(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク、キャニスタ、及び燃料ポンプを備える蒸発燃料処理装置と、前記燃料タンク及びキャニスタを含む前記蒸発燃料処理装置の処理系内を密閉状態に維持する密閉手段と、前記燃料タンクと前記キャニスタとの連通状態を遮断し、前記処理系内を前記燃料タンクを含む第1領域と前記キャニスタを含む第2領域とに区分け可能な遮断機構と、前記第1領域内の圧力を検知する第1圧力検知手段と、前記第2領域内の圧力を検知する第2圧力検知手段と、前記燃料ポンプから圧送される燃料を利用して前記キャニスタから前記燃料タンクへ気体を移動させる気体移動手段とを備える、蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置であって、
内燃機関の停止中に、前記第1領域内の圧力変化に基づき前記第1領域における漏れの有無を診断し、
前記内燃機関の運転中に、前記密閉手段により前記処理系内を密閉した状態において前記気体移動手段により前記第2領域に負圧を印加して、前記第2領域の圧力変化に基づき前記第2領域における漏れの有無を診断し、
前記第2領域における漏れの有無の診断は、前記気体移動手段により前記第2領域に負圧を印加した際の前記第2領域内の圧力変化に基づく第1診断と、前記第1診断後の前記密閉手段と前記遮断機構とにより閉鎖された前記第2領域内の圧力変化に基づく第2診断との両方により行われる、蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、車両等の内燃機関の運転中は、燃料の揺動や消費による燃料タンク内の圧力変化が大きいため、処理系内の燃料タンク側を精度良く漏れ診断することが難しい。そのため、処理系内の燃料タンク側とキャニスタ側とを同時に漏れ診断する特許文献1の漏れ検出装置は、内燃機関の停止中に漏れ診断を行う必要がある。
【0006】
しかし、内燃機関の停止中は、漏れ検出装置は車両に搭載されているバッテリから供給される電力を利用して作動する。バッテリに蓄えられた電気は内燃機関の始動に用いられるため、内燃機関の停止中の電力消費は少なく抑えることが望まれている。
【0007】
そこで、本明細書に開示の技術は、内燃機関の停止中の消費電力を少なく抑えることができる蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その一つの例は、燃料タンク、キャニスタ、及び燃料ポンプを備える蒸発燃料処理装置と、燃料タンク及びキャニスタを含む蒸発燃料処理装置の処理系内を密閉状態に維持する密閉手段と、燃料タンクとキャニスタとの連通状態を遮断し、処理系内を燃料タンクを含む第1領域とキャニスタを含む第2領域とに区分け可能な遮断機構と、第1領域内の圧力を検知する第1圧力検知手段と、第2領域内の圧力を検知する第2圧力検知手段と、燃料ポンプから圧送される燃料を利用してキャニスタから燃料タンクへ気体を移動させる気体移動手段とを備える、蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置であって、内燃機関の停止中に、第1領域内の圧力変化に基づき第1領域における漏れの有無を診断し、内燃機関の運転中に、密閉手段により処理系内を密閉した状態において気体移動手段により第2領域に負圧を印加して、第2領域の圧力変化に基づき第2領域における漏れの有無を診断する、蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置である。
【0009】
この構成によると、キャニスタを含む第2領域の診断は内燃機関の運転中に行われるため、第2領域の診断が内燃機関の停止中に行われる場合と比べて、内燃機関の停止中の消費電力を少なくすることができる。
【0010】
上記蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置において、第1領域における漏れの有無の診断は、遮断機構により閉鎖された第1領域の内圧と大気圧との差圧の絶対値が所定値以上である場合、気体移動手段により第1領域に圧力を印加することなく行われ、遮断機構により閉鎖された第1領域の内圧と大気圧との差圧の絶対値が所定値未満である場合、圧力移動手段により第1領域に正圧を印加して行われてもよい。
【0011】
