【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を減少させるための方法であって、
− 重合プラントが、少なくとも1つの逆混合反応器を備え、
− 少なくとも1種のモノマー並びに触媒、共触媒、重合開始剤、コモノマー、連鎖移動剤、分岐剤、溶媒及び前述の加工剤の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の加工剤が、少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加され、少なくとも1つの逆混合反応器に導入される供給原料中の少なくとも1種の添加された加工剤の1種又は複数の濃度が、第1のポリマーグレードに関連する第1の値から第2のポリマーグレードに関連する最終の値に時間の関数として変化され、
− 第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの組成に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの構造に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの量に関する1つ若しくは複数のパラメータであり、
第1の値から最終の値への少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、1つ若しくは複数の中間の値が調整され、1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つが、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きく、1つ若しくは複数の中間の値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持され、且つ方法が動的モデリンングを行うことなしに行われる方法を提供することによって満たされる。
【0010】
好ましくは、大部分の中間の値が、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から大部分の中間の値のそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きい。
【0011】
より好ましくは、すべての中間の値が、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値からすべての中間の値のそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きい。
【0012】
この解決策は、例えば、触媒、共触媒、重合開始剤、連鎖移動剤、分岐剤、溶媒及び/又はコモノマー(単数又は複数)のような加工剤の濃度を、第1の値(例えば、重合プラント出口で第1の分子量を有するポリ乳酸を得るために第1の重合反応器に導入される供給原料中で必要な開始剤の濃度の値)から最終の値(例えば、重合プラント出口で第2の分子量を有するポリ乳酸を得るために第1の重合反応器に導入される供給原料中に必要な開始剤の濃度の値)に1つ若しくは複数の中間の値を介して変化させることにより(ここで、1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つが、好ましくは大部分が、より好ましくはすべてが、第1の値よりも最終の値に近く、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値の少なくとも1つの、好ましくは大部分のそれぞれ、より好ましくはすべてのそれぞれの間の絶対差が、最終の値と第1の値の間の絶対差よりも大きく、且つ1つ若しくは複数の中間の値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持される)、少なくとも1つの逆混合反応器を備える重合プラントで行われる連続重合プロセスで第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの間の移行を行うことによって、第1のポリマーと第2のポリマーグレードの間の移行時間が、いかなる種類の制御器(特に、PID制御器)、センサ(単数又は複数)及び動的モデル計算も必要とすることなしに、容易且つ正確な仕方で減少されることの所見に基づく。
【0013】
好ましくは、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値に低下され、次いで、最後の中間の値から最終の値に増加され、1つ若しくは複数の中間の値は、最終の値よりも低く、又は代わりに、少なくとも1種の添加される加工剤の濃度が、第1の値から1つ若しくは複数の中間の値に増加され、次いで、最後の中間の値から最終の値に低下され、1つ若しくは複数の中間の値は、最終の値よりも高い。
【0014】
