(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定距離は、前記駆動側軸受及び/又は前記従動側軸受に与えられた予圧を加えた荷重が前記動定格荷重の5%以上となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の両回転スクロール型圧縮機。
複数の前記駆動側壁体及び/又は複数の前記従動側壁体のうちの少なくとも1つが、回転中心に対して対称となる位置からずらされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の両回転スクロール型圧縮機。
前記従動側端板を間に介して配置され、前記駆動側壁体の回転軸方向の先端側に固定されて前記駆動側スクロール部材とともに回転する駆動側サポート部材、及び/又は、前記駆動側端板を間に介して配置され、前記従動側壁体の回転軸方向の先端側に固定されて前記従動側スクロール部材とともに回転する従動側サポート部材と、
を備え、
前記駆動側サポート部材及び/又は従動側サポート部材の重心が、回転中心からずらされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の両回転スクロール型圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにスクロールの重心が回転中心に一致させて、軸受を小さくすることができたとしても、例えば回転軸の内部に吐出ポートを形成する場合のように軸受の径を所定値以上に確保する必要が生じる。このような場合には、軸受のサイズに対して軸受に加わる荷重が十分でなくなり、軸受と軸受が取り付けられた部材との間で滑りが発生し、軸受の寿命が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軸受の長寿命化が可能な両回転スクロール型圧縮機及びその設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の両回転スクロール型圧縮機及びその設計方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる両回転スクロール型圧縮機は、駆動部によって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に連結され、駆動側端板の中心回りに所定角度間隔を有して設置された複数の渦巻状の駆動側壁体を有する駆動側スクロール部材と、従動側端板の中心回りに所定角度間隔を有して設置され、各前記駆動側壁体に対応する数の渦巻状の従動側壁体を有し、これら従動側壁体のそれぞれが対応する前記駆動側壁体に対して噛み合わされることによって圧縮空間を形成する従動側スクロール部材と、前記駆動側スクロール部材と前記従動側スクロール部材とが同じ方向に同一角速度で自転運動するように前記駆動側スクロール部材から前記従動側スクロール部材に駆動力を伝達する同期駆動機構と、前記駆動側スクロール部材を回転自在に支持する駆動側軸受と、前記従動側スクロール部材を回転自在に支持する従動側軸受とを備え、前記駆動軸、前記駆動側スクロール部材および前記従動側スクロール部材のうちの少なくともいずれかの重心が、回転中心から所定距離ずれており、前記所定距離は、遠心力と流体圧縮による軸受荷重の合計が前記駆動側軸受及び/又は前記従動側軸受の動定格荷重の5%以上
10%以下発生するように設定されていることを特徴とする。
【0007】
駆動側スクロール部材の端板の中心周りに所定角度間隔をもって配置された駆動側壁体のそれぞれと、従動側スクロール部材の対応する従動側壁体とが噛み合わされる。これにより、1つの駆動側壁体と1つの従動側壁体とからなる対が複数設けられ、複数条とされた壁体を有するスクロール型圧縮機が構成される。駆動側スクロール部材は、駆動部によって回転駆動され、駆動側スクロール部材に伝達された駆動力は、同期駆動機構を介して従動側スクロール部材に伝達される。これにより、従動側スクロール部材は、回転するとともに駆動側スクロール部材に対して同方向に同一角速度で自転運動を行う。このように、駆動側スクロール部材及び従動側スクロール部材の両方が回転する両回転式のスクロール型圧縮機が提供される。
