(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のセンサーの各々から前記コネクタ基板に至るまで、前記第1配線及び第2配線のそれぞれが平面視で交差しない請求項4または5のいずれかに記載のセンサーシステム。
前記複数のセンサーが、音、光、温度、圧力、歪みからなる群の少なくとも1つの物理量の変化により抵抗変化を生じる請求項4〜8のいずれか一項に記載のセンサーシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、このような人体等の動きを測定できるセンサーシステムについて検討したところ、種々の問題点があることに気付いた。これらの種々の問題点を一度に解決できるセンサーシステムが求められている。
【0009】
発明者らが気付いた問題点の1つは、特定の位置からの情報のみならず、様々な位置からの情報を集約的に測定でき、装着感の良いセンサーシステムが実現されていないということである。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、人体の所定の位置にセンサーを設け、その部分についての情報のみを測定している。そのため、例えば、人体の腕、脚、胴体等の複数の情報を一度に得ることが難しい。
【0010】
複数の情報を一度に得るために、特許文献1及び特許文献2に記載のようなセンサーを人体の様々な位置に同時に取り付けることができる。しかしながら、このような複数のセンサーを一度に取り付けることは現実的ではない。各センサーからの情報を同時に外部に出力するためには、各センサーに対して1つのトランシーバーや送信モジュールが必要になり、センサーシステムが非常に大掛かりなものとなる。特許文献4では、複数の情報をコントローラーによって集約的に測定している。しかしながら、加速度センサーを複数個接続して通信するにためにはやはり配線やコントローラーが非常に大掛かりなものとなる。
【0011】
センサーシステムが大掛かりになると、装着者にセンサーシステムが違和感を与えるという問題も生じる。例えば、一日を通して測定を行う場合等には、センサーシステムの装着感が悪いことは、装着者に非常に大きな負荷を与える。このような装着者に違和感を生じさせるセンサーシステムでは、日常に則した情報が得られにくい。
【0012】
トランシーバーや送信モジュール等の外部出力手段を1つにし、情報を1つの外部出力手段に集めて送信することも考えられる。しかしながら発明者らの検討の結果、このように1つの外部出力手段に情報を集約させようとすると、センサーそれぞれと外部出力手段とを電気的に接続する必要があり、別の課題が生じることに気付いた。
【0013】
各センサーと1つの外部出力手段とを電気的に接続するためには、センサーからの配線数にアース線を加えた数の接続点が最低必要であり、これらの接続点を有するコネクタが必要である(例えば、特許文献5の
図3及び
図4)。センサーの数が多くなればそれだけ、接続点の数は多くなる。
【0014】
接続点の数が多いコネクタは、接続点同士を離間して配置する必要があるため、大きなものとなる。ウェアラブルなセンサーシステムにおいては、この大きなコネクタは装着時の違和感を生み出す原因となる。センサーシステムを衣服等に用いた場合は、コネクタにより布が引っ張られ、精密な測定が阻害されてしまう恐れがある。
【0015】
接続点の数が多いコネクタは、接続すべき互いの端子を誤る可能性がある。さらに全ての接続点を確実に接続すること及びそれらが確実に接続されていることを確認するこのいずれの作業にも時間がかかる。すなわち、容易かつ簡便に各センサーと外部出力手段とを接続することができない。
【0016】
発明者らは、コネクタの接続点の数が多くなることにより、更に別の課題が生じることにも気付いた。これは、センサーシステムを衣服等に設けた場合に、衣服等を洗濯することが難しくなるという問題である。外部出力手段は、無線式でも有線式でも洗濯時には、取り外すことが求められる。しかしながら、コネクタの接続点の数が多くなると、簡便に取り外すことが難しい。
【0017】
また衣服側に設けられるコネクタは、洗濯時に衣服と共に洗濯される。このコネクタが大きくなると、コネクタには洗濯時に大きな応力が加わることが想定される。その結果、コネクタが衣服から剥がれたり、破損する可能性が高まる。
【0018】
