特許第6749757号(P6749757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000002
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000003
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000004
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000005
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000006
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000007
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000008
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000009
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000010
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000011
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000012
  • 特許6749757-放射線断層撮影システム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749757
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】放射線断層撮影システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20200824BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   A61B6/03 360E
   A61B6/12
   A61B6/03 377
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-248141(P2015-248141)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-113044(P2017-113044A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】西出 明彦
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−213671(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/155280(WO,A1)
【文献】 特開2005−143759(JP,A)
【文献】 特開2007−312892(JP,A)
【文献】 特開2014−054425(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/054314(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/162101(WO,A1)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2013−0003693(KR,U)
【文献】 特開2001−212129(JP,A)
【文献】 国際公開第02/056771(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を放射線でスキャンすることによって得られた放射線断層像のデータに基づいて、前記被検体の領域の外に存在する人体を前記放射線断層像が画像再構成されるスライス面において検出する検出部と、
前記スキャンの前に予め得られた放射線被曝線量に基づいて、前記検出部で検出された人体における放射線被曝線量の推定値を算出する算出部と、
該算出部によって算出された放射線被曝線量の推定値に基づく報知を行なう報知部と、
を備えることを特徴とする放射線断層撮影システム。
【請求項2】
前記スキャンの前に予め得られた放射線被曝線量は、一スライス面における複数箇所についての放射線被曝線量であり、
前記算出部は、前記複数箇所における放射線被曝線量の中から前記検出部で検出された人体の位置に応じて選択された放射線被曝線量に基づいて前記推定値の算出を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記複数箇所における放射線被曝線量の中から選択された放射線被曝線量を用いて補間演算を行なって前記推定値の算出を行なうことを特徴とする請求項2に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記検出対象である人体がとりうる値の範囲として設定された所要の範囲の値を有する放射線断層像のデータを特定した後、該特定されたデータと放射線断層像において対応する画素が連続する領域を特定し、該領域の大きさが、前記検出対象である人体の部位の前記放射線断層像における大きさとして設定された条件を満たす領域を、前記人体として検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項5】