この構成によると、第1領域における漏れの有無の診断は、遮断機構により閉鎖された第1領域の内圧と大気圧との差圧の絶対値が所定値以上である場合、気体移動手段により第1領域に圧力を印加することなく行われるため、第1領域の漏れ診断の際に消費される電力を低減することができる。
【0012】
上記蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置において、第2領域における漏れの有無の診断は、気体移動手段により第2領域に負圧を印加した際の第2領域内の圧力変化と、その後に密閉手段と遮断機構とにより閉鎖された第2領域内の圧力変化とに基づいて行われてもよい。
【0013】
この構成によると、第2領域における漏れの有無の診断は、第2領域に負圧を印加した際の第2領域内の圧力変化と、その後に閉鎖された第2領域内の圧力変化とに基づいて行われるため、診断の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記蒸発燃料処理装置の漏れ検出装置によると、燃料タンクを含む第1領域の診断は内燃機関の停止中に行われ、キャニスタを含む第2領域の診断は内燃機関の運転中に行われる。そのため、両方の漏れ診断を内燃機関の停止中に行う場合と比べて、内燃機関の停止中の消費電力を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書に開示の技術の一実施形態について説明を行う。本実施形態に係る蒸発燃料処理装置は、自動車等の車両の燃料タンク内で発生した蒸発燃料が大気に漏れ出るのを防止する装置であり、前記蒸発燃料を一時的にキャニスタ中に捕集した後に、内燃機関で燃焼するよう構成されている。また、蒸発燃料処理装置には、処理系内の漏れの有無を診断する漏れ検出装置が設けられている。
【0017】
<蒸発燃料処理装置10の概要>
蒸発燃料処理装置10は、
図1に示すように、ガソリン等の燃料を貯留する燃料タンク20と、蒸発燃料を吸着可能かつ脱離可能に構成されたキャニスタ30と、燃料タンク20をキャニスタ30に接続するベーパ通路40とを備えている。
【0018】
(燃料タンク20)
燃料タンク20は、内燃機関(エンジン)12に供給されるガソリン等の燃料Fを貯留する密閉タンクである。燃料タンク20の内部には、燃料Fをエンジン12に圧送する燃料ポンプ21が設置されている。燃料ポンプ21は、例えばモータ一体型の電動ポンプである。燃料ポンプ21には燃料供給管22が接続されている。燃料タンク20内の燃料Fは、燃料供給管22を介してエンジン12へ供給される。燃料供給管22の途中からは分岐管23が分岐している。分岐管23の一端にはアスピレータ50が接続されており、燃料ポンプ21から圧送される燃料の一部がアスピレータ50に供給される。また、燃料タンク20は、燃料タンク20内の燃料Fの温度を検出する温度センサ24と、燃料タンク20の内圧を測定する第1圧力センサ25とを備える。温度センサ24及び第1圧力センサ25の信号はエンジンコントロールユニット(ECU)60に送られる。なお、ECU60は、第1圧力センサ25等の各種センサからの信号に基づき、蒸発燃料処理装置10を制御するよう構成されている。ECU60は、様々な制御プログラムを記憶しているメモリ61と、制御プログラムを実行するためのプロセッサ62とを備えている。なお、第1圧力センサ25は、本明細書における「第1圧力検知手段」に相当する。
【0019】
(キャニスタ30)
キャニスタ30は、活性炭等からなる吸着材Cが充填された密閉容器である。上述した通り、キャニスタ30は、ベーパ通路40を介して燃料タンク20と接続されており、燃料タンク20で生じた蒸発燃料を吸着するよう構成されている。キャニスタ30にはパージ通路31が接続されており、キャニスタ30は、パージ通路31を介してエンジン12の吸気管14のスロットルバルブ16より下流と連通している。パージ通路31には、ECU60により開閉制御されるパージ弁32が設けられている。
【0020】
また、キャニスタ30には、一端が大気に開放された大気通路33が接続されている。大気通路33は、キャニスタ30側から順に、第2圧力センサ34及び大気通路弁35を備えている。第2圧力センサ34は、キャニスタ30内の圧力と実質的に等しい大気通路33内の圧力を検出し、その信号はECU60に送られる。大気通路弁35は、ECU60により開閉制御される。なお、第2圧力センサ34は、本明細書における「第2圧力検知手段」に相当する。また、パージ弁32及び大気通路弁35は、本明細書における「密閉手段」に相当する。
