(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アミラーゼを含む漂白剤含有自動食器洗浄組成物であって、前記アミラーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を有する親アミラーゼの変異体であり、前記アミラーゼが、前記配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、前記アミラーゼが、以下の位置:51、246、及び/又は334のうちの1つ以上に突然変異を含み、202位がメチオニンを含むとともに、
前記突然変異が、A51T、T246(I/L/V)、S334T、及びこれらの混合物から選択され、
前記アミラーゼが、以下の突然変異M9L、R118K、G149A、G182T、D183*、G184*、G186A、N195F、T257I、Y295F、N299Y、R320K、M323T、A339S、E345R、及びR458Kを更に含む、漂白剤含有自動食器洗浄組成物。
メチルグリシン二酢酸、その塩及びこれらの誘導体、グルタミン酸−N,N−二酢酸、その塩及びこれらの誘導体、イミノジコハク酸、その塩及びこれらの誘導体、カルボキシメチルイヌリン、その塩及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される錯化剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、自動食器洗浄組成物を包含する。当該組成物は、漂白剤と改善されたアミラーゼとを含み、改善された安定性を示し、従来のアミラーゼを含む洗浄組成物に対して改善された洗浄をもたらす。また、本発明は、改善された環境プロファイルを有する自動食器洗浄プロセスを可能にする、短いサイクル及び/又は低温を伴う自動食器洗浄方法も包含する。短いサイクル及び/又は低温下におけるアミラーゼの性能は、従来の長い高温サイクル下よりも困難である。
【0008】
本発明の組成物のアミラーゼは、本明細書では、時に「本発明のアミラーゼ」と呼ばれる。配列番号1を有するアミラーゼは、本明細書では、時に「親アミラーゼ」と呼ばれる。
【0009】
2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「配列同一性」のパラメータによって説明される。
【0010】
本発明のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン5.0.0以上のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276〜277)のNeedleプログラムにおいて実行されるようなNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443〜453)を用いて決定される。使用されるパラメータは、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスであってよい。「最長同一性(longest identity)」と表示されるNeedleの出力(−nobriefオプションを用いて得られる)が同一率として用いられ、これは以下のように計算される。
【0011】
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ−アラインメント中のギャップの総数)
あるいは、使用されるパラメータは、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスであってもよい。「最長同一性」と表示されるNeedleの出力(−nobriefオプションを用いて得られる)が同一率として用いられ、これは以下のように計算される。
(同一デオキシリボヌクレオチド×100)/(アライメントの長さ−アライメント中のギャップの総数)
【0012】
本発明のアミラーゼ、すなわち、本発明のアミラーゼにおける突然変異したアミノ酸は、配列番号1(枯草菌(B. subtilis)のAA560に対応)のアミノ酸付番を参照することによって定義される。
【0013】
したがって、本発明の目的上、配列番号1に開示されるアミラーゼは、別のアミラーゼにおける対応するアミノ酸残基を決定するために使用される。別のアミラーゼのアミノ酸配列を配列番号1に開示されるアミラーゼに対してアラインメントし、そのアラインメントに基づいて、配列番号1に開示されるアミラーゼにおける任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号を、好ましくはバージョン5.0.0以上のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276〜277)のNeedleプログラムにおいて実行されるようなNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443〜453)を用いて決定する。使用されるパラメータは、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。
【0014】
別のアミラーゼにおける対応するアミノ酸残基の同定は、MUSCLE(multiple sequence comparison by log-expectation;バージョン3.5以上;Edgar,2004,Nucleic Acids Research 32:1792〜1797)、MAFFT(バージョン6.857以上;Katoh and Kuma,2002,Nucleic Acids Research 30:3059〜3066;Katoh et al.,2005,Nucleic Acids Research 33:511〜518;Katoh and Toh,2007,Bioinformatics 23:372〜374;Katoh et al.,2009,Methods in Molecular Biology 537:39〜64;Katoh and Toh,2010,Bioinformatics 26:1899〜1900)、及びClustalWを使用するEMBOSS EMMA(1.83以上;Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Research 22:4673〜4680)が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかのコンピュータプログラムを使用し、これらのそれぞれのデフォルトパラメータを使用して、複数のポリペプチド配列のアラインメントによって決定することができる。
【0015】
