特許第6749587号(P6749587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6749587ガラス板の製造方法及び保護シートの分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749587
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及び保護シートの分離装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 41/00 20060101AFI20200824BHJP
   B65H 5/22 20060101ALI20200824BHJP
   B65G 15/58 20060101ALI20200824BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20200824BHJP
   C03B 35/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B65H41/00 B
   B65H5/22 C
   B65G15/58 B
   B65G49/06 Z
   C03B35/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-50015(P2017-50015)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-154418(P2018-154418A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】三品 賢二
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−001682(JP,A)
【文献】 特開2011−121680(JP,A)
【文献】 特開平06−183552(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3025333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 41/00
B65G 15/58
B65G 49/06
B65H 3/00
B65H 3/12
B65H 5/22
B65H 29/24
B65H 29/32
C03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に前記搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラが、前記搬送ベルトを介して前記保護シートを吸着することにより、前記ガラス板から前記保護シートを分離する工程を含むガラス板の製造方法であって、
前記サクションローラの周壁部のうち、前記搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を配置し、前記搬送ベルトと前記仕切り部材で前記サクションローラを内部に含む閉断面を形成するとともに、
前記仕切り部材側から、前記仕切り部材と前記非巻き掛け部の間の空間の空気を吸引することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記仕切り部材が、前記非巻き掛け部と間隔を置いて対向配置され、かつ、前記搬送ベルトのうち、前記巻き掛け部の上流側に位置する上流側ベルト部位とその下流側に位置する下流側ベルト部位の相互間に掛け渡された第一壁部と、前記第一壁部の上下両端のそれぞれから前記搬送ベルトに沿って前記サクションローラ側に延びる第二壁部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記仕切り部材が、前記第一壁部、前記第二壁部及び前記非巻き掛け部で囲まれた空間の幅方向両端の開口部を覆う第三壁部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第二壁部が、金属製の本体と、前記第二壁部の前記サクションローラ側の先端部に、樹脂により形成された樹脂部とを有していることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記サクションローラの周壁部に複数の周溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に前記搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラとを備え、前記サクションローラで前記搬送ベルトを介して前記保護シートを吸着することにより、前記ガラス板から前記保護シートを分離させる保護シートの分離装置であって、