【0021】
(ベーパ通路40)
ベーパ通路40は、燃料タンク20内の燃料液面上部空間、すなわち気層部をキャニスタ30と連通している。ベーパ通路40には、ECU60により開閉制御される封鎖弁41が設けられている。また、ベーパ通路40の途中、詳しくはキャニスタ30と封鎖弁41との間には、バイパス通路42が接続されている。バイパス通路42の一端は、燃料タンク20内に配置されているアスピレータ50に接続されている。そのため、アスピレータ50内で負圧が生じると、キャニスタ30内の気体はバイパス通路42を介して燃料タンク20内に移動される。バイパス通路42には、電磁式の遮断弁43が設けられており、遮断弁43は、ECU60によって開閉制御される。バイパス通路42は、ベーパ通路40と並列になるよう、直接キャニスタ30に接続されていてもよい。なお、封鎖弁41及び遮断弁43は、本明細書における「遮断機構」に相当する。
【0022】
(アスピレータ50)
アスピレータ50は、燃料ポンプ21から供給された燃料の流れを利用して内部に負圧を発生させる機構であり、
図2に示されるように、ベンチュリ部51とノズル部55とから構成されている。ベンチュリ部51は、絞り52と、絞り52の上流側に設けられたテーパ状の入口縮径部53と、絞り52の下流側に設けられたテーパ状の出口拡径部54とを備えている。入口縮径部53、絞り52、及び出口拡径部54は同軸に形成されている。そして、ベンチュリ部51の入口縮径部53の上流端に、バイパス通路42が接続される吸引ポート51pが形成されている。
【0023】
ノズル部55は、ベンチュリ部51の入口縮径部53の内側に同軸に配置されたノズル本体56を備えている。ノズル本体56の噴射口56pは、ベンチュリ部51の絞り52の近傍に位置決めされている。ノズル本体56の基端部(噴射口56pとは反対側)には、分岐管23が接続される燃料供給ポート57が形成されている。
【0024】
燃料ポンプ21から吐出された燃料Fの一部が分岐管23を介して燃料供給ポート57からアスピレータ50内に導入されると、燃料Fは、ノズル本体56から噴射され、絞り52及び出口拡径部54の中央を軸方向に高速で流れる。このとき、ベンチュリ部51の絞り52付近では、ベンチュリ効果により負圧が発生する。これにより、吸引ポート51pに接続されたバイパス通路42内の気体がベンチュリ部51内に吸引される。なお、アスピレータ50は、本明細書における「気体移動手段」に相当する。
【0025】
<蒸発燃料処理装置10の動作>
蒸発燃料処理装置10は、燃料タンク20内で生じた蒸発燃料が大気中へ漏れ出ることを防止するため、車両の状態に基づき以下のようにECU60によって制御される。
【0026】
車両の駐車中は、ベーパ通路40の封鎖弁41及びバイパス通路42の遮断弁43が閉弁状態に維持される。これにより、燃料タンク20は密閉状態に保持され、内部での蒸発燃料の発生が抑制される。
【0027】
燃料タンク20への給油時には、ベーパ通路40の封鎖弁41、及び大気通路33の大気通路弁35が開弁され、パージ通路31のパージ弁32、及びバイパス通路42の遮断弁43は閉弁状態に維持される。これにより、燃料タンク20内の混合ガス(蒸発燃料及び空気)がベーパ通路40を通ってキャニスタ30内に導入される。そして、混合ガス中の蒸発燃料はキャニスタ30内の吸着材Cに吸着され、空気のみが大気通路33を介して大気中へ放出される。
【0028】
エンジン12の運転中は、通常はベーパ通路40の封鎖弁41及びバイパス通路42の遮断弁43は閉弁状態に維持される。エンジン12の運転中において所定のパージ条件が成立すると、キャニスタ30から蒸発燃料をパージするためのパージ制御が実行される。ECU60からの信号に基づきパージ弁32と大気通路弁35とが開弁されると、エンジン12の吸気負圧により、大気通路33からキャニスタ30内に空気が流入する。キャニスタ30内の蒸発燃料は、流入した空気により吸着材Cから脱離され、空気と共にパージ通路31を介してエンジン12へと供給される。また、所定の圧抜き条件が成立する場合、パージ制御の実行中に封鎖弁41が開弁され、燃料タンク20内の圧抜きが行われる。
【0029】
<蒸発燃料処理装置10の漏れ診断>
