(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つまたは複数の特性が、(i)前記標的ポリヌクレオチドの長さ、(ii)前記標的ポリヌクレオチドの同一性、(iii)前記標的ポリヌクレオチドの配列、(iv)前記標的ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)前記標的ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される、ステップと
を含む、請求項10または12に記載の方法。
前記膜貫通タンパク質ポアが、ヘモリシン、ロイコシジン、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)ポリンA(MspA)、MspB、MspC、MspD、ライセニン、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、ナイセリア(Neisseria)オートトランスポーターリポタンパク質(NalP)およびWZAに由来する、
請求項14に記載の方法。
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を標的ポリヌクレオチドに付着させるためのキットであって、(a)負荷ポリヌクレオチドを含む1つまたは複数の負荷部分と結合している前記1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質であって、前記1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が、1つもしくは複数のポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼまたはこれらの組み合わせであって前記負荷ポリヌクレオチドに結合し、前記負荷ポリヌクレオチド上の1つまたは複数のスペーサーで停止されているタンパク質、ならびに(b)リガーゼを含む、キット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列表の説明
配列番号1は、MS−B1突然変異体MspA単量体をコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。この突然変異体は、シグナル配列を欠き、次の突然変異を含む:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。
【0013】
配列番号2は、MspA単量体のMS−B1突然変異体の成熟形態のアミノ酸配列を示す。この突然変異体は、シグナル配列を欠き、次の突然変異を含む:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。
【0014】
配列番号3は、α−ヘモリシン−E111N/K147N(α−HL−NN;Stoddart et al., PNAS, 2009; 106(19): 7702-7707)の1つの単量体をコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0015】
配列番号4は、α−HL−NNの1つの単量体のアミノ酸配列を示す。
【0016】
配列番号5〜7は、MspB、CおよびDのアミノ酸配列を示す。
【0017】
配列番号8は、Phi29 DNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0018】
配列番号9は、Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
【0019】
配列番号10は、大腸菌(E. coli)からのsbcB遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExo I)をコードする。
【0020】
配列番号11は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExo I)のアミノ酸配列を示す。
【0021】
配列番号12は、大腸菌(E. coli)からのxthA遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素をコードする。
【0022】
配列番号13は、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示す。この酵素は、二本鎖DNA(dsDNA)の一方の鎖からの5’一リン酸ヌクレオシドの分配性消化(distributive digestion)を3’−5’方向で行う。鎖上での酵素開始は、おおよそ4ヌクレオチドの5’オーバーハングを必要とする。
【0023】
配列番号14は、サーマス・サーモフィラス(T. thermophilus)からのrecJ遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、サーマス・サーモフィラス(T. thermophilus)からのRecJ酵素(TthRecJ−cd)をコードする。
【0024】
配列番号15は、サーマス・サーモフィラス(T. thermophilus)からのRecJ酵素(TthRecJ−cd)のアミノ酸配列を示す。この酵素は、ssDNAからの5’一リン酸ヌクレオシドの前進性消化(processive digestion)を5’−3’方向で行う。鎖上での酵素開始は、少なくとも4ヌクレオチドを必要とする。
【0025】
配列番号16は、バクテリオファージλ exo(redX)遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼをコードする。
【0026】
配列番号17は、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。この配列は、集合して三量体になる3つの同一のサブユニットの1つである。この酵素は、dsDNAの一方の鎖からのヌクレオチドの5’−3’方向の高前進性消化を行う(http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp)。鎖上での酵素開始は、5’リン酸エステルを有するおおよそ4ヌクレオチドの5’オーバーハングを優先的に必要とする。
【0027】
配列番号18は、Hel308 Mbuのアミノ酸配列を示す。
【0028】
配列番号19は、Hel308 Csyのアミノ酸配列を示す。
【0029】
配列番号20は、Hel308 Tgaのアミノ酸配列を示す。
【0030】
配列番号21は、Hel308 Mhuのアミノ酸配列を示す。
【0031】
配列番号22は、TraI Ecoのアミノ酸配列を示す。
【0032】
配列番号23は、XPD Mbuのアミノ酸配列を示す。
【0033】
配列番号24は、Dda 1993のアミノ酸配列を示す。
【0034】
配列番号25は、Trwc Cbaのアミノ酸配列を示す。
【0035】
配列番号26は、実施例1で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’リン酸エステルを有する。
【0036】
配列番号27は、実施例2および7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0037】
配列番号28は、実施例2および7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0038】
配列番号29は、実施例1で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’リン酸エステルを有する。
【0039】
配列番号30は、実施例1で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0040】
配列番号31は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’コレステロールTEGを有する。
【0041】
配列番号32は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号32の5’末端に付着されているのは、39個のSpC3スペーサーである。配列番号32の3’末端に付着されているのは、配列番号33の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSP18スペーサーである。
【0042】
配列番号33は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号33の5’末端に付着されているのは、配列番号32の3’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSP18スペーサーである。
【0043】
配列番号34は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。3’末端に付着されているのは、配列番号35の5’末端に付着されている3個のiSp18スペーサーに反対側の末端が付着されている、1個のiBNA−meC、2個のiBNA−Aおよび2個のiBNA−meCである。
【0044】
配列番号35は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。5’末端に付着されているのは、配列番号34の3’末端に反対側の末端が付着されている2個のiBNA−meC、2個のiBNA−Aおよび1個のiBNA−meCに反対側の末端が付着されている3個のiSp18スペーサーである。
【0045】
配列番号36は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号36の5’末端に付着されているのはリン酸エステルである。配列番号36の3’末端に付着されているのは、配列番号37の5’末端の反対側の末端に付着されている4個のiSp18スペーサーである。
【0046】
配列番号37は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号37の5’末端に付着されているのは、配列番号36の3’末端に反対側の末端に付着されている4個のiSp18スペーサーである。
【0047】
配列番号38は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0048】
配列番号39は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号39の5’末端に付着されているのはリン酸エステルである。配列番号39の3’末端に付着されているのは、配列番号40の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーである。
【0049】
配列番号40は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号40の5’末端に付着されているのは、配列番号39の3’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3である。
【0050】
配列番号41は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号41は、配列番号42に相補的である。
【0051】
配列番号42は、実施例6で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。配列番号42は、配列番号41に相補的である。
【0052】
配列番号43は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0053】
配列番号44は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’リン酸エステルを有する。配列番号44の3’末端は、配列番号45の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーに付着されている。
【0054】
配列番号45は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、配列番号44の3’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーにその5’末端が付着されている。
【0055】
配列番号46は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【0056】
配列番号47は、実施例7で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。この配列は、5’リン酸エステルを有し、該配列の3’末端にはチミンに基づくチオリン酸エステル塩基を有する。
【0057】
発明の詳細な説明
開示する生成物および方法の様々な用途を当技術分野における具体的な必要に合わせて調整できることは理解されるはずである。本明細書において用いる用語法が本発明の特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定を意図したものでないことも理解されるはずである。
【0058】
加えて、本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、複数の言及対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「酵素(an enzyme)」への言及は、2つ以上の酵素を含み、「ヘリカーゼ(a helicase)」への言及は、2つ以上のヘリカーゼを含み、「分子ブレーキ(a molecular brake)」への言及は、2つ以上の分子ブレーキを指し、「膜貫通ポア(a transmembrane pore)」への言及は、2つ以上のポアを含むなど。
【0059】
上文であろうと、下文であろうと、本明細書の中で引用するすべての出版物、特許および特許出願は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0060】
発明の方法
本発明は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を標的ポリヌクレオチドに付着させる方法を提供する。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を、1つまたは複数の負荷部分と結合した状態で(または、それに付着した状態で)供給する。1つまたは複数の負荷部分は、標的ポリヌクレオチドに付着させる。これにより、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、標的ポリヌクレオチドに付着される。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質をこのようにして付着させてしまえば、それらを使用して、膜貫通ポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができ、または標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成する(すなわち、標的ポリヌクレオチドを修飾する)ことができる。これにより、下でより詳細に論じるように標的ポリヌクレオチドを特性評価することが可能になる。
【0061】
本発明には様々な利点がある。
i.負荷部分上へのポリヌクレオチド結合タンパク質の前負荷は、試料調製プロセスを加速し、より少ないチューブが使用されることを意味する。
ii.結果として生じる標的ポリヌクレオチドの可能な限り100%に近い事例が、付着しているポリヌクレオチド結合タンパク質を有する。これは、後続の必要プロセスの収率を向上させることができる。
iii.1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を1つまたは複数の負荷部分に負荷しなければ、顧客の間違いが低減される。
iv.過剰なポリヌクレオチド結合タンパク質(これはポアを塞ぐことがあり、または何らかの他の望ましくない活性を有することがある)が付着後に残存しない。
v.1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質の安定性が向上される。ポリヌクレオチドと結合したタンパク質は、より安定している可能性が高い。
vi.過剰な負荷部分は、正しく構成される系(すなわち、緩衝液中のATPなどである)の対照として作用することができる。
vii.使用者は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質の順序を制御することができ、したがって、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が1つの負荷部分上に正しい配列で負荷される。
viii.使用者は、どのポリヌクレオチド結合タンパク質が、どの負荷部分(例えば、Yアダプター対架橋部分)に付着されるのかを制御することができる。
ix.1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を使用して、1つまたは複数の負荷部分を精製することができる。
x.使用者は、異なる負荷部分に付着しているポリヌクレオチド結合タンパク質に異なる修飾を加えることができる。
xi.異なるポリヌクレオチド結合タンパク質は異なる結合条件を好むことがあり、それ故、異なるポリヌクレオチド結合タンパク質を(一緒に標的ポリヌクレオチド上にではなく)異なる負荷部分上に前負荷できることは有益でありうる。
xii 1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を前負荷した場合、付着後にいずれの遊離ポリヌクレオチド結合タンパク質も存在するはずがなく、それ故、該タンパク質を使用して構築物を精製することができる。
xiii 本発明は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質の使用を最少にし、それ故、廃棄物が少ない。
xiv 使用者は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が標的ポリヌクレオチドに対して結合する場所または結合しない場所を制御することができる。1つまたは複数の負荷部分上に1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を前負荷することにより、該1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、標的ポリヌクレオチドと直接結合しない。
xv 本発明は、例えばポリメラーゼが標的鎖をコピーしたときの、配列情報の収量も向上させる。収量は、非効率的なタンパク質結合およびまた処理能力の欠如によって制限されることがある。前負荷は負荷の非効率性を克服し、閉じた複合体の生成は処理能力の問題を克服する。
【0062】
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特性評価する方法も提供する。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を標的ポリヌクレオチド上に負荷してしまえば、それらを膜貫通ポアと、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が、ポアに対する、例えばポアを通る、ポリヌクレオチドの移動を制御するように接触させることができる。方法は、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップも含む。これらの測定値は、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性、例えば配列を示す。
【0063】
リーダー配列を含有するYアダプター(二本鎖ステムおよび2つの非相補的アーム)とヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターとを含むように二本鎖ポリヌクレオチドを修飾すると、膜貫通ポアを使用して二本鎖ポリヌクレオチドを有効に特性評価することができることが示されている(WO2013/014451)。リーダー配列を含有するそのYアダプターがポリヌクレオチドの一方の末端に付着され、架橋部分アダプターが他方の末端に付着されるのが好ましい。リーダー配列は、優先的にナノポアを通り抜け、ポリヌクレオチドがほどけて(架橋部分によって接続されている)両方の鎖がポアに対して、例えばポアを通って、移動するとき、ポリヌクレオチドの2本の鎖を接続する架橋部分(例えばヘアピンループ)によって両方の鎖を調査することができる。これは、単一の二本鎖ポリヌクレオチドから得られる情報の量を二倍にするので、有利である。さらに、2本の鎖内の配列は相補的であるので、2本の鎖からの情報を情報科学的に組み合わせることができる。このメカニズムによって、より高い信頼度の観察をもたらす直交較正能力(orthogonal proof-reading capability)が得られる。本発明に従って使用される1つまたは複数の負荷部分は、Yアダプターおよび/または架橋部分アダプターでありうる。このことは、下でより詳細に論じる。
【0064】
本発明は、特性評価用の標的ポリヌクレオチドを調製する方法も提供する。この方法は、特性評価用に標的ポリヌクレオチドを改善するためのものであることがある。この方法は、標的ポリヌクレオチドを修飾または伸長するためのものであることがある。1つまたは複数のポリメラーゼを標的ポリヌクレオチド上に負荷してしまえば、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリメラーゼに1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成させることができる。標的ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、別の相補ポリヌクレオチドが形成される。標的ポリヌクレオチドが二本鎖である場合、好ましくは、両方の鎖が1つまたは複数のポリメラーゼによってテンプレートとして使用される。標的ポリヌクレオチドからの鎖と1つまたは複数のポリメラーゼによって生成される新たなポリヌクレオチドからの鎖は相補的であるので、それらからの情報を上で論じたように情報科学的に組み合わせることができる。このタイプの方法は、WO2013/014451にも開示されている。ポリメラーゼによって形成されるポリヌクレオチドは、下でより詳細に論じるように、標的ポリヌクレオチドと同じタイプのポリヌクレオチドを含むこともあり、または異なるタイプのポリヌクレオチドを含むこともある。標的ポリヌクレオチドは、下でより詳細に論じるように修飾されることがある。下でより詳細に論じるようなYアダプターおよび/または架橋部分アダプターを使用して、1つまたは複数のポリメラーゼが標的ポリヌクレオチド上に負荷されることがある。
【0065】
ポリヌクレオチド
標的ポリヌクレオチドは、いずれのポリヌクレオチドであってもよい。核酸などのポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む高分子である。ポリヌクレオチドまたは核酸は、いずれのヌクレオチドのいずれの組み合わせを含んでもよい。ヌクレオチドは、天然に存在するものであることもあり、または人工的なものであることもある。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、酸化またはメチル化されていることがある。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、損傷されていることがある。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジン二量体を含むことがある。そのような二量体は概して、紫外線による損傷に関連し、皮膚黒色腫の主原因である。ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチドは、例えば標識またはタグで、修飾されていることがある。好適な標識は、下で説明する。ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のスペーサーを含むことがある。
【0066】
ヌクレオチドは、核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸エステル基を概して含有する。核酸塩基および糖は、ヌクレオシドを形成する。ヌクレオチドは、天然ヌクレオチドであることもあり、または非天然ヌクレオチドであることもある。
【0067】
核酸塩基は、概して複素環式である。核酸塩基としては、プリンおよびピリミジン、より具体的にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)およびシトシン(C)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
糖は、概してペントース糖である。ヌクレオチド糖としては、リボースおよびデオキシリボースが挙げられるが、これらに限定されない。糖は、好ましくはデオキシリボースである。
【0069】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、概して、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、次のヌクレオシドを含むことがある:アデノシン、ウリジン、グアノシンおよびシチジン。ヌクレオチドは、好ましくはデオキシリボヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、好ましくは次のヌクレオシドを含む:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)ならびにデオキシシチジン(dC)。
【0070】
ヌクレオチドは、概して、一リン酸エステル、二リン酸エステルまたは三リン酸エステルを含有する。リン酸エステルは、ヌクレオチドの5’側に付着されていることもあり、または3’側に付着されていることもある。
【0071】
好適なヌクレオチドとしては、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、シチジン一リン酸(CMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)およびデオキシシチジン一リン酸(dCMP)が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMPおよびdUMPから選択される。ヌクレオチドは、最も好ましくは、dAMP、dTMP、dGMP、dCMPおよびdUMPから選択される。ポリヌクレオチドは、好ましくは次のヌクレオチドを含む:dAMP、dUMPおよび/またはdTMP、dGMPならびにdCMP。
【0072】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、いずれの様式で互いに付着されていてもよい。ヌクレオチドは、概して、それらの糖およびリン酸基によって核酸の場合のように付着されている。ヌクレオチドは、それらの核酸塩基によってピリミジン二量体の場合のように接続されていることがある。
【0073】
ポリヌクレオチドは、一本鎖状であることもあり、または二本鎖状であることもある。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分は、好ましくは二本鎖状である。
【0074】
ポリヌクレオチドは、核酸でありうる。ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成重合体などの、当技術分野において公知のいずれの合成核酸であってもよい。PNA主鎖は、ペプチド結合によって連結された反復N−(2−アミノエチル)−グリシンユニットからなる。GNA主鎖は、ホスホジエステル結合によって連結された反復グリコールユニットからなる。TNA主鎖は、ホスホジエステル結合によって一緒に連結された反復トレオース糖からなる。LNAは、リボース部分の2’酸素と4’炭素を接続する余分な架橋を有する、上で論じたようなリボヌクレオチドから形成される。架橋核酸(BNA)は、修飾RNAヌクレオチドである。BNAは、束縛または隔絶RNAと呼ばれることもある。BNA単量体は、「固定」C3’−endo糖パッカリングを有する5員、6員またはさらには7員架橋構造を含有することができる。架橋をリボースの2’,4’位置に合成的に組み込んで、2’,4’−BNA単量体を生じさせる。
【0075】
ポリヌクレオチドは、最も好ましくはリボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。
【0076】
ポリヌクレオチドは、いずれの長さであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500ヌクレオチドの長さでありうる。ポリヌクレオチドは、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上の長さ、または100000ヌクレオチド以上の長さでありうる。
【0077】
ヘリカーゼは、本発明の方法では、ポリヌクレオチド全体に沿って移動することもあり、またはポリヌクレオチドの一部のみに沿って移動することもある。本発明の方法を用いて、標的ポリヌクレオチドの全体または一部のみを特性評価してもよい。
【0078】
ポリヌクレオチドは、一本鎖状であることがある。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分は、好ましくは二本鎖状である。ヘリカーゼは、一本鎖ポリヌクレオチドと概して結合する。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分が二本鎖状である場合、該ポリヌクレオチドは、好ましくは、一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域を含む。1つまたは複数のヘリカーゼは、一本鎖領域、またはハイブリダイズしていない領域の1本の鎖と結合することができる。ポリヌクレオチドは、好ましくは、1つもしくは複数の一本鎖領域、または1つもしくは複数のハイブリダイズしていない領域を含む。
【0079】
1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、ポリヌクレオチドの一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域に含まれる。ポリヌクレオチドは、1つより多くの一本鎖領域、または1つより多くのハイブリダイズしていない領域を含むことがある。ポリヌクレオチドは、その配列内におよび/または一方もしくは両方の末端に一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域を含むことがある。1つまたは複数のスペーサーをポリヌクレオチドの二本鎖領域に含めてもよい。
【0080】