前記サクションローラの周壁部のうち、前記搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を備え、
前記搬送ベルトと前記仕切り部材が、前記サクションローラを内部に含む閉断面を形成するとともに、
前記仕切り部材側から、前記仕切り部材と前記非巻き掛け部の間の空間の空気が吸引されるように構成されていることを特徴とする保護シートの分離装置。
【請求項7】
保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に前記搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラが、前記搬送ベルトを介して前記保護シートを吸着することにより、前記ガラス板から前記保護シートを分離する工程を含むガラス板の製造方法であって、
前記サクションローラの周壁部のうち、前記搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を配置し、前記搬送ベルトと前記仕切り部材で前記サクションローラを内部に含む閉断面を形成し、
前記仕切り部材が、前記非巻き掛け部と間隔を置いて対向配置され、かつ、前記搬送ベルトのうち、前記巻き掛け部の上流側に位置する上流側ベルト部位とその下流側に位置する下流側ベルト部位の相互間に掛け渡された第一壁部と、前記第一壁部の上下両端のそれぞれから前記搬送ベルトに沿って前記サクションローラ側に延びる第二壁部とを備え、
前記第二壁部が、金属製の本体と、前記第二壁部の前記サクションローラ側の先端部に、樹脂により形成された樹脂部とを有していることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記仕切り部材が、前記第一壁部、前記第二壁部及び前記非巻き掛け部で囲まれた空間の幅方向両端の開口部を覆う第三壁部を備えていることを特徴とする請求項7に記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に前記搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラとを備え、前記サクションローラで前記搬送ベルトを介して前記保護シートを吸着することにより、前記ガラス板から前記保護シートを分離させる保護シートの分離装置であって、
前記サクションローラの周壁部のうち、前記搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を備え、前記搬送ベルトと前記仕切り部材が、前記サクションローラを内部に含む閉断面を形成し、
前記仕切り部材が、前記非巻き掛け部と間隔を置いて対向配置され、かつ、前記搬送ベルトのうち、前記巻き掛け部の上流側に位置する上流側ベルト部位とその下流側に位置する下流側ベルト部位の相互間に掛け渡された第一壁部と、前記第一壁部の上下両端のそれぞれから前記搬送ベルトに沿って前記サクションローラ側に延びる第二壁部とを備え、
前記第二壁部が、金属製の本体と、前記第二壁部の前記サクションローラ側の先端部に、樹脂により形成された樹脂部とを有していることを特徴とする保護シートの分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及び保護シートの分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の製造工程では、合紙、ポリエチレンシート、発泡樹脂シート等の保護シートにガラス板を載せた状態で搬送する工程が含まれる場合がある。このように保護シートを下敷きとしてガラス板を搬送する間に、例えば、ガラス板に対してトリミング(切断処理)等が施される。保護シートは、切断処理の終了後等の所定の段階でガラス板から分離され、ガラス板のみが後続の工程に搬送される。後続の工程では、ガラス板に対して面取りを含む端面加工等の製造関連処理が継続して行われる。
【0003】
ガラス板から保護シートを分離する方法としては、特許文献1に開示の方法が挙げられる。同文献には、保護シート上に載せられたガラス板を搬送ベルトの搬送方向の下流側端部で、搬送ベルトが巻き掛けられたサクションローラ(回転ローラ)によって、搬送ベルトを介して保護シートのみを吸着すると共に下方に引き込み、ガラス板から保護シートを分離することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−1682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、サクションローラは、その周壁部の一部に搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有し、巻き掛け部に対応する位置に生じる負圧吸引力によって保護シートを吸着する。