移行時間の最小化は、好ましくは、ポリマーグレード、例えば、生成されたポリマーの分子量が、重合反応器、特に逆混合反応器中で、開始剤のような第1の重合反応器に導入された供給原料中の加工剤の濃度の変化に即時には従わないことを補償するために、最終濃度に関して、変化された加工剤の濃度のオーバーシュート又はアンダーシュートを行うことによって、本発明による方法で行われる。言い換えれば、ポリマーグレードにおける意図された変化に対する必要に応じて、開始剤のような加工剤の濃度のより高い変化は、加工剤の濃度変化が、中間の値から第2のポリマーグレードに対応する最終の値に下げられる前に、重合反応器における濃度変化を加速し、意図されたグレードへのポリマーグレードの変化を加速するための結果として、1つの中間の値又は複数の異なる中間の値に初期に調整される。例えば、オクタン酸スズのような触媒、及び高沸点アルコールのような開始剤の存在下でラクチドをポリ乳酸に重合させるための方法において、ポリ乳酸の分子量は、第1の値から第2のより高い値に増加される。ポリ乳酸の分子量は、第1の重合反応器に導入された供給原料中の開始剤の濃度に逆比例するので、供給原料中の開始剤の濃度は、ポリ乳酸の分子量を増加させるために、減少されなければならない。したがって、第1のポリマーグレードは、重合プラント出口でのポリ乳酸の第1の分子量及び供給原料中の開始剤の第1の濃度によって特徴付けられる一方で、第2のポリマーグレードは、重合プラント出口でのポリ乳酸の第2のより高い分子量及び供給原料中での開始剤の第2のより低い濃度によって特徴付けられる。供給原料中の開始剤の濃度が、第1の値から第2の値に1工程で減少される場合、重合反応器中の開始剤の濃度は、重合反応器中の反応混合物の滞留時間のために第1の値から第2の値にゆっくりと低下し、したがって、ポリ乳酸の分子量は、第1の値から第2の値に比較的ゆっくりと増加し、同等の、廃棄されなければならない仕様外のポリマー廃棄物が生成される長い移行時間をもたらす。第1のポリマーグレードと第2のポリマーグレードの間の移行時間を最小にするために、本発明による方法では、供給原料中の開始剤の濃度は、第1の値から第2の値に1工程で減少されないが、重合反応器中の反応混合物の滞留時間のために第1の値から第2の値への重合反応器中における開始剤の濃度の変化を加速し、したがって、開始剤の濃度が、より低い中間の濃度から最終の開始剤濃度に、適切な時間後、−すなわち、ポリマーの分子量が意図された第2の値に極めて近いときに−増加される前に、ポリマーの分子量の意図された分子量への変化を加速するために、第1の値から、第2の濃度よりもさらにより低い濃度(すなわち、アンダーシュート濃度)に相当する中間の値に初期に減少される。
【0015】
本発明によれば、この方法では、1つ若しくは複数の中間の値は、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持されるので、第1のポリマーグレードと第2のポリマーグレードの間の容易且つ正確な移行が、動的モデル計算の必要なしに且つ制御器、及び例えば、生成されたポリマーの分子量のような出力特性を測定するための1つ又は複数のセンサの必要なしに達成される。概して、本発明は、容易且つ正確な方法によって、重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を最小にすることを可能にする。
【0016】
定常相関は、重合プロセスの状態変数のすべてが、進行中のプロセスにもかかわらず一定である状況を意味する定常状態に基づく相関と本発明によって定義される。特に、例えば、圧力、温度、反応物質又は生成物の濃度等のようなプロセスパラメータは、その値が定義された許容度内で一定のままであるときに、例えば、その値が、±10%を超えて変化しないとき、好ましくは少なくとも15分間その点で±1%を超えて変化しないときに、重合プラントの1つの点で、定常状態である。同様に、重合プラントは、プラントの各点において、プロセスパラメータのすべてが、前述の期間の間前述の許容度内で一定のままであるときに、定常状態である。したがって、出口ポリマー生成物は、その性質のすべてが、前述の期間の間前述の許容度内で重合プラント出口において一定のままであるときに定常状態である。
【0017】
上の定義によれば、定常相関は、重合プラントが定常状態にあるときに測定された、ポリマー生成物出力性質とプラント入力(例えば、加工剤の濃度)の間の相関と本特許出願で定義される。
【0018】
さらに、逆混合反応器は、反応生成物(単数又は複数)が供給原料材料(単数又は複数)と緊密に混合され、これにより、一様の生成物及び反応容器中の反応物質の一様の濃度がもたらされる反応器と本発明によって定義される。逆混合反応器のための好ましい例は、それぞれ、連続攪拌反応器、及びリサイクル反応器又はループ反応器からなる群から選択される連続反応器である。特に、反応物質が別個にされたストリームとして逆混合反応器に供給される場合、逆混合反応器は、逆混合反応器の供給ラインの上流で、短い滞留時間を有する予備混合器を備えてもよく、ここで、異なる反応物質ストリームは、それらが逆混合反応器に入る前に混合及び均質化される。
【0019】
触媒は、反応により消費されることなしに化学反応の速度を増加させる物質として関連分野でのこの用語の通常の定義と一致して本発明の範囲内で定義され、共触媒は、−触媒と組み合わせて又は触媒と反応後に又は触媒と相乗的に作用して−触媒の効率を増強させ、したがって、化学反応の速度を増加させる物質と−やはり関連分野でのこの用語の通常の定義と一致して−定義される。
【0020】
さらに、重合開始剤は、重合反応を開始させ、−副反応の非存在下で−ポリマー鎖における末端単位として反応の最後に残る物質と本発明によって定義される。各ポリマー鎖が、開始剤分子によって又は開始剤分子の副生成物によって開始される場合、開始剤は、ポリマー分子量を合わせるために使用され得る。
【0021】
加えて、連鎖移動剤は、活性成長基を1つの分子から別の分子に移動させる物質と本発明によって定義される。連鎖移動剤は、ポリマー分子量を合わせるために通常使用される。
【0022】
