(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータ支持台は、前記エンジン及び前記CVT伝動装置が取り付けられた車体フレームのうち、前記CVT伝動装置よりも横外方へ延出された延出フレーム部と、その延出フレーム部に対して相対移動可能に装着されたモータ取付フレームとを備え、
前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとの間に前記スライド移動機構が設けられ、
前記モータ取付フレームに前記アシストモータが取り付けられている請求項1記載の作業車。
前記スライド移動機構は、前記CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向が長径の長孔が、前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとのうちのいずれか一方に形成され、前記長孔に係合して案内されるガイド部材が、前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとのうちのいずれか他方に形成されたものである請求項2記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載のものでは、CVT伝動装置を挟んでエンジンが存在する側とは反対側にモータが位置し、かつ、そのモータはケースカバーの内部において、支持ブラケットやクラッチケースを介してエンジンブロックに固定され、全体がケースカバーで覆われている。
したがって、CVT伝動装置のメンテナンスやベルト交換等を行う必要が生じた場合には、ケースカバーを外してCVT伝動装置やモータを露出させ、モータを取り外してから、CVT伝動装置のベルト交換などの保守点検作業を行う必要があった。このため、保守点検作業に多大な手数を要するばかりでなく、モータ自体が重量物であるため、クレーン等の持ち上げ用装置等を準備する必要があって、簡単な保守点検作業を行い難い点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、CVT伝動装置を挟んでエンジンが存在する側とは反対側にモータが配設された構造の作業車において、CVT伝動装置のベルト交換などの保守点検作業を簡便に行えるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明における作業車では、エンジンの横側部に、前記エンジンからの駆動力が伝達されるCVT伝動装置が配設され、そのCVT伝動装置の前記エンジンが存在する側とは反対側の横外側にアシストモータが配設され、前記CVT伝動装置の駆動軸と同軸心上に前記アシストモータの出力軸が位置して、前記駆動軸と前記出力軸とが連動連結可能に構成され、前記アシストモータを支持するモータ支持台が、前記CVT伝動装置の存在箇所よりも機体横外方側へ向けて延設され、前記モータ支持台に、前記CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向で、前記CVT伝動装置に対する前記アシストモータの取付位置を遠近移動可能なスライド移動機構が備えられ、前記スライド移動機構は、前記駆動軸と前記出力軸との連結が可能な位置と、前記駆動軸と前記出力軸との連結が解除される位置とにわたって、前記CVT伝動装置に対する前記アシストモータの取付位置を変更可能に構成されている点に特徴がある。
【0007】
本発明によれば、CVT伝動装置の存在箇所よりも機体横外方側へ向けて延設されたモータ支持台が、CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向で遠近移動可能なスライド移動機構を備えていて、駆動軸と出力軸との連結が可能な位置と、連結が解除される位置とにわたって、アシストモータの取付位置を変更可能に構成されている。
したがって、モータ支持台にアシストモータを支持させた状態で、CVT伝動装置に対するアシストモータの取付位置を遠近移動させることができ、クレーン装置などの重量物持ち上げ装置等を要することなくアシストモータの位置を変更させて、CVT伝動装置のベルト交換などの保守点検作業を簡便に行える利点がある。
【0008】
本発明においては、前記モータ支持台は、前記エンジン及び前記CVT伝動装置が取り付けられた車体フレームのうち、前記CVT伝動装置よりも横外方へ延出された延出フレーム部と、その延出フレーム部に対して相対移動可能に装着されたモータ取付フレームとを備え、前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとの間に前記スライド移動機構が設けられ、前記モータ取付フレームに前記アシストモータが取り付けられていると好適である。