次に、蒸発燃料処理装置10の漏れ診断(漏れ検出)について説明する。蒸発燃料処理装置10の処理系の内部空間は、パージ弁32及び大気通路弁35を閉じることにより密閉される。そして、処理系の内部空間は、封鎖弁41及び遮断弁43を閉じることにより、燃料タンク20を含む第1領域と、キャニスタ30を含む第2領域とに区分される。キャニスタ30側の第2領域における漏れ診断は、エンジン12の運転中に行われる。一方、燃料タンク20側の第1領域における漏れ診断は、エンジン12の停止中に行われる。以下において、それぞれの領域の漏れ診断をより詳細に説明する。なお、本開示における漏れ診断は、メモリ61に記憶された制御プログラムに基づき、ECU60が蒸発燃料処理装置10の各構成要素を制御することにより行われる。
【0030】
(キャニスタ側の漏れ診断)
先ず、キャニスタ30側の第2領域における漏れ診断処理を、
図3から
図5を参照しながら説明する。
図3は、第2領域の漏れ診断処理全体を示すフローチャートである。
図4は、第2領域の漏れ診断処理における漏れ診断の工程の詳細を示すフローチャートである。
図5は、漏れ診断の工程中における第2領域の内圧変化を示すグラフである。
【0031】
第2領域の漏れ診断処理においては、漏れの有無を判定するのに先立って、各種条件が満たされているかが判断される。
図3に示すように、最初に、ステップS10において、パージ制御がオフであるか否かが判断される。ステップS10が肯定判断されると、ステップS12においてエンジン12が駆動しているか否かが判断される。そして、ステップS12が肯定判断されると、その他の実行条件、例えば、エンジン12の暖機運転が終了しているか否かが判断される。そして、ステップS14が肯定判断されると、ステップS16において第2領域の漏れ診断が行われる。なお、ステップS10,S12及びS14のいずれかが否定判断された場合、漏れ診断処理は終了する。
【0032】
ステップS16における第2領域の漏れ診断の詳細は、
図4のフローチャートに示されている。第2領域の漏れ診断の開始時において、パージ弁32、封鎖弁41及び遮断弁43は閉弁されており、大気通路弁35は開弁されている。最初に、ステップS20において、大気通路弁35が開いている状態における大気通路33内の圧力(初期P2)、すなわち第2領域の内圧が第2圧力センサ34により測定される。そして、大気通路弁35を閉じ、第2領域を密閉する(ステップS22)。次に、バイパス通路42の遮断弁43が開弁される(ステップS24)と、アスピレータ50内で生じた負圧によりキャニスタ30内の気体が燃料タンク20へと移動され、第2領域に負圧が印加される。この気体の移動は所定時間(T1)が経過するまで継続される(ステップS26)。所定時間(T1)が経過すると、大気通路33内の圧力P2が測定され、初期P2からの圧力変化量ΔP2が算出される(ステップS28)。
【0033】
図5には、ステップS26において第2領域を減圧している状態における第2領域内の圧力変化が横軸の0からT1の範囲に示されている。
図5において、実線は正常な(漏れが無い)状態の圧力変化、一点鎖線はスモールリーク(少量の漏れ)がある状態の圧力変化、二点鎖線はラージリーク(多量の漏れ)がある状態の圧力変化をそれぞれ示す。
図5に示されるように、ステップS26において第2領域を減圧すると、漏れが少ないほど第2領域内の圧力は大きく低下する。すなわち、圧力変化量ΔP2は、漏れが少ないほど小さく(絶対値は大きく)なる。そのため、圧力変化量ΔP2を所定の判定値と比較することにより、漏れの程度を判定することができる。
【0034】
先ず、ステップS30において、圧力変化量ΔP2が所定の判定値A1以下であるか否かが判断される。多量の漏れがある場合には、ステップS26において第2領域の内圧P2は僅かしか低下しないため、圧力変化量ΔP2は判定値A1より大きくなる。そのため、圧力変化量ΔP2が判定値A1より大きく、ステップS30が否定判断されると、ステップS31においてラージリーク(多量漏れ有り)であると判定される。一方、ステップS30が肯定判断されると、ステップS32において、圧力変化量ΔP2が所定の判定値A2以上であるか否かが判断される。漏れが無い場合には、ステップS26において第2領域の内圧P2は大きく低下するため、圧力変化量ΔP2は判定値A2より小さくなる。そのため、圧力変化量ΔP2が判定値A2より小さく、ステップS32が否定判断されると、ステップS33において正常(漏れ無し)であると判定される。なお、ステップS32が肯定判断されると、ステップS34においてスモールリーク(少量漏れ有り)であると仮判定され、更にスモールリークの有無が診断される。
