(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基準局が、移動させることができないように地面に固定状態で設置されるものであれば、設置位置は常に同じである。しかし、複数の圃場において基準局を共用することにより低コスト化を図る等の目的から、基準局を持ち運び可能にして地面上の任意の箇所に設置することができるように構成することが考えられる。
【0006】
このような構成では、作業者が基準局を設置する場合、予め正確な位置が判明している箇所とは異なる箇所に設置する等、適正な位置に設置されないおそれがある。例えば、対象となる圃場で一度作業を行ったのち、次回、その圃場で同じ作業を行なう場合に、基準局を持ち運び可能にして地面上に設置することができるものであれば、作業者が誤って基準局を前回に設置された位置と異なる位置に設置するおそれがあり、この場合には自車の位置を正確に求めることができない。
【0007】
そこで、基準局の設置位置を変更することができるように構成する場合であっても、基準局が常に適正な箇所に位置して作業車が自車の位置を精度よく求めることができるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の位置計測装置の特徴構成は、地上側に、衛星からの電波を受信して自己の位置を計測して、その計測結果を外部に送信する基準局が備えられ、
作業車に、
衛星からの電波の受信情報及び前記基準局から送信される送信情報に基づいて、自車の位置を求める位置算出処理を実行する位置算出部と、
前記位置算出部の算出結果に基づいて車体が設定経路に沿って走行するように車体の走行状態を制御する走行制御部と、
作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する前記基準局の位置データとを対応付けて管理する位置情報管理部とが備えられ
、
前記位置情報管理部は、前記圃場に対応させて予め設定された前記基準局の位置情報を記憶する記憶装置と、前記圃場と前記基準局の位置とをマップ上に表示する表示装置とを備え、
前記基準局が任意の位置に設置可能であり、
前記表示装置が、前記圃場と、設定されている前記基準局の位置と、前記基準局の現在位置とをマップ上に表示する点にある。
【0009】
本発明によれば、基準局の計測結果が作業車に送信され、作業車に備えられる位置算出部が衛星からの電波の受信情報及び基準局から送信される送信情報に基づいて、自車の位置を求める。受信情報は基準局の位置情報を含むので、自車の位置を精度よく計測することができる。そして、位置情報管理部は、作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する基準局の位置データとを対応付けて管理する。
【0010】
その結果、例えば、基準局の設置位置を変更することができるように構成してある場合に、基準局が前回の設置位置と同じ位置に設置されていることが判別されるときは、そのまま、走行制御部による車体の走行状態の制御に移行することができる。つまり、前回設定された過去の情報を有効に利用して能率よく車体の走行状態の制御に移行することができる。一方、作業者が基準局を前回の設置位置と異なる位置に誤って設置した場合に、位置情報管理部がそのことを判別すると、作業者にそのことを報知したり、新たな設置位置を正規の位置として再設定する等の措置を取ることが可能である。
【0011】
従って、基準局の設置位置を変更することができるように構成する場合であっても、基準局が常に適正な箇所に位置して作業車が自車の位置を精度よく求めることが可能となった。
【0012】
【0013】
また、本
発明によれば、圃場に対応する基準局の位置情報を記憶装置によって記憶するので、当該圃場での作業が終了して、長い時間が経過した後に、再度、位置計測を実行する場合においても、基準局の位置を適正な位置に設定することができる。又、作業対象となる圃場と当該圃場に対応する基準局の位置を表示装置によりマップ上に表示することができる。表示装置にマップが表示されるので、作業者は圃場に対する基準局の相対位置を目視で容易に判断することができる。その結果、作業者は、煩わしさなく容易に基準局を適正な位置に設定することが可能となる。
