特許第6749327号(P6749327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デグテック エルティーディーの特許一覧

<>
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000002
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000003
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000004
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000005
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000006
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000007
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000008
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000009
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000010
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000011
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000012
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000013
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000014
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000015
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000016
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000017
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000018
  • 特許6749327-回転切削工具及びその切削インサート 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749327
(24)【登録日】2020年8月13日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】回転切削工具及びその切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20200824BHJP
   B23C 5/22 20060101ALI20200824BHJP
   B23C 5/08 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B23C5/20
   B23C5/22
   B23C5/08 A
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-527629(P2017-527629)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公表番号】特表2017-536252(P2017-536252A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】KR2015013321
(87)【国際公開番号】WO2016089188
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0174219
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508151781
【氏名又は名称】デグテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンギュ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,スジン
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523468(JP,A)
【文献】 特開2011−235437(JP,A)
【文献】 実開昭58−063915(JP,U)
【文献】 特開2007−245245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/04−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、下面と、前記上面と前記下面との間で延びる第1ないし第4側面とを含む切削インサートであり、
前記切削インサートは、回転切削工具の工具本体に設けられるインサートポケットに交換可能に装着されて前記工具本体に設けられる弾性加圧部によって加圧され、
前記第1側面と前記第3側面が対向し、前記第2側面と前記第4側面が対向し、
前記上面と前記下面のそれぞれは、前記弾性加圧部に加圧される傾斜面を備え、
前記傾斜面は、前記弾性加圧部の加圧によって前記第1側面、前記第2側面及び前記下面が前記インサートポケットに接触するように前記切削インサートの横断面に対して傾斜し、
前記第2側面をXYZ−直交座標系のYZ−平面上に位置させ、前記第2側面の4つの頂点のうち前記第1側面及び前記下面と出会う頂点を前記XYZ−直交座標系の原点に位置させる時、前記傾斜面は、前記XYZ−直交座標系のX−軸、Y−軸及びZ−軸上の3つの点によって定義される平面内に位置し、
前記3つの点のそれぞれは、P(x、0、0)、Q(0、y、0)、R(0、0、z)の座標を有し、x、y、zは正の値を有する、
切削インサート。
【請求項2】
上面と、下面と、前記上面と前記下面との間で延びる第1ないし第4側面とを含む切削インサートであり、
前記切削インサートは、回転切削工具の工具本体に設けられるインサートポケットに交換可能に装着されて前記工具本体に設けられる弾性加圧部によって加圧され、
前記第1側面と前記第3側面が対向し、前記第2側面と前記第4側面が対向し、
前記上面と前記下面のそれぞれは、前記弾性加圧部に加圧される傾斜面を備え、
前記傾斜面は、前記弾性加圧部の加圧によって前記第1側面、前記第2側面及び前記下面が前記インサートポケットに接触するように前記切削インサートの横断面に対して傾斜し、
前記上面は、前記第2側面及び前記第4側面の中央を通る中心軸と交差する方向において対称的に対向する第1突出部と第2突出部を含み、
前記下面は、前記中心軸と交差する方向において対称的に対向する第3突出部と第4突出部を含み、
前記第1ないし第4突出部のそれぞれは、突出部表面と前記突出部表面に傾斜して連結される接触側面を有し、
前記傾斜面は、前記切削インサートが前記インサートポケットに装着される時に前記第1突出部と前記第2突出部のうち前記工具本体の半径内側方向に位置する前記第1突出部の前記接触側面に形成される、
切削インサート。
【請求項3】
前記切削インサートは、前記切削インサートが前記中心軸を基準に回転される回転対称形状を有する、