他のアミラーゼが配列番号1のアミラーゼから分岐しており、その結果従来の配列に基づく比較によってそれらの関係を検出できなとき(Lindahl and Elofsson,2000,J.Mol.Biol.295:613〜615)、他のペアワイズ配列比較アルゴリズムを使用してよい。データベースを検索するためにアミラーゼファミリーの確率的表現(プロファイル)を使用するサーチプログラムを使用すると、配列に基づく検索においてより高い感度を得ることができる。例えば、PSI BLASTプログラムは、反復データベースサーチプロセスを通してプロファイルを作成し、リモートホモログを検出することができる(Atschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389〜3402)。アミラーゼのファミリー又はスーパーファミリーが、タンパク質構造データベースにおいて1つ以上の表現を有する場合、より高い感度を得ることができる。GenTHREADER(Jones,1999,J.Mol.Biol.287:797〜815;McGuffin and Jones,2003,Bioinformatics 19:874〜881)などのプログラムは、クエリー配列の構造上の折り畳みを予測するニューラルネットワークへのインプットとして、様々な源(PSI BLAST、二次構造予測、構造的アラインメントプロファイル、及び溶媒和電位)からの情報を利用する。同様に、Gough et al.,2000,J.Mol.Biol.313:903〜919の方法を使用して、未知の構造の配列をSCOPデータベースに存在するスーパーファミリーモデルに対してアラインメントすることができる。次に、これらアラインメントを使用してアミラーゼのホモロジーモデルを作成することができ、その目的のために開発された様々なツールを使用して、このようなモデルを精度について評価することができる。
【0016】
既知の構造のタンパク質については、構造的アラインメントを検索及び作成するためにいくつかのツール及びリソースが利用可能である。例えば、タンパク質のSCOPスーパーファミリーは、構造的にアラインメントされており、これらアラインメントはアクセス可能かつダウンロード可能である。ディスタンスアラインメントマトリクス(distance alignment matrix)(Holm and Sander,1998,Proteins 33:88〜96)又はコンビナトリアルエクステンション(combinatorial extension)(Shindyalov and Bourne,1998,Protein Engineering 11:739〜747)などの様々なアルゴリズムを使用して2つ以上のタンパク質構造をアラインメントすることができ、これらアルゴリズムの実行は、更に、可能性のある構造ホモログを見つけるために対象構造を構造データベースにクエリーするために利用することもできる(例えば、Holm and Park,2000,Bioinformatics 16:566〜567)。
【0017】
本発明のアミラーゼ変異体の説明においては、参照を容易にするために下記命名法を適応する。一般に認められているIUPACの1文字又は3文字アミノ酸略記を用いる。
【0018】
置換アミノ酸置換については、以下の命名法:オリジナルのアミノ酸、位置、置換されるアミノ酸を使用する。したがって、226位におけるスレオニンのアラニンによる置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と表記される。複数の突然変異は、足し算マーク(「+」)によって区切られ、例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」又は「G205R+S411F」は、それぞれ205位のグリシン(G)がアルギニン(R)で、411位のセリン(S)がフェニルアラニン(F)で置換されていることを表す。
【0019】
欠失アミノ酸欠失については、以下の命名法:オリジナルのアミノ酸、位置、
*を使用する。したがって、195位におけるグリシンの欠失は、「Gly195
*」又は「G195
*」と表記される。複数の欠失は、足し算マーク(「+」)によって区切られ、例えば、「Gly195
*+Ser411
*」又は「G195
*+S411
*」となる。
【0020】
挿入アミノ酸挿入については、以下の命名法:オリジナルのアミノ酸、位置、オリジナルのアミノ酸、挿入されたアミノ酸を使用する。したがって、195位におけるグリシンの後へのリジンの挿入は、「Gly195GlyLys」又は「G195GK」と表記される。複数のアミノ酸の挿入は、[オリジナルのアミノ酸、位置、オリジナルのアミノ酸、挿入されたアミノ酸#1、挿入されたアミノ酸2#;等]と表記される。例えば、195位におけるグリシンの後へのリジン及びアラニンの挿入は、「Gly195GlyLysAla」又は「G195GKA」と表記される。
【0021】
このような場合、挿入されたアミノ酸残基は、挿入されたアミノ酸残基の前のアミノ酸残基の位置番号に小文字を付加することによって付番される。したがって、上記例では、配列は以下のようになる:
【0024】
複数の変更を含む変異体は、足し算マーク(「+」)によって区切られ、例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」又は「R170Y+G195E」は、それぞれ、170位のアルギニンがチロシンで、195位のグリシンがグルタミン酸で置換されていることを表す。
【0025】
様々な変更。ある位置に様々な変更を導入することができる場合、様々な変更はカンマによって区切られ、例えば、「Arg170Tyr,Glu」は、170位のアルギニンがチロシン又はグルタミン酸で置換されることを表す。したがって、「Tyr167Gly,Ala+Arg170Gly,Ala」は、以下の変異体を表す:
「Tyr167Gly+Arg170Gly」、「Tyr167Gly+Arg170Ala」、「Tyr167Ala+Arg170Gly」、及び「Tyr167Ala+Arg170Ala」。
【0026】
用語「突然変異」は、本発明のアミラーゼに関して、参照アミノ酸配列(すなわち、配列番号1)内の1つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸による置換又は欠失によって変化していることを意味する。更に、突然変異は、参照アミノ酸配列内の1つ以上の追加のアミノ酸の挿入に対応することもある。
【0027】
用語「変異体」は、配列番号1の親アミラーゼに対して1つ以上の(例えば、いくつかの)位置に突然変異、すなわち、置換、挿入、及び/又は欠失を含むアミラーゼを意味する。置換とは、ある位置を占めているアミノ酸の異なるアミノ酸による置き換えを意味し、欠失とは、ある位置を占めているアミノ酸の除去を意味し、挿入とは、ある位置を占めているアミノ酸に隣接してかつその直後にアミノ酸を付加することを意味する。本発明の変異体は、配列番号1のアミラーゼのアミラーゼ活性の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%を有する。
【0028】
用語「野生型」アミラーゼとは、自然界に見られる細菌、酵母、又は糸状菌などの天然微生物によって発現されるアミラーゼを意味する。
【0029】
本発明のアミラーゼ
本発明のアミラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列内の1つ以上の(例えば、いくつかの)位置に突然変異を含む。本発明のアミラーゼは、配列番号1のアミラーゼに比べて強化された洗浄性能を示す。本発明のアミラーゼは、配列番号1に対して以下の位置:51、246、及び/又は334のうちの1つ以上に突然変異を含む。配列番号1の202位は変化しないままである。本発明のアミラーゼは、配列番号1に対して少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。
【0030】