前記報知部は、前記算出部によって算出された放射線被曝線量の推定値を、視覚的又は聴覚的に報知することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項6】
前記報知部は、前記算出部によって算出された放射線被曝線量の推定値が所要の閾値を超えたことを視覚的又は聴覚的に報知することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項7】
前記スキャンの前に予め得られた放射線被曝線量は、予め測定して得られた測定値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の放射線断層撮影システム。
【請求項8】
前記検出部による検出の対象となる検出領域を、前記放射線断層像のデータに基づいて表示された放射線断層像において指定する入力を受け付ける入力装置を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の放射線断層撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線被曝線量の推定値を算出する放射線断層撮影システム及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関における被検体への施術の一つとして、CTフルオロ(CT fluoro)などと呼ばれるX線CTガイド(X−ray Computed Tomography guide)下での穿刺が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該穿刺では、術者は、X線CTシステムを操作して被検体の患部周辺を必要なタイミング(timing)で単発的にあるいは連続的に撮影する。撮影によって得られた断層像は、術者に向けて設置された検査室内のモニタ(monitor)に表示される。術者は、そのモニタに表示された断層像を参照しながら、穿刺針を被検体に挿入し患部に導いていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−84800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のX線CTガイド下での穿刺において、術者の散乱X線による被曝量を低減するため、術者は例えば防護服を着用したりしている。しかし、穿刺針を保持している指や手については被曝してしまうことがある。従って、術者等の被曝線量を知りたいというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するためになされた発明は、被検体を放射線でスキャンすることによって得られた放射線断層像のデータに基づいて、前記被検体の領域の外に存在する人体を前記放射線断層像が作成されるスライス面において検出する検出部と、前記スキャンの前に予め得られた前記被検体における放射線被曝線量に基づいて、前記検出部で検出された人体における放射線被曝線量の推定値を算出する算出部と、この算出部によって算出された放射線被曝線量の推定値に基づく報知を行なう報知部と、を備えることを特徴とする放射線断層撮影システムである。
【発明の効果】
【0006】
上記観点の発明によれば、前記算出部により、例えば術者等の人体における放射線被曝線量の推定値が算出され、この放射線被曝線量の推定値に基づく報知が行われるので、術者等の放射線被曝線量を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るX線CTシステムのハードウェアの構成を概略的に示す図である。
図2】検査室の概略を示す図である。
図3図1に示すX線CTシステムの操作コンソールの機能ブロック図である。
図4】実施形態に係るX線CTシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
図5】所要の範囲の値の断層像データと断層像において対応する画素が連続する領域を説明する図である。
図6】被検体の断層像を示す図であり、所要の面積を有する領域を特定する手法を説明する図である。
図7】被検体の断層像を示す図であり、所要の面積を有する領域を特定する他の手法を説明する図である。
図8】記憶装置に記憶されているCTDI値の測定位置を示す図である。
図9】検出対象のX線被曝線量の推定値の算出の一例を説明する図である。
図10】検出対象のX線被曝線量の推定値の算出の他例を説明する図である。
図11】X線被曝線量が表示された検査室内表示装置の画面を示す図である。
図12】X線被曝線量及び警告メッセージが表示された検査室内表示装置の画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明における放射線断層撮影システムの実施の形態の一例であるX線CTシステム1が示されている。この図1に示すように、X線CTシステム1は、ガントリ(gantry)2、撮影テーブル(imaging table)4、及び操作コンソール(console)6を備えている。また、X線CTシステム1は、図2に示す後述の検査室内表示装置100及びフットスイッチ(foot switch)102を備えている。