請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記上面と前記第1側面との間、前記上面と前記第3側面との間、前記下面と前記第1側面との間及び前記下面と前記第3側面との間の縁のそれぞれに形成される切削刃をさらに含む、
請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記切削インサートの第1側面または前記第3側面を側方から見ると、前記上面の前記切削刃は前記第4側面から前記第2側面に向かって下方に傾斜し、前記下面の前記切削刃は前記第4側面から前記第2側面に向かって上方に傾斜する、
請求項4に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記突出部表面は、前記第2側面と鋭角をなす第1突出部表面を含む、
請求項2に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記第1側面と前記第3側面のそれぞれは、前記第2側面と鈍角をなす、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項8】
複数の切削部を備える工具本体を有する回転切削工具であり、
前記切削部のそれぞれは、
請求項1から請求項7のいずれか一項による切削インサートと、
前記切削インサートが装着されるインサートポケットと、
前記インサートポケットに隣接する弾性加圧部と、を含み、
前記工具本体は、回転軸方向において対向する一対の円形面と前記一対の円形面の間で延びる周面とを含み、
前記インサートポケットは、
前記弾性加圧部によって撓みが可能であり、突起部を備える上壁と、
前記上壁から離隔されて前記上壁と対向する底壁と、
前記上壁と前記底壁との間に位置して前記工具本体の半径外側方向に面している第1支持壁と、
前記上壁と前記底壁との間に位置して前記工具本体の前方軸方向又は後方軸方向に面している第2支持壁とを含み、
前記上壁の前記突起部は、前記切削インサートが前記インサートポケットに装着される時に前記第1側面、前記第2側面及び前記下面が前記第1支持壁、前記第2支持壁及び前記底壁にそれぞれ接触するように、前記切削インサートの前記傾斜面を加圧する内向傾斜面を備える、
回転切削工具。
【請求項9】
前記弾性加圧部の下部が前記上壁を形成し、
前記弾性加圧部は、前記工具本体の前記周面から前記工具本体の内側へ延びるネジ穴と、前記工具本体の周面で前記ネジ穴の入口から前記工具本体の内側に延びて前記ネジ穴に対して傾斜するスロットと、前記スロットを拡張するように前記ネジ穴に結合される調節ネジとを含む、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項10】
前記弾性加圧部の下部が前記上壁を形成し、
前記弾性加圧部は、前記工具本体の前記周面から前記工具本体の内側へ延びるくさび穴と、前記工具本体の周面で前記くさび穴の入口から前記工具本体の内側に延びて前記くさび穴に対して傾斜するスロットと、前記くさび穴に挿入されるくさびブロックと、前記くさびブロックに嵌められて前記スロットを拡張するように前記くさび穴に結合される調節ネジとを備える、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項11】
前記工具本体は、前記インサートポケットから前記工具本体の内側へ延びるスリットを備え、
前記スリットは、前記スロットに対して傾斜している、
請求項9に記載の回転切削工具。
【請求項12】
前記底壁と前記第2支持壁は、前記インサートポケット内で鋭角をなす、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項13】
前記第1支持壁と前記第2支持壁は、前記インサートポケット内で鈍角をなす、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項14】
前記切削部のそれぞれは、前記インサートポケットの上壁と前記切削インサートの上面との間に0.1mm〜0.2mmの隙間を有する、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項15】
前記工具本体は、一対のキー溝を有する軸孔が中央に形成されたディスク形状を有する

請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項16】
前記複数の切削部は、前記工具本体の周縁に沿って交互に配置された左勝手切削部と右勝手切削部を含む、
請求項8に記載の回転切削工具。
【請求項17】
前記回転切削工具は、被削材にスロットを形成するための側面ミーリングカッターである、
請求項8に記載の回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材のスロット加工に用いられる回転切削工具及びこのような回転切削工具に装着される切削インサートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミーリングカッターのような回転切削工具は、回転しながら被削材を切削する。このような回転切削工具の例として、平面ミーリングカッターまたは被削材にスロットを形成できる側面ミーリングカッターがある。側面ミーリングカッターは、被削材に長くて深いスロットを形成するのに主に用いられる。
【0003】
従来技術の側面ミーリングカッターは、例えば図1に示すように、ディスク形状の工具本体10を有する。工具本体10は、切削インサート12を収容するように形成された複数のインサートポケット11を有する。インサートポケット11は、工具本体10の周縁に沿って配列される。切削インサート12は、インサートポケット11のそれぞれにクランピングスクリュー13を用いて装着される。
【0004】
このような側面ミーリングカッターのような回転切削工具の一例として、国際出願公開公報第WO2005/053888A1号は回転スロットミーリングカッターを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の側面ミーリングカッターにおいて、工具本体のインサートポケットと切削インサートのそれぞれには、相補的な形状の互いにかみ合わされ得る固定要素が設けられる。例えば、工具本体のインサートポケットには突起部が設けられ、切削インサートにはインサートポケットの突起部に対応するリセス部が設けられる。また、インサートポケットと切削インサートにはクランピングスクリューが結合される1つの穴が形成されている。従って、切削インサートは、インサートポケットに前記リセス部と突起部間のかみ合いを通じて嵌められ、クランピングスクリューによってインサートポケットにクランピングされる。
【0006】
側面ミーリングカッターの工具本体と切削インサートは、比較的薄い厚さを有する。薄い工具本体のインサートポケットと薄い切削インサートに前記固定要素とクランピングスクリューのための前記穴が形成されているので、工具本体と切削インサートは構造的に弱くならざるを得ず、よって、被削材の切削加工時に損傷または破損し得る。また、前記固定要素と前記穴により、工具本体のインサートポケットと切削インサートは複雑な形状を有することになるが、これにより工具本体と切削インサートを製造し難い。
【0007】
