特許第6749315号(P6749315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6749315重合プラントにおける1つのポリマーグレードから別のポリマーグレードへの移行時間を最小にする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749315
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】重合プラントにおける1つのポリマーグレードから別のポリマーグレードへの移行時間を最小にする方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20200824BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   C08G63/78
   C08G63/08
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-513802(P2017-513802)
(86)(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公表番号】特表2017-527672(P2017-527672A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2015069941
(87)【国際公開番号】WO2016037901
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】14184404.3
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505150095
【氏名又は名称】スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コスタ、リボリオ イヴァノ
(72)【発明者】
【氏名】コダリ、ファビオ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503277(JP,A)
【文献】 特表2006−500458(JP,A)
【文献】 新村 出 編集,広辞苑 第四版,1991年11月15日,第四版第一刷,1483頁
【文献】 高分子,1970年,Vol.19, No.215,84-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
C08F2
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合プラントで行われる連続重合プロセスで生成されるポリ乳酸ポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量に関連する第1の値から生成されるポリ乳酸ポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量に関連する最終の値への変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリ乳酸のポリマー廃棄物を減少させるための方法であって、
− 重合プラントが、少なくとも1つの逆混合反応器を備え、
− 少なくとも1種のモノマー並びに少なくとも1種の加工剤が、前記少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加され、ここで、少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及び上記モノマーの1種又は複数の混合物から選択され、加工剤として少なくとも一つの触媒及び少なくとも一つの開始剤が添加され、前記少なくとも1つの開始剤が少なくとも1個のカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含む少なくとも1種の化合物であり、少なくとも1つの開始剤の濃度が、生成されるポリ乳酸ポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量に関連する第1の値から生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量に関連する最終の値への時間の関数として変化され、
前記第1の値から前記最終の値への前記少なくとも1種の添加された開始剤の濃度の変化の間に、1つ若しくは複数の中間の値が調整され、前記1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つが、前記第1の値よりも前記最終の値に近く、前記第1の値から前記1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つの間の絶対差が、前記最終の値と前記第1の値の間の絶対差よりも大きく、且つ方法が動的モデリンングを行うことなしに行われ、
i) 前記少なくとも1種の添加された開始剤の濃度の変化の間に、前記少なくとも1種の添加された開始剤の濃度が、前記第1の値cから1つ若しくは複数の中間の値α・cに低下され、次いで、前記最後の中間の値α・cから前記最終の値cに増加され、ここで、前記1つ若しくは複数の中間の値α・cが、α<1であるように前記最終の値よりも低く、且つ前記中間の値が、時間
【数1】

(式中、
は、前記少なくとも1種の添加された開始剤の第1の濃度であり、
は、前記少なくとも1種の添加された開始剤の最終の濃度であり、
αは、最小の中間の値が、最終の濃度cよりも低い、最小係数であり、
τは、前記逆混合反応器中の反応混合物の少なくとも平均滞留時間である期間であり、
εは、0.2未満である)の間維持され、又は
ii) 前記少なくとも1種の添加された開始剤の濃度の変化の間に、前記少なくとも1種の添加された開始剤の濃度が、前記第1の値cから1つ若しくは複数の中間の値α・cに増加され、次いで、前記最後の中間の値α・cから前記最終の値cに低下され、ここで、前記1つ若しくは複数の中間の値α・cが、α>1であるように前記最終の値よりも高く、且つ前記中間の値が、時間
【数2】

(式中、
は、前記少なくとも1種の添加された開始剤の第1の濃度であり、
は、前記少なくとも1種の添加された開始剤の最終の濃度であり、
αは、前記最小の中間の値が、前記最終の濃度cよりも高い、最大係数であり、
τは、前記逆混合反応器中の反応混合物の少なくとも平均滞留時間である期間であり、
εは、0.2未満である)の間維持される、
上記方法。
【請求項2】
制御器の使用なしに行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
εが、0.1未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
εが、0.05未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
τが、前記逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
τが、前記逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
τが、前記逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
