(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1,2に記載された導電塗料を塗布する構成は、不織布製の両面テープ又は切込みを入れたマスキングテープなどの切断されやすいテープ及び導電塗料の配合を使用した構成となっていた。
【0006】
要するに特許文献1,2に開示されている導電塗料保護テープ等は、検知部として使用されるものであり、ひび割れの発生等で破断することが必須の要件となる。
【0007】
一方で、特定の箇所のひび割れの発生等を検知させるためには、リード線などによって検知部と検知装置とを接続する必要がある。検知部と検知装置との距離が離れている場合は、リード線を配線することが難しい箇所が存在したり美観が悪化したりするなどの問題が生じる。
【0008】
また、導電塗料によって形成される検知部と電線であるリード線との接続箇所においては、異なる素材を接合させる困難性や電線の腐食などの問題が生じるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、導電塗料によって形成される検知部に容易に接続できるうえに、破断しにくい構成の導電塗料が塗布された導電塗料テープを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の導電塗料テープは、長手方向に連続して導電塗料が塗布された導電塗料テープであって、帯状に形成された伸縮性を有するテープ本体部と、前記テープ本体部の表面に形成された伸縮性を有する導電塗料層とを備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記導電塗料層は、銀粉とウレタン樹脂と有機溶剤とを含む配合とすることができる。好ましくは、前記銀粉の混合割合が55-65重量%、前記ウレタン樹脂の混合割合が5-15重量%、前記有機溶剤の混合割合が25-35重量%となる配合にする。
【0012】
また、前記導電塗料層の表面はコーティング層によって被覆されている構成とすることができる。さらに、前記テープ本体部は、ポリオレフィン又はナイロンによって形成されているものを使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の導電塗料テープは、伸縮性を有するテープ本体部の表面に伸縮性を有する導電塗料層が形成される。このため、検知を予定していない箇所でひび割れが発生したり、亀裂が開閉したりしても、破断することがなく、電気回路の通電状態を維持させることができる。
【0014】
また、検知部が導電塗料を塗布することによって構成されている場合は、検知部に接続させ易いうえに、外観を同質にすることができる。さらに、導電塗料層の表面をコーティング層によって被覆することで、導電塗料テープが伸縮しても、導電塗料層が剥離しにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の導電塗料テープ1の構成を説明する断面図、
図2は導電塗料テープ1の適用箇所を例示した概略図、
図3は
図2の具体的な構成を説明する断面図である。
【0017】
本実施の形態の導電塗料テープ1は、帯状に形成された伸縮性を有するテープ本体部3と、そのテープ本体部3の表面に形成された伸縮性を有する導電塗料層2とによって主に構成される。
【0018】
テープ本体部3は、高い伸縮性を有する素材によって形成される。例えば、テープ本体部3として、ポリオレフィン系樹脂材料が使用できる。具体的には耐熱性の高いファインラインテープ(製品番号2800、3M社製)などが使用できる。また、ナイロンなどの伸縮性のある素材によってテープ本体部3を形成することもできる。
【0019】
このような伸縮性に優れた合成樹脂材料で形成されたテープ本体部3は、伸縮が繰り返されたとしても破断することなく、変形に追従することができる。また、導電塗料層2及び後述する下塗り材5との相性が良く、密着性を高め剥離し難くすることができる。
【0020】
一方、導電塗料層2は、伸縮性に優れた配合とされる。導電塗料によってひび割れを検知させるためには、引っ張り抵抗を小さくして破断しやすくする必要がある。例えば、検知箇所に使用される導電塗料には、伸縮性に乏しいポリエステルなどが配合される。
【0021】
これに対して、導電塗料層2には、伸縮性に優れた樹脂が配合される。例えば、
導電塗料層2を形成するために塗布する導電塗料には、フィラーとなる銀粉と、伸縮性の高いウレタン樹脂と、有機溶剤とが配合される。有機溶剤には、シンナーなどの希釈剤が使用される。
【0022】
導電塗料層2