また、従来技術の側面ミーリングカッターによれば、切削インサートは、工具本体の軸方向において前記穴に締結されるクランピングスクリューによってインサートポケットにクランピングされる。従って、複数の側面ミーリングカッターを一つの軸に配置してギャングカッターとして用いる場合、隣接した同一の大きさの側面ミーリングカッターによってクランピングスクリューを締めたり緩めたりするのが難しい。従って、切削刃が摩耗した切削インサートを交換するためには、ギャングカッターが分解されなければならない。
【0008】
本発明は、前述した従来技術の欠陥を解決するためのものであって、切削インサートが切削インサートを通じてインサートポケットに結合されるクランピングスクリューを用いずにもインサートポケットに安定的に装着され得、切削インサートが工具本体の半径方向において容易に交換され得る回転切削工具を提供する。本発明は、このような回転切削工具に装着される切削インサートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、回転切削工具の工具本体に設けられるインサートポケットに交換可能に装着されて前記工具本体に設けられる弾性加圧部によって加圧される切削インサートを提供する。例示的な実施形態において、切削インサートは、上面と、下面と、前記上面と前記下面との間で延びる第1ないし第4側面とを含む。前記第1側面と前記第3側面が対向し、前記第2側面と前記第4側面が対向する。前記上面と前記下面のそれぞれは、前記弾性加圧部に加圧される傾斜面を備える。前記傾斜面は、前記弾性加圧部の加圧によって前記第1側面、前記第2側面及び前記下面が前記インサートポケットに接触するように前記切削インサートの横断面に対して傾斜する。
【0010】
一実施形態において、前記第2側面をXYZ−直交座標系のYZ−平面上に位置させ、前記第2側面の4つの頂点のうち前記第1側面及び前記下面と出会う頂点を前記XYZ−直交座標系の原点に位置させる時、前記傾斜面は前記XYZ−直交座標系のX−軸、Y−軸及びZ−軸上の3つの点によって定義される平面内に位置する。前記3つの点のそれぞれは、P(x、0、0)、Q(0、y、0)、R(0、0、z)の座標を有し、x、y、zは正の値を有する。
【0011】
一実施形態において、前記上面は、前記第2側面及び前記第4側面の中央を通る中心軸と交差する方向において対称的に対向する第1突出部と第2突出部を含む。前記下面は、前記中心軸と交差する方向において対称的に対向する第3突出部と第4突出部を含む。前記第1ないし第4突出部のそれぞれは、突出部表面と、前記突出部表面に傾斜して連結される接触側面を有する。前記傾斜面は、前記切削インサートが前記インサートポケットに装着される時に前記第1突出部と前記第2突出部のうち前記工具本体の半径内側方向に位置する前記第1突出部の前記接触側面に形成される。
【0012】
一実施形態において、前記切削インサートは、前記切削インサートが前記中心軸を基準に回転される回転対称形状を有する。
【0013】
一実施形態において、前記切削インサートは、前記上面と前記第1側面との間、前記上面と前記第3側面との間、前記下面と前記第1側面との間及び前記下面と前記第3側面との間の縁のそれぞれに形成される切削刃を備える。
【0014】
一実施形態において、前記切削インサートの第1側面または前記第3側面を側方から見ると、前記上面の前記切削刃は前記第4側面から前記第2側面に向かって下方に傾斜し、前記下面の前記切削刃は前記第4側面から前記第2側面に向かって上方に傾斜する。
【0015】
一実施形態において、前記突出部表面は、前記第2側面と鋭角をなす第1突出部表面を含む。
【0016】
一実施形態において、前記第1側面と前記第3側面のそれぞれは、前記第2側面と鈍角をなす。
【0017】
本発明のもう一つの側面は、複数の切削部を備える工具本体を有する回転切削工具を提供する。回転切削工具の例示的な実施形態において、各切削部は、前述した切削インサートと、前記切削インサートが装着されるインサートポケットと、前記インサートポケットに隣接する弾性加圧部とを含む。前記工具本体は回転軸方向において対向する一対の円形面と、前記一対の円形面の間で延びる周面とを含む。前記インサートポケットは、突出部を備える上壁と、前記上壁から離隔されて前記上壁と対向する底壁と、前記上壁と前記底壁との間に位置する第1及び第2支持壁とを含む。前記上壁は、前記弾性加圧部により撓みが可能である。前記第1支持壁は前記工具本体の半径外側方向に向かい、前記第2支持壁は前記工具本体の軸方向に向かう。前記上壁の前記突出部は、前記切削インサートが前記インサートポケットに装着される時に前記第1側面、前記第2側面及び前記下面が前記第1支持壁、前記第2支持壁及び前記底壁にそれぞれ接触するように、前記切削インサートの前記傾斜面を加圧する内向傾斜面を含む。
【0018】
一実施形態において、前記弾性加圧部の下部が前記上壁を形成する。前記弾性加圧部は、前記工具本体の前記周面から前記工具本体の内側へ延びるネジ穴と、前記工具本体の周面で前記ネジ穴の入口から前記工具本体の内側に延びて前記ネジ穴に対して傾斜するスロットと、前記スロットを拡張するように前記ネジ穴に結合される調節ネジとを備える。
【0019】
一実施形態において、前記弾性加圧部は、前記工具本体の前記周面から前記工具本体の内側へ延びるくさび穴と、前記工具本体の周面で前記くさび穴の入口から前記工具本体の内側に延びて前記くさび穴に対して傾斜するスロットと、前記くさび穴に挿入されるくさびブロックと、前記くさびブロックに嵌められて前記スロットを拡張するように前記くさび穴に結合される調節ネジとを備える。
【0020】
一実施形態において、前記工具本体は、前記インサートポケットから前記工具本体の内側へ延びるスリットを備え、前記スリットは前記スロットに対して傾斜している。
【0021】
一実施形態において、前記底壁と前記第2支持壁は、前記インサートポケット内で鋭角をなす。
【0022】
一実施形態において、前記第1支持壁と前記第2支持壁は、前記インサートポケット内で鈍角をなす。
【0023】
一実施形態において、前記切削部のそれぞれは、前記インサートポケットの上壁と前記切削インサートの上面との間に0.1mm〜0.2mmの隙間を有する。
【0024】
一実施形態において、前記工具本体は一対のキー溝を有する軸孔が中央に形成されたディスク形状を有する。
【0025】
一実施形態において、前記複数の切削部は、前記工具本体の周縁に沿って交互に配置された左勝手切削部と右勝手切削部を含む。
【0026】
一実施形態において、前記回転切削工具は、被削材にスロットを形成するための側面ミーリングカッターである。
【発明の効果】
【0027】
実施形態によれば、切削インサートと工具本体のインサートポケットは、切削インサートをインサートポケットにクランピングするためのクランピングスクリュー用の穴を備えない。従って、工具本体と切削インサートは強い構造を有し、被削材の切削加工時に損傷したり破損しない。また、工具本体のインサートポケットと切削インサートは単純な形状を有するので、インサートポケットと切削インサートを製造するのが容易である。
【0028】
切削インサートがインサートポケットに装着される時に、切削インサートはインサートポケットの上壁によって加圧される。切削インサートは、下面と2つの側面がこれらにそれぞれ対応するインサートポケットの底壁と両支持壁に同時に接触するようにインサートポケットの上壁によって加圧される。切削インサートがインサートポケットの上壁、底壁及び両支持壁に接触してインサートポケットによって支持されるので、切削インサートは工具本体のインサートポケットに安定的に装着される。
【0029】