τが、前記逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の逆混合反応器が、ループ反応器、連続攪拌槽反応器及び前述の反応器の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される反応器であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記逆混合反応器への供給原料ストリームを均質化するために、予備混合器が前記逆混合反応器の前に設置されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、マグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、インジウム、イットリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス及び前述の金属の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される金属を含む少なくとも1種の有機金属化合物であり、前記少なくとも1種の有機金属化合物が、有機残基として、アルキル基、アリール基、ハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシド及び前述の基の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される残基を含み、並びに/又は、前記触媒が、アゾ化合物及び/若しくはジアゾ化合物、4−ピロリジノピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアゾビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン若しくは2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記開始剤が、水、アルコール、乳酸、環状エステルのオリゴマー、環状エステルのポリマー、及び前述の物質の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマーポリマー廃棄物を減少させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、広範囲の性質を有し、ポリマーの化学組成、ポリマーの立体化学構造、ポリマーの分子量等のようなポリマー特性の1つ又は複数を調整することによって、ポリマーの意図された使用に合わせることができるため、ポリマーは、産業で欠かすことのできない役割を果たしている。1つ又は複数の重合反応器を備える重合プラントで、モノマー及び必要に応じてコモノマーを重合させることによって、ポリマーは生成される。
【0003】
その一例は、重合プラントにおける、乳酸の環状ジエステルであるラクチドのポリ乳酸への重合である。ポリ乳酸ポリマーは、それらが再生可能資源から作られ且つ生分解性であるので、特に興味深い。さらに、これらのポリマーの技術的性質は、石油起源のポリマーのものと極めて接近し、これは、これらのポリマーが石油起源のポリマー材料の非常に有望な代替と考えられる理由である。例えば、ポリ乳酸は、バイオメディカル分野において、すなわち、例えば、手術用インプラントにおいて、フィルム、例えば、梱包材料、例えば衣服、衛生物品、カーペット等のための繊維において、及び使い捨てプラスチック製品、例えば、使い捨てカトラリー又は容器等において、広範な用途を有する。さらに、ポリ乳酸は、例えば、繊維強化プラスチックのような複合材料において、広い用途を見出してきた。
【0004】
典型的には、ポリ乳酸は、連続して、ループ反応器及びプラグフロー型反応器を備える重合プラントでラクチドを重合させることによって生成される。ラクチドは、30〜70%のモノマー変換率という程度にループ反応器で重合されるが、ループ反応器から抜かれた混合物は、70%超、典型的には95〜97%のモノマー変換率まで下流のプラグフロー反応器でさらに重合される。この場合、ループ反応器中への供給原料は、モノマーとしてのラクチド、例えば、オクタン酸スズのような触媒、例えば、高沸点アルコールのような開始剤、及び任意で、1種又は複数のコモノマーを含み、一方で、プラグフロー反応器から抜かれた生成物ストリームは、乳酸生成物、並びに非変換モノマー、非変換コモノマー、非消費触媒、非消費開始剤、非消費共触媒、及び存在する場合、1種又は複数の副生成物の残留物を主成分とする。主に、反応速度論は、供給原料組成及び反応温度により決定され、ここで、必要とされる特性、例えば、必要とされる分子量、多分散度、立体化学構造及び/又はその他のものを有するポリマーは、供給原料組成を適切に選択することによってポリマーの意図されたその後の使用に合わさせられてもよい。例えば、ポリマーの数平均分子量は、重合反応器(単数又は複数)に導入される供給原料中の開始剤の濃度に逆比例する。
【0005】
したがって、異なるグレードの、すなわち、異なる分子量のポリマーは、供給原料中の開始剤の濃度を単に変化させることによって1つのプラントで生成され得る。しかしながら、1つ又は複数の、例えば、前述のループ反応器のような逆混合反応器を通常は備える、重合反応器で生成されるポリマーの分子量は、−重合反応器中の濃度が供給原料中の濃度変化に直ちにはではなく、単に時間遅れで従う結果としての、反応器中の反応混合物の滞留時間のために−供給原料中の開始剤の濃度の変化に即時には従わず、変化した供給原料に適合するように、移行時間と呼ばれるかなりの時間を必要とするので、この移行時間の間、すなわち、1つのポリマーグレードから別のポリマーグレードへの移行時間の間にかなりの量の仕様外ポリマーが生成される。仕様外ポリマーは、まったく商業的価値を有しないので、それは廃棄されなければならない。この理由のせいで、仕様外ポリマーの量を最小にするために、連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を最小にすることが望ましい。
【0006】
この問題に対処するために、米国特許出願公開第2010/0324738A1号には、チーグラー−ナッタ又はメタロセン触媒系を用いた二重ループスラリー反応器中で1つのホモ−又はコポリマーグレードから別のものへの仕様の変化の間の移行時間を短縮する及び生成される仕様外ポリオレフィンの量を減少させるための方法が開示されており、ここで、この方法は、入力特性の関数としての出力特性を考慮する動的モデルに基づく数学的制約を使用する。言い換えれば、米国特許出願公開第2010/0324738A1号に記載された方法は、実時間依存性の計算に基づき、これは、複雑で不正確であり、その理由は、それらが必要とされるパラメータのすべてを考慮していないことがあるからである。本出願において、このような数学的方法は、「動的モデリング」と称される。
【0007】
このような動的モデルに基づく方法を正確に行うために、生成されたポリマーの特性は、測定及び/又は推定されなければならず、測定及び/推定された結果は、ソフトウェアによって入力特性と比較されなければならず、ここで、制御器は、そのようにして得られた入力特性に対する測定された出力特性の相関に基づいてシステムを制御する。このような動的相関に基づいてシステムを制御するための装置は、本出願において「制御器」と称される。しかしながら、これは、センサ及び制御器、例えば、比例−積分−微分(PID)制御器が使用されることを必要とし、これは、方法全体を費用がかかり、複雑なものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の基礎をなす目的は、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を減少させるための方法を提供することであり、この方法は、実行するのに容易であり、正確であり、且つ制御器、センサ(単数又は複数)及び動的モデル計算を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を減少させるための方法であって、