方法で使用される1つまたは複数のヘリカーゼが5’から3’方向に移動する場合、ポリヌクレオチドは、好ましくは、その5’末端に一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域を含む。方法で使用される1つまたは複数のヘリカーゼが3’から5’方向に移動する場合、ポリヌクレオチドは、好ましくは、その3’末端に一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域を含む。1つまたは複数のヘリカーゼが不活性モードで(すなわちブレーキとして)使用される場合、一本鎖領域またはハイブリダイズしていない領域がどこに位置するかは問題にならない。
【0081】
一本鎖領域は、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列を好ましくは含む。このことは、下でより詳細に論じる。
【0082】
ポリヌクレオチドの少なくとも一部分が二本鎖状である場合、その二本鎖部分の2本の鎖は、ヘアピンまたはヘアピンループなどの架橋部分を使用して好ましくは連結される。これは、本発明の特性評価方法を助長し、下でより詳細に論じる。
【0083】
ポリヌクレオチドは、任意の好適な試料中に存在する。本発明は、ポリヌクレオチドを含有することが分かっているまたは含有すると推測される試料に対して概して行われる。本発明は、試料に対して、その試料中に存在することが分かっているまたは予想される1つまたは複数のポリヌクレオチドの正体を確認するために行われることがある。
【0084】
試料は、生体試料であってもよい。任意の生物または微生物から得られたまたは抽出された試料に対してインビトロで本発明を行ってもよい。生物または微生物は、概して、古細菌性、原核性または真核性であり、五界、すなわち植物界、動物界、菌界、原核生物界および原生生物界の1つに概して属する。任意のウイルスから得られたまたは抽出された試料に対して本発明をインビトロで行ってもよい。試料は、好ましくは流体試料である。試料は、患者の体液を概して含む。試料は、尿、リンパ液、唾液、粘液または羊水であってもよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。概して、試料は起源がヒトであるが、代替的に、別の哺乳類動物からのもの、例えば、商業飼育動物、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、魚、ニワトリもしくはブタからのものであってもよく、または代替的にペット、例えばネコもしくはイヌであってもよい。あるいは、試料は、植物起源のもの、例えば、商品作物、例えば、穀類、マメ科植物、果実または野菜、例えば、コムギ、オオムギ、オートムギ、キャノーラ、トウモロコシ、ダイズ、イネ、ダイオウ、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タバコ、マメ、レンズマメ、サトウキビ、カカオノキ、ワタから得られた試料であってもよい。
【0085】
試料は、非生体試料であってもよい。非生体試料は、好ましくは流体試料である。非生体試料の例としては、外科用流体、水、例えば飲用水、海水または河川水、および検査室検査用の試薬が挙げられる。
【0086】
試料は、本発明で使用される前に、例えば、遠心分離によって、または望ましくない分子もしくは細胞、例えば赤血球を濾過して取り除く膜を通過させることによって、概して処理される。試料は、採取され次第、測定されることがある。試料は、アッセイ前に、好ましくは−70℃未満で概して保存されることもある。
【0087】
ポリヌクレオチド結合タンパク質
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドと結合することができ、かつポアに対する、例えばポアを通る、その移動を制御することができる、いずれのタンパク質であってもよい。当技術分野においてタンパク質がポリヌクレオチドと結合するか否かを判定することは容易である。タンパク質は、概して、ポリヌクレオチドと相互作用し、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾する。タンパク質は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチドを形成することによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。その部分は、ポリヌクレオチドを配向させることによって、または特定の位置に移動させること、すなわち、その移動を制御することによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。
【0088】
いずれの数のポリヌクレオチドタンパク質を標的ポリヌクレオチドに付着させてもよい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のタンパク質を付着させてもよい。
【0089】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、1つまたは複数の一本鎖結合タンパク質(SSB)であることがある。1つまたは複数の一本鎖結合タンパク質(SSB)は、正味負電荷を有さないカルボキシ末端(C末端)領域を含むこともあり、または(ii)そのC末端領域に、C末端領域の正味負電荷を減少させる1つもしくは複数の修飾を含む、修飾SSBを含むこともある。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、国際出願番号PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)に開示されているSSBのいずれかであってもよい。
【0090】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくはポリヌクレオチドハンドリング酵素(polynucleotide handling enzyme)に由来する。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドと相互作用してポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾することができるポリペプチドである。この酵素は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチドを形成することによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。この酵素は、ポリヌクレオチドを配向させることによって、または特定の位置に移動させることによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドに結合することができ、かつポアに対する、例えばポアを通る、その移動を制御することができるのであれば、酵素活性を示す必要はない。例えば、酵素は、その酵素活性を除去するように修飾されることもあり、または酵素として作用することを妨げる条件下で使用されることもある。そのような条件は、下でより詳細に論じる。
【0091】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは核酸分解酵素に由来する。酵素は、より好ましくは、酵素分類(EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30および3.1.31のいずれかのメンバーに由来する。酵素は、国際出願番号PCT/GB10/000133(WO2010/086603として公開された)に開示されているもののいずれかであってもよい。
【0092】
好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼおよびトポイソメラーゼ、例えばジャイレース、および逆転写酵素である。好適な酵素としては、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼI(配列番号11)、大腸菌(E. coli)からのエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号13)、サーマス・サーモフィラス(T. thermophilus)からのRecJ(配列番号15)、およびバクテリオファージλエキソヌクレアーゼ(配列番号17)、TatDエキソヌクレアーゼならびにこれらの変異体が挙げられるが、それらに限定されない。配列番号15で示される配列またはその変異体を含む3つのサブユニットは相互作用して三量体エキソヌクレアーゼを形成する。ポリメラーゼは、PyroPhage(登録商標)3173 DNAポリメラーゼ(Lucigen(登録商標)Corporationから市販されている)、SDポリメラーゼ(Bioron(登録商標)から市販されている)、NEBからのクレノウ、またはそれらの変異体であることがある。酵素は、好ましくはPhi29 DNAポリメラーゼ(配列番号9)またはその変異体である。Phi29の好ましいバージョンは、下でより詳細に論じる。本発明において使用してもよいPhi29ポリメラーゼの修飾バージョンは下で論じており、米国特許第5,576,204号において開示されている。トポイソメラーゼは、好ましくは、部分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のいずれかのメンバーである。逆転写酵素は、RNAテンプレートからのcDNAの形成を触媒することができる酵素である。それらは、例えば、New England Biolabs(登録商標)およびInvitrogen(登録商標)から市販されている。
【0093】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくはヘリカーゼに由来する。ヘリカーゼは、少なくとも2つの活性動作モード(ヘリカーゼに、移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg
2+が備わっている場合)および1つの不活性動作モード(ヘリカーゼに移動を助長するための必要成分が備わっていない場合、またはヘリカーゼが、移動を防止もしくは妨害するように修飾されている場合)でポリヌクレオチドの移動を制御することができる。移動を助長するためのすべての必要成分が備わっている場合、ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドに沿って(ヘリカーゼに依存して)5’から3’または3’から5’方向に移動するが、ポア内でのポリヌクレオチドの配向(ポリヌクレオチドのいずれの末端がポアによって捕捉されるのかに依存する)は、ヘリカーゼを使用して、印加された場に逆らってポアから外にポリヌクレオチドを移動させることができる、または印加された場に伴ってポアの中にポリヌクレオチドを移動させることができることを意味する。ヘリカーゼが目指して移動するポリヌクレオチドの末端がポアによって捕捉されると、ヘリカーゼは、印加された電位の結果として生じる場の方向とは反対に働き、通り抜けるポリヌクレオチドをポアの外に引き出し、シスチャンバーに引き入れる。しかし、ヘリカーゼが遠ざかるように移動する末端がポアの中に捕捉されると、ヘリカーゼは、印加された電位の結果として生じる場の方向に伴って働き、通り抜けるポリヌクレオチドをポアの中に、そしてトランスチャンバーの中に押し込む。
【0094】
ヘリカーゼに移動を助長するための必要成分が備わっていない場合、ヘリカーゼはポリヌクレオチドと結合して、印加された電位の結果として生じる場によってポリヌクレオチドがポアの中に引き入れられるときにポリヌクレオチドの移動を遅速させるブレーキとして作用することができる。不活性モードでは、ポリヌクレオチドのいずれの末端が捕捉されるかは問題にならず、ヘリカーゼがブレーキとして作用してポリヌクレオチドをポアのトランス側に引き入れる、印加される場が問題になる。不活性モードの場合、ヘリカーゼによるポリヌクレオチドの移動制御は、漸減、スライドおよび制動をはじめとするいくつかの方法で説明することができる。
【0095】
本発明の特性評価方法において、1つまたは複数のヘリカーゼは、印加された電位の結果として生じる場に伴ってポアに対する、例えばポアを通る、標的ポリヌクレオチドの移動を好ましくは制御する。1つの好ましい実施形態において、1つまたは複数のヘリカーゼは活性モードで使用され、1つまたは複数のヘリカーゼが遠ざかるように移動する末端がポアによって捕捉され、その結果、1つまたは複数のヘリカーゼは、印加された電位の結果として生じる場に伴って働き、ポリヌクレオチドをポアに対して押す、例えばポアの中を押し通す。1つまたは複数のヘリカーゼが5’から3’方向に移動する場合、ポリヌクレオチドの5’末端は、好ましくはポアによって捕捉される。そのような実施形態において、1つまたは複数のヘリカーゼは、ポリヌクレオチドに沿って5’から3’方向に移動する。1つまたは複数のヘリカーゼが3’から5’方向に移動する場合、ポリヌクレオチドの3’末端は、好ましくはポアによって捕捉される。そのような実施形態において、1つまたは複数のヘリカーゼは、ポリヌクレオチドに沿って3’から5’方向に移動する。
【0096】
特性評価方法の別の好ましい実施形態において、1つまたは複数のヘリカーゼは、印加された場がポリヌクレオチドをポアに対して、例えばポアを通して、引っ張り、1つまたは複数のヘリカーゼがブレーキとして作用するような不活性モードで使用される。別の好ましい実施形態において、1つまたは複数のヘリカーゼは、ポリヌクレオチド結合能力を保持するが、ヘリカーゼ活性(すなわち、ポリヌクレオチドに沿って能動的に移動する能力)を欠き、したがって、印加された場がポリヌクレオチドをポアに対して、例えばポアを通して、引っ張り、該1つまたは複数のヘリカーゼがブレーキとして作用するように、修飾される。本発明の方法において、1つまたは複数のヘリカーゼは、印加された電位の結果として生じる場に伴ってポアに対する、例えばポアを通る、ポリヌクレオチドの移動を好ましくは遅速または制動する。いずれの場合も、1つまたは複数のヘリカーゼは、概して大き過ぎてポアに対して、例えばポアを通って、移動することができず、ポアは、印加された電位の結果として生じる場に伴ってポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するとき、そのポリヌクレオチドに沿って1つまたは複数のヘリカーゼを押す。
【0097】
1つまたは複数のヘリカーゼを使用する特性評価方法におけるいずれのステップも、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体と、1つまたは複数のヘリカーゼの作用を助長する酵素補因子との存在下で、概して行われる。遊離ヌクレオチドは、上で論じた個々のヌクレオチドのいずれか1つまたは複数であってもよい。遊離ヌクレオチドとしては、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)が挙げられるが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、好ましくはアデノシン三リン酸(ATP)である。酵素補因子は、構築物を機能させる因子である。酵素補因子は、好ましくは二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg
2+、Mn
2+、Ca
2+またはCo
2+である。酵素補因子は、最も好ましくはMg
2+である。
【0098】
いずれのヘリカーゼを本発明において使用してもよい。ヘリカーゼは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えばTraIヘリカーゼもしくはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、またはDdaヘリカーゼであってもよく、あるいはこれらのヘリカーゼに由来してもよい。ヘリカーゼは、国際出願番号PCT/GB2012/052579(WO2013/057495として公開された)、PCT/GB2012/053274(WO2013/098562として公開された)、PCT/GB2012/053273(WO2013098561として公開された)、PCT/GB2013/051925(WO2014/013260として公開された)、PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)およびPCT/GB2013/051928(WO2014/013262として公開された)に、ならびに国際出願番号PCT/GB2014/052736に開示されている、ヘリカーゼ、修飾ヘリカーゼまたはヘリカーゼ構築物のいずれであってもよい。
【0099】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、ヘリカーゼ、例えば、Hel308 Mbu(配列番号18)、Hel308 Csy(配列番号19)、Hel308 Tga(配列番号20)、Hel308 Mhu(配列番号21)、TraI Eco(配列番号22)、XPD Mbu(配列番号23)またはその変異体に由来しうる。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、配列番号25(Trwc Cba)で示される配列もしくはその変異体、配列番号18(Hel308 Mbu)で示される配列もしくはその変異体、または配列番号24(Dda)で示される配列もしくはその変異体を好ましくは含む。変異体は、ヘリカーゼまたは膜貫通ポアについて下で論じる点のいずれかにおいてネイティブ配列と異なることがある。
【0100】
配列番号24の好ましい変異体は、(a)E94C/A360C、(b)E94C/A360Cおよび次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2付加)、(c)E94C/A360C/C109A/C136Aまたは(d)E94C/A360C/C109A/C136Aおよび次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2付加)を含む(またはこれらのみを含む)。
【0101】
配列番号24の他の好ましい変異体は、W378Aを含む。配列番号24の好ましい変異体は、(a)E94C/A360C/W378A、(b)E94C/A360C/W378Aおよび次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2付加)、(c)E94C/A360C/C109A/C136A/W378Aまたは(d)E94C/A360C/C109A/C136A/W378Aおよび次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2付加)を含む(またはこれらのみを含む)。
【0102】
配列番号25の好ましい変異体は、(a)Q594A、(b)L376C/Q594A/K762C、(c)L376C/Q594A/A779C、(d)Q346C/Q594A/A779C、(e)Q346C/Q594A/A783C、(f)D411/Q594A/A783C、(g)Q594A/R353C/E722C、(h)Q594A/Q357C/T720C、(i)Q594A/R358C/T720C、(j)Q594A/H354C/T720C、(k)Q594A/F374C/E722Cまたは(l)Q594A/S350C/E722Cを含む(またはこれらのみを含む)。(a)から(l)のいずれも、さらに、および次いで、(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2付加)を含むことがある。他の好ましい変異体は、上で論じている。
【0103】
1つまたは複数のヘリカーゼは、少なくとも1つの立体構造でポリヌクレオチドがそこを通ってヘリカーゼから解離することができるポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口のサイズを低減させるように、好ましくは修飾されている。1つまたは複数のヘリカーゼは、少なくとも1つの立体構造でポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離することができるポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口を閉じるように、好ましくは修飾される。このことは、WO2014/013260およびPCT/GB2014/052736において開示されている。WO2014/013260およびPCT/GB2014/052736において開示されている修飾のいずれかを本発明で使用してもよい。
【0104】
ポリヌクレオチドと結合するおよびポリヌクレオチドから解離するヘリカーゼの能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて判定することができる。好適な結合/解離アッセイとしては、ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、蛍光偏光測定、熱量測定および表面プラズモン共鳴(SPR、例えばBiacore(商標))が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドから解離するヘリカーゼの能力は、もちろん、ヘリカーゼがポリヌクレオチドの移動を制御することができる時間を測定することによって判定することができる。この能力は、当技術分野において公知のいずれの方法を用いて判定してもよい。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、下記のものなどのナノポア系で概してアッセイされる。ポリヌクレオチドの移動を制御するヘリカーゼの能力は、実施例で説明するように判定することができる。
【0105】
PCT/GB2014/052736において開示されているように、本発明において使用されるヘリカーゼは、少なくとも1つのシステイン残基および/または少なくとも1つの非天然アミノ酸がフックドメインおよび/または2A(RecA様モーター)ドメインに導入されたDdaヘリカーゼであって、ポリヌクレオチドの移動を制御するその能力を保持するヘリカーゼであってもよい。いずれの数のシステイン残基および/または非天然アミノ酸を各ドメインに導入してもよい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のシステイン残基を導入してもよく、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の非天然アミノ酸を導入してもよい。1つまたは複数のシステイン残基のみを導入してもよい。1つまたは複数の非天然アミノ酸のみを導入してもよい。1つまたは複数のシステイン残基と1つまたは複数の非天然アミノ酸の組み合わせを導入してもよい。少なくとも1つのシステイン残基および/または少なくとも1つの非天然アミノ酸は、好ましくは置換によって導入される。この導入を行う方法は、当技術分野において公知である。これらのDda修飾は、ヘリカーゼがポリヌクレオチドと結合することを妨げない。これらの修飾は、ヘリカーゼから解離または離脱するポリヌクレオチドの能力を減少させる。言い換えると、1つまたは複数の修飾は、ポリヌクレオチド鎖からの解離を妨げることによってDdaヘリカーゼの処理能力を増加させる。酵素の熱安定性も、鎖シークエンシングに有益である改善された構造安定性をその酵素にもたらす1つまたは複数の修飾によって、概して増加される。非天然アミノ酸は、Ddaヘリカーゼ中で天然に見いだされないアミノ酸である。非天然アミノ酸は、好ましくは、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリンまたはチロシンではない。非天然アミノ酸は、より好ましくは、前文における20のアミノ酸のいずれでもなく、セレノシステインでもない。
【0106】
本発明において使用するための好ましい非天然アミノ酸としては、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)、4−アセチル−L−フェニルアラニン、3−アセチル−L−フェニルアラニン、4−アセトアセチル−L−フェニルアラニン、O−アリル−L−チロシン、3−(フェニルセラニル)−L−アラニン、O−2−プロピン−1−イル−L−チロシン、4−(ジヒドロキシボリル)−L−フェニルアラニン、4−[(エチルスルファニル)カルボニル]−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(プロパン−2−イルスルファニル)カルボニル]フェニル}プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−{4−[(2−アミノ−3−スルファニルプロパノイル)アミノ]フェニル}プロパン酸、O−メチル−L−チロシン、4−アミノ−L−フェニルアラニン、4−シアノ−L−フェニルアラニン、3−シアノ−L−フェニルアラニン、4−フルオロ−L−フェニルアラニン、4−ヨード−L−フェニルアラニン、4−ブロモ−L−フェニルアラニン、O−(トリフルオロメチル)チロシン、4−ニトロ−L−フェニルアラニン、3−ヒドロキシ−L−チロシン、3−アミノ−L−チロシン、3−ヨード−L−チロシン、4−イソプロピル−L−フェニルアラニン、3−(2−ナフチル)−L−アラニン、4−フェニル−L−フェニルアラニン、(2S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルアミノ)プロパン酸、6−(メチルスルファニル)ノルロイシン、6−オキソ−L−リシン、D−チロシン、(2R)−2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、(2R)−2−アンモニオオクタノエート3−(2,2’−ビピリジン−5−イル)−D−アラニン、2−アミノ−3−(8−ヒドロキシ−3−キノリル)プロパン酸、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、S−(2−ニトロベンジル)システイン、(2R)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)スルファニル]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−3−[(2−ニトロベンジル)オキシ]プロパン酸、O−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)−L−セリン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、O−(2−ニトロベンジル)−L−チロシン、2−ニトロフェニルアラニン、4−[(E)−フェニルジアゼニル]−L−フェニルアラニン、4−[3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジレン−3−イル]−D−フェニルアラニン、2−アミノ−3−[[5−(ジメチルアミノ)−1−ナフチル]スルホニルアミノ]プロパン酸、(2S)−2−アミノ−4−(7−ヒドロキシ−2−オキソ−2H−クロメン−4−イル)ブタン酸、(2S)−3−[(6−アセチルナフタレン−2−イル)アミノ]−2−アミノプロパン酸、4−(カルボキシメチル)フェニルアラニン、3−ニトロ−L−チロシン、O−スルホ−L−チロシン、(2R)−6−アセトアミド−2−アンモニオヘキサノエート、1−メチルヒスチジン、2−アミノノナン酸、2−アミノデカン酸、L−ホモシステイン、5−スルファニルノルバリン、6−スルファニル−L−ノルロイシン、5−(メチルスルファニル)−L−ノルバリン、N
6−{[(2R,3R)−3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−イル]カルボニル}−L−リシン、N
6−[(ベンジルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−[(シクロペンチルカルボニル)アミノ]ヘキサン酸、N
6−[(シクロペンチルオキシ)カルボニル]−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(2R)−テトラヒドロフラン−2−イルカルボニル]アミノ}ヘキサン酸、(2S)−2−アミノ−8−[(2R,3S)−3−エチニルテトラヒドロフラン−2−イル]−8−オキソオクタン酸、N
6−(tert−ブトキシカルボニル)−L−リシン、(2S)−2−ヒドロキシ−6−({[(2−メチル−2−プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N
6−[(アリルオキシ)カルボニル]リシン、(2S)−2−アミノ−6−({[(2−アジドベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N
6−L−プロリル−L−リシン、(2S)−2−アミノ−6−{[(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸およびN
6−[(2−アジドエトキシ)カルボニル]−L−リシンが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい非天然アミノ酸は、4−アジド−L−フェニルアラニン(Faz)である。
【0107】
本発明において使用されるヘリカーゼは、少なくとも1つのシステイン残基および/または少なくとも1つの非天然アミノ酸が(i)タワードメイン(残基D260〜P274およびN292〜A389)および/または(ii)ピンドメイン(残基K86〜E102)および/または(iii)1Aドメイン(残基M1〜L85およびV103〜K177)に導入された、配列番号24の変異体を好ましくは含む。少なくとも1つのシステイン残基および/または少なくとも1つの非天然アミノ酸は、タワードメインの残基N292〜A389に好ましくは導入される。
【0108】
配列番号24および25への少なくとも2つのシステインの導入は、上で論じたように、ヘリカーゼのポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口のサイズを低減させる、またはその開口を閉じる。
【0109】
本発明において使用するための好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願番号PCT/GB2013/051925(WO2014/013260として公開された)、PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)およびPCT/GB2013/051928(WO2014/013262として公開された)に、ならびに2013年10月18日に出願された英国出願第1318464.3号に記載されている。
【0110】
配列番号9、11、13、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25の変異体は、配列番号9、11、13、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25のものとは異なるアミノ酸配列を有する酵素であって、ポリヌクレオチド結合能力を保持する酵素である。この能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、変異体をポリヌクレオチドと接触させることができ、ポリヌクレオチドと結合するおよびポリヌクレオチドに沿って移動するその能力を測定することができる。変異体は、ポリヌクレオチドの結合を助長するならびに/または高い塩濃度および/もしくは室温でその活性を助長する修飾を含むことがある。変異体は、ポリヌクレオチドに結合する(すなわち、ポリヌクレオチド結合能力を保持する)が、酵素として機能しないように修飾されることがある。例えば、ヘリカーゼの変異体は、ポリヌクレオチドに結合する(すなわち、ポリヌクレオチド結合能力を保持する)が、ヘリカーゼとして機能しない(すなわち、移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg
2+が備わっているときにポリヌクレオチドに沿って移動しない)ように修飾されることがある。そのような修飾は、当技術分野において公知である。例えば、ヘリカーゼ中のMg
2+結合ドメインの修飾は、ヘリカーゼとして機能しない変異体を概してもたらす。これらのタイプの変異体は、分子ブレーキとして作用することがある。好ましい分子ブレーキは、TrwC Cba−Q594A(突然変異Q594Aを有する配列番号25)である。他のものは、配列番号25に関して上で論じている。この変異体は、ヘリカーゼとして機能しない(すなわち、ポリヌクレオチドと結合するが、移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg
2+が備わっているときにポリヌクレオチドに沿って移動しない)。1つまたは複数の分子ブレーキヘリカーゼを、上で論じた任意の方向および/またはモードで使用することができる。
【0111】
配列番号9、11、13、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25のアミノ酸配列の全長にわたって、変異体は、好ましくは、アミノ酸同一性に基づきその配列と少なくとも50%相同であることになる。より好ましくは、変異体ポリペプチドは、アミノ酸同一性に基づき、配列全体にわたって配列番号9、11、13、15、17、18、19、20、21、22、23、24または25のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であることがある。200以上、例えば230、250、270、280、300、400、500、600、700、800、900または1000以上の連続するアミノ酸のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性(「確かな相同性(hard homology)」)があることがある。相同性は、上で記載したように判定される。変異体は、下の配列番号2および4に関しては、上で論じた点のいずれかにおいて野生型配列とは異なることがある。
【0112】
2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質が使用される場合、それらは同じであってもよく、または異なってもよい。上で論じたタンパク質のいずれの組み合わせを使用してもよい。例えば、2つ以上のタンパク質は、ヘリカーゼなどの同じタンパク質の異なる変異体であってもよい。2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質は、1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数のポリメラーゼを好ましくは含む。
【0113】
2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質が使用される場合、それらは互いに付着されることがある。2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質は、互いに共有結合で付着されることがある。ポリヌクレオチド結合タンパク質はいずれの順序で、およびいずれの方法を用いて付着させてもよい。本発明において使用するための好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願番号PCT/GB2013/051925(WO2014/013260として公開された)、PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)およびPCT/GB2013/051928(WO2014/013262として公開された)に、ならびに2013年10月18日に出願された英国出願第1318464.3号に記載されている。
【0114】
2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質が使用される場合、それらは、好ましくは、ポリヌクレオチドによる以外に互いに付着していない。2つ以上のポリヌクレオチド結合タンパク質は、より好ましくは、互いに共有結合で付着していない。
【0115】
1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキ
場合によっては、本発明の特性評価方法は、1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキの使用に関わることがある。標的ポリヌクレオチドをポアと接触させるとき、1つまたは複数のヘリカーゼと1つまたは複数の分子ブレーキを一緒にし、両方がポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御する。
【0116】
1つまたは複数のヘリカーゼは、上で論じたもののいずれであってもよい。1つまたは複数の分子ブレーキは、ポリヌクレオチドと結合してそのポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を遅速させるいずれの化合物または分子であってもよい。1つまたは複数の分子ブレーキは、ポリヌクレオチドと結合する1つまたは複数の化合物を好ましくは含む。1つまたは複数の化合物は、好ましくは、1つまたは複数の大環状分子である。好適な大環状分子としては、シクロデキストリン、カリックスアレーン、環状ペプチド、クラウンエーテル、ククルビツリル、ピラーアレーン、これらの誘導体またはそれら組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schneider, H-J. (1994) J. Am. Chem.Soc.116, 6081-6088に開示されているもののいずれであってもよい。この作用物質は、より好ましくは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキストリン(am
7−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン(am
1−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデキストリン(gu
7−βCD)である。
【0117】
1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数の一本鎖結合タンパク質(SSB)である。1つまたは複数の分子ブレーキは、より好ましくは、正味負電荷を有さないカルボキシ末端(C末端)領域を含む一本鎖結合タンパク質(SSB)、または(ii)そのC末端領域にC末端領域の正味負電荷を減少させる1つもしくは複数の修飾を含む修飾SSBである。1つまたは複数の分子ブレーキは、最も好ましくは、国際出願番号PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)に開示されているSSBのいずれかである。
【0118】
1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質である。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドと結合することができ、かつポアに対する、例えばポアを通る、その移動を制御することができる、いずれのタンパク質であってもよい。当技術分野においてタンパク質がポリヌクレオチドと結合するか否かを判定することは容易である。タンパク質は、概して、ポリヌクレオチドと相互作用し、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性を修飾する。タンパク質は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短いヌクレオチド鎖、例えばジもしくはトリヌクレオチドを形成することによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。その部分は、ポリヌクレオチドを配向させることによって、または特定の位置に移動させること、すなわち、その移動を制御することによって、ポリヌクレオチドを修飾することがある。
【0119】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素に由来する。1つまたは複数の分子ブレーキは、上で論じたポリヌクレオチドハンドリング酵素のいずれかに由来することがある。分子ブレーキとして作用するPhi29ポリメラーゼ(配列番号9)の修飾バージョンは、米国特許第5,576,204号において開示されている。分子ブレーキとして作用するPhi29ポリメラーゼ(配列番号9)の修飾バージョンは、下で開示される。1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくはヘリカーゼに由来する。
【0120】
ヘリカーゼに由来するいずれの数の分子ブレーキを使用してもよい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のヘリカーゼを分子ブレーキとして使用してもよい。2つ以上のヘリカーゼが分子ブレーキとして使用される場合、その2つ以上のヘリカーゼは、概して同じヘリカーゼである。2つ以上のヘリカーゼは、異なるヘリカーゼであってもよい。
【0121】
2つ以上のヘリカーゼは、上で言及したヘリカーゼの任意の組み合わせであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、2つ以上のDdaヘリカーゼであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、1つまたは複数のDdaヘリカーゼおよび1つまたは複数のTrwCヘリカーゼであってもよい。2つ以上のヘリカーゼは、同じヘリカーゼの異なる変異体であってもよい。
【0122】
2つ以上のヘリカーゼは、好ましくは、互いに付着されている。2つ以上のヘリカーゼは、より好ましくは、互いに共有結合で付着されている。ヘリカーゼはいずれの順序で、およびいずれの方法を用いて付着させてもよい。ヘリカーゼに由来する1つまたは複数の分子ブレーキは、少なくとも1つの立体構造でポリヌクレオチドがヘリカーゼから解離することができるポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口のサイズを低減させるように、好ましくは修飾される。これは、WO2014/013260において開示されている。
【0123】
本発明において使用するための好ましいヘリカーゼ構築物は、国際出願番号PCT/GB2013/051925(WO2014/013260として公開された)、PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)、PCT/GB2013/051928(WO2014/013262として公開された)およびPCT/GB2014/052736に記載されている。
【0124】
1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードで使用される場合(すなわち、1つまたは複数のヘリカーゼに移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg
2+が備わっているとき)、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性モードで使用される(すなわち、移動を助長するための必要成分の不在下で使用される、もしくは能動移動ができない)、(b)該1つもしくは複数の分子ブレーキが1つもしくは複数のヘリカーゼとは反対方向に移動する活性モードで使用される、または(c)該1つもしくは複数の分子ブレーキが1つもしくは複数のヘリカーゼと同じ方向に、1つもしくは複数のヘリカーゼより遅く移動する活性モードで使用される。
【0125】
1つまたは複数のヘリカーゼが不活性モードで使用される場合(すなわち、1つまたは複数のヘリカーゼに移動を助長するためのすべての必要成分、例えばATPおよびMg
2+が備わっていない、または能動移動できないとき)、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、(a)不活性モードで使用される(すなわち、移動を助長するための必要成分の不在下で使用される、もしくは能動移動ができない)、または(b)該1つもしくは複数の分子ブレーキがポリヌクレオチドに沿って、ポリヌクレオチドと同じ方向にポアに対して、例えばポアを通って移動する、活性モードで使用される。
【0126】
1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、それらを一緒にして両方がポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように、ポリヌクレオチドのいずれの位置に付着させてもよい。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、少なくとも1ヌクレオチド離れており、例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10,000、少なくとも50,000ヌクレオチド以上離れている。方法が、一方の末端にYアダプターおよび他方の末端にヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターが備わっている二本鎖ポリヌクレオチドの特性評価に関わる場合、1つまたは複数のヘリカーゼは好ましくはYアダプターに付着され、1つまたは複数の分子ブレーキは好ましくは架橋部分アダプターに付着される。この実施形態において、1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、ポリヌクレオチドに結合するがヘリカーゼとして機能しないように修飾されている1つまたは複数のヘリカーゼである。Yアダプターに付着している1つまたは複数のヘリカーゼは、好ましくは、下でより詳細に論じるようにスペーサーで停止される。架橋部分アダプターに付着している1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくはスペーサーで停止されない。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、1つまたは複数のヘリカーゼが架橋部分に達したとき一緒にされる。1つまたは複数のヘリカーゼは、Yアダプターをポリヌクレオチドに付着させる前にYアダプターに付着させてもよく、またはYアダプターをポリヌクレオチドに付着させた後にYアダプターに付着させてもよい。1つまたは複数の分子ブレーキは、架橋部分アダプターをポリヌクレオチドに付着させる前に架橋部分アダプターに付着させてもよく、または架橋部分アダプターをポリヌクレオチドに付着させた後に架橋部分アダプターに付着させてもよい。
【0127】
1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、互いに付着されない。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、より好ましくは、互いに共有結合で付着されない。1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数の分子ブレーキは、好ましくは、国際出願番号PCT/GB2013/051925(WO2014/013260として公開された)、PCT/GB2013/051924(WO2014/013259として公開された)およびPCT/GB2013/051928(WO2014/013262として公開された)に、ならびに2013年10月18日に出願された英国出願第1318464.3号に記載されているように付着されない。
【0128】
1つまたは複数のポリメラーゼ
本発明の方法は、好ましくは、1つまたは複数のポリメラーゼを標的ポリヌクレオチドに付着させることに関わる。上または下で論じたポリメラーゼのいずれを使用してもよい。例えば、ポリメラーゼは、上で定義したような配列番号9もしくは31で示される配列またはその変異体を含むことがある。
【0129】
配列番号9の好ましい変異体としては、次の置換を含む変異体が挙げられるが、これらに限定されない:(a)G410CおよびP562C、(b)A411CおよびQ560C、(c)K402CおよびI94C、(d)A406CおよびE75C、ならびに(e)L412CおよびQ560C。配列番号9へのこれらのシステインの導入は、ヘリカーゼについて上で論じたようにポリメラーゼのポリヌクレオチド結合ドメイン内の開口サイズを低減させる、またはその開口を閉じる。(a)〜(e)の変異体を上で論じたような分子ブレーキとして使用してもよい。
【0130】
1つまたは複数のポリメラーゼを標的ポリヌクレオチド上に負荷したら、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用してその/それらのポリメラーゼに1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成させてもよい。これは、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリメラーゼを遊離ヌクレオチドの集団と、該標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して該ポリメラーゼが1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成する条件下で、接触させることを概して含む。好適な条件は、下で論じる。いずれの数のポリヌクレオチドが1つまたは複数のポリメラーゼによって形成されてもよい。1つまたは2つのポリヌクレオチドが好ましくは形成される。
【0131】
遊離ヌクレオチドの集団は、上および下で論じたヌクレオチドのいずれを含んでもよい。1つまたは複数のポリメラーゼによって形成される1つまたは複数のポリヌクレオチドの性質は、集団中の遊離ヌクレオチドに依存することになる。1つまたは複数のポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドと同じタイプの1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成することがある。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、本発明は、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリメラーゼが1つまたは複数のDNAポリヌクレオチドを形成するように、遊離DNAヌクレオチド(すなわち、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジンおよびデオキシメチルシチジンを含むヌクレオチド)の集団を使用することがある。1つまたは複数のポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドと異なるタイプの1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成することがある。例えば、標的ポリヌクレオチドがRNAである場合、本発明は、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリメラーゼが1つまたは複数のDNAポリヌクレオチドを形成するように、遊離DNAヌクレオチドの集団を使用することがある。1つまたは複数のポリメラーゼは、下でより詳細に論じるように、標的ポリヌクレオチドを修飾することがある。
【0132】
プライマーまたは3’ヘアピンは、ポリメラーゼ伸長の核形成点として概して使用される。1つまたは複数のポリメラーゼを本明細書中で論じる方法のいずれかで標的ポリヌクレオチドに付着させてもよい。1つまたは複数のポリメラーゼは、概して、1つまたは複数の負荷部分、例えば、1つもしくは複数のYアダプターおよび/または1つもしくは複数の架橋部分アダプター(例えば1つもしくは複数のヘアピンループアダプター)と結合した状態で供給される。
【0133】
本発明の方法は、好ましくは、本発明に従って1つまたは複数のポリメラーゼを一本鎖標的ポリヌクレオチドに付着させるステップと、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリメラーゼにポリヌクレオチドを形成させ、それによって二本鎖ポリヌクレオチドを生成するステップとを含む。二本鎖ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチド(テンプレート)と、1つまたは複数のポリメラーゼによって形成された相補ポリヌクレオチドとを含む。このようにして形成された二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖をヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターと連結させてもよく、二本鎖ポリヌクレオチドの両方の鎖を下で論じるように特性評価してもよい。
【0134】
本発明は、特性評価用の標的ポリヌクレオチドを調製する方法を提供する。この方法は、本発明を用いて1つまたは複数のポリメラーゼを標的ポリヌクレオチドに付着させるステップと、次いで、標的ポリヌクレオチドをテンプレートとして使用し、1つまたは複数のポリメラーゼを使用して、1つまたは複数のさらなるポリヌクレオチドを生成するステップとを含む。標的ポリヌクレオチドを補完するポリヌクレオチドの生成は、上で論じたようにその特性評価を助長する。
【0135】
方法は、本発明に従って1つまたは複数のポリメラーゼを二本鎖標的ポリヌクレオチドに付着させるステップと、標的ポリヌクレオチドの各鎖をテンプレートとして使用して1つまたは複数のポリメラーゼに1つまたは複数のポリヌクレオチドを形成させるステップとを好ましくは含む。
【0136】
好ましい実施形態において、二本鎖標的ポリヌクレオチドの2本の鎖は、一方の末端が架橋部分アダプター(例えばヘアピンループアダプター)によって連結され、別の架橋部分を含む負荷部分を使用して二本鎖標的ポリヌクレオチドの他方の末端に1つまたは複数のポリメラーゼが付着される。負荷部分は、Yアダプターであってもよい。他の架橋部分は、1つまたは複数のポリメラーゼが結合しているYアダプターの鎖の末端にヘアピンループによって概して形成される。負荷部分は、1つまたは複数のポリメラーゼが結合している鎖とは反対の鎖と好ましくは結合している1つまたは複数のヘリカーゼを含むことがある。この実施形態において、1つまたは複数のポリメラーゼは、二本鎖構築物を生成することになり、構築物の2本の鎖は、一方の末端が架橋部分によって連結され、構築物の各鎖は、標的ポリヌクレオチドの1本の鎖と、1つまたは複数のポリメラーゼによって形成される相補ポリヌクレオチドとを含む。これを
図17に示す。二本鎖構築物の2本の鎖を下で論じるように特性評価してもよい。この実施形態において、元の標的ポリヌクレオチドの各鎖は、2回特性評価される。1つまたは複数のポリメラーゼは、二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。1つまたは複数のポリメラーゼは、分子ブレーキであってもよい。負荷部分が1つまたは複数のヘリカーゼも含む場合、1つまたは複数のヘリカーゼは、二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のポリメラーゼおよび1つまたは複数のヘリカーゼは、両方とも、二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。
【0137】
別の実施形態において、二本鎖標的ポリヌクレオチドの2本の鎖は、架橋部分アダプター(例えばヘアピンループアダプター)によっていずれの末端も連結されない。1つまたは複数のポリメラーゼは、二本鎖標的ポリヌクレオチドの各末端に、架橋部分を含む負荷部分を使用して付着される。各末端の負荷部分は、同じであってもよいし、または異なってもよい。各負荷部分はYアダプターであってもよい。架橋部分は、1つまたは複数のポリメラーゼが結合しているYアダプターの鎖の末端にヘアピンループによって概して形成される。負荷部分は、1つまたは複数のポリメラーゼが結合している鎖とは反対の鎖と好ましくは結合している1つまたは複数のヘリカーゼを含むことがある。この実施形態において、1つまたは複数のポリメラーゼは、2つの二本鎖構築物を生成することになり、各構築物の2本の鎖は、一方の末端が架橋部分によって連結され、各構築物は、標的ポリヌクレオチドの1本の鎖と、1つまたは複数のポリメラーゼによって形成される相補ポリヌクレオチドとを含む。これを
図18に示す。2つの構築物を下で論じるように特性評価してもよい。この実施形態において、元の標的ポリヌクレオチドの各鎖は、2回、各構築物において1回、特性評価される。1つまたは複数のポリメラーゼは、各二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御することがある。1つまたは複数のポリメラーゼは、分子ブレーキであってもよい。各負荷部分が1つまたは複数のヘリカーゼも含む場合、1つまたは複数のヘリカーゼは、各二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のポリメラーゼおよび1つまたは複数のヘリカーゼは、両方とも、各二本鎖構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。
【0138】
別の実施形態において、二本鎖標的ポリヌクレオチドの2本の鎖は、両方の末端が架橋部分アダプター(例えばヘアピンループアダプター)によって連結されて環状構築物を形成し、1つまたは複数のポリメラーゼが各架橋部分アダプターに付着される。架橋部分アダプターの一方または両方が、架橋部分アダプターにハイブリダイズされるポリヌクレオチドと好ましくは結合している1つまたは複数のヘリカーゼを含むことがある。このポリヌクレオチドの架橋アダプター部分へのハイブリダイゼーションによって形成される二本鎖ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のポリメラーゼによってポリメラーゼ伸長のための核形成を形成することがある。この実施形態において、環状構築物の各末端の1つまたは複数のポリメラーゼは、該環状構築物をテンプレートとして使用し、標的ポリヌクレオチドの各鎖の複数のコピーを含む構築物を生成することになる。1つまたは複数のポリメラーゼの2つの群があるので、各標的ポリヌクレオチドから2つの構築物が生成されることになる。これを
図19に示す。各構築物を下で論じるように特性評価してもよい。各構築物は、標的ポリヌクレオチドの各鎖の複数のコピーを概して含むことになる。構築物中のコピーが一緒にハイブリダイズして二本鎖領域を形成することがある。この実施形態において、元の標的ポリヌクレオチドの各鎖は、1つまたは複数のポリメラーゼがそれらを複製する回数と同じ回数特性評価されることになる。1つまたは複数のポリメラーゼは、構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御することがある。1つまたは複数のポリメラーゼは、分子ブレーキであってもよい。架橋部分アダプターが1つまたは複数のヘリカーゼも含む場合、1つまたは複数のヘリカーゼは、構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のポリメラーゼおよび1つまたは複数のヘリカーゼは、両方とも、構築物のポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するために使用されることがある。
【0139】
1つまたは複数のポリメラーゼを使用して1つまたは複数のポリヌクレオチドを生成した後、方法は、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドを膜貫通ポアと、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するように接触させるステップを好ましくは含む。方法は、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドを膜貫通ポアと、1つまたは複数のポリメラーゼが標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように接触させるステップを好ましくは含む。1つまたは複数のヘリカーゼを使用して、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御してもよい。1つまたは複数のヘリカーゼを、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドに、上で論じたように付着させてもよい。
【0140】
方法は、標的ポリヌクレオチドおよび1つまたは複数のポリヌクレオチドがポアに対して移動するときに、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を示す1つまたは複数の測定値を取り、それによって標的ポリヌクレオチドを特性評価するステップも含む。下で論じる実施形態のいずれも、この方法に適用可能である。
【0141】
負荷部分
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、1つまたは複数の負荷部分と結合した状態で(または、それに付着した状態で)供給される。好ましい実施形態において、方法は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を1つまたは複数の負荷部分と結合させる(または、それに付着させる)ステップをさらに含む。
【0142】
各負荷部分は、標的ポリヌクレオチドに付着させることができるいずれの部分であってもよい。各負荷部分は、ポリヌクレオチド結合タンパク質が標的ポリヌクレオチドと結合することがあり、かつ該負荷部分が標的ポリヌクレオチドに付着することができるのであれば、いずれの長さであってもよい。
【0143】
1つまたは複数の負荷部分は、好ましくは合成または人工のものである。1つまたは複数の負荷部分は、好ましくは非天然のものである。
【0144】
好適な負荷部分としては、高分子リンカー、化学的リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。1つまたは複数の負荷部分は、ポリヌクレオチドまたは負荷ポリヌクレオチドを好ましくは含む。そのような実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドと結合(または、それに付着)している。上で論じたポリヌクレオチドのいずれを使用してもよい。好ましくは、1つまたは複数の負荷部分は、DNA、RNA、修飾DNA(例えば脱塩基DNA)、RNA、PNA、LNA、BNAまたはPEGを含む。1つまたは複数の負荷部分は、より好ましくは、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAを含む。
【0145】