【0009】
本発明によれば、車体フレームの延出フレーム部とは別に、延出フレーム部に対して相対移動可能なモータ取付フレームを備えているので、車体フレーム側の延出フレーム部を比較的コンパクトに形成し易い。つまり、車体フレーム側の延出フレーム部のみによってアシストモータの搭載範囲とその移動範囲を確保しようとすれば、CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向での延出フレーム部の延出長さが長大になる虞があるが、相対移動可能なモータ取付フレームとの間にスライド移動機構を備えることによって、延出フレーム部側には、アシストモータの移動範囲を確保し得る程度の延出長を備えるだけで良い。
【0010】
本発明においては、前記スライド移動機構は、前記CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向が長径の長孔が、前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとのうちのいずれか一方に形成され、前記長孔に係合して案内されるガイド部材が、前記延出フレーム部と前記モータ取付フレームとのうちのいずれか他方に形成されたものであると好適である。
【0011】
本発明によれば、スライド移動機構は、CVT伝動装置の駆動軸の軸心に沿う方向が長径の長孔と、その長孔に係合して案内されるガイド部材とを用いて、簡単な構造によって構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる作業車の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した作業車における走行機体の作業走行時における前進側の進行方向(
図2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0014】
〔全体構成〕
ここでは、本発明を作業車の一例であるユーティーティービークルに適用した場合について説明する。
図1、
図2に示すように、ユーティーティービークルは、走行機体の骨組みを形成する車体フレーム1の前部に操向操作可能な左右一対の前車輪1Fを備え、車体フレーム1の後部には操向不能な左右一対の後車輪1Rが支持されている。
走行機体の前後方向での中央部で車体フレーム1の上方側には運転部10が備えられている。走行機体の後部で車体フレーム1の上方側に荷台2備え、この荷台2の下方位置に原動部3が備えられている。
【0015】
前車輪1F及び後車輪1Rには、後述する原動部3に備えたエンジンEやアシストモータMから駆動力が伝達可能に構成されている。これによって、ユーティーティービークルは、四輪駆動走行式の四輪駆動車に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。前記運転部10を取り囲む位置には、運転部10を保護するロプスフレーム11が備えられている。
【0016】
前記荷台2は、その後端寄りの位置における左右方向の横軸芯を中心にして前端側を上昇させることにより、積載物をダンプ式に排出できる機能を有するものであり、車体フレーム1に前記横軸心回りで揺動自在に支持されている。また、荷台2の前端側を昇降作動させる油圧式のアクチュエータ(図示せず)が備えられている。
【0017】
前記運転部10には、運転者が着座するための運転座席12と、前車輪1Fを操向制御するステアリングホイール13と、変速レバー14と、走行速度を制御するアクセルペダル15と、前車輪1F及び後車輪1Rのブレーキ装置17を操作するブレーキペダル16とが備えられている。尚、運転座席12に隣接して助手席が配置されるものであるが、この運転座席12は、横長の単一のシートベースと、横長の単一のシートバックとで成るベンチシートで構成されている。
運転座席12の下側に相当する座席下空間には、エンジンEに燃料を供給するための燃料タンク(図示せず)、及びアシストモータMに電力を供給するためのバッテリ8が配設されている。
【0018】
〔原動部の構造〕
図2および
図3に示すように、走行機体の後部には、荷台5の下方側に位置する状態で原動部3が設けられている。
原動部3には、内燃機関である水冷式のガソリンエンジンE(以下、単にエンジンと略称する)と、電動モータにより構成されているアシストモータM(以下、単にアシストモータと略称する)と、ミッションケース30と、乾式のCVT伝動装置4と、が備えられている。ミッションケース30にはギヤ変速機構31と差動機構32とが内蔵されている。このミッションケース30の下端部には差動機構32からの駆動力を後車輪1Rに伝える左右一対の後輪駆動軸33が備えられている。