− 重合プラントが、少なくとも1つの逆混合反応器を備え、
− 少なくとも1種のモノマー並びに触媒、共触媒、重合開始剤、コモノマー、連鎖移動剤、分岐剤、溶媒及び前述の加工剤の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の加工剤が、少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加され、少なくとも1つの逆混合反応器に導入される供給原料中の少なくとも1種の添加された加工剤の1種又は複数の濃度が、第1のポリマーグレードに関連する第1の値から第2のポリマーグレードに関連する最終の値に時間の関数として変化され、
− 第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの組成に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの構造に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの量に関する1つ若しくは複数のパラメータであり、
第1の値から最終の値への少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、1つ若しくは複数の中間の値が調整され、1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つが、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きく、1つ若しくは複数の中間の値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持され、且つ方法が動的モデリンングを行うことなしに行われる方法を提供することによって満たされる。
【0010】
好ましくは、大部分の中間の値が、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から大部分の中間の値のそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きい。
【0011】
より好ましくは、すべての中間の値が、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値からすべての中間の値のそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きい。
【0012】
この解決策は、例えば、触媒、共触媒、重合開始剤、連鎖移動剤、分岐剤、溶媒及び/又はコモノマー(単数又は複数)のような加工剤の濃度を、第1の値(例えば、重合プラント出口で第1の分子量を有するポリ乳酸を得るために第1の重合反応器に導入される供給原料中で必要な開始剤の濃度の値)から最終の値(例えば、重合プラント出口で第2の分子量を有するポリ乳酸を得るために第1の重合反応器に導入される供給原料中に必要な開始剤の濃度の値)に1つ若しくは複数の中間の値を介して変化させることにより(ここで、1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つが、好ましくは大部分が、より好ましくはすべてが、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つの、好ましくは大部分のそれぞれ、より好ましくはすべてのそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きく、且つ1つ若しくは複数の中間の値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持される)、少なくとも1つの逆混合反応器を備える重合プラントで行われる連続重合プロセスで第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの間の移行を行うことによって、第1のポリマーと第2のポリマーグレードの間の移行時間が、いかなる種類の制御器(特に、PID制御器)、センサ(単数又は複数)及び動的モデル計算も必要とすることなしに、容易且つ正確な仕方で減少されることの所見に基づく。
【0013】
好ましくは、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値に低下され、次いで、最後の中間の値から最終の値に増加され、1つ若しくは複数の中間の値は、最終の値よりも低く、又は代わりに、少なくとも1種の添加される加工剤の濃度が、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値に増加され、次いで、最後の中間の値から最終の値に低下され、1つ若しくは複数の中間の値は、最終の値よりも高い。
【0014】
移行時間の最小化は、好ましくは、ポリマーグレード、例えば、生成されたポリマーの分子量が、重合反応器、特に逆混合反応器中で、開始剤のような第1の重合反応器に導入された供給原料中の加工剤の濃度の変化に即時には従わないことを補償するために、最終濃度に関して、変化された加工剤の濃度のオーバーシュート又はアンダーシュートを行うことによって、本発明による方法で行われる。言い換えれば、ポリマーグレードにおける意図された変化に対する必要に応じて、開始剤のような加工剤の濃度のより高い変化は、加工剤の濃度変化が、中間の値から第2のポリマーグレードに対応する最終の値に下げられる前に、重合反応器における濃度変化を加速し、意図されたグレードへのポリマーグレードの変化を加速するための結果として、1つの中間の値又は複数の異なる中間の値に初期に調整される。例えば、オクタン酸スズのような触媒、及び高沸点アルコールのような開始剤の存在下でラクチドをポリ乳酸に重合させるための方法において、ポリ乳酸の分子量は、第1の値から第2のより高い値に増加される。ポリ乳酸の分子量は、第1の重合反応器に導入された供給原料中の開始剤の濃度に逆比例するので、供給原料中の開始剤の濃度は、ポリ乳酸の分子量を増加させるために、減少されなければならない。したがって、第1のポリマーグレードは、重合プラント出口でのポリ乳酸の第1の分子量及び供給原料中の開始剤の第1の濃度によって特徴付けられる一方で、第2のポリマーグレードは、重合プラント出口でのポリ乳酸の第2のより高い分子量及び供給原料中での開始剤の第2のより低い濃度によって特徴付けられる。供給原料中の開始剤の濃度が、第1の値から第2の値に1工程で減少される場合、重合反応器中の開始剤の濃度は、重合反応器中の反応混合物の滞留時間のために第1の値から第2の値にゆっくりと低下し、したがって、ポリ乳酸の分子量は、第1の値から第2の値に比較的ゆっくりと増加し、同等の、廃棄されなければならない仕様外のポリマー廃棄物が生成される長い移行時間をもたらす。第1のポリマーグレードと第2のポリマーグレードの間の移行時間を最小にするために、本発明による方法では、供給原料中の開始剤の濃度は、第1の値から第2の値に1工程で減少されないが、重合反応器中の反応混合物の滞留時間のために第1の値から第2の値への重合反応器中における開始剤の濃度の変化を加速し、したがって、開始剤の濃度が、より低い中間の濃度から最終の開始剤濃度に、適切な時間後、−すなわち、ポリマーの分子量が意図された第2の値に極めて近いときに−増加される前に、ポリマーの分子量の意図された分子量への変化を加速するために、第1の値から、第2の濃度よりもさらにより低い濃度(すなわち、アンダーシュート濃度)に相当する中間の値に初期に減少される。