【0006】
しかしながら、同文献では、サクションローラの周壁部のうち、搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部側からサクションローラの内部に空気(外気)が流入しやすい構成となっている。そのため、巻き掛け部における負圧吸引力を十分に高めることができず、保護シートの吸着が弱くなりやすい。その結果、ガラス板から保護シートを分離できない事態が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、保護シート上に載せられた状態で搬送されるガラス板から、保護シートを確実に分離することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラが、搬送ベルトを介して保護シートを吸着することにより、ガラス板から保護シートを分離する工程を含むガラス板の製造方法であって、サクションローラの周壁部のうち、搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を配置し、搬送ベルトと仕切り部材でサクションローラを内部に含む閉断面を形成することを特徴とする。このような構成によれば、サクションローラの周壁部の非巻き掛け部が仕切り部材によって囲まれると共に、搬送ベルトと仕切り部材でサクションローラを内部に含む閉断面が形成されるので、サクションローラの非巻き掛け部側からサクションローラ内に空気が流入する事態を抑制することができる。その結果、巻き掛け部に対応する位置において負圧吸引力を十分発生させることができる。従って、巻き掛け部に対応する位置に生じる負圧吸引力によって保護シートをしっかりと吸着し、ガラス板から保護シートを確実に分離することができる。
【0009】
上記の構成において、仕切り部材が、非巻き掛け部と間隔を置いて対向配置され、かつ、搬送ベルトのうち、巻き掛け部の上流側に位置する上流側ベルト部位とその下流側に位置する下流側ベルト部位の相互間に掛け渡された第一壁部と、第一壁部の上下両端のそれぞれから搬送ベルトに沿ってサクションローラ側に延びる第二壁部とを備えていることが好ましい。このようにすれば、非巻き掛け部と間隔を置いて第一壁部を設けても、第二壁部によって、巻き掛け部の上流側ベルト部位や下流側ベルト部位を介して空気が流入する事態を抑制することができる。
【0010】
この場合、仕切り部材が、第一壁部、第二壁部及び非巻き掛け部で囲まれた空間の幅方向両端の開口部を覆う第三壁部を備えていることが好ましい。このようにすれば、第三壁部によって、第二壁部及び非巻き掛け部で囲まれた空間の幅方向両端から空気が流入するのを阻止することができる。
【0011】
上記の構成において、第二壁部が、金属製の本体と、第二壁部のサクションローラ側の先端部に、樹脂により形成された樹脂部とを有していてもよい。このようにすれば、第二壁部のサクションローラ側の先端部がサクションローラと接触しても、樹脂部がサクションローラの形状に倣って変形又は摩耗するだけである。そのため、仕切り部材の寸法精度や組み付け精度が不十分であっても、第二壁部をサクションローラと軽く接触させることにより、第二壁部とサクションローラの間から空気が流入するのを抑制できる。
【0012】
上記の構成において、仕切り部材側から、仕切り部材と非巻き掛け部の間の空間の空気を吸引することが好ましい。このようにすれば、仕切り部材と非巻き掛け部の間の空間の空気自体も減少するので、非巻き掛け部側からサクションローラ内に流入する空気をより確実に抑制することができる。これにより、巻き掛け部に対応する位置において負圧吸引力を大幅に高めることができる。
【0013】
この場合、サクションローラの周壁部に複数の周溝が形成されていることが好ましい。このようにすれば、仕切り部材からサクションローラ側の空気を吸引する際に、周溝内の空気も吸引され、巻き掛け部に対応する位置における負圧吸引力が高まることが期待できる。
【0014】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、保護シート上に載せられたガラス板を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトの下流側端部で、周壁部の一部に搬送ベルトが巻き掛けられた巻き掛け部を有するサクションローラとを備え、サクションローラで搬送ベルトを介して保護シートを吸着することにより、ガラス板から保護シートを分離させる保護シートの分離装置であって、サクションローラの周壁部のうち、搬送ベルトが巻き掛けられていない非巻き掛け部を囲む仕切り部材を備え、搬送ベルトと仕切り部材が、サクションローラを内部に含む閉断面を形成していることを特徴とする。このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、保護シート上に載せられた状態で搬送されるガラス板から、保護シートを確実に分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係る保護シートの分離装置を示す側面図である。
