【実施例1】
【0015】
[落石防護装置]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明の落石防護装置1は、トンネルの坑内に架設されたベルトコンベアAからこぼれ落ちたズリから、ベルトコンベアA下方の作業員や設備などを防護するための装置である。
本発明の落石防護装置1は、複数の吊架ユニット10と、複数のスライドユニット20と、保護ユニット30と、を備える。
本例では、8個の吊架ユニット10、2本のスライドユニット20、2枚の保護ユニット30の組合せを採用する。2本のスライドユニット20は左右平行に配置し、それぞれのスライドユニット20の長手方向に沿って各4個の吊架ユニット10を配置し、2枚の保護ユニット30は前後に接続する。
なお、
図1では落石防護装置1の構成の理解を容易にするため。ベルトコンベアAの支持フレームBの一部を透過線で表示している。
【0016】
<2>吊架ユニット(
図2)。
吊架ユニット10は、スライドユニット20をベルトコンベアAの長手方向にスライド自在に保持する部材である。1本のスライドユニット20に対して、吊架ユニット10を2つ以上設ける。
本例では、吊架ユニット10として、ベルトコンベアAの支持フレームBに付設する上ブラケット11と、スライドユニット20を保持する下ブラケット13と、上ブラケット11から下ブラケット13を揺動自在に吊り下げる吊架具12と、下ブラケット13に回転自在に付設されるローラ14と、を備える吊り部材を採用する。
なお、吊架ユニット10の構成はこれに限られない。要は、複数の吊架ユニット10で、スライドユニット20を支持フレームBに対してスライド自在に保持できる構成であればよい。
【0017】
<2.1>上ブラケット。
上ブラケット11は、支持レールBに掛止するための部材である。
本例では、下方に支持レールBに外嵌可能な開口を備えた、逆U字形状の部材を採用する。
上ブラケット11の両下端部付近にはそれぞれ、吊架具12を挿通するための挿通孔が形成される。
【0018】
<2.2>下ブラケット。
下ブラケット13は、スライドレール21を保持するための部材である。
本例では、内部にスライドレール21を保持可能なスライド空間Sを備えた、逆U字形状の部材を採用する。
下ブラケット13の両下端部には、それぞれローラ14が回転自在に軸支される。
下ブラケット13の上部には、吊架具12を挿通するための2つの挿通孔が形成される。
【0019】
<2.3>吊架具。
吊架具12は、上ブラケット11から下ブラケット13を揺動自在に吊り下げる部材である。
本例では、吊架具12として、2つのカラビナを採用する。カラビナとは開閉部(ゲート)を備える環状の金属部材である。
カラビナは指でゲートを押し開くだけで取り外しができるため、吊架ユニット10の設置や取り外しが容易である。
【0020】
<3>スライドユニット(
図3)。
スライドユニット20は、複数の吊架ユニット10のスライド空間S内に保持されて、保護ユニット30をスライド移動させる部材である。
本例では、ベルトコンベアAの左右の支持レールBに沿って、スライドユニット20をそれぞれ1本ずつ計2本設ける。
スライドユニット20は、長尺状のスライドレール21と、スライドレール21の下方に接続する複数の連結具22と、を備えるレール部材を採用する。
本例では、スライドレール21に角形鋼管を採用する。
連結具22は、スライドレール21の正面視を菱形形状とした向きにおける下方から、スライドレール21の長手方向における一定の間隔ごとに突設する。
連結具22は、正面視逆T字形状の部材と、T字の上辺に対応する平板部材とからなり、両者によって、後述する保護ユニット30の保護面材31を上下から挟み込んでボルト締結可能に構成する。
なお、スライドユニット20の構成はこれに限られず、他の各種の構成を採用しうる。例えば、スライドレール21は断面円形や三角形でもよい。また、FRP(繊維強化プラスチック)製などであってもよい。
【0021】
<3.1>スライド構造(
図3)。
本発明の落石防護装置1は、スライドユニット20を吊架ユニット10によってスライド可能に保持することで、ベルトコンベアAの長手方向に沿って移動可能なスライド構造に特徴を有する。
本例では、2つのローラ14によって、吊架ユニット10のスライド空間Sの下部を、スライドレール21の下部形状に対応する形状に構成する。
具体的には、2つのローラ14の回転軸が下方に交角θを形成するように、ローラ14を向かい合わせて設置する。本例では、交角θは90度である(
図2)。
本例では、2つのローラ14の側面が、スライドレール21下側の隣り合う2側面に、それぞれ面で接するため、荷重を有効に分散支持させることができる。
また、支持フレームBは、坑壁から吊下げられているため、ベルトコンベアAの荷重や振動などによって、若干撓んでいたり変形していることがある。
これに対し、本例では、上ブラケット11と下ブラケット13とを固定的に接続するのではなく、吊架具12によって、若干の揺動を許容しつつ接続するため、支持レールBに歪みがあっても、歪みによる変位を吸収することができる。
以上の構造により、本発明の落石防護装置1は、ベルトコンベアAに沿って滑らかにスライド移動することができる。
【0022】
<4>保護ユニット。
保護ユニット30は、ベルトコンベアAからこぼれたズリが下方へ落下するのを防ぐ部材である。
保護ユニット30の幅は、ベルトコンベアAの幅より広い。すなわち、保護ユニット30は、平面視においてベルトコンベアAの幅方向の両側より外側に張り出す。
本例では、保護ユニット30は、保護面材31と、保護面材31の縁部に形成した、ズリこぼれ出し防止用の側壁32を備える。
保護面材31として、「プラダン」などの商標で知られる樹脂製ダンボール板を採用する。樹脂製ダンボール板は、折れ曲がりを防止するため、筋目方向が保護ユニット30の幅方向、すなわちベルトコンベアAの延伸方向と実質的に直交する向きに配置する。
保護面材31は一枚ものでも、複数枚を接続して用いてもよい。
なお、側壁32は必須の構成要素ではない。また、側壁32は保護面材31の両側端に設けるほか、前後端に設けてもよい。あるいは、トンネル中央側の一端のみに設けてもよい。
【0023】
<4.1>保護ユニットの機能。
従来は、落下したズリの荷重によって変形したネットの中から、手作業でズリを取り除いていたため作業効率が悪く、ズリがネットに絡まりやすかった。
これに対し、本例では保護ユニット30に面材を採用するため、ズリの回収が容易である。例えば、保護面材31上のズリをトンボで掃き寄せることで、容易かつ綺麗に回収することができる。
また、面状体であるため、小さなズリも漏れなく回収することができる。
【0024】
<5>落石防護装置の使用方法(
図4)。
本発明の落石防護装置は、以下の手順で使用する。
ベルトコンベアAを支持する支持フレームBの2本の下部レールに、所定の間隔で複数の吊架ユニット10を付設する。
具体的には、支持フレームBの上部に上ブラケット11を外嵌し、上ブラケット11下部の挿通孔に吊架具12を挿通することで、下ブラケット13を連結する。
続いて、複数の吊架ユニット10のスライド空間S内に、スライドユニット20のスライドレール21を連通する。
本発明の落石防護装置1は、例えばトンネルインバート部の一工区の施工が終わり、施工箇所が移動する際に、ベルトコンベアAに沿って牽引または押出しすることで容易に移動させることができる。このため高所作業車による作業などが必要ない。
なお、本発明の落石防護装置1は、トンネルインバート部の防護に限らず、ベルトコンベアAの延伸する範囲にわたって適宜の用途に使用することができる。