壁体を複数条とするとスクロール部材の回転中心回りに対称に配置することができるので、スクロール部材の重心と回転中心とを一致させるのが一般的である。ところが、スクロール部材の重心と回転中心とを一致させると、軸受に加わる荷重が小さくなるので、軸受と軸受が取り付けられた部材との間で滑りが発生して軸受の寿命低下が生じる。そこで、駆動軸、駆動側スクロール部材および従動側スクロール部材のうち少なくともいずれかの重心を、回転中心から所定距離ずらすようにして、遠心力を発生させて軸受に所定の荷重が加わるようにした。これにより、軸受の寿命の長期化を図ることができる。
回転中心から重心をずらす所定距離としては、例えば定格回転数において、遠心力と流体圧縮による軸受荷重の合計が軸受の動定格荷重の5%以上発生するようにする。
なお、発生させ
る力としては、軸受の動定格荷重の10%以下に設定す
る。
【0008】
さらに、本発明の両回転スクロール型圧縮機では、前記所定距離は、前記駆動側軸受及び/又は前記従動側軸受に与えられた予圧を加えた荷重が前記動定格荷重の5%以上となるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
軸受には予圧を加えて予め軸受に荷重を付与しておく場合がある。この場合には、予圧によって加えられた荷重を加味して、所定距離に応じて発生させる遠心力を決定する。
【0010】
さらに、本発明の両回転スクロール型圧縮機では、複数の前記駆動側壁体及び/又は複数の前記従動側壁体のうちの少なくとも1つが、回転中心に対して対称となる位置からずらされていることを特徴とする。
【0011】
壁体を回転中心に対して対称となる位置からずらすことによって重心を回転中心からずらすことができる。
また、圧縮室を構成しない端板の一部分を切り欠いたり、端板に局所的に付加重量物を設けたりしてもよい。さらには、駆動軸の一部分を切り欠いたり、駆動軸に局所的に付加重量物を設けたりしても良い。
【0012】
さらに、本発明の両回転スクロール型圧縮機では、前記従動側端板を間に介して配置され、前記駆動側壁体の回転軸方向の先側に固定されて前記駆動側スクロール部材とともに回転する駆動側サポート部材、及び/又は、前記駆動側端板を間に介して配置され、前記従動側壁体の回転軸方向の先端側に固定されて前記従動側スクロール部材とともに回転する従動側サポート部材とを備え、前記駆動側サポート部材及び/又は前記従動側サポート部材の重心が、回転中心からずらされていることを特徴とする。
【0013】
駆動側サポート部材や従動側サポート部材を有する場合には、これらサポート部材の重心をずらすことによって遠心力を調整しても良い。
【0014】
また、本発明の両回転スクロール型圧縮機の設計方法は、駆動部によって回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に連結され、駆動側端板の中心回りに所定角度間隔を有して設置された複数の渦巻状の駆動側壁体を有する駆動側スクロール部材と、従動側端板の中心回りに所定角度間隔を有して設置され、各前記駆動側壁体に対応する数の渦巻状の従動側壁体を有し、これら従動側壁体のそれぞれが対応する前記駆動側壁体に対して噛み合わされることによって圧縮空間を形成する従動側スクロール部材と、前記駆動側スクロール部材と前記従動側スクロール部材とが同じ方向に同一角速度で自転運動するように前記駆動側スクロール部材から前記従動側スクロール部材に駆動力を伝達する同期駆動機構と、前記駆動側スクロール部材を回転自在に支持する駆動側軸受と、前記従動側スクロール部材を回転自在に支持する従動側軸受とを備えた両回転スクロール型圧縮機の設計方法であって、前記駆動軸、前記駆動側スクロール部材および前記従動側スクロール部材のうちの少なくともいずれかの重心を、回転中心から所定距離ずらし、前記所定距離は、遠心力と流体圧縮による軸受荷重の合計が前記駆動側軸受及び/又は前記従動側軸受の動定格荷重の5%以上
10%以下発生するように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
駆動軸、駆動側スクロール部材および従動側スクロール部材のうち少なくともいずれかの重心を、回転中心から所定距離ずらすようにして、遠心力を発生させて軸受に所定の荷重が加わるようにしたので、軸受の寿命の長期化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1等を用いて説明する。
