(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第1の平面に位置する磁極面がN極である複数の第1の磁石と、前記第1の平面に位置する磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、
前記第1の平面と平行な第2の平面に設けられた第1の配線と、
前記第1の平面と平行な第3の平面に設けられた第2の配線と、を備え、
前記磁石構造体は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第1の配列部分と、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第2の方向に交互に配列された第2の配列部分とを含み、
前記第1の配線は、前記第1の配列部分に含まれる前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第1の配線部分と、前記第1の配列部分に含まれる前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、
前記第2の配線は、前記第2の配列部分に含まれる前記第1の磁石を前記第1の方向に横断する第3の配線部分と、前記第2の配列部分に含まれる前記第2の磁石を前記第1の方向に横断する第4の配線部分とを含み、
前記第1の配線部分と前記第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、
前記第3の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
前記第1の配線は前記第2の平面においてミアンダ状に形成されており、前記第2の配線は前記第3の平面においてミアンダ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
第1の方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第1の平面に位置する磁極面がN極である複数の第1の磁石と、前記第1の平面に位置する磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、
前記第1の平面と平行な第2の平面に設けられた第1の配線と、
前記第1の平面と平行な第3の平面に設けられた第2の配線と、
前記磁石構造体を支持する支持基板と、を備え、
前記磁石構造体は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第1の配列部分と、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第2の方向に交互に配列された第2の配列部分とを含み、
前記第1の配線は、前記第1の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第2の方向に横断し、
前記第2の配線は、前記第2の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第1の方向に横断し、
前記支持基板の熱拡散率は、前記磁石構造体の熱拡散率よりも低いことを特徴とするアクチュエータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたアクチュエータは、1個の磁石に対して4個のコイルを割り当てていることから、小型化することが困難であるという問題がある。特に、駆動平面に対して垂直な厚さ方向におけるサイズを縮小することは困難であり、携帯型デバイスのように低背化が求められる用途には不向きである。
【0006】
低背化が可能なアクチュエータとしては、非特許文献1に記載されたリニアモータが知られている。しかしながら、非特許文献1に記載されたリニアモータは、1軸方向に往復運動するだけであり、2次元的な動作はできない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、2次元的な動作が可能な低背型のアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるアクチュエータは、第1の方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第1の平面に位置する磁極面がN極である複数の第1の磁石と、前記第1の平面に位置する磁極面がS極である複数の第2の磁石とを含む磁石構造体と、前記第1の平面と平行な第2の平面に設けられた第1の配線と、前記第1の平面と平行な第3の平面に設けられた第2の配線と、を備え、前記磁石構造体は、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第1の方向に交互に配列された第1の配列部分と、前記第1の磁石と前記第2の磁石が前記第2の方向に交互に配列された第2の配列部分とを含み、前記第1の配線は、前記第1の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第2の方向に横断し、前記第2の配線は、前記第2の配列部分に含まれる前記第1及び第2の磁石の少なくとも一部を前記第1の方向に横断することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1及び第2の配線に電流を流すことにより、2次元的な動作を実現することが可能となる。しかも、第1及び第2の配線は、磁石を横切る平面的な配線であることから、低背化を達成することも可能となる。