図2】第一実施形態に係る保護シートの分離装置を示す平面図である。
図3】第二実施形態に係る保護シートの分離装置の仕切り部材の斜視図である。
図4】第二実施形態に係る保護シートの分離装置の搬送ベルトの下流側端部周辺を拡大して示す拡大側面図である。
図5】第三実施形態に係る保護シートの分離装置の仕切り部材の斜視図である。
図6】第三実施形態に係る保護シートの分離装置の搬送ベルトの下流側端部周辺を拡大して示す拡大側面図である。
図7】第四実施形態に係る保護シートの分離装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係る保護シートの分離装置1は、製造関連処理ステーションWに配置された搬送手段Cの直上流側に、無端状の搬送ベルト2を備える。
【0019】
製造関連処理ステーションWの搬送手段Cは、例えばローラコンベアや搬送ベルト等で構成され、ガラス板Gを矢印Aのように横方向(好ましくは水平方向)に搬送する。本実施形態では、製造関連処理ステーションWは、製造関連処理として、ガラス板Gに対して面取り加工等の端面加工を施すステーションであるが、製造関連処理ステーションWで行う製造関連処理は、端面加工に限定されるものではない。製造関連処理には、端面加工処理の他、切断処理、樹脂フィルム等の積層処理、印刷等の成膜処理等のガラス板Gに直接何らかの加工を施す処理はもちろん、ガラス板Gの洗浄処理やガラス板Gの歪を除去する徐冷処理(熱処理)など、間接的にガラス板Gを最終製品に近づけるための処理が含まれる。
【0020】
分離装置1の搬送ベルト2は、例えば弾性ゴムからなると共に、計二個の回転ローラ3,4に巻き掛けられている。搬送ベルト2は、回転ローラ3,4の駆動により、保護シートP上に載せられたガラス板Gを矢印aのように横方向(好ましくは水平方向)に搬送する。搬送ベルト2は、その下流側端部で、ガラス板Gを搬送手段Cに移載する。
【0021】
搬送ベルト2が巻き掛けられている二個の回転ローラ3,4のうち、搬送ベルト2の下流側端部に配置された回転ローラ4は、サクションローラである(以下、回転ローラ4をサクションローラという)。サクションローラ4の周壁部4aは、搬送ベルト2が巻き掛けられた巻き掛け部x1と、搬送ベルト2が巻き掛けられていない非巻き掛け部y1とを備える。サクションローラ4は、中空状とされており、その中空部は、巻き掛け部x1に対応する位置で搬送ベルト2に負圧吸引力を発生させるための空気吸引部とされている。サクションローラ4の周壁部4aには、例えばライニングによって硬質ゴムが被覆される。
【0022】
搬送ベルト2の内側空間において、非巻き掛け部y1と間隔を置いて対向する位置には、非巻き掛け部y1を囲む仕切り部材5が配置されている。仕切り部材5は、幅方向(搬送方向と直交する方向)に長尺な板状体であり、金属板(例えば鋼板)で構成される。仕切り部材5の上端は、搬送ベルト2のうち、巻き掛け部x1の上流側に位置する上流側ベルト部位2aに近接又は接触しており、仕切り部材5の下端は、搬送ベルト2のうち、巻き掛け部x1の下流側に位置する下流側ベルト部位2bに近接又は接触している。すなわち、仕切り部材5は、上流側ベルト部位2aと下流側ベルト部位2bの相互間に掛け渡されており、搬送ベルト2と仕切り部材5でサクションローラ4を内部に含む閉断面が形成されている。なお、搬送ベルト2のうち、巻き掛け部x1に対応する部分は、保護シートPの搬送方向を変化させる方向変換ベルト部位2cとされる。
【0023】
本実施形態では、仕切り部材5は平板形状であるが、これに限定されない。仕切り部材5は、例えば、サクションローラ4の周壁部4a(周溝4b(後述の図2参照)を除く部分)に倣った部分円筒面形状としてもよい。このようにすれば、仕切り部材5を非巻き掛け部y1に近接配置しやすくなる。
【0024】
搬送ベルト2の上流側ベルト部位2aの下方には、箱状体6が上流側ベルト部位2aに近接又は接触して配置されている。箱状体6の内部空間は、上流側ベルト部位2aの上面に負圧吸引力を発生させるための空気吸引部とされている。
【0025】