【0019】
ミッションケース30の下端部には前方へ突出する動力取出軸34が備えられている。走行機体の下部には動力取出軸34の駆動力が伝えられる伝動軸35が備えられ、走行機体の前部には伝動軸35の駆動力が伝えられる前輪差動機構36に伝えられ、この前輪差動機構36の駆動力を前車輪1Fに伝える前輪駆動軸37が備えられている。
左右一対の前輪駆動軸37の軸端と、左右一対の後輪駆動軸33の軸端とにはブレーキ装置17が備えられている。これらのブレーキ装置17は、前記ブレーキペダル16の操作により前車輪1Fと後車輪1Rとに制動力を作用させるように機能する。
【0020】
ミッションケース30に設けられたギヤ変速機構31は、前記変速レバー14の操作によって変速操作されるものである。このギヤ変速機構31は、変速レバー14の操作に従い、走行機体の走行速度の変更(高速と低速)と、走行方向の切換(前進と後進との切換)を実現する。前記変速レバー14では、走行速度の設定と、前後進の切換とを単一のレバー操作で行えるようにしたものであるが、例えば、変速を行うレバーと、前進と後進との切換を行う前後進レバーとを別々のレバーで構成したものであっても良い。
【0021】
図2、
図3、および
図5に示すように、原動部3にはクランク軸3aを横向き姿勢にしてエンジンEが配置されている。クランク軸3aの後方に隣接する位置に入力軸3bを横向き姿勢にしてミッションケース30が配置されている。エンジンEの後方側でミッションケース30の上方横側部に前後方向に長い姿勢のマフラー38(
図4を参照)が配置されている。
エンジンE及びミッションケース30の側部位置に、エンジンEの動力をミッションケース30に伝えるCVT伝動装置4が配置されている。このCVT伝動装置4を挟んで、エンジンEとは反対側にアシストモータMが配置されている。
【0022】
〔CVT伝動装置〕
図3及び
図8に示すように、CVT伝動装置4は、ベルト巻回径の変更が可能な駆動プーリ41(本発明の駆動回転体に相当)と、ベルト巻回径の変更が可能な従動プーリ42(本発明の従動回転体に相当)と、駆動プーリ41および従動プーリ42に亘って巻回されたゴム製の無端ベルト43を有する。これらは、変速ケース44に収容されている。尚、無端ベルト43として金属ベルトを用いても良い。
【0023】
エンジンEとCVT伝動装置4との間に、エンジンEのクランク軸3aからCVT伝動装置4への回転駆動力を断続する遠心クラッチ39が備えられている。この遠心クラッチ39の出力側に設けられた駆動軸40にCVT伝動装置4の駆動プーリ41が備えられている。
駆動軸40はエンジンE側の端部近傍部分がクラッチケース45に設けられた軸受45aにより回転自在に支持され、アシストモータM側の端部近傍部分が支持ブラケット47に設けられた軸受47aにより回転自在に支持されている。ミッションケース30の入力軸3bには従動プーリ42が備えられている。遠心クラッチ39の駆動軸40がクランク軸3aと同軸芯上に配置されている。
【0024】
前記遠心クラッチ39はクランク軸3aの回転速度が設定値未満の低速回転である場合に遮断状態にあり、クランク軸3aの回転力を駆動軸40に伝達しない。また、クランク軸3aの回転速度が設定値を超える場合には連結状態に達し、クランク軸3aの回転力を駆動軸40に伝えるように作動する。
【0025】
駆動プーリ41は、駆動軸40の基端側(エンジンEに近接する側)に配置される固定シーブ41Aと、駆動軸40の先端側に配置される可動シーブ41Bとを備えている。また、駆動軸40の突出端には可動シーブ41Bの位置を調節する巻回径調節機構46を備えている。
【0026】
この巻回径調節機構46は、駆動軸40の回転速度が高速化するほど可動シーブ41Bを固定シーブ41Aに接近する方向に移動させて駆動プーリ41のベルト巻回径の拡大を図るものである。これとは逆に、駆動軸40の回転速度が低速化するほど可動シーブ41Bを固定シーブ41Aから離間させる方向に移動させて駆動プーリ41のベルト巻回径の縮小を図るように構成されている。
【0027】
従動プーリ42は、入力軸3bの基端側(ミッションケース30に近接する側)に配置される可動シーブ42Aと、入力軸3bの先端側に配置される固定シーブ42Bと、可動シーブ42Aを固定シーブ42Bに接近させる方向に付勢力を作用させるコイルバネ42Cとを有している。
【0028】