切削インサートは、工具本体の半径方向においてインサートポケットに装着されたり装着解除される。従って、複数の回転切削工具が組合わせられてギャングカッターとして用いられる場合、ギャングカッターを分解せずにも切削インサートが工具本体から容易に装着解除され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術の側面ミーリングカッターを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による回転切削工具を示す斜視図である。
図3図2に示す回転切削工具のインサートポケットを示す斜視図である。
図4】他の方向から見た図3のインサートポケットを示し、インサートポケットの上壁を示す。
図5】本発明の一実施形態による回転切削工具の一部を示す正面図であって、切削インサートとこのような切削インサートが装着される工具本体のインサートポケットを示す。
図6】本発明の他の実施形態による回転切削工具を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態による切削インサートを示す斜視図である。
図8】他の方向から見た図7の切削インサートを示す斜視図である。
図9図7に示す切削インサートの側面図である。
図10図7に示す切削インサートの平面図である。
図11図7に示す切削インサートの傾斜面をXYZ−直交座標系を用いて示す。
図12】本発明のもう1つの実施形態による切削インサートを示す斜視図である。
図13図12に示す切削インサートの傾斜面をXYZ−直交座標系を用いて示す。
図14】本発明の一実施形態による回転切削工具の一部を示す斜視図であって、工具本体のインサートポケットとインサートポケットに装着される切削インサートを示す。
図15】本発明の一実施形態による回転切削工具の一部を示す側面図であって、工具本体のインサートポケットとインサートポケットに収容されている切削インサートを示す。
図16】本発明の一実施形態による回転切削工具の一部を示す斜視図であって、切削インサートをインサートポケットに加圧する弾性加圧部の作用の一例を示す。
図17】切削インサートをインサートポケットに装着する時にインサートポケットの上壁の突起部と接触する切削インサートの傾斜面を示す。
図18】本発明の一実施形態による回転切削工具が採用されるギャングカッターの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照して回転切削工具とこのような回転切削工具に装着される切削インサートの実施形態を説明する。添付の図面において、同一または対応する構成要素に対しては同一の参照符号が付与されている。
【0032】
図2を参照して一実施形態による回転切削工具を説明する。回転切削工具100は、回転方向RDが定義される回転軸RAを有する。回転軸RA上において、矢印FADは回転切削工具100の前方軸方向を指し、矢印RADは回転切削工具100の後方軸方向を指す。また、図2において、矢印RODは回転切削工具100の半径外側方向を指し、矢印RIDは回転切削工具100の半径内側方向を指す。回転切削工具100の半径内側方向RIDは、回転切削工具100の中心Cに向かう方向を指し、回転切削工具100の半径外側方向RODは、半径内側方向RIDの反対方向を指す。
【0033】
図2に示すように、回転切削工具100は、切削インサート140が装着される工具本体110を含む。工具本体110は、ディスク形状を有する。このような工具本体110は、回転軸RA方向に対向する一対の円形面110CSと、一対の円形面110CSの間で延びる周面110PSを有する。工具本体110は比較的薄い厚さTを有するので、回転しながら被削材を切削し、工具本体110の厚さTに相当する幅を有するスロットを形成することができる。即ち、一実施形態による回転切削工具100は、被削材にスロットを形成する側面ミーリングカッター(side milling cutter)として使用できる。
【0034】
工具本体110は、中央にあいた軸孔111を有する。回転切削工具100を工作機械に装着する時、工具本体110の軸孔111には工作機械の軸、例えばミーリング機械のスピンドル(spindle)やアーバー(arbor)が嵌められる。また、工具本体110は、軸孔111の周りに形成された一対のキー溝(key way)112を有する。従って、回転切削工具100を工作機械に装着する時、一対のキー溝112にキー(key)を嵌め込むことにより工作機械の軸と工具本体110の相対的回転スリップを防止できる。一実施形態においては、一対のキー溝112が回転切削工具100の中心Cを基準として120°の狭角αを有するように軸孔111に位置するので、それぞれのキー溝112に接線キー(tangential key)を嵌め込むことができる。他の実施形態として、一対のキー溝112を回転切削工具100の中心Cを基準として90°の挟角を有するように軸孔111に位置させてケネディキー(kennedy key)をキー溝112に嵌め込むこともできる。
【0035】
工具本体110は、一対の円形面110CSのそれぞれに少なくとも1つの段差面113を備える。従って、工具本体110の半径内側方向RIDにおいて一対の円形面110CSの間の厚さTが段階的に減少する。この実施形態において、段差面113は、工具本体110を前方または後方から見るとリング状を有するが、段差面113の形状はこれに限定されはしない。工具本体110に段差面113を形成することにより工具本体110を軽量化することができる。また、工具本体110の周縁部110CPが相対的に厚い厚さを有するので、被削材の切削加工時に回転する工具本体110の振動の発生を減らすことができる。
【0036】
工具本体110は、周面110PSを含む周縁部110CPに形成される複数のリセス114を有する。リセス114は、工具本体110の半径内側方向RIDにくぼむように形成される。リセス114を通じて切削インサート140を工具本体110に容易に装着したり装着解除することができ、また、被削材の切削加工時に発生するチップを円滑に排出させることができる。
【0037】
工具本体110は、被削材を切削するための複数の切削部120を有する。複数の切削部120のそれぞれは、工具本体110に形成されるインサートポケット130と、インサートポケット130に交換可能に装着される切削インサート140を含む。インサートポケット130は、リセス114に向かって少なくとも一部が開放される。1つのインサートポケット130とこれに対応する1つのリセス114が一対をなし、このような複数対のインサートポケット130とリセス114が工具本体110の周縁に沿って等間隔で配置される。
【0038】
一実施形態において、複数の切削部120は、工具本体110の周縁に沿って交互に配置される右勝手切削部120Rと左勝手切削部120Lを含む。図2において、右勝手切削部120Rは、前方軸方向FADにおいて開放されるインサートポケットを有し、左勝手切削部120Lは、後方軸方向RADにおいて開放されるインサートポケットを有する。従って、1つの両面使用が可能な切削インサートが右勝手切削部120Rのインサートポケットと左勝手切削部120Lのインサートポケットとに装着され得る。即ち、1つの両面使用が可能な切削インサートの全ての切削刃を被削材を切削するのに使用することができ、回転切削工具100に装着される切削インサートは効率よく用いられてその使用寿命が増大する。
【0039】
