(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749746
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】共振チャンバを備える蒸気タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/16 20060101AFI20200824BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20200824BHJP
F01D 25/30 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
F01D5/16
F01D25/24 C
F01D25/24 Z
F01D25/30 A
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-60730(P2015-60730)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183693(P2015-183693A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2018年3月9日
【審判番号】不服2019-13875(P2019-13875/J1)
【審判請求日】2019年10月17日
(31)【優先権主張番号】14161231.7
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スティーヴン ライス
【合議体】
【審判長】
金澤 俊郎
【審判官】
谷治 和文
【審判官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−215100(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0189546(US,A1)
【文献】
特開平4−308301(JP,A)
【文献】
特開2003−43861(JP,A)
【文献】
特開平5−232967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D5/10
F01D5/16
F010D25/04-25/06
F01D25/24-25/26
F01D25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンであって、
ロータ(8)と、
該ロータ(8)に取り付けられた翼根部(13)から先端部(22)まで半径方向に延在する、周方向に配分されて配置された、回転する動翼(12)の列と、
前記動翼(12)の列を周方向に取り囲む外環(14)と、
共振チャンバ(26)と、
を備え、
前記共振チャンバ(26)は、前記外環(14)に面した前記動翼(12)の翼根部(13)の半径方向突出部により画成された前記外環(14)の領域に、開口(24)を有し、
前記共振チャンバ(26)は、2.5〜6エンジンオーダの周波数用に構成され、
前記共振チャンバ(26)は、ヘルムホルツ共振器(26)として構成され、
前記ヘルムホルツ共振器(26)は、多孔内壁を備えるチャンバとを有している、蒸気タービン。
【請求項2】
前記開口(24)は、前記動翼(12)の前記先端部(22)とは反対側に位置している、請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
周方向に配分されて配置された複数の前記共振チャンバ(26)を有する、請求項1又は2記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記共振チャンバ(26)は、3〜5エンジンオーダの周波数用に構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記蒸気タービンは、下流の最終段(18)を有する多段式の蒸気タービンであり、前記動翼(12)の列は、前記最終段(18)の動翼(12)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の蒸気タービン。
【請求項6】
前記蒸気タービンは、大気圧以下の排気圧で運転するように構成された低圧蒸気タービンである、請求項1から5までのいずれか1項記載の蒸気タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して蒸気タービンに関し、より詳細には、蒸気タービンの動翼の振動を低減させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの動翼は、その設計が複雑であることから、モードと呼ばれる動翼の固有振動数に対応する振動数の振動を被る恐れがある。各モードは、タービンの回転軸に沿った振動、タービンの回転軸に対して垂直な振動等、といった、異なるタイプの振動に関連している。動翼の過度な振動を防止するために、動翼の標準位置、標準設計手順に関しては、前記モードが、蒸気タービンの運転周波数のハーモニクス間に位置するように、動翼を構成することが規定されている。しかしながら、製造誤差、ロータに対する動翼の取付け変更、侵食による動翼の幾何学形状変化、タービンの運転周波数変更、及びその他の要因により、モード振動数は、運転周波数のハーモニクスに近づいてしまう。付加的に、損傷を惹起する非同期振動も生じる恐れがある。典型的には、蒸気タービンにおける非同期振動は、低蒸気流と高背圧とが、タービン動翼のランダム加振を生ぜしめるバフェッティングの結果として、又はタービンロータのねじり応力の結果として生じる可能性がある。
【0003】
米国特許第4722668号公報に記載されたようなマグネット継手を含む、多様な振動抑制方法が知られている一方で、米国特許出願公開第2013/0280050A1号明細書に記載されたような流体注入や、米国特許第4878810A号公報に記載されたような動翼の同調は、なお、択一的な振動防止方法を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4722668号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0280050A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4878810A号公報