さらに、分岐剤は、ポリマー構造中に分岐の形成を導入又はそれを増強する物質と本発明によって定義される。
【0023】
ポリマーの分子量は、好ましくは、溶媒増強光散乱法、ポリマー溶媒としてクロロホルム、溶離液としてアセトン及びPMMA標準を使用しての装置パラメータの校正を使用して、トリプル検出器、すなわち、屈折率、粘度計及び右/低角度光散乱検出器を備えた、Viscotek TDAmax(Malvern)によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で本発明によって測定される、数平均又は重量平均分子量を本発明の意味において表す。
【0024】
上に提示されたとおり、特定の利点は、その値が、少なくとも1つの逆混合反応器における滞留時間並びに反応器及び/又は重合プラントの入力と出力の間の定常相関のみに基づいて計算される時間の間維持される、1つ若しくは複数の中間の値の調整によって、本発明による方法が行われることである。したがって、本発明による方法は、動的モデリングを行うことなしに行われる。
【0025】
本発明のさらなる発展において、動的モデリングを行くことなしに加えて、制御器の使用なしに、特にPID制御器の使用なしにこの方法を行うことが示唆される。
【0026】
本発明の第1の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の供給濃度は、第1の値c
1から1つ若しくは複数の中間の値α
*c
2に変化され、次いで、最後の中間の値α
*c
2から最終の値c
2に変化され、ここで、1つ若しくは複数の中間の値は、供給濃度がc
1からc
2>c
1に低下されなければならない場合に、α<1であるように最終の値よりも低く、又は1つ若しくは複数の中間の値は、供給濃度がc1からc
2>c
1に増加しなければならない場合に、α>1であるように最終の値よりも高く、且つ中間の値α
*c
2は、時間
【数1】
(式中、
c
1は、少なくとも1種の添加された加工剤の第1の濃度であり、
c
2は、少なくとも1種の添加された加工剤の最終の濃度であり、
αは、中間の値が、最終濃度c
2よりも高いか又は低い係数であり、
τは、逆混合反応器中の反応混合物の少なくとも平均滞留時間である期間であり、
εは、少なくとも1種の添加された加工剤の最終濃度に対する相対許容差であり、定常状態の第2のポリマーグレードが、仕様内であると使用者によって確実に認められるようにする、すなわち、目標の第2のポリマーグレードに対して許容可能な差以下を有し、少なくとも1種の添加された加工剤の入口濃度が(1±ε)c
2内に保持される場合に、c
2<c
1であるならば、+ε>0が使用されなければならず;c
2>c
1であるならば、−ε<0が使用されなければならない)
の間維持される。
【0027】
この文脈において、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定されることが留意されなければならない。一般に、加工剤濃度を減少させるときにその値が小さければ小さいほど、及び加工剤濃度を増加させるときにその値が高ければ高いほど、移行時間はより短くなり、仕様外の生成物の量はより少なくなる。
【0028】
少なくとも1種の変化された加工剤の濃度の中間の値(単数又は複数)が、ある場合にこの化合物の第1及び最終の濃度よりも意図的に低い場合であるときに、少なくとも1種の変化された加工剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間にアンダーシュート濃度にこの実施形態では意図的に設定される。この実施形態は、開始剤の濃度が、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、特に適当である。さらに、この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、特に適当であり、第1のポリマーグレード並びに第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合、さらにより好ましい。
【0029】
好ましくは、εは、未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0030】
さらに、τは、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことである。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値c
1から1つ若しくは複数の中間の値α
*c2に低下され、次いで、最後の中間の値α
*c
2から最終の値c
2に増加され、こここで、1つ若しくは複数の中間の値は、α<1であるように最終の値よりも低い。意図された目標分子量から±x%の分子量を有するポリマーが、許容でき、且つ仕様内であると認められ、定常状態でポリマーが±x%の分子量を有することを確実にする開始剤供給原料濃度に対応する許容度が、(1±ε)c
2である場合、少なくとも1種の加工剤の濃度は、前述の実施形態において、時間
【数2】
(式中、少なくとも1種の加工剤の濃度が最終の値に増加する前は、c
1、c
2、ε及びτは、上に記載されたとおりである)
の間第1の値c
1から1つ又は複数の中間の値(単数又は複数)α
*c
2に低下される。移行時間短縮するために、αの値は、利用できる技術的設備により許容される限り可能な最小であり、すなわち、αの値は、最小の中間の値は、最終濃度c