【0010】
本発明において、前記第1の配線は、前記第1の磁石を前記第2の方向に横断する第1の配線部分と、前記第2の磁石を前記第2の方向に横断する第2の配線部分とを含み、前記第2の配線は、前記第1の磁石を前記第1の方向に横断する第3の配線部分と、前記第2の磁石を前記第1の方向に横断する第4の配線部分とを含み、前記第1の配線部分と前記第2の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成され、前記第3の配線部分と前記第4の配線部分には、互いに逆方向の電流が流れるよう構成されていることが好ましい。これによれば、より大きな駆動力を得ることが可能となる。
【0011】
本発明において、前記複数の第1の磁石と前記複数の第2の磁石は、前記第1及び第2の方向にマトリクス状に配列されていることが好ましい。これによれば、第1の配列部分と第2の配列部分を共通化することができる。
【0012】
本発明において、前記第2の平面と前記第3の平面は互いに重なっていても構わない。これによれば、アクチュエータの平面サイズを小型化することが可能となる。或いは、前記第2の平面と前記第3の平面は同一平面であっても構わない。これによれば、単層の配線層を用いることができる。
【0013】
本発明において、前記第1の配線は前記第2の平面においてミアンダ状に形成されており、前記第2の配線は前記第3の平面においてミアンダ状に形成されていることが好ましい。これによれば、第1及び第2の配線がより多くの磁石を横断することができるため、大きな駆動力を得ることが可能となる。
【0014】
本発明によるアクチュエータは、前記第1の平面と平行な第4の平面に設けられた第3の配線をさらに備え、前記第3の配線は、平面視で前記第1の磁石の周囲の少なくとも一部を周回する第5の配線部分を含むことが好ましい。これによれば、第1〜第3の配線に電流を流すことにより、3次元的な動作を実現することが可能となる。
【0015】
この場合、前記第3の配線は、平面視で前記第2の磁石の周囲の少なくとも一部を周回する第6の配線部分をさらに含み、前記第5の配線部分と前記第6の配線部分には、互いに逆方向に周回する電流が流れるよう構成されていることが好ましい。これによれば、より大きな駆動力を得ることが可能となる。
【0016】
本発明において、前記第1及び第2の方向における前記第1及び第2の磁石の大きさは、1mm以下であることが好ましく、前記第1及び第2の方向と直交する第3の方向における前記磁石構造体の厚みは、1mm以下であることが好ましい。これによれば、非常に小型、且つ、低背型のアクチュエータを提供することが可能となる。
【0017】
本発明によるアクチュエータは、前記磁石構造体を支持する支持基板をさらに備え、前記支持基板の熱拡散率は、前記磁石構造体の熱拡散率よりも低いことが好ましい。これによれば、小型で薄い磁石構造体の作製が容易となる。
【0018】
本発明によるアクチュエータは、光学レンズと、前記第1及び第2の配線を支持する回路基板と、をさらに備え、前記光学レンズは、前記回路基板及び前記磁石構造体のいずれか一方に固定されていることが好ましい。これによれば、カメラの手ぶれ補正用のアクチュエータとして用いることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、2次元的な動作が可能な低背型のアクチュエータを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるアクチュエータ10Aの主要部の構成を示す略平面図である。また、
図2は、
図1に示すA−A線に沿った略断面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、x方向及びy方向にマトリクス状に配列された複数の第1及び第2の磁石21,22からなる磁石構造体20と、磁石構造体20に対してz方向に重なる第1の配線30及び第2の配線40とを備える。
【0024】
磁石構造体20は、ガラスなどからなる支持基板23上に設けられており、xy方向に延在する第1の平面S1に磁極面が位置している。尚、図面の見やすさを考慮して、
図1においては支持基板23が図示されていない。磁石構造体20を構成する磁石21,22のうち、第1の磁石21は第1の平面S1に位置する磁極面がN極であり、逆に、第2の磁石22は第1の平面S1に位置する磁極面がS極である。そして、これら第1の磁石21と第2の磁石22が市松模様にマトリクス配列されている。つまり、x方向に延在する各行は、第1の磁石21と第2の磁石がx方向に交互に配列された第1の配列部分Lxを構成し、y方向に延在する各列は、第1の磁石21と第2の磁石がy方向に交互に配列された第2の配列部分Lyを構成する。
【0025】
