特許第6749235号(P6749235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6749235GLP−1Rに特異的に結合する抗体およびそのGLP−1との融合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749235
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】GLP−1Rに特異的に結合する抗体およびそのGLP−1との融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20200907BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20200907BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20200907BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20200907BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20200907BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200907BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20200907BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200907BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200907BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20200907BHJP
【FI】
   C12N15/13ZNA
   C07K16/28
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 N
   A61K39/395 D
   A61K48/00
   A61K31/7088
   A61P3/10
   A61P43/00 105
   !C12P21/08
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-533798(P2016-533798)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-532448(P2016-532448A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】CN2014083568
(87)【国際公開番号】WO2015021871
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】201310350640.0
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516029492
【氏名又は名称】ジーエムエーエックス バイオファーム エルエルシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】チェング ズハング
(72)【発明者】
【氏名】シュクイアン ジング
(72)【発明者】
【氏名】フア ズハング
(72)【発明者】
【氏名】クイアオフェング ワング
(72)【発明者】
【氏名】チェンジアング ヤオ
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−509182(JP,A)
【文献】 特表2008−537873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0058116(US,A1)
【文献】 特表2008−521869(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/154999(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/035577(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/137676(WO,A1)
【文献】 Biochem Pharmacol (2018), Vol.150, p.46-53
【文献】 Diabetes (2008), Vol.57, p.1926-1934
【文献】 Diabetes (2004), Vol.53, p.2492-2500
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号37の軽鎖CDR1アミノ酸配列;
配列番号45の軽鎖CDR2アミノ酸配列;
配列番号53の軽鎖CDR3アミノ酸配列;
配列番号12の重鎖CDR1アミノ酸配列;
配列番号19の重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
配列番号27の重鎖CDR3アミノ酸配列
を含む、GLP−1Rと特異的に結合する抗体。
【請求項2】
配列番号101の軽鎖可変領域配列;及び配列番号75の重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
配列番号100のポリヌクレオチド配列でコードされた軽鎖可変領域配列;及び配列番号74のポリヌクレオチド配列でコードされた重鎖可変領域配列を含む、請求項記載の抗体。
【請求項4】
配列番号105の軽鎖可変領域配列;及び配列番号79の重鎖可変領域配列を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
配列番号104のポリヌクレオチド配列でコードされた軽鎖可変領域配列;及び配列番号78のポリヌクレオチド配列でコードされた重鎖可変領域配列を含む、請求項記載の抗体。
【請求項6】
a.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
b.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
c.配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
d.配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、
e.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
f.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
g.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、並びに
h.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
マウス又はヒト化抗体である、請求項1〜のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号127から選択されるアミノ酸配列を含むGLP−1と、請求項1〜のいずれか一項記載の抗体とを含む、GLP−1融合タンパク質。
【請求項9】
前記GLP−1が、前記抗体の軽鎖および/または重鎖と、N’−R1−L−R2−C’、N’−R2−L−R1−C’またはN’−R2−L−R1−C’
(式中、Lは、配列番号110、配列番号111、及び配列番号112から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドリンカーであり、
R1は、GLP−1のアミノ酸配列であり、
R1は、GLP−1の逆方向アミノ酸配列であり、
R2は、該抗体の軽鎖または重鎖のアミノ酸配列であり、
C’は、該GLP−1融合タンパク質のカルボキシ残基末端を表し、かつ
N’は、該GLP−1融合タンパク質のアミノ残基末端を表す)
の形態で融合されている、請求項記載のGLP−1融合タンパク質。
【請求項10】
請求項記載のGLP−1融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項12】
請求項11記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか一項記載の抗体、又は請求項又は記載のGLP−1融合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項14】
インスリン非依存型糖尿病の予防または治療における使用のための、請求項又は記載のGLP−1融合タンパク質、又は請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
肥満の予防または治療における使用のための、請求項又は記載のGLP−1融合タンパク質、又は請求項13記載の医薬組成物。
【請求項16】