【0014】
【0015】
また、本
発明によれば、基準局が任意の位置に設置可能であるから、圃場に近い位置のうち設置し易い平坦な地形の箇所に基準局を設置する等、基準局を安定した姿勢で載置支持させることができる。そして、表示装置には、圃場と、既に設定されている基準局の位置と、任意の位置に新たに設置された基準局の現在位置とがマップ上に表示される。作業者は表示装置の表示内容を目視することで、設定位置と現在位置との違いを容易に確認することができ、基準局を設定位置に変更させる等の措置を取り易いものになる。
【0016】
本発明においては、前記位置情報管理部は、設定指令に基づいて、前記基準局の現在位置を前記圃場に対応する前記基準局の位置として更新設定すると好適である。
【0017】
本構成によれば、既に設定されている基準局の位置と、任意の位置に新たに設置された基準局の現在位置とが離れている場合に、設定指令に基づいて基準局の現在位置を基準局の位置として更新設定することができる。
【0018】
例えば、現在位置の方が基準局を安定した姿勢で載置支持させることが可能な場合や、測位精度の向上を図ることができるような場合には、基準局の現在位置を新たな位置として設定することで、作業車が自車の位置を精度よく求めることが可能となる。
【0019】
本発明においては、前記位置情報管理部は、複数の圃場毎に各別に、前記圃場のマップデータと前記基準局の位置データとを管理するように構成され、且つ、
前記表示装置が、前記複数の圃場とそのうちの選択された圃場に対応する前記基準局の位置とを地図情報として表示すると好適である。
【0020】
本構成によれば、圃場が複数ある場合、夫々の圃場毎に、圃場のマップデータと基準局の位置データとが管理される。今回作業の対象となる圃場は、作業車が位置することにより、複数の圃場のうちの自車が存在する圃場を選択された圃場として認識することができる。その結果、位置情報管理部は、複数の圃場のうちの選択された圃場のマップデータと、その圃場に対応する基準局の位置データとを管理する。そして、表示装置が、複数の圃場と、そのうちの選択された圃場に対応する基準局の位置とを地図情報として表示する。
【0021】
作業者は、表示装置の表示内容により、地図上のどの圃場に位置し、それに対応する基準局がどのような位置にあるかを正確に判断することができる。例えば、隣接する圃場があり、目視判断だけでは基準局がどの圃場に対応するものであるかを判断し難い場合であっても、表示装置にて表示される情報により容易に判断できる。
【0022】
また、本発明に係る作業車の位置計測装置の特徴構成は、地上側に、衛星からの電波を受信して自己の位置を計測して、その計測結果を外部に送信する基準局が備えられ、
作業車に、
衛星からの電波の受信情報及び前記基準局から送信される送信情報に基づいて、自車の位置を求める位置算出処理を実行する位置算出部と、
前記位置算出部の算出結果に基づいて車体が設定経路に沿って走行するように車体の走行状態を制御する走行制御部と、
作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する前記基準局の位置データとを対応付けて管理する位置情報管理部とが備えられ、
前記位置情報管理部に前記基準局の位置情報が設定されていなければ、前記位置算出部は位置算出処理を実行しない
点にある。
【0023】
本
発明によれば、基準局の位置情報が設定されていなければ位置算出処理が実行されないので、位置算出部が、衛星からの電波の受信情報のみに基づいて、測位精度の低い状態で自車の位置を求める等の不利の無い状態で、車体が設定経路に沿って走行するように良好な制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車の位置計測装置の実施形態を、作業車として走行車体の後部に対地作業装置である耕耘装置を備えた作業車(トラクタ)に適用した場合について説明する。具体的には、この実施形態では、2台の作業車が併走することによって圃場内において対地作業を能率よく行えるようにした作業車協調システムに適用した場合について説明する。
【0026】