1つまたは複数の負荷部分は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が結合(または付着)している一本鎖ポリヌクレオチドを好ましくは含む。
【0146】
1つまたは複数の負荷部分の少なくとも1つは、好ましくはYアダプターである。Yアダプターは、二重カップリングに関するセクションで定義しており、リーダー配列を含むことがある。
【0147】
1つまたは複数の負荷部分の少なくとも1つは、好ましくは架橋部分である。架橋部分は、最も好ましくは、ヘアピンループまたはヘアピンループアダプターである。好適なヘアピンループアダプターは、当技術分野において公知の方法を用いて設計することができる。ヘアピンループは、いずれの長さであってもよい。負荷部分として使用される場合、ヘアピンループは、概して400ヌクレオチド以下、例えば、350ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下、250ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、150ヌクレオチド以下、100ヌクレオチド以下、90ヌクレオチド以下、80ヌクレオチド以下、70ヌクレオチド以下、60ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、30ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、または10ヌクレオチド以下の長さである。ヘアピンループは、好ましくは、約1〜400、2〜300、5〜200、6〜100ヌクレオチドの長さである。ヘアピンループは、ポリヌクレオチドの2つの相補的部分がハイブリダイズして二本鎖配列(ステムと呼ばれる)を形成すると形成される。負荷部分として使用される場合、ヘアピンループのステムは、好ましくは200ヌクレオチド対以下、例えば、150ヌクレオチド対以下、100ヌクレオチド対以下、90ヌクレオチド対以下、80ヌクレオチド対以下、70ヌクレオチド対以下、60ヌクレオチド対以下、50ヌクレオチド対以下、40ヌクレオチド対以下、30ヌクレオチド対以下、20ヌクレオチド対以下、または10ヌクレオチド対以下の長さである。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、概して、ヘアピンのループと結合する、すなわちステムと結合しない。
【0148】
標的ポリヌクレオチドが二本鎖状である場合、1つまたは複数の負荷部分は、Yアダプターと、場合により架橋部分、例えばヘアピンループアダプターとを好ましくは含む。負荷部分の少なくとも1つまたは複数がYアダプターである場合、その負荷部分を、結合または付着しているいずれのポリヌクレオチド結合タンパク質も有さない架橋アダプターと併用してもよい。
【0149】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質がヘリカーゼに由来する場合、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、1つまたは複数の負荷部分上の1つまたは複数のスペーサーで停止されることがある。これらのことは、下でより詳細に論じる。
【0150】
いずれの数の1つまたは複数の負荷部分を使用してもよい。方法は、結合(付着)された1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を各々が有する2つ以上の負荷部分を付着させるステップを含むことがある。例えば、負荷部分は、標的ポリヌクレオチドの各末端に付着されることがある。そのような実施形態において、一方の負荷部分は、好ましくはYアダプターであり、他方の負荷部分は、ヘアピンループアダプターなどの架橋部分であってもよい。これらのことは、下でより詳細に論じる。
【0151】
1つまたは複数の負荷部分は、いずれの様式で標的ポリヌクレオチドに付着されていてもよい。1つまたは複数の負荷部分は、好ましくは、標的ポリヌクレオチドに共有結合で付着される。
【0152】
1つまたは複数の負荷部分は、最も好ましくは、標的ポリヌクレオチドにライゲートされる。1つまたは複数の負荷部分は、ポリヌクレオチドのいずれかの末端、すなわち5’または3’末端にライゲートされることがある。負荷部分は、標的ポリヌクレオチドの両方の末端にライゲートされることがある。当技術分野において公知のいずれの方法を用いて1つまたは複数の負荷部分をポリヌクレオチドにライゲートしてもよい。1つまたは複数の負荷部分は、ATPの不在下で、またはATPではなくγ−S−ATP(ATPγS)を使用して、ポリヌクレオチドにライゲートされることがある。
【0153】
1つまたは複数の負荷部分は、リガーゼ、例えばT4 DNAリガーゼ、大腸菌(E. coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼおよび9
ON DNAリガーゼを使用してライゲートされることがある。リガーゼは、好ましくは、実施例3に記載の条件下で使用される。
【0154】
方法は、方法条件からリガーゼを除去するステップをさらに含む。
【0155】
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、負荷部分が標的ポリヌクレオチドに付着されてしまうとその負荷部分と結合(に付着)したままである。それらを本発明に従って付着した後、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を1つまたは複数の負荷部分から解離してもよい。
【0156】
膜
いずれの膜を本発明に従って使用してもよい。好適な膜は、当技術分野において周知である。膜は、好ましくは両親媒性層である。両親媒性層は、親水性と親油性の両方を有する両親媒性分子、例えばリン脂質から形成される層である。両親媒性分子は、合成のものであってもよく、または天然に存在するものであってもよい。天然に存在しない両親媒性物質、および単層を形成する両親媒性物質は、当技術分野において公知であり、例えば、ブロック共重合体を含む(Gonzalez-Perez et al., Langmuir, 2009, 25, 10447-10450)。ブロック共重合体は、2つ以上の単量体サブユニットが一緒に重合されて単一高分子鎖を作っている高分子材料である。ブロック共重合体は、各単量体サブユニットが一因となる特性を概して有する。しかし、ブロック共重合体は、個々のサブユニットから形成された重合体が有さない固有の特性を有することがある。ブロック共重合体は、単量体サブユニットの1つが疎水性(すなわち親油性)であるが他のサブユニットは水性媒体中にあるとき親水性であるように、工学的に操作することができる。この場合、ブロック共重合体は、両親媒性を有することがあり、生体膜を模倣する構造を形成することがある。ブロック共重合体は、(2つの単量体サブユニットからなる)ジブロックであることがあるが、2つより多くの単量体サブユニットから、両親媒性物質として挙動するより複雑な配置を形成するように、構築されることもある。共重合体は、トリブロック、テトラブロックまたはペンタブロック共重合体であることがある。膜は、好ましくは、トリブロック共重合体膜である。
【0157】
古細菌双極性テトラエーテル脂質は、脂質が単層膜を形成するように構築されている天然に存在する脂質である。これらの脂質は、厳しい生物環境で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌および好酸菌において一般に見いだされる。それらの安定性は、最終二重層の融合された性質に由来すると考えられている。親水性−疎水性−親水性の一般モチーフを有するトリブロック重合体を生成することによってこれらの生物学的エンティティーを模倣するブロック共重合体材料を構築することは容易である。この材料は、脂質二重層と同様に挙動し、かつ小胞から層状の膜までの範囲の相挙動を包含する、単量体膜を形成しうる。これらのトリブロック共重合体から形成される膜は、生体脂質膜に勝るいくつかの利点を保持する。トリブロック共重合体を合成するので、まさにその構築を注意深く制御して、膜を形成するためにならびにポアおよび他のタンパク質と相互作用するために必要な的確な鎖長および特性を得ることができる。
【0158】
ブロック共重合体は、脂質副素材として分類されないサブユニットから構築されることもある。例えば、疎水性重合体は、シロキサンまたは他の非炭化水素系単量体から作製されることがある。ブロック共重合体の親水性サブセクションは、低いタンパク質結合特性を有することもでき、この低いタンパク質結合特性によって、未加工の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の生成が可能になる。このヘッド基ユニットは、非古典的脂質ヘッド基から誘導されることもある。
【0159】
トリブロック共重合体膜は、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境安定性、例えば、より高い動作温度またはpH範囲も有する。ブロック共重合体の合成性は、重合体に基づく膜を広範な用途に合わせてカスタマイズするためのプラットフォームをもたらす。
【0160】
膜は、最も好ましくは、国際出願番号PCT/GB2013/052766またはPCT/GB2013/052767において開示されている膜の1つである。
【0161】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドのカップリングを助長するように化学的に修飾されるまたは官能化されることがある。
【0162】
両親媒性層は、単層であってもよく、または二重層であってもよい。両親媒性層は、概して平面状である。両親媒性層は、湾曲されることがある。両親媒性層は、支持されることがある。
【0163】
両親媒性膜は、概して自然移動性であり、本質的に二次元流体としておおよそ10
−8cm・s
−1の脂質拡散速度で動作する。これは、検出要素およびカップリングされたポリヌクレオチドが両親媒性膜内で概して移動することができることを意味する。
【0164】
膜は、脂質二重層であってもよい。脂質二重層は、細胞膜のモデルであり、ある範囲の実験研究用の優れたプラットフォームとして役立つ。例えば、脂質二重層をシングルチャンネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査に使用することができる。あるいは、脂質二重層をバイオセンサーとして使用して、ある範囲の物質の存在を検出することができる。脂質二重層は、いずれの脂質二重層であってもよい。好適な脂質二重層としては、平面状脂質二重層、支持二重層またはリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。脂質二重層は、好ましくは平面状脂質二重層である。好適な脂質二重層は、国際出願番号PCT/GB08/000563(WO2008/102121として公開された)、国際出願番号PCT/GB08/004127(WO2009/077734として公開された)および国際出願番号PCT/GB2006/001057(WO2006/100484として公開された)に開示されている。
【0165】
脂質二重層を形成する方法は、当技術分野において公知である。好適な方法は、実施例で開示する。脂質二重層は、脂質単層が水溶液/空気界面に、その界面に対して垂直である開口部のいずれかの側を超えて担持される、モンタル(Montal)およびミューラー(Mueller)の方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 1972; 69: 3561-3566)によって、一般に形成される。通常、先ず脂質を有機溶媒に溶解し、次いで溶媒の液滴を開口部のいずれかの側の水性溶液の表面で蒸発させることによって、脂質を水性電解質溶液の表面に付加する。有機溶媒を蒸発させたら、開口部のいずれかの側の溶液/空気界面を、二重層が形成されるまで、開口部を超えて物理的に上下に移動させる。平面状脂質二重層は、膜の開口部を横断して形成されることもあり、または開口を横断して凹所内に形成されることもある。
【0166】
モンタルおよびミューラーの方法は、タンパク質ポア挿入に好適である良質脂質二重層を形成する、対費用効果の高い、比較的容易な方法であるため、評判がよい。他の一般的な二重層形成方法としては、先端部浸漬(tip-dipping)、二重層の塗装、およびリポソーム二重層のパッチクランプが挙げられる。
【0167】
先端部浸漬二重層形成は、脂質の単層を担持している試験溶液の表面に開口部表面(例えばピペット先端部)を触れさせることを必要とする。この場合もやはり、有機溶媒に溶解された脂質の液滴を溶液表面で蒸発させることによって先ず脂質単層が溶液/空気界面に作られる。次いで、二重層はラングミュア(Langumur)・シェーファー(Schaefer)法によって形成され、溶液表面に対して開口部を移動させる機械的自動化を必要とする。
【0168】
塗装される二重層については、有機溶媒に溶解された脂質の液滴が開口部に直接塗布され、その開口部が水性試験溶液に沈められる。脂質溶液は、塗装用刷毛または同等物を使用して開口部全面に薄く塗られる。溶媒が薄くなることで、脂質二重層が形成される結果となる。しかし、二重層からの溶媒の完全除去は困難であり、それ故、この方法によって形成される二重層は、安定性がより低く、電気化学的測定中にノイズをより生じやすい。
【0169】
パッチクランプは、生体細胞膜の研究に一般に使用される。細胞膜が吸引によってピペットの末端部にクランプされ、膜のパッチがその開口部を覆って付着される。この方法は、リポソームをクランプする(その結果、リポソームが破裂してピペットの開口部全面を封止する脂質二重層を残す)ことによる脂質二重層の生成に適応されている。方法は、安定した巨大な単層状のリポソームと、ガラス表面を有する材料における小開口部の作製とを必要とする。
【0170】
リポソームは、超音波処理、押出しまたはモザファリ(Mozafari)法(Colas et al.(2007) Micron 38:841-847)によって形成することができる。
【0171】
好ましい実施形態において、脂質二重層は、国際出願番号PCT/GB08/004127(WO2009/077734として公開された)に記載されているように形成される。有利なこととして、この方法では脂質二重層が乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態において、脂質二重層は、WO2009/077734(PCT/GB08/004127)に記載されているように開口を横断して形成される。
【0172】
脂質二重層は、2つの対向する脂質層から形成される。2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性の内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、その二重層の両面の水性環境に向かって外側に向いている。二重層は、いくつかの脂質相で存在することがあり、そのような脂質相としては、脂質無秩序相(流体層状)、液体秩序相、固体秩序相(層状ゲル相、インターデジティテッドゲル相)および平面状二重層結晶(層状サブゲル相、層状結晶相)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
脂質二重層を形成するいずれの脂質組成物を使用してもよい。脂質組成物は、表面電荷、膜タンパク質を支持する能力、充填密度または機械的特性などの、必要な特性を有する脂質二重層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1種または複数種の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質組成物は、100種以下の脂質を含有することができる。脂質組成物は、好ましくは、1〜10種の脂質を含有する。脂質組成物は、天然に存在する脂質および/または人工脂質を含むことがある。
【0174】
脂質は、ヘッド基と、界面部分と、同じであってもまたは異なってもよい2つの疎水性テール基とを概して含む。好適なヘッド基としては、中性ヘッド基、例えばジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)、双性イオン性ヘッド基、例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびスフィンゴミエリン(SM)、負の電荷を有するヘッド基、例えばホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リン酸(PA)およびカルジオリピン(CA)、ならびに正の電荷を有するヘッド基、例えばトリメチルアンモニウム−プロパン(TAP)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な界面部分としては、天然に存在する界面部分、例えば、グリセロール系またはセラミド系部分が挙げられるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基としては、飽和炭化水素鎖、例えばラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)およびアラキドン酸(n−エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えばオレイン酸(シス−9−オクタデカン酸)、ならびに分岐炭化水素鎖、例えばフィタノイルが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素鎖の鎖長ならびに不飽和炭化水素鎖中の二重結合の位置および数は、様々でありうる。分岐炭化水素鎖の鎖長ならびに分岐炭化水素鎖中のメチル基などの分枝の位置および数は、様々でありうる。疎水性テール基を界面部分にエーテルまたはエステルとして連結することができる。脂質は、ミコール酸であってもよい。
【0175】
脂質を化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基またはテール基は、化学的に修飾されることがある。ヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質としては、PEG修飾脂質、例えば1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]、官能化PEG脂質、例えば1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3ホスホエタノールアミン−N−[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]、ならびにコンジュゲーション用に修飾された脂質、例えば1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(スクシニル)および1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(ビオチニル)が挙げられるが、これらに限定されない。テール基が化学的に修飾されている好適な脂質としては、重合性脂質、例えば1,2−ビス(10,12−トリコサジイノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、フッ素化脂質、例えば1−パルミトイル−2−(16−フルオロパルミトイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、重水素化脂質、例えば1,2−ジパルミトイル−D62−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、およびエーテル連結脂質、例えば1,2−ジ−O−フィタニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが挙げられるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを助長するように化学的に修飾されるまたは官能化されることがある。
【0176】
両親媒性層、例えば脂質組成物は、層の特性に影響を及ぼす1つまたは複数の添加剤を概して含む。好適な添加剤としては、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ミリスチン酸およびオレイン酸、脂肪アルコール、例えばパルミチン酸アミコール、ミリスチン酸アルコールおよびオレイン酸アルコール、ステロール、例えばコレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロールおよびスチグマステロール、リゾリン脂質、例えば1−アシル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ならびにセラミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
別の好ましい実施形態において、膜は固体層である。固体層は、有機材料と無機材料両方から形成することができ、そのような材料としては、マイクロエレクトロニクス材料、絶縁材料、例えばSi
3N
4、Al
2O
3およびSiO、有機および無機重合体、例えば、ポリアミド、プラスチック、例えばTeflon(登録商標)またはエラストマー、例えば二成分付加硬化シリコーンゴム、およびガラスが挙げられるが、これらに限定されない。固体層は、グラフェンから形成されることがある。好適なグラフェン層は、国際出願番号PCT/US2008/010637(WO2009/035647として公開された)に開示されている。
【0178】
方法は、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二重層、または(iii)ポアが挿入された細胞を使用して、概して行われる。方法は、人工トリブロック共重合体層などの人工両親媒性層を使用して、概して行われる。層は、他の膜貫通および/または膜内タンパク質ならびに他の分子をポアに加えて含むことがある。好適な装置および条件は、下で論じる。本発明の方法は、概してインビトロで行われる。
【0179】
カップリング
1つまたは複数の負荷部分は、膜とカップリングすることができる1つまたは複数のアンカーを好ましくは含む。本発明に従って付着されると、1つまたは複数のアンカーは、標的ポリヌクレオチドを膜とカップリングすることができる。
【0180】
本発明の特性評価方法において、標的ポリヌクレオチドは、好ましくは、1つまたは複数のアンカーを使用して膜とカップリングされる。いずれの公知の方法を用いて標的ポリヌクレオチドを膜とカップリングしてもよい。
【0181】
各アンカーは、1つまたは複数の負荷部分とカップリング(または結合)する基、および膜とカップリング(または結合)する基を含む。各アンカーは、部分および/または膜と共有結合でカップリング(または結合)することがある。
【0182】
各部分は、2、3、4以上のアンカーなど、いずれの数のアンカーを含んでもよい。例えば、各々のアンカーが部分および膜によって両方のポリヌクレオチドと別々にカップリング(または結合)する、2つのアンカーを使用して、1つの標的ポリヌクレオチドを膜とカップリングしてもよい。
【0183】
膜が、両親媒性層、例えば、共重合体膜または脂質二重層である場合、1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、膜中に存在するポリペプチドアンカー、および/または膜中に存在する疎水性アンカーを含む。疎水性アンカーは、好ましくは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブ、ポリペプチド、タンパク質またはアミノ酸、例えばコレステロール、パルミチン酸エステルまたはトコフェロールである。好ましい実施形態において、1つまたは複数のアンカーは検出要素ではない。
【0184】
膜の成分、例えば、両親媒性分子、共重合体または脂質は、1つまたは複数のアンカーを形成するように化学的に修飾されるまたは官能化されることがある。好適な化学的修飾、および膜の成分を官能化する好適な方法の例は、下でより詳細に論じる。膜成分の任意の比率、例えば、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%または100%を官能化してもよい。
【0185】
ポリヌクレオチドを膜とカップリングするために使用される1つまたは複数のアンカーは、好ましくはリンカーを含む。1つまたは複数のアンカーは、1つまたは複数、例えば2、3、4以上のリンカーを含むことがある。1つのリンカーを使用して、1つより多く、例えば2、3、4以上のポリヌクレオチドを膜とカップリングしてもよい。
【0186】
好ましいリンカーとしては、重合体、例えばポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖類およびポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。これらのリンカーは、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、または環状であってもよい。例えば、リンカーは、環状ポリヌクレオチドであることがある。ポリヌクレオチドは、環状ポリヌクレオチドリンカーにおける相補配列にハイブリダイズすることがある。
【0187】
1つもしくは複数のアンカーまたは1つもしくは複数のリンカーは、切断または破壊することができる成分、例えば、制限部位または光解離性基を含むことがある。
【0188】
官能化されたリンカー、およびそれらが分子をカップリングできる方法は、当技術分野において公知である。例えば、マレイミド基で官能化されたリンカーは、タンパク質中のシステイン残基と反応して、該システイン残基に付着することになる。本発明に関して、タンパク質は、膜中に存在することもあり、または1つもしくは複数の負荷部分とカップリング(もしくは結合)するために使用されることもある。このことは、下でより詳細に論じる。
【0189】
ポリヌクレオチドの架橋は、「鍵と鍵穴」配置を用いて回避することができる。各リンカーの1つの末端のみが一緒に反応してより長いリンカーを形成することがあり、リンカーの他の末端は、各々、負荷部分または膜とそれぞれ反応する。そのようなリンカーは、国際出願番号PCT/GB10/000132(WO2010/086602として公開された)に記載されている。
【0190】
下で論じるシークエンシング実施形態ではリンカーの使用が好ましい。ポリヌクレオチドが、検出要素と相互作用しているときにはアンカップリングしない(すなわち、ステップ(b)でも(e)でもアンカップリングしない)という意味で永続的に膜と直接カップリングされている場合には、膜と検出要素の間の距離のためシークエンシング実行をポリヌクレオチドの末端まで継続することができないので、一部の配列データが失われることになる。リンカーを使用する場合には、ポリヌクレオチドを完了まで処理することができる。
【0191】
カップリングは、永続的または安定性であることがある。言い換えれば、カップリングは、ポリヌクレオチドが、ポアと相互作用すると、膜とカップリングされたままであるようなカップリングであることがある。
【0192】
カップリングは、一時的であることがある。言い換えれば、カップリングは、ポリヌクレオチドが、ポアと相互作用すると、膜から分離されうるようなカップリングであることがある。
【0193】
アプタマー検出などの特定の用途には、カップリングの一時的性質が好ましい。永続的または安定性リンカーが、ポリヌクレオチドの5’または3’末端のいずれかに直接付着され、リンカーが、膜と膜貫通ポアのチャネルとの間の距離より短い場合には、シークエンシング実行をポリヌクレオチドの末端まで継続することができないので、一部の配列データが失われることになる。カップリングが一時的である場合には、カップリングされた末端から無作為に膜がなくなると、ポリヌクレオチドを完了まで処理することができる。永続的/安定性または一時的連結を形成する化学基は、下でより詳細に論じる。コレステロールまたは脂肪アシル鎖を使用して、ポリヌクレオチドが両親媒性層またはトリブロック共重合体膜と一時的にカップリングされることがある。6〜30個の炭素原子の長さを有する任意の脂肪アシル鎖、例えば、ヘキサデカン酸を使用してもよい。
【0194】
好ましい実施形態において、1つまたは複数のアンカーをトリブロック共重合体膜または脂質二重層などの両親媒性層とカップリングすることができる。核酸の合成脂質二重層へのカップリングは、様々な異なる繋留戦略を用いて以前に行われている。これらのことを下の表1に要約する。
【0196】
合成ポリヌクレオチドおよび/またはリンカーは、コレステロール、トコフェロール、パルミチン酸エステル、チオール、脂質およびビオチン基などの好適なアンカー基の直接付加に容易に適合する修飾ホスホラミダイトを合成反応において使用して、官能化されることがある。これらの様々な付着化学によって、負荷部分への付着の一連の選択肢が得られる。様々な修飾基各々がわずかに異なる方法で負荷部分にカップリングし、カップリングは必ずしも永続的であるとは限らないため、膜へのポリヌクレオチドの滞留に異なる時間が費やされる。一時的カップリングの利点は、上で論じている。
【0197】
リンカーとのまたは官能化膜とのポリヌクレオチドのカップリングは、相補的反応性基またはアンカー基をポリヌクレオチド負荷部分に付加することができるという条件で、いくつかの他の手段によって果たすこともできる。ポリヌクレオチドのいずれかの末端への反応性基の付加は、以前に報告されている。T4ポリヌクレオチドキナーゼおよびATPγSを使用して、チオール基をssDNAまたはdsDNAの5’に付加することができる(Grant, G. P. and P. Z. Qin (2007)."A facile method for attaching nitroxide spin labels at the 5' terminus of nucleic acids." Nucleic Acids Res 35(10): e77)。T4ポリヌクレオチドキナーゼおよびγ−[2−アジドエチル]−ATPまたはγ−[6−アジドヘキシル]−ATPを使用して、アジド基をssDNAまたはdsDNAの5’リン酸エステルに付加することができる。チオールまたはクリックケミストリー使用して、チオール、ヨードアセトアミドOPSSもしくはマレイミド基(チオールに対して反応性)またはDIBO(ジベンゾシクロオクチン)もしくはアルキン基(アジドに対して反応性)のいずれかを含有するテザーをポリヌクレオチド負荷部分に共有結合で付着させることができる。ターミナルトランスフェラーゼを使用して、ビオチン、チオールおよびフルオロフォアなどの化学基のより多様な選択物を付加して、ssDNAの3’に修飾オリゴヌクレオチドを組み込むことができる(Kumar, A., P. Tchen, et al.(1988). "Nonradioactive labeling of synthetic oligonucleotide probes with terminal deoxynucleotidyl transferase." Anal Biochem 169(2): 376-82)。ストレプトアビジン/ビオチンおよび/またはストレプトアビジン/デスチオビオチンカップリングを任意の他のポリヌクレオチド負荷部分に使用してもよい。ターミナルトランスフェラーゼと好適に修飾されたヌクレオチド(例えばコレステロールまたはパルミチン酸エステル)を使用してアンカーがポリヌクレオチド負荷部分に直接付加されうることも可能でありうる。
【0198】