本発明のアミラーゼは、配列番号1の親アルファアミラーゼの変異体であって、例えば、短いサイクル及び/又は低温でみられるもののようなストレス条件下でさえも、洗濯洗浄及び自動食器洗浄などの家庭及び/又は工業洗浄プロセス、特に自動食器洗浄において強化された洗浄性能を示す変異体を表す。
【0031】
強化された洗浄性能に加えて、本発明のアミラーゼは、配列番号1の親アミラーゼに比べて以下の特性のうちの1つ以上においても改善を示し得る:
(i) 基質特異性、
(ii) 基質結合、
(iii) 比活性、
(iv) 熱安定性
(v) pH安定性プロファイル、
(vi) Ca2+依存性、
(vii) 酸化安定性、
(viii)増加/減少したpI、及び/又は
(ix) 界面活性剤に対する感受性。
【0032】
タンパク質の上記特性を決定するためのアッセイは、国際公開第2006/002643号、同第2001/066712号、及び欧州特許出願公開第2 264 460(A)号に記載されている。
【0033】
好ましくは、本発明のアミラーゼは、A51T、T246(I/L/V)、S334T、及びこれらの混合物から選択される、配列番号1に対する突然変異を有する。
【0034】
好ましくは、当該アミラーゼは、配列番号1に対して以下の位置に1つ以上、好ましくは3つ以上の突然変異を含み:
9、149、182、186、257、295、299、323、339、及び345、並びに
任意に、以下の位置:118、183、184、195、320及び458のうちの1つ以上、好ましくは全てに突然変異を含み、存在する場合、好ましくはR118K、D183
*、G184
*、N195F、R320K、及び/又はR458Kを含む。
【0035】
好ましいアミラーゼは、以下の突然変異M9L、R118K、G149A、G182T、D183
*、G184
*、G186A、N195F、T257I、Y295F、N299Y、R320K、M232T、A339S、E345R、及びR458Kを含む。
【0036】
好ましいアミラーゼは、A51T、A186D、T246I、S334T、A51T+A186D、A51T+T246I、A51T+S334T、A186D+T246I、A186D+S334T、T246I+S334T、A51T+A186D+T246I、A51T+A186D+S334T、A51T+T246I+S334T、A186D+T246I+S334T、及びA51T+A186D+T246I+S334Tからなる群から選択される、配列番号1に対する突然変異を含む。
【0037】
特に好ましいアミラーゼは、以下の突然変異:
a)T246V;
b)T246I及びS334T;
c)T246L及びS334T;
d)T246V及びS334T;並びに
e)A51T及びT246I及びS334Tのうちの1つを含む。
【0038】
好ましいアミラーゼは、配列番号1に対して以下の位置における1つ以上、好ましくは3つ以上の突然変異からなり:
9、149、182、186、257、295、299、323、339、及び345、並びに
任意に、以下の位置:118、183、184、195、320及び458のうちの1つ以上、好ましくは全てに突然変異を含み、存在する場合、好ましくはR118K、D183
*、G184
*、N195F、R320K及び/又はR458Kを、A51T、A186D、T246I、S334T、A51T+A186D、A51T+T246I、A51T+S334T、A186D+T246I、A186D+S334T、T246I+S334T、A51T+A186D+T246I、A51T+A186D+S334T、A51T+T246I+S334T、A186D+T246I+S334T、及びA51T+A186D+T246I+S334Tからなる群から選択される、配列番号1に対する突然変異と組み合わせて含む。
【0039】
特に好ましいアミラーゼは、配列番号1に対して以下の突然変異:M9L、R118K、G149A、G182T、D183
*、G184
*、G186A、N195F、T257I、Y295F、N299Y、R320K、M232T、A339S、E345R、及びR458Kを、以下の突然変異:
a)T246V;
b)T246I及びS334T;
c)T246L及びS334T;
d)T246V及びS334T;並びに
e)A51T及びT246I及びS334Tのうちの1つと組み合わせて含む。
【0040】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも0.005mg、好ましくは約0.0025〜約0.025、より好ましくは約0.05〜約0.3、特に約0.01〜約0.25mgの活性アミラーゼを含む。
【0041】
自動食器洗浄組成物
自動食器洗浄組成物は、任意の物理的形態であってよい。当該自動食器洗浄組成物は、ルース粉末であっても、ゲルであっても、又は単位用量形態で提示されてもよい。好ましくは、当該自動食器洗浄組成物は単位用量形態であり、単位用量形態としては、圧縮錠剤及び水溶性パックが挙げられる。本発明の自動食器洗浄組成物は、好ましくは、単位容量形態で提示され、固体、液体、及びゲルの形態を含む任意の物理的形態であり得る。本発明の組成物は、多区画型パックの形態、より具体的には、異なる物理的形態の組成物を有する区画、例えば固体形態の組成物を含む区画と液体形態の組成物を含む別の区画とを含む多区画型パックでの提供に非常によく適している。組成物は、好ましくは、ポリビニルアルコールなどの水溶性フィルムに封入される。厚さ100μm未満のポリビニルアルコールフィルムに包まれた単位用量形態の組成物が特に好ましい。本発明の洗剤組成物は、約8〜約25グラム、好ましくは約10〜約20グラムの重量を有する。この重量範囲は、食器洗い機のディスペンサーに余裕をもって収まる。この範囲は洗剤としては少ない量に相当するものであるが、洗剤は上記に述べたような効果のすべてを提供するように配合されている。
【0042】
組成物は、好ましくは、リン酸塩を含まない。本明細書において「リン酸塩を含まない」とは、組成物が、組成物の1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満のリン酸塩を含むものとして理解される。
【0043】
好ましくは、本発明の組成物は、リン酸塩を含まず、分散剤ポリマー及び錯化剤を含む。本発明の目的のために、「錯化剤」は、カルシウム、マグネシウム、鉛、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、マンガン、鉄、アルミニウム、及び他のカチオン性多価イオンのような多価イオンと結合して水溶性の錯体を形成することが可能な化合物である。錯化剤は、Ca2+に対する対数安定性定数([logK])が少なくとも5、好ましくは少なくとも6である。安定度定数logKは、温度25℃でイオン強度0.1の溶液中において測定される。
【0044】
好ましくは、本発明の組成物は、好ましくはメチル−グリシン−二酢酸(MGDA)、その塩及び誘導体、グルタミン酸−N,N−二酢酸(GLDA)、その塩及び誘導体、イミノジコハク酸(IDS)、その塩及び誘導体、カルボキシメチルイヌリン、ASDA(L−アスパラギン酸N,N−二酢酸四ナトリウム塩)、その塩及び誘導体、その塩及び誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、アミノカルボキシル化錯化剤を含む。本明細書における使用に特に好ましい錯化剤は、MGDA及びその塩からなる群から選択され、本明細書における使用に特に好ましいのは、MGDAの三ナトリウム塩である。好ましくは、錯化剤はMGDAの三ナトリウム塩であり、分散剤ポリマーはスルホン化ポリマーであり、より好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸モノマーを含む。
【0045】
分散剤ポリマー
分散剤ポリマーは、組成物の約0.1〜約20重量%、好ましくは0.2〜約15重量%、より好ましくは0.3〜重量%の任意の好適な量で使用され得る。
【0046】
分散剤ポリマーは、自動食器洗浄プロセスにおいてカルシウム又は炭酸カルシウムを懸濁させることができる。
【0047】
分散剤ポリマーは、25℃で分散剤ポリマー1gあたり30〜250mgのCa、好ましくは、分散剤ポリマー1gあたり35〜200mgのCa、より好ましくは、分散剤ポリマー1gあたり40〜150mgのCaの範囲内のカルシウム結合能を有する。ポリマーが本発明の意味における分散剤ポリマーであるかどうかを判定するために、以下の指示に従って以下のカルシウム結合能判定を実施する:
【0048】
カルシウム結合能試験法
本明細書において言及されるカルシウム結合能は、Meettler Toledo SevenMulti(商標)ベンチトップメーターなどのpH/イオンメーター及びPerfectION(商標)櫛形Ca複合電極を使用して、滴定を介して判定される。結合能を測定するために、ビーカー又はターゴトメーターポットに好適な加熱及び撹拌装置を25℃に設定し、製造業者の指示書に従ってイオン電極付きメーターを較正する。電極を較正するための標準的な濃度は試験濃度を囲んでいなくてはならず、25℃で測定されなければならない。3.67gのCaCl
2−2H
2Oを1Lの脱イオン水に添加することによって1000mg/gのCaの原液を調製し、次いで、希釈して、それぞれ100mg/g、10mg/g、及び1mg/gの濃度のカルシウムを含む3つの作業溶液各100mLを調製する。100mg Ca/gの作業溶液を滴定中に初期濃度として使用し、25℃で滴定を実施する。それぞれに2.5g/LのNaClを添加することによって、各作業溶液のイオン強度を調整する。100mg Ca/gの作業溶液100mLを加熱し、25℃に達するまで撹拌する。イオン電極を使用して溶液が25℃に達したとき、カルシウムイオン濃度の初期読み出しを実施する。次いで、カルシウム作業溶液に試験ポリマーを漸増式に添加し(0.01g/L間隔で)、各漸増添加後5分間撹拌した後に測定する。溶液が1mg/gのカルシウムに達したとき、滴定を停止する。残り2つのカルシウム濃度の作業溶液を使用して、滴定手順を繰り返す。添加された試験ポリマー1Lあたりのグラムに対する測定されたカルシウム濃度の線形勾配として、試験ポリマーの結合能を計算する。
【0049】
分散剤ポリマーは、好ましくは、6超のpHを有する水溶液に溶解させたとき、負の正味電荷を有する。
【0050】
また、分散剤ポリマーは、より低いpHにおける負電荷を増加させ、硬水への分散特性を改善するために、スルホン化カルボン酸エステル又はアミドも有し得る。好ましい分散剤ポリマーは、スルホン化/カルボキシル化ポリマー、すなわち、スルホン化モノマー及びカルボキシル化モノマーの両方を含むポリマーである。
【0051】
好ましくは、分散剤ポリマーは、ポリカルボン酸のスルホン化誘導体であり、2、3、4、又はそれ以上の異なるモノマー単位を含み得る。好ましいコポリマーは、以下を含有する。
【0052】
一般式(III)を有するカルボン酸モノマーに由来する少なくとも1つの構造単位:
【0053】
【化1】
(式中、R
1〜R
3は、独立して、水素、メチル、2〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和アルキル基、2〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の一価又は多価の不飽和アルケニル基、−NH2又は−OH又は−COOH又はCOOR
4で置換されている上述のアルキル又はアルケニル基から選択され、R
4は、水素、アルカリ金属、又は2〜12個の炭素を有する直鎖若しくは分枝鎖の飽和若しくは不飽和のアルキル若しくはアルケニル基から選択される)。
【0054】
好ましいカルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2−フェニルアクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、フマル酸、メタクリル酸、2−エチルアクリル酸、メチレンマロン酸、又はソルビン酸のうちの1つ以上が挙げられる。アクリル及びメタクリル酸がより好ましい。
【0055】
任意に、一般式(IV)を有する少なくとも1つの非イオン性モノマーに由来する1つ以上の構造単位:
【0056】
【化2】
(式中、R
5〜R
7は、独立して、水素、メチル、フェニル、又は1〜6個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基から選択され、環状構造の一部であり得、Xは、任意に存在する、−CH
2−、−COO−、−CONH−、又は−CONR
8−から選択されるスペーサー基であり、R
8は、1〜22個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖の飽和アルキルラジカル、又は6〜22個の炭素原子を有する不飽和、好ましくは芳香族のラジカルから選択される)。
【0057】
好ましい非イオン性モノマーとしては、ブテン、イソブテン、ペンテン、2−メチルペンタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、2,4,4−トリメチルペンタ−1−エン、2,4,4−トリメチルペンタ−2−エン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、2−メチル−3−メチル−シクロペンテン、ヘキセン、2,3−ジメチルヘキサ−1−エン、2,4−ジメチルヘキサ−1−エン、2,5−ジメチルヘキサ−1−エン、3,5−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、10個以上の炭素原子を有するアルファオレフィン、例えば、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、及びドコサ−1−エンのうちの1つ以上が挙げられ、好ましい芳香族モノマーは、スチレン、アルファメチルスチレン、3−メチルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−プロピルスチロール、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンであり;好ましいカルボン酸エステルモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレートであり;好ましいアミドは、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ラウリルアクリルアミド、N−ステアリルアクリルアミド、N−ベヘニルアクリルアミドである。
【0058】
加えて、一般式(V)及び(VI)を有する少なくとも1つのスルホン酸モノマーに由来する少なくとも1つの構造単位:
