(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドアパネルのコーナー部の内縁に上記ドアパネルのドアガラス中心側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部が形成されている、自動車のドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するグラスランであって、
上記ドアガラスの端面と対向する底壁と、
上記底壁における車内側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車内側側壁と、
上記底壁における車外側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車外側側壁と、を備えており、
上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方における、少なくとも、ピラーの配置位置に対応するピラー側部位には、上記折れ曲がり部に引っ掛かることにより上記グラスランの上記ドアパネルに対する移動を規制する凸部が形成されており、
上記凸部は、
上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方の長手方向に延びている第1線条および第2線条と、
上記第1線条と上記第2線条とが対向する方向に延び、上記第1線条と上記第2線条とを繋ぐ複数の第3線条と、から構成され、
上記第1線条、上記第2線条および上記第3線条のそれぞれに囲まれる溝部が複数形成されていることを特徴とするグラスラン。
上記車外側側壁における上記ドアガラスの中央側の端部には、車外側に向けて突出した車外側意匠突部が、上記凸部と上記車外側側壁と上記車外側意匠突部とで形成される凹部に上記折れ曲がり部が入るように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のグラスラン。
上記凸部の、上記車外側側壁における上記ドアパネルと対向する面からの高さは、上記折れ曲がり部の、上記ドアパネルにおける上記車外側側壁と対向する面からの高さの1/2以上、かつ上記車外側意匠突部の根元からの高さ以下であることを特徴とする請求項3に記載のグラスラン。
上記凸部が、上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方における上記ピラー側部位に形成されているとともに、ルーフサイドの配置位置に対応するルーフ側部位に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のグラスラン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラスランは、サッシュドア等のウインドウフレームのコーナー部にもサッシュが存在する構造のドアを取付対象として想定しており、例えばスライドドアのような、ウインドウフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアに取付けることを前提とした構造にはなっていない。それゆえ、ガラスランを例えばスライドドアに取付けた場合に、ウインドウフレームのコーナー部でガラスランを保持することができず、ウインドウフレームとガラスランとの線膨張係数差に起因してガラスランがウインドウフレームからはみ出し、外観が損なわれるといった問題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示されたグラスランの位置決め用突起は、当該グラスランにおけるルーフ側の部位に設けられており、切り欠きが形成されたモールもルーフに取付けられる。したがって、この位置決め用突起および切り欠きは、主としてグラスランにおけるルーフ側の部位の意図しない移動を規制するものであり、ドアガラスの昇降の影響をより受ける、ピラー側の部位の意図しない移動を規制する構造にはなっていない。それゆえ、上記のグラスランにおいては、特にピラー側の部位が取付位置から意図せず移動することにより外観が損なわれるといった問題があった。