方向と実質的に直交することを特徴とする、請求項2に記載の落石防護装置。
【請求項4】
前記吊架ユニットは、ベルトコンベアの支持フレームに付設可能な上ブラケットと、前記スライドユニットを保持する下ブラケットと、前記上ブラケットから前記下ブラケットを揺動自在に吊り下げる、吊架具と、を備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の落石防護装置。
【請求項5】
前記吊架ユニットは、ローラを備え、前記スライドユニットは、長尺状のスライドレールを備え、前記スライドユニットが前記ローラとの接触によってベルトコンベアの長手方向にスライド可能に構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の落石防護装置。
【請求項6】
前記吊架ユニットは、2つのローラを備え、前記スライドレールは断面菱形形状を呈し、前記2つのローラが前記スライドレール下側の隣り合う2面に接することを特徴とする、請求項5に記載の落石防護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防護装置に係り、特に、容易に移設可能でかつズリの回収が簡単な、移動式の落石防護装置に係る。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事において、切羽で発生したズリ(石・土砂)を坑外へ搬送するために連続ベルトコンベアを採用するケースが増えている。ベルトコンベアは切羽から坑外へ亘って延設されるが、工事車両の通行の邪魔になるのを避けるため、ブラケットやチェーンなどで坑内の高所に吊り下げて設置されるのが通常である(図5)。
ベルトコンベアによるズリ出しでは、ベルト上のズリが搬送される際に下方へ落下することがある。たとえば、トンネルインバート部の施工において、ベルトコンベア上のズリが作業員、コンクリートの打設面、またはインバート桟橋などに落下すると大きな損害を引き起こすおそれがある。
【0003】
このような損害を避けるため、従来は、トンネルインバート工の施工区間の前後に亘って、ベルトコンベアの下部に保護用のネットを掛け、これによって、ズリの下方への落下を防止していた。また、施工の進捗によって施工区間が切羽側へ移動するため、これに合わせて保護ネットを移設していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術には次のような欠点がある。
<1>保護ネットの移設作業は、高所作業車を使って坑口側の保護ネットを2〜3枚取り外し、インバート桟橋を渡って切羽側へ80mほど運搬してから、再度、高所作業車によって切羽側へ保護ネットを展設して行う。このため、1回の移設作業に2〜3時間を要し、作業効率が非常に悪い。
<2>ズリの回収作業は、不定型なネットの網目にズリが絡まりやすく作業効率が非常に悪い。
<3>ネットの網目より小さなズリが網目を通り抜けてネット下に落下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決する落石防護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するための本発明の落石防護装置は、ベルトコンベアの支持フレームに付設される複数の吊架ユニットと、複数の吊架ユニットによってベルトコンベアの長手方向にスライド自在に保持される複数のスライドユニットと、複数のスライドユニットの下部に付設される保護ユニットと、を備え、保護ユニットが平面視においてベルトコンベアの幅方向両側より外側に張り出していることを特徴とする。
【0007】
本発明の落石防護装置は、保護ユニットが面材であってもよい。
【0008】
本発明の落石防護装置は、面材が樹脂製ダンボール板であって、樹脂製ダンボール板の筋目方向がベルトコンベアの延伸方向と実質的に直交していてもよい。
【0009】
本発明の落石防護装置は、吊架ユニットがベルトコンベアの支持フレームに付設可能な上ブラケットと、スライドユニットを保持する下ブラケットと、上ブラケットから下ブラケットを揺動自在に吊り下げる、吊架具と、を備えていてもよい。
【0010】
本発明の落石防護装置は、吊架ユニットがローラを備え、スライドユニットが長尺状のスライドレールを備え、スライドユニットがローラとの接触によってベルトコンベアの長手方向にスライド可能に構成されていてもよい。
【0011】
本発明の落石防護装置は、吊架ユニットが2つのローラを備え、スライドレールが断面菱形形状を呈し、2つのローラがスライドレール下側の隣り合う2面に接していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の落石防護装置は以上の構成を有するため、次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>ベルトコンベアの支持レールに沿って円滑にスライド移動できるため、移設が容易で作業効率がよい。