【0059】
【化3】
(式中、R
7は、少なくとも1つのsp2結合を含む基であり、Aは、O、N、P、S、アミド又はエステル結合であり、Bは、単環式若しくは多環式の芳香族基又は脂肪族基であり、各tは独立して0又は1であり、M+はカチオンである)。一態様では、R
7は、C2〜C6アルケンである。別の態様では、R7は、エテン、ブテン又はプロペンである。
【0060】
好ましいスルホン化モノマーとしては、1−アクリルアミド−1−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−メタクリルアミド−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタアリルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3−スルホプロピル、3−スルホ−プロピルメタクリレート、スルホメタクリルアミド、スルホメチルメタクリルアミド、及び上記酸又はその水溶性塩の混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0061】
好ましくは、このポリマーは、以下の濃度のモノマーを含む:ポリマーの約40〜約90重量%、好ましくは約60〜約90重量%の1種以上のカルボン酸モノマー;ポリマーの約5〜約50重量%、好ましくは約10〜約40重量%の1種以上のスルホン酸モノマー、任意に、ポリマーの約1〜約30重量%、好ましくは約2〜約20重量%の、1種以上の非イオン性モノマー。特に好ましいポリマーは、ポリマーの約70重量%〜約80重量%の少なくとも1種のカルボン酸モノマー及びポリマーの約20重量%〜約30重量%の少なくとも1種のスルホン酸モノマーを含む。
【0062】
ポリマー中、カルボン酸基又はスルホン酸基の全て又はいくつかが中和形態で存在していてよく、すなわちいくつか又は全ての酸性基中のカルボン酸基及び/又はスルホン酸基の酸性水素原子が、金属イオン、好ましくはアルカリ金属イオン、特にナトリウムイオンと置き換えられ得る。
【0063】
カルボン酸は、好ましくは(メタ)アクリル酸である。スルホン酸モノマーは、好ましくは2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0064】
好ましい市販のポリマーとしては、Alco Chemical社により供給されるAlcosperse 240、Aquatreat AR 540、及びAquatreat MPS、Rohm & Haas社により供給されるAcumer 3100、Acumer 2000、Acusol 587G、及びAcusol 588G、BF Goodrich社により供給されるGoodrich K−798、K−775、及びK−797;並びにISP technologies Inc社により供給されるACP 1042が挙げられる。特に好ましいポリマーは、Rohm & Haas社により供給されるAcusol 587G及びAcusol 588Gである。
【0065】
好適な分散剤ポリマーとしては、低分子量のアニオン性カルボン酸ポリマーが挙げられる。当該分散剤ポリマーは、約200,000g/モル以下、又は約75,000g/モル以下、又は約50,000g/モル以下、又は約3,000〜約50,000g/モル、好ましくは約5,000〜約45,000g/モルの重量平均分子量を有するホモポリマー又はコポリマーであり得る。分散剤ポリマーは、1,000〜20,000、特に2,000〜10,000、特に好ましくは3,000〜5,000の平均分子量を有するポリアクリレートの低分子量ホモポリマーであり得る。
【0066】
分散剤ポリマーは、分子量70,000未満の、アクリル酸とメタクリル酸、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とマレイン酸、並びにアクリル酸及び/又はメタクリル酸とフマル酸とのコポリマーであり得る。これらの分子量は、2,000〜80,000、より好ましくは20,000〜50,000、特に30,000〜40,000g/モルの範囲であり、(メタ)アクリレートセグメントのマレエート又はフマレートセグメントに対する比は30:1〜1:2である。
【0067】
分散剤ポリマーは、3,000〜100,000、あるいは4,000〜20,000の分子量を有するアクリルアミドとアクリレートとのコポリマーであり得、分散剤ポリマーの50重量%未満、あるいは20重量%未満のアクリルアミド含量を使用することもできる。あるいは、このような分散剤ポリマーは、4,000〜20,000の分子量及び当該ポリマーの0重量%〜15重量%のアクリルアミド含量を有し得る。
【0068】
本明細書で好適な分散剤ポリマーは、イタコン酸のホモポリマー及びコポリマーも含む。あるいは、分散剤ポリマーは、アルコキシル化ポリアルキレンイミン、アルコキシル化ポリカルボキシレート、ポリエチレングリコール、スチレンコポリマー、セルロース硫酸エステル、カルボキシル化多糖、両親媒性グラフトコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0069】
漂白剤
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の約1〜約20重量%、より好ましくは約5〜約18重量%、更により好ましくは約8〜約15重量%の漂白剤を含む。
【0070】
無機及び有機漂白剤が、本明細書における使用に好適である。無機漂白剤には、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩、及び過ケイ酸塩などの過水和塩が挙げられる。無機過水和塩は、通常、アルカリ金属塩である。無機過水和塩は、追加の保護なしの結晶性固体として含まれ得る。代替的に、塩はコーティングされていてもよい。好適なコーティングには、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。上記コーティングは、表面に塗布される混合物として塗布されるか、又は順次積層して塗布され得る。
【0071】
アルカリ金属過炭酸塩、特に過炭酸ナトリウムは、本明細書における使用に好ましい漂白剤である。過炭酸塩は、最も好ましくは、製品内安定性を提供するコーティングされた形態で製品に組み込まれる。
【0072】
過酸化モノ過硫酸カリウムは、本明細書で有用な別の無機過水和塩である。
【0073】
典型的な有機漂白剤は、有機ペルオキシ酸、特にドデカンジペルオキシ酸、テトラデカンジペルオキシ酸、及びヘキサデカンジペルオキシ酸である。モノ及びジペルアゼライン酸、モノ及びジペルブラシル酸も、本明細書において好適である。ジアシル及びテトラアシル過酸化物、例えば過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジラウロイルは、本発明の関連において使用可能な他の有機過酸化物である。
【0074】