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアに取付けるグラスランについて、特に当該コーナー部における取付位置からのはみ出し・意図しない移動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランは、ドアパネルのコーナー部の内縁に上記ドアパネルのドアガラス中心側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部が形成されている、自動車のドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するグラスランであって、上記ドアガラスの端面と対向する底壁と、上記底壁における車内側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車内側側壁と、上記底壁における車外側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車外側側壁と、を備えており、上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方における、少なくとも、ピラーの配置位置に対応するピラー側部位には、上記折れ曲がり部に引っ掛かることにより上記グラスランの上記ドアパネルに対する移動を規制する凸部が形成されている。
【0010】
上記構成によれば、本発明に係るグラスランは、車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方における、少なくともピラー側部位に凸部が形成されており、ドアパネルのコーナー部の内縁に形成された折れ曲がり部に引っ掛かる構造になっている。ここで、折れ曲がり部は、例えばスライドドアのような、ドアフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアにおいて一般的に形成されている。
【0011】
したがって、本発明に係るグラスランがこのような構造のドアに取付けられ、コーナー部においてサッシュで保持されることなく、例えばドアフレームとの線膨張係数差でグラスランの押出成形部分がドアフレームより縮んだ場合でも、凸部が折り曲がり部に引っ掛かることにより、前記の縮みによる当該グラスランの位置変動が規制される。それゆえ、本発明に係るグラスランのコーナー部からのはみ出しを効果的に抑制することができる。
【0012】
また、取付位置からの意図しない移動に関して、側壁におけるルーフ側部位よりもピラー側部位の方がドアガラスの昇降の影響を強く受ける。したがって、ドアガラスの昇降等に伴うグラスランの意図しない移動が、凸部の折れ曲がり部に対する引っ掛かりによって効果的に抑制される。
【0013】
以上より、ドアフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアに本発明に係るグラスランを取付けた場合に、特にドアフレームのコーナー部において、取付位置からのはみ出し・意図しない移動を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記凸部は、上記車外側側壁における上記ピラー側部位に形成されていることが好ましい。
【0015】
一般に、折り曲げ部は、ドアフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアにおける、ドアアウターパネル(車外側のドアパネル)に形成されている。その点、上記構成によれば、上記凸部が車外側側壁におけるピラー側部位に形成されていることから、例えば、ドアインナーパネル(車内側のドアパネル)に凸部が引っ掛かるような構造を別途設ける必要がなく、既存のドアフレームの構造をそのまま用いることができる。それゆえ、簡易な構造で、本発明に係るグラスランがコーナー部における取付位置からはみ出したり、意図せず移動したりすることを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記車外側側壁における上記ドアガラスの中央側の端部には、車外側に向けて突出した車外側意匠突部が、上記凸部と上記車外側側壁と上記車外側意匠突部とで形成される凹部に上記折れ曲がり部が入るように形成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、凸部が折れ曲がり部に引っ掛かるだけでなく、折れ曲がり部も凹部を構成する車外側意匠突部の側壁に引っ掛かることから、本発明に係るグラスランの取付位置からのはみ出し・意図しない移動をより確実に抑制することができる。
【0018】
また、車外側意匠突部が車外側から視認できることから、本発明に係るグラスランが取付けられた自動車のドアの意匠性・外観を向上させることができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記凸部の、上記車外側側壁における上記ドアパネルと対向する面からの高さは、上記折れ曲がり部の、上記ドアパネルにおける上記車外側側壁と対向する面からの高さの1/2以上、かつ上記車外側意匠突部の根元からの高さ以下であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、本発明に係るグラスランをドアフレームに取付けた状態において、凸部が折り曲がり部に確実に引っ掛かる。また、車外側意匠突部の先端の位置と、ドアアウターパネルにおける車外側の面の位置とが略一致する。それゆえ、本発明に係るグラスランの取付位置からのはみ出し・意図しない移動をより確実に抑制できるとともに、当該グラスランが取付けられた自動車のドアの意匠性・外観をより向上させることができる。