<2>保護ユニットが面材であるため、保護ユニット上を平型レーキ(トンボ)で掃き寄せることによってズリを効率よく回収できる。
<3>保護ユニットが面材であるため、細かいズリも漏らさず補足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る落石防護装置の説明図。
図2】吊架ユニットの説明図。
図3】スライド構造の説明図。
図4】本発明に係る落石防護装置の使用方法の説明図。
図5】背景技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の落石防護装置について詳細に説明する。
なお、本明細書等における「前後」「左右」「上下」などの方位は、落石防護装置をベルトコンベアに付設した状態における、ベルトコンベアの長手方向を前後、幅方向を左右とした各方位を意味する。
【実施例1】
【0015】
[落石防護装置]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の落石防護装置1は、トンネルの坑内に架設されたベルトコンベアAからこぼれ落ちたズリから、ベルトコンベアA下方の作業員や設備などを防護するための装置である。
本発明の落石防護装置1は、複数の吊架ユニット10と、複数のスライドユニット20と、保護ユニット30と、を備える。
本例では、8個の吊架ユニット10、2本のスライドユニット20、2枚の保護ユニット30の組合せを採用する。2本のスライドユニット20は左右平行に配置し、それぞれのスライドユニット20の長手方向に沿って各4個の吊架ユニット10を配置し、2枚の保護ユニット30は前後に接続する。
なお、図1では落石防護装置1の構成の理解を容易にするため。ベルトコンベアAの支持フレームBの一部を透過線で表示している。
【0016】
<2>吊架ユニット(図2)。
吊架ユニット10は、スライドユニット20をベルトコンベアAの長手方向にスライド自在に保持する部材である。1本のスライドユニット20に対して、吊架ユニット10を2つ以上設ける。
本例では、吊架ユニット10として、ベルトコンベアAの支持フレームBに付設する上ブラケット11と、スライドユニット20を保持する下ブラケット13と、上ブラケット11から下ブラケット13を揺動自在に吊り下げる吊架具12と、下ブラケット13に回転自在に付設されるローラ14と、を備える吊り部材を採用する。
なお、吊架ユニット10の構成はこれに限られない。要は、複数の吊架ユニット10で、スライドユニット20を支持フレームBに対してスライド自在に保持できる構成であればよい。
【0017】
<2.1>上ブラケット。
上ブラケット11は、支持レールBに掛止するための部材である。
本例では、下方に支持レールBに外嵌可能な開口を備えた、逆U字形状の部材を採用する。
上ブラケット11の両下端部付近にはそれぞれ、吊架具12を挿通するための挿通孔が形成される。
【0018】
<2.2>下ブラケット。
下ブラケット13は、スライドレール21を保持するための部材である。
本例では、内部にスライドレール21を保持可能なスライド空間Sを備えた、逆U字形状の部材を採用する。
下ブラケット13の両下端部には、それぞれローラ14が回転自在に軸支される。
下ブラケット13の上部には、吊架具12を挿通するための2つの挿通孔が形成される。
【0019】
<2.3>吊架具。
吊架具12は、上ブラケット11から下ブラケット13を揺動自在に吊り下げる部材である。
本例では、吊架具12として、2つのカラビナを採用する。カラビナとは開閉部(ゲート)を備える環状の金属部材である。
カラビナは指でゲートを押し開くだけで取り外しができるため、吊架ユニット10の設置や取り外しが容易である。
【0020】
<3>スライドユニット(図3)。
スライドユニット20は、複数の吊架ユニット10のスライド空間S内に保持されて、保護ユニット30をスライド移動させる部材である。
本例では、ベルトコンベアAの左右の支持レールBに沿って、スライドユニット20をそれぞれ1本ずつ計2本設ける。
スライドユニット20は、長尺状のスライドレール21と、スライドレール21の下方に接続する複数の連結具22と、を備えるレール部材を採用する。
本例では、スライドレール21に角形鋼管を採用する。
連結具22は、スライドレール21の正面視を菱形形状とした向きにおける下方から、スライドレール21の長手方向における一定の間隔ごとに突設する。
連結具22は、正面視逆T字形状の部材と、T字の上辺に対応する平板部材とからなり、両者によって、後述する保護ユニット30の保護面材31を上下から挟み込んでボルト締結可能に構成する。