一方で原理的には、接続点に至る前段階で、入力信号を行列に変換して、信号を集約し、接続点を減らすことはできる(例えば、特許文献3等)。しかしながら、これらは行列状に規則的に配設されたセンサー点からの情報をセンサー内部で電気的に処理するものである。換言すると、センサー点を規則的に配置しないと、センサー内部で信号を行列に変換できない。つまり、非規則的に配置されたセンサー点からの信号を集約することはできない。そのため、人体等の様々な点からの情報を集約する際には用いることができず、センサーシステムとしての自由度が低い。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、上述の課題を一度に解決できるセンサーシステムを実現することを目的とする。より具体的には、センサーシステムを装着時の装着者の違和感を抑え、外部出力手段との着脱が容易であるコネクタ基板を提供することを目的とする。またセンサーからの情報を一度に測定でき、装着者の違和感を抑え、洗濯可能なセンサーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、鋭意検討の結果、センサーからの信号を配線パターンにより物理的に分類し、出力端子数を低減できるコネクタ基板を見出した。またこのコネクタ基板を用いると、センサーシステムを装着時の装着者の違和感が抑えられ、外部出力手段との着脱が容易となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
【0021】
(1)本発明の一態様に係るコネクタ基板は、基材と、前記基材上に設けられたmグループ各n個(m、nは2以上の整数)の第1入力端子と、前記基材上に設けられたn個の第1出力端子と、前記基材上または内部に配設され、前記第1入力端子と前記第1出力端子とを繋ぐ第1配線パターンと、前記基材上に設けられたm個の第2入力端子と、前記基材上に設けられたm個の第2出力端子と、前記基材上または内部に配設され、前記第2入力端子と前記第2出力端子とを繋ぐ第2配線パターンと、を備え、前記第1配線パターンを構成する各コネクタ配線の第1端部は、各グループを構成するn個の第1入力端子の内の1つとそれぞれ接続され、第2端部は、前記第1出力端子のそれぞれと接続されている。
【0022】
(2)上記(1)に記載のコネクタ基板において、前記基材が、フレキシブルであってもよい。
【0023】
(3)上記(1)又は(2)のいずれかに記載のコネクタ基板において、前記基材の外縁部に前記第1入力端子及び前記第2入力端子が設けられ、前記基材の中央部に前記第1出力端子及び前記第2出力端子が設けられ、前記基材の内部又は外表面において、前記第1配線パターンと前記第2配線パターンが、前記基材の厚み方向の異なる位置に存在してもよい。
【0024】
(4)本発明の一態様に係るセンサーシステムは、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のコネクタ基板と、mグループに分類された複数のセンサーと、前記複数のセンサーの各々と前記コネクタ基板の前記第1入力端子とを接続する第1配線と、前記複数のセンサーのうち1つのグループを構成する各センサーを繋ぎ、前記コネクタ基板の前記第2入力端子に接続する第2配線と、前記コネクタ基板に接続され、外部に信号を出力する外部出力手段と、前記外部出力手段によって出力された信号を処理する信号処理手段と、を備える。
【0025】
(5)上記(4)に記載のセンサーシステムにおいて、前記複数のセンサーが非規則的に配置されていてもよい。
【0026】
(6)上記(4)または(5)のいずれかに記載のセンサーシステムにおいて、前記複数のセンサーの各々から前記コネクタ基板に至るまで、前記第1配線及び第2配線のそれぞれが平面視で交差しない態様であってもよい。
【0027】
(7)上記(4)から(6)のいずれかに記載のセンサーシステムにおいて、前記コネクタ基板と前記外部出力手段とが、磁石によって接続されていてもよい。
【0028】
(8)上記(4)から(7)のいずれか一つに記載のセンサーシステムにおいて、前記信号処理手段が機械学習してもよい。
【0029】
(9)上記(4)から(8)のいずれか一つに記載のセンサーシステムにおいて、前記複数のセンサーが、音、光、温度、圧力、歪みからなる群の少なくとも1つの物理量の変化により抵抗変化を生じるものでもよい。
【0030】
(10)本発明の一態様に係るウェアラブルなセンサーシステムは、上記(4)から(9)のいずれか一つに記載のセンサーシステムにおける前記複数のセンサー及び前記コネクタ基板が布体に付設され、前記第1配線及び前記第2配線が前記布体と一体的に設けられている。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様に係るコネクタ基板は、センサーシステムを装着時の装着者の違和感を抑え、外部出力手段との着脱が容易である。
本発明の一態様に係るセンサーシステムは、非規則的に配置されたセンサーからの情報を一度に測定でき、装着者の違和感を抑え、洗濯可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本実施形態にかかるコネクタ基板、センサーシステムおよびウェアラブルなセンサーシステムについて、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0034】
(センサーシステム)
図1は、本発明の一態様に係るセンサーシステムの模式図である。