図2に示すように、本実施形態においては、隣接する第1の磁石21と第2の磁石22がスリットSLを介して分離しており、かかるスリットSLは支持基板23の表層に達している。本発明においてこのようなスリットSLを設けることは必須でないが、後述するように、磁石構造体20の製造工程においてこのようなスリットSLを形成することが有利である。尚、スリットSLを形成しない場合、支持基板23は必ずしも必要ではない。
【0026】
第1の配線30及び第2の配線40は、回路基板60上に積層されている。回路基板60の主面は、第1の平面S1と平行な第2の平面S2を構成しており、第1の配線30は回路基板60の主面上、つまり第2の平面S2に形成されている。第1の配線30は絶縁膜61によって覆われている。絶縁膜61の表面は、第1の平面S1と平行な第3の平面S3を構成しており、第2の配線40は絶縁膜61の表面上、つまり第3の平面S3に形成されている。第2の配線40は絶縁膜62によって覆われている。このように、第1の配線30と第2の配線40は、互いにz方向に重なるよう、回路基板60上に積層されている。
【0027】
図3は、第1の配線30を抜き出して示す平面図である。
図3においては、磁石構造体20との平面的な位置関係を明確にすべく、第1及び第2の磁石21,22の位置についても表示されている。この点は、後述する
図4〜
図6、
図10及び
図11においても同様である。
【0028】
図3に示すように、第1の配線30は、一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第1の配線30は、第1の磁石21をy方向に横断する第1の配線部分31と、第2の磁石22をy方向に横断する第2の配線部分32と、両者を接続するようx方向に延在する接続部分33とを含んでいる。
【0029】
かかる構成により、第1の配線30に電流を流すと、第1の配線部分31と第2の配線部分32には、互いに逆方向の電流が流れる。
図3に示す例では、第1の配線30の一端30aから他端30bに向かって電流を流すと、第1の配線部分31には下方向(−y方向)に電流が流れ、第2の配線部分32には上方向(+y方向)に電流が流れることになる。
【0030】
図4は、第2の配線40を抜き出して示す平面図である。
【0031】
図4に示すように、第2の配線40は、一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第2の配線40は、第1の磁石21をx方向に横断する第3の配線部分41と、第2の磁石22をx方向に横断する第4の配線部分42と、両者を接続するようy方向に延在する接続部分43とを含んでいる。
【0032】
かかる構成により、第2の配線40に電流を流すと、第3の配線部分41と第4の配線部分42には、互いに逆方向の電流が流れる。
図4に示す例では、第2の配線40の一端40aから他端40bに向かって電流を流すと、第3の配線部分41には右方向(+x方向)に電流が流れ、第4の配線部分42には左方向(−x方向)に電流が流れることになる。
【0033】
図5は、第1の配線30に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0034】
図5に示すように、第1の配線30に電流I1又はI2が流れると、磁石構造体20と第1の配線30との間にはx方向のローレンツ力F1又はF2が働く。
【0035】
具体的には、第1の配線30に電流I1が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が下方向(−y方向)であることから、第1の配線30には右方向(+x方向)のローレンツ力F1が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が上方向(+y方向)であることから、第1の配線30には右方向(+x方向)のローレンツ力F1が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第1の配線30には右方向(+x方向)のローレンツ力F1が作用することになる。
【0036】
逆に、第1の配線30に電流I2が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が上方向(+y方向)であることから、第1の配線30には左方向(−x方向)のローレンツ力F2が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が下方向(−y方向)であることから、第1の配線30には左方向(−x方向)のローレンツ力F2が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第1の配線30には左方向(−x方向)のローレンツ力F2が作用することになる。
【0037】
したがって、電流I1又はI2を流すことにより、磁石構造体20と第1の配線30とのx方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I1又はI2の大きさによって制御することができる。
【0038】
図6は、第2の配線40に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0039】
図6に示すように、第2の配線40に電流I3又はI4が流れると、磁石構造体20と第2の配線40との間にはy方向のローレンツ力F3又はF4が働く。
【0040】
