特許第6749246号(P6749246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749246
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   F16K31/06 305Q
   F16K31/06 305J
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305G
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-563130(P2016-563130)
(86)(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公表番号】特表2017-516957(P2017-516957A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061832
(87)【国際公開番号】WO2015185437
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】14171133.3
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505462622
【氏名又は名称】ダンフォス アクチ−セルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ビルケルンド,ミカエル
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−524130(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103185164(CN,A)
【文献】 特表平09−508338(JP,A)
【文献】 西独国特許第1168725(DE,B)
【文献】 特開2014−035006(JP,A)
【文献】 特開2013−137094(JP,A)
【文献】 特開2007−092825(JP,A)
【文献】 特開2013−174257(JP,A)
【文献】 特開2005−024077(JP,A)
【文献】 実開昭63−057879(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/090606(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0087714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00− 1/08, 1/32− 1/54,
31/06−31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポート(2)と、第2のポート(3)と、前記第1のポート(2)と前記第2のポート(3)との間に配設された弁要素(4)および弁座(5)と、コイル(12)と、ヨーク装置(14〜16)とを備え、前記コイル(12)が前記ヨーク装置(14〜16)に磁気結合され、前記ヨーク装置(14〜16)が可動アーマチャ(16)を有する、電磁弁(1)において、
前記弁要素(4)が、前記弁要素(4)の第1の側(6)の第1の圧力と前記弁要素(4)の第2の側(7)の第2の圧力との圧力差により制御され、前記第1の圧力および前記第2の圧力の少なくとも一方が、前記アーマチャ(16)によって制御され、
前記アーマチャ(16)が、第1の端部における第1の前面(18)と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部における第2の前面(19)とを備え、前記第1の前面(18)および前記第2の前面(19)が第1の流路(21)により接続され、
前記第1の流路(21)が、前記第1の流路を通って流れる流体の流量を低く抑える第1の絞り手段を有し、さらに、
第2の流路(20)が、前記弁要素(4)の前記第1の側(6)と前記第2の側(7)とを接続し、前記第2の流路(20)が、前記第2の流路(20)を通って流れる流体の低流量を維持する第2の絞り手段を有し、
前記第2の流路(20)が、前記弁要素(4)と前記弁要素(4)を取り囲むハウジング(10)の壁との間に配設され、かつ前記第1の流路(21)が、前記アーマチャ(16)と前記アーマチャ(16)を取り囲む前記ハウジング(10)の壁との間に配設され、
前記弁要素(4)とアーマチャ(16)は前記ハウジング(10)内に前後に配置され、前記第1の絞り手段により前記アーマチュア(16)の移動速度が低減され、前記第2の絞り手段により前記弁要素(4)の移動速度が低減されて前記電磁弁(1)の騒音を低減することを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項2】