図1には、両回転スクロール型圧縮機1Aが示されている。両回転スクロール型圧縮機1Aは、例えば車両用エンジン等の内燃機関に供給する燃焼用空気(流体)を圧縮する過給機として用いることができる。
【0018】
両回転スクロール型圧縮機1Aは、ハウジング3と、ハウジング3の一端側に収容されたモータ(駆動部)5と、ハウジング3の他端側に収容された駆動側スクロール部材7及び従動側スクロール部材9とを備えている。
【0019】
ハウジング3は、略円筒形状とされており、モータ5を収容するモータ収容部3aと、スクロール部材7,9を収容するスクロール収容部3bとを備えている。
モータ収容部3aの外周には、モータ5を冷却するための冷却フィン3cが設けられている。スクロール収容部3bの端部には、圧縮後の空気を吐出するための吐出口3dが形成されている。なお、
図1では示さされていないが、ハウジング3には空気を吸入する空気吸入口が設けられている。
【0020】
モータ5は、図示しない電力供給源から電力が供給されることによって駆動される。モータ5の回転制御は、図示しない制御部からの指令によって行われる。モータ5のステータ5aはハウジング3の内周側に固定されている。モータ5のロータ5bは、駆動回転軸線CL1回りに回転する。ロータ5bには、駆動回転軸線CL1上に延在する駆動軸6が接続されている。駆動軸6は、駆動側スクロール部材7と接続されている。
【0021】
駆動側スクロール部材7は、駆動側端板7aと、駆動側端板7aの一側に設置された渦巻状の駆動側壁体7bとを有している。駆動側端板7aは、駆動軸6に接続された駆動側軸部7cに接続されており、駆動側回転軸線CL1に対して直交する方向に延在している。駆動側軸部7cは、玉軸受とされた駆動側軸受11を介してハウジング3に対して回動自在に設けられている。
【0022】
図2に示すように、駆動側端板7aは、平面視した場合に略円板形状とされている。駆動側スクロール部材7は、渦巻状とされた駆動側壁体7bが3つ、すなわち3条備えている。3条とされた駆動側壁体7bは、駆動側回転軸線CL1回りに略等間隔にて配置されている。ただし、3つの駆動側壁体7bのうち少なくとも1つは、駆動側回転軸線CL1を中心とする対称位置から所定距離だけずらされている。これにより、駆動側スクロール部材7の重心が回転中心である駆動側軸線CL1からずれることになり、遠心力が発生するようになっている。これにより、遠心力が荷重として駆動側軸受11に対して加わるようになっている。
駆動側壁体7bの巻き終わり部7eは、それぞれ、他の壁部に固定されておらず、独立している。すなわち、各巻き終わり部7e同士を接続して補強するような壁部は設けられていない。
【0023】
図1に示すように、従動側スクロール部材9は、駆動側スクロール部材7に噛み合うように配置されており、従動側端板9aと、従動側端板9aの一側に設置された渦巻状の従動側壁体9bとを有している。従動側端板9aには、従動側回転軸線CL2方向に延在する従動側軸部9cが接続されている。従動側軸部9cは、複列の玉軸受けとされた従動側軸受13を介して、ハウジング3に対して回転自在に設けられている。
【0024】
図3に示すように、従動側端板9aは、平面視した場合に略円板形状とされている。従動側スクロール部材9は、渦巻状とされた従動側壁体9bが3つ、すなわち3条設けられている。3条とされた従動側壁体9bは、従動側回転軸線CL2回りに略等間隔にて配置されている。ただし、3つの従動側壁体9bのうち少なくとも1つは、従動側回転軸線CL2を中心とする対称位置から所定距離だけずらされている。これにより、従動側スクロール部材9の重心が回転中心である駆動側軸線CL1からずれることになり、遠心力が発生するようになっている。これにより、遠心力が荷重として従動側軸受13に加わるようになっている。
従動側端板9aの略中央には、圧縮後の空気を吐出する吐出ポート9dが形成されている。この吐出ポート9dは、ハウジング3に形成された吐出口3dに連通している。従動側壁体9bの巻き終わり部9eは、それぞれ、他の壁部に固定されておらず、独立している。すなわち、各巻き終わり部9e同士を接続して補強するような壁部は設けられていない。
【0025】
上述の通り、
図1に示したように、駆動側スクロール部材7は駆動側回転軸線CL1周りに回転し、従動側スクロール部材9は従動側回転軸線CL2回りに回転する。駆動側回転軸線CL1と従動側回転軸線CL2とは、圧縮室が形成できる距離だけオフセットされている。