1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、負荷部分/ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションによって膜とカップリングすることができる。1つまたは複数のアンカーのハイブリダイゼーションによって、上で論じたような一時的手法でのカップリングが可能になる。ハイブリダイゼーションは、1つまたは複数のアンカーのいずれの部分に存在してもよく、例えば、1つもしくは複数のアンカーと負荷部分の間、1つもしくは複数のアンカー内、または1つもしくは複数のアンカーと膜の間に存在してもよい。例えば、リンカーは、一緒にハイブリダイズされている2つ以上のポリヌクレオチド、例えば、3、4または5つのポリヌクレオチドを含むことがある。1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチド負荷部分にハイブリダイズすることがある。1つまたは複数のアンカーは、(下で論じるように)ポリヌクレオチド負荷部分に直接、例えば、Yアダプターおよび/もしくはリーダー配列に直接、またはヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターに直接ハイブリダイズすることがある。あるいは、1つまたは複数のアンカーは、(下で論じるように)ポリヌクレオチドに付着されている、ポリヌクレオチド負荷部分に、Yアダプターおよび/もしくはリーダー配列に、または架橋部分アダプターにハイブリダイズされる1つまたは複数、例えば2つまたは3つの中間ポリヌクレオチド(または「スプリント」)にハイブリダイズされることがある。
【0199】
1つまたは複数のアンカーは、一本鎖ポリヌクレオチドを含むこともあり、または二本鎖ポリヌクレオチドを含むこともある。アンカーの一部分は一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド負荷部分にライゲートされていることがある。T4 RNAリガーゼIを使用する短いssDNA片のライゲーションは報告されている(Troutt, A. B., M. G. McHeyzer-Williams, et al.(1992)."Ligation-anchored PCR: a simple amplification technique with single-sided specificity."Proc Natl Acad Sci U S A 89(20): 9823-5)。あるいは、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかを二本鎖ポリヌクレオチドにライゲートし、次いで、2本の鎖を熱変性または化学変性によって分離することができる。二本鎖ポリヌクレオチドに対しては、その二重鎖の末端の一方もしくは両方に一本鎖ポリヌクレオチドの一部分を付加すること、または一方もしくは両方の末端に二本鎖ポリヌクレオチドを付加することが可能である。一本鎖ポリヌクレオチドの二本鎖ポリヌクレオチドへの付加については、この付加を、一本鎖ポリヌクレオチドの他の領域へのライゲーションの場合と同様にT4 RNAリガーゼIを使用して果たすことができる。次に、二本鎖ポリヌクレオチドの二本鎖ポリヌクレオチドへの付加については、ライゲーションは、ポリヌクレオチドおよび付加されたポリヌクレオチドそれぞれに関する相補的3’dA/dTテールを(多くの試料調製用途に鎖状体または二量体形成を防止するために常例的に行われているように)用いる、「平滑末端型」であることもあり、またはポリヌクレオチドの制限消化および適合性アダプターのライゲーションによって生成される「突出末端」の使用であることもある。次いで、二重鎖が融解されると、各一本鎖は、一本鎖ポリヌクレオチドが5’末端、3’末端でのライゲーションもしくは修飾に使用された場合には5’もしくは3’修飾、または二本鎖ポリヌクレオチドがライゲーションに使用された場合には両方の修飾、いずれかを有することになる。
【0200】
負荷部分が合成のものである場合、その化学合成中に1つまたは複数のアンカーを組み込むことができる。例えば、ポリヌクレオチド負荷部分を、反応性基が付着されているプライマーを使用して合成することができる。
【0201】
アデニル化ポリヌクレオチドは、アデノシン一リン酸をポリヌクレオチドの5’リン酸エステルに付着させるライゲーション反応における中間体である。この中間体を生成するために、NEBからの5’DNAアデニル化キットなどの様々なキットを利用できる。反応中に修飾ヌクレオチド三リン酸をATPで置換することによって、その際、ポリヌクレオチドの5’に反応性基(例えばチオール、アミン、ビオチン、アジドなど)の付加が可能でありうる。5’DNAアデニル化キットと好適に修飾されたヌクレオチド(例えばコレステロールまたはパルミチン酸エステル)を使用してアンカーがポリヌクレオチド負荷部分に直接付加されうることも可能でありうる。
【0202】
ゲノムDNAのセクションを増幅するための一般的な技法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用である。ここで、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、DNAの同じセクションのいくつかのコピーを生成することができ、この場合、各コピーについて、二重鎖における各鎖の5’は合成ポリヌクレオチドとなる。ポリメラーゼを利用することにより、単一または複数のヌクレオチドを一本鎖または二本鎖DNAの3’末端に付加することができる。使用することができるポリメラーゼの例としては、ターミナルトランスフェラーゼ、クレノウおよび大腸菌(E. coli)ポリ(A)ポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。反応中に修飾ヌクレオチド三リン酸をATPで置換することによって、その際、コレステロール、チオール、アミン、アジド、ビオチンまたは脂質などのアンカーを二本鎖ポリヌクレオチド負荷部分に組み込むことができる。したがって、増幅されたポリヌクレオチド負荷部分の各コピーは、アンカーを含有することになる。
【0203】
理想的には、負荷部分/ポリヌクレオチドは、該負荷部分/ポリヌクレオチドを官能化する必要なく、膜とカップリングされる。これは、1つもしくは複数のアンカー、例えばポリヌクレオチド結合タンパク質または化学基を膜とカップリングし、1つもしくは複数のアンカーを負荷部分/ポリヌクレオチドと相互作用させることによって、または膜を官能化することによって、果たすことができる。1つまたは複数のアンカーを本明細書に記載する方法のいずれかによって膜とカップリングしてもよい。特に、1つまたは複数のアンカーは、1つまたは複数のリンカー、例えばマレイミド官能化リンカーを含むことがある。
【0204】
1つまたは複数のアンカーは、一本鎖もしくは二本鎖ポリヌクレオチド、負荷部分内の特異的ヌクレオチド配列、または負荷部分内の修飾ヌクレオチドのパターン、または負荷部分上に存在する任意の他のリガンドとカップリング、結合または相互作用する任意の基を含むことができる。
【0205】
アンカーに使用するために好適な結合タンパク質としては、下に列挙するものを含めて、大腸菌(E. coli)一本鎖結合タンパク質、P5一本鎖結合タンパク質、T4 gp32一本鎖結合タンパク質、TOPO V dsDNA結合領域、ヒトヒストンタンパク質、大腸菌(E. coli)HU DNA結合タンパク質、および他の古細菌性、原核性または真核性一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド(または核酸)結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
負荷部分における特異的ヌクレオチド配列は、転写因子、リボソーム、エンドヌクレアーゼ、トポイソメラーゼまたは複製開始因子によって認識される配列であることがある。修飾ヌクレオチドのパターンは、メチル化または損傷のパターンであることがある。
【0207】
1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチド負荷部分とカップリングする、結合する、それにインターカレートする、または、それと相互作用する任意の基を含むことができる。この基は、静電相互作用、水素結合相互作用、またはファンデルワールス相互作用によって、ポリヌクレオチドにインターカレートすることもあり、またはポリヌクレオチドと相互作用することもある。そのような基としては、リシン単量体、ポリリシン(ssDNAまたはdsDNAと相互作用することになる)、臭化エチジウム(dsDNAにインターカレートすることになる)、ユニバーサル塩基またはユニバーサルヌクレオチド(任意のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる)およびオスミウム錯体(メチル化塩基と反応することができる)が挙げられる。したがって、ポリヌクレオチド負荷部分を膜と、その膜に付着している1つまたは複数のユニバーサルヌクレオチドを使用してカップリングしてもよい。1つまたは複数のリンカーを使用して各ユニバーサルヌクレオチドを膜とカップリングしてもよい。ユニバーサルヌクレオチドは、好ましくは、次の核酸塩基のうちの1つを含む:ヒポキサンチン、4−ニトロインドール、5−ニトロインドール、6−ニトロインドール、ホルミルインドール、3−ニトロピロール、ニトロイミダゾール、4−ニトロピラゾール、4−ニトロベンゾイミダゾール、5−ニトロインダゾール、4−アミノベンゾイミダゾールまたはフェニル(C6−芳香族環)。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、次のヌクレオシドのうちの1つを含む:2’−デオキシイノシン、イノシン、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、7−デアザ−イノシン、2−アザ−デオキシイノシン、2−アザ−イノシン、2−O’−メチルイノシン、4−ニトロインドール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロインドールリボヌクレオシド、5−ニトロインドール2’−デオキシリボヌクレオシド、5−ニトロインドールリボヌクレオシド、6−ニトロインドール2’−デオキシリボヌクレオシド、6−ニトロインドールリボヌクレオシド、3−ニトロピロール2’−デオキシリボヌクレオシド、3−ニトロピロールリボヌクレオシド、ヒポキサンチンの非環状糖類似体、ニトロイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、ニトロイミダゾールリボヌクレオシド、4−ニトロピラゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロピラゾールリボヌクレオシド、4−ニトロベンゾイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−ニトロベンゾイミダゾールリボヌクレオシド、5−ニトロインダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、5−ニトロインダゾールリボヌクレオシド、4−アミノベンゾイミダゾール2’−デオキシリボヌクレオシド、4−アミノベンゾイミダゾールリボヌクレオシド、フェニルC−リボヌクレオシド、フェニルC−2’−デオキシリボシルヌクレオシド、2’−デオキシネブラリン、2’−デオキシイソグアノシン、K−2’−デオキシリボース、P−2’−デオキシリボースおよびピロリジン。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、2’−デオキシイノシンを含む。ユニバーサルヌクレオチドは、より好ましくは、IMPまたはdIMPである。ユニバーサルヌクレオチドは、最も好ましくは、dPMP(2’−デオキシ−P−ヌクレオシド一リン酸)またはdKMP(N6−メトキシ−2,6−ジアミノプリン一リン酸)である。
【0208】
1つまたは複数のアンカーをフーグスティーン(Hoogsteen)水素結合(2つの核酸塩基が水素結合によって一緒に保持される)または逆フーグスティーン水素結合(一方の核酸塩基が他方の核酸塩基に対して180°回転される)によってポリヌクレオチド負荷部分とカップリング(または結合)してもよい。例えば、1つまたは複数のアンカーは、ポリヌクレオチド負荷部分とフーグスティーン水素結合または逆フーグスティーン水素結合を形成する、1つもしくは複数のヌクレオチド、1つもしくは複数のオリゴヌクレオチドまたは1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含むことがある。これらのタイプの水素結合は、第3のポリヌクレオチド鎖を二本鎖ヘリックスの周りに巻きつかせ、三重鎖を形成させる。1つまたは複数のアンカーは、二本鎖二重鎖と三重鎖を形成することによって、二本鎖ポリヌクレオチド負荷部分とカップリング(または結合)することがある。
【0209】
この実施形態において、膜成分の少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%または100%は官能化されることがある。
【0210】
1つまたは複数のアンカーがタンパク質を含む場合、例えば、タンパク質が、膜と適合性である外部疎水性領域を既に有するならば、アンカーは、さらなる官能化なしに直接膜内に係留することができるであろう。そのようなタンパク質の例としては、膜貫通タンパク質、膜内タンパク質および膜タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、タンパク質は、膜と適合性である遺伝子融合された疎水性領域とともに発現されることがある。そのような疎水性タンパク質領域は、当技術分野において公知である。
【0211】
1つまたは複数のアンカーは、好ましくは、膜と接触させる前に1つまたは複数の負荷部分と混合されるが、1つまたは複数のアンカーを膜と接触させ、その後、1つまたは複数の負荷部分と接触させてもよい。
【0212】
別の態様において、負荷部分は、上記の方法を用いて、特異的結合基が該負荷部分を認識できるように官能化されることがある。具体的には、負荷部分は、リガンド、例えば、ビオチン(ストレプトアビジンと結合させるため)、アミロース(マルトース結合タンパク質もしくは融合タンパク質と結合させるため)、Ni−NTA(ポリヒスチジンもしくはポリヒスチジンタグ付きタンパク質と結合させるため)、またはペプチド(例えば抗原)で官能化されることがある。
【0213】
好ましい実施形態によると、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列を含む負荷部分にポリヌクレオチドを付着させる場合、1つまたは複数のアンカーを使用してポリヌクレオチドを膜とカップリングすることがある。リーダー配列は、下でより詳細に論じる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列に付着(例えばライゲート)される。そのようなリーダー配列は、ホモ重合体型ポリヌクレオチドまたは脱塩基領域を含むことがある。リーダー配列は、1つまたは複数のアンカーに直接、または1つもしくは複数の中間ポリヌクレオチド(もしくはスプリント)を介して、ハイブリダイズするように概して設計される。そのような場合、1つまたは複数のアンカーは、リーダー配列内の配列または1つもしくは複数の中間ポリヌクレオチド(もしくはスプリント)内の配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を概して含む。そのような場合、1つまたは複数のスプリントは、リーダー配列内の配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を概して含む。
【0214】
化学的付着に使用される分子の例は、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)である。市販のキット(Thermo Pierce、部品番号22980)を使用して反応性基をポリヌクレオチドの5’に付加することもできる。好適な方法としては、ヒスチジン残基およびNi−NTAを使用する一時的親和性付着はもちろん、反応性システイン、リシンまたは非天然アミノ酸による、より強い共有結合性付着も挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
膜貫通ポア
本発明の特性評価方法は、標的ポリヌクレオチドが膜貫通ポアに対して移動するときに1つまたは複数の測定値を取るステップを含む。ポアを使用して様々な異なるタイプの測定を行ってもよい。この測定は、限定ではいが、電気的測定および光学的測定を含む。可能な電気的測定としては、電流測定、インピーダンス測定、トンネル効果測定(Ivanov AP et al., Nano Lett.2011 Jan 12; 11(1):279-85)、およびFET測定(国際出願WO2005/124888)が挙げられる。光学的測定は電気的測定と組み合わされることがある(Soni GV et al., Rev Sci Instrum.2010 Jan; 81(1):014301)。測定は、膜貫通電流測定、例えば、ポアを通って流れるイオン電流の測定であってもよい。
【0216】
電気的測定は、Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al, J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願WO2000/28312に記載されているような、標準的なシングルチャンネル記録装置を使用して行ってもよい。あるいは、電気的測定は、例えば、国際出願WO2009/077734および国際出願WO2011/067559に記載されているような、マルチチャンネルシステムを使用して行ってもよい。
【0217】
方法は、好ましくは、膜を横断して印加される電位を用いて行われる。印加される電位は、電圧電位であってもよい。あるいは、印加される電位は、化学的電位であってもよい。この方法の例は、両親媒性層などの膜を横断する塩勾配の使用である。塩勾配は、Holden et al., J Am Chem Soc.2007 Jul 11; 129(27):8650-5に開示されている。場合によっては、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときに検出要素(またはポア)を通過する電流を用いて、ポリヌクレオチドの配列を推定または判定する。これは鎖シークエンシングである。
【0218】
方法は、標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアと接触させるステップを含む。膜貫通ポアは、ある程度膜を交差する構造である。膜貫通ポアは、印加された電位によって駆動される水和イオンが膜を横断して流れるまたは膜内を流れることを可能にする。膜貫通ポアは、概して膜全体を交差しており、したがって、水和イオンは、膜の一方の面から膜の他方の面に流れることがある。しかし、膜貫通ポアが膜を交差している必要はない。膜貫通ポアは、一方の末端が閉じられていることがある。例えば、ポアは、膜内のウェル、ギャップ、チャネル、溝またはスリットであることがあり、水和イオンは、それに沿って流れることもあり、またはその中に流入することもある。
【0219】
いずれの膜貫通ポアを本発明において使用してもよい。ポアは、生物学的なものであってもよく、または人工的なものであってもよい。好適なポアとしては、タンパク質ポア、ポリヌクレオチドポアおよび固体ポアが挙げられるが、これらに限定されない。ポアは、DNA折り紙ポア(Langecker et al., Science, 2012; 338: 932-936)であってもよい。
【0220】
膜貫通ポアは、好ましくは膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、分析物などの水和イオンが膜の一方の面から膜の他方の面に流れることを可能にする、ポリペプチドまたはポリペプチドのコレクションである。本発明において、膜貫通タンパク質ポアは、印加された電位によって駆動される水和イオンが膜の一方の面から他方に流れることを可能にするポアを形成することができる。膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、ヌクレオチドなどの分析物がトリブロック共重合体膜などの膜の一方の面から他方に流れることを可能にする。膜貫通タンパク質ポアは、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドをポアに対して、例えばポアを通って、移動させる。
【0221】
膜貫通タンパク質ポアは、単量体であってもよく、またはオリゴマーであってもよい。ポアは、好ましくは、いくつかの反復サブユニット、例えば、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8または少なくとも9個サブユニットで構成される。ポアは、好ましくは、六量体、七量体、八量体または九量体ポアである。ポアは、ホモオリゴマーであってもよく、またはヘテロオリゴマーであってもよい。
【0222】
膜貫通タンパク質ポアは、概してバレルまたはチャネルを含み、それを通ってイオンが流れることがある。ポアのサブユニットは、概して中心軸を包囲し、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通αヘリックスバンドルもしくはチャネルにもたらす。
【0223】
膜貫通タンパク質ポアのバレルまたはチャネルは、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸などの分析物との相互作用を助長するアミノ酸を概して含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレルまたはチャネルの狭窄部付近に位置する。膜貫通タンパク質ポアは、正電荷を有する1つまたは複数のアミノ酸、例えば、アルギニン、リシン、もしくはヒスチジンまたは芳香族アミノ酸、例えばチロシンもしくはトリプトファンを概して含む。これらのアミノ酸は、ポアとヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸との相互作用を概して助長する。
【0224】
本発明に従って使用するための膜貫通タンパク質ポアは、βバレルポアまたはαヘリックスバンドルポアに由来しうる。βバレルポアは、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβバレルポアとしては、β−毒素、例えばα−ヘモリシン、炭疽毒素およびロイコシジン、ならびに外膜タンパク質/細菌のポリン、例えば、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)ポリン(Msp)、例えばMspA、MspB、MspCまたはMspD、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリア(Neisseria)オートトランスポーターリポタンパク質(NalP)ならびに他のポア、例えばライセニンが挙げられるが、これらに限定されない。αヘリックスバンドルポアは、αヘリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なαヘリックスバンドルポアとしては、内膜タンパク質およびα外膜タンパク質、例えば、WZAおよびClyA毒素が挙げられるが、これらに限定されない。膜貫通ポアは、ライセニンに由来しうる。ライセニンに由来する好適なポアは、国際出願番号PCT/GB2013/050667(WO2013/153359として公開された)に開示されている。膜貫通ポアは、Mspに由来することもあり、またはα−ヘモリシン(α−HL)に由来することもある。
【0225】
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくはMspに、好ましくはMspAに由来する。そのようなポアは、オリゴマー性となり、Mspに由来する7、8、9または10個の単量体を概して含む。ポアは、同一の単量体を含むMspに由来するホモオリゴマー性ポアであることがある。あるいは、ポアは、他と異なる少なくとも1つの単量体を含むMspに由来するヘテロオリゴマー性ポアであることがある。好ましくは、ポアは、MspAまたはそのホモログもしくはパラログに由来する。
【0226】
Mspに由来する単量体は、配列番号2で示される配列またはその変異体を概して含む。配列番号2は、MspA単量体のMS−(B1)8突然変異体である。これは、次の突然変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。配列番号2の変異体は、配列番号2のものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、ポアを形成するその能力を保持するポリペプチドである。ポアを形成する変異体の能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いてアッセイすることができる。例えば、変異体を両親媒性層に他の適切なサブユニットとともに挿入してもよく、オリゴマー化してポアを形成するその能力を判定してもよい。両親媒性層などの膜にサブユニットを挿入する方法は、当技術分野において公知である。例えば、サブユニットを精製形態でトリブロック共重合体膜を含有する溶液に懸濁させてもよく、その結果、サブユニットは膜に分散し、膜と結合することによって挿入され、集合して機能性状態になる。あるいは、M.A. Holden, H. Bayley. J. Am. Chem.Soc.2005, 127, 6502-6503および国際出願番号PCT/GB2006/001057(WO2006/100484として公開された)に記載されている「ピックアンドプレース」法を用いて、サブユニットを膜に直接挿入してもよい。
【0227】
配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって、変異体は、好ましくは、アミノ酸同一性に基づきその配列と少なくとも50%相同であることになる。より好ましくは、変異体は、アミノ酸同一性に基づき、配列全体にわたって配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であることがある。100以上、例えば125、150、175または200以上の連続するアミノ酸のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%アミノ酸同一性(「確かな相同性」)があることがある。
【0228】
当技術分野における標準的な方法を用いて相同性を決定してもよい。例えば、UWGCG Packageは、相同性を計算するために使用することができ、例えばそのデフォルト設定で使用される、BESTFITプラグラムを提供している(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S.F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されているように、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いて、相同性を計算し、または配列を並べる(例えば、等価の残基または対応する配列を(通常はそれらのデフォルト設定で)同定する)ことができる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手できる。
【0229】
配列番号2は、MspA単量体のMS−(B1)8突然変異体である。変異体は、MspAと比較してMspB、CまたはD単量体における突然変異のいずれかを含むことがある。MspB、CおよびDの成熟形態は、配列番号5〜7で示される。詳細には、変異体は、MspB中に存在する次の置換を含むことがある:A138P。変異体は、MspC中に存在する次の置換の1つまたは複数を含むことがある:A96G、N102EおよびA138P。変異体は、MspD中に存在する次の突然変異の1つまたは複数を含むことがある:G1の欠失、L2V、E5Q、L8V、D13G、W21A、D22E、K47T、I49H、I68V、D91G、A96Q、N102D、S103T、V104I、S136KおよびG141A。変異体は、MspB、CおよびDからの突然変異および置換の1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。変異体は、好ましくは、突然変異L88Nを含む。配列番号2の変異体は、MS−B1のすべての突然変異に加えて突然変異L88Nを有し、MS−(B2)8と呼ばれる。本発明において使用されるポアは、好ましくはMS−(B2)8である。配列番号2の変異体は、MS−B1のすべての突然変異に加えて突然変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有し、MS−B2Cと呼ばれる。本発明において使用されるポアは、好ましくはMS−(B2)8またはMS−(B2C)8である。
【0230】
上で論じたものに加えて、アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、10、20または30以下の置換を、配列番号2のアミノ酸配列に加えてもよい。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性または電荷を有しうる。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入することがある。保存的アミノ酸変化は当技術分野において周知であり、下の表2において定義するような20の主要アミノ酸の特性に従って選択されうる。アミノ酸が類似の極性を有する場合、このことを、表3中のアミノ酸側鎖についてのハイドロパシースケールを参照することによって判定することもできる。
【0233】
配列番号2のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基は、上記のポリペプチドからさらに欠失されることがある。1、2、3、4、5、10、20もしくは30以下の残基が、欠失されることがあり、またはそれより多くが欠失されることもある。
【0234】
変異体は、配列番号2の断片を含むことがある。そのような断片は、ポア形成活性を保持する。断片は、少なくとも50、100、150または200アミノ酸の長さでありうる。そのような断片は、ポアを生成するために使用されることがある。断片は、好ましくは、配列番号2のポア形成ドメインを含む。断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134のうちの1つを含まなければならない。概して、断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134のすべてを含む。
【0235】
1つまたは複数のアミノ酸が上記のポリペプチドに代替的にまたはさらに付加されることがある。配列番号2のアミノ酸配列またはそのポリペプチド変異体もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に伸長が施されることがある。伸長は、かなり短いことがあり、例えば、1〜10アミノ酸の長さであることがある。あるいは、伸長は、より長いことがあり、例えば、50または100アミノ酸以下であることがある。担体タンパク質は本発明に従ってアミノ酸配列に融合されることがある。他の融合タンパク質は、下でより詳細に論じる。