【0021】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記凸部が、上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方における上記ピラー側部位に形成されているとともに、ルーフサイドの配置位置に対応するルーフ側部位に形成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、凸部がピラ−側部位のみならずルーフ側部位にも形成されていることから、ドアパネルのコーナー部におけるルーフ側の部分においても、折り曲がり部に凸部を引っ掛けることができる。それゆえ、本発明に係るグラスランの取付位置からのはみ出し・意図しない移動をより確実に抑制することができる。
【0023】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランにおいて、上記凸部は、上記車内側側壁および上記車外側側壁のいずれか一方の長手方向に延びている第1線条および第2線条と、上記第1線条と上記第2線条とが対向する方向に延び、上記第1線条と上記第2線条とを繋ぐ複数の第3線条と、から構成され、上記第1線条、上記第2線条および上記第3線条のそれぞれに囲まれる溝部が複数形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、例えば、凸部に複数の溝部が全く形成されていない場合に比べて、本発明に係るグラスランの型成形部(ドアフレームのコーナー部に取付けられる部位)を型成形する際に、厚肉部が広範囲に亘って存在することに起因する凸部の形状割れが発生しにくくなる。それゆえ、凸部の形状割れに起因する折れ曲がり部への引っ掛かり不良を低減でき、ひいては、本発明に係るグラスランの取付位置からのはみ出し・意図しない移動をより確実に抑制することができる。
【0025】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るグラスランの取付構造は、自動車のドアフレームに取付けられ、ドアガラスの昇降を案内するグラスランの取付構造であって、上記ドアフレームを構成するドアパネルにおけるコーナー部の内縁に形成され、上記ドアパネルのドアガラス中心側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部を備えており、上記グラスランについて、上記ドアガラスの端面と対向する底壁と、上記底壁における車内側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車内側側壁と、上記底壁における車外側の側縁から、上記ドアガラスの中央側に向けて延伸している車外側側壁と、を備えており、上記車内側側壁および車外側側壁のいずれか一方における、少なくとも、ピラーの配置位置に対応するピラー側部位には凸部が形成されており、上記凸部が上記折れ曲がり部に引っ掛かることにより、上記グラスランの上記ドアパネルに対する移動が規制される。
【0026】
上記構成によれば、グラスランの取付位置からのはみ出し・意図しない移動を効果的に抑制できるグラスランの取付構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ドアパネルのコーナー部の折れ曲がり部に、グラスランの側壁に形成された凸部を引っ掛けることにより、グラスランがドアフレームのコーナー部における取付位置からはみ出す、あるいは意図せず移動することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<グラスランの取り付け例>
先ず、
図1および
図2を参照して、本発明に係るグラスランが取り付けられた自動車のドアの構造について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るグラスラン1が取り付けられた自動車の左側リヤスライドドア100(以下、「スライドドア100」と略記する)の概略構成を表す図である。また、
図2の(a)は、スライドドア100におけるドアフレーム101の前側コーナー部付近の構造を車外側から見た場合の図である。