【0026】
駆動側スクロール部材7と従動側スクロール部材9との間には、複数のピンリング機構15が設けられている。ピンリング機構15は、両スクロール部材7,9が同じ方向に同一角速度で自転運動するように駆動側スクロール部材7から従動側スクロール部材9に駆動力を伝達する同期駆動機構として用いられる。ピンリング機構15は、具体的には、
図1に示されているように、玉軸受とされたリング部材15aと、ピン部材15bとを有している。リング部材15aは、駆動側端板7aに形成された孔部に外輪が嵌め合わされた状態で固定されている。ピン部材15bは、従動側壁体9bの先端(
図1にいて右端)に形成された取付穴に挿入された状態で固定されている。なお、
図1では図示時の切断位置の関係でピン部材15bが従動側壁体9bの先端に挿入された状態が明確に示されていないが、理解の容易のためにピン部材15bのみを示してある。ピン部材15bの先端の側部がリング部材15aの内輪の内周面に接触した状態で運動することによって、同方向同一角速度の転運動が実現されるようになっている。
【0027】
上記構成の両回転スクロール型圧縮機1Aは、以下のように動作する。
モータ5によって駆動軸6が駆動側回転軸線CL1回りに回転させられると、駆動軸6に接続された駆動側軸部7cも回転し、これにより駆動側スクロール部材7が駆動側回転軸線CL1回りに回転する。駆動側スクロール部材7が回転すると、駆動力がピンリング機構15を介して従動側スクロール部材9へと伝達され、従動側スクロール部材9が従動側回転軸線CL2回りに回転する。このとき、ピンリング機構15のピン部材15bがリング部材15aに対して接触しつつ移動することによって、両スクロール部材7,9が同じ方向に同一角速度で自転運動を行う。
両スクロール部材7,9が自転旋回運動を行うと、ハウジング3の吸入口から吸い込まれた空気が両スクロール部材7,9の外周側から吸入され、両スクロール部材7,9によって形成された圧縮室に取り込まれる。圧縮室は中心側に移動するにしたがって容積が減少し、これに伴い空気が圧縮される。このように圧縮された空気は、従動側スクロール部材9の吐出ポート9dを通り、ハウジング3の吐出口3dから外部へと吐出される。
【0028】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
壁体7b、9bを複数条とするとスクロール部材7,9の回転中心回りに対称に配置することができるので、スクロール部材7,9の重心と回転中心とを一致させるのが一般的である。ところが、スクロール部材7,9の重心と回転中心とを一致させると、軸受11,13に加わる荷重が小さくなるので、軸受11,13と軸受11,13が取り付けられたハウジング3側の部材との間で滑りが発生して軸受11,13の寿命低下が生じる。そこで、それぞれ3条とされた壁体7b、9bのうち少なくともいずれかの重心を、回転中心から所定距離ずらすようにして、遠心力を発生させて軸受11,13に所定の荷重が加わるようにした。回転中心から重心をずらす所定距離としては、例えば定格回転数において、遠心力と流体圧縮による軸受荷重の合計が軸受11,13の動定格荷重の5%以上発生するようにする。これにより、軸受11,13の寿命の長期化を図ることができる。
本実施形態のように、吐出ポート9dが形成された軸部9cを支持する軸受13の場合には、吐出ポート9dでの圧損を可及的に小さくするために径を大きくすることが望まれる。このような場合には、軸受13の径が大きくなってしまうが、遠心力によって荷重が付加されるので滑りの発生を回避することができる。
【0029】
なお、軸受11,13には予圧を加えて予め軸受11,13に荷重を付与しておく場合がある。この場合には、予圧によって加えられた荷重を加味して、所定距離に応じて発生させる遠心力を決定する。
また、圧縮室を構成しない端板7a,9aの一部分を切り欠いたり、端板7a,9aに局所的に付加重量物を設けたりしてもよい。さらには、駆動軸6の一部分を切り欠いたり、駆動軸6に局所的に付加重量物を設けたりしても良い。
【0030】
[変形例1]
さらに、本実施形態は、以下に示す両回転スクロール型圧縮機1Bにも適用することができる。