サクションローラ4の中空部及び箱状体6の内部空間は、吸引ホース7を介して真空発生源(不図示)に通じている。本実施形態では、仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1も吸引ホース7を介して真空発生源に通じている。詳細には、吸引ホース7は、仕切り部材5に設けられた貫通孔(不図示)に接続されており、仕切り部材5側から仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1の空気が吸引されるようになっている。なお、仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1は、吸引ホース7を介して真空発生源に通じていなくてもよい。すなわち、空間s1の空気を直接吸引しなくてもよい。負圧吸引力を大幅に高める観点では、仕切り部材5側から仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1の空気を吸引することが好ましい。
【0026】
図2に示すように、搬送ベルト2には全周に亘って複数の貫通孔8が形成され、これらの貫通孔8を通じて負圧吸引力が発生する構成とされている。
【0027】
サクションローラ4の周壁部4aには、複数の周溝4bが形成されると共に、これらの周溝4bの底面壁部には、中空部に通じる複数の貫通孔9がそれぞれ形成されている。サクションローラ4に形成された複数の周溝4bの幅方向における配列ピッチは、搬送ベルト2に形成された複数の貫通孔8の幅方向における配列ピッチと同一に設定されている。
【0028】
箱状体6の上面壁部6aには、搬送方向に長尺で且つ内部空間に通じる複数のスリット10が並列に形成されている。箱状体6に形成された複数のスリット10の幅方向における配列ピッチは、サクションローラ4に形成された複数の周溝4bの幅方向における配列ピッチと同一に設定されている。従って、スリット10と周溝4bは、それぞれが一列上、つまり全てが複数列状に配列されており、これらは、搬送ベルト2に形成された複数列の貫通孔8の移動軌跡に沿うように配列されている。なお、スリット10に代えて、貫通孔を列状に並べて形成してもよい。
【0029】
周溝4b内の空間は、仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1と直接的に通じている。なお、周溝4b内の空間は、サクションローラ4の貫通孔9と中空部を介することで、仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1と間接的にも通じている。
【0030】
次に、以上のように構成された分離装置1を用いたガラス板の製造方法を説明する。
【0031】
図1に示すように、まず、所定サイズにトリミング(切断処理)されたガラス板Gが、保護シートPの上に載せられた状態で、搬送ベルト2上に移載される。搬送ベルト2上への移載は、作業者が手動で、あるいは、搬送ベルト2の更に上流側に配置される搬送手段から自動的に行われる。ガラス板Gの切断処理は、スクライブ工程及び折り割り工程を含む曲げ応力割断によって行われる。
【0032】
移載直後においては、保護シートP及びガラス板Gの先端部は、搬送ベルト2の上流側ベルト部位2aの上流側に位置している。このような状態から、保護シートP及びガラス板Gが搬送ベルト2により下流側に向かって搬送されていく。ここでは常時、上流側ベルト部位2aの複数の貫通孔8から、箱状体6の上面壁部6aに形成された複数のスリット10を通じて、箱状体6の内部空間(空気吸引部)に空気が吸引される。従って、ガラス板Gの下敷きになっている保護シートPが、負圧吸引力によって搬送ベルト2に吸着された状態で、ガラス板Gは搬送ベルト2によって横方向に搬送される。
【0033】
この後、搬送ベルト2による横方向の搬送により、保護シートPの先端部が上流側ベルト部位2aを通過し、方向変換ベルト部位2cに達する。ここでも常時、方向変換ベルト部位2cの複数の貫通孔8から、サクションローラ4の複数の周溝4b内及びその底面壁部の貫通孔9を通じて、サクションローラ4の中空部(空気吸引部)に空気が吸引される。この際、サクションローラ4の非巻き掛け部y1側は仕切り部材5によって囲まれると共に、仕切り部材5と非巻き掛け部y1の間の空間s1の空気が仕切り部材5側から吸引される。従って、サクションローラ4の中空部に非巻き掛け部y1側から空気が流入する事態が抑制され、巻き掛け部x1側には高い負圧吸引力が発生する。その結果、保護シートPの先端部は、負圧吸引力によって搬送ベルト2の方向変換ベルト部位2cに確実に吸着された状態で、矢印bのように下方に引き込まれる。一方、ガラス板Gは、搬送ベルト2によって継続して横方向に搬送され、製造関連処理ステーションWの搬送手段Cに移載される。
【0034】
搬送ベルト2の下流側端部の直下方では、下方に引き込まれた保護シートPに対してノズル11からガス(例えば、空気)が噴射され、保護シートPが搬送ベルト2から剥がされる。本実施形態では、巻き掛け部x1の下流端に対応する方向変換ベルト部位2cの下流端に至る前に、保護シートPが搬送ベルト2から剥がされるが、これに限定されない。例えば、方向変換ベルト部位2cの下流端又はそれ以降の下流側ベルト部位2bで、保護シートPが搬送ベルト2から剥がされるようにしてもよい。
