(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749738
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F27D 7/04 20060101AFI20200824BHJP
F27B 5/16 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
F27D7/04
F27B5/16
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-94728(P2017-94728)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-189344(P2018-189344A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河野 悠大
(72)【発明者】
【氏名】遠山 暦紀
(72)【発明者】
【氏名】志村 英輝
【審査官】
河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−073230(JP,U)
【文献】
実開昭61−164023(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/04
F27B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け、前記の熱風を炉の内部で循環させるにあたり、炉の内部に被処理物の導入方向に沿った一対の案内規制板を、導入される被処理物の両側に配置させるように設け、この一対の案内規制板の間を通して熱風を被処理物の上方から下方に導くと共に、被処理物の下方に導かれた熱風を被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内する循環用案内部材を設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理炉において、前記の案内規制板を蓄熱材で構成すると共に、前記の案内規制板を開口部の側壁から開口部と反対側における側壁に至るように設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項3】
炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け、前記の炉の内部に被処理物を導入させて保持させる複数のローラー部材を設け、前記のローラー部材の上に保持された被処理物の上方から下方に向けて熱風を吹き付けるにあたり、被処理物の上方に前記のローラー部材の軸方向に沿ったスリット状の熱風吹出し口を複数設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項4】
炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け、前記の開口部の下端部に、前記の遮蔽用熱風吹出し口から吹き出された熱風を炉の内部側に案内する遮蔽用案内部材を設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させるにあたり、炉の内部に被処理物の導入方向に沿った一対の案内規制板を、導入される被処理物の両側に配置させるように設け、この一対の案内規制板の間を通して熱風を被処理物の上方から下方に導くと共に、被処理物の下方に導かれた熱風を被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内する循環用案内部材を設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の熱処理炉において、前記の熱風を前記の開口部と反対側における側壁の内面に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の反対側熱風吹出し口を設けたことを特徴とする熱処理炉。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の熱処理炉において、加熱装置により加熱された熱風を炉の内部で循環させるにあたり、前記の加熱装置によって加熱された熱風を送風ファンにより炉の内部に導入された被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて被処理物を加熱させ、被処理物を加熱させた後の熱風を前記の加熱装置に導いて加熱させて循環させることを特徴とする熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉に関するものである。特に、前記のように加熱装置により加熱された熱風を炉の内部に導入された被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させるにあたり、被処理物の上方から下方に向けて吹き付ける熱風を炉の内部で循環させると共に、扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたりする際に、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部の熱風が外部に吹き出したりするのを抑制して、炉の内部の温度が低下するのを防止するようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱処理炉において被処理物を加熱させるにあたっては、炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させるようにしたものが用いられている。