具体的には、第2の配線40に電流I3が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が右方向(+x方向)であることから、第2の配線40には上方向(+y方向)のローレンツ力F3が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が左方向(−x方向)であることから、第2の配線40には上方向(+y方向)のローレンツ力F3が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第2の配線40には上方向(+y方向)のローレンツ力F3が作用することになる。
【0041】
逆に、第2の配線40に電流I4が流れた場合、第1の磁石21に対しては電流の方向が左方向(−x方向)であることから、第2の配線40には下方向(−y方向)のローレンツ力F4が作用する。一方、第2の磁石22に対しては電流の方向が右方向(+x方向)であることから、第2の配線40には下方向(−y方向)のローレンツ力F4が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第2の配線40には下方向(−y方向)のローレンツ力F4が作用することになる。
【0042】
したがって、電流I3又はI4を流すことにより、磁石構造体20と第2の配線40とのy方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I3又はI4の大きさによって制御することができる。
【0043】
そして、第1の配線30と第2の配線40は、いずれも回路基板60に形成されていることから、電流I1〜I4によって磁石構造体20と回路基板60の平面的な位置関係を変化させることができる。したがって、回路基板60を所定の筐体などに固定すれば、電流I1〜I4によって磁石構造体20を2次元的に駆動することができる。逆に、磁石構造体20を所定の筐体などに固定すれば、電流I1〜I4によって回路基板60を2次元的に駆動することができる。
【0044】
特に限定されるものではないが、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、スマートフォンに組み込まれるカメラの手ぶれ補正用のアクチュエータとして使用することができる。この場合、磁石構造体20及び回路基板60のいずれか一方をスマートフォンの筐体に固定し、他方をカメラの光学レンズに固定するとともに、スマートフォンに内蔵された加速度センサなどによって得られる手ぶれ信号を電流I1〜I4に変換すれば、手ぶれの方向及び大きさに応じて、これを相殺する方向に光学レンズを駆動することができる。
【0045】
図7は、磁石構造体20の製造方法を説明するための工程図である。
【0046】
まず、
図7(a)に示すように、ガラスなどからなる支持基板23にバルク状の磁石20aを接着する。特に限定されるものではないが、磁石20aとしては異方性焼結ネオジム磁石を用いることが好ましい。磁化容易軸は厚み方向(z方向)である。磁石20aの厚さは、本実施形態によるアクチュエータ10Aが組み込まれる機器によって制限される。例えば、スマートフォンに組み込まれるカメラの手ぶれ補正用に光学レンズを駆動する用途においては、非常に薄型であることが求められるため、必然的に薄い磁石20aを使用する必要がある。このような用途においては、磁石20aの厚みは1mm以下、例えば500μm程度に制限される。磁石20aの厚みが500μm程度である場合、支持基板23の厚みは700μm程度とすればよい。但し、磁石20aの表層部分は保磁力が低いため、異方性焼結ネオジム磁石を用いた場合は、その厚みを200μm未満とすることは困難であると考えられる。
【0047】
次に、
図7(b)に示すように、磁石20aにスリットSLを形成することによって、それぞれ第1及び第2の磁石21,22となる複数のブロック21a,22aに分割する。スリットSLの形成方法としては、ダイシング法やワイヤ放電加工法などを用いることができる。スリットSLの深さとしては、ブロック21aとブロック22aが完全に分離するよう、支持基板23の表層に達する深さとすることが好ましい。ブロック21a,22aのサイズについては特に限定されないが、反磁界の影響を低減することによってより強い磁力を得るためには、できる限り小さいことが好ましい。しかしながら、上述の通り、磁石20aの表層部分は保磁力が低いため、磁石20aをあまりにも細かく分割すると、逆に保磁力が低下してしまう。このような点を考慮すれば、ブロック21a,22aのサイズは磁石20aの厚みと同程度とすることが好ましい。つまり、アスペクト比を1程度とすることが好ましい。例えば、磁石20aの厚みが500μm程度である場合、x方向及びy方向のサイズについても500μm程度とすればよい。これにより、磁石20aは500μm角の立方体であるブロック21a,22aに分割される。
【0048】
次に、
図7(c)に示すように、複数のブロック21a,22aをz方向に着磁する。着磁は、パルス磁場印加によってブロック21a,22aが磁気飽和するまで行うことが好ましい。
【0049】
次に、