【0009】
ガントリ2は、X線管21、アパーチャ(aperture)22、コリメータ装置(colimator device)23、X線検出器24、データ収集部25、回転部26、高電圧電源27、アパーチャ駆動装置28、回転駆動装置29、及びガントリ・テーブル制御部30を有している。
【0010】
X線管21及びX線検出器24は、開口部2Bを挟み対向して配置されている。
【0011】
アパーチャ22は、X線管21と開口部2Bとの間に配置されている。X線管21のX線焦点からX線検出器24に向けて放射されるX線をファンビーム(fan beam)やコーンビーム(cone beam)に成形する。
【0012】
コリメータ装置23は、開口部2BとX線検出器24との間に配置されている。コリメータ装置23は、X線検出器24に入射する散乱線を除去する。
【0013】
X線検出器24は、X線管21から放射される扇状のX線ビームの広がり方向(チャネル(channel)方向という)および厚み方向(列方向という)に、2次元的に配列された複数のX線検出素子を有している。各X線検出素子は、開口部2Bに配された被検体5の透過X線をそれぞれ検出し、その強度に応じた電気信号を出力する。被検体5は、例えば、人間や動物などの生体である。
【0014】
データ収集部25は、X線検出器24の各X線検出素子から出力される電気信号を受信し、X線データに変換して収集する。
【0015】
回転部26は、開口部2Bの周りに回転可能に支持されている。回転部26には、X線管21、アパーチャ22、コリメータ装置23、X線検出器24、及びデータ収集部25が搭載されている。
【0016】
撮影テーブル4は、クレードル(cradle)41、クレードル駆動装置42を有している。被検体5は、クレードル41の上に載置される。クレードル駆動装置42は、クレードル41をガントリ2の開口部2Bすなわち撮影空間に入れ出しする。
【0017】
高電圧電源27は、X線管21に高電圧及び電流を供給する。
【0018】
アパーチャ駆動装置28は、アパーチャ22を駆動しその開口を変形させる。
【0019】
回転駆動装置29は、回転部26を回転駆動する。
【0020】
ガントリ・テーブル制御部30は、ガントリ2内の各装置・各部、撮影テーブル4等を制御する。
【0021】
ガントリ2、撮影テーブル4は、図2に示すように検査室R内に設けられている。また、この検査室Rには、撮影テーブル4の近傍に、検査室内表示装置100が設けられている。この検査室内表示装置100には、後述するように各種の画像が表示される。
【0022】
図2では、検査室内表示装置100は、検査室Rの天井Cに取り付けられたアーム101によって指示されている。アーム101は可動式であり(詳細な構成は図示省略)、術者が見やすいように、検査室内表示装置100の向きや位置を調節することができるようになっている。検査室内表示装置100は、操作コンソール6と接続されている。
【0023】
また、検査室R内には、フットスイッチ102が設けられている。本例では、フットスイッチ102は、検査室Rの床Fに載置されており、操作コンソール6と接続されている。
【0024】
操作コンソール6は、検査室Rに隣接した図示しない操作室に設けられている。操作コンソール6は、操作者からの各種操作を受け付ける。操作コンソール6は、入力装置61、表示装置62、記憶装置63、及び演算処理装置64を有している。本例では、操作コンソール6は、コンピュータ(computer)により構成されている。
【0025】
入力装置61は、操作者からの指示や情報の入力を受け付けるボタン及びキーボード(keyboard)などを含み、さらにポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。表示装置62は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。
【0026】
記憶装置63は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。操作コンソール6は、記憶装置63として、HDD、RAM及びROMの全てを有していてもよい。また、記憶装置63は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体を含んでいてもよい。
【0027】
演算処理装置64は、CPU(central processing unit)などのプロセッサーである。
【0028】
なお、ここでは、図1に示すように、被検体5の体軸方向、すなわち撮影テーブル4による被検体5の搬送方向をz方向とする。また、鉛直方向をy方向、y方向およびz方向に直交する水平方向をx方向とする。
【0029】
操作コンソール6は、図3に示すように、機能ブロックとして、スキャン制御部71、画像再構成部72、検出部73、算出部74及び表示制御部75を有する。演算処理装置64は、所定のプログラム(program)により、上述のスキャン制御部71、画像再構成部72、検出部73、算出部74及び表示制御部75の機能を実行させる。所定のプログラムは、例えば、記憶装置63を構成するHDDやROMなどの非一過性の記憶媒体に記憶されている。また、プログラムは、記憶装置63を構成するCDやDVDなどの可搬性を有し非一過性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0030】