【0015】
本発明によれば、この方法では、1つ若しくは複数の中間の値は、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持されるので、第1のポリマーグレードと第2のポリマーグレードの間の容易且つ正確な移行が、動的モデル計算の必要なしに且つ制御器、及び例えば、生成されたポリマーの分子量のような出力特性を測定するための1つ又は複数のセンサの必要なしに達成される。概して、本発明は、容易且つ正確な方法によって、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を最小にすることを可能にする。
【0016】
定常相関は、重合プロセスの状態変数のすべてが、進行中のプロセスにもかかわらず一定である状況を意味する定常状態に基づく相関と本発明によって定義される。特に、例えば、圧力、温度、反応物質又は生成物の濃度等のようなプロセスパラメータは、その値が定義された許容度内で一定のままであるときに、例えば、その値が、±10%を超えて変化しないとき、好ましくは少なくとも15分間その点で±1%を超えて変化しないときに、重合プラントの1つの点で、定常状態である。同様に、重合プラントは、プラントの各点において、プロセスパラメータのすべてが、前述の期間の間前述の許容度内で一定のままであるときに、定常状態である。したがって、出口ポリマー生成物は、その性質のすべてが、前述の期間の間前述の許容度内で重合プラント出口において一定のままであるときに定常状態である。
【0017】
上の定義によれば、定常相関は、重合プラントが定常状態にあるときに測定された、ポリマー生成物出力性質とプラント入力(例えば、加工剤の濃度)の間の相関と本特許出願で定義される。
【0018】
さらに、逆混合反応器は、反応生成物(単数又は複数)が供給原料材料(単数又は複数)と緊密に混合され、これにより、一様の生成物及び反応容器中の反応物質の一様の濃度がもたらされる反応器と本発明によって定義される。逆混合反応器のための好ましい例は、それぞれ、連続攪拌反応器、及びリサイクル反応器又はループ反応器からなる群から選択される連続反応器である。特に、反応物質が別個にされたストリームとして逆混合反応器に供給される場合、逆混合反応器は、逆混合反応器の供給ラインの上流で、短い滞留時間を有する予備混合器を備えてもよく、ここで、異なる反応物質ストリームは、それらが逆混合反応器に入る前に混合及び均質化される。
【0019】
触媒は、反応により消費されることなしに化学反応の速度を増加させる物質として関連分野でのこの用語の通常の定義と一致して本発明の範囲内で定義され、共触媒は、−触媒と組み合わせて又は触媒と反応後に又は触媒と相乗的に作用して−触媒の効率を増強させ、したがって、化学反応の速度を増加させる物質と−やはり関連分野でのこの用語の通常の定義と一致して−定義される。
【0020】
さらに、重合開始剤は、重合反応を開始させ、−副反応の非存在下で−ポリマー鎖における末端単位として反応の最後に残る物質と本発明によって定義される。各ポリマー鎖が、開始剤分子によって又は開始剤分子の副生成物によって開始される場合、開始剤は、ポリマー分子量を合わせるために使用され得る。
【0021】
加えて、連鎖移動剤は、活性成長基を1つの分子から別の分子に移動させる物質と本発明によって定義される。連鎖移動剤は、ポリマー分子量を合わせるために通常使用される。
【0022】
さらに、分岐剤は、ポリマー構造中に分岐の形成を導入又はそれを増強する物質と本発明によって定義される。
【0023】
ポリマーの分子量は、好ましくは、溶媒増強光散乱法、ポリマー溶媒としてクロロホルム、溶離液としてアセトン及びPMMA標準を使用しての装置パラメータの校正を使用して、トリプル検出器、すなわち、屈折率、粘度計及び右/低角度光散乱検出器を備えた、Viscotek TDAmax(Malvern)によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で本発明によって測定される、数平均又は重量平均分子量を本発明の意味において表す。
【0024】
上に提示されたとおり、特定の利点は、その値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持される、1つ若しくは複数の中間の値の調整によって、本発明による方法が行われることである。したがって、本発明による方法は、動的モデリングを行うことなしに行われる。
【0025】
本発明のさらなる発展において、動的モデリングを行くことなしに加えて、制御器の使用なしに、特にPID制御器の使用なしにこの方法を行うことが示唆される。
【0026】
本発明の第1の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の供給濃度は、第1の値cから1つ若しくは複数の中間の値αに変化され、次いで、最後の中間の値αから最終の値cに変化され、ここで、1つ若しくは複数の中間の値は、供給濃度がcからc>cに低下されなければならない場合に、α<1であるように最終の値よりも低く、又は1つ若しくは複数の中間の値は、供給濃度がc1からc>cに増加しなければならない場合に、α>1であるように最終の値よりも高く、且つ中間の値αは、時間
【数1】

(式中、
は、少なくとも1種の添加された加工剤の第1の濃度であり、
は、少なくとも1種の添加された加工剤の最終の濃度であり、
αは、中間の値が、最終濃度cよりも高いか又は低い係数であり、
τは、逆混合反応器中の反応混合物の少なくとも平均滞留時間である期間であり、
εは、少なくとも1種の添加された加工剤の最終濃度に対する相対許容差であり、定常状態の第2のポリマーグレードが、仕様内であると使用者によって確実に認められるようにする、すなわち、目標の第2のポリマーグレードに対して許容可能な差以下を有し、少なくとも1種の添加された加工剤の入口濃度が(1±ε)c内に保持される場合に、c<cであるならば、+ε>0が使用されなければならず;c>cであるならば、−ε<0が使用されなければならない)
の間維持される。
【0027】
この文脈において、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定されることが留意されなければならない。一般に、加工剤濃度を減少させるときにその値が小さければ小さいほど、及び加工剤濃度を増加させるときにその値が高ければ高いほど、移行時間はより短くなり、仕様外の生成物の量はより少なくなる。
【0028】
少なくとも1種の変化された加工剤の濃度の中間の値(単数又は複数)が、ある場合にこの化合物の第1及び最終の濃度よりも意図的に低い場合であるときに、少なくとも1種の変化された加工剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間にアンダーシュート濃度にこの実施形態では意図的に設定される。この実施形態は、開始剤の濃度が、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、特に適当である。さらに、この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、特に適当であり、第1のポリマーグレード並びに第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合、さらにより好ましい。
【0029】
好ましくは、εは、未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0030】