図7(d)に示すように、第2の磁石22となるブロック22aに対して選択的にレーザビーム24を照射することによって局所的に加熱し、当該ブロック22aの保磁力を低下させる。レーザビーム24により与えられる熱は、第1の磁石21となるブロック21aにもある程度伝導するが、平面方向についてはスリットSLで分離されているため熱の伝導は少ない。また、支持基板23の材料として、ガラスのように焼結磁石よりも熱拡散率の低い材料を用いることにより、支持基板23を介した熱伝導についても最小限に抑えることができる。これにより、ブロック21aの保磁力を維持しつつ、ブロック22aの保磁力を選択的に低下させることができる。
【0050】
その後自然冷却させると、
図7(e)に示すように、ブロック21aからの漏洩磁束がブロック22aを通過し、この漏洩磁束によってブロック22aが逆方向に磁化される。これにより交番着磁が達成され、
図7(f)に示すように第1及び第2の磁石21,22が交互に配列された磁石構造体20を得ることができる。
【0051】
そして、作製した磁石構造体20の第1の平面S1が回路基板60の第2及び第3の平面S2,S3と向かい合うよう、両者を平面方向に滑動自在に支持すれば、本実施形態によるアクチュエータ10Aが完成する。
【0052】
このように、本実施形態によるアクチュエータ10Aは、支持基板23に設けられた磁石構造体20と、回路基板60に設けられた平面的な第1及び第2の配線30,40によって構成されていることから、非常に薄型でありながら2次元的な動作が可能となる。
【0053】
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態によるアクチュエータ10Bの主要部の構成を示す略平面図である。また、
図9は、
図8に示すB−B線に沿った略断面図である。
【0054】
図8及び
図9に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Bは、磁石構造体20に対してz方向に重なる第3の配線50が追加されている点において、第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと相違する。その他の基本構成は第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0055】
第3の配線50は、回路基板60上に積層されている。具体的には、絶縁膜62の表面は第1の平面S1と平行な第4の平面S4を構成しており、第3の配線50は絶縁膜62の表面上、つまり第4の平面S4に形成されている。第3の配線50は絶縁膜63によって覆われている。このように、第1〜第3の配線30,40,50は、互いにz方向に重なるよう、回路基板60上に積層されている。
【0056】
図10は、第3の配線50を抜き出して示す平面図である。
【0057】
図10に示すように、第3の配線50は、一筆書き可能な1本の配線であり、ミアンダ状に蛇行する平面形状を有している。より具体的に説明すると、第3の配線50は、平面視で第1の磁石21の周囲の一部を周回する第5の配線部分51と、平面視で第2の磁石22の周囲の一部を周回する第6の配線部分52とを含んでいる。尚、第3の配線50はミアンダ状であることから、平面視で第1の磁石21や第2の磁石22の全周囲を周回することは困難であり、
図10に示すように、2辺に沿って1/2周するケースや、3辺に沿って3/4周するケースが多数となる。
【0058】
そして、第3の配線50に電流を流すと、第5の配線部分51と第6の配線部分52には、互いに逆方向に周回する電流が流れる。
図10に示す例では、第3の配線50の一端50aから他端50bに向かって電流を流すと、第5の配線部分51には右回り(時計回り)に電流が流れ、第6の配線部分52には左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。
【0059】
図11は、第3の配線50に流れる電流が磁石構造体20に与える影響を説明するための図である。
【0060】
第3の配線50に電流I5又はI6が流れると、第5の配線部分51と第6の配線部分52に囲まれた領域をz方向に貫通する磁束が発生する。
【0061】
具体的には、第3の配線50に電流I5が流れた場合、第5の配線部分51に囲まれた領域においては−z方向に磁束が発生し、第6の配線部分52に囲まれた領域においては+z方向に磁束が発生する。そして、第5の配線部分51は平面視で第1の磁石21を周回する位置に設けられていることから、第1の磁石21に吸引され、第3の配線50には上方向(+z方向)の吸引力F5が作用する。一方、第6の配線部分52は平面視で第2の磁石22を周回する位置に設けられていることから、第2の磁石22に吸引され、第3の配線50には上方向(+z方向)の吸引力F5が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第3の配線50には上方向(+z方向)の吸引力F5が作用することになる。
【0062】