このコイルバネ42Cは、無端ベルト43に作用する張力に対応して従動プーリ42の可動シーブ42Aの位置を決めるための付勢力を作用させる。つまり、駆動プーリ41のベルト巻回径が変化した場合には、無端ベルト43に作用する張力が変化する。この張力が増大するほど可動シーブ42Aを固定シーブ42Bから離間させ、張力が減少するほど可動シーブ42Aを固定シーブ42Bに接近させる作動を実現する。従って、駆動プーリ41のベルト巻回径が小さい場合には、従動プーリ42のベルト巻回径が大きい値に設定され、これとは逆に、駆動プーリ41のベルト巻回径が拡大した場合には、従動プーリ42のベルト巻回径が小さい値に設定される。
【0029】
駆動プーリ41を挟んでエンジンEの反対側に配置されたアシストモータMは、出力軸50が横方向(駆動プーリ41側)を向くように配置されている。本実施形態では、アシストモータMは支持ブラケット47の外側端部に、例えばボルト等により取り付けられている。また、出力軸50は駆動軸40と同軸芯状に配置されている。駆動軸40が出力軸50に延長され、出力軸50と駆動軸40とに亘ってカプラ48が設けられ、カプラ48と出力軸50とおよびカプラ48と駆動軸40とがスプライン嵌合されている。カプラ48が支持ブラケット47に設けられた軸受47aに支持されることにより、出力軸50と駆動軸40とが一体回転自在に支持される。
【0030】
図3及び
図8に示すように、変速ケース44(本発明のケース部材に相当)は、車体側(ミッションケース30とエンジンEとの少なくとも一方)に支持されるケース本体44Aと、このケース本体44Aに対して分離自在に支持されるカバー体44Bとを備えている。また、遠心クラッチ39を取り囲むクラッチケース45がエンジンEのシリンダブロックに連結され、このクラッチケース45が変速ケース44のケース本体44Aに連結されている。また、ケース本体44Aおよびクラッチケース45に対して、支持ブラケット47が、例えばボルト等により、取り付けられている。
【0031】
カバー体44Bは、駆動プーリ41と、巻回径調節機構46と、従動プーリ42とを横外方から収容し得る形状に形成されている。このカバー体44B及びケース本体44Aは、外周にフランジ面44Ba,44Aaを形成した構造を有している。そして、ケース本体44Aのフランジ面44Aaとカバー体44Bのフランジ面44Baとを対向させて、間にゴム等のシール材(図示せず)を挟み込む形態で、ケース本体44Aとカバー体44Bとがボルト等(図示せず)によって連結されている。
この構造により、ケース本体44Aは車体側(ミッションケース30とエンジンEとの少なくとも一方)に支持させたままの状態で、カバー体44Bのみを脱着することが可能である。
【0032】
図8に示すように、カバー体44Bのうち、アシストモータMの出力軸50やカプラ48が貫通する部位には開口部49が形成され、その開口部49に、前記出力軸50やカプラ48の外周側を覆う筒状部材51が差し込み状態で固定されている。
この筒状部材51は、駆動プーリ41に近い側の端部が前記開口部49を貫通し、支持ブラケット47に固定ボルト52を介して連結固定されている。
そして、筒状部材51のうち、アシストモータMに対向する側の端部は、アシストモータMを支持するモータ支持台6のモータ取付フレーム6Bに当接する状態で適宜ボルト等(図示せず)により連結固定されている。
【0033】
〔モータ支持台〕
アシストモータMを支持するモータ支持台6は、
図4乃至
図11に示すように構成されている。
このモータ支持台6は、車体フレーム1のうち、左横側部に位置する前後方向に長いメインフレーム1Aから左横外方へ向けて突出する延出フレーム部6Aと、その延出フレーム部6Aに対して、左右方向で相対移動可能に装着されたモータ取付フレーム6Bとを備えている。
【0034】
延出フレーム部6Aは、上向きの載置面60aを有した台板部材60と、その台板部材60の前後両端側で下向きに屈折した側部リブ61と、前後の側部リブ61の中間で台板部材60の下側に設けられた中間リブ62とを備えた形状に形成され、メインフレーム1Aに近い側の端部がメインフレーム1Aに溶接固定されて、車体フレーム1の一部を構成している。
【0035】
モータ取付フレーム6Bは、台板部材60の台板部材60に下面側が載置されるチャンネル状のガイド部材63と、そのガイド部材63の前後両側でアシストモータMの出力軸50の方向に長手方向が沿う横架部材64と、前後の横架部材64の左右両端側を連結する縦枠部材65とで構成されたスライド枠体66を備えている。
また、スライド枠体66のうち、左右の縦枠部材65の前後両端部に、平面視でチャンネル状の合計四個の連結部材67の下部が、連結ボルト67aを介して取り付けられている。そして、この連結部材67の上部側に、左右一対の端部支持枠68が、連結ボルト67bを介して連結固定されることにより、アシストモータMを支持可能なモータ取付フレーム6Bが構成されている。