を形成するための導電塗料の配合としては、例えば銀粉の混合割合が55-65重量%、ウレタン樹脂の混合割合が5-15重量%、有機溶剤の混合割合が25-35重量%とすることができる。
【0023】
さらに、導電塗料層2の表面は、必要に応じてコーティング層4によって被覆させることができる。アクリル樹脂などのコーティング層4で被覆することで、耐紫外線性や防水性などの耐久性を向上させることができる。
【0024】
また、導電塗料層2の表面をコーティング層4で被覆することで、導電塗料テープ1が伸縮を繰り返しても、導電塗料層2がテープ本体部3から剥離しにくくすることができる。
【0025】
テープ本体部3と表面M1との間に介在させる下塗り材5には、エポキシ樹脂などが使用できる。下塗り材5をプライマーとして介在させることによって、コンクリート構造物Mなどの表面M1に凹凸がある検知対象物との不陸が調整できるうえに、コンクリート構造物M側への漏電を防ぐことができる。
【0026】
本実施の形態の導電塗料テープ1は、電気回路を形成することが可能な帯状の導電素材となる。このため、
図1に示すように、検知装置6のリード線61,61の端部を導電塗料テープ1の導電塗料層2の両端に接続すれば、通電状態を検知させることができる。
【0027】
図2は、上述した導電塗料テープ1の適用箇所を例示した説明図である。PC桁(プレストレストコンクリート桁)などのコンクリート構造物Mは、ひび割れが発生する箇所によって損傷の程度が把握できる場合がある。例えばPC桁に複数のPC鋼材によってプレストレスト力が導入されている場合、ひび割れCの発生箇所によって、どの位置のPC鋼材が不良状態又は破断しているかがわかることがある。
【0028】
このようなひび割れCを検知させる場合に、コンクリート構造物Mの表面M1に沿って塗布される導電塗料を、すべて破断しやすい構成にして検知装置6に接続すると、着目したいひび割れC箇所以外でひび割れが発生しても、導電塗料が破断して検知してしまうことになる。
【0029】
そこで、
図2に示すように、ひび割れCの発生を検知させたい箇所のみに検知部7を設け、それ以外は上記した導電塗料テープ1,1で構成する。例えば、検知装置6の一方のリード線61に導電塗料テープ1の一端を接続し、着目したいひび割れC発生箇所の手前まで延伸させる。
【0030】
ひび割れC着目箇所では、導電塗料テープ1の端部から破断しやすい検知部7をコ字状に配線する。そして、検知部7の他端に別の導電塗料テープ1の端部を接続し、検知装置6の他方のリード線61に接続させることで電気回路を形成する。
【0031】
ここで、
図3を参照しながら、検知部7の構成について説明する。検知部7は、帯状に形成された破断しやすいテープ部72と、そのテープ部72の表面に形成された破断しやすい検知塗料層73とによって主に構成される。
【0032】
テープ部72には、不織布テープやポリエステル製のマスキングテープなどが使用できる。破断しにくい素材でテープ部72を構成する場合は、スリットなどの切り込みを入れるなどして、所望する力が作用した際に破断されるようにしておく。
【0033】
また、検知塗料層73には、例えば、フィラーとなる銀粉と伸縮性に乏しいポリエステル樹脂と有機溶剤とが配合される。有機溶剤には、シンナーなどの希釈剤が使用される。
【0034】
一方、検知部7の下塗り材71とコーティング層74については、導電塗料テープ1と同様の材料を使用することができる。例えば、下塗り材71にはエポキシ樹脂、コーティング層74にはアクリル樹脂が使用できる。
【0035】
次に、本実施の形態の導電塗料テープ1の使用方法及び導電塗料テープ1の作用について説明する。
【0036】
図2に示すように、コンクリート構造物MとなるPC桁の側面(表面M1)のある箇所に発生するひび割れCを検知させるために導電塗料テープ1を使用する場合について説明する。
【0037】
検知装置6は、足場が存在する桁端部や橋脚位置など管理者がアクセスしやすい箇所に設置される。このため検知装置6と、ひび割れCを検知したい箇所とが遠く離隔する場合がある。ひび割れCを検知させたい箇所には、側面視コ字形に検知部7を設ける。
【0038】
そして、この検知部7の折り返された両端から、検知装置6の設置箇所に向けて導電塗料テープ1,1を延伸させる。検知装置6のリード線61は、
図1に示すように導電塗料テープ1の導電塗料層2に接続させる。リード線61と導電塗料層2との接続は、検知装置6の周辺で行われるため、リード線61の腐食や外れなどの不具合などが発生すれば、すぐに見つけることができる。
【0039】
導電塗料テープ1を敷設するためには、
図3に示すように、まずコンクリート構造物Mの表面M1にエポキシ樹脂を下塗り材5として塗布する。検知部7を設ける箇所の表面M1にも、同様にエポキシ樹脂を下塗り材71として塗布する。