図2の(b)は、スライドドア100におけるドアフレーム101の前側コーナー部付近の構造を車内側斜め下方から見た場合の図である。なお、
図1において、紙面向かって左側が前側(フロント側)に、右側が後側(リヤ側)に、それぞれ対応している。
【0030】
図1に示すように、自動車のリヤドア用開口部(図示せず)に開閉可能に設けられるスライドドア100には、ドアフレーム101が一体成形されている。また、ドアフレーム101には、ドアガラス102の昇降を案内するとともに、ドアガラス102を上昇させて窓部Wが閉じたときに、ドアガラス102の周縁部とドアフレーム101との間をシールするグラスラン1が取り付けられている。グラスラン1は、前側型成形部1dによってセンターピラー側押出成形部1aとルーフ側押出成形部1bとが接合され、後側型成形部1eによってルーフ側押出成形部1bとリヤピラー側押出成形部1cとが接合されることにより形成される。
【0031】
このような構成にすることで、ドアガラス102を上昇させて窓部Wを閉じたときには、ドアガラス102の前端・上端・後端の三辺がグラスラン1の三辺に保持される。またここで、ドアガラス中央(ドアガラスの中央)は、
図1に破線で示すドアガラス102の略中程の部位を指す。
【0032】
図1に示すように、グラスラン1は、ドアフレーム101の上部(ルーフサイド部分およびセンターピラー・リヤピラー部分)に沿って取り付けられている。すなわち、ドアフレーム101のセンターピラー部分に沿ってセンターピラー側押出成形部1aが、ドアフレーム101のルーフサイド部分に沿ってルーフ側押出成形部1bが、ドアフレーム101のリヤピラー部分に沿ってリヤピラー側押出成形部1cが、それぞれ取り付けられている。また、ドアフレーム101の前側コーナー部に沿ってL字形状の前側型成形部1dが、ドアフレーム101の後側コーナー部に沿ってL字形状の後側型成形部1eが、それぞれ取り付けられる。
【0033】
より詳細には、
図2の(a)および(b)に示すように、ドアフレーム101のセンターピラー部分に断面略コ字形状のセンターピラーサッシュ103が固定されており、このセンターピラーサッシュ103にセンターピラー側押出成形部1aを嵌め込む(
図4の(b)参照)。また、ドアフレーム101のルーフサイド部分に断面略コ字形状のルーフサッシュ104が固定されており、このルーフサッシュ104にルーフ側押出成形部1bを嵌め込む。図示しないものの、ドアフレーム101のリヤピラー部分にはリヤピラーサッシュが固定されており、リヤピラー側押出成形部1cを嵌め込む。
【0034】
一方、スライドドア100の構造上、ドアフレーム101の前側コーナー部には、グラスラン1の前側型成形部1dを保持するためのサッシュが存在しない。また、図示しないものの、ドアフレーム101の後側コーナー部にも、グラスラン1の後側型成形部1eを保持するためのサッシュが存在しない。ドアフレーム101の前側コーナー部に関しては、グラスラン1の車外側側壁12に形成された凸部50が、ドアフレーム101を構成するドアアウターパネル(ドアパネル)101bに形成された折れ曲がり部60に引っ掛かる構造になっている。ドアフレーム101の後側コーナー部に関しても同様の構造になっている(凸部50、折れ曲がり部60の詳細については、ともに後述)。この構造により、ドアフレーム101の前側・後側コーナー部において前側型成形部1d・後側型成形部1eがそれぞれ保持される。
【0035】
グラスラン1の成形材料としては、例えば合成ゴム、熱可塑性エラストマー(TPE)等が用いられ、合成ゴムではEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、熱可塑性エラストマーではオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等が用いられ、断面形状の部位によって、スポンジ材(発泡材)とソリット材(非発泡材)とを使い分けてもよい。
【0036】
なお、上述したグラスラン1の取り付けはあくまで一例であり、本発明に係るグラスランが取付けられる自動車のドアは、スライドドア100に限定されない。すなわち、ドアフレームのコーナー部にサッシュが存在しない構造のドアであれば、どのような種類のドアであっても本発明に係るグラスランの取付対象となる。
【0037】
<グラスランの構造>
次に、
図3および
図4を参照して、本発明に係るグラスランの構造について説明する。
図3は、グラスラン1における前側型成形部1d付近の概略構成を示す図である。
図4の(a)は、
図3に示すグラスラン1の部位のA−A線矢視断面図である。
図4の(b)は、
図3に示すグラスラン1の部位のB−B線矢視断面図である。
図4の(c)は、