図3図5を参照して、一実施形態による回転切削工具の工具本体に設けられるインサートポケット130について説明する。インサートポケット130は、略直六面体形状を有する切削インサート140を収容するように構成される。インサートポケット130は、上壁131、底壁132、第1支持壁133及び第2支持壁134を備える。
【0040】
上壁131は、底壁132に向かって突出する突起部135を備える。底壁132は上壁131に対向し、切削インサート140は底壁132上に安着する。底壁132は、工具本体110の半径外側方向RODに延び、上壁131より長い。第1支持壁133は、上壁131と底壁132との間に位置し、工具本体110の半径外側方向RODに向かう。第2支持壁134は、上壁131と底壁132との間に位置し、工具本体110の回転軸RA方向に向かう。右勝手切削部120Rのインサートポケット130では、第2支持壁134は工具本体110の前方軸方向FADに向かい、左勝手切削部120Lのインサートポケット130では、第2支持壁134は工具本体110の後方軸方向RADに向かう。
【0041】
インサートポケット130にはエンドミル加工やドリル加工によって逃げ溝137A、137B、137C、137D、137Eが形成されている。逃げ溝137A、137B、137C、137D、137Eは切削インサート140の切削刃が損傷することを防止し、切削インサート140がインサートポケット130に正確に位置設定されるようにする。底壁132と円形面110CSとの間の逃げ溝137Aは、底壁132より低く位置する。他の実施形態において、切削インサート140がインサートポケット130から回転軸RA方向に突出しないこともある。このような実施形態では、円形面110CSと逃げ溝137Aとの間の境界部が底壁132より高くなり得る。このような実施形態では、このような境界部が、切削インサート140がインサートポケット130から回転軸RA方向(図3では前方軸方向FAD)へ離脱することを防止できる。
【0042】
インサートポケット130内で底壁132、第1支持壁133及び第2支持壁134は、固定された位置を有するが、上壁131は、インサートポケット130に嵌められた切削インサート140をクランピングできるようにインサートポケット130側へ可変される位置を有する。一実施形態において、上壁131は、第1支持壁133及び第2支持壁134から上側へ離隔されている。上壁131の下側には底壁132と第2支持壁134の上面134Tが位置する。上壁131の工具本体110の半径外側方向RODでの長さは、底壁132と第2支持壁134の上面134Tのそれぞれの工具本体110の半径外側方向RODでの長さより短い。従って、上壁131の下側には底壁132の内側一部と第2支持壁134の上面134Tの内側一部が位置する。即ち、上壁131の外側半径方向RODの端はインサートポケット130の外側半径方向RODの端より半径方向において内側に位置する。
【0043】
突起部135は、上壁131が下方に少し押されても切削インサート140を十分な力で押せるように上壁131の外側半径方向RODの端部で突出する。この実施形態では、突起部135は、上壁131の外側半径方向RODの端部で底壁132側に突出する。突起部135は、工具本体110の半径内側方向RIDにおいて底壁132に向かって傾斜した内向傾斜面136を備える。切削インサート140がインサートポケット130に装着される時、突起部135は、内向傾斜面136により切削インサート140に接触する。また、突起部135の接触によって押される切削インサート140は、インサートポケット130の内側、例えば底壁132、第1支持壁133及び第2支持壁134に向かって押される。即ち、切削インサート140がインサートポケット130に装着されれば、突起部135の内向傾斜面136が切削インサート140の上面に接触し、切削インサート140の下面を底壁132に密着させ、切削インサート140の2つの側面を第1支持壁133及び第2支持壁134にそれぞれ密着させる。このように、上面が加圧される切削インサート140は、上壁131、底壁132、第1支持壁133及び第2支持壁134に接触してインサートポケット130により支持される。
【0044】
工具本体110において、インサートポケット130の上壁131の上方にある上部は、上壁131がインサートポケット130の底壁132に向かって弾性的に押されるように形成されている。以下、前記上部は弾性加圧部115で参照される。一実施形態において、弾性加圧部115は工具本体110に形成されるネジ穴116及びスロット117と、ネジ穴116に結合される調節ネジ118を含む。
【0045】
ネジ穴116は、工具本体110のリセス114内の周面110PSで開放されている。ネジ穴116は、インサートポケット130の底壁132と略平行に工具本体110の内側へ延びる。スロット117は、リセス114内の周面110PSでネジ穴116の入口から工具本体110の内側へ延びる。スロット117は、工具本体110を貫通して形成されている。スロット117は、ネジ穴116に対して傾斜している(図5参照)。スロット117は、工具本体110の内側に位置する端に略楕円形で工具本体110を貫通してあいたスロット孔117Hを有する。一実施形態において、ネジ穴116とスロット117は、工具本体110の段差面113が形成されていない周縁部110CPに位置する。
【0046】
図5に示すように、工具本体110の外側に開放されたネジ穴116に調節ネジ118を結合して締めれば、調節ネジ118の本体部118Bより大きい直径を有するヘッド部118Hによりスロット117が拡張される。従って、スロット117の下にある弾性加圧部115が下方に押されることになり、スロット孔117Hを基準として弾性加圧部115が撓む。一実施形態においては、工具本体110には、インサートポケット130から工具本体110の内側へ延びるスリット119が形成され、スリット119により弾性加圧部115は調節ネジ118の締めによってさらに容易に押され得る。一実施形態において、スリット119は、概ね工具本体110の半径内側方向RIDに延び、スロット117に対して傾斜している。スリット119は、工具本体110を貫通して形成される。スリット119は、工具本体110の内側に位置する端に略円形で工具本体110を貫通してあいたスリット孔119Hを有する。一実施形態において、スリット孔119Hは、スロット孔117Hより小さい大きさを有し、スロット孔117Hよりも工具本体110の周面110PSにより一層近く位置する。
【0047】
この実施形態は、弾性加圧部115を押す手段としてネジ穴116にネジ結合される調節ネジ118を採用するが、前記手段が調節ネジに限定されはしない。図6に示す、もう1つの実施形態による回転切削工具200は、前記手段として、くさび210を備える。くさび210は、工具本体110に形成されるくさび穴213に除去可能に嵌められる。くさび210は、くさびブロック211と調節ネジ212を備える。くさびブロック211はくさび穴213に挿入され、調節ネジ212はくさびブロック211を通じてくさび穴213に結合される。調節ネジ212は、調節ネジ212がくさびブロック211に嵌められる時にくさびブロック211にかみ合うヘッド部212Hと、ヘッド部212Hから延びてくさびブロック211を貫通してくさび穴213にネジ結合されるネジ部(図示せず)を有する。調節ネジ212のヘッド部212Hには、六角レンチが挿入される6角の穴が形成される。くさびブロック211は、テーパー形状を有し、くさびブロック211がくさび穴213に押される時くさび穴213を拡張する部分を備える。調節ネジ212をくさびブロック211に嵌めてくさび穴213にネジ結合されるように締めれば、調節ネジ212のヘッド部212Hによりくさびブロック211がくさび穴213内に押し込まれるようになる。また、くさび穴213を拡張するくさびブロック211の前記部分によりスロット117が拡張され、スロット117の下側の弾性加圧部115が下方に押されるようになる。くさび穴213は、ネジ穴116と同様に、工具本体110の半径内側方向RIDに調節ネジ212のネジ部がネジ結合されるネジ部と、工具本体110の半径外側方向RODにくさびブロック211を収容する収容部を備える。一実施形態におけるスロット117は、調節ネジ118のヘッド部118Hにより拡張されるが、もう1つの実施形態におけるスロット117は、調節ネジ212のヘッド部212Hにより工具本体110の内側へ押し込まれるくさびブロック211により拡張される。