【0040】
そして、検知部7とする箇所には、下塗り材71の上に幅5mm程度のテープ部72を貼り付ける。また、導電塗料テープ1とする箇所には、下塗り材5の上に幅5mm程度のテープ本体部3を貼り付ける。
【0041】
続いて、導電塗料層2を形成するために、テープ本体部3の表面に、銀粉とウレタン樹脂と有機溶剤とが配合された導電塗料を、小口径のスプレーガンで吹き付ける。また、テープ部72の表面には、銀粉とポリエステル樹脂と有機溶剤とが配合された導電塗料を吹き付けて、検知塗料層73を形成する。吹き付けによる検知塗料層73の厚さ(膜厚)は、0.05mm程度である。導電塗料層2の膜厚は、検知塗料層73よりも厚くすることができる。
【0042】
ここで、導電塗料層2と検知塗料層73は、配合は異なるが同質の導電塗料の吹き付けによって形成されるため、容易に連続性を確保することができる。導電塗料層2と検知塗料層73との接続箇所は、設置作業後は近付きにくくなる場合があるが、一体性の高い接続がされることで管理負担を減らすことができる。
【0043】
さらに、導電塗料層2と検知塗料層73の表面には、アクリル樹脂を吹き付けることによってコーティング層4,74を形成する。コーティング層4,74を設けることで、耐久性を向上させることができる。
【0044】
このようにして導電塗料テープ1と検知部7と検知装置6とによって形成された電気回路を使用して、検知装置6によるひび割れC1の検知を行わせる。ここで、ひび割れC1が発生する前に、導電塗料テープ1の敷設区間に亀裂C2が発生していたとする。
【0045】
鉄道橋梁のPC桁(コンクリート構造物M)を列車が通過すると、その列車走行荷重によって亀裂C2が開閉することがある。この亀裂C2の開閉に追従できず導電塗料が破断してしまうと、ひび割れC1を検知することができなくなる。
【0046】
これに対して亀裂C2に跨って配置された導電塗料テープ1は、伸縮性に優れているため、亀裂C2が開閉を繰り返したり、幅が広がったりしても、破断されることなく通電し続けることができる。例えば、亀裂C2が1mm程度広がっても、導電塗料テープ1は破断することなく通電状態を維持することができる。
【0047】
一方、ひび割れC1が発生又は広がった場合は、検知部7が破断することで通電が遮断されて、検知装置6によってすぐに検知することができる。すなわち、検知部7のテープ部72及び検知塗料層73は、伸縮性に乏しいため、ひび割れC1の発生又は拡大によって作用する引張力に対抗しきれず、破断を起すことになる。例えば、0.3mm程度のひび割れC1が発生した場合に、検知部7は破断される。但し、25%程度の検知誤差があると言われている。
【0048】
このように構成された本実施の形態の導電塗料テープ1は、伸縮性を有するテープ本体部3の表面に伸縮性を有する導電塗料層2が形成される。このため、検知を予定していない箇所でひび割れが発生したり、亀裂C2が開閉したりしても、破断することがなく、電気回路の通電状態を維持させることができる。
【0049】
また、検知部7が導電塗料を塗布することによって構成されている場合は、導電塗料層2と馴染みが良く、容易に検知部7の検知塗料層73に連続させることができる。
【0050】
さらに、導電塗料層2と検知塗料層73とは同じ銀粉をフィラーとする導電塗料であるため、外観が同質になり、コンクリート構造物Mの表面M1に露出していても美観が損なわれるのを抑えることができる。
【0051】
また、導電塗料層2及び検知塗料層73の表面をコーティング層4,74によって被覆することで、紫外線などによる劣化を抑えて耐久性を向上させることができる。
【0052】
さらに、導電塗料層2の表面がコーティング層4によって被覆されることで、亀裂C2の開閉などで導電塗料テープ1が伸縮を繰り返しても、導電塗料層2がテープ本体部3から剥離するのを抑えることができる。
【0053】
また、導電塗料テープ1と組み合わせて検知部7を配置する範囲を限定することで、ひび割れの発生箇所を迅速に特定することができるようになり、鋼板補強などによる部分的補強を合理的かつ経済的に行うことが可能になる。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0055】
例えば前記実施の形態では、コンクリート構造物Mの表面M1に導電塗料テープ1を敷設する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、踏切棒の破損を検知させたり、FRP(繊維補強プラスチック)の損傷を検知させたりする際にも、導電塗料テープ1を導線などとして利用することができる。