図1に示すセンサーシステム100は、コネクタ基板10と、複数のセンサー20と、複数の配線30と、外部出力手段40と、信号処理手段(図示略)と、を備える。複数の配線30は、センサー20とコネクタ基板10とを接続する。外部出力手段40は、コネクタ基板10と接続されている。信号処理手段は、外部出力手段40から出力された信号を処理する。
【0035】
図1に示すセンサーシステム100は、布体50にセンサー20が付設され、配線30が布体50と一体的に設けられたウェアラブルな衣服型のセンサーシステムである。本発明の一態様に係るセンサーシステムは、
図1の構成に限られない。例えば布体50とセンサーシステムとが分離可能でもよい。また
図1に示すように全身を覆う衣服型に限られず、一部のみを覆うものであってもよい。また犬等の動物やロボット等の動作を確認するために、動物等が装着するものであってもよい。
【0036】
図1に示すウェアラブルな衣服型のセンサーシステム100の場合、布体50とコネクタ基板10及びセンサー20の付設方法は特に限られない。例えば、布体50にコネクタ基板10及びセンサー20を接着剤等で貼り合せてもよいし、布体50にコネクタ基板10及びセンサー20を編みつけてもよい。またセンサー20については、インクを用いて形成されるセンサーを布体50に印刷してもよい。
【0037】
布体50とセンサーシステム100とを一体化すると、センサーシステム100を装着時の違和感を低減できる。センサーシステム100の布体50に対する追従性も高まる。その結果、より精密な測定を行うことができる。センサー付の布体を50%伸ばしたときの応力は、布体のみを伸ばしたときの20分の1から20倍、好ましくは10分の1から10倍、より好ましくは5分の1から5倍の範囲にあることが好ましい。
【0038】
複数のセンサー20は、領域毎にA
1〜A
mのm個のグループに分類される。
図1においては、4つのグループA
1〜A
4に分類されている。各グループA
1〜A
4には、n個のセンサーが存在する。
図1においては、m=4つのグループに、n=3つのセンサー20がそれぞれ存在する。グループ数及びセンサー数はこの場合に限られず、使用態様に応じて変更することができる。
【0039】
配線30は、第1配線30Aと、第2配線30Bからなる。第1配線30Aは、センサー20それぞれとコネクタ基板10を接続する。第2配線30Bは、1つのグループを構成する各センサー20を繋ぎ、コネクタ基板10に接続する。すなわち、各センサーは、第1配線30Aと第2配線30Bのそれぞれと接続されている。
【0040】
図1においては、例えば右腕グループA
1内に存在する3つのセンサー20は、それぞれ第1配線30Aによってコネクタ基板10に接続されている。また右腕グループA
1内に存在する3つのセンサー20は、それぞれが第2配線30Bによって接続され、1本の配線に集約されてコネクタ基板10に接続されている。すなわち、右腕グループA
1からは、右腕グループA
1に存在するセンサーの数(3本)に1つ足した数(計4本)の配線30が多点センサーコネクタ基板10に接続されている。これは右腕グループA
1に限られず、左腕グループA
2、左胴体グループA
3、右胴体グループA
4においても同様である。その結果、コネクタ基板10には、4本(第1配線30Aが3本+第2配線30Bが1本)×4グループで計16本の配線30が配設されている。
【0041】
一般化すると、コネクタ基板10には、m個のグループA
1〜A
mのそれぞれから各1本ずつ、計m本の第2配線30Bが接続される。また各グループA
1〜A
m内に存在する全てのセンサー20からは各1本ずつ第1配線30Aが接続される。簡単のため、各グループA
1〜A
mに存在するセンサー数がそれぞれn個ずつとすると、m×n本の第1配線30Aが接続される。すなわち、コネクタ基板10に接続される配線30は、全体でm×n+m=m×(n+1)本となる。
【0042】
<コネクタ基板>
図2は、本発明の一態様に係るコネクタ基板を平面視した模式図である。
図2に示すコネクタ基板10は、基材11と、第1入力端子12Aと、第2入力端子12Bと、第1配線パターン13Aと、第2配線パターン13Bと、第1出力端子14Aと、第2出力端子14Bとを備える。以下、第1入力端子12A及び第2入力端子12Bを合せて外部入力端子12、第1配線パターン13A及び第2配線パターン13Bを合せて配線パターン13、第1出力端子14A及び第2出力端子14Bを合せて外部出力端子14と言うことがある。
【0043】
基材11は絶縁性を有し、外部入力端子12、内部配線パターン13、外部出力端子14を支持する。基材11は、フレキシブルであることが好ましい。ここでフレキシブルとは、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible printed circuits)程度に自在に曲げることができることを意味する。基材11がフレキシブル性を有することで、例えば洗濯等の処理によりコネクタ基板10に応力が加わっても破損しにくくなる。