【0236】
上で論じたように、変異体は、配列番号2のものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、ポアを形成するその能力を保持するポリペプチドである。変異体は、ポア形成に関与している配列番号2の領域を概して含有する。βバレルを含有するMspのポア形成能力は、各サブユニット内のβシートによってもたらされる。配列番号2の変異体は、βシートを形成する配列番号2内の領域を概して含む。結果として生じる変異体が、ポアを形成するその能力を保持するのであれば、1つまたは複数の修飾を、βシートを形成する配列番号2の領域に加えることができる。配列番号2の変異体は、1つまたは複数の修飾、例えば置換、付加または欠失をそのαヘリックスおよび/またはループ領域内に好ましくは含む。
【0237】
Mspに由来する単量体は、それらの同定または精製を支援するように、例えば、ヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグもしくはflagタグの付加によって、または細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加(ポリペプチドがそのような配列を天然に含有しない場合)によって、修飾されることがある。遺伝子タグを導入することの代替法は、タグをポア上のネイティブ位置または工学的に操作された位置に化学反応させることである。この方法の例は、ポアの外側に工学的に操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させることであろう。この方法は、ヘモリシンヘテロオリゴマーを分離する方法として立証されている(Chem Biol.1997 Jul; 4(7):497-505)。
【0238】
Mspに由来する単量体は、顕現標識で標識されることがある。顕現標識は、ポアを検出できるようにするいずれの好適な標識であってもよい。好適な標識は、下で説明する。
【0239】
Mspに由来する単量体は、D−アミノ酸を使用して生成されることもある。例えば、Mspに由来する単量体は、L−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含むことがある。これは、そのようなタンパク質またはペプチドの生産に関する技術分野では当たり前のことである。
【0240】
Mspに由来する単量体は、ヌクレオチド識別を助長するための1つまたは複数の特異的修飾を含有する。Mspに由来する単量体は、他の非特異的修飾も、該修飾がポア形成に干渉しないのであれば、含有してもよい。いくつかの非特異的側鎖修飾は当技術分野において公知であり、Mspに由来する単量体の側鎖に加えられることがある。そのような修飾としては、例えば、アルデヒドとの反応、その後のNaBH
4での還元によるアミノ酸の還元アルキル化、アセトイミド酸メチルでのアミジン化、または無水酢酸でのアシル化が挙げられる。
【0241】
Mspに由来する単量体は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて生成することができる。Mspに由来する単量体を合成的に作製してもよく、または組み換え手段によって作製してもよい。例えば、ポアをインビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成してもよい。ポアを生成する好適な方法は、国際出願番号PCT/GB09/001690(WO2010/004273として公開された)、PCT/GB09/001679(WO2010/004265として公開された)またはPCT/GB10/000133(WO2010/086603として公開された)において論じられている。膜にポアを挿入する方法が論じられている。
【0242】
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、α−ヘモリシン(α−HL)にも由来する。野生型α−HLポアは、7つの同一の単量体またはサブユニットで形成されている(すなわち、このポアは七量体である)。α−ヘモリシン−NNの1つの単量体またはサブユニットの配列は、配列番号4で示される。
【0243】
いくつかの実施形態において、膜貫通タンパク質ポアは、化学的に修飾される。ポアは任意の方法で、任意の部位で化学的に修飾することができる。膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、1つもしくは複数のシステインへの分子の付着(システイン結合)、1つもしくは複数のリシンへの分子の付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学的に修飾される。そのような修飾を実施する好適な方法は、当技術分野において周知である。膜貫通タンパク質ポアをいずれの分子の付着によって化学的に修飾してもよい。例えば、色素またはフルオロフォアの付着によってポアを化学的に修飾してもよい。
【0244】
ポア内のいずれの数の単量体を化学的に修飾してもよい。好ましくは、1つまたは複数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10の単量体が、上で論じたように化学的に修飾される。
【0245】
システイン残基の反応性は隣接残基の修飾によって増強されることがある。例えば、隣接するアルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインのチオール基のpKaをより反応性の高いS
−基のpKaに変化させることになる。システイン残基の反応性はdTNBなどのチオール保護基によって保護されることがある。リンカーを付着させる前にポアの1つまたは複数のシステイン残基とこれらの保護基を反応させてもよい。
【0246】
分子(ポアを化学的に修飾する分子)をポアに直接付着させてもよく、または国際出願番号PCT/GB09/001690(WO2010/004273として公開された)、PCT/GB09/001679(WO2010/004265として公開された)もしくはPCT/GB10/000133(WO2010/086603として公開された)に開示されているようなリンカーによって付着させてもよい。
【0247】
膜貫通タンパク質ポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれも、それらの同定または精製を支援するように、例えば、ヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグ、flagタグ、SUMOタグ、GSTタグもしくはMBPタグの付加によって、または細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加(ポリペプチドがそのような配列を天然に含有しない場合)によって、修飾されることがある。遺伝子タグを導入することの代替法は、タグをポアまたは構築物上のネイティブ位置または工学的に操作された位置に化学反応させることである。この方法の例は、ポアの外側に工学的に操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させることであろう。この方法は、ヘモリシンヘテロオリゴマーを分離する方法として立証されている(Chem Biol.1997 Jul; 4(7):497-505)。
【0248】
ポアは、顕現標識で標識されることがある。顕現標識は、ポアを検出できるようにするいずれの好適な標識であってもよい。好適な標識としては、蛍光分子、放射性同位元素、例えば、
125I、
35S、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよびリガンド、例えばビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0249】
膜貫通タンパク質ポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれも、合成的に作製してもよく、または組み換え手段によって作製してもよい。例えば、ポアをインビトロ翻訳および転写(IVTT)によって合成してもよい。ポアのアミノ酸配列は、天然に存在しないアミノ酸を含むように修飾されることもあり、またはタンパク質の安定性を増すように修飾されることもある。タンパク質が合成手段によって生産される場合、そのようなアミノ酸を生産中に導入してもよい。合成または組み換え生産のいずれかの後にポアを改変してもよい。
【0250】
ポアは、D−アミノ酸を使用して生成されることもある。例えば、ポアまたは構築物は、L−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含むことがある。これは、そのようなタンパク質またはペプチドの生産に関する技術分野では当たり前のことである。
【0251】
ポアは、他の非特異的修飾を、該修飾がポア形成にも構築物の機能にも干渉しないのであれば、含有してもよい。いくつかの非特異的側鎖修飾は当技術分野において公知であり、タンパク質の側鎖に加えられることがある。そのような修飾としては、例えば、アルデヒドとの反応、その後のNaBH
4での還元によるアミノ酸の還元アルキル化、アセトイミド酸メチルでのアミジン化、または無水酢酸でのアシル化が挙げられる。
【0252】
膜貫通タンパク質ポアなどの、本明細書に記載するタンパク質のいずれも、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて生成することができる。ポアまたは構築物をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準的方法を用いて誘導され、複製されることがある。ポアまたは構築物をコードするポリヌクレオチド配列は、当技術分野における標準技法を用いて細菌宿主細胞において発現されることがある。ポアは、組み換え発現ベクターからのポリペプチドのインサイチュー発現によって細胞において生産されることがある。発現ベクターは、ポリペプチドの発現を制御するための誘導性プロモーターを場合により有する。これらの方法は、Sambrook, J. and Russell, D. (2001).Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。
【0253】
ポアは、タンパク質生産生物からの任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによる精製後、または組み換え発現後、大規模に生産されることがある。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムとしては、FPLC、AKTAシステム、Bio−Cadシステム、Bio−Rad BioLogicシステムおよびGilson HPLCシステムが挙げられる。
【0254】
スペーサー
1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質がヘリカーゼであり、1つまたは複数の負荷部分がポリヌクレオチドを含む場合、国際出願番号PCT/GB2014/050175(WO2014/135838として公開された)において論じられているように1つまたは複数のヘリカーゼを1つまたは複数のスペーサーで停止させてもよい。国際出願に開示されている1つまたは複数のヘリカーゼおよび1つまたは複数のスペーサーのいずれの配置を本発明において使用してもよい。
【0255】
標的ポリヌクレオチドの一部がポアに侵入し、印加された電位の結果として生じる場に沿ってポアに対して、例えばポアを通って、移動する場合、1つまたは複数のヘリカーゼは、ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動するとき、ポアによってスペーサーを超えて移動される。これは、(1つまたは複数のスペーサーを含む)ポリヌクレオチドがポアに対して、例えばポアを通って、移動し、1つまたは複数のヘリカーゼがポアの上部に残存するためである。
【0256】
1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、負荷部分ポリヌクレオチドの一部であり、例えば、スペーサーはポリヌクレオチド配列に割り込んでいる。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、ポリヌクレオチドにハイブリダイズされた1つまたは複数の遮断分子、例えばスピードバンプの一部ではない。
【0257】
負荷部分ポリヌクレオチド内にいずれの数のスペーサーがあってもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のスペーサーがあってもよい。好ましくは、ポリヌクレオチド内に2、4または6個のスペーサーがある。リーダー配列内のスペーサーおよび架橋部分またはヘアピンループ内のスペーサーなど、スペーサーは、様々な負荷部分ポリヌクレオチド内にあってもよい。
【0258】
1つまたは複数のスペーサーは各々、1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードであっても克服できないエネルギー障壁をもたらす。1つまたは複数のスペーサーは、(例えばポリヌクレオチド中のヌクレオチドから塩基を除去することにより)ヘリカーゼの牽引を低減させることによって、または(例えば嵩高い化学基を使用して)1つもしくは複数のヘリカーゼの移動を物理的に遮断することによって、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることがある。
【0259】
1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させる、いずれの分子、または分子の組み合わせを含んでもよい。1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼがポリヌクレオチドに沿って移動することを防止する、いずれの分子、または分子の組み合わせを含んでもよい。1つまたは複数のヘリカーゼが、膜貫通ポアおよび印加電位の不在下で1つまたは複数のスペーサーで停止されるか否かを判定することは容易である。例えば、これは、実施例に示すようにアッセイすることができ、例えば、スペーサーを超えて移動し、DNAの相補鎖を置き換えるヘリカーゼの能力を、PAGEによって測定することができる。
【0260】
1つまたは複数のスペーサーは、重合体などの直鎖状分子を概して含む。1つまたは複数のスペーサーは、ポリヌクレオチドとは異なる構造を概して有する。例えば、ポリヌクレオチドがDNAである場合、1つまたは複数のスペーサーは概してDNAではない。特に、ポリヌクレオチドが、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である場合、1つまたは複数のスペーサーは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する合成重合体を好ましくは含む。1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヌクレオチドをポリヌクレオチドと反対方向で含むことがある。例えば、ポリヌクレオチドが5’から3’方向である場合、1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヌクレオチドを3’から5’方向で含むことがある。ヌクレオチドは、上で論じたもののいずれであってもよい。
【0261】
1つまたは複数のスペーサーは、1つもしくは複数のニトロインドール、例えば1つもしくは複数の5−ニトロインドール、1つもしくは複数のイノシン、1つもしくは複数のアクリジン、1つもしくは複数の2−アミノプリン、1つもしくは複数の2,6−ジアミノプリン、1つもしくは複数の5−ブロモ−デオキシウリジン、1つもしくは複数の逆位チミジン(逆位dT)、1つもしくは複数の逆位ジデオキシチミジン(ddT)、1つもしくは複数のジデオキシシチジン(ddC)、1つもしくは複数の5−メチルシチジン、1つもしくは複数の5−ヒドロキシメチルシチジン、1つもしくは複数の2’−O−メチルRNA塩基、1つもしくは複数のイソデオキシシチジン(イソdC)、1つもしくは複数のイソデオキシグアノシン(イソdG)、1つもしくは複数のiSpC3基(すなわち、糖および塩基を欠くヌクレオチド)、1つもしくは複数の光切断性(PC)基、1つもしくは複数のヘキサンジオール基、1つもしくは複数のスペーサー9(iSp9)基、1つもしくは複数のスペーサー18(iSp18)基、重合体または1つもしくは複数のチオール結合を好ましくは含む。1つまたは複数のスペーサーは、これらの基のいずれの組み合わせを含んでもよい。これらの基の多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。
【0262】
1つまたは複数のスペーサーは、いずれの数のこれらの基を含有してもよい。例えば、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロモ−デオキシウリジン、逆位dT、ddT、ddC、5−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、2’−O−メチルRNA塩基、イソdC、イソdG、iSpC3基、PC基、ヘキサンジオール基およびチオール結合については、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上含む。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8以上のiSp9基を含む。1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、2、3、4、5または6以上のiSp18基を含む。最も好ましいスペーサーは、4個のiSp18基である。
【0263】
重合体は、好ましくは、ポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)である。ポリペプチドは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上のアミノ酸を含む。PEGは、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上の単量体ユニットを含む。
【0264】
1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、1つまたは複数の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上の脱塩基ヌクレオチドを含む。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドでは、−H(idSp)によって置き換えられていることもあり、または−OHによって置き換えられていることもある。1つまたは複数の隣接ヌクレオチドから核酸塩基を除去することによって、脱塩基スペーサーをポリヌクレオチドに挿入することができる。例えば、ポリヌクレオチドは、3−メチルアデニン、7−メチルグアニン、1,N6−エテノアデニンイノシンまたはヒポキサンチンを含むように修飾されることがあり、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去されることがある。あるいは、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾され、核酸塩基がウラシル−DNAグリコシラーゼ(UDG)で除去されることがある。一実施形態において、1つまたは複数のスペーサーは、いずれの脱塩基ヌクレオチドも含まない。
【0265】
1つまたは複数のヘリカーゼは、各直鎖状分子スペーサーによって(すなわちそれらの前で)または各直鎖状分子スペーサーで停止されることがある。直鎖状分子スペーサーが使用される場合、負荷部分ポリヌクレオチドには、1つまたは複数のヘリカーゼが超えて移動されることになる各スペーサーの末端に隣接したポリヌクレオチドの二本鎖領域が好ましくは備えられる。二本鎖領域は、隣接スペーサーで1つまたは複数のヘリカーゼを停止させるのに概して役立つ。二本鎖領域の存在は、方法が約100mM以下の塩濃度で行われる場合、特に好ましい。各二本鎖領域は、概して、少なくとも10、例えば少なくとも12ヌクレオチドの長さである。本発明において使用される負荷部分ポリヌクレオチドが一本鎖状である場合、二本鎖領域は、より短いポリヌクレオチドをスペーサーに隣接する領域にハイブリダイズすることによって形成されることがある。より短いポリヌクレオチドは、負荷部分ポリヌクレオチドと同じヌクレオチドから概して形成されるが、異なるヌクレオチドから形成されることもある。例えば、より短いポリヌクレオチドがLNAまたはBNAから形成されることがある。
【0266】
直鎖状分子スペーサーが使用される場合、負荷部分ポリヌクレオチドには、1つまたは複数のヘリカーゼが超えて移動されることになる末端とは反対側の各スペーサーの末端に遮断分子が好ましくは備えられる。これは、1つまたは複数のヘリカーゼが各スペーサーで停止したままでいることを確実にするのに役立ちうる。それは、1つまたは複数のヘリカーゼを、該ヘリカーゼが溶液に拡散する場合、ポリヌクレオチド上に保持することに役立つこともある。遮断分子は、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる、下で論じる化学基のいずれであってもよい。遮断分子は、ポリヌクレオチドの二本鎖領域であってもよい。
【0267】
1つまたは複数のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基を好ましくは含む。1つまたは複数の化学基は、好ましくは、1つまたは複数のペンダント化学基である。1つまたは複数の化学基は、ポリヌクレオチド中の1つまたは複数の核酸塩基に付着されることがある。1つまたは複数の化学基は、ポリヌクレオチド主鎖に付着されることがある。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上など、いずれの数のこれらの化学基が存在してもよい。好適な基としては、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよび/またはビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニンおよび/または抗ジゴキシゲニンならびにジベンジルシクロオクチン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0268】
負荷部分ポリヌクレオチド中の異なるスペーサーは、異なる停止分子を含むことがある。例えば、あるスペーサーは、上で論じた直鎖状分子のうちの1つを含むことがあり、別のスペーサーは、1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基を含むことがある。スペーサーは、上で論じた直鎖状分子、ならびに1つまたは複数のヘリカーゼを物理的に停止させる1つまたは複数の化学基、例えば1つまたは複数の脱塩基体およびフルオロフォアのうちのいずれを含んでもよい。
【0269】
負荷部分ポリヌクレオチドのタイプおよび本発明の方法が行われる条件に依存して、好適なスペーサーを設計することができる。大部分のヘリカーゼは、DNAに結合し、DNAに沿って移動するため、DNAではないあらゆるものを使用して停止されうる。好適な分子は、上で論じている。
【0270】
本発明の特性評価方法は、好ましくは、遊離ヌクレオチドの存在下、および/またはヘリカーゼ補因子の存在下で行われる。このことは、下でより詳細に論じる。膜貫通ポアおよび印加電位の不在下、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、遊離ヌクレオチドの存在下、および/またはヘリカーゼ補因子の存在下で1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることができる。
【0271】
本発明の特性評価方法が、遊離ヌクレオチドおよび(1つまたは複数のヘリカーゼが活性モードであるために)下で論じるようなヘリカーゼ補因子の存在下で行われる場合、1つまたは複数のヘリカーゼを膜貫通ポアと接触させ、電位を印加する前に、1つまたは複数のヘリカーゼをポリヌクレオチド上で停止させることを確実にするために、1つまたは複数のより長いスペーサーが概して使用される。遊離ヌクレオチドおよび(1つまたは複数のヘリカーゼが不活性モードであるために)ヘリカーゼ補因子の不在下では、1つまたは複数のより短いスペーサーが使用されることがある。
【0272】
塩濃度も、1つまたは複数のヘリカーゼを停止させる1つまたは複数のスペーサーの能力に影響を及ぼす。膜貫通ポアおよび印加電位の不在下、1つまたは複数のスペーサーは、好ましくは、約100mM以下の塩濃度で1つまたは複数のヘリカーゼを停止させることができる。本発明の方法において使用される塩濃度が高いほど、概して使用される1つまたは複数のスペーサーは短く、逆もまた同様である。
【0273】
特徴の好ましい組み合わせを下の表4に示す。
【0275】
方法は、2つ以上のヘリカーゼをスペーサーを超えて移動させることに関わることがある。そのような場合、スペーサーの長さを概して増加させて、ポアおよび印加電位の不在下で後従ヘリカーゼがスペーサーを超えて先導ヘリカーゼを押さないようにする。方法が、1つまたは複数のスペーサーを超えて2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関わる場合、上で論じたスペーサー長は、少なくとも1.5倍、例えば2倍、2.5倍または3倍増加されることがある。例えば、方法が、1つまたは複数のスペーサーを超えて2つ以上のヘリカーゼを移動させることに関わる場合、上の表4の第3列におけるスペーサー長は、1.5倍、2倍、2.5倍または3倍増加されることがある。
【0276】
2つ以上のヘリカーゼは、各々が独自の1つまたは複数のスペーサーを有するように離隔されることもある。このことは、下でより詳細に論じる。
【0277】
二本鎖ポリヌクレオチド
標的ポリヌクレオチドは、二本鎖状であることがある。ポリヌクレオチドが二本鎖状である場合、本発明は、ヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターをポリヌクレオチドの一方の末端に付着させるステップと、ポリヌクレオチドの2本の鎖を分離して一本鎖ポリヌクレオチド構築物を形成するステップとを好ましくは含む。次いで、一本鎖ポリヌクレオチド構築物を本発明に従ってポアに対して、例えばポアを通って、移動させてもよい。このようにして二本鎖構築物上の両方の鎖を連結し、調べることにより、特性評価の効率および精度が増す。
【0278】
架橋部分は、ポリヌクレオチドの2本の鎖を連結することができる。架橋部分は、概して、ポリヌクレオチドの2本の鎖を共有結合で連結する。架橋部分は、該架橋部分がポリヌクレオチドの膜貫通ポアを通る移動に干渉しないことを条件に、ポリヌクレオチドの2本の鎖を連結することができるあらゆるものでありうる。
【0279】
当技術分野において公知のいずれの好適な手段によって架橋部分をポリヌクレオチドに連結させてもよい。架橋部分を別途合成し、ポリヌクレオチドに化学的に付着または酵素的にライゲートしてもよい。あるいは、架橋部分は、ポリヌクレオチドの処理中に生成されることがある。
【0280】
架橋部分は、ポリヌクレオチドに、該ポリヌクレオチドの一方の末端にまたは末端付近に連結される。架橋部分は、ポリヌクレオチドに、該ポリヌクレオチドの末端の10ヌクレオチド以内に、好ましくは連結される。
【0281】
架橋部分は好ましい負荷部分であるが、架橋部分は、Yアダプターなどの負荷部分が、標的ポリヌクレオチドの他方の末端に付着している1つまたは複数の結合(または付着)ポリヌクレオチド結合タンパク質を有するのであれば、結合している1つまたは複数の結合(または付着)ポリヌクレオチド結合タンパク質を有する必要はない。いくつかの実施形態において、負荷部分は、本発明のポリヌクレオチドの両方の末端に付着されることがあり、好ましくは、この場合、一方は、Yアダプターであり、他方は、ヘアピンループアダプターなどの架橋部分である。好適な架橋部分は、負荷部分に関して上で論じている。ヘアピンループが負荷部分として使用されない場合、ヘアピンループは、概して110ヌクレオチド以下、例えば、100ヌクレオチド以下、90ヌクレオチド以下、80ヌクレオチド以下、70ヌクレオチド以下、60ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、30ヌクレオチド以下、20ヌクレオチド以下、または10ヌクレオチド以下の長さである。ヘアピンループは、好ましくは、約1〜110、2〜100、5〜80、または6〜50ヌクレオチドの長さである。ループがアダプターの差次的選択可能結合に関与する場合、50〜110ヌクレオチドなどの、より長いヘアピンループ長が好ましい。同様に、ループが、下で論じるような選択可能結合に関与しない場合、1〜5ヌクレオチドなどの、より短いヘアピンループ長が好ましい。
【0282】
架橋部分アダプターまたはヘアピンループアダプターを上で論じたように標的ポリヌクレオチドに付着またはライゲートしてもよい。
【0283】
当技術分野において公知のいずれの方法を用いてポリヌクレオチドの2本の鎖を分離してもよい。例えば、1つもしくは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質によって、または脱ハイブリダイゼーションに有利に働く条件を用いて、それらの鎖を分離してもよい(脱ハイブリダイゼーションに有利に働く条件の例としては、高温、高pH、ならびに水素結合または塩基対合を破壊することができる作用物質、例えばホルムアミドおよび尿素の添加が挙げられるが、これらに限定されない)。1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が鎖を分離するために使用される場合、概して、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質は、標的ポリヌクレオチドに、架橋部分の他方の末端で、例えばYアダプターを使用して付着される。
【0284】
1つまたは複数の負荷部分、好ましくはYアダプターおよび/または架橋部分アダプター(例えばヘアピンループアダプター)は、選択可能結合部分を好ましくは含む。これによって、ポリヌクレオチドを精製または単離することが可能になる。選択可能結合部分は、その結合特性に基づいて選択することができる部分である。したがって、選択可能結合部分は、好ましくは、表面と特異的に結合する部分である。選択可能結合部分は、本発明において使用される任意の他の部分よりはるかに大きい程度に表面と結合する場合、その表面に特異的に結合する。好ましい実施形態において、部分は、本発明で使用される他の部分が結合しない表面と結合する。
【0285】