過体重の予防または治療における使用のための、請求項又は記載のGLP−1融合タンパク質、又は請求項13記載の医薬組成物。
【請求項17】
GLP−1R刺激に応答する疾患の予防または治療における使用のための、請求項又は記載のGLP−1融合タンパク質、又は請求項13記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の技術分野に関し、特に、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体およびそのGLP−1との融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病の典型的な症状は次の3つの側面を含む1)末梢のインスリン抵抗性、主にインスリンに対する骨格および筋肉の感受性が低下し、これらの組織へのグルコースの輸送が影響を受ける(非特許文献1、非特許文献2)、2)過度の肝臓グルコース産生、インスリンの反応性に対する肝細胞の調節の低下(非特許文献1、非特許文献3)およびグルカゴンの過度の分泌(非特許文献4)、3)ランゲルハンス島β細胞失調、疾患の初期に、β細胞の増殖およびインスリン分泌量の増加により、血糖に対するインスリン抵抗性の影響が代償的に補われる(非特許文献5)が、時間の経過およびインスリン抵抗性の程度の増加に伴い、β細胞が疲弊し、それに伴いインスリン分泌が低下し、2型糖尿病に至る(非特許文献6、非特許文献7)。
【0003】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、30個のアミノ酸を含むペプチドである。GLP−1は、グルコースの取り込みに反応して、腸内のL細胞から分泌される(非特許文献8、非特許文献9)。刺による分泌の後、GLP−1が膵臓のGLP−1R(グルカゴン様ペプチド−1受容体)と結合し、下流のアデニル酸シクラーゼシグナル伝達経路を活性化し、インスリンの合成および分泌を促進する。GLP−1の分泌は、さらに胃排出を減少させ、これにより食物の消化後に循環系に入るグルコースの量を減少させる(非特許文献10)。マウスならびに1型および2型糖尿病患者において、GLP−1は、インスリンの分泌を増加させ、血糖値を低下させた(非特許文献11、非特許文献12)。ある研究では、GLP−1は、さらに膵β細胞のアポトーシスを抑制し、その増殖を促進することが示されている(非特許文献13、非特許文献14)。臨床では、GLP−1による糖尿病患者の治療の実現可能性および効果がすでに実証されており(非特許文献15)、GLP−1およびその誘導体を使用して糖尿病を治療する方法を記載した特許もすでにある(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、GLP−1のインビボでの半減期は短く、治療効果は良好でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,899,883号明細書
【特許文献2】米国特許第6,989,148号明細書
【特許文献3】国際公開第00/16797号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/08531号パンフレット
【特許文献5】国際公開第98/19698号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,006,753号明細書
【特許文献7】国際公開第99/64060号パンフレット
【特許文献8】国際公開第00/07617号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kahn and Goldfine,J Diabetes Complication(1993)7:92−105
【非特許文献2】Weyerら、J Clin Invest.(1999)104:787−794
【非特許文献3】Lamら、Am J Physiol Endocrinol Metab.(2009)11:375−378
【非特許文献4】Unger and Orci,Arch Intern Med.(1977)137:482−491
【非特許文献5】Bonner−Weir,Trends Endocrinol Metab.(2000)11:375−378
【非特許文献6】DeFronzo,Diabetes.(1988)37:667−687
【非特許文献7】Kahnら、J Nutr.(2001)131:354S−360S
【非特許文献8】Orskovら、Diabetes (1994)43:535−539
【非特許文献9】Druckerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:3431−3438
【非特許文献10】Wettergrenら、Dig.Dis.Sci.(1993)38:665−673
【非特許文献11】Nauckら、Diabetes.(1997)105:187−195
【非特許文献12】Toddら、Eur J Clin Invest.(1997)27:533−536
【非特許文献13】Perfettiら、Endocrinology(2000)141:4600−4605
【非特許文献14】Huiら、Endocrinology(2003)144:1444−1455
【非特許文献15】Samson and Garber,Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes.(2013)20:87−97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体を提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、GLP−1のインビボでの半減期を延長させ、GLP−1の生物学的活性を保つことが可能な、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体がGLP−1と形成する融合タンパク質を提供することである。また、GLP−1およびGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体により形成される融合タンパク質は、抗体により提供される分子標的性を有する。さらに抗体の免疫原性も他の融合パートナータンパク質より低い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明では以下の技術的解決策を提供する。
以下のa、b及びcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.配列番号46〜配列番号53、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR3配列、好ましくは、配列番号46〜配列番号53、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR3配列、より好ましくは、配列番号46〜配列番号53、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR3配列、
b.配列番号20〜配列番号27、またはこの配列との差が合計で4個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR3配列、好ましくは、配列番号20〜配列番号27、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR3配列、より好ましくは、配列番号20〜配列番号27、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR3配列、さらに好ましくは、配列番号20〜配列番号27、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR3配列、
及び
c.(a)の軽鎖CDR3配列および(b)の重鎖CDR3配列。
【0009】
好ましくは、前記抗体は、以下のa、b、cおよびdのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体である:
a.配列番号28〜配列番号37、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR1配列、好ましくは、配列番号28〜配列番号37、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR1配列、より好ましくは、配列番号28〜配列番号37、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR1配列、
b.配列番号38〜配列番号45、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR2配列、好ましくは、配列番号38〜配列番号45、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR2配列、