さらに、τは、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことである。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値cから1つ若しくは複数の中間の値αc2に低下され、次いで、最後の中間の値αから最終の値cに増加され、こここで、1つ若しくは複数の中間の値は、α<1であるように最終の値よりも低い。意図された目標分子量から±x%の分子量を有するポリマーが、許容でき、且つ仕様内であると認められ、定常状態でポリマーが±x%の分子量を有することを確実にする開始剤供給原料濃度に対応する許容度が、(1±ε)cである場合、少なくとも1種の加工剤の濃度は、前述の実施形態において、時間
【数2】

(式中、少なくとも1種の加工剤の濃度が最終の値に増加する前は、c、c、ε及びτは、上に記載されたとおりである)
の間第1の値cから1つ又は複数の中間の値(単数又は複数)αに低下される。移行時間短縮するために、αの値は、利用できる技術的設備により許容される限り可能な最小であり、すなわち、αの値は、最小の中間の値は、最終濃度cよりも低い最小係数である。上に提示されたとおりに、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定される。一般に、加工剤濃度を減少させるときにその値が小さければ小さいほど、移行時間は短くなり、仕様外の生成物の量は少なくなる。
【0032】
前述の実施形態は、開始剤の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、ポリマーがポリ乳酸である場合、及び第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量である場合に、特に適当である。
【0033】
またこの実施形態において、εは、好ましくは未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0034】
さらに、やなりこの実施形態において、τが、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことが好ましい。
【0035】
本発明の代わりの特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値cから1つ若しくは複数の中間の値αに増加され、次いで、最後の中間の値αから最終の値cに低下され、ここで、1つ若しくは複数の中間の値は、α>1であるように最終の値よりも高く、且つ中間の値は、時間
【数3】

(式中、c、c、α、ε及びτは、上で定義されたとおりである)
の間維持される。移行時間を短縮するために、αの値は、利用できる技術的設備により許容される限り可能な最大であり、すなわち、αの値は、最大の中間の値は、最終濃度cよりも高い最大係数である。上に提示されたとおりに、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定される。一般に、加工剤濃度を増加させる場合にその値が高ければ高いほど、移行時間は短くなり、仕様外である生成物の量は少なくなる。
【0036】
この実施形態においても、εは、好ましくは未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0037】
さらに、この実施形態においても、τは、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことが好ましい。
【0038】
少なくとも1種の変化された加工剤の濃度の中間の値(単数又は複数)が、この場合にこの化合物の第1及び最終の濃度よりも意図的に高い場合であるときに、少なくとも1種の変化された加工剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間にオーバーシュート濃度にこの実施形態では意図的に設定される。この実施形態は、開始剤の濃度が、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、特に適当である。さらに、この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、特に適当であり、第1のポリマーグレード並びに第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合、さらにより好ましい。
【0039】
前述の実施形態は、開始剤の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、ポリマーがポリ乳酸である場合、及び第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合に、特に適する。
【0040】
原則として、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードは、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの組成に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの構造に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの量に関する1つ若しくは複数のパラメータである限り、特に限定されない。好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの分子量、生成されるポリマーの多分散度、生成されるポリマーのメルトフローインデックス、生成されるポリマーの密度、生成されるポリマーの粘度、生成されるポリマーの分岐度、生成されるポリマーの固体濃度、生成されるポリマーの分岐度、生成されるポリマー中のモノマーの立体化学配置、及び前述のグレードの2種以上の任意の組合せからなる群からそれぞれ選択される。
【0041】
より好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードはそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量、生成されるポリマーの多分散度、及び/又は生成されるポリマーのメルトフローインデックスであり、最も好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量である。
【0042】
また逆混合反応器の種類に関して、本特許発明は特に限定されない。良好な結果は、少なくとも1つの逆混合反応器が、ループ反応器及び連続攪拌槽反応器(これらは、重合プラントにおいて恐らくはまた1つ又は複数のプラグフロー反応器と組み合わせて使用される)からなる群から選択される反応器である場合に得られる。より好ましくは、重合プラントは、2つの反応器、すなわち、ループ反応器、及びループ反応器の下流にプラグフロー反応器を備える。
【0043】
好ましくは、逆混合反応器への供給原料ストリームを均質化するために、予備混合器が、逆混合反応器の前、特に連続逆混合反応の前に設置される。
【0044】