前記ハウジング(10)が、前記アーマチャ(16)および前記弁要素(4)に対して同じ直径を有する筒として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第1の絞り手段および/または前記第2の絞り手段が、前記流路の壁に表面構造を備えることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記表面構造が、鋸歯状外形(31)であることを特徴とする、請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記鋸歯状外形(31)が、前記弁要素(4)および/または前記アーマチャ(16)の周囲に周方向にまたはねじ状に延在する溝(33)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁要素(4)が貫通チャネル(8)を備え、パイロット弁(9)が前記アーマチャ(16)に面する前記チャネル(8)の端部に配設され、前記アーマチャ(16)が前記パイロット弁(9)に作用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記パイロット弁(9)がパイロット弁要素(27)を備え、前記アーマチャ(16)が前記パイロット弁要素(27)を保持することを特徴とする、請求項6に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記弁要素(4)が、前記弁座(5)近傍の端部に絞りコーン(24)を備え、前記コーン(24)が、前記弁座(5)に取り囲まれた開口(25)に挿入可能であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記弁要素(4)が、前記弁座(5)の内径の少なくとも50%に相当するストロークを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項10】
前記弁要素(4)および/または前記アーマチャ(16)には、耐圧性のプラスチック材料で作製された閉塞部材(35、36)が設けられることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項11】
前記弁要素(4)には、ストローク制限手段(37)が設けられることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項12】
前記ストローク制限手段が、ハウジング部と協働する肩部の形態であることを特徴とする、請求項11に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のポートと、第2のポートと、前記第1のポートと前記第2のポートとの間に配設された弁要素および弁座と、コイルと、ヨーク装置とを備え、前記コイルが前記ヨーク装置に磁気結合され、前記ヨーク装置が可動アーマチャを有する、電磁弁に関する。電磁弁において、前記弁要素が、前記弁要素の第1の側の第1の圧力と前記弁要素の第2の側の第2の圧力との圧力差により制御され、前記第1の圧力および前記第2の圧力の少なくとも一方が、前記アーマチャによって制御され、前記アーマチャが、第1の端部における第1の前面と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部における第2の前面とを備え、前記第1の前面および前記第2の前面が第1の流路により接続される、電磁弁に関する。
このような弁は、2つのポートを備えた電磁膜サーボ弁を明示している国際公開第2010/090606号パンフレットから公知である。膜の形態の弁要素は、2つのポートの間に配設された弁座と協働する。この弁は、コイルと、ヨーク装置とを備え、コイルがヨーク装置と磁気結合される。このヨーク装置は、可動アーマチャを形成するプランジャを備える。弁要素は、弁要素の下方側の第1の圧力と弁要素の上方側の第2の圧力との圧力差により制御される。第2の圧力は、アーマチャによって制御される。このアーマチャは、第1の前面と、第2の前面とを備える。両前面が、プランジャと、プランジャが配設された管との間の隙間により形成された流路により接続される。
【背景技術】
【0002】
このような電磁弁は、例えば、米国特許第5460349A号明細書または米国特許第6783110B2号明細書または独国実用新案第202005013233U1号明細書で知られている。
【0003】
かかる電磁弁を、例えば、冷却または空調システム内の膨張弁として使用することができる。しかしながら、他の用途も可能である。
【0004】
弁要素および弁座は一緒になって、一方のポートから他方のポートに流れる流体に対する可変流動抵抗を形成する。弁座に対する弁要素の位置は、ヨーク装置およびコイルにより制御される。コイルに電流が供給されると、可動アーマチャの位置が変化する。
【0005】
かかる電磁弁は、多くの場合、作動時に一定の騒音を出す。このような騒音は、「カチッという音」の形態でありかつ「ウォータハンマ」の形態であり得る。
独国特許発明第1168725号明細書には、電磁サーボ弁を有する磁気弁が記載されている。この弁は、2つのポートと、前記2つのポートの間に配設された弁要素および弁座と、コイルとヨーク装置とを備える。このヨーク装置が2つの可動アーマチャを有し、その一方が、コイルに対する電流供給により発生する磁力により制御される弁要素の機能を有する。
独国特許出願公開第10201038900号明細書には、2つのポートと、前記2つのポートの間に配設された弁要素および弁座とを備える電磁弁が示されている。この弁は、コイルと、前記コイルに磁気結合され可動アーマチャを有するヨーク装置とを備える。この弁要素は、可動アーマチャにより制御される。この目的のために、可動アーマチャは、弁要素の段部に係合する一種のケージに接続される。可動アーマチャが磁力により持ち上げられると、弁要素が弁座から離れる方向に移動する。