図4の(a)に示すグラスランの部位における、凸部、折れ曲がり部および車外側意匠突部付近の拡大図である。
【0038】
ここで、
図4は、ドアフレーム101およびグラスラン1の断面を示しており、紙面向かって上側が車内側に、下側が車外側に、それぞれ対応している。また、紙面向かって左側が前側(フロント側)に、右側が後側(リヤ側)に、それぞれ対応している。
【0039】
図3に示すように、グラスラン1の前側型成形部1dの車外側側壁12には、前側型成形部1dの外形に略一致したL字形状の凸部50が形成されている。凸部50は、前側型成形部1dの車外側側壁12におけるセンターピラー側の領域(ピラー側部位)に形成されるピラー側凸部50aと、上記の車外側側壁12におけるルーフサイド側の領域(ルーフ側部位)に形成されるルーフ側凸部50bと、が連なることにより構成されている。
【0040】
ピラー側凸部50aは、ピラー側第1線条(第1線条)50a−1、ピラー側第2線条(第2線条)50a−2、および複数のピラー側第3線条(第3線条)50a−3で構成されている。ピラー側第1線条50a−1およびピラー側第2線条50a−2はともに、車外側側壁12におけるセンターピラー側の領域の略車体上下方向に延びており、ピラー側第1線条50a−1は、ピラー側第2線条50a−2よりも前側に配置されている。また、複数のピラー側第3線条50a−3は、それぞれピラー側第1線条50a−1とピラー側第2線条50a−2とを前側が高くなるように斜方に繋いでいる。
【0041】
さらに、ピラー側凸部50aには、ピラー側第1線条50a−1、ピラー側第2線条50a−2およびピラー側第3線条50a−3のそれぞれに囲まれる、開口部の形状が略平行四辺形の溝部50a−4が複数形成されている。
【0042】
ルーフ側凸部50bは、ルーフ側第1線条(第1線条)50b−1、ルーフ側第2線条(第2線条)50b−2、および複数のルーフ側第3線条(第3線条)50b−3で構成されている。ルーフ側第1線条50b−1およびピラー側第2線条50b−2はともに、車外側側壁12におけるルーフサイド側の領域の長手方向に延びており、ルーフ側第1線条50b−1は、ルーフ側第2線条50b−2よりも車体上側に配置されている。また、複数のルーフ側第3線条50b−3は、それぞれルーフ側第1線条50b−1とルーフ側第2線条50b−2とを前側が高くなるように斜方に繋いでいる。
【0043】
このように、ピラー側第1線条50a−1とピラー側第2線条50a−2、およびルーフ側第1線条50b−1とルーフ側第2線条50b−2とを前側が高くなるように斜方に繋いでいるのは、グラスランの各型成形部1d・1eを金型成形する時の上型の上昇方向に合わせて、型成形終了後に金型から取り出し易くするためである。
【0044】
さらに、ルーフ側凸部50bには、ルーフ側第1線条50b−1、ルーフ側第2線条50b−2およびルーフ側第3線条50b−3のそれぞれに囲まれる溝部50b−4が複数形成されている。
【0045】
このピラー側凸部50aが、ドアアウターパネル101bの折れ曲がり部60におけるセンターピラー側の部位(
図4の(a)参照)に引っ掛かる。また、ルーフ側凸部50bが、折れ曲がり部60におけるルーフサイド側の部位(不図示)に引っ掛かる。そして、これらの引っ掛かりにより、前側型成形部1dのドアアウターパネル101bに対する移動、特に後方向の移動が規制されることとなる。
【0046】
また、凸部50に上述の溝部50a−4・50b−4を複数形成することにより、前側型成形部1d(後側型成形部1eについても同様)の型成形時に、凸部50の形状割れが発生することを低減できる。溝部50a−4・50b−4について、開口部の形状・深さ・個数等は任意に設計変更することができる(
図5の(a)参照)。但し、凸部50の折れ曲がり部60に対する引っ掛かりが弱まらないよう、溝部50a−4・50b−4を形成する際には、凸部50の剛性が著しく低下しない程度の深さ・個数・開口部の大きさに設計することが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態では、凸部50が車外側側壁12のみに形成されているが、例えば、車内側側壁11のみに形成されていてもよい。また例えば、車内側側壁11および車外側側壁12の両方に凸部50が形成されていてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、凸部50がピラー側凸部50aとルーフ側凸部50bとで構成されているが、ルーフ側凸部50bが形成されていることは必須ではない。換言すれば、凸部50は、車内側側壁11および上記車外側側壁12のいずれか一方における、少なくとも、センターピラー側の領域(ピラーの配置位置に対応するピラー側部位)に形成されていればよい(