好適な選択的結合部分は、当技術分野において公知である。好ましい選択的結合部分としては、ビオチン、ポリヌクレオチド配列、抗体、抗体断片、例えばFabおよびScSv、抗原、ポリヌクレオチド結合タンパク質、ポリヒスチジンテールおよびGSTタグが挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい選択的結合部分は、ビオチンおよび選択可能ポリヌクレオチド配列である。ビオチンは、アビジンで被覆された表面と特異的に結合する。選択可能ポリヌクレオチド配列は、相同配列で被覆された表面と特異的に結合(すなわちハイブリダイズ)する。あるいは、選択可能ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド結合タンパク質で被覆された表面と特異的に結合する。
【0286】
1つまたは複数の負荷部分、好ましくはYアダプターおよび/または架橋部分アダプター(例えばヘアピンループアダプター)および/または選択可能結合部分は、切る、切れ目を入れる、切断するまたは加水分解することができる領域を含みうる。そのような領域は、第一および/または第二のポリヌクレオチドを該ポリヌクレオチドが結合している表面から精製または単離後に除去することを可能にするように設計することができる。好適な領域は、当技術分野において公知である。好適な領域としては、RNA領域、デスチオビオチンおよびストレプトアビジンを含む領域、ジスルフィド結合ならびに光切断性領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0287】
リーダー配列
1つまたは複数の負荷部分に、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列を備えさせてもよい。リーダー配列は、本発明の方法を助長する。リーダー配列は、膜貫通ポアを優先的に通り抜けるように、およびそれによって標的ポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を助長するように設計される。リーダー配列を使用して、ポリヌクレオチドを上で論じたような1つまたは複数のアンカーに連結させることもできる。
【0288】
リーダー配列は、重合体を概して含む。重合体は、好ましくは負電荷を有する。重合体は、好ましくは、ポリヌクレオチド、例えばDNAもしくはRNA、修飾ポリヌクレオチド(例えば脱塩基DNA)、PNA、LNA、BNA、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリペプチドである。リーダーは、好ましくはポリヌクレオチドを含み、より好ましくは一本鎖ポリヌクレオチドを含む。リーダー配列は、上で論じたポリヌクレオチドのいずれかを含むことができる。一本鎖リーダー配列は、最も好ましくは、DNAの1本の鎖、例えば、ポリdTセクションを含む。リーダー配列は、好ましくは1つまたは複数のスペーサーを含む。
【0289】
リーダー配列は、任意の長さでありうるが、概して10〜150ヌクレオチドの長さ、例えば20〜150ヌクレオチドの長さである。リーダーの長さは、方法に使用される膜貫通ポアに概して依存する。
【0290】
二重カップリング
好ましい実施形態において、本発明は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を標的二本鎖ポリヌクレオチドに付着させる方法であって、
(a)Yアダプターに、該Yアダプターと結合(またはそれに付着)している1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質と、ポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第一のアンカーとを備えさせ、ヘアピンループアダプターなどの架橋部分アダプターに1つまたは複数の第二のアンカーを備えさせるステップであって、架橋部分アダプターの膜とのカップリング強度が、Yアダプターの膜とのカップリング強度より大きいものであるステップと、
(b)Yアダプターを標的ポリヌクレオチドの一方の末端に付着させ、架橋部分を標的ポリヌクレオチドの他方の末端に付着させるステップと
を含む方法を含む。架橋部分は、その架橋部分に付着している1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質、好ましくは1つまたは複数の分子ブレーキを好ましくは有する。
【0291】
本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを特性評価する方法であって、
(c)ステップ(b)で得られたポリヌクレオチドを膜貫通ポアと、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が、標的ポリヌクレオチドのポアに対する、例えばポアを通る、移動を制御するように接触させるステップと、
(d)ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときに、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を示す1つまたは複数の測定値を取り、それによって標的ポリヌクレオチドを特性評価するステップと
を含む方法も提供する。
【0292】
このタイプの方法は、英国出願第1406147.7号において詳細に論じられている。
【0293】
Yアダプターおよび/または架橋部分アダプターは、概してポリヌクレオチドアダプターである。それらのアダプターを上で論じたポリヌクレオチドのいずれから形成してもよい。
【0294】
Yアダプターは、概して、(a)二本鎖領域および他方の末端に(b)一本鎖領域または相補的でない領域を含む。Yアダプターは、一本鎖領域を含む場合、オーバーハングを有すると記述されることがある。Yアダプター内の非相補領域の存在はこのアダプターをY形にする。2本の鎖が、通常、二本鎖部分とは異なり互いにハイブリダイズしないからである。Yアダプターは、1つまたは複数の第一のアンカーを含む。アンカーは、上でより詳細に論じている。
【0295】
Yアダプターは、ポアを優先的に通り抜けるリーダー配列を好ましくは含む。このリーダー配列は、上で論じている。
【0296】
架橋部分アダプターは、上で論じたような選択可能結合部分を好ましくは含む。架橋部分アダプターおよび/または選択可能結合部分は、上で論じたような、切る、切り目を入れる、切断するまたは加水分解することができる領域を含むことがある。
【0297】
当技術分野において公知のいずれの方法を用いてYアダプターおよび/または架橋部分アダプターをポリヌクレオチドにライゲートしてもよい。リガーゼ、例えば、T4 DNAリガーゼ、大腸菌(E. coli)DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼおよび9
ON DNAリガーゼを使用して、アダプターの一方または両方をライゲートしてもよい。
【0298】
架橋部分アダプターの膜とのカップリング(または結合)強度は、Yアダプターの膜とのカップリング(または結合)強度より大きい。この強度は任意の方法で測定することができる。カップリング(または結合)強度を測定する好適な方法は、英国出願第1406147.7号の実施例に開示されている。
【0299】
架橋部分アダプターのカップリング(または結合)強度は、好ましくは、Yアダプターのカップリング(または結合)強度の少なくとも1.5倍、例えば、Yアダプターのカップリング(または結合)強度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5、または少なくとも10倍である。膜に対する架橋部分アダプターの親和定数(Kd)は、好ましくは、Yアダプターの親和定数の少なくとも1.5倍、例えば、Yアダプターのカップリング強度の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5、または少なくとも10倍である。
【0300】
架橋部分アダプターがYアダプターより強く膜とカップリング(または結合)する方法はいくつかある。例えば、架橋部分アダプターは、Yアダプターより多くのアンカーを含むことがある。例えば、架橋部分アダプターは、2個、3個以上の第二のアンカーを含むことがあり、これに対してYアダプターは、1個の第一のアンカーを含むことがある。
【0301】
1つまたは複数の第二のアンカーの膜とのカップリング(または結合)強度は、1つまたは複数の第一のアンカーの膜とのカップリング(または結合)強度より大きいことがある。1つまたは複数の第二のアンカーの架橋部分アダプターとのカップリング(または結合)強度は、1つまたは複数の第一のアンカーのYアダプターとのカップリング(または結合)強度より大きいことがある。1つまたは複数の第一のアンカーおよび1つまたは複数の第二のアンカーは、それらのそれぞれのアダプターにハイブリダイゼーションによって付着されることがあり、このハイブリダイゼーション強度は、1つまたは複数の第一のアンカーにおけるより1つまたは複数の第二のアンカーにおけるほうが大きい。これらの実施形態のいずれの組み合わせを本発明において使用してもよい。当技術分野における公知の技法を用いてカップリング(または結合)強度を測定してもよい。
【0302】
1つまたは複数の第二のアンカーは、膜とカップリング(または結合)する1つまたは複数の第一のアンカー中の1つまたは複数の基より大きい強度で膜とカップリング(または結合)する1つまたは複数の基を好ましくは含む。好ましい実施形態において、架橋部分アダプター/1つまたは複数の第二のアンカーは、コレステロールを使用して膜とカップリング(または結合)し、Yアダプター/1つまたは複数の第一のアンカーは、パルミチン酸エステルを使用して膜とカップリング(または結合)する。コレステロールは、パルミチン酸エステルより強くトリブロック共重合体膜および脂質膜と結合する。代替実施形態において、架橋部分アダプター/1つまたは複数の第二のアンカーは、パルミチン酸エステルなどのモノアシル種を使用して膜とカップリング(または結合)し、Yアダプター/1つまたは複数の第一のアンカーは、ジパルミトイルホスファチジルコリンなどのジアシル種を使用して膜とカップリング(または結合)する。
【0303】
ヘアピンループおよびリーダー配列の付加
本発明に従って、二本鎖ポリヌクレオチドをMuAトランスポサーゼ、および二本鎖MuA基質の集団と接触させてもよく、この場合、集団中の基質の一部は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質と結合しており、かつリーダー配列を含む、Yアダプターであり、また集団中の基質の一部は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質と結合した架橋部分アダプター、例えばヘアピンループアダプターである。Yアダプターおよび/または架橋部分アダプターは、負荷部分として機能する。トランスポサーゼは、二本鎖ポリヌクレオチドを断片化し、MuA基質をそれらの断片の一方または両方の末端にライゲートする。これは、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質およびリーダー配列を有するYアダプターを一方の末端に含み、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を有する架橋部分(またはヘアピンループ)を他方に含む、複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成する。次いで、本発明の方法を用いてそれらの修飾二本鎖ポリヌクレオチドを特性評価してもよい。
【0304】
集団中の各基質は、好ましくは、ユニバーサルヌクレオチドの少なくとも1つのオーバーハングを含み、その結果、トランスポサーゼがテンプレートポリヌクレオチドを断片化し、基質を二本鎖断片の一方または両方の末端にライゲートし、それによって複数の断片/基質構築物を生成し、この場合、方法は、オーバーハングを構築物中の断片にライゲートし、それによって複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成するステップをさらに含む。好適なユニバーサルヌクレオチドは、上で論じている。オーバーハングは、好ましくは、長さが5ヌクレオチドである。
【0305】
あるいは、集団中の各基質は、好ましくは、(i)少なくとも1つのオーバーハングおよび(ii)テンプレートポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドを含む少なくとも1つのヌクレオチドを少なくとも1つのオーバーハングと同じ鎖内に含み、その結果、トランスポサーゼがテンプレートポリヌクレオチドを断片化し、二本鎖断片の一方または両方の末端に基質をライゲートし、それによって複数の断片/基質構築物を生成し、この場合、方法は、(a)少なくとも1つのヌクレオチドを選択的に除去することにより構築物からオーバーハングを除去し、それによって、一本鎖ギャップを含む複数の二本鎖構築物を生成するステップと、(b)構築物中の一本鎖ギャップを修復し、それによって複数の修飾二本鎖ポリヌクレオチドを生成するステップとをさらに含む。ポリヌクレオチド分析物は、ヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)ならびにデオキシシチジン(dC)を概して含む。ポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドは、好ましくは、脱塩基性、アデノシン(A)、ウリジン(U)、5−メチルウリジン(m
5U)、シチジン(C)もしくはグアノシン(G)であるか、または尿素、5,6−ジヒドロキシチミン、チミングリコール、5−ヒドロキシ−5メチルヒダントン、ウラシルグリコール、6−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロチミン、メチルタルトロニル尿素、7,8−ジヒドロ−8−オキソグアニン(8−オキソグアニン)、8−オキソアデニン、fapy−グアニン、メチル−fapy−グアニン、fapy−アデニン、アフラトキシンB1−fapy−グアニン、5−ヒドロキシ−シトシン、5−ヒドロキシ−ウラシル、3−メチルアデニン、7−メチルグアニン、1,N6−エテノアデニン、ヒポキサンチン、5−ヒドロキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−ホルミルウラシルもしくはシス−syn−シクロブタンピリミジン二量体を含む。少なくとも1つのヌクレオチドは、好ましくは、オーバーハングからの10ヌクレオチド以下である。少なくとも1つのヌクレオチドは、好ましくは、オーバーハング中の第一のヌクレオチドである。オーバーハング中のヌクレオチドのすべてが、テンプレートポリヌクレオチド中に存在しないヌクレオシドを好ましくは含む。
【0306】
これらのMuAベースの方法は、英国出願第1314695.6号に開示されている。それらは、英国出願第1406147.7号においても詳細に論じられている。
【0307】
1つまたは複数のヘリカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質Yアダプター(すなわち負荷部分)に付着させてもよい。あるいは、1つまたは複数のヘリカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させた後に、MuA基質Yアダプター(すなわち負荷部分)に付着させてもよい。
【0308】
1つまたは複数の分子ブレーキを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させる前に、MuA基質架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターに付着させてもよい。あるいは、1つまたは複数の分子ブレーキを、二本鎖ポリヌクレオチドおよびMuAトランスポサーゼと接触させた後に、MuA基質架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターに付着させてもよい。
【0309】
ポリヌクレオチド特性評価
本発明は、標的ポリヌクレオチドを特性評価する方法を提供する。標的ポリヌクレオチドをテンプレートポリヌクレオチドまたは目的のポリヌクレオチドと呼ぶこともある。
【0310】
本発明の方法は、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を測定するステップを含む。詳細には、膜貫通ポアを通るポリヌクレオチドの移動を制御する上記方法の1つをステップ(a)として行い、次いで、ステップ(b)において、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときにポリヌクレオチドの1つまたは複数の特性を示す1つまたは複数の測定値を取る。好適な測定は、上で論じている。
【0311】
任意の数の標的ポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本発明の方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100以上の標的ポリヌクレオチドを特性評価することに関わることがある。標的ポリヌクレオチドは、天然に存在するものであることもあり、または人工的なものであることもある。例えば、方法を用いて、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を検証してもよい。方法は、概してインビトロで行われる。
【0312】
方法は、標的ポリヌクレオチドの1、2、3、4または5以上の特性を測定するステップを含むことがある。1つまたは複数の特性は、好ましくは、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される。{i}、{ii}、{iii}、{iv}、{v}、{i、ii}、{i、iii}、{i、iv}、{i、v}、{ii、iii}、{ii、iv}、{ii、v}、{iii、iv}、{iii、v}、{iv、v}、{i、ii、iii}、{i、ii、iv}、{i、ii、v}、{i、iii、iv}、{i、iii、v}、{i、iv、v}、{ii、iii、iv}、{ii、iii、v}、{ii、iv、v}、{iii、iv、v}、{i、ii、iii、iv}、{i、ii、iii、v}、{i、ii、iv、v}、{i、iii、iv、v}、{ii、iii、iv、v}または{i、ii、iii、iv、v}などの、(i)〜(v)のいずれの組み合わせを、本発明に従って測定してもよい。
【0313】
(i)については、ポリヌクレオチドの長さは、例えば、ポリヌクレオチドとポアとの相互作用数、またはポリヌクレオチドとポアとの相互作用の継続時間を判定することによって測定することができる。
【0314】
(ii)については、ポリヌクレオチドの同一性は、いくつかの方法で測定することができる。ポリヌクレオチドの同一性は、ポリヌクレオチドの配列測定とともに測定されることもあり、またはポリヌクレオチドの配列測定なしで測定されることもある。前者は容易であり、ポリヌクレオチドをシークエンシングし、それによって同定する。後者は、いくつかの方法で行うことができる。例えば、ポリヌクレオチド内の特定のモチーフの存在が(ポリヌクレオチドの残存配列を測定せずに)測定されることがある。あるいは、方法の中で特定の電気および/または光シグナルを測定することによって、ポリヌクレオチドを特定の源に由来すると同定することができる。
【0315】
(iii)については、ポリヌクレオチドの配列を以前に記載されているように判定することができる。好適なシークエンシング方法、特に電気的測定を用いるものは、Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al, J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願WO2000/28312に記載されている。
【0316】
(iv)については、二次構造を様々な方法で測定することができる。例えば、方法が電気的測定を含む場合、滞留時間の変化、またはポアに対して、例えばポアを通って、流れる電流の変化を利用して、二次構造が測定されることがある。これによって、一本鎖ポリヌクレオチド領域と二本鎖ポリヌクレオチド領域を区別することが可能になる。
【0317】
(v)については、任意の修飾の存在または不在を測定することができる。方法は、ポリヌクレオチドがメチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つもしくは複数のタンパク質で、または1つもしくは複数の標識、タグもしくはスペーサーで修飾されているか否かを判定するステップを好ましくは含む。特異的修飾は、ポアとの特異的相互作用をもたらすことになり、下で説明する方法を用いてそのような特異的相互作用を測定することができる。例えば、メチルシトシンとシトシンとを、各ヌクレオチドとのその相互作用中にポアに対して、例えばポアを通って、流れる電流に基づいて区別してもよい。
【0318】
ポアが膜内に存在する膜/ポア系の調査に適しているいずれの装置を使用して方法を行ってもよい。膜貫通ポア検知に適しているいずれの装置を使用して方法を行ってもよい。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバーと、該チャンバーを2区画に分ける遮断壁とを備えている。遮断壁は、ポアを含有する膜を形成する開口部を概して有する。あるいは、遮断壁は、ポアが存在する膜を形成する。
【0319】
国際出願番号PCT/GB08/000562(WO2008/102120)に記載されている装置を使用して方法を行ってもよい。
【0320】
方法は、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときポアを通過する電流を測定するステップを含むことがある。したがって、装置は、電位を印加することができ、膜およびポアを横断する電気シグナルを測定することができる電気回路も含むことがある。方法をパッチクランプまたは電圧クランプを用いて行ってもよい。方法は、好ましくは電圧クランプの使用を含む。
【0321】
本発明の方法は、ポリヌクレオチドがポアに対して移動するときポアを通過する電流を測定するステップを含むことがある。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流の測定に好適な条件は、当技術分野において公知であり、実施例において開示する。方法は、概して、電圧を膜およびポアを横断して印加して行われる。使用される電圧は、概して、+5V〜−5V、例えば、+4V〜−4V、+3V〜−3V、または+2V〜−2Vである。使用される電圧は、概して、−600mV〜+600mVまたは−400mV〜+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限と+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲である。使用される電圧は、より好ましくは、100mV〜240mVの範囲、最も好ましくは120mV〜220mVの範囲である。増加した印加電位を使用することによって、ポアによる異なるヌクレオチド間の識別を増すことが可能である。
【0322】
方法は、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの、任意の電荷担体の存在下で概して行われる。電荷担体としては、イオン性液体または有機塩、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウムまたは塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを挙げることができる。上で論じた例示的装置において、塩は、チャンバー内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が概して使用される。KCl、NaCl、およびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムの混合物が好ましい。電荷担体は、膜に対して非対称であることがある。例えば、電荷担体のタイプおよび/または濃度は膜の両側で異なることがある。
【0323】
塩濃度は、飽和時のものでありうる。塩濃度は、3M以下でありうるが、通常は0.1〜2.5M、0.3〜1.9M、0.5〜1.8M、0.7〜1.7M、0.9〜1.6M、または1M〜1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM〜1Mである。方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を用いて行われる。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、ヌクレオチドの存在を示す電流を、正常電流変動のバックグラウンドと対照して同定することを可能にする。
【0324】
方法は、緩衝液の存在下で概して行われる。上で論じた例示的装置において、緩衝液は、チャンバー内の水溶液中に存在する。いずれの緩衝液を本発明の方法において使用してもよい。通常は、緩衝液はリン酸緩衝液である。他の好適な緩衝液は、HEPESおよびTris−HCl緩衝液である。方法は、4.0〜12.0、4.5〜10.0、5.0〜9.0、5.5〜8.8、6.0〜8.7、または7.0〜8.8、または7.5〜8.5のpHで概して行われる。使用されるpHは、好ましくは約7.5である。
【0325】
方法は、0℃〜100℃、15℃〜95℃、16℃〜90℃、17℃〜85℃、18℃〜80℃、19℃〜70℃、または20℃〜60℃で行われることがある。方法は、概して室温で行われる。方法は、場合により、酵素機能を支援する温度、例えば、約37℃で行われる。
【0326】
架橋部分シークエンシング
好ましい実施形態において、標的二本鎖ポリヌクレオチドは、一方の末端に架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターを備えており、方法は、ポリヌクレオチドを膜貫通ポアと、ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアに対して、例えばポアを通って移動するように接触させるステップと、ポリヌクレオチドの両方の鎖がポアに対して移動するときに、ポリヌクレオチドの鎖の1つまたは複数の特性を示す1つまたは複数の測定値を取り、それによって標的二本鎖ポリヌクレオチドを特性評価するステップとを含む。上で論じた実施形態のいずれも、この実施形態に同等に当てはまる。
【0327】
修飾ポリヌクレオチド
本発明の方法において使用する前に、ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼがポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する条件下でポリヌクレオチドをポリメラーゼ、および遊離ヌクレオチドの集団と接触させることによって、修飾されることがあり、ポリメラーゼは、修飾ポリヌクレオチドを形成するときにポリヌクレオチド中のヌクレオチド種の1つまたは複数を異なるヌクレオチド種と置き換える。次いで、その修飾ポリヌクレオチドを本発明の方法において使用してもよい。このタイプの修飾は、英国出願第1403096.9号に記載されている。上で論じたポリメラーゼのいずれを使用してもよい。ポリメラーゼは、好ましくは、クレノウまたは9
〇Northである。
【0328】
ポリメラーゼがポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して修飾ポリヌクレオチドを形成する条件下で、ポリヌクレオチドをポリメラーゼと接触させる。そのような条件は、当技術分野において公知である。例えば、概して、New England Biolabs(登録商標)からの緩衝液などの市販のポリメラーゼ緩衝液中でポリヌクレオチドをポリメラーゼと接触させる。温度は、好ましくは、クレノウについては20〜37℃、または9
〇Northについては60〜75℃である。プライマーまたは3’ヘアピンはポリメラーゼ伸長の核形成点として概して使用される。本発明に従って、すなわち、(a)1つまたは複数の負荷部分と結合している1つまたは複数のポリメラーゼを用意するステップ、および(b)1つまたは複数の負荷部分を標的ポリヌクレオチドに付着させるステップによって、ポリメラーゼを標的ポリヌクレオチドと接触させてもよい。
【0329】
膜貫通ポアを使用するポリヌクレオチドの特性評価、例えばシークエンシングは、k個のヌクレオチド(kは正の整数である)で構成されている重合体ユニット(すなわち「k−mer」)の分析を概して含む。これは、国際出願番号PCT/GB2012/052343(WO2013/041878として公開された)において論じられている。異なるk−merについての電流測定値間に明確な差があることが望ましいが、これらの測定値の一部が重複することはよくあることである。特に、k−mer中の重合体ユニットの数が多いと、すなわちkの値が大きいと、ポリヌクレオチドについての情報、例えばポリヌクレオチドの基礎配列の推定値の導出が害されて、異なるk−merによって生じた測定値を分離することが困難になりうる。
【0330】
ポリヌクレオチド中の1つまたは複数のヌクレオチド種を修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド種と置き換えることによって、修飾ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中のものとは異なるk−merを含有する。修飾ポリヌクレオチド中の異なるk−merは、ポリヌクレオチド中のk−merとは異なる電流測定値を有することができ、そのため修飾ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドとは異なる情報を与える。修飾ポリヌクレオチドからの追加情報は、ポリヌクレオチドの特性評価を容易にすることができる。場合によっては、修飾ポリヌクレオチド自体を特性評価するほうが容易であることがある。例えば、電流測定値間の離隔が増したもしくは明確な離隔を有するk−mer、または減少したノイズを有するk−merを含むように、修飾ポリヌクレオチドを設計してもよい。
【0331】
ポリメラーゼは、好ましくは、修飾ポリヌクレオチドを形成するときにポリヌクレオチド中のヌクレオチド種の2つ以上を異なるヌクレオチド種と置き換える。ポリメラーゼは、ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド種の各々を異質のヌクレオチド種と置き換えることがある。ポリメラーゼは、ポリヌクレオチド中の2つ以上のヌクレオチド種の各々を同じヌクレオチド種と置き換えることがある。
【0332】
ポリヌクレオチドがDNAである場合、修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド種は、概して、アデニン、グアニン、チミン、シトシンもしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含む、および/またはデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジンもしくはデオキシメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。ポリヌクレオチドがRNAである場合、修飾ポリヌクレオチド中の異なるヌクレオチド種は、概して、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシンもしくはメチルシトシンとは異なる核酸塩基を含む、および/またはアデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジンもしくはメチルシチジンとは異なるヌクレオシドを含む。異なるヌクレオチド種は、上で論じたユニバーサルヌクレオチドのいずれであってもよい。