本発明は、あらゆる種類の公知のポリマーを調製するための重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を減少させるために使用されてもよい。特に、ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであってもよい。適当な結果は、例えば、少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、L−ラクチドとD−ラクチドとメソ−ラクチドの組合せ、環状モノマー、スチレン、酢酸ビニル、アクリラート、例えば、メチル−メタクリラートのようなメタクリラート、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソシアナート化合物とポリオールの組合せ、アミド、ε−カプロラクトン、グリコリド、並びに前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択される場合に得られる。
【0045】
特に良好な結果は、少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択される場合、すなわち、ポリマーがポリ乳酸である場合に得られる。
【0046】
加工助剤として重合反応で使用されてもよい触媒の化学的性質に関して本特許出願の特定の限定はなく、その濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化されてもよい。特に、ポリマーがポリ乳酸である場合、少なくとも1種の触媒は、好ましくはマグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、インジウム、イットリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス及び前述の金属の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される金属を含む少なくとも1種の有機金属化合物であり、ここで、少なくとも1種の有機金属化合物は、好ましくは有機残基として、アルキル基、アリール基、ハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシド及び前述の基の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される残基を含む。触媒としてより好ましいものは、これらの金属のアルキル基又はアリール基を有する化合物と同様に、前述の金属のハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシドである。さらにより好ましい重合触媒は、オクタン酸スズ及びステアリン酸スズであり、ここで、オクタン酸スズ、すなわち、2−エチルヘキサン酸Sn(II)が最も好ましい。ラクチドの開環重合のための触媒の他の例は、限定されないが、アゾ化合物及びジアゾ化合物、例えば、4−ピロリジノピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアゾビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンである。
【0047】
たとえ触媒の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間に変化されてもよいとしても、触媒濃度は、第1のポリマーグレードの生成の間、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間、及び第2のポリマーグレードの生成の間、同じ値で維持されることが好ましい。
【0048】
通常、少なくとも1つの逆混合反応器中の重合混合物は、反応混合物の全重量に基づいて、0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.0025〜0.02重量%の触媒を含有する。
【0049】
本発明のさらなる発展において、少なくとも1種の開始剤は、加工剤として少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加されることが示唆される。好ましくは、開始剤は、加工剤として少なくとも1種の触媒と組み合わせて、少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加される。開始剤のための特に適当な例は、特にポリマーがポリ乳酸である場合、少なくとも1個のカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含む化合物、例えば、好ましくは水、アルコール、乳酸、環状エステルのオリゴマー、環状エステルのポリマー、及び前述の物質の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される化合物である。環状エステルのオリゴマー及び/又はポリマーとして、特に乳酸のオリゴマー及び/又はポリマーが好ましい。適当なアルコールの例は、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、プロパンジオール及びグリセロールであり、この中で1−ヘキサノールが好ましく、2−エチル−1−ヘキサノールが最も好ましい。さらに、ラジカル重合における開始剤のための例は、過酸化物、ヒドロ過酸化物、アゾ化合物、二硫化物、テトラゼン、及び前述の化合物の2種以上の組合せである。ラジカル重合における開始剤の他の例は、レドックス系、例えば、過酸化物と鉄(Fe2+)イオンとの組合せ、過酸化物と他の金属イオン、例えば、Cr2+、V2+、Ti3+、Co2+、Cu2+との組合せ、又は過酸化物とアミンとの組合せである。過酸化物の適当な例は、アセチル過酸化物、ベンゾイル過酸化物及びアルキル過酸化物、例えば、クミル過酸化物及びt−ブチル過酸化物であるが、ヒドロ過酸化物の適当な例は、t−ブチルヒドロ過酸化物、クミルヒドロ過酸化物及びペルエステルである。アゾ化合物として、例えば、2,2’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)及び/又は1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が使用されてもよい。
【0050】
開始剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間に、第1のポリマーグレードに関連する第1の値から第2のポリマーグレードに関連する最終の値に時間の関数として変化されることが好ましい。この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、より好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量、生成されるポリマーの多分散度及び/又は生成されるポリマーのメルトフローインデックスに関する1つ若しくは複数のパラメータである場合に特に適当である。
【0051】
開始剤の濃度は、例えば、反応混合物の全重量に基づいて、0.0001〜5重量%、好ましくは0.0025〜0.1重量%の数値範囲内で変化されてもよい。
【0052】
本発明のさらなる発展において、
i)少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択され、
ii)第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量であり、
iii)加工助剤として、少なくとも1種の触媒及び少なくとも1種の開始剤が添加され、ここで、少なくとも1種の開始剤の濃度は、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量に関連する第1の値から、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量に関連する最終の値に時間の関数として変化される
ことが示唆される。
【0053】