c.配列番号6〜配列番号12、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR1配列、好ましくは、配列番号6〜配列番号12、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR1配列、
d.配列番号13〜配列番号19、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR2配列、好ましくは、配列番号13〜配列番号19、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR2配列、より好ましくは、配列番号13〜配列番号19、またはこの配列との差が合計で1個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR2配列。
【0010】
以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.以下のi、iiおよびiiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、軽鎖可変領域:
i.配列番号28〜配列番号37のうちの1つの軽鎖CDR1配列;
ii.配列番号38〜配列番号45のうちの1つの軽鎖CDR2配列;
iii.配列番号46〜配列番号53のうちの1つの軽鎖CDR3配列;
b.以下のi、iiおよびiiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、重鎖可変領域:
i.配列番号6〜配列番号12のうちの1つの重鎖CDR1配列;
ii.配列番号13〜配列番号19のうちの1つの重鎖CDR2配列;
iii.配列番号20〜配列番号27のうちの1つの重鎖CDR3配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
【0011】
以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.以下のiおよびiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、軽鎖可変領域:
i.配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105のいずれかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
ii.配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104のいずれかと少なくとも80%同一性を有するポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
b.以下のiおよびiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、重鎖可変領域:
i.配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79のいずれかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
ii.配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78のいずれかと少なくとも80%同一性を有するポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
【0012】
好ましくは、前記抗体は、さらに以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体である:
a.配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105のいずれかを含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
b.配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79のいずれかを含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
【0013】
好ましくは、前記(c)における(a)の軽鎖可変領域配列と(b)の重鎖可変領域配列の組み合わせが、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13のいずれかから選択される。
【0014】
好ましくは、前記抗体は、
a.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
b.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
c.配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
d.配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、
e.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
f.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
g.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、
h.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列
のいずれか1つをさらに含むことを特徴とする、前記抗体である。
【0015】
好ましくは、前記抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体フラグメント、1本鎖抗体、2本鎖抗体、3本鎖抗体、4本鎖抗体、Fabフラグメント、F(fa’)xフラグメント、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体から選択される。
【0016】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号127のうちの1つのアミノ酸配列を含むGLP−1と、本発明の抗体とを含む、GLP−1融合タンパク質。
【0017】
好ましくは、GLP−1が、N’−R1−L−R2−C’、N’−R2−L−R1−C’またはN’−R2−L−R1−C’
(式中、Lは、LK1〜LK3のアミノ酸配列:配列番号110、配列番号111、配列番号112から選択されるいずれかの、全長の、部分的なまたは反復したアミノ酸配列を含むペプチドリンカー配列であり、
R1は、GLP−1のアミノ酸配列であり、
R1は、GLP−1の逆方向アミノ酸配列であり、
R2は、本発明の抗体の軽鎖または重鎖のアミノ酸配列であり、
C’は、GLP−1融合タンパク質ポリペプチド鎖のヒドロキシル残基末端を表し、
N’は、GLP−1融合タンパク質ポリペプチド鎖のアミノ残基末端を表す)
の結合方式により本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖と融合される。
【0018】
本発明のGLP−1融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0019】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0020】
本発明のベクターを含む宿主細胞。
【0021】
医薬的に許容される担体と混合された本発明のGLP−1融合タンパク質を含むことを特徴とする医薬組成物。
【0022】
インスリン非依存型糖尿病の予防または治療に用いる医薬品を製造する、本発明の抗体またはGLP−1融合タンパク質を含むか、またはそれに基づく医薬組成物の使用
【0023】
グルカゴン様ペプチド−1を用いて2型糖尿患者の血糖値を調節および制御する方法においてGLP−1Rが果たす重要な作用、およびGLP−1Rの治療の著しい特徴が、インスリン分泌を刺激するが低血糖に関連する危険を伴わないという能力であることを考慮する。本発明は、GLP−1をGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体と融合し、GLP−1のインビボでの半減期を延長させ、GLP−1の分子生物学的活性を保つ。また、GLP−1およびGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体により形成される融合タンパク質は、抗体により提供される分子標的性を有し、かつ抗体の免疫原性も他の融合パートナータンパク質より低い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有益な効果は、次の通りであるGLP−1をGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体と融合し、GLP−1のインビボでの半減期を延長させ、GLP−1の分子生物学的活性を保つ。また、GLP−1およびGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体により形成される融合タンパク質は、抗体により提供される分子標的性を有し、かつ抗体の免疫原性も他の融合パートナータンパク質より低い。