【0003】
ここで、このような熱処理炉においては、扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたりする際に、扉が開かれた開口部を通して、炉の外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部の熱風が外部に吹き出したりして、炉の内部の温度が低下するという問題があった。
【0004】
このため、特許文献1においては、前記の扉の外部側にエアーカーテン装置を設け、前記の扉を開けた時だけに、前記のエアーカーテン装置を作動させて開口部の外側にエアーカーテンを形成し、このエアーカーテンにより、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部の熱風が外部に吹き出したりするのを抑制するようにしたものが提案されている。
【0005】
また、特許文献2においては、前記の扉の下部からエアーを吹き出すエアーカーテン機構を設け、前記の扉の下部からエアーを吹き出して開口部にエアーカーテンを形成し、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部の熱風が外部に吹き出したりするのを抑制するようにしたものが提案されている。
【0006】
しかし、前記の特許文献1、2に示す何れのものにおいても、エアーカーテンとしては、炉の内部よりも温度が低い外気を用いており、扉を開けて前記の開口部を通して、被処理物を炉の内部に導入させたり、加熱された被処理物を炉の内部から取り出したり際に、エアーカーテンに用いた温度の低い外気が炉の内部に流れ込んだり、この温度の低い外気が加熱された被処理物にあたって、被処理物の上面部だけが冷やされて、被処理物に対する処理が不均一になったりするという問題があった。
【0007】
また、前記のように温度の低い外気が炉の内部に流れ込んだ場合に、炉の内部で熱風を循環する送風ファンを回転させると、炉の内部に流れ込んだ温度の低い外気が炉の内部全体に広がって炉の内部の温度が低下するため、扉を開けた場合には、送風ファンの回転を停止させることも行われていたが、その停止や再起動に時間を要するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−5124号公報
【特許文献2】特開2007−187398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を炉の内部に導入された被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させるようにした熱処理炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、本発明においては、加熱装置により加熱された熱風を炉の内部に導入された被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させるにあたり、被処理物の上方から下方に向けて吹き付ける熱風を炉の内部で循環させると共に、扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたりする際に、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部の熱風が外部に吹き出したりするのを抑制して、炉の内部の温度が低下するのを防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る熱処理炉においては、前記のような課題を解決するため、炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け
、前記の熱風を炉の内部で循環させるにあたり、炉の内部に被処理物の導入方向に沿った一対の案内規制板を、導入される被処理物の両側に配置させるように設け、この一対の案内規制板の間を通して熱風を被処理物の上方から下方に導くと共に、被処理物の下方に導かれた熱風を被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内する循環用案内部材を設けるようにした。
【0012】
そして、本発明に係る熱処理炉において、前記のようにスリット状の遮蔽用熱風吹出し口から、熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるようにすると、前記のように扉を開けて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたり、炉の内部から引き出したりする際に、前記のスリット状の遮蔽用熱風吹出し口から開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けられる熱風により、開口部に熱風によるエアーカーテンが形成されるため、従来のような炉の外部の冷気(常温の空気)を用いたエアーカーテンよりも、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部で循環される熱風が外部に吹き出したりするのが防止される。
【0013】