2よりも低い最小係数である。上に提示されたとおりに、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定される。一般に、加工剤濃度を減少させるときにその値が小さければ小さいほど、移行時間は短くなり、仕様外の生成物の量は少なくなる。
【0032】
前述の実施形態は、開始剤の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、ポリマーがポリ乳酸である場合、及び第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量である場合に、特に適当である。
【0033】
またこの実施形態において、εは、好ましくは未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0034】
さらに、やなりこの実施形態において、τが、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことが好ましい。
【0035】
本発明の代わりの特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度の変化の間に、少なくとも1種の添加された加工剤の濃度が、第1の値c
1から1つ若しくは複数の中間の値α
*c
2に増加され、次いで、最後の中間の値α
*c
2から最終の値c
2に低下され、ここで、1つ若しくは複数の中間の値は、α>1であるように最終の値よりも高く、且つ中間の値は、時間
【数3】
(式中、c
1、c
2、α、ε及びτは、上で定義されたとおりである)
の間維持される。移行時間を短縮するために、αの値は、利用できる技術的設備により許容される限り可能な最大であり、すなわち、αの値は、最大の中間の値は、最終濃度c
2よりも高い最大係数である。上に提示されたとおりに、αの値の選択は、設備操作範囲によって主として限定される。一般に、加工剤濃度を増加させる場合にその値が高ければ高いほど、移行時間は短くなり、仕様外である生成物の量は少なくなる。
【0036】
この実施形態においても、εは、好ましくは未満、より好ましくは0.1未満、さらにより好ましくは0.05未満である。
【0037】
さらに、この実施形態においても、τは、逆混合反応器における平均滞留時間の最大で10倍、より好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で5倍、さらにより好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間の最大で3倍であり、最も好ましくは逆混合反応器における平均滞留時間に等しいことが好ましい。
【0038】
少なくとも1種の変化された加工剤の濃度の中間の値(単数又は複数)が、この場合にこの化合物の第1及び最終の濃度よりも意図的に高い場合であるときに、少なくとも1種の変化された加工剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間にオーバーシュート濃度にこの実施形態では意図的に設定される。この実施形態は、開始剤の濃度が、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、特に適当である。さらに、この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、特に適当であり、第1のポリマーグレード並びに第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合、さらにより好ましい。
【0039】
前述の実施形態は、開始剤の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される場合、ポリマーがポリ乳酸である場合、及び第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、ポリマーの分子量である場合に、特に適する。
【0040】
原則として、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードは、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの組成に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの構造に関する1つ若しくは複数のパラメータ及び/又は生成されるポリマーの量に関する1つ若しくは複数のパラメータである限り、特に限定されない。好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの分子量、生成されるポリマーの多分散度、生成されるポリマーのメルトフローインデックス、生成されるポリマーの密度、生成されるポリマーの粘度、生成されるポリマーの分岐度、生成されるポリマーの固体濃度、生成されるポリマーの分岐度、生成されるポリマー中のモノマーの立体化学配置、及び前述のグレードの2種以上の任意の組合せからなる群からそれぞれ選択される。
【0041】
より好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードはそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量、生成されるポリマーの多分散度、及び/又は生成されるポリマーのメルトフローインデックスであり、最も好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量である。