【0025】
発明の詳細
本発明は、GLP−1がインビボにおいてジペプチジルペプチダーゼ(DPP−IV)によって迅速に除去されるが有効性が不十分である欠点について、GLP−1Rの抗体を用いてそれと融合させることにより、その半減期および生物学的活性を増強する。融合に用いられる抗体は、GLP−1と受容体の結合を阻害しない前提の下で、GLP−1Rの生物学的活性を特異的に認識し、の受容体との高親和力および安定性により、受容体周囲におけるGLP−1の局所的な濃度を持効的に増加させ、受容体と結合する作用時間および効力を大幅に増加させることができる。また、抗体との融合により、GLP−1がDPP−IVによって認識または捕獲される立体障害を増加させ、インビボの除去率を減少させ、GLP−1の作用時間を増加させる。文献の報告によれば、GLP−1RのN末端細胞外領域およびその膜貫通領域の部分的咬合状態の解放は、GLP−1がGLP−1Rとの結合箇所に入り、その生物活性を行使する重要なステップである。本発明に記載の抗体とGLP−1Rの結合は、受容体のN末端細胞外領域にかなり関連し、その受容体との結合は、前記咬合状態の解放に役立ち、GLP−1の進入に有利である。そのため、GLP−1は、GLP−1Rに対する抗体と融合した後に、の半減期および親和力価を増加させ、さらに強い生物学的活性を有するようになり、GLP−1療法よりもさらに優れた重要な刷新である。さらに重要なことは、本発明で用いる部分抗体自体が、GLP−1が存在する状況の下で、GLP−1によるGLP−1活性化を増強する生物学的特性を有することである。以上のいくつかの理由により、本発明に記載のGLP−1融合タンパク質は、GLP−1よりも有効なGLP−1R活性化薬である。
【0026】
融合タンパク質の長期間の繰り返し投与により抗原性が誘発され得ることは、一般的な懸念である。GLP-1融合タンパク質療法の場合、患者が糖尿病であると診断されると、患者はこの疾患の治療を一生受けることとなるため、これは特に懸念となる。また、免疫グロブリンのFc部分に、不要なエフェクター機能が残され、Fc融合タンパク質療法が懸念となる可能性がある。コンピュータ支援による免疫グロブリンの三次元構造の予測ならびに抗体の配列の最適化およびヒト化によって、同定された特定のGLP-1融合タンパク質はエフェクター機能を有さず、従って繰り返しおよび長期的に投与した後にも免疫反応を誘導するリスクが低下する。本発明において考察されるGLP-1部分のアミノ酸は、好ましくは、グリシンおよびセリンを豊富に含むペプチドリンカーにより抗体の軽鎖および重鎖と融合される。比較的小さい側鎖を有するため、グリシンおよびセリンはペプチドリンカーの配列に相当な柔軟性を与え、GLP-1と抗体の対応する位置の間の剛性を減少させ、従ってGLP-1は自由にGLP-1Rと相互作用できるようにする。また、ペプチドリンカーの存在は、GLP-1と抗体を隔離し、そのために2つのドメインの相互作用を回避する。不要な免疫原性が融合タンパク質に導入されないようにするために、グリシンおよびセリンが交互に現れて過度の繰り返しを回避する。しかしながら、ペプチドリンカーは、融合タンパク質のインビボでの免疫原性を不可避に増加させ、ペプチドリンカーの長さを構造の柔軟性および免疫原性のバランスをとるように選択することは、非常に重要である。従って、本発明は、融合のための長さが異なる3つのペプチドリンカーを提供する。同時に、本発明では融合のためにペプチドリンカーを使用することにより、GLP-1を抗体と連結する異なる方法を提供する。形成されるGLP−1融合タンパク質の形式は、次のものを含む。
)N’−R1−L−R2−C’の方式で結されたGLP−1および軽鎖を有する融合タンパク質、
)N’−R2−L−R1−C’の方式で結されたGLP−1および軽鎖を有する融合タンパク質、
)N’−R2−L−R1−C’の方式で結されたGLP−1および軽鎖を有する融合タンパク質、
)N’−R1−L−R2−C’の方式で結されたGLP−1および重鎖を有する融合タンパク質、
5)1)および4)を同時に有する融合タンパク質、
6)2)および4)を同時に有する融合タンパク質、
7)3)および4)を同時に有する融合タンパク質。
【0027】
本発明において、GLP−1をコードするDNAと前記抗体の全長/可変領域/フラグメント軽鎖または全長/可変領域/全長重鎖DNAは、ペプチドリンカー配列をコードするDNAにより、融合軽鎖または融合重鎖DNAを形成するとともに、軽鎖DNAの5’末端は、さらにシグナルペプチドをコードするDNAを導入して遺伝子を形成し、この遺伝子を基礎に変異/野生型のGLP−1および抗体配列を結合することができる。本発明は、遺伝子合成の方法によりGLP−1の配列を得て、PCRの方法によりペプチドリンカーおよび抗体軽鎖または重鎖DNAと結合させる。GLP−1Rの抗体軽鎖または重鎖可変領域配列、特定のハイブリドーマ細胞からPCRの方法によって取得し、続いて特定の抗体亜型の定常領域DNAと結合させる。野生型抗体亜型の定常領域DNAは、特定のライブラリーからクローニングして得られ、配列最適化の基礎として使用することができる。ここでいう融合タンパク質の発現に用いる遺伝子は、クローニングの方式によって発現ベクターに入れられ、融合タンパク質の生成および発現に用いられる。発現プロセスにおいて、軽鎖および重鎖の発現ベクターを合わせた後、その遺伝子を有するDNAを宿主細胞にコトランスフェクションまたは形質転換する。プロモーターを最適化適応によって誘導する。形質転換体または所望の配列を増幅するための遺伝子を適切な培地、適切なpH、温度において培養する。DNAは通常、一般に用いられるCaPO、エレクトロポレーションおよびPEIなどの方法で導入する。
【0028】
ここでいうベクターにおける核酸の発現に適した適切な宿主細胞には、高等真核細胞などがあり、発現用の哺乳動物宿主細胞の実例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)およびヒト胎児腎臓細胞(懸濁培養したHEK293またはHEK293細胞株)があり、軽鎖N末端に位置するシグナルペプチドが、哺乳動物宿主細胞からの組換え融合タンパク質の分泌を指示する。発現およびクローニングに用いるベクター上に、融合タンパク質をコードする核酸を統合する能力を有する細胞を選別するために用いる、ベクターを宿主細胞において常に複製させることが可能な選択マーカーを有し、かつ融合タンパク質コード配列と有効に結合し、mRNA合成を指示するプロモーターを有する。そのうちの1つの実例は、抗生物質抵抗性ならびにB型肝炎ウイルスおよびサルウイルスプロモーター(SV40)を有するベクターを用い、融合タンパク質を安定して発現するCHO宿主細胞を選択することである
【0029】
本発明は、宿主細胞系が融合タンパク質を発現した後、アフィニティークロマトグラフィーの方法を用いて、細胞培養上澄に分泌した部分を精製する。本発明における実例は、プロテインGのアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて、全長抗体融合した融合タンパク質を捕し、次いで低pHでクロマトグラフィーカラムから溶出した後、収集する。穏やかな溶出条件は、タンパク質の変性の防止に役立つ。
【0030】
1種または2種以上の賦形剤を用いて、本発明の融合タンパク質を調製してもよい。本発明の融合タンパク質は、許容可能な安定性を提供、および投与(例えば非経口投与)に好適なpHに調節された医薬用の緩衝液と組み合わせてもよい。任意選択的に、1種または2種以上の医薬用の抗微生物剤を付加してもよい。m−クレゾールおよびフェノールが、好ましい医薬用抗微生物剤である。1種または2種以上の医薬用塩溶液を付加し、イオン強度または張力を調節してもよい。1種または2種以上の賦形剤を付加し、製剤の等張性をさらに調節してもよい。グリセリンは、等張性調節賦形剤の実例である。医薬用とは、ヒトまたはその他動物への投与に適しているため、毒性成分または望ましくない汚染物を含有せず、かつ活性化合物の活性に干渉しないことを意味する。
【0031】
溶液製剤または適切な希釈剤を用いて再構成可能な凍結乾燥粉末で本発明の融合タンパク質を調製してもよい。凍結乾燥剤形は、融合タンパク質安定製剤タイプの1つであり、再構成製品の予期される使用貯蔵期間内にpHを保つ緩衝能力を有するか、または有さない。ここで考察される融合タンパク質を含む溶液は、凍結乾燥前に、好ましくは等張であり、これを再構成させた後に、等張溶液を形成することができる。
【0032】
本発明の融合タンパク質の医薬用塩の形式は、本発明の範囲内にある。酸付加塩の形成に常用される酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、および、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、pブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。好ましい酸付加塩は、例えば塩酸および臭化水素酸などの無機酸で形成された塩である。