図2,3に示すように、親作業車1と、親作業車1と併走する子作業車2とによって、圃場内において対地作業を行うように構成されている。圃場での作業では、一般に、圃場の中央側に位置する中央作業地CLと、その中央作業地CLの周囲で畦に沿って規定される枕地HLとに区分けされる。中央作業地CLでは、親作業車1及び子作業車2の夫々が、予め設定された目標走行経路に沿って走行して、往復走行によって対地作業が行われる。詳細については、後述するが、親作業車1が先行して走行し、その横側を親作業車1の作業跡に対して子作業車2の作業跡が所定量重複して子作業車2が走行するように走行制御が行われる。
【0027】
〔全体構成〕
親作業車1と子作業車2とは、後述するような制御構成が一部異なるが、その他の構成は同じである。
図1に示すように、向き変更可能な左右一対の前輪3aと、向き固定の左右一対の後輪3bとを備えて、直進走行並びに旋回走行が可能に4輪式の走行車体4が構成されている。走行車体4の中央部に操縦部5が形成されている。操縦部5はキャビン6によって覆われている。走行車体4の後部には、リンク機構7を介して昇降用油圧シリンダ(図示せず)によって駆動昇降自在に対地作業装置としての耕耘装置9が連結されている。操縦部5の前部にステアリングホイール11や図示しない各種操作レバー等が備えられる。操縦部5の後部には運転者が着座する運転座席12が備えられている。
【0028】
走行車体4の前部のボンネット13内にエンジン14が搭載され、エンジン14の動力が図示しない伝動機構を介して前後輪3a,3bに伝達されて走行駆動される。エンジン14の動力は、伝動機構を介して耕耘装置9に伝達されて耕耘装置9が駆動される。伝動機構は、図示はしないが、電子制御式に構成された変速装置、前後進切換装置、及び、ブレーキ等を備え、車速を変更自在で且つ車体進行方向を変更可能に構成されている。又、走行車体4は前輪3aの操向角を変更操作自在に構成されている。図示はしないが、走行車体4には、耕耘装置9に対する伝動系に動力伝達を入切自在な作業クラッチ、車速を検出する車速センサ、前輪の操向角を検出する操向角センサ、車体の近くに存在する障害物を検知する障害物検知センサ等の各種センサも備えられている。
【0029】
〔親作業車の制御構成〕
図4に示すように、親作業車1には、上記したような伝動機構、前輪3aの操向状態、耕耘装置9の作業状態等を制御する制御装置としての親機コントローラ15が備えられている。親機コントローラ15は、GPSの測位情報に基づいて自車の位置を求める位置算出部としての自車位置算出部16と、自車位置算出部16の算出結果に基づいて車体が設定経路に沿って走行するように車体の走行状態を制御する走行制御部17と、圃場内での目標走行経路を設定する目標経路設定部18と、基準局19の位置を管理する基準局管理部20と、種々の情報を通信可能な親側の通信部21とを備えている。自車位置算出部16、走行制御部17、目標経路設定部18、基準局管理部20の夫々は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムによって実現する。
通信部21は、電波等により無線情報を送信するための装置等からなり、子作業車2との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される。
【0030】
自車位置算出部16は、周知技術であるRTK―GPS(リアルタイムキネマティック方式GPS)を用いて、地上側に設置された基準局19から送信される送信情報、及び、複数のGPS衛星22からの電波の受信情報に基づいて、自車の位置を求める位置算出処理を実行するように構成されている。親作業車1のキャビン6の上部にGPS衛星22からの電波を受信するGPSアンテナ23と、GPSアンテナ23で受信した情報を処理して制御装置に送信するGPSデータ処理部24とが備えられている。このGPSデータ処理部24には、地上側に位置固定状態で設置された基準局19から送信される送信情報を受信する受信部25が備えられている。
【0031】