【0048】
このように、回転切削工具100、200は、弾性加圧部115を押す手段、即ち、スロット117を拡張する手段として、スクリュークランプタイプ(screw clamp type)またはウェッジクランプタイプ(wedge clamp type)を採用する。
【0049】
図7図13を参照して前述した回転切削工具100、200に装着される切削インサートの一実施形態について説明する。図7図11に示すように、一実施形態による切削インサート140は、上面141、下面142、及び上面141と下面142との間で延びる複数の側面を含む。切削インサート140の上面141と下面142は対向する。上面141と下面142には、突出部150がそれぞれ備えられる。一実施形態において、切削インサート140は、略直六面体形状を有する。従って、切削インサート140は4つの側面、即ち、第1ないし第4側面143、144、145、146を有する。第1側面143と第3側面145が対向し、第2側面144と第4側面146が対向する。第1側面143と第3側面145は第2側面144と第4側面146より小さい面積を有する。
【0050】
切削インサート140は、両面を使用できるインデクサブル切削インサートである。切削インサート140は、上面141と第1側面143との間及び上面141と第3側面145との間の縁と、下面142と第1側面143との間及び下面142と第3側面145のと間の縁に形成される複数の切削刃147U、147Lを有する。即ち、上面141には2つの切削刃147Uが設けられて、下面142には2つの切削刃147Lが設けられて、切削インサート140は総4つの切削刃147L、147Uを有する。4つの切削刃147L、147Uがいずれも切削加工に用いられるように、切削インサート140は、第2側面144の中心と第4側面146の中心とを通る中心軸CAを基準として切削インサート140を180°回転させると回転対称になる回転対称形状を有する。また、切削インサート140の容易な製造のために、切削インサート140は第2側面144及び第4側面146の中央を貫通するボア148を有する。
【0051】
切削インサート140は、上面141と下面142のそれぞれに突出部150を備える。切削インサート140が工具本体110のインサートポケット130に装着される時、上面141の突出部150はインサートポケット130の上壁131の突起部135と接触し、下面142の突出部150はインサートポケット130の底壁132に接触する。また、切削インサート140の側面143、144、145、146のうち、第1側面143はインサートポケット130の第1支持壁133に接触し、第2側面144はインサートポケット130の第2支持壁134に接触する。切削インサート140が回転対称形状を有するので、切削インサート140の第1側面143と第3側面145は、これらのうちどれがインサートポケット130の第1支持壁133と接触するかによって交互に参照され得る。即ち、切削インサート140がインサートポケット130に装着される時にインサートポケット130の第1支持壁133に接触する切削インサート140の側面が第1側面143となり、反対の切削インサート140の側面が第3側面145となる。
【0052】
上面141と下面142にそれぞれ備えられる突出部150は、切削インサート140の中心軸CAと交差する方向において互いに対称的に対向する一対の突出部を含む。以下、上面141に位置する一対の突出部を第1突出部151A及び第2突出部151Bとし、下面142に位置する一対の突出部を第3突出部151C及び第4突出部151Dとする。
【0053】
第1及び第2突出部151A、151Bのそれぞれは、突出部表面152と、突出部表面152と上面141との間で延びる複数の側面を有する。また、第3及び第4突出部151C、151Dのそれぞれは、突出部表面152と、突出部表面152と下面142との間で延びる複数の側面を有する。このような第1ないし第4突出部151A、151B、151C、151Dは、複数の側面のうち、切削インサート140をインサートポケット130に装着する時に接触がなされる接触側面155を備える。第1突出部151Aの接触側面155と第2突出部151Bの接触側面155は対向する。第3突出部151Cの接触側面155と第4突出部151Dの接触側面155は対向する。
【0054】
突出部表面152は、第1ないし第4突出部151A、151B、151C、151Dの最外側表面である。上面141における突出部表面152は第1及び第2突出部151A、151Bの最上側表面であり、下面142における突出部表面152は第3及び第4突出部151C、151Dの最下側表面である。突出部表面152は、中心軸CA方向に延びる第1突出部表面153と第2突出部表面154を含む。第1突出部表面153は切削インサート140の第4側面146の側に位置し、第2突出部表面154は切削インサート140の第2側面144の側に位置する。
【0055】
切削インサート140の中心軸CAを通る仮想の横断面CS(図5参照)を基準として、上面141に形成される第1突出部表面153は第4側面146から第2側面144に向かって上方に傾斜する。ここで、横断面CSは、切削インサート140を上下に両分する面を意味する。第2突出部表面154は第1突出部表面153の第2側面144に向かう端部から延びる。一実施形態においては、上面141に形成される第2突出部表面154は横断面CSに対して略平行に延びる。
【0056】
中心軸CA方向における第1突出部表面153の長さL1と中心軸CA方向における第2突出部表面154の長さL2は、インサートポケット130の上壁131に設けられた突起部135の幅W(図3参照)により決められる。第1突出部表面153の長さL1は、突起部135の幅Wと同じであるか、或いは突起部135の幅より長くなり得る。第1突出部表面153の長さL1は、第2突出部表面154の長さL2より長くなり得る。第1突出部表面153は、第4側面146から第2側面144に向かって次第に狭くなる。具体的には、図10に示すように、切削インサート140を上方から見る時、中心軸CAに隣接した第1突出部表面153の縁は第4側面146から第2側面144に向かって中心軸CAから次第に遠くなる。
【0057】