【0044】
基材11に用いる材質としては、例えば、ポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタラート(PET)等を用いることができる。
【0045】
外部入力端子12は、基材11上に形成された電気的な接点である。外部入力端子12は、第1入力端子12Aと第2入力端子12Bからなる。第1入力端子12Aと第2入力端子12Bは、それぞれ基材11の同一面に配設してもよいし、異なる面に配設してもよい。第1入力端子12は、複数のセンサー20のそれぞれと接続可能である。第2入力端子12Bは、1つのグループ内に存在する各センサー20と接続可能である。すなわち、コネクタ基板10は、多点のセンサーと接続可能な多点センサー用コネクタ基板として機能している。
【0046】
図2において外部入力端子12は、6つの第1入力端子12A、1つの第2入力端子12Bで、1つのグループを形成し、全部で8つのグループを有する。この各グループB
1〜B
mはそれぞれ、センサーシステム100における複数のセンサー20が領域分けられたグループA
1〜A
mに対応する。
【0047】
例えば
図2におけるグループB
1は、
図1における右腕グループA
1と接続可能である。すなわち、
図1では図示の関係上、3つのセンサー20しか図示していないが、右腕グループA
1に配設された6つのセンサーのそれぞれが、第1配線30Aを介して第1入力端子12Aと接続可能である。また第2入力端子12Bは、第2配線30Bを介して右腕グループA
1に配設された各センサー20と接続可能である。同様に、
図1における左腕グループA
2、左胴体グループA
3、右胴体グループA
4のそれぞれは、
図2におけるグループB
2〜B
4のそれぞれと接続可能である。
【0048】
図2において外部入力端子12は8つのグループB
1〜B
8を有している。そのため、
図2のコネクタ基板10を用いる場合は、
図1のセンサーシステム100においては更に4つのグループA
5〜A
8を設けることもできる。
【0049】
グループB
1〜B
mのグループ数は、センサーシステム100に設けられたグループA
1〜A
mの数に応じて適宜変更することができる。またグループB
1〜B
mを構成する第1入力端子12Aの数も、各グループA
1〜A
m内に存在するセンサー数に応じて適宜変更することができる。
【0050】
外部出力端子14は、基材11上に形成された電気的な接点である。外部出力端子14は、第1出力端子14Aと第2出力端子14Bからなる。第1出力端子14Aと第2出力端子14Bは、それぞれ基材11の同一面に配設してもよいし、異なる面に配設してもよい。第1出力端子14Aの端子数は、グループB
1〜B
m内の第1入力端子12Aの最大数に対応する。これに対し第2出力端子14Bの端子数は、グループB
1〜B
mのグループ数に対応する。
【0051】
外部入力端子12及び外部出力端子14は、導電性を有するものからなればよく、例えば半田、銀ペースト、銅等を用いて作製することができる。
【0052】
基材11上または内部には、配線パターン13が配設されている。配線パターン13は、第1配線パターン13Aと第2配線パターン13Bからなる。第1配線パターン13Aは、入力端子12A及び出力端子14Aを接続する。第2配線パターン13Bは、第2入力端子12B及び第2出力端子14Bを接続する。
【0053】
配線パターン13Aを構成する各コネクタ配線は、第1入力端子12Aと第1出力端子14Aを繋ぐ。配線パターン13Aを構成する各コネクタ配線の第1端部は、グループB
1〜B
mを構成するn個の第1入力端子12Aのうちの1つとそれぞれ接続されている。これに対し、配線パターン13Aを構成する各コネクタ配線の第2端部は、第1出力端子14Aのうちの1つと接続されている。すなわち、配線パターン13Aを構成する各コネクタ配線は、各グループのn個の第1入力端子12Aのうちの1つからそれぞれ延在し、第1入力端子14Aに至るまでに1つに集約されるように配設されている。
【0054】
例えば、
図2では、1つのグループB
1を構成する第1入力端子12Aのうちの1つから第1出力端子14Aまで延在するコネクタ配線は、第1出力端子14Aに至るまでの間に、残りのグループB
2〜B
8のそれぞれを構成する第1入力端子12Aのうちの1つから延在するコネクタ配線と接続する。すなわち、全部で64点あった入力端子12Aは、8点の出力端子14Aに集約される。
【0055】
これに対し第2配線パターン13Bは、第2入力端子12Bと第2出力端子14Bを繋ぐ。第2配線パターン13Bを構成する各コネクタ配線は、第1配線パターン13Aを構成するコネクタ配線及び第2配線パターンを構成するその他のコネクタ配線と、互いに接続することはない。
【0056】
以上、コネクタ基板10の構成について説明した。次いで、コネクタ基板10の機能について説明する。
【0057】