更なる典型的な有機漂白剤としては、ペルオキシ酸が挙げられ、具体例は、アルキルペルオキシ酸及びアリールペルオキシ酸である。好ましい代表例は、(a)ペルオキシ安息香酸及びその環置換の誘導体、例えばアルキルペルオキシ安息香酸の他、ペルオキシ−α−ナフトエ酸及びモノペルフタル酸マグネシウム、(b)脂肪族又は置換脂肪族ペルオキシ酸、例えばペルオキシラウリン酸、ペルオキシステアリン酸、ε−フタルイミドペルオキシカプロン酸[フタロイミノペルオキシヘキサン酸(PAP)]、o−カルボキシベンズアミドペルオキシカプロン酸、N−ノネニルアミドペルアジピン酸及びN−ノネニルアミドペルスクシネート、並びに(c)脂肪族及び芳香脂肪族ペルオキシジカルボン酸、例えば1,12−ジペルオキシカルボン酸、1,9−ジペルオキシアゼライン酸、ジペルオキシセバシン酸、ジペルオキシブラシル酸、ジペルオキシフタル酸、2−デシルジペルオキシブタン−1,4−二酸、N,N−テレフタロイルジ(6−アミノペルカプロン酸)である。
【0075】
漂白活性化剤
漂白活性化剤は、典型的には、60℃以下の温度での洗浄の過程で漂白作用を強化する有機過酸前駆体である。本明細書に用いるのに好適な漂白活性化剤としては、過加水分解(perhydrolysis)条件下で、好ましくは1〜12個の炭素原子、特に2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ペルオキシカルボン酸、及び/又は任意に置換されている過安息香酸を生成する化合物が挙げられる。好適な物質は、炭素原子の数が指定されているO−アシル基及び/若しくはN−アシル基並び/又は任意に置換されているベンゾイル基を有する。ポリアシル化アルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコールウリル、特にテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、N−アシルイミド、特にN−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホネート、特にn−ノナノイル−又はイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n−又はイソ−NOBS)、デカノイルオキシ安息香酸(DOBA)、無水カルボン酸、特に無水フタル酸、アシル化多価アルコール、特にトリアセチン、二酢酸エチレングリコール及び2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、並びにクエン酸トリエチルアセチル(TEAC)も好まれる。存在する場合、本発明の組成物は、組成物の0.01〜5、好ましくは0.2〜2重量%の漂白活性化剤、好ましくはTAEDを含む。
【0076】
漂白触媒
本明細書の組成物は、好ましくは、漂白触媒、好ましくは金属含有漂白触媒を含有する。より好ましくは、金属含有漂白触媒は、遷移金属含有漂白触媒、特にマンガン又はコバルト含有漂白触媒である。
【0077】
本明細書での使用に好ましい漂白触媒としては、マンガントリアザシクロノナン及び関連する錯体、Co、Cu、Mn及びFeビスピリジルアミン及び関連する錯体、並びにペンタミン酢酸コバルト(III)及び関連する錯体が挙げられる。
【0078】
本発明の組成物は、好ましくは、組成物の0.001〜0.5、より好ましくは0.002〜0.05重量%の漂白触媒を含む。好ましくは、漂白触媒は、マンガン系漂白触媒である。
【0079】
無機ビルダー
本発明の組成物は、好ましくは、無機ビルダーを含む。好適な無機ビルダーは、炭酸塩、ケイ酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。炭酸ナトリウムが、本明細書における使用に特に好ましい。本発明の組成物は、好ましくは、組成物の5〜50%、より好ましくは10〜40%、特に15〜30%の炭酸ナトリウムを含む。
【0080】
界面活性剤
本明細書における使用に好適な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤が挙げられ、好ましくは、組成物は、いかなる他の界面活性剤も含まない。従来より、非イオン性界面活性剤は、フィルム形成及びスポッティングを回避し、光沢を改善するための表面改質、特にシート化を目的として、自動食器洗浄機において使用されてきた。非イオン性界面活性剤は、汚れの再堆積の防止にも寄与することができることが判明している。
【0081】
好ましくは、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤系を含み、より好ましくは、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤系は、蒸留水中、濃度1%で測定した場合に40〜70℃、好ましくは45〜65℃の転相温度を有する。「非イオン性界面活性剤系」とは、本明細書において、2つ以上の非イオン性界面活性剤の混合物を意味する。本明細書における使用に好ましいのは、非イオン性界面活性剤系である。これらは、単一の非イオン性界面活性剤よりも、製品中で、改善された洗浄及び仕上がり特性、並びに良好な安定性を有すると考えられる。
【0082】
転相温度とは、それよりも低い温度では界面活性剤又はその混合物が油膨張ミセルとして水性相中に優先的に分配され、それよりも高い温度では水膨張逆ミセルとして油性相に優先的に分配される温度である。転相温度は、混濁が生じる温度を識別することによって視覚的に判断することができる。
【0083】
非イオン性界面活性剤又は系の転相温度は、以下のように判断することができる:蒸留水中、溶液の1重量%の対応する界面活性剤又は混合物を含有する溶液を調製する。溶液を軽く撹拌した後、転相温度を分析して、プロセスが化学平衡で生じることを確実にする。転相温度は、75mm密封ガラス試験管中に溶液を浸漬することによって熱安定性の浴槽内で測定する。漏れがないことを確実にするために、転相温度の測定の前後に試験管を秤量しておく。温度が事前予測した転相温度より数度下に達するまで、温度を1℃/分未満の速度で徐々に増加させる。転相温度は、濁りの最初の兆候があった時点で視覚的に判断される。
【0084】
好適な非イオン性界面活性剤としては、i)6〜20個の炭素原子を有するモノヒドロキシアルカノール又はアルキルフェノール(alkyphenol)と、アルコール又はアルキルフェノール1モル当たり、好ましくは少なくとも12モル、特に好ましくは少なくとも16モル、更により好ましくは少なくとも20モルのエチレンオキシドと、の反応によって調製されるエトキシル化非イオン性界面活性剤、ii)6〜20個の炭素原子及び少なくとも1つのエトキシ基及びプロポキシ基を有するアルコールアルコキシル化界面活性剤が挙げられる。本明細書における使用に好ましいのは、界面活性剤i)とii)との混合物である。
【0085】
別の好適な非イオン性界面活性剤は、次式で表されるエポキシキャップされたポリ(オキシアルキル化)アルコールである。
R1O[CH2CH(CH3)O]x[CH2CH2O]y[CH2CH(OH)R2] (I)
式中、R1は、4〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基であり、R2は、2〜26個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基であり、xは、0.5〜1.5の平均値を有する、より好ましくは約1の整数であり、yは、少なくとも15、より好ましくは少なくとも20の値を有する整数である。
【0086】