【0033】
塩基付加塩は、例えばアンモニウム、塩基またはアルカリ土類金属水酸化物などの無機塩基由来の塩、炭酸塩、炭酸水素塩などを含む。本発明の塩溶液の調製に有用なこれらの塩基は、そのため、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどを含む。
【0034】
本発明の融合タンパク質は、生物学的活性を有する。生物学的活性とは、この融合タンパク質がインビボで結合し、GLP−1Rを活性化てストレス応答を刺激する能力をいう。応答は、インスリンの分泌の上昇、グルカゴン分泌の抑制、食欲の抑制、体重の減少、満腹の誘導、アポトーシスの抑制、膵β細胞増殖および膵β細胞分化の誘導を含むが、これらに限定されない。代表的なGLP−1融合タンパク質について、インビトロおよびインビボ活性を測定した。先ず、ステップ4(図1)は、この融合タンパク質とGLP−1Rの相互作用の蛍光検出データを提供する。次いで、ステップ5は、この融合タンパク質とヒトGLP−1Rの相互作用後に、活性化させたインビトロ活性の試験を提供する。実験において、ヒトGLP−1Rを過剰発現するCHO細胞を用いた。これらの細胞において、GLP−1Rの活性化によってアデニル酸シクラーゼの活性化が引き起こされ、この酵素の活性化は、またcAMP応答エレメント(CRE)によって駆動されるレポーター遺伝子の発現を誘導する。ステップ12(図2)は、レポーター遺伝子がルシフェラーゼであるデータを提供する。インビトロの実験データは、融合タンパク質がGLP−1Rを結合し活性化することができ、インビトロの結果は天然のGLP−1−Gly8(7−37)OHよりも有効であることを共同で表している。ステップ13(図3)は、本発明の融合タンパク質のいずれかを腹腔内投与した16時間後のマウスの血糖値の変化データを提供する。ステップ13のマウスにおいて生成されたインビボデータは、この融合タンパク質が活性を有し、かつ天然のGLP−1よりも長い半減期を有することを示した。
【0035】
通常の技能を有する内科医が有効であることをすでに知っている任意の経路でこれらの融合タンパク質を投与することができる。末梢非経口投与は、こうした方法に属す。医学文献において、通常、非経口投与は、無菌注射器または例えばシリンジポンプなどのその他の機械装置によって体に剤形を注射することと理解されている。末梢非経口経路は、経静脈、筋肉内、皮下および腹腔内の投与経路を含んでもよい。
【0036】
本発明の融合タンパク質は、経口、直腸、経鼻または下気道の経路で投与してもよく、これらは非経口以外の経路である。これらの非経口以外の経路のうち、下気道経路および経口経路が好ましい。
【0037】
本発明の融合タンパク質は、様々な疾患および疾病の治療に用いることができる。本発明の融合タンパク質は、主に、GLP−1Rに作用することによりその生物学的作用を発揮する。そのため、本発明のGLP−1融合タンパク質を用いて、GLP−1R刺激に対して、またはGLP−1化合物の投与に対して応答のある疾患および/または疾病の被験者を治療することができる。これらの被験者を、「GLP−1化合物治療が必要」または「GLP−1R刺激が必要」な被験者という。インスリン非依存型糖尿病、インスリン依存型糖尿病、脳卒中(特許文献3を参照)、心筋梗塞(特許文献4を参照)、肥満(特許文献5を参照)、手術後異化変化(特許文献6を参照)、機能性胃腸症および過敏性腸症候群(特許文献7を参照)を有する被験者を含む。例えば、インスリン非依存型糖尿病に発展する危険のある被験者(特許文献8を参照)など、GLP−1化合物での予防的治療が要求される被験者も含む。耐糖能異常または空腹時血糖異常の被験者、体重が被験者の身長および体液に対して正常体重を約25%超える被験者、膵臓の一部を切除した被験者、両親のいずれかまたは両方がインスリン非依存型糖尿病である被験者、妊娠糖尿病になったことのある被験者および急性または慢性膵炎になったことのある被験者は、いずれもインスリン非依存型糖尿病に発展するリスクがある。本特許に記載される融合タンパクの有効量は、GLP−1受容体刺激が必要な被験者に投与するときの、所望の治療および/または予防効果が得られ、許容できない副作用がない用量である。「所望の治療効果」は、次の1つまたは2つ以上を含む疾患または疾病に関連する症状の改善、疾患または疾病に関連する症状の発の遅延、治療していない場合に比べた寿命の延長、治療していない場合に比べたクオリティー・オブ・ライフの向上。糖尿病を治療するGLP−1融合タンパク質の「有効量」は、治療していない場合に比べ、血糖値をよりよく制御することができ、これにより糖尿病の合併症(例えば、網膜症、神経障害または腎症)の発作の遅延をもたらす量である。糖尿病を予防するGLP−1融合タンパク質の「有効量」は、治療していない場合に比べ、血糖値上昇の発を遅延させる量であり、前記発は、例えばスルホニルウレア系、チアゾリジンジオン、インスリンおよび/またはビグアニド系などの血糖降下薬治療を必要とする。患者の血糖値を有効に正常化する融合タンパク質の用量は、多くの要素によって決まり、被験者の性別、体重および年齢、血糖調節異常の重篤性、投与経路および生物学的利用能を含むが、これらに限定されない。融合タンパク質の薬物動態プロファイル、力および剤形。用量は、0.01〜1mg/kg体重の範囲とすることができ、好ましくは、0.05〜0.5 mg/kg体重の範囲である。好ましくは、週1回または2回、本発明の融合タンパク質を投与する。治療する疾患によって決まり、この融合タンパク質を、例えば週3回以上など、より頻繁に投与する必要がある可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
(図面の簡単な説明)
図1組換え発現させたGLP-1融合タンパク質(GLP-1(A8G)-LK-L13H13)の、チャイニーズハムスター卵巣細胞株において安定発現されたヒトGLP-1R(hGLP-1R)との特異的結合(*と示された実線ピーク)を、チャイニーズハムスター卵巣細胞株自体(点線ピーク)と対比して示すフローサイトメトリー(FACS)である。
図2レポーター遺伝子アッセイによる、チャイニーズハムスター卵巣細胞株で安定発現されたhGLP-1Rを活性化するGLP-1野生型(円形)およびGLP-1(A8G)-LK-L13H13(三角形)の用量反応曲線を示す。
図3】マウス(ICR)耐糖能試験の結果であり、GLP−1(A8G)−LK−L13H13を5μg/匹(四角形)および15μg/匹(三角形)、単回腹腔内(i.p.)注射した16時間後の、絶食状態のマウスの耐糖能を示す
図4】マウス(C57BL)耐糖能試験の結果であり、GLP−1(A8G)−LK−L13H13を15μg/匹(三角形)、単回腹腔内(i.p)注射した40時間後の、絶食状態のマウスの耐糖能を示す
図5】2型糖尿病マウス(db/dbマウス)血糖値時間曲線であり、GLP−1(A8G)−LK−L13H13を10nmol/kgの濃度で(逆三角形)、2型糖尿病マウスに単回腹腔内(i.p.)注射した後の、マウス血糖値変化を反映する
図6】2型糖尿病マウス(db/dbマウス)日摂食量時間曲線であり、GLP−1(A8G)−LK−L13H13を10nmol/kgの濃度で(逆三角形)、腹腔内(i.p.)注射し、融合タンパク質の注射の3日前から注射後5日目までの期間内の2型糖尿病マウスのマウス日摂食量の変化を反映する図6および図5は、並行して行った2つの実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の具体的な実施態様)
次に、具体的な実施例によって、図面と合わせ、本発明の技術手法についてさらに具体的に説明する。
【0040】
本発明において、特に指定がない場合、用いられる原料および設備などは、いずれも市販されているものであるか、または当該技術分野で常用されているものである。下記の実施例における方法は、特別な説明がない場合、いずれも当該技術分野の通常の方法である。
【実施例】
【0041】
ステップ1:免疫用抗原細胞安定株の作製
CHO−DHFR(−)細胞を6ウェルプレートにし、24時間培養した後、hGLP−1R遺伝子(ヌクレオチド配列は配列番号113を参照、アミノ酸配列は配列番号114を参照)を含むpYSプラスミドをトランスフェクションする。トランスフェクションの前に培養液を交換し、Invitrogen社が推奨するLipofectamine 2000(Invitrogen)のトランスフェクション条件に基づきトランスフェクションを行トランスフェクションの48時間後に、培養培地を10nMのMTXを含有する完全培地に交換する。約2週間にわたり3日ごとに液を換えると、安定成長したクローンが現れ分散した細胞コロニーをプレートから剥離し、収集する。細胞が約50%のコンフルエンスに成長するまで待ち、漸増濃度のMTXMTXの濃度が10μMになるまで)を圧選択のために加える。作製した安定細胞株について、それぞれFACS検出を行い、抗hGLP−1Rの抗体(Abcam)を用いて圧選択後の細胞クローンを同定する。10μMのMTXによる選別後の選択されたCHO−DHFR−hGLP−1R細胞膜上でhGLP−1Rが大量に発現する。最後に、サブクローニングを経て、hGLP−1R高発現細胞安定株6株を同定する