【0042】
また逆混合反応器の種類に関して、本特許発明は特に限定されない。良好な結果は、少なくとも1つの逆混合反応器が、ループ反応器及び連続攪拌槽反応器(これらは、重合プラントにおいて恐らくはまた1つ又は複数のプラグフロー反応器と組み合わせて使用される)からなる群から選択される反応器である場合に得られる。より好ましくは、重合プラントは、2つの反応器、すなわち、ループ反応器、及びループ反応器の下流にプラグフロー反応器を備える。
【0043】
好ましくは、逆混合反応器への供給原料ストリームを均質化するために、予備混合器が、逆混合反応器の前、特に連続逆混合反応の前に設置される。
【0044】
本発明は、あらゆる種類の公知のポリマーを調製するための重合プラントで行われる連続重合プロセスにおける第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間の移行時間を短縮する及び/又は仕様外のポリマー廃棄物を減少させるために使用されてもよい。特に、ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであってもよい。適当な結果は、例えば、少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、L−ラクチドとD−ラクチドとメソ−ラクチドの組合せ、環状モノマー、スチレン、酢酸ビニル、アクリラート、例えば、メチル−メタクリラートのようなメタクリラート、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソシアナート化合物とポリオールの組合せ、アミド、ε−カプロラクトン、グリコリド、並びに前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択される場合に得られる。
【0045】
特に良好な結果は、少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択される場合、すなわち、ポリマーがポリ乳酸である場合に得られる。
【0046】
加工助剤として重合反応で使用されてもよい触媒の化学的性質に関して本特許出願の特定の限定はなく、その濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化されてもよい。特に、ポリマーがポリ乳酸である場合、少なくとも1種の触媒は、好ましくはマグネシウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、インジウム、イットリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス及び前述の金属の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される金属を含む少なくとも1種の有機金属化合物であり、ここで、少なくとも1種の有機金属化合物は、好ましくは有機残基として、アルキル基、アリール基、ハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシド及び前述の基の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される残基を含む。触媒としてより好ましいものは、これらの金属のアルキル基又はアリール基を有する化合物と同様に、前述の金属のハロゲン化物、酸化物、アルカノアート、アルコキシドである。さらにより好ましい重合触媒は、オクタン酸スズ及びステアリン酸スズであり、ここで、オクタン酸スズ、すなわち、2−エチルヘキサン酸Sn(II)が最も好ましい。ラクチドの開環重合のための触媒の他の例は、限定されないが、アゾ化合物及びジアゾ化合物、例えば、4−ピロリジノピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデセン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアゾビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリンである。
【0047】
たとえ触媒の濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間に変化されてもよいとしても、触媒濃度は、第1のポリマーグレードの生成の間、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間、及び第2のポリマーグレードの生成の間、同じ値で維持されることが好ましい。
【0048】
通常、少なくとも1つの逆混合反応器中の重合混合物は、反応混合物の全重量に基づいて、0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.0025〜0.02重量%の触媒を含有する。
【0049】