好ましくは、式Iの界面活性剤は、末端エポキシド単位[CH2CH(OH)R2]中に少なくとも約10個の炭素原子を有する。本発明によれば、式Iの好適な界面活性剤は、例えば、Olin Corporationによって1994年10月13日に公開された国際公開第94/22800号に記載の、Olin CorporationのPOLY−TERGENT(登録商標)SLF−18B非イオン性界面活性剤である。
【0087】
酵素
本明細書の酵素変異体を説明する中で、参照しやすいように以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸(複数可):位置(複数可):置換アミノ酸(複数可)。標準的な酵素IUPACのアミノ酸の1文字コードを使用する。
【0088】
プロテアーゼ
好適なプロテアーゼには、メタロプロテアーゼ、及び中性又はアルカリ性微生物セリンプロテアーゼ等のセリンプロテアーゼ、例えばスブチリシン(EC 3.4.21.62)、並びにその化学的に又は遺伝的に修飾された突然変異体が挙げられる。好適なプロテアーゼとして、Bacillus lentus、Bacillus alkalophilus、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus pumilus及びBacillus gibsonii等のBacillus属由来のものを含むスブチリシン(EC 3.4.21.62)が挙げられる。
【0089】
本発明の洗剤に特に好ましいプロテアーゼは、バシラス・レンタス由来の野生型酵素と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、更により好ましくは少なくとも99%、特に100%の同一性を示すポリペプチドであり、これは、本明細書に参照により援用する国際公開第00/37627号に示されるようなBPN’番号付与システム及びアミノ酸略号を用いた場合に、以下に示す位置の1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上に突然変異を含む:V68A、N87S、S99D、S99SD、S99A、S101G、S101M、S103A、V104N/I、G118V、G118R、S128L、P129Q、S130A、Y167A、R170S、A194P、V205I及び/又はM222S。
【0090】
最も好ましくは、プロテアーゼは、PB92野生型(国際公開第08/010925号中、配列番号2)又はスブチリシン309野生型(N87Sの自然変異体を含む以外はPB92主鎖による配列)のいずれかに対して以下の突然変異(BPN番号方式)を含む群から選択される。
【0091】
(i) G118V+S128L+P129Q+S130A
(ii) S101M+G118V+S128L+P129Q+S130A
(iii)N76D+N87R+G118R+S128L+P129Q+S130A+S188D+N248R
(iv) N76D+N87R+G118R+S128L+P129Q+S130A+S188D+V244R
(v) N76D+N87R+G118R+S128L+P129Q+S130A
(vi) V68A+N87S+S101G+V104N
【0092】
好適な市販のプロテアーゼ酵素としては、商品名Savinase(登録商標)、Polarzyme(登録商標)、Kannase(登録商標)、Ovozyme(登録商標)、Everlase(登録商標)、及びEsperase(登録商標)でNovozymes A/S社(Denmark)により販売されるもの、商品名Properase(登録商標)、Purafect(登録商標)、Purafect Prime(登録商標)、Purafect Ox(登録商標)、FN3(登録商標)、FN4(登録商標)、Excellase(登録商標)、Ultimase(登録商標)及びPurafect OXP(登録商標)でGenencor International社により販売されるもの、商品名Opticlean(登録商標)及びOptimase(登録商標)でSolvay Enzymes社により販売されるもの、Henkel/Kemira社により販売されるもの、すなわちBLAPが挙げられる。
【0093】
本発明の組成物中のプロテアーゼの好ましいレベルは、組成物1グラムあたり約0.2〜約2mgの活性プロテアーゼを含む。
【0094】
他のアミラーゼ
本発明のアミラーゼに加えて、本発明の組成物は、他のアミラーゼを含み得る。好ましいアルカリ性アミラーゼは、バチルスの菌種、例えば、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ステロサーモフィラス、バチルス・ズブチルス又は他のバチルス種、例えば、バチルス種NCIB 12289、NCIB 12512、NCIB 12513、DSM 9375(米国特許第7,153,818号)、DSM 12368、DSMZ番号12649、KSM AP1378(国際公開第97/00324号)、KSM K36又はKSM K38(欧州特許第1,022,334号)に由来する。好ましいアミラーゼとしては、以下が挙げられる:
(a)米国特許第5,856,164号、並びに国際公開第99/23211号、同第96/23873号、同第00/60060号、及び同第06/002643号に記載の変異体、特にAA560の配列番号1に対して以下の位置に1つ以上の置換を有する変異体:
9、26、30、33、82、37、106、118、128、133、149、150、160、178、182、186、193、195、202、214、231、256、257、258、269、270、272、283、295、296、298、299、303、304、305、311、314、315、318、319、320、323、339、345、361、378、383、419、421、437、441、444、445、446、447、450、458、461、471、482、484、好ましくはD183
*及びG184
*の欠失も含有する変異体。
【0095】
(b)Bacillus種707由来の野生型酵素(米国特許第6,093,562号中の配列番号7)と少なくとも95%の同一性を示す変異体、特に以下の突然変異M202、M208、S255、R172及び/又はM261のうちの1つ以上を含むもの。好ましくは、上記アミラーゼは、M202L又はM202T突然変異のうちの1つを含む。
【0096】
好適な市販のα−アミラーゼとしては、DURAMYL(登録商標)、LIQUEZYME(登録商標)、TERMAMYL(登録商標)、TERMAMYL ULTRA(登録商標)、NATALASE(登録商標)、EVEREST(登録商標)、SUPRAMYL(登録商標)、STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、FUNGAMYL(登録商標)及びBAN(登録商標)(Novozymes A/S(Bagsvaerd,Denmark))、KEMZYM(登録商標)AT 9000(Biozym Biotech Trading GmbH Wehlistrasse 27b A−1200 Wien Austria)、RAPIDASE(登録商標)、PURASTAR(登録商標)、ENZYSIZE(登録商標)、OPTISIZE HT PLUS(登録商標)、POWERASE(登録商標)、EXCELLENZ(商標)S 1000及びEXCELLENZ(商標)S 2000を含むEXCELLENZ(商標)Sシリーズ、並びにPURASTAR OXAM(登録商標)(DuPont Industrial Biosciences,Palo Alto,California)、並びにKAM(登録商標)(花王株式会社(日本、103−8210、東京都中央区日本橋茅場町1丁目14−10))が挙げられる。本明細書に用いるのに特に好ましいアミラーゼとしては、NATALASE(登録商標)、STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、EXCELLENZ(商標)S 1000、EXCELLENZ(商標)S 2000、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも0.005mg、好ましくは約0.0025〜約0.025、より好ましくは約0.05〜約0.3、特に約0.01〜約0.25mgの活性アミラーゼを含む。