コネクタ基板10は、m×(n+1)点の外部入力端子12から入力された情報をマトリックススキャンにより変換し、m+n点の外部出力端子14で出力する。
【0058】
マトリックススキャンによる変換は以下のような手順で行われる。例えば、センサーシステム100を着用した被験者が右腕を動かすと、
図1における右腕グループA
1のいずれかのセンサー20が反応する。このとき右腕グループA
1に存在するセンサーには仮想的に番号を与える。例えば、右腕グループA
1の2番というセンサー20が反応したとする。
【0059】
右腕グループA
1の2番というセンサー20が反応したという情報は、第1配線30A及び第2配線30Bによってコネクタ基板10に送られる。この際、第1配線30Aは、直接コネクタ基板10に接続されているため、右腕グループA
1の2番のセンサー20が反応したという情報をそのまま送る。これに対し、第2配線30Bは、右腕グループA
1内のその他のセンサー20とも接続されているため、右腕グループA
1のいずれかのセンサーが反応したという情報を送る。
【0060】
第1配線30Aから送られた情報は、例えば
図2で示すコネクタ基板10におけるグループB
1の図示上から2番目の第1入力端子12Aに入力される。入力された情報は、第1配線パターン30Aを介して、第1出力端子14Aに送られる。ここで、第1配線パターン30Aを構成する各コネクタ配線は、その他のグループの2番の第1入力端子12Aとも接続されている。すなわち、第1入力端子12Aに伝わった右腕グループA
1の2番のセンサー20が反応したという情報は、第1出力端子14Aに至った段階で、いずれかのグループA
1〜A
nの2番目のセンサー20が反応したという情報に置き換えられる。
【0061】
一方で、第2配線30Bから送られた情報は、例えば
図2で示すコネクタ基板10におけるグループB
1の第2入力端子12Bに入力される。第2入力端子12Bに入力された情報は、第2配線パターン13Bを介してそのまま第2出力端子14Bに伝わる。すなわち、第2出力端子14Bには、右腕グループA
1のいずれかのセンサーが反応したという情報がそのまま送られる。
【0062】
この結果、後述する信号処理手段で、第1出力端子14Aから出力されるいずれかのグループの所定のセンサーが反応したという情報と、第2出力端子14Bから出力される所定のグループのいずれかのセンサーが反応したという情報とを比較することで、所定のグループの所定のセンサーが反応したということを読み取ることができる。このとき情報の比較は、第1出力端子14A及び第2出力端子14Bの各電位差を比較することで判断することができる。
【0063】
図3は、本発明の一態様に係るセンサーシステムにおいて仮想的に形成されるマトリックススキャン回路を模式的に示した回路図である。
図3における可変抵抗は、
図1における各センサー20に対応する。
図2における端子14Aa〜14Ah及び14Ba〜14Bhは、
図3における行列方向の端部に対応する。
【0064】
図3において、センサー20のいずれかが反応すると、可変抵抗の抵抗値が変化する。抵抗値が変化した情報は、行列のいずれの方向にも伝わる。この際、列方向に伝わる情報は、上述の説明における第1配線パターン30Aによって変換されたいずれかのグループの所定のセンサーが反応したという情報である。これに対し、行方向に伝わる情報は第2配線30Bによって変換された所定のグループのいずれかのセンサーが反応したという情報である。
【0065】
ここで、
図3に示すようなパッシブマトリクス回路による電圧計測については回りこみ電流と呼ばれるOFFラインへの電流が発生することが問題となることがある。しかしながら、その解決方法としては、例えばTakahashi,Y et al.,2005 IEEE/RSJ Int. Conf. Intell. Robot. Syst. IROS 1097−1102 (2005)のようなものが知られている。
【0066】
上述のように、センサーシステム100における配線30と、コネクタ基板10における配線パターン13は、仮想的に情報をマトリックス変換する。そのため、コネクタ基板10において、m×(n+1)点の外部入力端子数を、m+n点の外部出力端子数まで低減することができる。
具体的には、
図2においては、第1入力端子12A、第2入力端子12Bを合せた64点のセンサーからの信号を第1出力端子14A、第2出力端子14Bを合せた16点で出力することができる。通常であれば、64個のセンサーとアースを加えた65個の外部出力端子が必要であるのに対し、本発明の一態様に係るコネクタ基板10を用いることで、外部出力端子の数が16個と大幅に低減されている。この変換の原理は、CCD等による行列上に配置されたセンサーからの情報を、行列配置された配線によって読み出すマトリックス変換を用いて低減する際に用いる原理と同等である。
【0067】
ここで、センサー20は非規則的に配置されていることが好ましい。「非規則的に配置されている」とは、行列配置されていないことを意味する。例えば、コネクタ基板10に対して、等距離に複数の箇所にセンサーが設けられている場合は、本明細書においては「規則的な配置」に該当しない。
