(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る方向規制装置10について、図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、本実施形態の方向規制装置10は、空容器に内容物を充填し密封する充填密封ラインの一部区間に組み込まれ、所定の搬送方向Xに沿って走行する搬送コンベヤ20によって直立して一列状態で搬送される容器80を搬送中に一方向に揃えるものである。本実施形態で方向規制の対象とする容器80は、
図1や
図2に示すように、容器高さ方向の少なくとも一部分に断面矩形状部81を有したボトル状容器である。
【0013】
方向規制装置10は、
図1〜
図4に示すように、容器80の方向を規制する方向規制ベルト30、40と、方向規制ベルト30、40の上流側に配置された上流ガイド60と、方向規制ベルト30、40の下流側に配置された下流ガイド70とを備えている。
【0014】
以下に、方向規制装置10の各構成要素について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0015】
まず、方向規制ベルト30、40は、
図1に示すように、搬送方向Xに向かって搬送コンベヤ20の左側側部に配置された第1方向規制ベルト30と、第1方向規制ベルト30に対して平行または僅かに傾斜して対向するように、搬送方向Xに向かって搬送コンベヤ20の右側側部に配置された第2方向規制ベルト40とを備えている。各方向規制ベルト30、40は、合成樹脂等の弾性体から形成されている。
【0016】
第1方向規制ベルト30は、
図4に示すように、搬送コンベヤ20上で容器80が通過する容器通過部21側に面する方向規制部31が、搬送方向Xと同じ方向に進むように等速で回転駆動される。また、第2方向規制ベルト40についても同様に、容器通過部21側に面する方向規制部41が、搬送方向Xと同じ方向に進むように等速で回転駆動される。
【0017】
各方向規制ベルト30、40は、
図1、
図2に示すように、一対のプーリ52に掛け回され、シャフト51を介してプーリ52に連結された回転モータ50によって回転駆動される。シャフト51は、
図2、
図3に示すように、その上部が回転モータ50に連結された片持ち状で配置されており、これにより、シャフト51は水平方向に僅かに撓むことが可能であり、また、シャフト51に連結されたプーリ52は弾性的に水平方向に僅かに移動可能である。なお、
図1において、装置要所を見通しよくするため、シャフト51、回転モータ50の図示を省略している。
【0018】
上流ガイド60は、
図4に示すように、方向規制ベルト30、40の上流側において、搬送方向Xに向かって左側側部に配置され、搬送方向Xに向けて容器80をガイドするものである。上流ガイド60は、
図5や
図6に示すように、容器通過部21側に面する側面に、断面矩形状部81の容器短辺部82または容器長辺部83を沿わせ、搬送方向Xに向けて容器80をガイドするガイド面61を有している。この上流ガイド60の設置によって、方向規制ベルト30、40の上流において、容器80を、あらかじめ
図5に示すような、容器長辺部83が搬送方向Xに平行である縦向き状態、または、
図6に示すような、容器短辺部82が搬送方向Xに平行である横向き状態のいずれかに規制された状態を保持して方向規制ベルト30、40間に進入させることができる。
【0019】
下流ガイド70は、
図4に示すように、方向規制ベルト30、40の下流側に配置され、方向規制ベルト30、40から送り出された容器80を容器長辺部83が搬送方向Xに平行である縦向き状態にガイドするものである。
【0020】
次に、方向規制装置10による方向規制時の容器80の挙動について、各構成要素間の寸法・速度関係と共に、以下に説明する。
【0021】
以下の説明においては、
図4に示すように、断面矩形状部81の短辺方向の長さをA、長辺方向の長さをB、方向規制ベルト30、40の方向規制部31、41の対向している部分の長さをL、搬送コンベヤ20の速度をV0、第1方向規制ベルト30および第2方向規制ベルト40の間の速度差をΔV、第1方向規制ベルト30および第2方向規制ベルト40の平均速度をVm、第1方向規制ベルト30の速度をV1、第2方向規制ベルト40の速度をV2として規定する。
【0022】
本実施形態では、