本発明のさらなる発展において、少なくとも1種の開始剤は、加工剤として少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加されることが示唆される。好ましくは、開始剤は、加工剤として少なくとも1種の触媒と組み合わせて、少なくとも1つの逆混合反応器中に重合プロセスの前及び/又は間に添加される。開始剤のための特に適当な例は、特にポリマーがポリ乳酸である場合、少なくとも1個のカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を含む化合物、例えば、好ましくは水、アルコール、乳酸、環状エステルのオリゴマー、環状エステルのポリマー、及び前述の物質の2種以上の任意の組合せからなる群から選択される化合物である。環状エステルのオリゴマー及び/又はポリマーとして、特に乳酸のオリゴマー及び/又はポリマーが好ましい。適当なアルコールの例は、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、プロパンジオール及びグリセロールであり、この中で1−ヘキサノールが好ましく、2−エチル−1−ヘキサノールが最も好ましい。さらに、ラジカル重合における開始剤のための例は、過酸化物、ヒドロ過酸化物、アゾ化合物、二硫化物、テトラゼン、及び前述の化合物の2種以上の組合せである。ラジカル重合における開始剤の他の例は、レドックス系、例えば、過酸化物と鉄(Fe
2+)イオンとの組合せ、過酸化物と他の金属イオン、例えば、Cr
2+、V
2+、Ti
3+、Co
2+、Cu
2+との組合せ、又は過酸化物とアミンとの組合せである。過酸化物の適当な例は、アセチル過酸化物、ベンゾイル過酸化物及びアルキル過酸化物、例えば、クミル過酸化物及びt−ブチル過酸化物であるが、ヒドロ過酸化物の適当な例は、t−ブチルヒドロ過酸化物、クミルヒドロ過酸化物及びペルエステルである。アゾ化合物として、例えば、2,2’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)及び/又は1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が使用されてもよい。
【0050】
開始剤の濃度は、第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの変化の間に、第1のポリマーグレードに関連する第1の値から第2のポリマーグレードに関連する最終の値に時間の関数として変化されることが好ましい。この実施形態は、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの分子量に関する1つ若しくは複数のパラメータである場合、より好ましくは、第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードがそれぞれ、生成されるポリマーの数平均分子量又は重量平均分子量、生成されるポリマーの多分散度及び/又は生成されるポリマーのメルトフローインデックスに関する1つ若しくは複数のパラメータである場合に特に適当である。
【0051】
開始剤の濃度は、例えば、反応混合物の全重量に基づいて、0.0001〜5重量%、好ましくは0.0025〜0.1重量%の数値範囲内で変化されてもよい。
【0052】
本発明のさらなる発展において、
i)少なくとも1種のモノマーが、ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択され、
ii)第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量であり、
iii)加工助剤として、少なくとも1種の触媒及び少なくとも1種の開始剤が添加され、ここで、少なくとも1種の開始剤の濃度は、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量に関連する第1の値から、生成されるポリ乳酸ポリマーの分子量に関連する最終の値に時間の関数として変化される
ことが示唆される。
【0053】
特にこの場合、その濃度が第1のポリマーグレードから第2のポリマーグレードへの移行の間に変化される、加工剤の濃度のオーバーシューティング又はアンダーシューティングは、上に記載されたとおりの程度及び期間行われる。
【0054】
本発明の代わりの好ましい実施形態によれば、ラジカル重合において、
i)少なくとも1種のモノマーが、スチレン、酢酸ビニル、アクリラート、例えば、メチル−メタクリラートのようなメタクリラート、エチレン、プロピレン、ブチレン及び前述のモノマーの1種又は複数の混合物からなる群から選択され、
ii)第1のポリマーグレード及び第2のポリマーグレードが、生成されるポリマーの分子量であり、
iii)加工助剤として、少なくとも1種の触媒、及び少なくとも1種の重合開始剤又は少なくとも1種の連鎖移動剤が添加され、ここで、少なくとも1種の重合開始剤又は少なくとも1種の連鎖移動剤の濃度は、生成されるポリマーの分子量に関連する第1の値から生成されるポリマーの分子量に関連する最終の値に時間の関数として変化される
ことが示唆される。
【0055】
連鎖移動剤の好ましい例は、1個又は複数のベンジルC−H基を有する分子、第一級ハロゲン化物、第二級ハロゲン化物、アミン、カルボニル化合物、アルコール、四塩化炭素、四臭化炭素、二硫化物及び前述の化合物の2種以上の組合せからなる群から選択される化合物である。1個又は複数のベンジルC−H基を有する分子の適当な例は、トルエン、エチルベンゼン及びイソプロピルベンゼンであるが、第一級ハロゲン化物の適当な例は、ヨウ化n−ブチルであり、アミンの適当な例には、ブチルアミン及びトリエチルアミンが含まれ、二硫化物の適当な例は、硫化ジ−n−ブチル及び二硫化ジ−n−ブチルである。
【0056】
次に、本発明による具体的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。