図4に示す本変形例の両回転スクロール型圧縮機1Bは、第1実施形態の両回転スクロール型圧縮機1Aに対して、スクロール部材7,9の壁体7b,9bを支持するサポート部材20,22を設けている点で異なる。その他の点は第1実施形態と同様なので、同一符号を付しその説明を省略する。なお、
図4には、
図1で示したモータ5周辺が示されていないが、本実施形態も同様の構造とされている。
【0031】
図4に示したように、駆動側スクロール部材7の駆動側壁体7bの先端(自由端)には、ピンやボルト等の締結部材24aを介して、駆動側サポート部材20が固定されている。駆動側サポート部材20と駆動側スクロール部材7との間には、従動側スクロール部材9が挟まれている。したがって、駆動側サポート部材20に対向して従動側端板9aが配置されている。
駆動側サポート部材20は、中心側に軸部20aを有している。軸部20aは、玉軸受とされた駆動側サポート部材用軸受26を介して、ハウジング3に対して回転自在に取り付けられている。これにより、駆動側サポート部材20は、駆動側スクロール部材7と同様に駆動側回転軸線CL1を中心として回転する。
図5に示すように、駆動側サポート部材20は、駆動側壁体7bの先端を固定する位置ごとに駆動側壁体7bの外周位置まで半径方向外方に延在する半径方向延長部20bを有している。半径方向延長部20b間の領域は駆動側壁体7bの外周側まで延在しないような形状となっており、軽量化を図っている。本実施形態では、半径方向延長部20bは、等角度間隔で3方向に設けられている。なお、
図5では、駆動側サポート部材20と従動側スクロール部材9が示されており、駆動側スクロール部材7は示されていない。
【0032】
図4に示したように、駆動側サポート部材20と従動側端板9aとの間には、ピンリング機構15が設けられている。すなわち、従動側端板9aにリング部材15aが設けられ、駆動側サポート部材20にピン部材15bが設けられている。
図5に示したように、ピン部材15bは、駆動側サポート部材20の半径方向延長部20bの位置に対応して、3つ設けられている。従動側端板9aに設けられたリング部材15aは、
図4を用いて説明した考え方と同様に、隣り合う従動側壁体9bの巻き終わり部9eの中間位置と従動側回転軸線CL2とを結んだ半径を避けた位置に配置されている。
【0033】
従動側スクロール部材9の従動側壁体9bの先端(自由端)には、ピンやボルト等の締結部材24bを介して、従動側サポート部材22が固定されている。従動側サポート部材22と従動側スクロール部材9との間には、駆動側スクロール部材7が挟まれている。したがって、従動側サポート部材22に対向して駆動側端板7aが配置されている。
従動側サポート部材22は、中心側に軸部22aを有している。軸部22aは、玉軸受とされた従動側サポート部材用軸受28を介して、ハウジング3に対して回転自在に取り付けられている。これにより、従動側サポート部材22は、従動側スクロール部材9と同様に従動側回転軸線CL2を中心として回転する。
【0034】
図6に示すように、従動側サポート部材22は、従動側壁体9bの先端を固定する位置ごとに従動側壁体9bの外周位置まで半径方向外方に延在する半径方向延長部22bを有している。半径方向延長部22b間の領域は従動側壁体9bの外周側まで延在しないような形状となっており、軽量化を図っている。本実施形態では、半径方向延長部22bは、等角度間隔で3方向に設けられている。なお、
図6では、従動側サポート部材22と駆動側スクロール部材7が示されており、従動側スクロール部材9は示されていない。
図4に示したように、従動側サポート部材22と駆動側端板7aとの間には、ピンリング機構15が設けられている。すなわち、駆動側端板7aにリング部材15aを設け、従動側サポート部材22にピン部材15bが設けられている。
図6に示したように、ピン部材15bは、従動側サポート部材22の半径方向延長部22bの位置に対応して、3つ設けられている。
【0035】
上記構成の両回転スクロール型圧縮機1Bは、以下のように動作する。
モータによって駆動軸が駆動側回転軸線CL1回りに回転させられると、駆動軸に接続された駆動側軸部7cも回転し、これにより駆動側スクロール部材7が駆動側回転軸線CL1回りに回転する。駆動側スクロール部材7が回転すると、駆動力がピンリング機構15を介して駆動側端板7aから従動側サポート部材22へと伝達される。また、ピンリング機構15を介して駆動側サポート部材20から従動側端板9aへと駆動力が伝達される。これにより、駆動力が従動側スクロール部材9へと伝達され、従動側スクロール部材9が従動側回転軸線CL2回りに回転する。このとき、ピンリング機構15のピン部材15bがリング部材15aに対して接触しつつ移動することによって、両スクロール部材7,9が同じ方向に同一角速度で自転運動を行う。