接触側面155はインサートポケット130の上壁131の突起部135と接触する傾斜面を含む。この実施形態において、接触側面155は、第1突出部表面153に連結される第1傾斜面156と、第2突出部表面154に連結される第2傾斜面157を含む。第1傾斜面156が上壁131の突起部135と接触し、弾性加圧部115により加圧される。切削インサート140がインサートポケット130に装着される時、切削インサート140の上面141に備えられる第1及び第2突出部151A、151Bのうち工具本体の半径内側方向RIDに位置する第1突出部151Aが、第1傾斜面156で上壁131の突起部135と接触するようになる。切削インサート140の上面141と下面142のそれぞれにおいて、第1傾斜面156は、切削インサート140の中心軸CA方向及び中心軸CAと交差する方向に傾く。第1傾斜面156がインサートポケット140内で弾性加圧部115により押される時、切削インサート140の第1側面143、第2側面144及び下面142がいずれもインサートポケット130側に押されてインサートポケット130に接触するように、第1傾斜面156が切削インサート140の横断面CAに対して傾いている。
【0058】
第1傾斜面156の傾きと関連して、図11を参照すると、切削インサート140の第2側面144をXYZ−直交座標系のYZ−平面上に位置させ、第2側面144の4つの頂点V1、V2、V3、V4のうち第1側面143及び下面142と出会う頂点V4をXYZ−直交座標系の原点に位置させる時、第1傾斜面156はXYZ−直交座標系のX−軸、Y−軸及びZ−軸上の3つの点P、Q、Rにより定義される平面DP1内に位置する。ここで、XYZ−直交座標系上での3つの点のそれぞれはP(x、0、0)、Q(0、y、0)、R(0、0、z)の座標を有し、x、y、zは正の値を有する。即ち、第1傾斜面156は、XYZ−直交座標系におけるXY−平面、YZ−平面及びXZ−平面のそれぞれに対して傾く。従って、第1傾斜面156はX−軸、Y−軸及びZ−軸のそれぞれに対して傾いた法線方向を有する。
【0059】
一実施形態において、第1ないし第4突出部151A、151B、151C、151Dの突出部表面152において、突出部150の側面と突出部表面152との間の縁159は面取りされており、切削インサート140をインサートポケット130に装着する時に発生するクランピング力や被削材の切削加工時に発生する切削力による応力が集中することを防止できる。
【0060】
上面141と下面142は、その全体または少なくとも突出部150を有する部分が、第4側面146から第2側面144に向かって切削インサート140の横断面CSに対して次第に遠くなるように傾斜し得る。もしくは、切削インサート140の上面141と下面142は、切削インサート140の横断面CSに対して平行であり得る。また、上面141と下面142は第1側面143または第3側面145と接する両側縁の内側に凹部149を有する。上面141と下面142が横断面CSに対して傾斜する場合、凹部149も横断面CSに対して傾斜する。また、切削インサート140において、上面141の各縁に位置する切削刃147Uと下面142の各縁に位置する切削刃147Lは、横断面CSに対して傾いている。具体的には、切削インサート140の第1側面143または第3側面145を側方から見ると、上面141と第1側面143との間または上面141と第3側面145との間の切削刃147Uは、第4側面146から第2側面144に向かって下方に傾斜し、下面142と第1側面143との間または下面142と第3側面145との間の切削刃147Lは、第4側面146から第2側面144に向かって上方に傾斜する。従って、被削材の切削加工時に、切削インサート140の主切削刃、即ち、上面141と第1側面143との間または上面141と第3側面145との間で工具本体110の半径外側方向RODに位置する切削刃147Lに切削力がななめに加えられるので、切削インサート140にはインサートポケット130の内側に向かうように力が加えられる。従って、切削インサート140がインサートポケット130により安定的に支持され得、切削力がインサートポケット130の底壁132等を通じて吸収され得、切削力により切削インサート140がインサートポケット130の底壁132から分離されることを防止できる。
【0061】
図9を参照すると、切削インサート140の第1側面143または第3側面145を側方から見ると、第1ないし第4突出部151A、151B、151C、151Dに設けられる突出部表面152の第1突出部表面153と第2側面144との間の内角βが鋭角を有する。また、図10を参照すると、切削インサート140を上方または下方から見る時、第1側面143と第2側面144との間及び第3側面145と第2側面144との間の内角γは鈍角を有する。このような切削インサート140の形状により、インサートポケット130への装着時に弾性加圧部115から加圧力(クランピング力)を受ける切削インサート140は、インサートポケット130の底壁132上に安定的に安着され、第1支持壁133と第2支持壁134へ容易に誘導される。
【0062】
切削インサート140が前述した内角β、γを有するように形成される場合、切削インサート140を収容するインサートポケット130もこのような切削インサート140の形状に対応する形状を有する。具体的には、切削インサート140の第1突出部表面153と第2側面144が鋭角をなすように形成される場合、インサートポケット130の底壁132と第2支持壁134は鋭角をなすように形成される。また、底壁132は下面142の第1突出部表面153に面接触するようにインサートポケット130内で傾斜し、突起部135の内向傾斜面136は切削インサート140の上面141の第1突出部表面153に面接触するようにインサートポケット130内で傾斜する。また、切削インサート140の第1側面143と第2側面144が鈍角をなすように形成される場合、インサートポケット130の第1支持壁133と第2支持壁134は鈍角をなすように形成される。
【0063】
一実施形態においては、上面141と下面142にそれぞれ一対の突出部(第1及び第2突出部、第3及び第4突出部)が設けられ、一対の突出部の向かい合う接触側面155に第1傾斜面156が形成される。しかし、本発明の切削インサートはこのような形状に限定されない。図12は、変形例による切削インサート240を示す。図12に示す切削インサート240は、前述した一対の突出部を備えず、その上面と下面に前述した第1傾斜面156と同じ機能を有する傾斜面256を備える。切削インサート240は、一実施形態による切削インサート140のように、上面241、下面242及び第1ないし第4側面243、244、245、246を備える。切削インサート240は、第2側面244の中央と第4側面246の中央を通る中心軸CAを基準として切削インサート240が180°回転対称になる回転対称形状を有する。切削インサート240は、上面241と第1側面243との間、上面241と第3側面245との間、下面242と第1側面243との間、及び下面242と第3側面245との間の縁に切削刃247U、247Lを備える。切削インサート240は、第2側面244及び第4側面246の中央を貫通するボア(図示せず)を有し得る。切削インサート240は、上面241と下面242のそれぞれの中間に陥没した傾斜面部258を備え、傾斜面部258は、上面241と下面242のそれぞれから中心軸CA方向に延びる。傾斜面部258は、切削インサート240の縦断面から見る時に略V字形状を有する。切削インサート240は、傾斜面部258内に中心軸CAと交差する方向(第1側面243と第3側面245の対向方向)に対向する一対の傾斜面256を備える。図13に示すように、切削インサート240の第2側面244がXYZ−直交座標系のYZ−平面上に位置し、第2側面244の4つの頂点V1、V2、V3、V4のうち第1側面243及び下面242と出会う頂点V4がXYZ−直交座標系の原点に位置する時、傾斜面256はXYZ−直交座標系のX−軸、Y−軸及びZ−軸上の3つの点P、Q、Rにより定義される平面DP2内に位置する。ここで、XYZ−直交座標系上での3つの点のそれぞれはP(x、0、0)、Q(0、y、0)、R(0、0、z)の座標を有し、x、y、zは正の値を有する。即ち、切削インサート240の傾斜面256は、一実施形態による切削インサート140の第1傾斜面156のように、XYZ−直交座標系におけるXY−平面、YZ−平面及びXZ−平面のそれぞれに対して傾く。従って、切削インサート240の傾斜面256は、X−軸、Y−軸及びZ−軸のそれぞれに対して傾いた法線方向を有する。