独国特許出願公開第102010003958号明細書には、基本的に同じ弁の着想が示されている。
独国特許出願公開第19954617号明細書には、2つのポートと、前記2つのポートの間に配設された弁要素および弁座とを有するさらなる電磁弁が示されている。さらにまた、この弁は、コイルと、ヨーク装置とを備え、前記コイルがヨーク装置に磁気結合される。このヨーク装置は、可動アーマチャを有する。この弁座は、ピストンに位置する。このピストンは、ピストン下方の圧力が所定レベルを超えて上がると、弁要素の方向に移動する。このようにして、この常開弁が閉弁される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎となる目的は、騒音を低く抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、前記弁要素が、前記弁要素の第1の側の第1の圧力と前記弁要素の第2の側の第2の圧力との圧力差により制御され、前記第1の圧力および前記第2の圧力の少なくとも一方が、前記アーマチャによって制御され、前記アーマチャが、第1の端部における第1の前面と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部における第2の前面とを備え、前記第1の前面および前記第2の前面が第1の流路により接続され、前記第1の流路が、前記第1の流路を通って流れる流体の流量を低く抑える第1の絞り手段を有する、冒頭で説明した電磁弁で解決される。
【0008】
アーマチャを移動させると、アーマチャの第1の前面における室の容積が増減する。そのため、この室内または室外に一定体積の流体を移動させなければならない。この流体は、第1の流路を通して移動させる。絞り手段は、流体の流れを小さく抑えることができるように、その移動に対する抵抗を形成する。アーマチャが圧力のみを制御しかつアーマチャが低速でのみ移動するため、弁要素は、同様の低速で移動する。速度が小さいほど騒音が低くなる。弁要素が圧力制御されるため、一般に、弁要素の移動速度を磁力による作動での移動速度よりも小さく抑えることができる。このことにより、弁要素またはアーマチャをその端部位置で停止させたときの「カチッという音」の騒音が低減される。この弁では、アーマチャが弁要素の移動を制御する。アーマチャがゆっくりと移動するため、弁要素の移動も遅い。そのため、いわゆるウォータハンマにより生じる騒音も低減することができる。
【0009】
好ましくは、第2の流路は、前記弁要素の前記第1の側と前記第2の側とを接続し、前記第2の流路が、前記第2の流路を通って流れる流体の低流量を維持する第2の絞り手段を有する。弁要素にわたる圧力差の制御下で弁要素を移動させる場合、一定量の流体が第2の流路を通って流れなければならない。流量が小さく抑えられるように第2の流路を通る流体のその移動が制限されると、結果として、弁要素自体の移動も遅くなる。弁要素がよりゆっくりと移動することにより、騒音が低減される。
【0010】
好ましくは、前記第1の流路は、
前記アーマチャと前記アーマチャを取り囲むハウジングの壁との間に配設され、かつ/または第2の流路は、前記弁要素と前記弁要素を取り囲むハウジングの壁との間に配設される。好ましい実施形態において、前記弁要素および前記アーマチャは、筒状ハウジング内に前後に配設される。第1の流路および/または第2の流路は、アーマチャ要素内または弁内に、孔、チャネル、ダクトなどを必要としない。第1の流路および/または第2の流路は、ハウジングとアーマチャまたは弁要素との間にそれぞれ容易に形成することができる。
【0011】
好ましい実施形態において、ハウジングは、前記アーマチャおよび前記弁要素に対して同じ直径を有する筒として形成される。このような筒は製造が簡単である。
【0012】
好ましい実施形態において、前記第1の絞り手段および/または前記第2の絞り手段は、前記流路の壁に表面構造を備える。これは、流路を通過する流体に対する制限部を形成する簡単な方法である。表面構造は流れに乱流を生じさせ、それにより、流路を通る流れの平均速度を低減する。表面構造は、製造コストを増加させ得る小さい公差を使用する必要なしに流動抵抗を増加させる。
【0013】
特定の好ましい実施形態において、前記表面構造は、鋸歯状外形である。このような鋸歯状外形は、アーマチャとハウジングの壁との間および/または弁要素とハウジングの壁との間に多くの小さい制限部を形成する。
【0014】
好ましくは、前記歯状外形は、前記弁要素の周囲に周方向にまたはねじ状に延在する溝を備える。これは、前記鋸歯状外形を形成する簡単な方法である。
【0015】
好ましくは、前記弁要素は貫通チャネルを備え、パイロット弁は前記アーマチャに面する前記チャネルの端部に配設され、前記アーマチャは前記パイロット弁に作用する。アーマチャが弁要素に向かって移動してパイロット弁に閉方向に作用すると、弁要素の第1の側の圧力が増加し弁要素を弁座に向かう方向に移動させる。アーマチャが弁要素から離れる方向に移動してパイロット弁に開方向に作用すると、弁要素の第1の側における圧力が低下し、弁要素の第2の側における圧力が弁要素を弁座から離れる方向に移動させる。換言すれば、アーマチャは、パイロット弁のみを制御すればよく、弁要素を直接移動させる必要はない。弁要素は、アーマチャの移動に追従する。弁要素とアーマチャとの間の距離は、ほぼ一定のままである。
【0016】