逆に、第3の配線50に電流I6が流れた場合、第5の配線部分51に囲まれた領域においては+z方向に磁束が発生し、第6の配線部分52に囲まれた領域においては−z方向に磁束が発生する。そして、第5の配線部分51は平面視で第1の磁石21を周回する位置に設けられていることから、第1の磁石21からの磁束と反発し、第3の配線50には下方向(−z方向)の反発力F6が作用する。一方、第6の配線部分52は平面視で第2の磁石22を周回する位置に設けられていることから、第2の磁石22からの磁束と反発し、第3の配線50には下方向(−z方向)の反発力F6が作用する。つまり、第1及び第2の磁石21,22のいずれに対しても、第3の配線50には
下方向(
−z方向)の反発力F6が作用することになる。
【0063】
したがって、電流I5又はI6を流すことにより、磁石構造体20と第3の配線50とのz方向における相対的な位置関係を変化させることができる。変化の速度は、電流I5又はI6の大きさによって制御することができる。
【0064】
そして、第1〜第3の配線30〜50は、いずれも回路基板60に形成されていることから、電流I1〜I4によって磁石構造体20と回路基板60の平面的な位置関係を変化させることができるとともに、電流I5,I6によって磁石構造体20と回路基板60の距離を変化させることができる。したがって、回路基板60を所定の筐体などに固定すれば、電流I1〜I6によって磁石構造体20を3次元的に駆動することができる。逆に、磁石構造体20を所定の筐体などに固定すれば、電流I1〜I6によって回路基板60を3次元的に駆動することができる。
【0065】
特に限定されるものではないが、本実施形態によるアクチュエータ10Bは、スマートフォンに組み込まれるカメラの手ぶれ補正用兼オートフォーカス用のアクチュエータとして使用することができる。この場合、磁石構造体20及び回路基板60のいずれか一方をスマートフォンの筐体に固定し、他方をカメラの光学レンズに固定するとともに、手ぶれ信号を電流I1〜I4に変換し、フォーカス信号を電流I5,I6に変換すれば、手ぶれ補正を行うことができるとともに、ピントの位置に応じて光学レンズを駆動することができ、オートフォーカスを実現することが可能となる。
【0066】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態によるアクチュエータ10Cの主要部の構成を示す略斜視図である。
【0067】
図12に示すように、本実施形態によるアクチュエータ10Cは、磁石構造体20及び回路基板60の中央部が円形にくり抜かれた形状を有しており、磁石構造体20の中央部に光学レンズ70が嵌め込まれている。この場合、回路基板60は図示しない筐体に固定される。磁石構造体20と光学レンズ70は、接着剤などによって固定されていても構わないし、
図13に示すように、支持基板23を構成するガラスの一部をそのまま光学レンズ70として用いることにより、両者を一体化しても構わない。
【0068】
回路基板60には、第1の配線30及び第2の配線40が形成されているが、本実施形態においては、第1の配線30と第2の配線40が回路基板60上の異なる平面位置に形成され、これにより両者は同一平面を構成している。具体的には、回路基板60の領域60A,60Bにはミアンダ状の第1の配線30が形成され、回路基板60の領域60C,60Dにはミアンダ状の第2の配線40が形成されている。
【0069】
そして、回路基板60の領域60A,60Bと重なる磁石構造体20の領域20A,20Bにおいては、第1の磁石21と第2の磁石22がx方向に交互に配列されて第1の配列部分Lxを構成する。一方、回路基板60の領域60C,60Dと重なる磁石構造体20の領域20C,20Dにおいては、第1の磁石21と第2の磁石22がy方向に交互に配列されて第2の配列部分Lyを構成する。
【0070】
かかる構成により、本実施形態によるアクチュエータ10Cは、第1の実施形態によるアクチュエータ10Aと同様、第1及び第2の配線30,40に電流I1〜I4を流すことによって、回路基板60に対する光学レンズ70の2次元的な位置関係を制御することができる。つまり、カメラの手ぶれ補正用のアクチュエータとして機能する。
【0071】
このように、本発明においては、第1の配線30と第2の配線40がz方向に重なっている必要はなく、これらが同一平面に形成されていても構わない。この場合、回路基板60上に形成する配線層を単層構造とすることができるため、回路基板60の製造コストを低下させることが可能となる。
【0072】
尚、
図12に示した例では、磁石構造体20の中央部に光学レンズ70が嵌め込まれているが、これに代えて、回路基板60の中央部に光学レンズ70を嵌め込んでも構わない。この場合、磁石構造体20を図示しない筐体に固定すればよい。さらには、磁石構造体20の中央部と回路基板60の中央部の両方に光学レンズ70を嵌め込んでも構わない。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上記実施形態では、第1及び第2の磁石21,22の全てに第1及び第2の配線30,40が割り当てられているが、本発明においてこのような構成とすることは必須でない。したがって、第1の配線30については、第1の配列部分Lxを構成する第1の磁石21及び第2の磁石の少なくとも一部をy方向に横断すれば足り、第2の配線40については、第2の配列部分Lyを構成する第1の磁石21及び第2の磁石の少なくとも一部をx方向に横断すれば足りる。第3の配線50についても同様であり、第1及び第2の磁石21,22の一部を周回すれば足りる。