【0333】
ポリメラーゼは、1つまたは複数のヌクレオチド種を、該1つまたは複数のヌクレオチド種に不在の化学基または原子を含む異なるヌクレオチド種と置き換えることがある。化学基は、プロピニル基、チオ基、オキソ基、メチル基、ヒドロキシメチル基、ホルミル基、カルボキシ基、カルボニル基、ベンジル基、プロパルギル基、またはプロパルギルアミン基でありうる。
【0334】
ポリメラーゼは、1つまたは複数のヌクレオチド種を、該1つまたは複数のヌクレオチド種中に存在する化学基または原子を欠く異なるヌクレオチド種と置き換えることがある。ポリメラーゼは、ヌクレオチド種の1つまたは複数を、改変された電気陰性度を有する異なるヌクレオチド種で置き換えることがある。改変された電気陰性度を有する異なるヌクレオチド種は、好ましくはハロゲン原子を含む。
【0335】
方法は、好ましくは、修飾ポリヌクレオチド中の1つまたは複数の異なるヌクレオチド種から核酸塩基を選択的に除去するステップをさらに含む。
【0336】
製品
本発明は、本発明を用いて修飾された標的ポリヌクレオチドも提供する。本発明は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質が結合している負荷部分も提供する。本発明の方法に関して上で論じた実施形態のいずれも、本発明のポリヌクレオチドおよび部分に当てはまる。
【0337】
キット
本発明は、1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を標的ポリヌクレオチドに付着させるためのキットであって、(a)1つまたは複数の負荷部分と結合している1つまたは複数のポリヌクレオチド結合タンパク質と、(b)リガーゼとを含むキットも提供する。上で論じた実施形態のいずれも、このキットに当てはまる。
【0338】
キットは、好ましくは、膜貫通ポアを通る二本鎖ポリヌクレオチド用のものであり、キットは、好ましくは、付着している1つまたは複数のヘリカーゼを有するYアダプターと、付着している1つまたは複数の分子ブレーキを有する架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターとを含む。Yアダプターは、ポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第一のアンカーを好ましくは含み、架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターは、ポリヌクレオチドを膜とカップリングするための1つまたは複数の第二のアンカーを好ましくは含み、架橋部分(またはヘアピンループ)アダプターの膜とのカップリング強度は、Yアダプターの膜とのカップリング強度より好ましくは大きい。
【0339】
キットは、好ましくは、膜貫通ポアをさらに含む。上で論じた膜およびポアのいずれがキットの中にあってもよい。
【0340】
発明の方法に関して上で論じた実施形態のいずれも、キットに同等に当てはまる。キットは、膜の成分、例えば、両親媒性層またはトリブロック共重合体膜の成分をさらに含むことがある。
【0341】
本発明のキットは、上述の実施形態のいずれかを実施できるようにする1つまたは複数の他の試薬または器具をさらに含むことがある。そのような試薬または器具としては、次のものの1つまたは複数が挙げられる:好適な緩衝液(水溶液)、対象から試料を得るための手段(例えば、容器、もしくは針を備えている器具)、ポリヌクレオチドを増幅および/もしくは発現させるための手段、上で定義した通りの膜、または電圧もしくはパッチクランプ装置。試薬は、流体試料が該試薬を再懸濁するように、乾燥状態でキット内に存在することがある。キットは、場合により、キットを本発明の方法で使用できるようにする説明書、またはその方法をどの生物に使用してもよいのかに関する詳説も含むことがある。
【0342】
以下の実施例は、本発明を例証するものである。
【実施例1】
【0343】
この実施例は、ポリヌクレオチド結合タンパク質を負荷部分と結合するための試料調製手順を説明するものである。
【0344】
材料および方法
TrwC Cba−L376C/Q594A/K762C(6.5μM、突然変異L376C/Q594A/K762Cを有する配列番号25)とDNAヘアピンアダプター(4μM、配列番号29は、配列番号30の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーに3’末端が付着されていた)を緩衝液(100mM KCl、100mM CAPS(pH10)および1mM EDTA)中で混合し、30分間インキュベートした。TRIS(1M TRIS pH7.0の0.1容量)をそのDNA/酵素混合物に添加し、その混合物を十分に混合した。最後に、DMF中の1.29mM ビスマレイミドエタンの0.025容量を添加し、その混合物をさらに15分間インキュベートした。各成分の最終濃度は次の通りであった:TrwC Cba−L376C/Q594A/K762C(5.8μM)、DNAヘアピンアダプター(3.56μM)、緩衝液(89mM KCl、89mM CAPS、pH10、0.89mM EDTA、89mM Tris(pH7))およびビスマレイミドエタン(28.7μM)。この混合物は試料1と称した。
【0345】
次いで、記載の手順を用い、8mL POROS HQ−10カラム(FPLC)および次の溶出緩衝液(緩衝液A−50mMエタノールアミン、300mM NaCl、0.1% β−OTG、1mM TCEP、pH10.0、緩衝液B−50mMエタノールアミン、700mM NaCl、0.1% β−OTG、1mM TCEP、pH10.0)を使用して、そのDNAヘアピンアダプターと事前結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cを精製した。試料1をカラムに負荷し、結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cを有さない一切のDNA、またはDNAと結合していない酵素を、5カラム容量の緩衝液Aを使用してカラムから洗い流した。次いで、そのDNAヘアピンアダプターと事前結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cを、11.8カラム容量の0〜100%緩衝液Bを用いて溶出した。この試料は、試料2と称する。P1と標識されたピークがDNAヘアピンアダプターと事前結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cに対応したFPLCトレースの例を
図1に示す。
【0346】
次いで、5mL Histrap HPカラム(FPLC)を使用し、次の溶出緩衝液(緩衝液C−20mM Na−CAPS、100mM NaCl、0.1% β−OTG、1mM TCEP、pH10.0、緩衝液D−20mM Na−CAPS、2M NaCl、10%(w/v)グリセロール、0.1% β−OTG、1mM TCEP、pH10.0、および緩衝液E−20mM Na−CAPS、100mM NaCl、300mM イミダゾール、0.1% β−OTG、1mM TCEP、pH10.0)を使用して、試料2をさらに精製した。試料2をカラムに負荷し、結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cを有さない一切のDNA、またはDNAと結合していない酵素を、緩衝液Cでカラムから洗い流した。次いでカラムを緩衝液Dで洗浄し、次いで緩衝液Cで再び洗浄した。次いで最後に、そのDNAヘアピンアダプターと事前結合しているTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cを、10カラム容量の0〜100%緩衝液Eで溶出した。次いで、その主溶出ピーク(一例を
図2に示し、主ピークにP2と標識する)をプールし、濃度を測定し、TBE(ネイティブ)PAGEおよびSDS PAGEゲルを使用してそのDNA試料を分析した。TBE(ネイティブ)PAGEは、4〜20% TBEゲルであり、これを150Vで25分間泳動させ、次いで、SYBRゴールド染色剤を使用して染色した。この染色剤によって試料中の(酵素が結合している、またはしていない)一切のDNAの可視化が可能になった。
図3は、このゲルを示す。カラム4〜6は、精製後のDNAが依然として酵素と結合していたことを示す。SDS PAGEは、10% Bis−Trisゲル、XT MOPSであり、これを200Vで60分間泳動させ、次いで、SYPROルビー染色剤を使用して染色した。この染色剤によって試料中の(DNAと結合している、またはしていない)一切の酵素の可視化が可能になった。
図4は、カラム4〜6では精製後に酵素がビスマレイミドエタンリンカーを用いてDNA上に制約されていることを示す。
【実施例2】
【0347】
この実施例は、ポリヌクレオチド結合タンパク質を負荷部分と結合するための試料調製手順を説明するものである。
【0348】
材料および方法
T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(3μM、突然変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号24)とDNA Yアダプター(500nM、配列番号26をDNA鎖X(=配列番号28の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSp18スペーサーに3’末端が付着されている配列番号27の5’末端に3’末端が付着されている30個のiSpC3スペーサー)にハイブリダイズした)を緩衝液(50mM HEPES、100mM KOAc(pH8)およびEDTA(1mM))中で混合し、TMAD(100μM)を添加し、60分間、室温でインキュベートした。次いで、その混合物をKCl/ATP溶液(最終、500mM KCl、1mM ATP)で1:1希釈し、周囲温度で25分間インキュベートした。この混合物は試料3と称した。
【0349】
次いで、SPRIビーズを使用してこの試料を精製した。下記の手順を用いてSPRIビーズを準備した−
1.セロロジカルピペットを使用して、洗浄緩衝液(30mL、50mM Tris pH7.5、2.5M NaCl)を50mLファルコンチューブに移した。
2.Sera−Mag Speed Beadカルボン酸修飾磁性粒子(Thermo)のストックポットをボルテックスし、ビーズを再懸濁させた。
3.ビーズ懸濁液(600μL)を30mLの洗浄緩衝液(ステップ1)に移し、ボルテックスしてビーズを再懸濁させた。
4.次いで、ファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラックに入れ、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させ、セロロジカルピペットを使用して上清を除去した。
5.さらなる30mLの洗浄緩衝液をチューブに添加し、チューブを十分にボルテックスしてビーズを再懸濁させた。
6.次いで、ファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラックに戻し、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させた。
7.溶液が透明になったら上清をチューブから除去した。
8.ステップ5、6および7を順序通りにさらに3回繰り返した。
9.結合緩衝液(30mL、50mM Tris pH7.5、2.5M NaCl、20% PEG8000)をステップ8からのファルコンチューブに添加し、次いで、チューブをボルテックスしてビーズを再懸濁させた。
【0350】
次いで、使用に先立ちビーズを4℃で保存したが、精製中はビーズを周囲条件下で使用した。
【0351】
試料3は、下に概要を示す手順を用いて精製した−
1.上記ステップ9からのチューブを、次いでボルテックスしてビーズを再懸濁させ、18.5mL(の試料3)を清浄な50mLファルコンチューブに移した。
2.そのチューブをDynaMag−50マグネティックラックに入れ、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させた。ビーズを結合緩衝液(50mM Tris pH7.5、2.5M NaCl、20% PEG8000)に懸濁させたので、堆積に10分を超えて時間がかかることがあったことに留意されたい。
3.溶液が透明になったら上清を除去し、18.5mLの結合緩衝液を添加し、試料を十分にボルテックスしてビーズを再懸濁させた。
4.そのチューブをDynaMag−50マグネティックラックに入れ、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させた。ビーズを結合緩衝液(50mM Tris pH7.5、2.5M NaCl、20% PEG8000)に懸濁させたので、ビーズの堆積に10分を超えて時間がかかることがあったことに留意されたい。
5.次いで、ステップ3を繰り返した。
この時点以降、試料をピペット混合せず、ボルテックスもしなかった。
6.そのファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラックに戻し、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させた。緩衝液がPEG8000を含有したので、ビーズの堆積に10分を超えて時間がかかることがあったことに留意されたい。
7.セロロジカルピペットを使用して上清を除去し、ビーズを覆うのに十分な(約25mL)結合緩衝液と交換した。
8.ファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラック内に残し、チューブをその軸を中心に時計回りに90°まで回転させて、堆積されたビーズを、チューブの側面の周りで、該ビーズが磁石に隣接した新たな位置に落ち着くまで動かした。
9.ファルコンチューブがその原位置に戻るまで、ステップ8をさらに3回繰り返した。
10.セロロジカルピペットを使用して上清を除去し、次いで、できる限り多くの残留上清を除去した。
11.ファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラックから取り出し、溶出緩衝液(2.5mL、20mM NaCl、50mM Tris、pH7.5)を添加した。
12.チューブを軽くたたくことによって穏やかに撹拌してビーズを再懸濁させ、次いで、試料を周囲条件下で5分間インキュベートした。
13.ファルコンチューブをDynaMag−50マグネティックラックに戻し、磁石に隣接したチューブの側面にビーズを堆積させ、上清を5mL Protein LoBind微量遠心チューブに移した。
14.ステップ13からの溶出物質を溶出緩衝液の添加によって2倍希釈した。
15.その物質を4℃で保存した後、チューブに分取した。
【0352】
次いで、ゲルを45分間泳動させたことを除いて前に実施例1で説明したようにTBE PAGEゲルを用いて、DNAと結合している得られた酵素を分析した。このゲルを
図5に示す。カラム3は、SPRI精製がDNA Yアダプターと結合している単一の酵素を精製したことを示す。
【実施例3】
【0353】
この実施例は、Yアダプターと事前結合している酵素およびヘアピンアダプターと結合している酵素と、ゲノム二本鎖DNAのランダム鎖とのライゲーションのための試料調製手順を説明するものである。
【0354】
材料および方法
NEBNext dAテーリングモジュール(NEB)を使用して、ランダムゲノム二本鎖DNA配列をdAテーリングした。さらなる精製は必要なかった。dAテーリングされたゲノムDNA(30μL)を、T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360Cが事前結合しているYアダプターDNA(10μL、200nM)およびTrwC Cba−L376C/Q594A/K762Cが事前結合しているヘアピンアダプター(10μL、1μM)およびBlunt/TAリガーゼマスターミックス(50μL)と混合し、その試料を10回反転させて混合した。次いで、試料を微量遠心機で短時間沈降させた。次いで、試料を10分間、室温でインキュベートした。容量で0.4倍のAgencourt AMPure XPビーズを製造業者のプロトコールに従って使用して、しかし、下で詳説するように次の洗浄緩衝液(750mM NaCl、10% PEG8000、50mM Tris.HCl pH8)および溶出緩衝液(40mM CAPS pH10、40mM KClとともに適切なDNAテザー)を使用して、適合DNAを精製した。
【0355】
製造業者のプロトコールに従った後、ペレット化したビーズを150μl洗浄緩衝液に30秒間浸した。次いで、ペレットを乱さないように注意しながら注意深く洗浄緩衝液を吸引した。次いで、試料を微量遠心機で短時間回転させて、過剰な洗浄緩衝液をビーズから十分に排出した。次いで、チューブを磁石上に置き直してビーズをペレット化し、次いで、おおよそ1〜2分間放置した。次いで、最後に、残存洗浄緩衝液を吸引し、ペレット化したビーズを25μl溶出緩衝液に再懸濁させ、十分に混合した。次いで、試料を10分間放置した後、ペレット化し、溶出物を除去した。最後に、コレステロールが一方の末端に付着しているDNA鎖を試料にハイブリダイズさせた。これが、次に実施例4で試験した試料DNAであった。
【実施例4】
【0356】
この実施例は、上記試料調製手順後、生成されたDNA構築物が、MspAナノポアを通るDNAの移動を制御することができる事前結合している機能性酵素(T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360CおよびTrwC Cba−L376C/Q594A/K762C)を有することを例証するものであった。
【0357】
材料および方法
事前結合している両方の酵素を有する実施例3において生成したDNA構築物(ナノポア系に添加した最終濃度0.1nM)(
図6のデータを参照されたい)を緩衝液(ナノポア系に添加した最終濃度は500mM KCl、25mMリン酸カリウム pH8.0であった)、ATP(ナノポア系に添加した最終濃度2mM)およびMgCl
2(ナノポア系に添加した最終濃度2mM)に添加した。これが、次にナノポア系に添加したプレミックスであった(総容量150μL)。
【0358】
緩衝液(25mMリン酸カリウム、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0)中のブロック共重合体に挿入された単一MspAナノポアから電気的測定値を得た。ブロック共重合体に挿入された単一ポアを得た後に、次いで緩衝液(2mL、25mMリン酸カリウム、150mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0)をその系に流して一切の過剰MspAナノポアを除去した。構築物Yと事前結合している酵素(T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360CとTrwC Cba−L376C/Q594A/K762C両方の酵素が事前結合している)、燃料(MgCl
2およびATP)プレミックス(合計150μL)を、次いでその単一ナノポア実験系に流し、−120mVの保持電位(2秒間の+60mVへの電位反転を伴う)で6時間、実験を実行し、ヘリカーゼによって制御されるDNAの移動をモニターした。
【0359】
結果
T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360CおよびTrwC Cba−L376C/Q594A/K762C両方を並行して使用してDNA構築物Yについてヘリカーゼによって制御されるDNAの移動を観察した(
図6を参照されたい)。この図は、ランダムゲノム二本鎖DNAに対応した、図中に1および2と標識されている領域の、制御された移行を示す。ヘアピンアダプター中に存在するスペーサーがナノポアを通って移行すると、増加した電流の流れが観察された。標識3を参照されたい。したがって、この試料のヘリカーゼによって制御されるDNAの移動により、この試料調製手順が成功したことが示された。領域1および2がこの酵素の制御下でナノポアを通って移行し、その増加した電流の流れのスパイクを用いてそれらの領域間での移行がはっきりと確認されたからである。
【実施例5】
【0360】
MuA前負荷酵素アダプター
この実施例において、本発明者らは、酵素をMuAアダプターと事前結合することができること、およびこのことがMuAの機能に影響を及ぼさない、すなわち、MuAが依然として該アダプターをDNAに付着させることができることを示した。
【0361】
T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(突然変異4C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号24)をMuA Yアダプターと事前結合した。
図7で例証されるように、アダプターピークがシフトする(左は事前結合していないものであり、右は事前結合しているものである)。
【0362】
タグメンテーションは、アダプターの断片化およびゲノムDNAへの付着にトランスポサーゼを使用する。タグメンテーションの条件は、次の通りであった:アダプターに酵素を前負荷した。次のものを使用してタグメンテーションを行った:400nMのT4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(突然変異4C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号24)がアダプターに事前結合している100nM MuA四量体。25ng・ul
−1標的λDNA。20℃で25mM Tris−HCl pH8.0、30℃で1時間、10mM MgCl
2、110mM NaCl、0.05% Triton X−100、10%グリセロール。
【0363】
Agilent Bioanalyserで可視化するために、T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(突然変異4C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号24)およびMuAを75℃で10分間、加熱不活性化させた。
図8で例証されるように、標的DNAのタグメンテーションに対する有害作用は見られなかった。これは、標的DNAが不鮮明になることによって分かる(左は事前結合していないものであり、右は事前結合しているものである)。結果は、酵素が付着したかどうかは問題でなく、断片化されたゲノムDNAが同じ断片サイズ分布を有することを示す。
【0364】
前に説明したタグメンテーションプロトコールを用いて生成したDNA試料を、実施例4で説明したのと同様の手順を用いて、ヘリカーゼとしてT4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360Cのみを使用して試験した。
図9で示されるように、結果として得た試料ライブラリーをチップに直接付加することができ、ヘリカーゼによって制御されるDNA移動が観察された。
【実施例6】
【0365】
実施例は2つのDNA成分上への2つの異なる酵素の負荷を説明し、負荷された2つのDNA成分を、次いで、一緒にライゲートし、ゲノムDNAに付着させた。下の例は、2つの異なる酵素の負荷を説明するものであるが、この手順は、同じである2つの酵素の付着に同等に適用可能である。
【0366】
材料および方法
実施例2で説明したのと同じプロトコールを辿り、2つの酵素(
図10におけるE1=T4 Dda−(H82R/E94C/A360C)(突然変異H82R/E94C/A360Cを有する配列番号24)およびE2=T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C(突然変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号24))を2つのDNA構築物(
図10中のAピースおよびENDピース)に別々に負荷し、その後、実施例2において説明したように精製した。Aピースは、一緒にハイブリダイズした2つのDNAオリゴを含んだ(このオリゴヌクレオチドの完全な説明については
図10の図説を参照されたい)。ENDピースは、一緒にハイブリダイズした3つのDNAオリゴを含んだ(このオリゴヌクレオチドの完全な説明については
図10の図説を参照されたい)。
【0367】
次いで、下で説明するプロトコールを用いて、その精製された酵素負荷AピースおよびENDピースDNAアダプターを、ゲノムλdsDNA(テンプレートおよび補体SEQID)の3.6kbセクションに、ヘアピンアダプター3(配列番号40の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーに3’末端が付着されている、5’リン酸エステルを有する配列番号39)とともにライゲートした。
【0368】
3.6kbゲノムDNA(0.34μL、最終5nM、配列番号42にハイブリダイズされた配列番号41)を、AピースE1−DNA(6.25uL、最終50nM)、ENDピースE2−DNA(3.125uL、最終25nM)、ヘアピン3(1.25uL、最終25nM)とともにライゲーション緩衝液(5uL、最終2mM ATPγS、4mM MgCl
2、10mM Hepes pH8.0、6% PEG8000、10mM NaCl)、Quick T4 DNAリガーゼNEB(2.5uL、最終200U/uL)およびヌクレアーゼ不含水(8uL)と混合した。試料を10分間、室温でインキュベートした。最後に、コレステロールが一方の末端に付着しているDNA鎖を試料にハイブリダイズさせた。この試料4をさらに精製せず、実施例4で説明したようなナノポア電気生理学で使用した。
【0369】
結果
T4 Dda−(H82R/E94C/A360C)およびT4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360C両方を並行して使用して試料4におけるDNA構築物(
図11に示されているDNA構築物を参照されたい)についてヘリカーゼによって制御されるDNAの移動を観察した(
図11を参照されたい)。この図は、ゲノム二本鎖DNAに対応した、図中に1および2と標識されている領域の、制御された移行を示す。ヘアピンアダプター中に存在するスペーサーがナノポアを通って移行すると、増加した電流の流れが観察された。矢印標識3を参照されたい。したがって、この試料のヘリカーゼによって制御されるDNAの移動により、この試料調製手順が成功したことが示された。領域1および2がこの酵素の制御下でナノポアを通って移行し、その増加した電流の流れのスパイクを用いてそれらの領域間での移行がはっきりと確認されたからである。
【実施例7】
【0370】
この実施例は、負荷部分上へのヘリカーゼおよびポリメラーゼの前負荷を説明するものであり、前負荷された負荷部分を、次いで、DNAの3.6kB鎖にライゲートした。次いで、ポリメラーゼを使用して、テンプレートと、DNAの3.6kB鎖の相補鎖の両方のコピーを作った。ライゲーションおよび重合ステップの略画表現を
図17に示す。
【0371】
材料および方法
ヘリカーゼ−リーダー複合体(
図12セクションAに示す略図)は、配列番号26の代わりに配列番号43を用いたことを除いて、実施例2で説明した通りに調製した。
図15レーン3は、TBE PAGEで泳動させたこの試料を示し、このTBE PAGEは、酵素がDNAと結合したことを示している(cと標識されているバンド)。
【0372】
ポリメラーゼ−鎖複合体(
図12セクションBに示す略図)は、Phi29−A411C/Q560C(X1と標識されている、突然変異A411C/Q560Cを有する配列番号9)をDNAヘアピン鎖(配列番号45の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーにその3’末端が付着されている配列番号44)上に事前結合させることによって調製した。Zeba 0.5ml脱塩カラム(89882、Piercenet)をプロトコール(https://www.piercenet.com/instructions/2161515.pdf)に従って使用して、Phi29−A411C/Q560Cを次の緩衝液(50mM tris pH8、20mM (NH
4)
2SO
4、10mM MgCl
2、4%グリセロール)に緩衝液交換し、400nMに希釈した。DNAヘアピン鎖(配列番号45の5’末端に反対側の末端が付着されている4個のiSpC3スペーサーにその3’末端が付着されている配列番号44)をPhi29−A411C/Q560Cに付加し、それによって、1:1のPhi29−A411C/Q560C:DNAヘアピン鎖比を有する試料(400nM)を生成した(この試料は、
図15のバンドEに対応した)。この試料を15分間、室温でインキュベートした。次いで、TMAD(125uM)を添加し、その試料をさらに15分間、室温でインキュベートした。次いで、使用した緩衝液が(10mM HEPES pH8、10mM MgCl
2)であったことを除いて前に説明した通りその試料を再び緩衝液交換した。次いで、この試料をヘリカーゼ−リーダー複合体(このヘリカーゼ−リーダー複合体は
図15のバンドCに対応した)と1:1混合して、
図12のセクションCに示すヘリカーゼ/ポリメラーゼリーダー複合体を生成した。
【0373】
2:1過剰のヘアピン(配列番号47)を用いて、2:1過剰で、そのヘリカーゼ/ポリメラーゼリーダー複合体を3.6kb DNA鎖(配列番号46)上にライゲートした。ライゲーションは、5× ATPライゲーション緩衝液(5×:150mM Tris pH8、50mM MgCl
2、5mM ATP、30%PEG8000)中、10% T4 quickリガーゼの存在下で行った。試料を15分間、室温でインキュベートした。ライゲーションステップ後に生成された構築物を
図13に示す。ポリメラーゼ充填ステップのために、dNTP(0.5mM)を添加した。次いでその試料を30℃で1時間インキュベートした。最後に、配列番号31を5倍過剰で試料に添加し、試料を最低15分、室温でインキュベートした。
【0374】
最終試料5をさらに精製せず、実施例4で説明したようなナノポア電気生理学で使用した。
【0375】
結果
T4 Dda−E94C/C109A/C136A/A360Cを使用して試料5におけるDNA構築物(
図13に示されているDNA構築物を参照されたい)についてヘリカーゼによって制御されるDNAの移動を観察した(
図14を参照されたい)。この図は、元の3.6kB DNA鎖(セクション1および2)およびポリメラーゼによって生成された相補鎖(セクション4および5)に対応する、図中の1、2、4、および5と標識された領域の制御された移行を示す。最終構築物のヘアピン中に存在するスペーサー(
図14の上部構築物略図にxとして示され、3と標識されている)がナノポアを通って移行すると、増加した電流の流れが観察された。矢印標識3を参照されたい。したがって、この試料のヘリカーゼによって制御されるDNAの移動によって、この試料ライゲーションおよび重合調製手順が成功したことが示された。領域1、2ならびに重合領域4および5がこの酵素の制御下でナノポアを通って移行し、その増加した電流の流れのスパイクを用いて元の鎖領域と重合鎖領域間での移行がはっきりと確認されたからである。