好ましくは、前記パイロット弁はパイロット弁要素を備え、前記アーマチャは前記パイロット弁要素を保持する。パイロット弁が開状態でありかつパイロット弁要素が弁要素の第1の側におけるチャネルの開口から持ち上げられたとしても、パイロット弁要素はアーマチャにより保持される。好ましい例において、アーマチャは、パイロット弁要素が収容されるリング状壁を備える。
【0017】
好ましい実施形態において、前記弁要素は、前記弁座近傍の端部に絞りコーンを備え、前記コーンは、前記弁座に取り囲まれた開口に挿入可能である。このようなコーンは、弁の徐々に行われる開弁を可能にする。
【0018】
好ましくは、前記弁要素は、前記弁座の内径の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%に相当するストロークを有する。このストロークはかなり大きい。通常、ストロークは、弁座の内径の約25%に相当する。より大きいストロークにより、結果として、弁要素が第1の端部位置から第2の端部位置に進むのにより多くの時間が必要となる。これは、電磁弁により生じる騒音を小さく抑える更なる可能性である。
【0019】
好ましい実施形態において、前記弁要素および/または前記アーマチャには、耐圧性のプラスチック材料、特にPTFEで作製された閉塞部材が設けられる。このような閉塞部材がその相手部材(例えば、対応する弁座)に接触したときに、基本的に接触音が生じない。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、閉塞部材がその相手部材に固着するのを防ぐ。
【0020】
好ましくは、前記弁要素には、ストローク制限手段が設けられる。これは、騒音の発生を防ぐかまたは少なくとも低減する更なる機構である。ストローク制限手段は、弁要素が完全開位置に達するときに弁要素が可動アーマチャに接触するのを防止する。特に、プラスチック材料の閉塞部材に関連して、閉塞部材の摩耗を低減するかまたは最適な場合では防ぐことができる更なる利点がある。
【0021】
好ましくは、前記ストローク制限手段は、ハウジング部と協働する肩部の形態である。このような肩部は、基本的に、弁要素の全周に周方向に延在できるまたは遮断できる弁要素の増加した直径である。かかる肩部は、弁要素が完全開状態にあるときに、ハウジング部、例えば、弁要素を取り囲むハウジングの上述の壁に接触することができる。
【0022】
図面を参照しながら本発明の好ましい例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】閉状態にある電磁弁を示す。
図2】開弁中の電磁弁を示す。
図3】完全開状態にある電磁弁を示す。
図4】部分開状態にある弁の絞りコーンの拡大図である。
図5】完全開状態にある絞りコーンを示す。
図6】アーマチャの拡大図を示す。
図7図6の細部VIIを示す。
図8】開状態にあるパイロット弁を示す。
図9】閉状態にあるパイロット弁を示す。
図10】開状態にある電磁弁の更なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電磁弁1は、第1のポート2と第2のポート3とを備える。弁1の2つのポート2、3を、例えば、冷媒が循環する回路に接続することができる。この場合、弁1は、膨張弁として使用することができる。
【0025】
弁1は、弁座5と協働する弁要素4を備える。弁要素4は、第1の側6と第2の側7とを有する。更に、弁要素4は、第1の側6と第2の側7とを接続する貫通チャネル8を備える。図8および図9に関連してより詳細に説明するパイロット弁9は、第1の側6におけるチャネル8の端部に配設される。
【0026】
弁要素4は、筒状ハウジング10内に配設される。弁要素4は、ハウジング10の長手方向軸線11に沿ってハウジング10内を移動可能である。
【0027】
ハウジング10は、電気接続部13を介して電気エネルギーを供給できるコイル12に取り囲まれる。コイル12は、磁気回路の一部である。磁気回路は更に、ハウジング10を取り囲む第1のヨーク部14と、ハウジング10内に位置決めされた固定された第2のヨーク部15と、同じくハウジング10内に配設された可動アーマチャ16とを有するヨーク装置を備える。ばね17は、第2のヨーク部15とアーマチャ16との間に位置決めされ、かつアーマチャ16を第2のヨーク部15から離れる方向に押しやる。ハウジング10は、弁要素4およびアーマチャ16に対して同じ直径を有する筒の形態である。
【0028】
コイル12が電流で通電されると、ヨーク装置が磁化され、第2のヨーク部15が、ばね17の力に抗して可動アーマチャ16を磁気吸引する。
【0029】
アーマチャ16は、第1の前面18と第2の前面19とを有する。
【0030】
第1の流路21は、ハウジング10とアーマチャ16との間に配設される。第2の流路20は、弁要素4とハウジング10との間に配設される。
【0031】
第1の圧力空間22は、弁要素4とアーマチャ16との間に配設される。第2の圧力空間23は、アーマチャ16と第2のヨーク部15との間に配設される。
【0032】
弁要素4の更なる細部が図4および図5に示されている。弁要素4は、第2の側7、すなわち弁座5に面する側に絞りコーン24を備える。図4は、部分開状態にある弁要素4を示している。この状態では、絞りコーン24は、弁座5に取り囲まれる開口25に部分的に挿入される。
【0033】
絞りコーン24を開口25内に移動させると、絞りコーン24と弁座との間の隙間26を通しての流動抵抗が徐々に低下する。
【0034】