【0035】
そして、保護シートPの後端部が搬送ベルト2の下流側端部を通過した段階で、搬送ベルト2から引き剥がされた保護シートPが自重により落下して回収箱等に回収されると共に、ガラス板Gは搬送手段Cに完全に移載されて搬送手段Cの動作によって搬送されていく。これにより、保護シートPは、ガラス板Gから完全に分離されて除去される。
【0036】
(第二実施形態)
図3及び図4に示すように、第二実施形態に係る保護シートの分離装置21、及びガラス板の製造方法が、第一実施形態と相違するところは、仕切り部材22の構成にある。以下では、相違する構成である仕切り部材22を中心に説明し、共通する構成の詳しい説明は省略する。なお、図3及び図4に現れている共通する構成については、第一実施形態と同一符号を付している。
【0037】
第二実施形態では、仕切り部材22が、サクションローラ4の非巻き掛け部y1と間隔を置いて対向配置され、かつ、搬送ベルト2の上流側ベルト部位2aと下流側ベルト部位2bの相互間に掛け渡された第一壁部22aと、第一壁部22aの上下両端のそれぞれから搬送ベルト2に沿ってサクションローラ4側に延びる第二壁部(上壁部及び下壁部)22bとを備える。これにより、第二壁部22bに対応する位置で、第二壁部22bによって、上流側ベルト部位2aの貫通孔8及び下流側ベルト部位2bの貫通孔8のそれぞれが塞がれるので、サクションローラ4の巻き掛け部x1側で発生する負圧吸引力を高めることができる。
【0038】
第二壁部22bは、サクションローラ4側の先端部に、幅方向に長尺な樹脂部23を備える。樹脂部23は、例えば、エンジニアリングプラスチックや弾性ゴムなどの樹脂で形成される。樹脂部23を除く仕切り部材22の本体(第一壁部22a及び第二壁部22bの本体)は、金属で形成される。樹脂部23は、例えば、仕切り部材22の本体にねじ等によって固定される。ここで、第二壁部22bの先端部は、サクションローラ4にできるだけ接近させることが望ましい。しかし、第二壁部22bの先端部が金属であると、仕切り部材22の寸法精度や組み付け精度が不十分である場合に、第二壁部22bの先端部とサクションローラ4との接触により、サクションローラ4が損耗するおそれがある。これに対し、第二壁部22bの先端部に樹脂部23を設ければ、仕切り部材22の寸法精度や組み付け精度が不十分であっても、樹脂部23が積極的に変形又は摩耗することから、サクションローラ4の損耗を抑制できる。従って、仕切り部材22の寸法精度や組み付け精度が不十分であっても、負圧吸引力を確保できる。なお、樹脂部23は省略してもよい。あるいは、第二壁部22bの全部又は仕切り部材22の全部を樹脂で形成してもよい。
【0039】
ここで、仕切り部材22側から、仕切り部材22と非巻き掛け部y2の間の空間s2の空気を吸引することが好ましい。
【0040】
(第三実施形態)
図5及び図6に示すように、第三実施形態に係る保護シートの分離装置31、及びガラス板の製造方法が、第一実施形態と相違するところは、仕切り部材32の構成にある。以下では、相違する構成である仕切り部材32を中心に説明し、共通する構成の詳しい説明は省略する。なお、図5及び図6に示されている共通する構成については、第一実施形態と同一符号を付している。
【0041】
第三実施形態では、仕切り部材32が、サクションローラ4の非巻き掛け部y1と間隔を置いて対向配置され、かつ、搬送ベルト2の上流側ベルト部位2aと下流側ベルト部位2bの相互間に掛け渡された第一壁部32aと、第一壁部32aの上下両端のそれぞれから搬送ベルト2に沿ってサクションローラ4側に延びる第二壁部(上壁部及び下壁部)32bと、第一壁部32a、第二壁部32b及び非巻き掛け部y1で囲まれた空間s3の幅方向両端の開口部を覆う金属製の第三壁部(側壁部)32cとを備える。第三壁部32cのサクションローラ4側の先端部は、サクションローラ4の周壁部4aの形状に倣った円弧状をなす。このようにすれば、仕切り部材32が、サクションローラ4側のみが開口した箱型になるので、サクションローラ4の非巻き掛け部y1側を略隙間なく覆うことができる。従って、サクションローラ4の中空部に非巻き掛け部y1側から空気が流入する事態をより確実に抑制することができる。
【0042】
ここで、仕切り部材32側から、仕切り部材32と非巻き掛け部y1の間の空間s3の空気を吸引することが好ましい。第二壁部32bの先端部には、図示例のように、樹脂部33を設けてもよいが、樹脂部33を省略してもよい。第三壁部32cの先端部にも樹脂部を設けてもよい。あるいは、第二壁部32bの全部、第三壁部32cの全部又は仕切り部材32の全部を樹脂で形成してもよい。
【0043】