【0036】
アシストモータMは、その左右の端部が左右の端部支持枠68に対向し、左右の端部支持枠68に挟み込まれた状態で適宜連結ボルト等(図示せず)を介して左右の端部が端部支持枠68に連結される。
そして、アシストモータMを連結した左右の端部支持枠68がスライド枠体66に連結固定され、スライド枠体66が延出フレーム部6Aの台板部材60に搭載され、連結固定される。
【0037】
上記のスライド枠体66は、延出フレーム部6Aの台板部材60に対して、スライド移動機構7を介して連結固定されている。
このスライド移動機構7は、
図7及び
図9乃至
図11に示すように、スライド枠体66のチャンネル状のガイド部材63に、アシストモータMの出力軸50の方向に沿うように形成された長孔70と、その長孔70を貫通した状態で台板部材60に取り付けられた一本の連結ボルト71(ガイド部材に相当する)とを備えたものである。
【0038】
台板部材60には、上記の長孔70を貫通する位置に設けられた連結ボルト71を含めて、3本の連結ボルト71を取り付けてある。そして、台板部材60の載置面60aには、連結ボルト71を挿通するための貫通孔60bが3箇所に設けられている。長孔70を貫通する連結ボルト71は、
図7及び
図9乃至
図11に示すように、台板部材60の延出端近くに設けられた貫通孔60bと前記長孔70との両方を貫通する状態に設けられている。
長孔70を貫通する連結ボルト71以外の連結ボルト71,71は、台板部材60の基端近くに設けられた貫通孔60b,60bを貫通して、ガイド部材63の前後に位置する横架部材64に連結固定されている。各連結ボルト71は個別に緊締及び弛緩可能に、かつ脱着可能に設けてある。
【0039】
したがって、アシストモータMは、モータ取付フレーム6Bに支持されたままの状態で、延出フレーム部6Aに対しては、メインフレーム1Aに対する遠近方向で位置移動可能に構成されている。
つまり、延出フレーム部6Aのうち、メインフレーム1Aに連結された側の端部に近い位置で台板部材60に取り付けていた2本の連結ボルト71を取り外し、長孔70を貫通する位置の連結ボルト71による緊締力を緩めることで、延出フレーム部6Aに搭載されたままの状態で、スライド枠体66を、長孔70の長手方向にスライド移動させることができる。
【0040】
これにより、モータ取付フレーム6Bは、
図9に示すように、アシストモータMが最も車体フレーム1に近づけられた状態で、3本の連結ボルト71を全て台板部材60の貫通孔60bに挿通して固定される。これによって、アシストモータMが通常の作業走行を行える位置に固定された状態となる。
この作業走行状態から、車体フレーム1に連結された側の端部に近い位置で台板部材60に取り付けていた2本の連結ボルト71を取り外し、長孔70を貫通する位置の連結ボルト71だけを残し、その連結ボルト71による緊締力を緩めると、
図11に示すように、延出フレーム部6Aに対してモータ取付フレーム6Bを、延出フレーム部6Aに支持された状態を保ちながらメインフレーム1Aから離れた横外側へ移動させることができる。
【0041】
長孔70の長径方向の長さは、モータ取付フレーム6Bを最大限横外方へ引き出したとき、そのモータ取付フレーム6BとCVTベルト伝動装置4の変速ケース44との間に、カバー体44Bを取り外して、CVTベルト伝動装置4の無端ベルト43の脱着を行うことが可能な空間を生じさせることができる程度に設定されている。
したがって、重量物であるアシストモータMを機体から降ろす必要なく、モータ取付フレーム6Bに支持させたままの状態で、CVTベルト伝動装置4に対して遠近移動させることができる。
【0042】
〔駆動制御〕
ユーティリティービークルの駆動制御の一例を説明する。
このユーティリティービークルは、低速度時(低回転速度時)は、アシストモータMにより駆動され、高速度時(高回転速度時)はエンジンE(もしくは、エンジンEおよびアシストモータM)により駆動される。具体的には、アクセルペダル15を操作すると給電ユニット(図示しない)よりアシストモータMに対して給電が行われ、アシストモータMが回転駆動する。アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるまでは、エンジンEは駆動せず、アシストモータMのみがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で駆動する。この際、エンジンEは駆動していないため、エンジンEの回転速度が設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態にある。このため、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0043】
アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるとエンジンが起動し、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。ただし、アクセルペダル15が、遠心クラッチ39が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置(第2所定位置)に操作されるまでは、エンジンの回転速度は設定値未満であり、遠心クラッチ39は遮断状態である。
このため、エンジンE(クランク軸3a)の回転駆動力は、駆動軸40には伝達されない。このため、上記と同様に、アシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。アクセルペダル15の操作位置が第2所定位置に達するとエンジンEの回転速度が設定値に達し、遠心クラッチ39が連結状態となり、エンジン(クランク軸3a)の回転駆動力が駆動軸40に伝達される。アクセルペダル15が第2所定位置を超えて操作された状態では、エンジンEおよびアシストモータMがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動され、エンジンEおよびアシストモータMの回転駆動力が、CVT伝動装置4を介してミッションケース30の入力軸3bに入力され、ユーティリティービークルが駆動される。
【0044】
ユーティリティービークルの制動時には、エンジンEの駆動が停止され(エンジンの回転速度が設定値未満となり)、遠心クラッチ39が遮断状態となり、アシストモータMによる回生ブレーキにより、制動や減速が行われる。この際に発生する電力がバッテリ8に蓄電される。
【0045】
上記のアシストモータMおよびエンジンの起動、並びに、アシストモータMおよびエンジンEの回転速度の制御は、例えば、コントロールユニット(図示しない)により行われる。具体的には、アクセルペダル15に例えば回転センサ等の操作位置検出手段が設けられている。コントロールユニットは、操作位置検出手段からの検出信号に基づいて上記制御を行う。
【0046】
なお、エンジンEの回転速度の制御は、上記に限られず、例えば、機械式のガバナーを用いたものであってもよい。単一のアクセルペダル15を用いる場合、このアクセルペダル15にエンジンEの回転速度を制御するためのガバナーが連動されるとともに、アシストモータMの回転速度を制御するための操作位置検出手段が設けられる。アシストモータMのためのアクセルペダル15とエンジンEのためのアクセルペダル15とを別途に設ける場合には、エンジンEのためのアクセルペダル15にガバナーが連動され、アシストモータMのためのアクセルペダル15に操作位置検出手段が設けられる。
【0047】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、エンジンEとしてガソリンエンジンを備えたものを示したが、これに限らず、例えば、ディーゼルエンジンを備えるディーゼル仕様でもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0048】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、スライド移動機構7を、単一の長孔70と単一の連結ボルト71によるガイド部材とで構成したものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、互いに平行に配置された複数の長孔70と、その複数の長孔70内に挿通された複数の連結ボルト71とを用いてモータ取付フレーム6Bをスライド移動させるように構成してもよい。
また、ガイド部材としては、連結ボルト71に限らず、例えばピンやローラなど、長孔70に挿入された状態でモータ取付フレーム6Bのガイドを行うことができる構造ものであればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0049】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、スライド移動機構7における長孔70を、可動側のモータ取付フレーム6Bに形成した構造のものを例示したが、これに限らず、長孔70を、固定側の延出フレーム部6Aに形成した構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。