なお、スライドユニット20の構成はこれに限られず、他の各種の構成を採用しうる。例えば、スライドレール21は断面円形や三角形でもよい。また、FRP(繊維強化プラスチック)製などであってもよい。
【0021】
<3.1>スライド構造(図3)。
本発明の落石防護装置1は、スライドユニット20を吊架ユニット10によってスライド可能に保持することで、ベルトコンベアAの長手方向に沿って移動可能なスライド構造に特徴を有する。
本例では、2つのローラ14によって、吊架ユニット10のスライド空間Sの下部を、スライドレール21の下部形状に対応する形状に構成する。
具体的には、2つのローラ14の回転軸が下方に交角θを形成するように、ローラ14を向かい合わせて設置する。本例では、交角θは90度である(図2)。
本例では、2つのローラ14の側面が、スライドレール21下側の隣り合う2側面に、それぞれ面で接するため、荷重を有効に分散支持させることができる。
また、支持フレームBは、坑壁から吊下げられているため、ベルトコンベアAの荷重や振動などによって、若干撓んでいたり変形していることがある。
これに対し、本例では、上ブラケット11と下ブラケット13とを固定的に接続するのではなく、吊架具12によって、若干の揺動を許容しつつ接続するため、支持レールBに歪みがあっても、歪みによる変位を吸収することができる。
以上の構造により、本発明の落石防護装置1は、ベルトコンベアAに沿って滑らかにスライド移動することができる。
【0022】
<4>保護ユニット。
保護ユニット30は、ベルトコンベアAからこぼれたズリが下方へ落下するのを防ぐ部材である。
保護ユニット30の幅は、ベルトコンベアAの幅より広い。すなわち、保護ユニット30は、平面視においてベルトコンベアAの幅方向の両側より外側に張り出す。
本例では、保護ユニット30は、保護面材31と、保護面材31の縁部に形成した、ズリこぼれ出し防止用の側壁32を備える。
保護面材31として、「プラダン」などの商標で知られる樹脂製ダンボール板を採用する。樹脂製ダンボール板は、折れ曲がりを防止するため、筋目方向が保護ユニット30の幅方向、すなわちベルトコンベアAの延伸方向と実質的に直交する向きに配置する。
保護面材31は一枚ものでも、複数枚を接続して用いてもよい。
なお、側壁32は必須の構成要素ではない。また、側壁32は保護面材31の両側端に設けるほか、前後端に設けてもよい。あるいは、トンネル中央側の一端のみに設けてもよい。
【0023】
<4.1>保護ユニットの機能。
従来は、落下したズリの荷重によって変形したネットの中から、手作業でズリを取り除いていたため作業効率が悪く、ズリがネットに絡まりやすかった。
これに対し、本例では保護ユニット30に面材を採用するため、ズリの回収が容易である。例えば、保護面材31上のズリをトンボで掃き寄せることで、容易かつ綺麗に回収することができる。
また、面状体であるため、小さなズリも漏れなく回収することができる。
【0024】
<5>落石防護装置の使用方法(図4)。
本発明の落石防護装置は、以下の手順で使用する。
ベルトコンベアAを支持する支持フレームBの2本の下部レールに、所定の間隔で複数の吊架ユニット10を付設する。
具体的には、支持フレームBの上部に上ブラケット11を外嵌し、上ブラケット11下部の挿通孔に吊架具12を挿通することで、下ブラケット13を連結する。
続いて、複数の吊架ユニット10のスライド空間S内に、スライドユニット20のスライドレール21を連通する。
本発明の落石防護装置1は、例えばトンネルインバート部の一工区の施工が終わり、施工箇所が移動する際に、ベルトコンベアAに沿って牽引または押出しすることで容易に移動させることができる。このため高所作業車による作業などが必要ない。
なお、本発明の落石防護装置1は、トンネルインバート部の防護に限らず、ベルトコンベアAの延伸する範囲にわたって適宜の用途に使用することができる。
【実施例2】
【0025】
[スライド構造の他の実施例]
吊架ユニット10とスライドユニット20とのスライド構造は実施例1の構成に限られない。
例えば、複数の吊架ユニット10の下部にベルトコンベアAの長手方向に沿ってレール状の部材を固定し、スライドユニット20の上部をスライドレール21でなくローラ状の部材にしてもよい。
この場合、吊架ユニット10のレール部材の周面にスライドユニット20のローラ部材を摺動可能に当接させることで、ベルトコンベアAの長手方向に沿ってスライドさせることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 落石防護装置
10 吊架ユニット
11 上ブラケット
12 吊架具
13 下ブラケット
14 ローラ
20 スライドユニット
21 スライドレール
22 連結具
30 保護ユニット
31 保護面材
32 側壁
A ベルトコンベア
B 支持フレーム
S スライド空間
θ 交角
図1
図2
図3
図4
図5