また、前記の熱処理炉においては、前記の熱風を前記の開口部と反対側における側壁の内面に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の反対側熱風吹出し口を設けることが好ましい。このようにスリット状の反対側熱風吹出し口を設け、この反対側熱風吹出し口から熱風を前記の開口部と反対側における側壁の内面に沿って上方から下方に向けて吹き付けると、この熱風によって開口部と反対側における側壁が加熱され、開口部と反対側における側壁の内面の温度が外部の冷気が外壁を熱伝導して低くなって、炉の内部の温度が低下したり、不均一になったりするのが防止される。なお、ここでいう「スリット状」の吹出し口とは、穴を列に並べた吹き出し口も含まれる。
【0014】
また、前記の熱処理炉において、加熱装置により加熱された熱風を炉の内部で循環させるにあたっては、前記の加熱装置によって加熱された熱風を送風ファンにより炉の内部に導入された被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて被処理物を加熱させ、被処理物を加熱させた後の熱風を前記の加熱装置に導いて加熱させて循環させるようにすることができる。
【0015】
また、
本発明の熱処理炉において
は、前記の
ように熱風を炉の内部で循環させるにあたっ
て、炉の内部に被処理物の導入方向に沿った一対の案内規制板を導入される被処理物の両側に配置させるように設け、この一対の案内規制板の間を通して熱風を被処理物の上方から下方に導くと共に、被処理物の下方に導かれた熱風を被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内する循環用案内部材を設けるように
した。このようにすると、前記の案内規制板によって熱風が被処理物の上から離れた両側の位置に導かれるのが抑制され、この一対の案内規制板の間を通して、熱風が被処理物の上方から下方に向けて適切に案内されるようになると共に、被処理物の下方に導かれた熱風が、前記の循環用案内部材により被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内されて循環されるようになる。また、このように被処理物の下方に導かれた熱風が、前記の循環用案内部材により被処理物の両側に設けられた前記の案内規制板の外側に案内されて炉の内部で循環される途中において、この熱風が前記の加熱装置により十分に加熱されて循環されるようになり、十分に加熱された熱風が安定して炉の内部に導入させた被処理物の上方から下方に向けて吹き付けられて、被処理物が十分に加熱されるようになる。
【0016】
ここで、前記の案内規制板として、蓄熱材で構成されたものを用いると共に、この案内規制板を開口部の側壁から開口部と反対側における側壁に至るように設けることが好ましい。このようにすると、前記の案内規制板に熱が蓄熱され、案内規制板からの輻射により被処理物が均一に加熱されるようになると共に、被処理物が新しく導入された場合、この被処理物が前記のように蓄熱され案内規制板からの輻射によって速やかに加熱されるようになる。ここでいう、蓄熱材とは、板状のセラミックファイバーボードやセラミック板、カーボン板など、どのようなものであってもよい。
【0017】
また、
本発明の他の熱処理炉においては、
炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け、前記の炉の内部に被処理物を導入させて保持させる複数のローラー部材を設け、前記のローラー部材の上に保持された被処理物の上方から下方に向けて熱風を吹き付けるにあたり、被処理物の上方に前記のローラー部材の軸方向に沿ったスリット状の熱風吹出し口を複数設けるように
した。このようにすると、ローラー部材の軸方向に沿ったスリット状の熱風吹出し口から吹き出された熱風が、ローラー部材に邪魔されずにスムーズにローラー部材の下方に導かれて、炉の内部で循環されるようになる。
【0018】
また、
本発明の他の熱処理炉においては、
炉の側壁に設けられた開口部の開閉を行う扉を設け、前記の扉を開閉させて開口部から被処理物を炉の内部に導入させ、加熱装置により加熱された熱風を前記の被処理物の上方から下方に向けて吹き付けて、被処理物を加熱させる熱処理炉において、前記の熱風を炉の内部で循環させると共に、前記の熱風を前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の遮蔽用熱風吹出し口を設け、前記の開口部の下端部に、前記の遮蔽用熱風吹出し口から吹き出された熱風を炉の内部側に案内する遮蔽用案内部材を設ける
ようにした。このようにすると、前記の遮蔽用熱風吹出し口から開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けられた熱風が、この遮蔽用案内部材によって炉の内部に案内され、開口部の下端における扉との隙間を通して外部に吹き出されるのが抑止されるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明における熱処理炉においては、前記のように扉を開けて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたりする際に、熱風をスリット状の遮蔽用熱風吹出し口から前記の開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けるようにしたため、スリット状の遮蔽用熱風吹出し口から開口部に沿って上方から下方に向けて吹き付けられる熱風により、開口部に熱風によるエアーカーテンが形成され、従来のような炉の外部の冷気(常温の空気)を用いたエアーカーテンよりも、扉が開かれた開口部を通して、外部の冷気が炉の内部に流れ込んだり、炉の内部で循環される熱風が外部に吹き出したりするのが防止される。
【0020】