【0035】
スモールリークの仮判定がされた場合には、ステップS36において遮断弁43が閉じられ、第2領域は密閉される。そして、大気通路33内の圧力P2、すなわち第2領域の内圧が所定の判定値A3以上になるまで、第2領域は密閉状態に維持される(ステップS38)。そして、圧力P2が判定値A3以上になると、遮断弁43を閉じた時点からの保持時間ΔTが算出される(ステップS40)。
【0036】
図5には、ステップS38における第2領域内の圧力変化がT1より右側に示されている。
図5に示されるように、漏れが少ないほど、第2領域の内圧は大気圧(101.3kPa)に戻るのに長時間を要する。そのため、ステップS40で算出された保持時間ΔTを所定の判定値と比較することにより、スモールリークの有無が判断される。
【0037】
ステップS42において、保持時間ΔTが所定の判定値A4以下であるか否かが判断される。漏れが無い場合には、ステップS38において第2領域内の圧力P2が判定値A3以上になるのに長時間を要するため、保持時間ΔTは判定値A4より大きくなる。保持時間ΔTが判定値A4より大きい場合、ステップS42が否定判断され、ステップS33において正常(漏れ無し)であると判定される。一方、保持時間ΔTが判定値A4以下であると、ステップS42が肯定判断され、ステップS44においてスモールリーク(少量の漏れ有り)であると判定される。このようにして、キャニスタ30を含む第2領域の漏れ診断は行われる。なお、全ての工程が終了すると、パージ弁32、大気通路弁35、封鎖弁41及び遮断弁43は、漏れ診断処理開始前の状態に戻される。
【0038】
(タンク側の漏れ診断)
次に、燃料タンク20側の第1領域における漏れ診断処理を、
図6から8を参照しながら説明する。詳細は後述するが、第1領域の漏れ診断は、第1領域に圧力を印加することなく行われる第1漏れ診断と、第1領域に負圧を印加して行われる第2漏れ診断とを含む。
図6は、第1領域の漏れ診断処理全体を示すフローチャートである。
図7は、第1領域の漏れ診断処理における第2漏れ診断の詳細を示すフローチャートである。
図8は、第2漏れ診断の工程中における第1領域の内圧変化を示すグラフである。
【0039】
燃料タンク20側の第1領域の漏れ診断はエンジン12の停止中に行われるため、
図6に示されるように、最初にキーオフ中か否かが判断される(ステップS50)。ステップS50が肯定判断されると、ステップS52において実行条件が満たされているか否かが判断される。この実行条件としては、例えばエンジン12の停止後に所定時間が経過していることや、燃料タンク20内の燃料温度が所定値まで低下していることが挙げられる。ステップS50又はS52が否定判断された場合、漏れ診断処理は終了する。一方、ステップS52が肯定判断されると、ステップS54において第1漏れ診断が行われる。
【0040】
エンジン12の停止後において、密閉された燃料タンク20の内圧は燃料温度の変化等の様々な要因により変化する。しかし、燃料タンク20側の第1領域が亀裂等を介して外部と連通している場合には、燃料タンク20の内圧は大気圧に近い値になる。そのため、第1漏れ診断(ステップS54)では、燃料タンク20の内圧が所定範囲内であるか否か、より詳しくは、燃料タンク20の内圧と大気圧との差圧の絶対値が所定値未満であるか否かが判断される。燃料タンク20の内圧が所定範囲外である場合、すなわち燃料タンク20の内圧と大気圧との差圧の絶対値が所定値以上である場合は、ステップS54が否定判断され、正常(漏れ無し)であると判定される(ステップS55)。一方、燃料タンク20の内圧が所定範囲内であると、ステップS54が肯定判断され、ステップS56において第2漏れ診断が行われる。
【0041】
続いて、ステップS56における第2漏れ診断の詳細を
図7のフローチャートを参照しながら説明する。第2漏れ診断では、最初に遮断弁43と封鎖弁41とがそれぞれ開弁され(ステップS60及びS62)、第1領域と第2領域とがベーパ通路40及びバイパス通路42を介して相互に連通される。この状態において、第1圧力センサ25により燃料タンク20内の圧力(初期P1)が測定される(ステップS64)。そして、封鎖弁41が閉じられ(ステップS66)、燃料ポンプ21が駆動される(ステップS68)。燃料ポンプ21から供給された燃料を利用してアスピレータ50は内部に負圧を生じ、キャニスタ30内の気体がバイパス通路42を介して燃料タンク20内へと移動される。これにより、燃料タンク20内に正圧が印加される。そして、所定時間(T2)が経過した後に(ステップS70)、燃料タンク20内の圧力P1が測定され、初期P1からの圧力変化量ΔP1が算出される(ステップS72)。