両スクロール部材7,9が自転を行うと、ハウジング3の吸入口から吸い込まれた空気が両スクロール部材7,9の外周側から吸入され、両スクロール部材7,9によって形成された圧縮室に取り込まれる。圧縮室は中心側に移動するにしたがって容積が減少し、これに伴い空気が圧縮される。このように圧縮された空気は、従動側スクロール部材9の吐出ポート9dを通り、ハウジング3の吐出口3dから外部へと吐出される。吐出された圧縮空気は、図示しない内燃機関へと導かれ、燃焼用空気として用いられる。
【0036】
本変形例による両回転スクロール型圧縮機1Bは、上記実施形態と同様に、壁体7b,9bや、端板7a,9aや、駆動軸6に対して重心をずらす構造としても良い。さらには、サポート部材20,22の重心を回転中心からずらして、遠心力による荷重を軸受26,28に付加するようにしても良い。
【0037】
[変形例2]
さらに、上記実施形態は、以下に示す両回転スクロール型圧縮機1Cにも適用することができる。
図7には、本変形例に係る両回転スクロール型圧縮機1Cが示されている。なお、
図1を用いて説明した両回転スクロール型圧縮機1Aと同様の構造については同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図7に示されているように、駆動側スクロール部材70は、モータ側(同図において右側)の第1駆動側スクロール部71と、吐出口3d側の第2駆動側スクロール部72とを備えている。
第1駆動側スクロール部71は、第1駆動側端板71aと第1駆動側壁体71bを備えている。第1駆動側壁体71bは、上述した駆動側壁体7b(
図2参照)と同様に、3条とされている。
第2駆動側スクロール部72は、第2駆動側端板72aと第2駆動側壁体72bを備えている。第2駆動側壁体72bは、上述した駆動側壁体7b(
図2参照)と同様に、3条とされている。第2駆動側端板72aには、駆動側回転軸線CL1方向に延在する第2駆動側軸部72cが接続されている。第2駆動側軸部72cは、玉軸受けとされた第2駆動側軸受14を介して、ハウジング3に対して回転自在に設けられている。第2駆動側軸部72cには、駆動側回転軸線CL1に沿って吐出ポート72dが形成されている。
第1駆動側スクロール部71と第2駆動側スクロール部72とは、壁体71b,72bの先端(自由端)同士が向かい合った状態で固定されている。第1駆動側スクロール部71と第2駆動側スクロール部72との固定は、半径方向外側に突出するように円周方向において複数箇所設けたフランジ部73に対して締結されたボルト(壁体固定部)31によって行われる。
【0039】
従動側スクロール部材90は、軸方向(図において水平方向)における略中央に設けられた従動側端板90aを有している。従動側端板90aの中央には貫通孔(図示せず)が形成されており、圧縮後の空気が吐出ポート72dへと流れるようになっている。
従動側端板90aの両側には、それぞれ、従動側壁体91b,92bが設けられている。従動側端板90aからモータ側に設置された第1従動側壁体91bは、第1駆動側スクロール部71の第1駆動側壁体71bと噛み合わされ、従動側端板90aから吐出口3d側に設置された第2従動側壁体92bは、第2駆動側スクロール部72の第2駆動側壁体72bと噛み合わされる。
【0040】
従動側スクロール部材90の軸方向(図において水平方向)における両端には、第1サポート部材33と第2サポート部材35とが設けられている。第1サポート部材33は、モータ側(同図において右側)に配置され、第2サポート部材35は吐出口3d側に配置されている。第1サポート部材33は、ピンやボルト等の締結部材25aによって第1従動側壁体91bの先端(自由端)の第1固定部91fに対して固定されており、第2サポート部材35は、ピンやボルト等の締結部材25bによって第2従動側壁体92bの先端(自由端)の第2固定部92fに対して固定されている。従動側壁体91b,92bに設けた固定部91f,92fは、