この結果、本発明における熱処理炉においては、前記のように扉を開けて開口部から被処理物を炉の内部に導入させたり、炉の内部から引き出したりする際に、炉の内部の温度が低下するのを防止させることができると共に、加熱装置により加熱された熱風を被処理物の上方から下方に向けて吹き付ける作業を停止させたりする必要もなく、被処理物の入れ換えが素早く行え、被処理物を効率よく処理することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱処理炉において、炉の側壁に設けられた扉を開けて開口部から被処理物を炉の内部に導入させる状態を示し、被処理物の導入方向に沿って炉を切断した概略断面説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係る熱処理炉において、炉の側壁に設けられた扉を開けて開口部から被処理物を炉の内部に導入させる状態を示した部分拡大断面説明図である。
【
図3】前記の実施形態に係る熱処理炉において、炉の内部に被処理物を導入させて扉を閉じて被処理物を熱処理する状態を示し、被処理物の導入方向に沿って炉を切断した概略断面説明図である。
【
図4】前記の実施形態に係る熱処理炉において、炉の内部に被処理物を導入させて扉を閉じて被処理物を熱処理する状態を示し、被処理物の導入方向と直交する方向に沿って炉を切断した概略断面説明図である。
【
図5】前記の実施形態に係る熱処理炉の上面側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る熱処理炉を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る熱処理炉は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0023】
ここで、この実施形態に係る熱処理炉においては、
図1〜
図5に示すように、炉10の一方の側壁11aに、被処理物Wを炉10に出し入れするための開口部12を設けている。そして、この開口部12の外側に開口部12の開閉を行う扉13を設けると共に、炉10の側壁11aと対向するこの扉13の面の周囲に、炉10の内部と外部とを遮蔽するためのパッキン材13aを取り付けている。
【0024】
また、前記の開口部12から炉10の内部に、被処理物Wを保持させる複数のローラー部材14を被処理物Wの送り方向に所要間隔を介して設け、各ローラー部材14を回転させて被処理物Wを移動させるようにしている。
【0025】
また、前記の熱処理炉においては、加熱された熱風を前記のローラー部材14に保持された被処理物Wの上方から下方に向けて吹き付けるにあたり、前記の炉10の天井15の中央部に設けられた回転装置16によって回転される送風ファン16aを、前記の天井15を貫通するようにして炉10の内部に設けると共に、前記の回転装置16から離れた天井15の周辺部分に、天井15を貫通して加熱部17aが炉10の内部に延出された複数の加熱装置17を設けている。なお、この実施形態においては、回転装置16から離れた天井15の周辺部分に4つの加熱装置17を設けた例を示しているが、炉10の大きさなどに応じて、さらに多くの加熱装置17を設けるようにすることができる。
【0026】
また、前記の熱処理炉においては、前記の送風ファン16aを回転させて加熱装置17により加熱された熱風をローラー部材14に保持された被処理物Wの上方から下方に向けて吹き付けるにあたり、炉10の内部に被処理物Wの導入方向に沿った一対の案内規制板18を、前記の開口部12が設けられた側壁11aから開口部12と反対側における側壁11bに至るようにして、前記の被処理物Wの両側に配置させると共に、各案内規制板18の上端から前記の送風ファン16aとの間に上部案内部材19を設けている。そして、加熱装置17によって加熱された後の熱風を前記の上部案内部材19を介して送風ファン16aに導き、この送風ファン16aによって熱風を開口部12が設けられた側壁11aから開口部12と反対側における側壁11bに至るように設けた一対の案内規制板18の間を通して熱風を被処理物Wの上方から下方に導くようにしている。このようにすると、加熱装置17によって加熱された後の熱風が、前記の一対の案内規制板18の間を通してローラー部材14に保持された被処理物Wの上方から適切に吹き付けられるようになる。
【0027】
ここで、前記の案内規制板18として、この実施形態においては、蓄熱性のあるセラミックファイバーで構成されたものを用いるようにしている。このようにすると、蓄熱性のセラミックファイバーで構成された案内規制板18に加熱装置17や熱風による熱が蓄熱され、この案内規制板18からの輻射によって炉10の内部に導入された被処理物Wが均一に加熱されると共に、炉10の内部に新しい被処理物Wが導入された場合にも、案内規制板18に蓄熱された熱により、新しい被処理物Wを早く加熱させることができるようになる。
【0028】
また、この実施形態の熱処理炉においては、前記のように送風ファン16aによって熱風を一対の案内規制板18の間を通して被処理物Wの上方から吹き付けるにあたり、前記の一対の案内規制板18の間において、前記の送風ファン16aによって下方に向けて送風される熱風を前記の被処理物Wに案内する熱風案内部材20を、前記の案内規制板18と同様に、開口部12が設けられた側壁11aから開口部12と反対側における側壁11bに至るように設けている。
【0029】