図3参照)。
【0049】
なお、図示しないものの、グラスラン1の後側型成形部1eの車外側側壁12にも凸部50(ピラー側凸部50aおよびルーフ側凸部50b)が形成されており、ドアアウターパネル101bの折れ曲がり部60に引っ掛かる構造になっている。
【0050】
図4の(a)に示すように、グラスラン1の前側型成形部1d(センターピラー側の部位)は、底壁10、車内側側壁11、車外側側壁12、車内側シールリップ部13、車外側シールリップ部14、車内側意匠リップ部15および車外側意匠突部(突出部)16を備えている。
【0051】
底壁10は、ドアガラス102の端面102aと対向する略板状の部位である。また、底壁10における車内側側縁(車内側の側縁)10aからドアガラス102の中央側に向けて、略板状の車内側側壁11が延伸している。さらに、底壁10における車外側側縁(車外側の側縁)10bからドアガラス102の中央側に向けて、略板状の車外側側壁12が延伸している。
【0052】
車内側側縁10aおよび車外側側縁10bの底壁10に対する位置関係から、車外側側壁12は、グラスラン1をドアフレーム101に取り付けた状態で車内側側壁11よりも車外側に配置される。これら底壁10、車内側側壁11および車外側側壁12で、断面略コ字形状の部位を形成する。
【0053】
車外側側壁12のドアアウターパネル101bと対向する面におけるセンターピラー側の領域には、ピラー側凸部50aが形成されている。ピラー側凸部50aは、前側型成形部1dをドアフレーム101の前側コーナー部に取付けた状態において、ドアアウターパネル101bの車外側面に当接する。また、ドアフレーム101とグラスラン1との線膨張係数差によりルーフ側押出成形部1bがドアフレーム101のルーフ部よりも縮んだ場合、ある程度縮んだ段階で、ピラー側凸部50aが折れ曲がり部60(センターピラー側の部位)に引っ掛かる。
【0054】
なお、ピラー側凸部50aの折れ曲がり部60(センターピラー側の部位)に対する確実な引っ掛かりと、後述する車外側意匠突部16の配置位置付近の外観とのバランスを考慮した場合、
図4の(c)に示すように、凸部50の第1面F1からの高さH1が、折れ曲がり部60の第2面F2からの高さH2の1/2以上、かつ車外側意匠突部16の第1面F1(根元)からの高さH3以下であることが好ましい。
【0055】
ここで、「第1面F1」は、車外側側壁12におけるドアアウターパネル101bと対向する面を指す。「第1面F1」は、
図4の(b)ではドアアウターパネル101bの180°折り返し面に接し、
図4の(c)ではドアアウターパネル101bの90°折れ曲がり部60と対向する。また「第2面F2」は、ドアアウターパネル101bにおける車外側面を指す。
【0056】
凸部50の第1面F1からの高さH1が、折れ曲がり部60の第2面F2からの高さH2の1/2未満の場合、凸部50の折れ曲がり部60に対する引っ掛かりが十分でなく、グラスラン1(特に、前側型成形部1d)が脱落する可能性が高い。その点、上述のように、凸部50の第1面F1からの高さH1を、折れ曲がり部60の第2面F2からの高さH2の1/2以上とすることで、グラスラン1の脱落可能性を低減することができる。
【0057】
また、凸部50の第1面F1からの高さH1が、車外側意匠突部16の第1面F1からの高さH3よりも高い場合、車外側意匠突部16の最外側位置に配置される頂部が、ドアアウターパネル101bの車外側面よりも(場合によっては大幅に)車内側に配置される。この場合、車外側意匠突部16の頂部とドアアウターパネル101bの車外側面とで段差が形成され、車両外観性(面一性)が低下してしまう。その点、上述のように、凸部50の第1面F1からの高さH1を、車外側意匠突部16の第1面F1からの高さH3以下とすることで、ドアアウターパネル101bと車外側意匠突部16との接触箇所付近の外観を良好に保つことができる。
【0058】
折れ曲がり部60(センターピラー側の部位)は、ドアアウターパネル101bのコーナー部の内縁に形成されており、ドアアウターパネル101bに対してドアガラス102中心側に向けて折れ曲がった部位である。この折れ曲がり部60は、グラスラン1の意図しない移動を規制するために特別に設けられた部位ではなく、スライドドア100の構造上一般的に形成されている部位である。それゆえ、この折れ曲がり部60を利用することで、簡易な構造でグラスラン1の意図しない移動を規制できる、グラスラン1の取付構造を実現することができる。
【0059】
ここで、ドアガラス102の中心(C/L)とは、ドアガラス102の車外側面から車内側面まで、ガラス板厚方向での、半分の厚さ部分の面を指し、