図1に示すように、基準局19は、親作業車1と同様なGPSアンテナ26と、GPSデータ処理部27と、GPSデータ処理部27にて求めた自己の位置データを外部に無線送信する送信部28とを備えている。親作業車1におけるGPSデータ処理部24に備えられた受信部25が、基準局19の送信部28から送信される情報を受信するように構成されている。
【0032】
基準局19は、作業すべき圃場が複数存在する場合には各圃場に対して各別に設置される。この基準局19は、RTK―GPSによって当該圃場内での作業車の位置を計測する際に、測位精度を向上させるために、常に予め正確な位置が判明している箇所に設置する必要がある。
【0033】
基準局19は、持ち運び可能であり地面上の任意の箇所に設置することができるように構成されている。このように構成することで、複数の圃場において基準局19を共用することにより低コスト化を図ることが可能である。基準局19は、運搬車等により積載して移動可能であり、GPS衛星22からの電波を受信し易くするために、例えば、圃場に比べて高い位置にあり、安定した姿勢で載置支持可能な箇所に設置される。
【0034】
このように持ち運び可能で地面上の任意の箇所に設置することが可能な基準局19であれば、作業者が前回の設置位置と異なる位置に誤って設置するおそれがある。そこで、基準局19の位置を管理する基準局管理部20が備えられている。
【0035】
基準局管理部20は、作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する基準局19の位置データとを対応付けて管理するように構成されている。圃場のマップデータとしては、予め設定されている地図データを外部の装置から読み込み設定してもよく、あるいは、対象となる圃場において、作業車を周縁部に沿って走行させながらGPSを用いて位置を計測してマップデータを作成するようにしてもよい。
【0036】
図4に示すように、基準局管理部20は、圃場に対応させて予め設定された基準局19の位置情報を記憶する記憶装置29を備えている。記憶装置29は、走行車体4に備えられたキースイッチ(図示せず)が切り操作されて、親機コントローラ15への電源供給が遮断されても、記憶内容を保持可能な不揮発性メモリにて構成されている。
【0037】
圃場と基準局19の位置とをマップ上に表示する表示装置としてのタッチパネル式の液晶表示器30が備えられている。液晶表示器30は、運転座席12に着座している運転者が目視可能なように操縦部5に備えられ、文字や画像等の種々の情報を表示可能に構成されている。
【0038】
基準局管理部20は、複数の圃場毎に各別に、圃場のマップデータと基準局の位置データとを管理するように構成され、且つ、液晶表示器30が、複数の圃場とそのうちの選択された圃場に対応する基準局の位置とを地図情報として表示するように構成されている。
【0039】
説明を加えると、
図7に示すように、作業すべき圃場(A〜F)が複数存在する場合、上述したように、基準局19は各圃場に対して各別に設置される。夫々の基準局19はいずれのものも常に予め正確な位置が判明している箇所に設置する必要がある。基準局管理部20は、複数の圃場毎に各別に、圃場のマップデータと基準局19の位置データとを対応付けて管理するようになっている。例えば、複数の圃場のうちの1つの圃場(A)に親作業車1及び子作業車2が位置しているとき、
図8に示すように、液晶表示器30にて、複数の圃場(A〜F)とそのうちの選択された圃場A(作業車が現在位置している圃場)のマップデータと、それに対応する基準局19の位置とを、地図情報として相対位置を目視にて判別可能に表示する。
【0040】
さらに、液晶表示器30は、圃場と、設定されている基準局19の位置と、基準局19の現在位置とをマップ上に表示する。
図8に示すように、前回の作業において、基準局19の位置が設定されて記憶装置29にて記憶されている場合、その予め設定されて記憶されている設定位置(a)と、今回、新たに設置された基準局19の現在位置(b)とを、同一画面上に地図情報として表示する。尚、このとき、基準局19の位置情報は、GPSの単独測位による位置計測結果であるから測位精度はそれほど高くないが、記憶されている位置(a)と、新たに設置された基準局19の現在位置(b)とが大きく離間しているか否かを判断することができる。
【0041】