図4に示すように、上流ガイド60のガイド面61と第2方向規制ベルト40の方向規制部41との間の左右方向における間隔D1が、容器80の断面矩形状部81の短辺方向の長さAよりも広く設定されているとともに、上流ガイド60のガイド面61が、第1方向規制ベルト30の方向規制部31よりも容器通過部21の内側寄りに位置している。また、第1方向規制ベルト30の方向規制部31および第2方向規制ベルト40の方向規制部41の間の間隔D2は、容器80の断面矩形状部81の短辺方向の長さAよりも広く設定されている。
これにより、
図5に示すように、方向規制ベルト30、40間に容器80が縦向き状態で進入した場合、容器80は、第1方向規制ベルト30および第2方向規制ベルト40のいずれにも接触することなく、方向規制ベルト30、40間を通過する。
【0023】
次に、方向規制ベルト30、40間に容器80が横向き状態で進入した場合における、容器80の挙動について説明する。
【0024】
本実施形態では、
図4に示すように、上流ガイド60のガイド面61と第2方向規制ベルト40の方向規制部41との間の左右方向における間隔D1が、容器80の断面矩形状部81の長辺方向の長さBと同じか、または、狭く設定されている。
これにより、
図6に示すように、方向規制ベルト30、40間に容器80が横向き状態で進入した場合、第2方向規制ベルト40と容器80とが接触し、容器80は、第2方向規制ベルト40との接触によって回転を開始する。
【0025】
そして、第2方向規制ベルト40の速度V2は、搬送コンベヤ20の速度V0よりも速く設定されている。
これにより、第2方向規制ベルト40に接触した容器80は、
図6に示すように、第2方向規制ベルト40側の容器短辺部82が搬送方向Xの前方側に向けて進むように回転し、第1方向規制ベルト30側の容器短辺部82前方側の角部C2が、第1方向規制ベルト30に対して初めに接触する。よって、第1方向規制ベルト30、および、第2方向規制ベルト40に対し、容器80を良好に接触させることができる。
【0026】
さらに、第1方向規制ベルト30および第2方向規制ベルト40の間の速度差ΔVは、0.6×(A+B)/(L/Vm)≦ΔV≦1.2×(A+B)/(L/Vm)の関係を満たすように設定されている。これにより、
図6に示すように、方向規制ベルト30、40間に横向き状態で進入した容器80は、速度差のある第1方向規制ベルト30および第2方向規制ベルト40によって回転力を付与されて約90°回転し、方向規制ベルト30、40間から縦向き状態で送出される。
【0027】
さらにまた、第1方向規制ベルト30の方向規制部31および第2方向規制ベルト40の方向規制部41の間の間隔D2は、容器80の断面矩形状部81の対角線の長さよりも狭く設定されており、方向規制ベルト30、40による容器80の回転時には、各方向規制ベルト30、40が左右の外側に向けて弾性変形して容器80に接触し、また、容器80が搬送コンベヤ20に対して摺動する。
【0028】
ここで、上記の式:0.6×(A+B)/(L/Vm)≦ΔV≦1.2×(A+B)/(L/Vm)と容器80の回転角度(約90°)との関係について、
図7を用いて説明する。
図7では、説明を簡略化するために、容器80の角部C2が第1方向規制ベルト30の速度V1と同じ速度で移動し、相対速度が0である場合を仮定して容器80の動きを示した。この
図7から、容器80の角部C1を搬送方向Xの成分で(A+B)の長さを移動させた場合に、容器80を、角部C2を中心に90°回転させることができることが分かる。そして、容器80は、(L/Vm)の時間で、方向規制ベルト30、40の方向規制部31、41を通過することから、ΔV≒(A+B)/(L/Vm)が導き出される。
なお、上記の式は、容器80の断面矩形状部81の形状が、角部が直角な矩形状であることを前提として導き出されているが、断面矩形状部81の形状が、角部に面取りを形成した略矩形状である場合であっても、面取りを形成したことに起因した数値誤差を上記の式における0.6〜1.2倍の範囲設定によって充分に吸収することができる。
【0029】
また、搬送コンベヤ20の速度V0は、V1≦V0≦V2の関係を満たすように設定されている。
第1方向規制ベルト30の速度V1が搬送コンベヤ20の速度V0以下で、かつ、第2方向規制ベルト40の速度V2は搬送コンベヤ20の速度V0以上であり、またV1とV2の平均がV0に近い値になるため、容器80は搬送コンベヤ20上で進行方向に大きく弾き飛ばされることなく、回転モーメントを与えられる。
【0030】