図4の(a)および(b)に、それぞれ一点鎖線で示す。
【0060】
車内側側壁11におけるドアガラス102の中央側の端部には、車内側シールリップ部13が、底壁10に向けて立ち上がるように設けられている(図では湾曲している)。また、車外側側壁12におけるドアガラス102が配置されている側の端部には、車外側シールリップ部14が、底壁10に向けて立ち上がるように設けられている(図では湾曲している)。車内側シールリップ部13は、ドアガラス102に弾接するヒレ形状の車内側弾接部13a、および車内側弾接部13aと車内側側壁11とを接続する車内側接続部13bとが連なって形成されている。同様に、車外側シールリップ部14は、ドアガラス102に弾接するヒレ形状の車外側弾接部14a、および車外側弾接部14aと車外側側壁12とを接続する車外側接続部14bとが連なって形成されている。
【0061】
車内側シールリップ部13および車外側シールリップ部14は、ドアガラス102の車内側側面に車内側弾接部13aが、ドアガラス102の車外側側面に車外側弾接部14aがそれぞれ弾接することで、ドアガラス102の両側面とドアフレーム101との間をシールする。
【0062】
また、車外側シールリップ部14の車外側接続部14bのみが薄肉となるよう、車外側シールリップ部14の根元が窪んでいる。つまり、車外側シールリップ部14は車外側接続部14bで最も肉薄となっている。また、車外側側壁12の肉厚が薄くならないよう、車外側側壁12の延長方向に窪みを設けている。車外側接続部14bをこのような薄肉にすることにより、車外側接続部14bがドアガラス102に向けて凸となるように撓み易くなる。したがって、車内側シールリップ部13単独で、車内側接続部13bを起点に車外側側壁12に向けてより屈曲し易くなり、車外側弾接部14a自体が撓むなど変形してしまうことが低減する。それゆえ、車内側シールリップ部13および車外側シールリップ部14の昇降方向への引き摺られに起因する異音を効果的に抑制することができる。
【0063】
さらに、車内側シールリップ部13は、車外側シールリップ部14よりも長く、肉厚に形成されている。したがって、車内側シールリップ部13および車外側シールリップ部14がドアガラス102に弾接した状態において、ドアガラス102を車外寄りに位置させることができ、ドアフレーム101とドアガラス102との段差を少なくすることができる。それゆえ、自動車走行時の空気抵抗および風切音が減少するとともに、デザイン的にも好ましい外観が得られる。
【0064】
車内側側壁11におけるドアガラス102の中央側の端部には、ヒレ形状の車内側意匠リップ部15が、ドアフレーム101を構成するドアインナーパネル101aに向けて折り返すように延設されている。この車内側意匠リップ部15および車内側側壁11によって、ドアインナーパネル101aの先端101a−1が挟み込まれる。
【0065】
一方、車外側側壁12におけるドアガラス102の中央側の端部には、車外側に向けて突出した車外側意匠突部16が形成されている。この車外側意匠突部16と車外側側壁12とピラー側凸部50aとで、凹部70が形成される。この凹部70にドアアウターパネル101bの折れ曲がり部60が入ることから、グラスラン1の前側型成形部1dにおける、特にピラー側の部位の前後方向への意図しない移動を、より効果的に規制することができる。
【0066】
車内側側壁11における車内側の面には、断面突起形状の車内側保持部17が車内側側壁11の長手方向に沿って設けられている。なお、ドアフレーム101の前側コーナー部にはサッシュが存在しないことから、車内側保持部17を係止する対象となる部材がないこととなる。一方、車外側側壁12における車外側の面には、断面突起形状の車外側保持部18が車外側側壁12の長手方向に沿って設けられている。車外側保持部18の先端は、ドアアウターパネル101bの車内側面に当接する。この車外側保持部18および上述した車外側意匠突部16によって、車外側側壁12がドアアウターパネル101bに位置決めされる。
【0067】
次に、
図4の(b)に示すように、グラスラン1のセンターピラー側押出成形部1aについても、前側型成形部1dと同様に、底壁10、車内側側壁11、車外側側壁12、車内側シールリップ部13、車外側シールリップ部14、車内側意匠リップ部15および車外側意匠突部16を備えている。
【0068】
ドアフレーム101のセンターピラー部分にはセンターピラーサッシュ103が固定されており、センターピラー側押出成形部1aを保持する構造が担保されていることから、車外側側壁12には凸部50が形成されていない。
【0069】