従って、基準局管理部20と液晶表示器30とにより、作業対象となる圃場のマップデータと当該圃場に対応する基準局19の位置データとを対応付けて管理する位置情報管理部100が構成されている。
【0042】
目標経路設定部18は、圃場のマップデータと作業用パラメータに基づいて、自車及び子作業車2夫々の目標走行経路を設定するように構成されている。作業用パラメータとしては、例えば、耕耘装置9の作業幅、走行車体4の最小旋回半径、親作業車1と子作業車2の重複作業幅の設定値等の種々のデータが用いられる。
【0043】
図2に示すように、親作業車1が先行して走行し、その横側を親作業車1の作業跡に対して子作業車2の作業跡が所定量重複して子作業車2が走行するように、目標走行経路が設定される。走行経路は、直線状の往路走行、転回(Uターン)走行、往路走行に対して一定間隔をあけて平行で且つ直線状の復路走行、転回(Uターン)走行の夫々を繰り返す形態となっている。枕地HLは、中央作業地CLの作業走行における転回領域となる。尚、図示はしていないが、枕地HLでは、その長手方向に沿う直線状の走行により対地作業が行われる。尚、親作業車1が先行して走行し、子作業車2が追従して走行する形態に限らず、子作業車2が先行して走行し、親作業車1が追従して走行する形態であってもよい。
【0044】
親作業車1に備えられる親機コントローラ15の目標経路設定部18が、自車の目標走行経路Tpだけでなく、子作業車2(他車)の目標走行経路Tcも設定する。
図3に示すように、子作業車2の目標走行経路Tcは親作業車1の目標走行経路Tpに対して横にずれた状態で設定される。
【0045】
親側の通信部21は、作業走行用情報として、作業対象となる圃場のマップデータと、目標経路設定部18によって設定された、自車及び子作業車2夫々の目標走行経路Tc、Tpを子作業車2、具体的には後述する子側の通信部31に送信する。
【0046】
走行車体4には、伝動機構を操作するための走行操作部32と、前輪3aの操向角を変更自在なステアリング操作部33とが備えられる。図示はしないが、走行操作部32は、変速装置、前後進切換装置、及び、ブレーキ等を操作可能な複数のアクチュエータを備えており、車速、車体進行方向等を変更操作可能に構成されている。ステアリング操作部33は、前輪3aの操向角等を操作可能な電動モータ等のアクチュエータを備えており、走行車体4の進行方向を直進、左旋回、右旋回の夫々に変更操作可能で且つ旋回時の前輪3aの操向角を任意に変更可能に構成されている。走行車体4には、作業クラッチや昇降シリンダ等を駆動操作する作業操作部(図示せず)も備えられている。
【0047】
走行制御部17は、目標経路設定部18により設定された目標走行経路Tpに沿って走行車体4が走行するように、走行操作部32とステアリング操作部33とを駆動制御する。
走行制御部17は、親作業車1が目標走行経路Tpの開始点にまで移動したのちに、開始が指令されると、親作業車1が設定された目標走行経路Tpに沿って移動するように、走行操作部32とステアリング操作部33を制御する。また、直進走行経路では耕耘作業を行い、旋回走行時には耕耘作業を行わないように、作業操作部を制御する。
【0048】
〔子作業車2の制御構成〕
子作業車2には、親作業車1と同じように、GPSアンテナ23、GPSデータ処理部24、液晶表示器30、走行操作部32、ステアリング操作部33等を備えている。そして、親機コントローラ15と略同じ構成の子機コントローラ34が備えられている。
【0049】
子機コントローラ34は、親機コントローラ15と同様な、自車位置算出部16と、走行制御部17と、基準局管理部20と、子側の通信部31とを備えており、自車位置算出部16、走行制御部17、基準局管理部20の夫々は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムによって実現する。子側の通信部31は、電波等により無線情報を送信するための装置等からなり、親側の通信部21との間で相手を識別可能に且つ作業走行用情報を送受信可能に無線接続される。子機コントローラ34は、目標走行経路を設定する機能を備えていない。子機コントローラ34は、親機コントローラ15に備えられた目標経路設定部18にて設定された目標走行経路Tcに沿って走行するように走行状態を制御するように構成されている。