(第四実施形態)
図7に示すように、第三実施形態に係る保護シートの分離装置41は、複数の貫通孔(不図示)を有する搬送ベルト42と、搬送ベルト42が巻き掛けられた計三個の回転ローラ43,44,45とを備える。搬送ベルト42は、回転ローラ43,44,45によって駆動される。回転ローラ43,44,45のうち、回転ローラ44が、サクションローラである(以下、回転ローラ44をサクションローラという)。サクションローラ44の構成は、第一実施形態のサクションローラ4と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0044】
搬送ベルト42は、サクションローラ44の周壁部44aの巻き掛け部x2の上流側に位置し、搬送方向が横向きの上流側ベルト部位42aと、サクションローラ44の巻き掛け部x2の下流側に位置し、搬送方向が下向きの下流側ベルト部位42bと、サクションローラ44の巻き掛け部x2に対応する位置に位置し、搬送方向を変化させる方向変換ベルト部位42cとを備える。従って、搬送ベルト42の搬送方向は、上流側ベルト部位42aで横方向であり、方向変換ベルト部位42cで横方向から下方向に徐々に方向変換し、下流側ベルト部位42bで下方向となる。
【0045】
搬送ベルト42の内側空間において、サクションローラ44の非巻き掛け部y2と間隔を置いて対向する位置には、非巻き掛け部y2を囲む仕切り部材46が配置されている。仕切り部材46の上端は、搬送ベルト42の上流側ベルト部位42aに近接又は接触しており、仕切り部材46の下端は、搬送ベルト42の下流側ベルト部位42bに近接又は接触している。すなわち、仕切り部材46は、上流側ベルト部位42aと下流側ベルト部位42bの相互間に掛け渡されており、搬送ベルト42と仕切り部材46でサクションローラ44を内部に含む閉断面が形成されている。なお、仕切り部材46は、上流側ベルト部位42aや下流側ベルト部位42bに沿って延びる壁部(第二壁部に相当)を有していてもよいし、仕切り部材46と非巻き掛け部y2の間の空間s4の幅方向両端の開口部を覆う壁部(第三壁部に相当)を有していてもよい。
【0046】
上流側ベルト部位42aの下方には、第一箱状体47が配置されおり、下流側ベルト部位42bの内側には、第二箱状体48が配置されている。これらの箱状体47,48の構成は、第一実施形態の箱状体6と実質的に同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0047】
サクションローラ44の中空部、第一箱状体47の内部空間、第二箱状体48の内部空間及び仕切り部材46と非巻き掛け部y2の間の空間s4は、吸引ホース49を介して真空発生源(不図示)に通じている。なお、仕切り部材46と非巻き掛け部y2の間の空間s4は、吸引ホース49を介して真空発生源に通じていなくてもよい。すなわち、空間s4の空気を直接吸引しなくてもよい。負圧吸引力を大幅に高める観点では、空間s4の空気を吸引することが好ましい。
【0048】
以上の構成を備えた分離装置41を用いたガラス板の製造方法は、保護シートPが方向変換ベルト部位42cを通過した後、下流側ベルト部位42bに吸着された状態で下方に搬送される点を除けば、上記の実施形態で説明した製造方法と同様である。すなわち、上流側ベルト部位42aの下流側端部で保護シートPから分離されたガラス板Gは、上流側ベルト部位42aによって横方向に搬送され、製造関連処理ステーションWの搬送手段Cに移載される。
【0049】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
第一〜第三実施形態では、サクションローラの巻き掛け部における搬送ベルトの抱き角(中心角)が約180度である場合を説明し、第四実施形態では、サクションローラの巻き掛け部における搬送ベルトの抱き角(中心角)が約90度である場合を説明したが、サクションローラの巻き掛け部における搬送ベルトの抱き角はこれらに限定されるものではない。例えば、サクションローラの巻き掛け部における搬送ベルトの抱き角は、90度超180度未満であってもよいし、90度未満や180度超であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,21,31,41 分離装置
2,42 搬送ベルト
2a,42a 上流側ベルト部位
2b,42b 下流側ベルト部位
2c,42c 方向変換ベルト部位
4,44 サクションローラ(回転ローラ)
5,22,32,46 仕切り部材
22a,32a 第一壁部
22b,32b 第二壁部
32c 第三壁部
23,33 樹脂部
G ガラス板
P 保護シート
x1,x2 巻き掛け部
y1,y2 非巻き掛け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7