特許第6749306号(P6749306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749306
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】コイルリフター
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   B66C1/28 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-230577(P2017-230577)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99310(P2019-99310A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030328
【氏名又は名称】イーグルクランプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】津山 亨
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 実
(72)【発明者】
【氏名】伊多波 徹
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−308279(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106672791(CN,A)
【文献】 独国特許発明第102006010006(DE,B3)
【文献】 特開2000−198667(JP,A)
【文献】 実開昭61−135878(JP,U)
【文献】 実開昭57−178077(JP,U)
【文献】 特開2010−064872(JP,A)
【文献】 特公昭46−021056(JP,B1)
【文献】 国際公開第2010/149847(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第207483179(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 − 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に設けられる一対のアームを閉じることにより該アームの先端に内向きに突出して設けられる爪をコイルの内径空間に挿入して該コイルを把持するように構成されたコイルリフターにおいて、アームの背面および側面にそれぞれ設けられる保護板の各下端を保護する保護板ガードがアーム下端部に設けられることを特徴とするコイルリフター。
【請求項2】
前記保護板ガードが、アーム下端部に溶接固定されることを特徴とする請求項1記載のコイルリフター。
【請求項3】
前記保護板ガードの下端部が傾斜面を有することを特徴とする請求項1または2記載のコイルリフター。
【請求項4】
前記保護板ガードが、保護板の下端面取り部の傾斜角度と略同一角度で上向きに傾斜して設けられ、保護板ガードとアームとの間の隙間に保護板の下端面取り部が嵌合されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載のコイルリフター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延薄鋼板などの金属薄板のコイルを該コイルの内径空間にアーム下端の爪を挿入係止して吊り上げるコイルリフターに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルリフターは、クレーンフックに吊り下げた状態で使用され、モータなどの駆動源でスクリューを回転させることにより該スクリューに噛み合うナットを上下方向に移動させ、このナットの上下動をリンクを介して一対のアームに伝えて該アームを開閉させるように構成され、ナットを上昇させる方向にスクリューを回転させることにより、アームを互いに近接する方向に移動させて閉じていき、各アーム下端に内向きに設けられた爪をコイルの内径空間の両側から挿入して係止し、クレーンによる吊り上げを可能にする(特許文献1の段落0028および図1参照)。
【0003】
上記のような構成のコイルリフターには、アームの背面および両側面にそれぞれゴム質材料(ネオプレンゴム、ウレタンゴム、天然ゴムなどなどからなる保護板が設けられている(特許文献1の図1にはアームの一側面に設けられた保護板が示され、図2にはアームの背面に設けられた保護板が示されている。いずれも符号なし)。多数のコイルが山積みされているコイルセンターにおいて、クレーンに吊り下げたコイルリフターのアームを開いた状態にして下降させていって一のコイルを把持しようとするときには、遠方(床面)からペンダントスイッチや無線機を用いてクレーンおよびコイルリフターを操作する必要があるが、このときに、把持しようとするコイルに隣接するコイルに衝突または接触してアームの背面や側面に傷がつきやすい。また、アームと衝突または接触したコイルにも傷がついてしまう。アームの背面および側面の保護板は、このような損傷事故を防止するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のようにアームの背面および側面にそれぞれ保護板を設けたコイルリフターにおいては、保護板の厚み分だけアームの背面および側面から外方に突出することになるため、吊り上げようとするコイルに隣接する他のコイルや回りの構築物などに衝突ないし接触する可能性が大きくなる。一般に、山積みされた多数のコイルの中からコイルを吊り上げようとするときは、その頂点に位置するコイルから順次に吊り上げていくので、該コイルを吊り上げようとしてアームを開いた状態で該コイルに近付けて該コイルを把持するときに、アーム保護板の下端が、該コイルの下方に位置する他のコイルに衝突してめくりあげられる状態となって破損し、該破損部分において露出するアーム下端部も破損させてしまうことがあった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、コイルリフターでコイルを吊り上げようとするときにアーム保護板が破損しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、開閉可能に設けられる一対のアームを閉じることにより該アームの先端に内向きに突出して設けられる爪をコイルの内径空間に挿入して該コイルを把持するように構成されたコイルリフターにおいて、アームの背面および