【0098】
好ましくは、本発明の組成物のプロテアーゼ及び/又はアミラーゼは、顆粒の形態であり、当該顆粒は、顆粒の29重量%超の硫酸ナトリウムを含む、及び/又は硫酸ナトリウムと活性酵素(プロテアーゼ及び/又はアミラーゼ)との重量比は、3:1〜100:1、又は好ましくは4:1〜30:1、又はより好ましくは5:1〜20:1である。
【0099】
結晶成長抑制剤
結晶成長抑制剤は、炭酸カルシウム結晶に結合して、アラゴナイト及び方解石などの種の更なる成長を防止することができる材料である。
【0100】
本明細書における使用に特に好ましい結晶成長抑制剤は、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン1,1−ジホスホン酸)である。本発明の組成物は、好ましくは製品の0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、特に0.5〜2重量%の結晶成長抑制剤、好ましくはHEDPを含む。
【0101】
金属ケア剤
金属ケア剤は、アルミニウム、ステンレス鋼並びに銀及び銅等の非鉄金属を含む、金属の曇り、腐食、又は酸化を防止又は低減することができる。好ましくは、本発明の組成物は、製品の0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%、特に0.3〜3重量%の金属ケア剤を含み、好ましくは金属ケア剤はベンゾトリアゾール(BTA)である。
【0102】
ガラスケア剤
ガラスケア剤は、食器洗浄プロセス中にガラス製品の外観を保護する。好ましくは、本発明の組成物は、組成物の0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%、特に0.3〜3重量%の金属ケア剤を含み、好ましくは、ガラスケア剤は、亜鉛含有材料、特に水亜鉛土である。
【0103】
本発明の自動食器洗浄組成物は、20℃の蒸留水中の1重量/体積%の水溶液中で測定した場合に好ましくは約9〜約12、より好ましくは約10〜約11.5未満、特に約10.5〜約11.5のpHを有する。
【0104】
本発明の自動食器洗浄組成物は、20℃の100グラムの製品を含むNaOH中で測定した場合に、pH9.5で、好ましくは約10〜約20、より好ましくは約12〜約18の予備アルカリ度を有する。
【0105】
本発明の好ましい自動食器洗浄組成物は、
i)当該組成物の2〜20重量%の漂白剤、好ましくは過炭酸ナトリウムと、
ii)好ましくは漂白活性化剤、より好ましくはTAEDと、
iii)酵素、好ましくはアミラーゼ及びプロテアーゼと、
iv)任意に、しかし好ましくは、当該組成物の5〜30重量%の無機ビルダー、好ましくは炭酸ナトリウムと、
v)任意に、しかし好ましくは、当該組成物の2〜10重量%の非イオン性界面活性剤と、
vi)任意に、しかし好ましくは、漂白触媒、より好ましくはマンガン漂白触媒と、
vii)結晶成長抑制剤、好ましくはHEDP、及びガラスケア剤を含む他の任意成分と、
を含む。
【実施例】
【0106】
本明細書において以下に詳述する成分を含む2つの自動食器洗浄洗剤組成物を作製した:本発明に係るアミラーゼを含む組成物1及び比較参照として本発明の範囲外の市販されているアミラーゼを含む組成物2。固体及び液体成分は、洗浄の開始時に添加した。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
短いサイクルでの洗浄試験
製品が酵素感受性のある汚れを落とす性能について識別する、汚れをつけたメラミン製の食器洗浄機モニターである混合デンプン(DM77)CFTタイル(Center For Testmaterials BV,Stoomloggerweg 11,3133 KT Vlaardingen,the Netherlands)を使用して、組成物1及び2を、その洗浄性能について比較した。
【0110】
混合デンプンの洗浄1回あたり2枚のタイルを、洗浄の開始時に食器洗浄洗剤組成物と同時に食器洗浄機(Miele 1022食器洗浄機)の一番上のラックに置いた。導入される水は、CaCO
3総レベルが10ppmである(イオン交換カラムを介して)人工的に軟水化した水であった。食器洗浄機を、すすぎ及び乾燥段階を含んで合計35分間の40℃短サイクルに設定した。毎回新たなタイルを使用して試験を更に3回繰り返した。最後に、洗浄前後の汚れのL−a−b値を測定するコンピュータ支援画像解析を使用して8枚のタイルを評価し、このデータを使用して、0%が未洗浄であり、100%が完全な汚れ除去である0から100までの連続的なスケールを有する汚れ除去指数を割り当てた。
【0111】
【表4】
【0112】
このデータは、本発明に係る食器洗浄洗剤組成物1が、短いサイクルにおいて比較組成物に対して改善されたデンプン除去性能を有することを示す。
【0113】
通常サイクルでの洗浄試験。
製品が酵素感受性のある汚れを落とす性能について識別する、汚れをつけたメラミン製の食器洗浄機モニターである二重混合デンプン、着色(DM277)CFTタイル(Center For Testmaterials BV,Stoomloggerweg 11,3133 KT Vlaardingen,the Netherlands)を使用して、組成物1及び2を、その洗浄性能について比較した。
【0114】
二重混合デンプンの洗浄1回あたり2枚のタイルを、洗浄の開始時に食器洗浄洗剤組成物と同時に食器洗浄機(Miele 1022食器洗浄機)の一番上のラックに置いた。導入される水は、CaCO
3総レベルが10ppmである(イオン交換カラムを介して)人工的に軟水化した水であった。食器洗浄機を、すすぎ及び乾燥段階を含んで合計81分間の50℃通常サイクルに設定した。毎回新たなタイルを使用して試験を更に3回繰り返した。最後に、洗浄前後の汚れのL−a−b値を測定するコンピュータ支援画像解析を使用して8枚のタイルを評価し、このデータを使用して、0%が未洗浄であり、100%が完全な汚れ除去である0から100までの連続的なスケールを有する汚れ除去指数を割り当てた。
【0115】
【表5】
【0116】
このデータは、本発明に係る食器洗浄洗剤組成物1が、通常サイクルにおいて比較組成物に対して改善されたデンプン除去性能を有することを示す。
【0117】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指示がない限り、そのような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。