特にこの場合、その濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される、加工剤の濃度のオーバーシューティング又はアンダーシューティングは、上に記載されたとおりの程度及び期間行われる。
【0054】
本発明の代わりの好ましい実施形態によれば、ラジカル重合において、
i)少なくとも1種のモノマーが、スチレン、酢酸ビニル、アクリラート、例えば、メチル−メタクリラートのようなメタクリラート、エチレン、プロピレン、ブチレン及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択され、
ii)第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリマーの分子量であり、
iii)加工助剤として、少なくとも1種の触媒、及び少なくとも1種の重合開始剤又は少なくとも1種の連鎖移動剤が添加され、ここで、少なくとも1種の重合開始剤又は少なくとも1種の連鎖移動剤の濃度は、生成されるポリマーの分子量に関連する第1の値から生成されるポリマーの分子量に関連する最終の値に時間の関数として変化される
ことが示唆される。
【0055】
連鎖移動剤の好ましい例は、1個又は複数のベンジルC−H基を有する分子、第一級ハロゲン化物、第二級ハロゲン化物、アミン、カルボニル化合物、アルコール、四塩化炭素、四臭化炭素、二硫化物及び前述の化合物の2種以上の組合せからなる群から選択される化合物である。1個又は複数のベンジルC−H基を有する分子の適当な例は、トルエン、エチルベンゼン及びイソプロピルベンゼンであるが、第一級ハロゲン化物の適当な例は、ヨウ化n−ブチルであり、アミンの適当な例には、ブチルアミン及びトリエチルアミンが含まれ、二硫化物の適当な例は、硫化ジ−n−ブチル及び二硫化ジ−n−ブチルである。
【0056】
次に、本発明による具体的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、先行技術方法によって行われた、連続攪拌槽反応器に導入された供給原料中の開始剤の濃度の変化(上図、細線)に依存して連続攪拌槽反応器中の開始剤の濃度の変化(上図、太線)を示す概略図、並びに連続逆混合反応器の出口での例えば、メルトフローインデックスのようなポリマー生成物の性質Pの対応する変化(下図、太線)を示す概略図である。
図2図2は、連続攪拌槽反応器に導入された供給原料中の開始剤の濃度の変化(上図、細線)に依存して連続攪拌槽反応器中の開始剤の濃度の変化(上図、太線)を示す概略図、並びに本発明によって行われた、連続逆混合反応器の出口での例えば、メルトフローインデックスのようなポリマー生成物の性質Pの対応する変化(下図、太線)を、図1に示されたとおりの連続攪拌槽反応器の出口でのポリマー生成物の性質の変化(太い一点鎖線)と比較して、示す概略図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による連続攪拌槽反応器に導入された供給原料中の開始剤の濃度の変化を示す概略図である。
図4図4は、例1で使用されるとおりの、本発明による方法を行うために適した重合装置を示す概略図である。
図5図5は、例1及び比較例1の第1のポリマーグレード(Mw(t)/Mw1=1)から第2のポリマーグレード(水平線より下の)への時間に対する重合装置の出口で収集された試料についての重量平均分子量の進展を示す。示されたデータは、先行技術で公知の標準ステップ変化法によって得られた進展(△)、及び本発明による方法によって得られた進展(●)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、先行技術方法によって行われた、連続攪拌槽反応器(CSTR)に導入された供給原料中の開始剤の濃度の変化(上図、細線)に依存してCSTR中の開始剤の濃度の変化(上図、太線)を示す。細線で示されるように、CSTRに導入された供給原料中の開始剤の濃度は、時間t=0で第1の値cから最終の値cに段階的に低下される。開始剤は別として、供給原料は、モノマーとしてラクチド、及び触媒、すなわち、オクタン酸スズを含む。CSTR中の反応混合物の滞留時間のために、CSTR内の開始剤の濃度は、太線で示されるとおりに、わずかにゆっくりと変化し、かなりの遅れによってのみ最終濃度cに到達する。t=0と、CSTR内の開始剤の濃度がcに到達するときの時間との間の期間は、CSTRにおける開始剤の移行時間である。それに対応して、CSTRで生成されるポリマーの性質Pも、時間とともに変化する。反応器の出口でのポリマーの性質Pが開始値から最終の定常値に変化するために必要とされる期間は、ポリマーの性質Pの移行時間である。追加の反応器及び設備がCSTR反応器の下流に存在する、より複雑な重合プラントでは、ポリマーの性質Pは、好ましくはCSTR出口でよりはむしろプラント出口で測定される。
【0059】
本発明によれば、CSTRに導入される供給原料中の開始剤の濃度を、意図された最終濃度cよりも低い中間の値αcに、最初に意図的且つ正確に変化させることによって、移行時間がかなり短縮され、ここで、中間の値αcは、時間
【数4】

(式中、c、c、α、ε及びτは、上で定義されたとおりである)
の間維持される。
【0060】
第1の濃度の値から最終の濃度の値へのもののような開始剤の濃度のこのより高い変化のために、開始剤の濃度変化は、重合反応器内で加速され、その結果として、ポリマーの性質P1により特徴付けられる、第1のグレードから、ポリマーの性質P2で特徴付けられる、意図されたものへのポリマーグレードの変化も加速される。図2に示されるとおりに、開始剤の中間のアンダーシュート濃度のために(図2、上部)、図2の太線で示されるとおりに、重合反応器における最終のポリマーグレード性質は、段階的な濃度低下(図2、太い一点鎖線参照)の場合よりも早く、最下部に到達され、これは、移行時間のかなりの短縮をもたらす。
【0061】
図3は、本発明の別の実施形態によりCSTRに導入された供給原料中の開始剤の濃度が、図2に示されるとおりのαに相当する1つの中間濃度に減少されるだけでなく、より多くの中間濃度cに減少される、CSTRに導入された供給原料中の開始剤の濃度の変化のより複雑な曲線を示す。このような場合、供給原料におけるオーバーシュート/アンダーシュートの時間Δtは、供給原料濃度が(1±ε)−範囲(εは、定常状態でポリマーの性質P1を得るための供給原料中の許容差である)を出る、第1の瞬間から、供給原料濃度が(1±ε)c−範囲(εは、定常状態でポリマーの性質P2を得るための供給原料中の許容差である)に入る、中間の値α後の第1の次の瞬間までから計算される。対応するαは、より低い(より高い)設定点からより高い(より低い)設定点までの移行の間に供給原料濃度により到達される最大(最小)値を使用して計算される。
【0062】
続いて、本特許出願を、非限定的な実施例によって例証する。
【実施例】
【0063】
(例1)
図4は、好ましい実施形態によってポリ乳酸を対応する環状ジエステルモノマー(アクチド)から連続的に生成させるための重合装置の概略図(縮尺通りでない)を示す。
【0064】