側面にそれぞれ設けられる保護板の各下端を保護する保護板ガードがアーム下端部に設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のコイルリフターにおいて、前記保護板ガードが、アーム下端部に溶接固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載のコイルリフターにおいて、前記保護板ガードの下端部が傾斜面を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載のコイルリフターにおいて、前記保護板ガードが、保護板の下端面取り部の傾斜角度と略同一角度で上向きに傾斜して設けられ、保護板ガードとアームとの間の隙間に保護板の下端面取り部が嵌合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によれば、アーム保護板の下端が保護板ガードで保護されるので、山積みされた多数のコイルの中からその頂点位置にあるコイルを吊り上げようとするときに、アーム保護板の下端が、該コイルの下方に位置する他のコイルに直接衝突ないし接触することが防止される。これにより、アーム保護板がめくり上がって破損することを防止し、アーム下端部がアーム保護板に保護された状態を長期に亘って保持することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によれば、保護板ガードがアーム下端部に溶接固定されるので、保護板ガードがアーム下端部と一体化して大きな強度を有するものとなり、他のコイルなどの障害物に衝突ないし接触しても破損しにくく、アーム保護板の下端の損傷を防止する効果を長期に亘って持続させることができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によれば、保護板ガードの下端が傾斜面を有するので、他のコイルなどの障害物に衝突ないし接触したときにこの傾斜面に沿ってアームが滑って逃げる方向に自動的に移動するので、保護板ガードに損傷を与えずに済むと共に、コイルなどにも損傷を与えない。
【0014】
請求項4に係る本発明によれば、傾斜して設けられる保護板ガードとアームとの間の隙間に保護板の下端面取り部が嵌合されるので、取付作業が容易になると共に、保護板の取付強度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるコイルリフターの正面図である。
図2】このコイルリフターの側面図である。
図3】このコイルリフターにおけるアーム(その下端部に保護板ガードが溶接固定されたもの)を単独で示す正面図である。
図4】同アームの左側面図である。
図5】同アームに溶接固定される背面保護板ガードを示す正面図(a)および側面図(b)である。アーム保護板との取付ないし位置関係を示すため、側面図(b)には併せてアーム保護板が示されている。
図6】同アームに溶接固定される左側面保護板ガードを示す正面図(a)および側面図(b)である。アーム保護板との取付ないし位置関係を示すため、側面図(b)には併せてアーム保護板が示されている。
図7】同アームに溶接固定される右側面保護板ガードを示す正面図(a)および側面図(b)である。アーム保護板との取付ないし位置関係を示すため、側面図(b)には併せてアーム保護板が示されている。
図8】同アームに取り付けられる背面用保護板の正面図(a)および平面図(b)である。
図9】同アームに取り付けられる左側面用保護板の正面図(a)および平面図(b)である。
図10】同アームに取り付けられる右側面用保護板の正面図(a)および平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態によるコイルリフター10の全体構成について説明する。このコイルリフター10は、クレーンフック1を係止する吊部11と、吊部11に対して旋回可能に連結された本体20とを有する。
【0017】
吊部11は、一対の垂直板12,12間に掛け渡された水平軸13を有し、この水平軸13にクレーンフック1を係止可能としている。符号14は一対の垂直板12,12の下端に配置された給電ケーブル絡み防止装置であり、この中に固定歯車が歯車カバー(いずれも図示せず)に収容された状態で設けられている。
【0018】
本体20はハウジング21を有し、ハウジング21にはネジスクリュー22が収容されている。ネジスクリュー22は上記固定歯車の回転軸と同軸に延長し、且つ、固定歯車14の回転軸に対してベアリング(図示せず)を介して互いに相対回転可能に連結されている。
【0019】
ハウジング21の下方部において、ネジスクリュー22と噛み合うナット23が設けられ、ネジスクリュー22の回転につれてハウジング21内を上下移動する。このナット23には作動リンク24が固定され、作動リンク24に一対の並行リンク25,25および一対の主リンク26,26が各々作動リンク軸で回転自在に連結されている。平行リンク25,25および主リンク26,26の先端にはアーム27,27が連結され、各アーム27はその先端から内向きに突出する爪28を有する。各主リンク26は、その略中間地点において補助リンク29を介してハウジング21の下端部に連結されている。このリンク機構により、一対のアーム27,27はいかなる開閉位置にあっても常に実質的に垂直に保持される。
【0020】
ハウジング21の下方部外周に付設された第一モータボックス30内には、アーム開閉駆動用の正逆回転モータおよび減速機(いずれも図示せず)が収容されており、これらがネジスクリュー22を所定方向に所定速度で回転させることによりナット23がハウジング21内で上下移動し、これに連動して開閉する平行リンク25,25および主リンク26,26を介してアーム27,27が水平移動する。すなわち、アーム27,27が開位置(図1において実線で示される位置)にあるときにナット23をハウジング21内において上昇させる方向にモータを駆動させることにより、アーム26,26は閉位置(図1において仮想線で示される位置)に向けて互いに近づく方向に移動し、アーム間距離が徐々に狭められていく。
【0021】
ハウジング21の上端外周に設けられた第二モータボックス31内には旋回駆動用の正逆回転モータが収容され、このモータの出力に減速機を介して連結されたピニオンギア(いずれも図示せず)が、吊部11の固定歯車と噛み合っている。したがって、たとえばアーム27,27を閉じることにより先端の爪28,28をコイルの内径空間に挿入係止してコイルを吊り上げた状態のまま、該モータを所定方向に駆動させることにより、クレーンフック1を係止した吊部11を実質的に不動に保持しつつ、この吊部11に対して本体20を任意の方向に旋回させることができるように構成されている。