スキャン制御部71は、操作者の操作に応じて、スキャンが実施されるようガントリ・テーブル制御部30を制御する。
【0031】
画像再構成部72は、事前に予備的に行われるスカウトスキャン(scout scan)により得られた投影データに基づいてスカウト像を再構成する。また、画像再構成部72は、被検体5をX線でスキャンして得られた投影データに基づいて画像再構成処理を行ない、断層像データを得る。断層像データは、本発明における放射線断層像のデータの実施の形態の一例である。前記スキャンには、後述のヘリカル(helical)スキャンや穿刺用スキャンが含まれる。
【0032】
検出部73は、前記断層像データに基づいて、被検体5の領域の外に存在する人体を前記断層像データに基づく断層像が画像再構成されるスライス面において検出する。検出部73は、例えば穿刺手技を行なう術者など、被検体5とは異なる人体を検出する。詳細は後述する。検出部73は、本発明における検出部の実施の形態の一例である。また、検出部73の機能は、本発明における検出機能の実施の形態の一例である。
【0033】
算出部74は、穿刺用スキャンの前に予め得られた被検体におけるX線被曝線量に基づいて、検出部73で検出された人体におけるX線被曝線量を推定値として算出する。詳細は後述する。穿刺用スキャンの前に予め得られた被検体におけるX線被曝線量は、例えばCTDIファントム又は人体模擬ファントムにおいて予め得られたX線被爆線量である。算出部74は、本発明における算出部の実施の形態の一例である。また、算出部74の機能は、本発明における算出機能の実施の形態の一例である。
【0034】
表示制御部75は、スカウト像や断層像を含む各種の画像やテキスト(text)を、表示装置62や検査室内表示装置100に表示させる。例えば、表示制御部75は、テキストとして、算出部74で算出されたX線被曝線量や、後述する警告のメッセージなどを、表示装置62や検査室内表示装置100に表示させる。表示制御部75は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。また、表示制御部75によるX線被曝線量や警告のメッセージなどの表示機能は、本発明における表示制御機能の実施の形態の一例である。
【0035】
次に、本実施形態に係るX線CTシステムにおける処理の流れについて、図4のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、被検体5が撮影テーブル4に載せられて撮影の準備が行われる。次に、ステップS2では、穿刺用スキャン(CTフルオロ撮影)の条件を設定したり、穿刺位置を確認したりするためのスカウトスキャン及びヘリカルスキャンが行われる。スカウトスキャン及びヘリカルスキャンは、スキャン制御部71がガントリ・テーブル制御部30を制御することによって行われる。
【0036】
次に、ステップS3では、ステップS2において行なわれたスカウトスキャン及びヘリカルスキャンによって得られた投影データに基づいて、術者等が穿刺用スキャンの条件を設定したり穿刺針を刺入する位置(穿刺位置)を決定したりする。術者等は、前記スカウトスキャン及び前記ヘリカルスキャンによって得られた投影データに基づいて作成されたスカウト画像や断層像等に基づいて、穿刺用スキャンの条件を設定したり穿刺位置を決定したりする。
【0037】
次に、ステップS4では、穿刺用スキャンが開始される。穿刺用スキャンは、例えば術者がフットスイッチ102を操作することにより開始される。より詳細には、術者がフットスイッチ102を踏むと、スキャン制御部71がガントリ・テーブル制御部30を制御して穿刺用スキャンが開始される。穿刺用スキャンは、穿刺位置を含むスライス面SPについて行なわれる。
【0038】
また、ステップS4においては、穿刺用スキャンによって得られた投影データを画像再構成して得られた断層像データに基づいて作成された断層像Iが、検査室内表示装置100及び表示装置62に表示されてもよい。検査室内表示装置100に断層像Iが表示されると、検査室R内の術者は、表示された断層像Iを見ながら、被検体5に対して穿刺手技を行なう。断層像Iは、本発明における放射線断層像の実施の形態の一例である。
【0039】
次に、ステップS5では、穿刺用スキャンによって得られた投影データを画像再構成処理して得られた断層像データに基づいて、検出部73が被検体の領域の外に存在する人体をスライス面SPにおいて検出する。検出部73による検出対象である被検体の領域の外に存在する人体は、穿刺手技を行なう術者の指及び手である。
【0040】
検出部73による術者の指及び手の検出について詳しく説明する。検出部73は、穿刺用スキャンによって、スライス面SPにおいて一フレームの断層像データが得られると、この断層像データに基づいて検出を行なう。一フレームの断層像データは、例えば、ビュー角度範囲を180度+X線ビームのファン角(fan angle)αとする、いわゆるハーフスキャン(half scan)によって得られる。
【0041】