【0064】
図14図17は、一実施形態による回転切削工具において切削インサートとインサートポケットを有する切削部の一例を示す。切削インサート140が回転切削工具100の工具本体110に形成されたインサートポケット130に交換可能に装着される例を説明する。変形実施形態の切削インサート240もインサートポケット130に交換可能に装着される。一実施形態による切削インサート140のように、切削インサート240は傾斜面256を通じてインサートポケット130の突起部135の内向傾斜面136と接触し、3方向においてインサートポケット130内側へ加圧される。
【0065】
図14に示すように、インサートポケット130は、工具本体110において工具本体110の半径外側方向ROD及び軸方向のうち一方向(前方軸方向FADまたは後方軸方向RAD)に開放される。インサートポケット130には、工具本体110の周面110PS側から切削インサート140を嵌めて装着させることができ、工具本体110の周面110PSの外側に切削インサート140をインサートポケット130から取り出して装着解除させることができる。従って、図18に示すように、複数の回転切削工具100が組み合わせられてギャングカッター300として用いられる場合、ギャングカッター300を分解せずにも回転切削工具100から切削インサート140を容易に交換することができる。複数の回転切削工具100は隣接する回転切削工具の切削部がジグザグまたは交互に配列されるようにギャングカッター300の回転軸310に配置され得る。これにより、切削力はギャングカッター300に分散して加えられ得る。また、回転軸310に接線キーを用いることにより、複数の回転切削工具100が回転軸310に堅固に締結され得る。
【0066】
図15に示すように、回転切削工具100の切削部120は、切削インサート140とインサートポケット130との間に隙間Gを有する。従って、切削インサート140をインサートポケット130に嵌めるかまたは取り出す時、切削インサート140はインサートポケット130の一部にかからない。即ち、弾性加圧部115が下方に押される前、即ち、インサートポケット130の上壁131の突起部135が切削インサート140を加圧する前に、インサートポケット130内に切削インサート140を容易に挿入できるように、インサートポケット130の上壁131と切削インサート140の上面との間には隙間Gが存在する。一実施形態において、隙間Gは0.1mm〜0.2mmの範囲に設定される。隙間Gが0.1mm未満であれば、切削インサート140をインサートポケット130に挿入し難い。隙間Gが0.2mmを超えると、上壁131の突起部135が切削インサート140を堅固に押せるように弾性加圧部115は比較的大きい程度に押されなければならない。この場合、調節ネジ118をネジ穴116に締めてスロット117を拡張させるのに比較的大きな力が必要である。
【0067】
切削インサート140が前述した内角β、γを有する形状を有するので、インサートポケット130に収容された切削インサート140は、インサートポケット130の第1支持壁133と第2支持壁134に密着するように誘導される。切削インサート140がインサートポケット130内に収容されてインサートポケット130の内側に誘導される時、切削インサート140の下面142の第3及び第4突出部151C、151Dの第1突出部表面153は底壁132に接触し、第3及び第4突出部151C、151Dの第2突出部表面154は底壁132に接触せずに逃げ溝137B上に位置する。また、切削インサート140の第1側面143と第2側面144は、インサートポケット130の第1支持壁133と第2支持壁134にそれぞれ接触する。
【0068】
図16に示すように、切削インサート140がインサートポケット130に収容された後に調節ネジ118をネジ穴116に嵌めてドライバーのような工具20で締める。そうすれば、調節ネジ118が回転によって工具本体110の内側に移動して調節ネジ118のヘッド部118Hがスロット117の下の弾性加圧部115を下方へ押して撓むようにする。
【0069】
工具本体110に形成されたスロット117とスリット119によりインサートポケット130側へ押され得る弾性加圧部115は、調節ネジ118の締結力で生じた加圧力Fを受けて下方に押される。従って、インサートポケット130の上壁131(弾性加圧部115の下部または下面)に設けられた突起部135が切削インサート140の上面141の突出部150に接触するように押される。上壁131の突起部135は、一対の突出部150の間の溝部158、即ち、第1及び第2突出部151A、151Bの間へ押される。
【0070】
突出部150に向かって押された突起部135は、内向傾斜面136で切削インサート140と接触する。突起部135の内向傾斜面136は、切削インサート140で内向傾斜面136と向かい合う部分に接触する。即ち、図17に示すように、突起部135の内向傾斜面136は、第1及び第2突出部151A、151Bのうち工具本体110の半径内側方向RIDに位置する第1突出部151Aの第1傾斜面156に接触する。突起部135の内向傾斜面136は、第1傾斜面156の一部と接触でき、内向傾斜面136と第1傾斜面156間との接触面積は、内向傾斜面136の大きさによって変わり得る。
【0071】
突起部135の内向傾斜面136が第1傾斜面156に接触して第1傾斜面156が上面141に対して傾斜しているので、切削インサート140は3方向に加圧される。切削インサート140が加圧される前記3方向は、インサートポケット130の底壁132に向かう方向(接線方向)、インサートポケット130の第1支持壁133に向かう方向(半径方向)及びインサートポケット130の第2支持壁134に向かう方向(軸方向)を含む。切削インサート140がインサートポケット130の内側へ前記3方向に加圧されて4ヶ所でインサートポケット130に接触するので、切削インサート140はインサートポケット130に堅固に装着される。従って、切削インサート140を、インサートポケットに結合されるクランピングスクリューを用いてクランピングせずにも、切削インサート140は十分なクランピング力でインサートポケット130に装着され、被削材の切削加工時にインサートポケット130に対する相対的動きなしでインサートポケット130にクランピングされる。
【0072】
以上、本発明を前述した実施形態及び添付の図面に示す例を参照して説明したが、本発明がこれに限定されはしない。本発明の範囲を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であるということが当該分野の通常の知識を有する者にとって明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18