【発明の概要】
【0005】
蒸気タービンの動翼の振動抑制システムを説明する。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこの問題に、独立請求項に記載の構成手段により対処しようとするものである。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明では、共振チャンバが設けられており、該共振チャンバは、前記外環に面した前記動翼の翼根部の半径方向突出部により画成された前記外環の領域に、開口を有している。
【発明の効果】
【0008】
本明細書は、ヘルムホルツ共振器といった受動的な共振器を、動翼の回転部分の軸方向上部に配置して、励振周波数を変更する、という概念に基づくものである。
【0009】
1つの態様では、蒸気タービンは、ロータと、周方向に配分されて配置された回転動翼列とを備えており、回転動翼は、ロータに取り付けられた翼根部から先端部まで、半径方向に延在している。回転動翼列は、周囲を外環によって取り囲まれている。蒸気タービンは更に、共振チャンバを有しており、この共振チャンバは、動翼の先端領域とは反対側に位置する外環に面した、動翼の翼根部の半径方向突出部により画成される外環の領域に、開口を有している。このような配置により、共振器が動翼列の励振周波数を変化させる、ということが可能になる。
【0010】
1つの態様は、周方向に配分されて配置された複数の共振チャンバを有している。
【0011】
1つの態様では、共振チャンバは、好適には2.5〜6エンジンオーダの周波数用、より好適には3〜5エンジンオーダの周波数用に構成されている。
【0012】
1つの態様では、共振チャンバはヘルムホルツ共振器として構成されている。
【0013】
1つの態様では、蒸気タービンは、下流の最終段を有する多段式の蒸気タービンであり、共振チャンバの開口が配置される動翼列は、最終段の動翼である。蒸気タービンは、大気圧以下の排気圧で運転するように構成された、低圧蒸気タービンであってよい。
【0014】
本発明の更なる課題は、従来技術の欠点及び短所を克服するか、少なくとも改良すること、又は有用な代替を提供することにある。
【0015】
本明細書の別の態様及び利点は、本発明の実施形態を例示した添付図面に関する、以下の説明により明らかになる。
【0016】
以下に例として、本明細書の1つの実施形態を添付の図面を参照してより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】共振チャンバを有する蒸気タービンの好適な実施形態を概略的に示した図である。
【
図2】ヘルムホルツ共振器を備える、
図1に示した蒸気タービンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本明細書の実施形態を図面につき説明する。同じ符号は終始、同じ要素に対して用いられる。以下の記載には説明目的で多数の具体的な詳細が記載されており、本明細書の十分な理解を図っている。しかしながら本明細書は、これらの具体的な詳細無しで実施されてよく、ここに記載された実施形態に限定されてはいない。
【0019】
図1に示すように、1つの実施形態において蒸気タービンは、ロータ8と、ロータ8に組み付けられた翼根部13から先端部分22まで半径方向に延びる、周方向に配分されて配置された回転動翼12の列と、動翼12の列を周方向に取り囲んで外側の環14を形成する外環14とを有している。蒸気タービンの1つの段18は、静翼10の1つの列と、回転動翼12の1つの列とを組み合わせたものとして規定される。このような蒸気タービンは、発電に使用され得る。
【0020】
図1に示した実施形態の多段式蒸気タービンにおいて、最終段18は、多段式蒸気タービンの下流の段として規定されている。
【0021】
1つの実施形態では、蒸気タービンは、大気圧以下の排気圧を有することにより規定される、低圧蒸気タービンである。
【0022】
図1に示した実施形態は、共振チャンバ26を有しており、共振チャンバ26は、環14に面した動翼12の翼根部13の半径方向突出部20によって画成される環14の領域において、外環14に設けられた開口24を有している。別の実施形態では、開口24は、動翼12の先端部領域22とは反対側に位置している。
【0023】
共振チャンバ26は、開口を備えた、包囲された空間として規定され、この包囲された空間は、内部で圧力波を反射するように構成された内側表面を有している。チャンバに入射する波は跳ね返って、チャンバ内を低損失で進行する。チャンバの材料、特に実際の内壁の材料、チャンバの形状及び開口の位置、並びに内壁の仕上げ(多孔率)は、共振チャンバの減衰効果に寄与する。これらの実施形態において、共振チャンバ26は、
図2に示すヘルムホルツ共振器26を含め、共振チャンバ26の機能を果たすことが可能な公知技術の如何なる形態を取っていてもよい。
【0024】
特に、低圧タービンの最終段の動翼に関しては、共振チャンバの周波数を2.5〜6エンジンオーダに、特に3〜5エンジンオーダに同調させると、特に有利であるということが判った。
【0025】
本明細書は、最も実際的な実施形態であると考えられるものを図示して説明しているが、当業者は、本明細書が別の特有の形態で実施され得るということを認識されたい。よって、上述した実施形態は、あらゆる点において例示したものに過ぎず、限定的なものではないと理解される。本明細書の範囲は、前述の説明よりもむしろ、添付の請求の範囲によって示されるものであり、その意味、範囲及び均等のあらゆる変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
8 ロータ、 10 静翼、 12 動翼、 13 翼根部、 14 外環、 18 最終段、 20 半径方向突出部、 22 先端部、 24 開口、 26 共振チャンバ