原理的には、入力信号を行列に変換して、出力信号数を低減することは従来も行われている(例えば、特許文献3等)。しかしながら、これらは行列状に規則的に配設されたセンサーからの信号を処理する際に用いられるものであり、非規則的に配置されたセンサーからの信号を処理には対応できない。本発明の一態様に係るコネクタ基板10は、非規則的に配置されたセンサー20からの信号であっても、配線パターン13によってm行n列に変換することで、仮想的な行列に配列し直すことができる。すなわち、規則的に配置されたものを規則的にマトリクススキャンしているものとは異なり、非規則的に配置されたものを仮想的に規則的に配置し、マトリクススキャンをしている。この「非規則的に配置されたセンサーからの信号を仮想的な行列状に配列し直すこと」は、規則的な配列のセンサーから想到し得るものではない。
【0068】
コネクタ基板10にこのような機能を付与することは、着脱を容易とする必要があることや洗濯可能なセンサーシステムを実現する必要があるとういう課題を解決するために、コネクタ基板10の接続点の数を減らす必要があるということを見出した本発明者らでないと想到し得るものではない。
【0069】
コネクタ基板10において、外部入力端子12、内部配線パターン13、及び外部出力端子14は、
図2の様に配置することが好ましい。すなわち、外部入力端子12である第1入力端子12A及び第2入力端子12Bは、基材11の外縁部に配置し、外部出力端子14である第1出力端子14A及び第2出力端子14Bは基材11の中央部に配置することが好ましい。外部入力端子12の端子数の方が、外部出力端子14の端子数より数が多い。そのため、配置可能な面積が大きい外縁部に外部入力端子12を配置し、中央部の外部出力端子14に向けて内部配線パターン13が集束するように配置することで、基材11を効率的に利用し、コネクタ基板10のサイズを小さくすることができる。
【0070】
第1配線パターン13Aと第2配線パターン13Bは、基材11の厚み方向の異なる深さ位置に配設されていることが好ましい。例えば、基材11の一面に第1配線パターン13Aを配設し、その一面と反対側の面に第2配線パターン13Bを配設することができる。
第1配線パターン13Aと第2配線パターン13Bが、基材11の厚み方向の異なる深さ位置に配設されることで、互いが電気的に接続することを避けることができる。第1配線パターン13Aと第2配線パターン13Bが互いに電気的に接続すると、駆動したセンサー20を適切に読み出すことができなくなる。また第1配線パターン13Aを構成する各コネクタ配線同士も、互いに電気的に接続することがない様に、基材の厚み方向の異なる深さ位置に配設することもできる。
【0071】
配線パターン13は、基材11上にパターニングで形成することができる。所定の開口部を有するマスクを用い、蒸着やスパッタ等により配線パターン13を形成してもよいし、金属膜を形成後にウェットエッチングやドライエッチングにより配線パターン13を形成してもよい。基材11が積層構造をなす場合は、第1配線パターン13Aが形成された基材11と第2配線パターン13Bが形成された基材とを、それぞれのコネクタ配線が電気的に接続しない様に、加熱等の処理により接合してもよい。
【0072】
<外部出力手段>
コネクタ基板10には、外部出力手段40が接続される。外部出力手段40は、コネクタ基板10に接続するコネクト部41と、コネクト部41を介して入力された信号を外部に出力する発信部42とを備える。
図4は、外部出力手段を模式的に示した斜視模式図の一例である。
【0073】
図4に示すコネクト部41は、複数の端子43と、配線44と、基材45と、外部端子46と、を備える。複数の端子43は、コネクタ基板10と接続する。配線44は、端子43のそれぞれに接続される。基材45は、配線44を被覆する。外部端子46は、配線44の端子43と反対側に接続され、発信部42に接続される。
【0074】
端子43は、コネクタ基板10の外部出力端子14と一対一で対応する。端子43の数は、外部出力端子14の数と同じであることが望ましい。
図4では、外部出力端子14の数は、16点である。端子43は導電性を有していればよく、外部入力端子12及び外部出力端子14と同等の材料を用いることができる。
【0075】
配線44は、端子43からの情報を、外部端子46を介して発信部42に伝える。それぞれの配線44は、電気的に分離されている必要がある。配線44がショートすることを避けるためにも、配線44同士は平面視で互いに交差しないことが好ましい。
【0076】
基材45は、配線44同士を電気的に分離できるものである。またフレキシブル性を有することが好ましく、コネクタ基板10の基材11と同様の材料を用いることができる。配線44は、基板45の内部又は外部に配設されている。
【0077】