検出部73は、断層像データにおいて、検出対象である指及び手がとりうる値として設定された所要の範囲の値を有する断層像データを特定する。ここでは、所要の範囲として、指及び手がとりうるCT値の範囲が設定されている。例えば、所要の範囲として、−100以上1500以下のCT値の範囲が設定されている。所要の範囲のCT値は、記憶装置63に記憶されている。
【0042】
検出部73は、CT値が、−100以上1500以下である断層像データを特定し、図5に示すように、特定された断層像データと断層像において対応する画素piが連続する領域CRを、検出対象として特定する。そして、検出部73は、領域CRの大きさが、前記検出対象である手及び指の断層像における大きさとして設定された条件を満たす領域を検出する。例えば、前記条件として、断層像における手及び指の面積Sの範囲S1≦S≦S2が設定されている。S1≦S≦S2は、被検体5における腹部等の断面よりも小さい範囲である。断面面積Sの範囲S1≦S≦S2は、記憶装置63に記憶されている。検出部73は、面積Sが、S1≦S≦S2となっている領域CRを検出対象である手又は指として特定する。
【0043】
ここで、図6に示すように、断層像データに基づいて作成される断層像Iにおいて、術者の指又は手である検出対象Tの近傍には、穿刺針Nが存在している。従って、検出部73は、断層像Iにおける穿刺針Nの位置を参照して、領域CRを検出する位置を特定してもよい。具体的には、検出部73は、先ず断層像データに基づいて、穿刺針Nを検出する。穿刺針NのCT値は、人体のCT値とは異なるので、検出部73は、穿刺針のCT値として設定された値を有する断層像データを特定して穿刺針Nを検出する。穿刺針のCT値として設定された値は、例えば3000HU以上のCT値である。そして、検出部73は、検出された穿刺針Nの近傍において、面積Sが、S1≦S≦S2となっている領域CRを、検出対象である指又は手として特定する。検出部73は、穿刺針Nを含む所要の面積の領域を設定して、その領域内において検出を行なってもよい。
【0044】
穿刺針Nが検出される代わりに、図7に示すように、断層像Iが表示された検査室内表示装置100の画面100aにおいて検出領域DRが設定され、検出部73は、この検出領域DR内において、面積Sが、S1≦S≦S2となっている領域CRを、検出対象Tとして特定してもよい。
【0045】
例えば、検出領域DRは、検査室内表示装置100の画面100aにおいて、術者が入力することによって設定される。この場合、例えば術者が検査室R内における操作デバイス103を用いて検出領域DRを設定する。操作デバイス103は、図2では撮影テーブル4に設けられているが、これに限られるものではない。操作デバイス103は、本発明において検出領域を指定する入力を受け付ける入力装置の実施の形態の一例である。
【0046】
検出領域DRは、操作コンソール6を用いて設定されてもよい。この場合、操作コンソール6は、本発明において検出領域を指定する入力を受け付ける入力装置の実施の形態の一例である。
【0047】
次に、ステップS6では、算出部74が、ステップS5において検出された指又は手におけるX線被曝線量の推定値を算出する。ここでのX線被曝線量は、穿刺用スキャンにおけるX線被曝線量である。
【0048】
ステップS6におけるX線被曝線量の推定値の算出について具体的に説明する。算出部74は、穿刺用スキャンの前に、例えばCTDIファントム又は人体模擬ファントムなどで予め得られた被検体におけるX線被曝線量に基づいて、ステップS5において検出された指又は手におけるX線被曝線量の推定値を算出する。穿刺用スキャンの前に予め得られた被検体におけるX線被曝線量は、一スライス面における複数箇所についてのX線被曝線量であり、予め測定して得られた測定値である。予め測定して得られた測定値として、例えばCTDI(CT dose index)値が挙げられる。CTDI値は、記憶装置63に記憶されている。CTDI値としては、例えば図8に示すようにスライス面SPcにおける複数の部分Ap,Bp,Cp,Dp,Epにおける測定値が記憶されている。複数の部分Ap,Bp,Cp,Dp,Epは、断層像において対応する位置が特定されている。ちなみに、説明の便宜上、スライス面SPcは、図8において一点鎖線の交点であるアイソセンター(ISO)ISを中心とする所定の半径の円で示されている。複数の部分Ap,Bp,Cp,Dp,Epの各々とアイソセンターISの間の距離は、等しくなっている。
【0049】
算出部74は、複数の部分Ap,Bp,Cp,Dp,EpにおけるCTDI値の中から検出部73で検出された指又は手の位置に応じて選択されたCTDI値に基づいて前記推定値の算出を行なう。算出部74は、検出部73で検出された指又は手との距離が小さい順に二つのCTDI値を選択する。例えば、図9において、符号T1は、検出部73で検出された指又は手である検出対象を示している。算出部74は、検出対象T1との距離が最も小さい部分BpにおけるCTDI値と、部分Bpの次に検出対象T1との距離が小さい部分CpにおけるCTDI値とを選択する。また、検出部73により、図10に示す位置において検出対象T2が検出された場合、算出部74は、検出対象T2との距離が最も小さい部分EpにおけるCTDI値と、部分Epの次に検出対象T2との距離が小さい部分BpにおけるCTDI値とを選択する。
【0050】