また、搬送コンベヤ20の速度V0に対し、Vm≧V0の関係を満たすように設定されている。
これにより、搬送方向Xにおける容器80の進行速度が方向規制部41によって遅くなることを回避され、後続する容器80との間隔が狭まることを防止できる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実験例について説明する。
【0032】
まず、本実験例では、容器80として、高さ250mm、短辺長さA=60mm、長辺長さB=70mmで、面取りがC10mmの容器Xと、面取りがC8mmの容器Yを使用した。
また、方向規制ベルト30、40として、幅がいずれも30mmのベルトを上下二本ずつ使用した。ベルト位置は下のベルト15mm、上のベルト180mm(いずれもコンベア面からベルト下端までの高さ)で設定し、ベルト材質は合成ゴムである。
また、上述した各パラメータを、L=255mm、D1=68mm<B(70mm)、D2=72mm、V0:40〜70m/minの範囲、V1及びV2:29〜102m/minの範囲で設定した。
【0033】
そして、下記の表1に示す各条件で、容器X,Yについて縦向き状態、横向き状態で5本ずつ通過試験を行った。
容器X,Yを縦向き状態で上流ガイド60のガイド面61に沿って搬送された容器は、いずれの条件でも左右の方向規制ベルト30、40に触れることなく、縦向き状態のまま下流ガイド70まで搬送された。
また、容器X,Yを横向き状態で上流ガイド60のガイド面61に沿って搬送された容器は、基準速度差ΔVs=(A+B)/(L/Vm)としたときに、ΔVsに対し、方向規制ベルト30、40間の速度差をΔVが0.4〜1.4倍まで変わるようV1,V2を設定して試験を行ったところ、それぞれのコンベア速度に対し、下記の表1の結果となった。
【0034】
【表1】
【0035】
以上の結果から、方向規制ベルト30、40間の速度差ΔVは、基準速度差ΔVsに対し、0.6〜1.2倍の範囲で方向修正の効果があり、0.8〜1.0倍に至っては、全数の容器が問題なく方向修正されたことが確認された。
【0036】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、方向規制装置が空容器に内容物を充填する充填密封ラインに組み込まれるものとして説明したが、方向規制装置の設置箇所は、実容器のラベル巻機や箱詰めライン等、容器の方向を規制する必要が生じる箇所であれば如何なるものでもよい。
また、進行方向Xに対する上流ガイド60、第1方向規制ベルト30、第2方向規制ベルト40すべての左右位置関係を上述した実施形態と正反対に配置してもよい。
また、各方向規制ベルトの具体的態様は、平ベルトやロープ状の丸ベルト等の如何なるものでもよいが、各方向規制ベルトを平ベルトから構成した場合、容器の断面矩形状部に安定して接触することが可能であるため好ましい。
また、本実施形態では、
図2や
図3に示すように、第1方向規制ベルトおよび第2方向規制ベルトがそれぞれ上下に2つずつ配置されているが、搬送中における容器の転倒を防止するものであれば、各方向規制ベルトの具体的配置や数量や高さ位置については、如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、左右両側の方向規制ベルトが、搬送コンベヤと同じ方向に駆動されるものとして説明したが、一方の方向規制ベルトを搬送コンベヤと逆方向に駆動してもよい。
また、方向規制ベルトのテンションを維持するためのテンションローラ等のテンション維持手段を設けてもよい。
【0038】
また、上流ガイド60は、
図8、9に示すように、方向規制ベルト30を渡って方向規制ベルト30、40の上流側から下流側まで延びる、側面ガイド65としてもよい。側面ガイド65は、容器80をガイドする高さ位置は特に問わない。例えば
図8に示すように、容器80の高さ中央または中央近くをガイドしてもよいし、
図9に示すように、容器80の下方をガイドしてもよい。このような側面ガイド65により容器80をガイドすることで、縦向き状態で搬送された容器80は誤って第1方向規制ベルト30や、第2方向規制ベルト40に接触して誤回転するおそれがない(
図10参照)。なお、容器80が横向き状態で方向規制ベルト間に搬送された場合、容器80は、側面ガイド65との接触箇所は側面ガイド65に押しつけられ
側面ガイド65が撓みつつ、第1方向規制ベルト30、第2方向規制ベルト40によって回転駆動される。