アクチドモノマー供給原料1は、予備混合器ユニット3中への、例えば、限定されないが、重合触媒及び/又は開始剤のような加工剤のストリーム2と混合される。次いで、そのようにして得られた予備混合相4は、ループ反応器6にポンプで送られる。次いで、ループ出口ストリーム8の一部分がポンプで戻され、供給原料ストリーム4と一緒にループ反応器の入口に供給される。ループ出口ストリーム9の残りの部分は、変換が目標の最終の値までさらに増加するプラグフロー反応器10にポンプで送られる。プラグフロー反応器の出口で、主としてポリマーを含有する反応ストリーム11は、製造プロセスが完了する最終ユニット12にポンプで送られる。最終ユニット12は、最終生成物が重合装置13の出口で収集される前に、機械的、レオロジー的及び/又は熱的性質を改善するために、限定されないが、1つ又は複数の蒸発液化工程、添加剤及び/又は他のポリマーを混合及び/又はブレンドするための1つ又は複数のユニット、仕上げ及び/又はペレット化ユニット、乾燥及び/又は結晶化ユニットから選択される1つ又は複数のサブユニットを備えることができる。12に存在するサブユニットのタイプ及び量は、製造の必要性に依存する。
【0065】
別の実施形態において、重合装置は、予備混合器ユニットへの触媒及び開始剤のための別個の入口ストリームを含んでもよい。
【0066】
重合装置の別の実施形態において、予備混合器ユニットは、非存在であることができ、反応器への供給原料ストリームは、それらをループ反応器に供給する前に別個のユニットで混合することができる。
【0067】
重合装置の別の実施形態において、ラクチド及び他の化学剤は、ループ反応器に別個に直接供給される。
【0068】
図4に示される好ましい重合装置の実施形態において、予備混合器ユニットへの供給流量で除した予備混合器ユニットの容積と定義される、予備混合器ユニット3での平均滞留時間は、ループ反応器容積と総供給流量(1+2、又は4)との比と定義される、ループ反応器6での平均滞留時間の1/2未満、より好ましくは1/5未満、さらにより好ましくは1/10未満である。好ましい条件に限定されないが、本発明は、より大きい予備混合器が使用される、例えば、ループでの滞留時間の1/2より大きい又はそれに同等の滞留時間を有する場合にも適用することができる。
【0069】
ループ反応器へ供給された開始剤4の濃度は、
=F/(F+Fcat+Fラクチド
(式中、Cは、第1の定常状態条件に到達するために使用されるループ反応器への供給原料中の開始剤濃度であり、
は、ストリーム1における(純)開始剤の流量であり、
catは、ストリーム1における(純)触媒の流量であり、Fラクチドは、ラクチド2の流量である)
のように、予備混合器に供給される流量の比として計算される。
【0070】
反応器に供給される開始剤の濃度を計算するために報告された等式は、上の別の実施形態によって、モノマー及び剤の異なるストリームが、それらのそれぞれの流量を有する別個のストリームを介して、ループ反応器中に直接供給され、次いで、ループ反応器で循環するストリーム5と一緒に混合される場合にも同じ式で計算することができることが留意されなければならない。ラクチド及び剤は、ループ反応器の異なる点へも別個にされたストリームとして供給することができる。
【0071】
いずれの場合も、連続混合反応器に供給される所与の化学剤の濃度は、恐らくは存在する予備混合工程、及び連続混合反応器容積に入る前にストリーム及び全体供給原料を構成し得る剤の数から独立して、連続混合反応器容積(6)に実際に入る材料の全体量中の剤の濃度としての標準的な定義に従って計算される。
【0072】
この実施例では、Fラクチド=25kg/時間の一定流量で図4に描写されるとおりの重合装置の予備混合器ユニットに、液体ラクチドを、連続的にポンプで送った。
【0073】
予備混合器の入口で、制御された量の触媒(オクタン酸スズ)及び開始剤(エチル−ヘキサノール)を、ストリームライン1を介して供給した。
【0074】
定常条件下で操作されたプラント、及び許容された許容差内の第1のポリマーグレードの仕様に相当する、装置13の出口で収集されたポリ乳酸の分子量Mwが、時間的に一定になるまで、ラクチド及び触媒及び開始剤のストリームを、一定に保った。
【0075】
所望の量の第1のポリマーグレードが生成されるまで、装置を、定常条件下で操作した。
【0076】
次いで、第1の重量平均分子量Mwにより特徴付けられるこの第1のポリマーグレードから、20%の許容差(ε=0.2)で第2の分子量Mw=0.67×Mwにより特徴付けられる第2のポリマーグレードへ生成を切り替えるために、重合プラントへの開始剤の供給流量を、最初に中間の値αC(α=1.333)に変化させ、時間Δt後に、第2の分子量Mwにより特徴付けられる第2のポリマーグレードの生成に関連する最終の値Cに戻して低下させた。
【0077】
先行技術において知られたとおりに、一部の場合に、それは、分子量が、使用される開始剤の量に逆比例することという妥当な推定と推測することができるので、開始剤の流量は、供給原料中の開始剤の第2の最終濃度値がC=1.5×Cであるように変化させた。
【0078】
本発明によれば、中間濃度値は、計算された時間
【数5】

の間維持されなければならず、これは、ループ反応器における滞留時間の5倍に等しいτを使用する本実施例においては、
【数6】

となる。
【0079】
したがって、Δt=0.184τを使用し、τは、ループ反応器における滞留時間の5倍に等しい。
【0080】
図5は、重合プラント13の出口で収集されたとおりの、時間に対する測定された重量平均分子量を報告する。
【0081】
2組のデータの公正な比較を可能にするために、時間尺度は、ループにおける平均滞留時間により正規化し、時間=0の値を、開始剤濃度が最初に第1の値cから、それぞれ、第2の値c(段階変化)、又は第2の値αc(新方法)に変化される瞬間に割り当てた。
【0082】
図中の水平線は、それ未満で第2のポリマー分子量グレードが、特定の用途に対する仕様内と認められた限界を表す。この限界は、上で報告されたとおりに、目標分子量よりも20%高いとして計算された。
【0083】
実験結果は、新しい手順によって、時間の関数としての分子量Mw(t)が、標準的な手順によるよりも新たな定常状態にはるかにより急速に低下することを実証する。
【0084】
このように、第1の分子量を有する第1のポリマーグレードから第2の分子量を有する第2のポリマーグレードへの移行時間をより速く行うことができ、より短い移行時間の間に生成される仕様外の材料の量は顕著に減少した結果となる。
【0085】
(比較例1)
ラクチド=25kg/時間の一定流量で(図4に描写するとおりの)重合装置の予備混合器ユニットに、液体ラクチドを、連続的にポンプで送った。
【0086】
予備混合器の入口で、制御された量の触媒(オクタン酸スズ)及び開始剤(エチル−ヘキサノール)を、ストリームライン1を介して供給した。
【0087】
定常条件下で操作されたプラント、及び許容された許容差内の第1のポリマーグレードの仕様に相当する、装置13の出口で収集されたポリ乳酸の分子量Mwが、時間的に一定になるまで、ラクチド並びに触媒及び開始剤のストリームを、一定に保った。
【0088】
所望の量の第1のポリマーグレードが生成されるまで、装置を、定常条件下で操作した。
【0089】
次いで、第1の重量平均分子量Mwにより特徴付けられるこの第1のポリマーグレードから、第2の重量平均分子量Mwにより特徴付けられる第2のポリマーグレードへ生成を切り替えるために、重合プラントへの開始剤の供給流量を、ループ反応器への供給原料中のその濃度が、第1の分子量Mwに関連する第1の値C1から、第2の分子量、Mw=0.65×Mwに段階的に変化する程度に変化させた。先行技術で知られているとおりに、一部の場合にそれは、分子量が、使用される開始剤の量に逆比例するという妥当な推定として想定することができるので、開始剤の流量は、供給原料中の開始剤の第2の濃度値がC=1.54×Cであるように変化させた。
【0090】
重合プラント13の出口での分子量の時間進展を図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5