前記算出部74は、検出部73によって図9に示す検出対象T1が検出された場合、この検出対象T1のX線被曝線量の推定値として、CTDI値とCTDI値とを用いて、部分Tp1のX線被曝線量を算出する。部分Tp1は、検出対象T1とアイソセンターISとを通る直線(図9では一点鎖線で図示)上に存在している。また、部分Tp1とアイソセンターISの間の距離は、部分Bp,CpとアイソセンターISの間の距離と等しくなっている。
【0051】
算出部74は、CTDI値とCTDI値とを用いて補間演算を行なって部分Tp1のX線被曝線量を算出する。具体的には、算出部74は、CTDI値とCTDI値と用いて、図9に示すθ1,θ2の大きさに応じた重み付け演算を行なうことにより前記補間演算を行なう。θ1は、部分BpとアイソセンターISとを通る直線及び部分Tp1とアイソセンターISとを通る直線とがなす角度である。また、θ2は、部分CpとアイソセンターISとを通る直線及び部分Tp1とアイソセンターISとを通る直線とがなす角度である。
【0052】
また、前記算出部74は、検出部73によって図10に示す検出対象T2が検出された場合、この検出対象T2のX線被曝線量の推定値として、CTDI値とCTDI値とを用いて、部分Tp2のX線被曝線量を算出する。部分Tp2は、検出対象T2とアイソセンターISとを通る直線(図10では一点鎖線で図示)上に存在している。また、部分Tp2とアイソセンターISの間の距離は、部分Bp,EpとアイソセンターISの間の距離と等しくなっている。
【0053】
算出部74は、CTDI値とCTDI値とを用いて補間演算を行なって部分Tp2のX線被曝線量を算出する。具体的には、算出部74は、CTDI値とCTDI値と用いて、図10に示すθ3,θ4の大きさに応じた重み付け演算を行なうことにより前記補間演算を行なう。θ3は、部分EpとアイソセンターISとを通る直線及び部分Tp2とアイソセンターISとを通る直線とがなす角度である。また、θ2は、部分BpとアイソセンターISとを通る直線及び部分Tp2とアイソセンターISとを通る直線とがなす角度である。
【0054】
次に、ステップS7では、表示制御部75は、ステップS6で算出された部分Tp1又は部分Tp2のX線被曝線量DCを、ステップS5において検出された指又は手(検出対象T1又はT2)におけるX線被曝線量の推定値として、図11に示すように検査室内表示装置100に表示させる。表示制御部75は、X線被曝線量DCを、表示装置62に表示させてもよい。X線被曝線量DCの表示は、本発明における報知部による放射線被曝線量に基づく視覚的な報知の実施の形態の一例である。
【0055】
ステップS7において表示されるX線被曝線量DCが、所定の閾値を超えている場合、表示制御部75は、図12に示すように警告メッセージMを検査室内表示装置100に表示させてもよい。図12では、警告メッセージMは、X線被曝線量DCが所定の閾値を超えていることを示す「WARNING!!」の文字からなる。ただし、警告メッセージMはこれに限られるものではない。警告メッセージMの表示は、本発明における報知部による放射線被曝線量に基づく視覚的な報知の実施の形態の他例である。
【0056】
ステップS7において表示されるX線被曝線量DCが、所定の閾値を超えている場合、警告メッセージMの代わりに、あるいは警告メッセージMとともに、警告音声が出力されてもよい。警告音声の出力は、本発明による報知部による聴覚的な報知の実施の形態の一例である。
【0057】
次に、ステップS8では、処理を終了するか否かが演算処理装置64により判定される。例えば、演算処理装置64は、入力装置61において撮影を終了する入力が行われると、処理を終了すると判定する。
【0058】
ステップS8において処理を終了しないと判定された場合(ステップS8において、「NO」)、ステップS1に戻る。この場合再びステップS1以降の処理が繰り返され、断層像Iの表示が更新されるとともに、X線被曝線量DCの表示も更新される。一方、ステップS8において処理を終了すると判定された場合(ステップS8において、「YES」)、処理を終了する。
【0059】
以上説明した本例によれば、検査室内表示装置100にX線被曝線量DCが表示されることにより、検査室R内の術者は、穿刺手技を行なっている手又は指におけるX線被曝線量を知ることができる。しかも、X線被曝線量DCの表示は、断層像Iの表示とともに更新されるので、術者は、リアルタイムでX線被曝線量を知ることができる。
【0060】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、穿刺用スキャンの前に予め得られた被検体におけるX線被曝線量として、上述のCTDI値の代わりに、被検体を模したファントムを用いて測定されたX線被曝線量が用いられてもよい。
【0061】
また、X線被曝線量DCの値が音声で出力されてもよい。音声によるX線被曝線量DCの出力は、本発明における報知部による聴覚的な報知の実施の形態の一例である。
【0062】
また、上述の実施形態において説明した検出部73による術者の指及び手の検出の手法は一例であり、上述の手法に限られるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 X線CTシステム
6 操作コンソール
73 検出部
74 算出部
75 表示制御部
103 操作デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12