発信部42は、外部に信号を発信することができれば、有線通信の装置でも無線通信の装置でもよい。装着時の違和感を低減する観点からは無線通信の装置であることが好ましい。例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi−Fi(登録商標)等の通信規格を用いることができる。発信部42に処理用のマイクロコンピュータやリチウム電池などを搭載してもよい。
【0078】
次いで、コネクタ基板10と外部出力手段40との接続について説明する。
図5は、コネクタ基板と外部出力手段の接続部を断面視した模式図である。上述のように、コネクタ基板10の外部出力端子14と、外部出力手段40の端子43が一対一で接続する。
【0079】
コネクタ基板10と外部出力手段40は嵌合部を有し、その嵌合部で外部出力端子14と端子43が接続されていることが好ましい。例えば、コネクタ基板10または外部出力手段40のいずれか一方を凹状に加工し、残りの一方を凸状に加工する。このように加工することで、凸状に加工された部分が、凹状に加工された部分に嵌合する。このように嵌合部を設けることで、外部出力端子14と端子43の接点がずれることを避けることができる。
【0080】
また
図5に示すように、コネクタ基板10と外部出力手段40の間に開口部を有するガイド部材47を設けてもよい。ガイド部材47を設けることで、コネクタ基板10と外部出力手段40の両方を加工する必要が無くなる。コネクタ基板10又は外部出力手段40のいずれか一方に凸状に加工された凸部を設ければ、この凸部がガイド部材47の開口部に嵌合することができる。凸部は、端子43が形成された外部出力手段40側に設けることが好ましい。端子43の周囲は、外部出力端子14の周囲と比較して配線数が少ないためである。
【0081】
ガイド部材47には、その周方向の位置を決める基準点を設けることが好ましい。外部出力端子14と端子43は一対一で対応するため、異なる端子同士が接続されると、誤った信号を信号処理手段で処理することになる。基準点を設けることで、外部出力端子14と端子43の対応関係がずれることを抑制できる。基準点は、例えば
図5に示すように、ガイド部材47に設けた突起部47A等を用いることができる。この突起部47Aを、ガイド部材47の開口部に嵌合される凸部に設けた切込部47Bと合せることで、外部出力端子14と端子43との位置関係を合せることができる。
【0082】
基準点は、ガイド部材47を設ける場合に限られず、コネクタ基板10又は外部出力手段40のいずれか一方に凸部、もう一方に凹部を形成する場合も同様に設けることが好ましい。
【0083】
またコネクタ基板10と外部出力手段40とは、磁石48によって接続されていることが好ましい。磁石48によって互いを接続することで、着脱をより容易に行うことができる。磁石48は、例えば
図5に示すように、コネクタ基板10の外部出力手段40との接続面に対して反対側の面と、外部出力手段40の内部に設けることができる。もしくは端子43を導電性磁石にすることもできる。
【0084】
<センサー>
センサー20は、
図1に示すように、測定したい箇所に適宜設けられている。そのため、コネクタ基板10に対して規則的に配列される必要はなく、コネクタ基板10に対して非規則的に配置されてもよい。
【0085】
センサー20の種類は特に問わない。例えば、フォトダイオード、温度センサー、歪みセンサー、圧力センサー等を用いることができる。また場所毎に異なるセンサーを用いてもよい。
【0086】
センサーとしては、物理量の変化によってセンサーの電流または電圧が変化すれば特に制限はされないが、回路の簡便さなどから物理量によって抵抗が変化し、両端の電圧が変化する可変抵抗型センサーが望ましい。物理量としては、音、光、温度、圧力、歪みからなる群の少なくとも1つを好適に用いることができる。この際、センサーの抵抗の抵抗値は後述する配線30の配線抵抗の50倍以上であることが好ましい。コネクタ基板10とセンサー20との距離は、場所によって異なるが、センサーの抵抗を配線抵抗の50倍以上とすることで、配線30の配線抵抗の影響を排除することができる。
【0087】
センサー20には、水系のインクを用いたセンサーを用いることが好ましい。水系のインクを用いたセンサーとは、導電性粒子をエラストマーの水分散物に混合したインクである。このインクを用いて印刷、乾燥することにより、導電性粒子がエラストマーのフィルムにランダムに分散したものが得られる。このセンサーは、引っ張りや圧縮、温度変化による熱膨張・収縮によって導電性粒子間距離が変化することにより、センサー両端の抵抗が変化する。水系のインクを用いたセンサーは非常に薄く、測定対象に対する追従性が高い。そのため、正確かつ安定的な測定を行うことができる。
【0088】
<配線>
配線30は、各センサー20とコネクタ基板10とを接続する導電体である。洗濯等の処理や、装着者の汗等の影響を考慮すると、配線30は周囲を絶縁体でコートされていることが好ましい。
【0089】