底壁10の車内側側縁10aと車内側側壁11との連結箇所には、センターピラーサッシュ103の連結部103cに向けて突出したヒレ形状の弾接部10cが、センターピラー側押出成形部1aの長手方向に沿って形成されている。センターピラーサッシュ103にセンターピラー側押出成形部1aを嵌め込んだ状態において、この弾接部10cが連結部103cに弾接する。
【0070】
センターピラーサッシュ103の車内側壁103aには、車外側に向けて凸となるように折れ曲がった第1突起部103a−1が形成されており、この第1突起部103a−1に車内側側壁11の車内側保持部17が係止される。また、センターピラーサッシュ103の車外側壁103bには、車内側に向けて凸となるように折れ曲がった第2突起部103b−1が形成されており、この第2突起部103b−1に車外側側壁12の車外側保持部18が係止される。
【0071】
ドアインナーパネル101aの先端101a−1とセンターピラーサッシュ103の車内側壁103aとは重ね合わさっており、これら2つの部位が、車内側側壁11と車内側意匠リップ部15とで挟み込まれる。また、ドアアウターパネル101bのセンターピラー部分の内縁には180°折り返された折り返し部61が形成されており、この折り返し部61によって、センターピラーサッシュ103の車外側壁103bの端部が挟み込まれている。そして、車外側意匠突部16が折り返し部61に係止される。以上のように配置することにより、車外側側壁12がドアアウターパネル101bに位置決め・固定される。
【0072】
<凸部の変形例>
本発明に係るグラスランに形成される凸部の構成としては、上述の凸部50のみならず様々な変形例が想定されるものであり、この点について、
図5の(a)〜(d)を用いて説明する。
図5の(a)〜(d)は、本発明に係るグラスランに形成される、凸部のバリエーションを示す概略図である。
【0073】
先ず、本発明に係るグラスランに形成される凸部は、
図5の(a)の凸部51に示すような構成であってもよい。凸部51には、その開口部の形状が略長方形になっている複数の溝部51a−4・51b−4が形成されている。また、凸部51を構成するピラー側凸部51aとルーフ側凸部51bとの連結箇所付近に形成された溝部51a−4・51b−4については、その開口部の形状が略扇形状になっている。
【0074】
すなわち、ピラー側凸部51aについて、ピラー側第2線条51a−2とピラー側第3線条51a−3とが、平面視で略直交するような形状になっている。ルーフ側凸部51bについても、ルーフ側第2線条51b−2とルーフ側第3線条51b−3とが、平面視で略直交するような形状になっている。凸部51をこのような形状にすることにより、上述した凸部50に比べて、特に凸部51の前後方向の剛性が極端に低下しない範囲で凸部の形状割れを低減させてもよい。
【0075】
また、本発明に係るグラスランに形成される凸部は、
図5の(b)の凸部52に示すように、溝部が形成されていない構成であってもよい。このように溝部を形成しないことによって凸部52の剛性を高く保つことができ、凸部52の折れ曲がり部60に対する引っ掛かりがより確実になる。ただし、凸部の形状割れは発生し易くなるため、折れ曲がり部60の高さH1や寸法Dを小さめに設定するのが好ましい(
図4の(c)参照)。
【0076】
また、本発明に係るグラスランに形成される凸部は、
図5の(c)の凸部53に示すように、ブロック状の複数の凸部形成部位53aが、本発明に係るグラスランの前側型成形部の外形(L字形状)に合わせてL字状に配列されることで形成されていてもよい。凸部53をこのような形状にすることにより、互いに隣り合う2つの凸部形成部位53aの間に空間が形成され、型成形の際の凸部53の形状割れが低減する。また、上述の凸部50・51のように複数の溝部50a−4・50b−4・51a−4・51b−4を形成する構成に比べて凸部53全体の剛性も高く保つことができる。なお、凸部形成部位53aの形状は、例えば平面視で丸形状であってもよいし、三角形状であってもよいし、その他の形状であってもよい(不図示)。
【0077】
また、本発明に係るグラスランに形成される凸部は、
図5の(d)の凸部54に示すように、平面視で略コ字形状の複数の凸部形成部位54aが、前側型成形部の外形に合わせてL字状に配列される構成であってもよい。凸部54をこのような形状にすることにより、互いに隣り合う2つの凸部形成部位54aの間、および凸部形成部位54aの内部に空間が形成され、型成形の際の凸部54の形状割れが低減する。なお、凸部形成部位54aの形状は、例えば平面視で凸形状であってもよいし、ロ字形状、中空円形状等であってもよいし、その他の形状であってもよい(不図示)。
【0078】
<付記事項>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。