【0022】
以上に述べたコイルリフター10の構成および作用は公知であり、且つ本発明の手段に直接関係しないので、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0023】
従来技術に関連して既述したように、各アーム27の背面および両側面にそれぞれアーム保護板(以下、「保護板」と略記する。)32,33,34がボルト止めされている。図8にはアーム27の背面を保護する保護板32が、図9にはアーム27の左側面を保護する保護板33が、図10にはアーム27の右側面を保護する保護板34が示されている。これらの保護板32,33,34はいずれも所定の厚さを有するゴム材で形成されるが、図8(b),図9(b)および図10(b)に示されるように、背面保護板32はその両側端および下端が面取りされ、側面保護板33,34はその一側端(アーム27に取り付けたときに背面側となる側縁)および下端が端縁に向けて徐々に厚さが小さくなるように面取りされている(面取り部321,322,323;331,332;341,342)。また、図8(a),図9(a)および図10(a)に示されるように、これら保護板32,33,34には、アーム27の各面に固定するボルト(側面保護板33をアーム27の正面側の側面に固定するボルト35が図1に、背面保護板32をアーム27の背面に固定するボルト36が図2に示されている)を挿通するボルト挿通穴324,333,343が任意箇所に複数個貫通形成されている。
【0024】
一対のアーム27,27は正面視中心線について対称に構成されるので、以下、図1において左側に示されるアーム27について説明する。保護板32,33,34が取り付けられる前のアーム27が図3および図4に示されている。アーム27には、保護板32,33,34は取り付けられていないが、その背面および両側面の下端部にそれぞれ保護板ガード36,37,38があらかじめ固定されている。保護板ガード36,37,38は、保護板32,33,34がアーム27に取り付けられたときに保護板32,33,34の下端に実質的に当接して該保護板下端を損傷から防ぐ役割を果たすものであって、アーム27と同じく鋼板で形成され、アーム27の背面27a(図3)および両側面27b,27c(図4)に溶接固定されている。
【0025】
保護板ガード36,37,38は、それぞれ図5図6および図7に示すような形状を有する。背面保護板ガード36は、面36aをアーム背面27aの下端部に溶接固定したときに、上面36cおよび下面36bがそれぞれ上向きに所定角度傾斜して突出するように形成される。同様に、側面保護板ガード37,38は、面37a,38aをアーム側面27b,27cの下端部に溶接固定したときに、上面37c,38cおよび下面37b,38bがそれぞれ上向きに所定角度傾斜して突出するように形成される。したがって、アーム背面27aの下端部に溶接固定された背面保護板ガード36の傾斜上面36cとアーム背面27aとの間には断面三角形状の隙間39(図3)が形成される。同様に、アーム側面27b,27cの下端部に溶接固定された側面保護板ガード37,38の傾斜上面37c,38cとアーム側面27b,27cとの間には断面三角形状の隙間40,41(図4)が形成される。保護板ガード36,37,38の上向き傾斜角度は、保護板32,33,34の下端面取り部323,332,342の面取り角度と略同一に形成されるので、これら面取り部323,332,342を保護板ガード36,37,38の傾斜上面36c,37c,38cとアーム面27a,27b,27cとの間の隙間39,40,41に挿入・係止した状態で、ボルト35,36で保護板32,33,34をアーム27に容易に固定することができる。アーム27の背面27aおよび側面27b,27cには、保護板32,34,35のボルト挿通孔324,333,343を挿通するボルト35,36を螺着する螺着穴27d,27e(図3図4)が形成されている。
【0026】
上記構成のコイルリフター10は、従来技術と同様に、吊部12をクレーンフック1を係止して使用され、アーム27,27を開位置にして、吊り上げようとするコイルに向けて下降させた後、アーム27,27を閉じていくことによりその先端の爪28,28を該コイルの内径に挿入係止して、吊り上げることができる。従来技術に関連して既述したように、多数のコイルが山積みされているコイルセンターにおいて、アーム27,27を開位置にして下降させていくと、吊り上げようとするコイルに隣接する他のコイルにアーム背面27aやアーム側面27b,27cが衝突または接触することがあるが、上記構成によれば、アーム背面27aおよびアーム側面27b,27cにそれぞれアーム保護板32,33,34が固定されているので、アーム27が衝突ないし接触する可能性のある三面が保護されている。
【0027】
さらに、これらアーム保護板32,33,34の下端に保護板ガード36,37,38が固定されているので、アーム保護板32,33,34も損傷から保護される。特に、上記実施例の構成によれば、アーム保護板32,33,34の下端に固定された保護板ガード36,37,38の下端が面取りされて傾斜面36b,37b,38bを与えているので、クレーンに吊り下げたコイルリフター10のアーム27を開位置にして下降させていくときに、他のコイルなどの障害物に衝突ないし接触しても、アーム27が傾斜面36b,37b,38bに沿って滑って逃げる方向に自動的に移動するので、アーム保護板32,33,34がめくり上がって損傷することを防止し、他のコイルの損傷も防止することができる。
【0028】
以上に本発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において多種多様に変形して実施可能である。本発明が対象とするコイルリフターは、実施例で挙げたリンク式のものに限らず、電動でアームを開閉する形式のコイルリフターであっても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 クレーンフック
10 コイルリフター
20 本体
27 アーム
28 爪
32,33,34 保護板
323,332,342 保護板の下端面取り部
36,37,38 保護板ガード
36b,37b,38b 保護板ガード下端部の傾斜面
39,40,41 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10