【0042】
ステップ2:抗体の調製
フロイントアジュバント中で乳化したCHO−DHFR−hGLP−1R全細胞を、2×10個の細胞/匹の用量で、BALB/cマウス(6〜8週齢)に皮下注射する。2週間後に、不完全フロイントアジュバント乳化免疫原を用いて、マウスの免疫を増強し、この後、週1回増強する。尾の末尾を切断する方式によって採血し、血清を遠心分離して回収し、FACS解析を行って血清力価を測定する。適切な抗体価に達したときに、頸椎脱臼によりマウスを安楽死させ、無菌状態で脾臓細胞を得。成長状態が対数増殖期にあるSP2/0細胞を収集し、2000rpmで3分間遠心分離する。沈殿を無血清培養培地で再懸濁し、再度遠心分離−再懸濁し、計数を行。脾臓細胞およびSP2/0細胞をSP2/0細胞:脾臓細胞≧1:1の比で混合し、「洗浄−遠心分離」を計3回行。最後の1回の遠心分離後の沈殿を分離し(37℃まで予熱した)、PEG−1350 1mL一滴ずつ加え(30秒以内に滴下を完了する)、1分間ピペッティングで混合した後(37℃まで予熱した)、無血清培地(Invitrogen)30mLゆっくりと加え、PEGの融合作用を終了させる。1500rpmで5分間遠心分離し、細胞沈殿を再懸濁し、HAT(ヒポキサンチン、メトトレキサートおよびチミジン;Invitrogen)、20%のFBS(Bioind)を付加したRPMI1640(Invitrogen)を融合培養培地として加える。各ウェルに100μlの体積中の細胞20000個およびフィーダー細胞5000個を96ウェルプレート中に播く。融合したハイブリドーマ細胞およびフィーダー細胞をともに96ウェルプレートの中で培養し、HAT選別を行い、融合していない細胞を除去する。10日後に、培養プレート中のハイブリドーマ細胞上澄を収集し、ELISA検出を行
【0043】
ステップ3:全細胞ELISA選別
CHO−DHFR−hGLP−1RのhGLP−1Rを過剰発現した細胞およびhGLP−1Rを発現していないCHO−DHFR)細胞を別々に96ウェルプレートにし、90%のコンフルエンスまで成長させる。培培地上澄を除去し、接着した細胞をPBSで2回洗い、100%のメタノール100μlを加え、4℃で10分間細胞を固定する。新しく調製した0.6%のH−PBS 100μlをさらに加え、室温で20分間インキュベートし、細胞をPBSで2回洗浄する。PBS−1%のBSA溶液ブロッキングした後、ハイブリドーマ上澄を加え、4℃で90分間インキュベートする。複数回洗浄した後、5000倍に希釈したGxM−HRP−Fc二次抗体(Sigma−Aldrich)100μlを各ウェルに加え、37℃で0.5時間インキュベートする。5回洗浄した後、各ウェルにTMB発色基質100μlを加え、37℃で15分間インキュベートし、2MのHSOを加えて反応を終了し、OD450値を読み取。陽性対照は、免疫マウスの血清とし、陰性対照は細胞培上澄とする。抗hGLP−1R抗体を分泌するハイブリドーマクローンを選し、クローニングを行い、hGLP−1Rに対する分泌を安定化することができる細胞株を得。最後に、ハイブリドーマが分泌した抗体上澄をFACS解析により検証を行
【0044】
ステップ4:陽性ハイブリドーマ細胞上澄フロー分析(FACS)
10mMのEDTAを含むPBSを使用して、CHO−DHFR−hGLP−1R細胞10個を剥離して収集し、1.5mlのEPチューブにとる。遠心分離後に上澄を捨て、陰性対照試料は、フロー式サンプルローディングバッファー(PBS、2%のFBS)で再懸濁する。陽性対照については抗体上澄200μlを加え、細胞を再懸濁して室温でインキュベートし、1500rpmで遠心分離し、上澄を捨て、フロー式サンプルローディングバッファーで1回洗い、さらに遠心分離する。細胞を再懸濁し、各ウェルに、1:50で希釈したFITCマーカーのヒツジ抗マウス蛍光抗体(BD Pharmingen)200μlを加え、室温で光を避けて30分間インキュベートする。遠心分離し、上澄を捨て、さらにフロー式サンプルローディングバッファーで細胞を洗い、再度遠心分離し、最後に解析のためにフロー式サンプルローディングバッファーで再懸濁する。ハイブリドーマ上澄およびCHO−DHFR−hGLP−1R細胞は、特異的結合を有し、灰色のピークと点線のピークは陰性対照であり、ハイブリドーマ上澄が対応する実線ピーク(で記されている)は著しく右に寄ってい図1)。
【0045】
ステップ5:抗体遺伝子のクローニングおよびサブクローニング
抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を収集する。QIAGENのmRNA抽出キットの操作手順書に基づき、ハイブリドーマのmRNAを抽出する。次いで、抽出したmRNAをcDNAに逆転写する。逆転写プライマーは、マウスの軽、重鎖定常領域の特異性プライマーであり、重鎖逆転写プライマーは(5’−TTTGGRGGGAAGATGAAGAC−3’)(配列番号115)であり、軽鎖逆転写プライマーは(5’−TTAACACTCTCCCCTGTTGAA−3’)(配列番号116)および(5’−TTAACACTCATTCCTGTTGAA−3’)(配列番号117)であ。RT−PCRの反応条件は、25℃で5分間、50℃で60分間、70℃で15分間である。逆転写したcDNAを、0.1mMのTEで500μlまで希釈し、限外ろ過遠心管(Amicon Ultra−0.5)の中に加え、2000gで10分間遠心分離する。ろ液を捨て、さらに0.1mMのTE 500μlを加え、2000gで10分間遠心分離する。ろ液を捨て、調製チューブを新しい遠心チューブの中に逆さに置き、2000gで10分間遠心分離し、精製したcDNAを得る。精製したcDNA 10μlをテンプレートとする。×テーリングバッファー(tailing buffer)4μl、dATP(1mM)4μlおよび10Uのターミナルトランスフェラーゼ(Promega)を加えた後、均一に混ぜ、37℃で5分間インキュベートした後、65℃で5分間インキュベートする。ポリAテールを加えたcDNAをテンプレートとし、PCRを行って抗体の軽、重鎖可変領域遺伝子を増幅する。上流プライマーは、いずれもOligodTであり、重鎖下流プライマーは、(5’−TGGACAGGGATCCAGAGTTCC−3’)(配列番号118)および(5’−TGGACAGGGCTCCATAGTTCC−3’)(配列番号119)であり、軽鎖下流プライマーは、(5’−ACTCGTCCTTGGTCAACGTG−3’)(配列番号120)である。PCR反応条件は以下の通りである:95℃で5分間95℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間を40サイクル72℃で7分間。PCR生成物をPMD 18−Tベクターに結合した後、シークエンシングを行。シークエンシングで得られた抗体軽鎖および重鎖可変領域配列は、付録の配列表を参照。
【0046】
すでにシークエンシングして得られた抗体のDNA配列に基づきPCRプライマーを設計し、これにより完全な軽鎖、重鎖シグナルペプチドならびに可変ドメインおよびマウスIgG1定常領域を、発現ベクターpTM5と結合する
【0047】
ステップ6:懸濁HEK293宿主細胞における抗GLP−1R抗体の一過性発現
懸濁HEK293またはCHO発現細胞をスピナーフラスコに接種し、37℃で24時間の回転培養の後、細胞はトランスフェクションの準備が整う。トランスフェクションのプロセスにおいて、ポリエチレンイミン(PEI)をトランスフェクション試薬とし、DNAと混合物を、細胞培養に加え。PEIとDNAの混合の好ましい配合比は、1:1から5:1である。細胞は、PEIとDNAの混合物を受けた後、37℃の回転培養を96時間以上継続する。抗原結合タンパク発現し、その間に、0.5%のトリプトンを、発現に必要なアミノ酸源として細胞培養に加え、最後に細胞上澄を収集し、抗原結合タンパク質の精製分離に用い
【0048】
ステップ7:抗体ヒト化および最適化
先ず、選別されたマウス抗体軽、重鎖可変領域配列を、NCBIのオンライン抗体可変領域配列アラインメントツールIg Blastを用いて相同性を有する抗体と整列させヒト化用に選択した抗体可変領域配列と相同のヒト抗体生殖細胞系遺伝子配列(Ig Germline Gene sequence)を検索し、CDR配列を除き、相同性が最も高いヒト遺伝子配列をテンプレートとして使用してCDRグラフティングを行い、ヒト化抗体可変領域配列を得て、ヒト化抗体軽、重鎖の遺伝子を合する。配列に基づきPCRプライマーを設計し、合成配列の5’末端および3’末端に適切な制限酵素切断部位を導入する。ヒト化抗体可変領域をPCR増幅後に、ヒトIgG2またはIgG4定常領域配列と結合させた後、完全な組換えヒト化抗体配列を得。組換え抗体は、ステップ6に基づき発現を行い、ステップ4におけるFACS解析により、GLP−1Rに対する親和力を検証する。GLP−1Rに対する親和力を残したヒト化抗体候補の群から、親和力の最も優れたものを選び出し、部位特異的変異導入により、可変領域配列をさらに改造し、GLP−1Rに対する親和力をさらに向上させ