【0050】
〔制御内容〕
次に、
図5,6のフローチャートを用いて、この実施形態における制御動作について説明する。
【0051】
RTK−GPSを作動させるために、作業対象となる圃場の近くに位置する基準局19を設定する(ステップ♯1、♯101)。この基準局19の設定は、親作業車1及び子作業車2の夫々において各別に行う。
【0052】
基準局19の設定は、
図6に示すように行われる。基準局19の設定が開始されると、作業すべき圃場が複数存在する場合、
図7に示すように複数の圃場が液晶表示器30に地図情報として表示される(ステップ♯11)。タッチパネル式の液晶表示器30を操作して、複数の圃場のうちの今回の作業の対象となる圃場を選択する(ステップ♯12)。圃場が選択されると、
図8に示すように、選択された圃場のマップデータと、それに対応する基準局19の位置とを、地図情報として相対位置を目視にて判別可能に表示する。このとき、当該圃場について予め基準局19の位置が設定されている場合には、圃場のマップデータと、設定されている基準局19の位置(a)と、新たに設置された基準局19の位置(b)とを画面上に表示する(ステップ♯13,14)。
【0053】
予め設定されている基準局19の設定位置と、新たに設置された基準局19の現在位置とが、設定距離以上離れている場合には、図示はしていないが、警告表示により作業者に警告する(ステップ♯15,16)。作業者は、基準局19を予め設定されている位置に合わせるように再設置させるようにしてもよく、あるいは、今回新たに設置した位置に更新設定するようにしてもよい。設定位置と現在位置とが設定距離以上離れているが、新たな設置位置に更新設定する場合等においては、図示はしていないが、タッチパネル式の液晶表示器30の操作部を操作することにより指令することができる(ステップ♯17)。
当該圃場について予め基準局19の位置が設定されていない場合も同様に設定することができる(ステップ♯18)。設定位置と現在位置とが設定距離以上離れていても、更新設定しない場合には、ステップ11に戻る。
【0054】
親作業車1では、基準局19の設定が終了すると、次に、目標走行経路設定処理が行われる(ステップ♯2)。上述したように、このとき、自車(親作業車1)の目標走行経路Tpだけでなく、子作業車2の目標走行経路Tcも設定する。具体的には、
図2に示すように、子作業車2の目標走行経路Tcは親作業車1の目標走行経路Tpに対して設定量だけ横にずれた状態で設定される。目標走行経路Tp、Tcは、親作業車1と、親作業車1と併走する子作業車2とによって、圃場内において対地作業を行うものであればよく、
図2に示すような経路に限定されるものではない。
【0055】
目標走行経路Tp,Tcが設定されると、親作業車1及び子作業車2夫々について設定された目標走行経路Tp,Tcのデータを通信部21から子側の通信部31に向けて無線通信にて送信する(ステップ♯3)。子側の通信部31は、親側の通信部21から送信されるデータを受信する(ステップ♯102)。
【0056】
目標走行経路Tp、Tcが設定された後は、親作業車1及び子作業車2の夫々において、走行制御に移行して、親作業車1について設定された目標走行経路Tp,Tcに沿って走行するように、走行状態を制御する(ステップ♯4,103)。すなわち、走行車体4が目標走行経路Tp,Tcに沿って走行するように、走行操作部32の作動を制御する。
中央作業地CLにて直進で走行するときは耕耘装置9による耕耘作業を実行し、枕地HLにて旋回走行して転回するときは、耕耘作業を停止して耕耘装置9を上昇させるように、作業クラッチと昇降シリンダの作動を制御する。
【0057】
ステップ♯1にて、基準局19が設定されていなければ、ステップ2に進むことができないので、ステップ4の走行制御に移行することがない。従って、本実施形態では、位置情報管理部100に基準局19の位置情報が設定されていなければ、自車位置算出部16は位置算出処理を実行しない構成となっている。
【0058】