図3を用いて説明した従動側固定部9fと同様に、従動側壁体91b,92bの板厚を半径方向外側に増大させた膨出部とされおり、巻き終わり部よりも従動側壁体91b,92bの内周方向(巻初め方向)に離間した位置とされている。
第1サポート部材33の中心軸側には、軸部33aが設けられており、この軸部33aが第1サポート部材用軸受37を介してハウジング3に対して固定されている。第2サポート部材35の中心軸側には、軸部35aが設けられており、この軸部35aが第2サポート部材用軸受38を介してハウジング3に対して固定されている。これにより、各サポート部材33,35を介して、従動側スクロール部材90は、第2中心軸線CL2回りに回転するようになっている。また、各サポート部材33,35の形状は、
図6を用いて説明した第1実施形態の従動側サポート部材22と同様である。
【0041】
第1サポート部材33と第1駆動側端板71aとの間には、ピンリング機構15が設けられている。すなわち、第1駆動側端板71aにリング部材15aが設けられ、第1サポート部材33にピン部材15bが設けられている。
図6に示したように、ピン部材15bは、第1サポート部材33のサポート部の位置に対応して、3つ設けられている。
【0042】
第2サポート部材35と第2駆動側端板72aとの間には、ピンリング機構15が設けられている。すなわち、第2駆動側端板72aにリング部材15aが設けられ、第2サポート部材35にピン部材15bが設けられている。
図6に示したように、ピン部材15bは、第2サポート部材35のサポート部の位置に対応して、3つ設けられている。
【0043】
ハウジング3のスクロール収容部3bは、スクロール部材70,90の軸線方向における略中央部にて分割されており、ボルト32によって固定されるようになっている。
【0044】
上記構成の両回転スクロール型圧縮機1Cは、以下のように動作する。
モータによってロータに接続された駆動軸が駆動側回転軸線CL1回りに回転させられると、駆動軸に接続された駆動側軸部7cも回転し、これにより駆動側スクロール部材70が駆動側回転軸線CL1回りに回転する。駆動側スクロール部材70が回転すると、駆動力がピンリング機構15を介して各サポート部材33,35から従動側スクロール部材90へと伝達され、従動側スクロール部材90が従動側回転軸線CL2回りに回転する。このとき、ピンリング機構15のピン部材15bがリング部材15aに対して接触しつつ移動することによって、両スクロール部材70,90が同じ方向に同一角速度で自転運動を行う。
両スクロール部材70,90が自転運動を行うと、ハウジング3の吸入口から吸い込まれた空気が両スクロール部材70,90の外周側から吸入され、両スクロール部材70,90によって形成された圧縮室に取り込まれる。そして、第1駆動側壁体71bと第1従動側壁体91bとによって形成された圧縮室と、第2駆動側壁体72bと第2従動側壁体92bとによって形成された圧縮室とが別々に圧縮される。それぞれの圧縮室は中心側に移動するにしたがって容積が減少し、これに伴い空気が圧縮される。第1駆動側壁体71bと第1従動側壁体91bとによって圧縮された空気は、従動側端板90aに形成された貫通孔90hを通り、第2駆動側壁体72bと第2従動側壁体92bとによって圧縮された空気と合流し、合流後の空気が吐出ポート72dを通り、ハウジング3の吐出口3dから外部へと吐出される。吐出された圧縮空気は、図示しない内燃機関へと導かれ、燃焼用空気として用いられる。
【0045】
本変形例による両回転スクロール型圧縮機1Cは、上記実施形態と同様に、壁体71b,72b,91b,92bや、端板71a,72a,90aや、駆動軸6に対して重心をずらす構造としても良い。さらには、サポート部材33,35の重心を回転中心からずらして、遠心力による荷重を軸受37,38に付加するようにしても良い。
【0046】
なお、上述した各実施形態では、過給機として両回転スクロール型圧縮機を用いることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、流体を圧縮するものであれば広く利用することができ、例えば空調機械において使用される冷媒圧縮機として用いることもできる。
また、同期駆動機構としてピンリング機構15を用いることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばクランクピン機構としても良い。