【0049】
ステップ8:GLP−1ヒト化融合タンパク質の遺伝子クローニングとサブクローニング
最適化したヒト化抗体を、軽鎖のN末端およびC末端においてGLP−1またはその誘導体配列と融合し、GLP−1融合タンパク質を形成させ、両者の配列は、ペプチドリンカー配列(LK)を架橋として結合する。シグナルペプチド−GLP−1−ペプチドリンカーのヌクレオチド配列は、金斯瑞生物科技有限公司が合成する。合成遺伝子をテンプレートとして使用し、「シグナルペプチド−GLP1−リンカー」部分の配列をPCR増幅する。PCR上流プライマーは(5’−CCACCATGGACTTTGGGCTGAGC−3’)(配列番号121)であり、PCR下流プライマーは(5’−AGAGCCGGTGGCAGAGCCAG−3’)(配列番号122)である。PCR反応条件は、95℃で5分間95℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で30秒間を35サイクル72℃で7分間である。また、ヒト化抗体のヌクレオチド配列をテンプレートとして使用し、融合タンパク質配列の抗体部分の配列を増幅させる
【0050】
PCR上流プライマーは、(5’−CTGGCTCTGCCACCGGCTCTGCCATCCAGATGACCCAGTCTCC−3’)(配列番号123)であり、PCR下流プライマーは、(5’−ACACTCTCCCCTGTTGAAGCTC−3’)(配列番号124)である。PCR反応条件は、95℃で5分間95℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間を35サイクル72℃で7分間である。次いで、オーバーラップPCR(overlapping PCR)によって、融合タンパク質核酸配列の「シグナルペプチド−GLP−1−ペプチドリンカー」部分を抗体部分と結合し、プライマー両端にNhe1およびNot1の2つの制限素部位を導入し、これにより、完全な融合タンパク質配列を発現ベクターpTM5と結合させる。オーバーラップPCRの上流プライマーは、(5’−CCGGCTAGCCACCATGGACTTTGGGCTGAGC−3’)(配列番号125)であり、下流プライマーは、(5’−AGTGCGGCCGCTCAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTC−3’)(配列番号126)であ。PCR反応条件は以下の通りである:95℃で5分間95℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間を35サイクル72℃で7分間。PCR生成物をPTM5ベクターに結合した後、シークエンシングにより確認する
【0051】
ステップ9:懸濁HEK293宿主細胞におけるGLP−1融合タンパク質の一過性発現
HEK293懸濁細胞をスピナーフラスコの中に接種し、トランスフェクションの前に培養培地を換え。融合タンパク質軽/重鎖遺伝子を含むベクターを、DNA総量0.5〜1.5μg/mlの濃度で、1.5〜7.5μg/mlのポリエチレンイミン(PEI)と混合し、15〜25分間静置した後、混合物を細胞培養培地に加え。24時間後に、細胞培養培地に0.5〜1%のトリプトンN1を加え。5〜10日間培養した後に分泌されたGLP−1融合タンパク質を含む上澄を収集する
【0052】
ステップ10:懸濁CHO宿主細胞におけるGLP−1融合タンパク質の安定発現
懸濁CHO細胞を6ウェルプレートに接種し、ステップ1におけるトランスフェクション条件で、融合タンパク質の発現ベクターをトランスフェクションする。48時間後に、300mg/mlのハイグロマイシン(重鎖)および6mg/mlのピューロマイシン(軽鎖)を加え、共同選別を行う。大量のアポトーシスが現れた後(死亡率>90%)、抗生物質濃度を徐々に下げ、余剰細胞を回復させ培養増殖のためにスピナーフラスコに移し、次いで上澄中の抗体の発現を確認する。その後の培地において、半分の抗生物質濃度を保ち、細胞のGLP−1融合タンパク質安定発現させる
【0053】
ステップ11:GLP−1融合タンパク質の細胞培養上澄からの精製および調製
細胞培養を遠心分離してその中の細胞を除去し、その上澄をプロテインG共役アフィニティークロマトグラフィーカラムを通す。およそpH2.5〜3.5の溶出液で、発現したGLP−1融合タンパク質にクロマトグラフィーカラムから溶出する。溶出チューブの中中和緩衝液、溶出液の低pH値を速やかに中和する。溶出後に収集したタンパク質溶液をPBSに対して透析する
【0054】
ステップ12:レポーター遺伝子実験でのGLP−1融合タンパク質のインビトロでのGLP−1活性化機能の検出(図2を参照)
各ウェルに20000個の、共発現hGLP1R−CRE−ルシフェラーゼのCHO−DHFR細胞を96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃で一晩培養する次の日に、培地上澄を除去する。無血清培地で細胞表面を2回洗浄し、残液も同様に除去し、さらに抗体またはGLP−1の希釈および精製のために100μl無血清培地を加え、37℃で4時間インキュベートする。刺激の終了後、PromegaのBright Glo化学発光基質100μlを加える。最後に、細胞解物を白色96ウェルプレートに移し、Molecular DevicesのSpectraMax Lマイクロプレートリーダーで相対発光強度を読み取
【0055】
ステップ13:マウス(ICR)絶食状態での耐糖能試験
マウスの静脈内耐糖能を測定し、本特許に開示されたGLP−1融合タンパク質(好ましくは、抗体GLP−1(A8G)−LK−L13H13))の効果を評価するマウスを4群設け、各群に少なくとも3から5匹のマウスを含める。I群は対照群であり、同体積PBS腹腔内注射を受ける。II群は、15μg/匹の単回腹腔内注射を受け。III群は、5μg/匹の単回腹腔内注射を受け。注射後に、マウスに6〜16時間の絶食処置を行い、絶食の完了後、マウス血液試料を取り、その基礎血糖値を測定する。次いで、マウスに濃度1.5g/kgのグルコース胃ゾンデ経口投与を受けさせる。胃ゾンデ経口投与の後、15分、30分、60分、および90分後にその血液試料を採取し、血糖値を測定する図3を参照)。
【0056】
ステップ14:耐糖能試験によるGLP−1融合タンパク質のマウス(C57BL)体内持効性(40時間)の検出
マウスの静脈内耐糖能を測定し、本特許に開示されたGLP−1融合タンパク質(好ましくは、抗体GLP−1(A8G)−LK−L13H13))の持効性を評価するマウスを2群設け、各群は少なくとも3から5匹のマウスを含。I群は対照群であり、同体積PBS腹腔内注射を受けた。II群は、15μg/匹の単回腹腔内注射を受け。注射の24時間後に、マウスに16時間の絶食処置を行い、絶食の完了後、マウス血液試料を取り、その基礎血糖値を測定する。次いで、マウスに濃度1.5g/kgのグルコース胃ゾンデ経口投与を受けさせた。胃ゾンデ経口投与の後、15分、30分、60分、および90分後にその血液試料を採取し、血糖値を測定する図4を参照)。
【0057】
ステップ15:GLP−1融合タンパク質による2型糖尿病マウス(db/dbマウス)の血糖値低下の持効性研究(72時間)
異なる時点で2型糖尿病マウスの血糖値を測定し、本特許に開示されたGLP−1融合タンパク質(好ましくは、抗体GLP−1(A8G)−LK−L13H13))による2型糖尿病マウス体内でのその血糖値低下の持効性を評価するマウスを2群設け、各群に少なくとも6匹のマウスを含。注射開始前に、マウス血液試料を取り、その基礎血糖値を測定する。その後、I群(対照群)は、同体積PBS腹腔内注射を受けた。II群は10nmol/kg濃度のGLP−1融合タンパク質の単回腹腔内注射を受けた。注射後1、4、6、24、48、72時間後に、それぞれその血液試料を採取し、両群のマウスの血糖値を測定する図5を参照)。
【0058】
ステップ16:GLP−1融合タンパク質による2型糖尿病マウス(db/dbマウス)の日摂食量減少の持効性研究(120時間)
2型糖尿病マウスの摂食量の変化を測定し、本特許に開示されたGLP−1融合タンパク質(好ましくは、抗体GLP−1(A8G)−LK−L13H13))による2型糖尿病マウスの摂食レベル低下の持効性を評価する。このステップおよびステップ15は、同じロットのマウスで同時に行った。マウスを2群設け、各群に少なくとも6匹のマウスを含。ステップ15の注射の3日前から注射の5日(120時間)後まで、毎朝同じ時間に各群のマウスの日摂食量を秤量した(図6を参照)。
【0059】
以上に記載の実施例は、本発明の好ましい方式に過ぎず、本発明に対していかなる形式の限定を行うものでもなく、特許請求の範囲に記載の技術手法を超えない前提の下で、さらに他の変更および修正がある。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.配列番号46〜配列番号53、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR3配列、