配線30は導電糸からなり、布体50に編み込まれていることが好ましい。布体50に配線30が編み込まれることで、布体50の動きに配線30が追従することができる。
【0090】
配線30は、人体等と接触する面と反対側に配設されることが好ましい。人体等と接触する部分に導電性を有する配線30を配設すると、汗等によるショートが生じる恐れが高まる。そのため、配線30は人体等と接触する部分から離れた位置に配設することが好ましい。
【0091】
配線30に用いる導電糸としては、鉄、ステンレス等の金属製のものや、ポリエステルなどの一般的な糸の表面を金、銀、銅、ニッケル、硫化銅などでコートしたものを用いることができる。中でも金、銀、銅コート糸は電気抵抗が小さく、生体に対して安全で、糸の強度や撚りを自由に選べることができるため、布体50を洗濯した場合にあっても電気抵抗の変化が比較的少なく、ミシンなどの生産性が高いため好ましい。
【0092】
配線30は、
図1に示すように、各センサー20からコネクタ基板10に至るまで、配線30同士が平面視で交差しないことが好ましい。ここで、「平面視で交差しない」とは、センサーシステムが形成された外表面側から見て、配線30が交差していないことを意味する。
【0093】
配線30は、センサー20とコネクタ基板10を接続するため、広い範囲に配設され、動作に対する追従性が要求される。そのため、配線30をコートできる絶縁体の材料、厚み等には制限がある。このような絶縁体では、絶縁性を十分得られない場合があり、配線30同士が交差する部分でショートするおそれがある。特に、装着者が汗をかいている場合や、洗濯等の処理を行った時は、ショートするおそれが顕著に高まる。
【0094】
これに対し、コネクタ基板10に用いる基材11には、前述のように高い絶縁性を有するポリイミド等を用いることができる。そのため、コネクタ基板10の配線パターン13同士が平面視で交差していても、ショートすることはない。
【0095】
つまり、配線30が各センサー20からコネクタ基板10に至るまで互いに平面視で交差しないことで、複数の配線30同士がショートすることを避けることができる。
【0096】
<信号処理手段>
信号処理手段では、外部出力手段50によって外部に出力された信号を処理する。具体的には、コネクタ基板10の対応する第1出力端子14Aと第2出力端子14Bの電位を測定し、その結果からセンサー20の動作を検出する。そして得られた複数のセンサー20の動作の情報から体の運動や心電、筋電、呼吸などの生体情報をえる。
【0097】
信号処理手段としては、公知のものを採用する事ができる。中でも、生体情報に変換する際に機械学習する物が好ましい。「機械学習」は、特定の生体の状態とそのときのセンサー20の値を予め対応づける学習を行い、その学習結果から逆にセンサー20の値を生体情報に変換することを意味する。例えば、人間が運動することにより、腕、脚、胴体にあるセンサー20が変形して信号が変化する。また腕のみを見ても、曲げ、伸ばし、捩り等の動作毎でセンサー20に生じる信号は異なる。換言すると、特定の部分で特定の行動によって発生した信号は、信号が発生した部分及び動作の情報も有していると言える。そこで、これらの情報を処理するごとに、コンピューターに学習させることで、同様の部分で同様の動作が生じた際に、コンピューターが自身で信号をより適切に処理することができる。すなわち、信号処理手段が機械学習することで、より多くの情報を素早く同時に得ることができる。
【0098】
本発明の一態様に係るコネクタ基板10を用いることにより、人体等の様々な部分に設けられたセンサー20からの信号を仮想的にマトリックス変換することができる。その結果、センサー20が非規則的に配置された場合であっても、信号をコネクタ基板10で集約できる。
【0099】
またコネクタ基板10で、信号をマトリックス変換することにより、コネクタ基板10内における外部入力端子12の端子数に対する外部出力端子14の端子数を低減できる。
【0100】
外部出力端子14の数を低減できると、例えば、以下のような有利な効果を生み出す。例えば、外部出力端子14の数が低減されると、コネクタ基板10のサイズが小さくなる。コネクタ基板10のサイズが小さいと、センサーシステム100を装着時の違和感を低減できる。他にも、コネクタ基板10と外部出力手段40との接続が容易になる。
【0101】
またコネクタ基板10に洗濯等により外力が加わった際にも、コネクタ基板10のサイズが小さければ、変形する面積を小さくできる。その結果、外力による破損等の恐れが避けられる。コネクタ基板10がフレキシブルであれば、その効果はより顕著である。
【0102】
本発明の一態様に係るセンサーシステム100は、上述のコネクタ基板10を有するため、装着時の違和感が少ない。また外部出力手段40の着脱が容易であり、洗濯等の処理を容易に行うことができる。特に、配線30同士を配線パターン13以外の部分で交差させないことにより、より洗濯等の水分が加わる作業でのショート等を避けることができる。