図8および図9は、パイロット弁9の更なる細部を示している。パイロット弁9は、ボールの形態のパイロット弁要素27と、コーンの形態のパイロット弁座28とを備える。パイロット弁要素27の直径は、パイロット弁座28の最大直径よりも大きい。
【0035】
アーマチャ16は、その第2の前面19において、パイロット弁要素27を収容する空間30を取り囲むリング状壁29を備える。リング状壁29を、アーマチャ16の第2の前面19から弁要素4に向かう方向に延びる少なくとも3つの突起に置き換えることができる。
【0036】
図9は、閉状態にあるパイロット弁9を示している。パイロット弁要素27は、アーマチャ16によってパイロット弁座28に押し当てられる。
【0037】
図6は、アーマチャ16の拡大図を示している。図7は、図6の細部VIIを示している。アーマチャ16がその外周に鋸歯状外形31を有することが分かる。鋸歯状外形31は、多くの山32および谷33を備える。ハウジング10と一緒になって、各山32は、第の流路21を通過する流体に対する制限部を形成する。更に、一連の山32および谷33が流れに乱流を生じさせ、これにより、第1の流路21を通過する流れの最大可能速度を低減する。鋸歯状外形31により形成された表面構造は、製造コストを増加させ得る小さい公差を使用する必要なしに流動抵抗または流体抵抗を増加させる。
【0038】
同じ表面構造が弁要素4の外周に設けられる。
【0039】
図1に示す状態では、弁1が閉弁される。すなわち、第1のポートと第2のポートとの接続が遮断される。弁要素4が弁座5に接触し、かつコーン24が開口25に完全に挿入される。
【0040】
この状態において、第1のポート2を介して弁に流入する流体は、第2の流路20を通過し、この流体はパイロット弁9を通り抜けることができないため、第1の圧力空間22内の圧力を増加させる。パイロット弁9は、アーマチャ16により閉弁される。
【0041】
弁要素4の両側6、7の圧力は同じであるが、第1の圧力空間22内の圧力が弁要素の第2の側7における圧力よりも広い領域に作用するため、弁要素4が弁座5に押し当てられる。第2の側7において、弁座5は、圧力領域の一部を覆い、かつこの圧力領域をより低い圧力に接続する。
【0042】
しかしながら、コイル12が通電され、アーマチャ16がばね17の力に抗してヨーク装置の第2のヨーク部15に吸引される場合、アーマチャ16を弁要素4から離れる方向に少しだけ移動させる。この場合、パイロット弁要素27がパイロット弁座28から持ち上げられ、かつ第1の圧力空間22内の流体がチャネル8を通り抜けることができ、これにより、第の圧力空間22内の圧力を低下させる。第2の側7と第1の側6との圧力差は、パイロット弁9を閉方向に移動させるまで弁要素4をアーマチャ16に追従するように移動させる。この移動は、弁要素4の外周における表面構造が第2の流路20を通る流れを絞るため、かなり遅い。第2の圧力空間23内の流体が、上で説明したように一定の流動抵抗を有する第1の流路21のみを通り抜けることができるため、アーマチャ16の移動も遅い。弁要素4の移動は、アーマチャ16の移動により制御される。アーマチャ16が低速でのみ移動できるため、弁要素の速度も制限される。そのため、「カチッという音」により生じる騒音だけでなく、ウォータハンマにより生じる騒音も低減することができる。
【0043】
図2は、開弁または閉弁中の弁1を示している。
【0044】
図3に示す完全開状態では、アーマチャ16を第2のヨーク部15に接触するように移動させている。絞りコーン24を完全に開口25の外に移動させている。
【0045】
弁要素4は、弁座の内径の、すなわち、主オリフィスと呼ぶこともできる開口25の直径の少なくとも50%に相当するストロークを有する。ストロークは、図1に示す完全閉状態と図3に示す完全開状態との間で弁要素4が移動する距離である。ストロークは、ハウジング10の軸線11に平行な、第2の圧力空間23の広がりに相当する。
【0046】
図10は、開状態にある弁の更なる実施形態を示している。図1図9に示す実施形態に関連して説明した要素は、同じ参照符号で示されている。
【0047】
弁1を通る冷媒と一緒に流れる他の部分の汚れを除去するために、ストレーナまたはメッシュ34が追加されている。
【0048】
弁要素4には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなプラスチック材料で作製された閉塞部材35が弁要素4の下側7に設けられる。この閉塞部材35は、弁要素4を閉位置に移動させると、弁座5に接触する。更に、アーマチャ16には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなプラスチック材料で作製された閉塞部材36が設けられる。この閉塞部材36は、図1図9のパイロット弁9の代わりとなる。
【0049】
弁要素4には、径方向肩部の形態のストローク制限手段37が設けられる。このストローク制限手段37は、図10に示すように、弁要素4が完全開状態にあるときに、ハウジング10に接触する。ストローク制限手段37は、図10に示す開状態では、弁要素4がアーマチャ16の閉塞部材36に接触しないように、弁要素4のストロークを制限する。そのため、弁要素4が圧力差により閉塞部材36に押し付けられるときに、アーマチャ16の閉塞部材36の損傷を防ぐことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10