b.配列番号20〜配列番号27、またはこの配列との差が合計で4個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR3配列、及び
c.(a)の軽鎖CDR3配列および(b)の重鎖CDR3配列。
(構成2)
以下のa、b、cおよびdのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、構成1記載のGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.配列番号28〜配列番号37、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR1配列、
b.配列番号38〜配列番号45、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるL1〜L13軽鎖CDR2配列、
c.配列番号6〜配列番号12、またはこの配列との差が合計で2個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR1配列、
d.配列番号13〜配列番号19、またはこの配列との差が合計で3個以下のアミノ酸が付加、置換および/または欠失された配列からなるH1〜H13重鎖CDR2配列。
(構成3)
以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.以下のi、iiおよびiiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、軽鎖可変領域:
i.配列番号28〜配列番号37のうちの1つの軽鎖CDR1配列;
ii.配列番号38〜配列番号45のうちの1つの軽鎖CDR2配列;
iii.配列番号46〜配列番号53のうちの1つの軽鎖CDR3配列;
b.以下のi、iiおよびiiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、重鎖可変領域:
i.配列番号6〜配列番号12のうちの1つの重鎖CDR1配列;
ii.配列番号13〜配列番号19のうちの1つの重鎖CDR2配列;
iii.配列番号20〜配列番号27のうちの1つの重鎖CDR3配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
(構成4)
以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、GLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.以下のiおよびiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、軽鎖可変領域:
i.配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105のいずれかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
ii.配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104のいずれかと少なくとも80%同一性を有するポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
b.以下のiおよびiiのうちの少なくとも1つの配列を含む、重鎖可変領域:
i.配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79のいずれかと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
ii.配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78のいずれかと少なくとも80%同一性を有するポリヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
(構成5)
さらに以下のa、bおよびcのうちの1つを含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、構成4記載のGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体:
a.配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105のいずれかを含む、L1〜L13の軽鎖可変領域配列;
b.配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79のいずれかを含む、H1〜H13の重鎖可変領域配列;
c.(a)の軽鎖可変領域配列および(b)の重鎖可変領域配列。
(構成6)
前記(c)における(a)の軽鎖可変領域配列と(b)の重鎖可変領域配列の組み合わせが、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13のいずれかから選択されることを特徴とする、構成5に記載のGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体。
(構成7)
a.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
b.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列、
c.配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
d.配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、
e.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
f.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号108の重鎖定常領域アミノ酸配列、
g.配列番号106の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列、
h.配列番号107の軽鎖定常領域アミノ酸配列および配列番号109の重鎖定常領域アミノ酸配列
のいずれか1つをさらに含むことを特徴とする、構成6に記載のGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体。
(構成8)
マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体フラグメント、1本鎖抗体、2本鎖抗体、3本鎖抗体、4本鎖抗体、Fabフラグメント、F(fa’)xフラグメント、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体から選択されることを特徴とする、構成1または3または4に記載のGLP−1Rと特異的に結合可能な抗体。
(構成9)
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号127のうちの1つのアミノ酸配列を含むGLP−1と、構成1または3または4に記載の抗体とを含むことを特徴とする、GLP−1融合タンパク質。
(構成10)
GLP−1が、N’−R1−L−R2−C’、N’−R2−L−R1−C’またはN’−R2−L−R1−C’
(式中、Lは、LK1〜LK3のアミノ酸配列:配列番号110、配列番号111、配列番号112から選択されるいずれかの、全長の、部分的なまたは反復したアミノ酸配列を含むペプチドリンカー配列であり、
R1は、GLP−1のアミノ酸配列であり、
R1は、GLP−1の逆方向アミノ酸配列であり、
R2は、構成1または3または4に記載の抗体の軽鎖または重鎖のアミノ酸配列であり、
C’は、GLP−1融合タンパク質ポリペプチド鎖のヒドロキシル残基末端を表し、
N’は、GLP−1融合タンパク質ポリペプチド鎖のアミノ残基末端を表す)
の結合方式により構成1または3または4に記載の抗体の軽鎖および/または重鎖と融合されることを特徴とする、構成9に記載のGLP−1融合タンパク質。
(構成11)
構成9に記載のGLP−1融合タンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
(構成12)
構成11に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
(構成13)
構成12に記載のベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
(構成14)
医薬的に許容される担体と混合された構成9に記載のGLP−1融合タンパク質を含むことを特徴とする医薬組成物。
(構成15)
インスリン非依存型糖尿病の予防または治療に用いる医薬品を製造する構成14に記載の医薬組成物の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]