図示はしていないが、親作業車1の親機コントローラ15は、目標走行経路Tpに沿って自動走行するように走行制御部17により走行操作部32を制御する自動モードと、このような自動制御を実行せず、手動操縦にて車体を走行させることが可能な手動モードとに切り換え可能に構成されている。
【0059】
親機コントローラ15を手動モードに切り換えた状態で、操縦部5に作業者が搭乗して、手動で操縦操作を行うことができる。このように親作業車1が有人操縦式に構成される場合であっても、子作業車2は無人操縦式であり、親作業車1に追従して走行するように、目標設定経路に沿って自動で走行制御が行われる。
尚、親機コントローラ15を自動モードに切り換えた状態で作業者が搭乗して走行状態を監視したり、手動にて修正操作を行うことも可能である。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、表示装置(液晶表示器30)が、圃場と、設定されている基準局19の位置(設定位置)と、基準局19の現在位置とをマップ上に表示する構成としたが、この構成に代えて、圃場と設定位置だけを表示して、現在位置が設定位置と離間していることを警告するようにしたり、圃場と現在位置だけを表示して、現在位置が設定位置と離間していることを警告するようにしてもよい。また、圃場と設定位置だけを表示する状態と、圃場と現在位置だけを表示する状態とに表示内容の切り換える構成としてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では、位置情報管理部100が、設定指令に基づいて、基準局19の現在位置を圃場に対応する基準局19の位置として更新設定する構成としたが、この構成に代えて、基準局19の設定位置と現在位置との夫々の位置データが計測されたのち、それらが設定距離以上離間していると、直ちに基準局19の現在位置を圃場に対応する基準局19の位置として更新設定するようにしてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、基準局19が任意の位置に設置可能な構成としたが、基準局19を、例えば地面に敷設されたレールに沿って電波の受信感度が最もよい地点に移動させて設置させる構成等、種々の構成を採用することができる。
【0063】
(4)上記実施形態では、位置情報管理部100が、圃場に対応させて予め設定された基準局19の位置情報を記憶する記憶装置29を備える構成としたが、外部装置によって記憶保持する構成としてもよい。例えば、取外し可能な外部メモリにて記憶したり、無線通信手段又はインターネット回線等を介して通信して外部装置に記憶させるようにしてもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、位置情報管理部100が、圃場と基準局19の位置とをマップ上に表示する表示装置として液晶表示器30を備える構成としたが、有機EL形表示装置、蛍光表示管等、他の型式の表示器でもよく、又、表示装置を備える構成に代えて、あるいは、それに加えて、音声情報によって、位置管理情報を出力するようにしたり、あるいは、印字装置により位置管理情報を出力するようにしてもよい。
【0065】
(6)上記実施形態では、位置情報管理部100に基準局19の位置情報が設定されていなければ自車位置算出部16は位置算出処理を実行しないようにしたが、この構成に代えて、基準局19の位置情報が設定されていなくても、位置算出部16は位置算出処理を実行するように構成して、位置算出処理を実行するときに、基準局19の位置情報の設定を併行して実行するようにしてもよい。
【0066】
(7)上記実施形態では、親作業車1と子作業車2とが走行する例を示したが、子作業車2と同様な構成の自動走行式の作業車が単独で走行する構成としたり、自動走行式の作業車が複数台走行するような構成としてもよい。
【0067】
(8)上記実施形態では、表示装置(液晶表示器30)を含む位置情報管理部100が、作業車に固定状態で設けられる例を示したが、このような構成に限らず、作業者が持ち運び可能な携帯型の端末機に備えられる構成としてもよい。あるいは、位置情報管理部100が作業車から遠く離れた遠隔地に備えられた地上設置型の管理用コントローラに設けられる構成であってもよい。