ここで、この熱風案内部材20としては、前記のローラー部材14の軸方向に沿って下方に向かって収縮したスリット状の熱風吹出し口21が複数設けられたもの用い、この熱風案内部材20における前記の開口部12側の部分に、開口部12に沿って熱風を上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の部分が長く伸びた遮蔽用熱風吹出し口21aを設ける一方、開口部12と反対側における側壁11bの内面に沿って熱風を上方から下方に向けて吹き付けるスリット状の部分が長く伸びた反対側熱風吹出し口21bを設けている。
【0030】
そして、前記の遮蔽用熱風吹出し口21aから開口部12に沿って熱風を上方から下方に向けて吹き付けると、熱風によるエアーカーテンが開口部12の部分に形成され、前記のように扉13を開けて、開口部12から被処理物Wを炉10の内部に導入させたりする際に、開かれた開口部12を通して外部の冷気が炉10の内部に流れ込んだり、炉10の内部で循環される熱風が外部に吹き出したりするのが防止される。また、前記の反対側熱風吹出し口21bから開口部12と反対側における側壁11bの内面に沿って熱風を上方から下方に向けて吹き付けると、この熱風によって開口部12と反対側における側壁11bが加熱され、開口部12と反対側における側壁11bの内面部分の温度が外部(外面)の冷気の温度が側壁11bを伝導して温度が低くなって、被処理物Wの周辺の温度が低下したり、不均一になったりするのが防止される。なお、ここでいう冷気とは、炉10の外部の常温空気のことである。
【0031】
また、この実施形態の熱処理炉においては、前記の開口部12の部分に被処理物Wを炉10の内部に出し入れするためのローラー部材14を設けると共に、このローラー部材14よりも外部側における開口部12の下端部に、前記の遮蔽用熱風吹出し口21aから吹き付けられた熱風を炉10の内部側に案内する断面L字状になった遮蔽用案内部材22を設けている。このようにすると、前記の遮蔽用熱風吹出し口21aから開口部12に沿って上方から下方に向けて吹き付けられた熱風が、開口部12の部分に設けられたローラー部材14の外部側に流れたとしても、この熱風が前記の遮蔽用案内部材22によって炉10の内部に案内され、熱風が開口部12の下端部から外部に流れ出すのが抑制される。
【0032】
また、この実施形態の熱処理炉においては、熱風をローラー部材14に保持された被処理物Wの上方から下方に向けて吹き付けるにあたり、前記のように熱風案内部材20において、前記のローラー部材14の軸方向に沿ったスリット状の各熱風吹出し口21から熱風を上方から下方に向けて吹き付けるようにしたため、各熱風吹出し口21から吹き付けられた熱風が、各ローラー部材14の間を通してローラー部材14の下方にスムーズに導かれるようになる。(
図2参照。)
【0033】
また、この実施形態の熱処理炉においては、前記のように各ローラー部材14の間を通してローラー部材14の下方に導かれた熱風を炉10の内部で循環させるにあたり、前記のようにローラー部材14の下方に導かれた熱風を被処理物Wの両側における各案内規制板18の外側に案内する循環用案内部材23を、ローラー部材14の下方において炉10の両側に向けて設けている。
【0034】
そして、前記のようにローラー部材14の下方に導かれた熱風を、前記の両側の循環用案内部材23により被処理物Wを保持したローラー部材14の上方における両側の案内規制板18の外側に導き、このように両側の案内規制板18の外側を通して上方に導かれる熱風を前記の各加熱装置17により加熱させ、このように加熱装置17によって加熱された後の熱風を、前記の上部案内部材19を介して前記の送風ファン16aに導き、この送風ファン16aによって熱風を、前記のように熱風案内部材20を通してローラー部材14に保持された被処理物Wの上方から下方に向けて吹き付けて、炉10の内部で循環させるにようにしている。
【0035】
このようにすると、前記のように扉13を開けて開口部12から被処理物Wを炉10の内部に導入させたりする際に、前記のスリット状の遮蔽用熱風吹出し口21aから開口部12に沿って上方から下方に向けて吹き付けられる熱風によって、開口部12に熱風によるエアーカーテンが形成され、扉13が開かれた開口部12を通して、外部の冷気が炉10の内部に流れ込んだり、炉10の内部で循環される熱風が外部に吹き出したりして、炉10の内部の温度が低下するのを防止することができると共に、加熱装置17により加熱された熱風を送風ファン16aにより被処理物Wの上方から下方に向けて吹き付ける作業を停止させる必要もなく、被処理物Wを効率よく処理することができるようになる。
【0036】
また、炉10の内部に被処理物Wを導入して扉13を閉めている間も、遮蔽用熱風吹出し口21aからの熱風気流が作用して扉13の内面が加熱されるため、扉13の外部の冷気の温度が扉13を伝導して、被処理物Wの周辺の温度が低下したり、不均一になったりするのが防止される。
【0037】
なお、前記の実施形態においては、エアーカーテンを被処理物Wの上方から下方に向けて垂直方向に熱風を吹き付けるようにしたが、構造を工夫して、エアーカーテンを水平方向に吹き付けるようにしたり、下から上に吹付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 :炉
11a :開口部側の側壁
11b :開口部と反対側の側壁
12 :開口部
13 :扉
13a :パッキン材
14 :ローラー部材
15 :天井
16 :回転装置
16a :送風ファン
17 :加熱装置
17a :加熱部
18 :案内規制板
19 :上部案内部材
20 :熱風案内部材
21 :熱風吹出し口
21a :遮蔽用熱風吹出し口
21b :反対側熱風吹出し口
22 :遮蔽用案内部材
23 :循環用案内部材
W :被処理物