【0042】
図8には、ステップS70において第1領域を加圧した状態における圧力変化が横軸の0からT2の範囲に示されている。
図8において、実線は正常な(漏れが無い)状態、一点鎖線はスモールリーク(少量の漏れ)がある状態、二点鎖線はラージリーク(多量の漏れ)がある状態をそれぞれ示す。
図8に示すように、ステップS70において第1領域を加圧すると、漏れが少ないほど燃料タンク20の内圧は大きく上昇する。すなわち、圧力変化量ΔP1は、漏れが少ないほど大きくなる。そのため、圧力変化量ΔP1を所定の判定値と比較することにより、漏れの程度を判定することができる。
【0043】
図7に示されるように、ステップS74において、圧力変化量ΔP1が判定値B1以上であるか否かが判断される。圧力変化量ΔP1が判定値B1未満である場合、ステップS74が否定判断され、ステップS75においてラージリーク(多量漏れ有り)であると判定される。一方、圧力変化量ΔP1が判定値B1未満である場合、ステップS74が肯定判断され、ステップS76において圧力変化量ΔP1が判定値B2以下であるか否かが判断される。圧力変化量ΔP1が判定値B2より大きい場合、ステップS76が否定判断され、ステップS77において正常(漏れ無し)であると判定される。一方、ステップS76が肯定判断された場合、ステップS78においてスモールリーク(少量漏れ有り)であると仮判定され、更にスモールリークの有無が診断される。
【0044】
ステップS78においてスモールリークであると仮判定された場合には、遮断弁43が閉じられて第1領域が密閉され(ステップS80)、燃料ポンプ21が停止される(ステップS82)。そして、ステップS84において、燃料タンク20内の圧力P1、すなわち第1領域内の圧力が所定の判定値B3以下になるまで、第1領域の密閉状態が維持される。なお、
図8には、ステップS84における圧力の変化がT2より右側に示されている。
図8に示されるように、漏れが少ないほど、より長時間にわたって加圧状態が維持される。
【0045】
ステップS84において圧力P1が判定値B3以下になると、遮断弁43を閉じた時点からの保持時間ΔTが算出される(ステップS86)。そして、ステップS88において、保持時間ΔTが所定の判定値B4以下であるか否かを判断する。保持時間ΔTが判定値B4以下である場合、ステップS88が肯定判断され、スモールリーク(少量漏れ有り)であると判定される(ステップS90)。一方、保持時間ΔTが判定値B4より大きい場合、ステップS88が否定判断され、正常(漏れ無し)であると判定される(ステップS77)。このようにして、燃料タンク20側の漏れ診断は行われる。なお、全ての工程が終了すると、パージ弁32、大気通路弁35、封鎖弁41及び遮断弁43は、漏れ診断処理開始前の状態に戻される。
【0046】
<本開示の技術の利点>
上記実施形態によると、キャニスタ30側の第2領域の漏れ診断はエンジン12の運転中に行われる。そのため、エンジン12停止中に第2領域の漏れ診断を行う場合と比べて、エンジン12停止中におけるバッテリの電力消費を低減することができ、結果的に車両の燃費を向上できる。
【0047】
また、燃料タンク20側の第1領域の漏れ診断は、圧力の印加を伴わない第1診断と、燃料タンク20内に圧力を印加する第2診断とからなり、第2診断は、第1診断において正常判定がなされなかった場合に行われる。第1領域の漏れ診断を行うと大半の場合は第1診断において正常判定がなされ、第2診断は行われないため、第1領域の漏れ診断に必要な電力を節約することができる。
【0048】
また、第1領域及び第2領域の漏れ診断の両方において、スモールリークは2段階の処理で診断される。そのため、スモールリークを誤検出する可能性が低下し、診断精度を向上することができる。
【0049】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、燃料タンク20側の漏れ診断は第1診断を省略してもよい。また、本開示の漏れ検出装置の診断対象は、車両用の蒸発燃料処理装置に限定されず、例えば船舶用の蒸発燃料処理装置等にも適用可能である。