(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ジャッキアップ装置は、外槽の屋根部を側壁の頂部まで引き上げる際に、側壁の頂部に設置した頂部サポートに支持される。頂部サポートは、側壁の内壁面側でジャッキアップ装置を支持するため、ジャッキアップ装置から荷重を受けると、側壁の頂部を支点としたモーメントが発生し、側壁の内壁面側に向かって回転し(倒れ)ようとする。
従来では、上記回転を抑制するため、側壁の外壁面にアンカーボルトを埋め込んでH鋼などの鉄骨鋼材を接合し、この鉄骨鋼材と頂部サポートとを連結していた。この構成によれば、上記回転を抑えようとする反力が鉄骨鋼材及びアンカーボルトを介して側壁の外壁面に伝わり、上記回転を抑えることができる。しかしながら、この構成では、側壁の外壁面に、アンカーボルトのせん断荷重が大きく作用するため、アンカーボルトを多数埋め込まなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、壁の頂部を支点とした回転を抑制するのに必要なアンカーボルトの本数を削減することができる頂部サポートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、壁の頂部に設置され、前記壁の一方の壁面側で物体を支持する頂部サポートであって、前記壁の他方の壁面に埋め込まれたアンカーボルトと、前記アンカーボルトに取り付けられたベースプレートと、前記壁の頂部に立設し、前記物体を支持するサポート本体と、を有し、前記サポート本体は、前記壁の他方の壁面側に張り出す梁部と、前記梁部と前記ベースプレートとを連結する連結部と、を有する、という構成を採用する。
【0007】
また、本発明においては、前記連結部は、長さ調節部を有する、という構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、前記サポート本体は、前記梁部よりも上方で、前記壁の他方の壁面側に張り出す第2の梁部と、前記梁部と前記第2の梁部とを連結する第2の連結部と、前記第2の梁部と前記サポート本体の頂部とを連結する第3の連結部と、を有する、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記第2の連結部は、長さ調節部を有する、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記第3の連結部は、鉄骨鋼材である、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記物体は、ジャッキアップ装置である、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記壁は、タンクの側壁であり、前記ジャッキアップ装置は、前記タンクの屋根を含む揚重物を吊り上げる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、壁の一方の壁面側で物体を支持するサポート本体に、壁の他方の壁面側に向かって張り出す梁部を設け、壁の他方の壁面にアンカーボルトを介して取り付けられたベースプレートと、梁部とを連結部で連結する。この構成によれば、サポート本体が物体から荷重を受け、壁の頂部を支点としてサポート本体が一方の壁面側に回転しようとすると、その回転を抑えようとする反力が、連結部を介して壁の他方の壁面に対してある角度をもって伝わる。そうすると、壁の他方の壁面には、アンカーボルトのせん断荷重だけでなく、アンカーボルトの引き抜き荷重が作用する。このように、サポート本体の回転を抑える荷重の一部を、アンカーボルトの引き抜き荷重としてバランスよく分配することで、アンカーボルトのせん断荷重を減らし、アンカーボルトの本数を削減することができる。
したがって、本発明では、壁の頂部を支点とした回転を抑制するのに必要なアンカーボルトの本数を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の頂部サポートについて図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の頂部サポートを、LNGを貯蔵する地上式のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽の構築方法に用いた形態を例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す説明図である。
図2は、本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す説明図である。
本手法では、先ず、
図1に示すように、略円板状の基礎版1を構築する。基礎版1の外周縁部には、内槽アンカーストラップ4を埋設する。また、基礎版1の外周縁部には、側壁2(壁)を構築する。側壁2は、内壁面2a(一方の壁面)に複数の外槽側板3が配列されてなるPC壁である。
【0017】
側壁2は、基礎版1上に外槽側板3を組み上げつつ、その外槽側板3を内型枠としてコンクリート5を打設していくことにより構築される。外槽側板3は、鋼製ライナーであってコンクリート型枠を兼ねており、足場6a,6bを設置しつつ外槽側板3の組み上げに追従してコンクリート5を打設することにより、側壁2を下から順に組み上げていく。外槽側板3の組み上げは、タンク周方向において複数の外槽側板3を円筒状に接合し、これを一段ずつ積層することで行われる。外槽側板3を一段組み上げたら、この外槽側板3を用いたコンクリート5の打設をし、これを繰り返し行うことにより、側壁2を組み上げていく。
【0018】
本手法では、このような側壁2の組み上げと並行して、基礎版1上に底部ライナー6を敷設する。次に、基礎版1の中央部に屋根架台7を組み立てる。また、側壁2の基端部に内槽側板9等を取り込むための工事口8を形成する。また、側壁2の基端部の内側に沿って、内槽側板組立用の門型架台10を複数設置する。門型架台10は、内槽側板9が複数組み合わされてなる円筒状の内槽が基礎版1上に最終的に下ろされるべき領域であるアニュラー領域Xを跨ぐように設置する。
【0019】
次に、門型架台10の下に、パーライトコンクリートブロックや構造用軽量コンクリートブロック等の保冷構造体12を仮置きする。門型架台10の下では、保冷構造体12によるアニュラー部13(
図2参照)の保冷工事を行う。アニュラー部13の保冷工事は、例えば、底部冷熱抵抗緩和材の上にパーライトコンクリートブロック、構造用軽量コンクリートブロックを組み立て、その上にアニュラープレートを取り付けることにより行う。
【0020】
アニュラー部13の保冷工事が完了したら、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた脚部10aをアニュラー部13上に挿げ替える(
図2参照)。このような挿げ替えによって、アニュラー部13よりもタンク内側には干渉物がなくなるため、基礎版1上の中央部の保冷工事を行うことができる。中央部の保冷工事では、底部冷熱抵抗緩和材39の上に泡ガラス40を載置する。そして、その上に不図示のパーライトコンクリートブロックと不図示の内槽底板を順に重ねて敷設する。
【0021】
また、本手法では、上記保冷工事と並行して、
図1に示すように、側壁2にジャッキアップ装置19を複数台設置する。先ず、側壁2の中段部に、吊側架台70を設置する。吊側架台70は、側壁2に埋め込んだ不図示のアンカープレートに着脱可能に締結固定する。また、門型架台10上で組んでいたナックルプレート11に、被吊側架台80を設置する。被吊側架台80には、ジャッキアップ装置19のジャッキ本体19aが連結される。また、吊側架台70には、ジャッキ本体19aの作動よりストロークするジャッキロッド19bが連結される。
【0022】
このようにジャッキアップ装置19を設置したら、ナックルプレート11を吊り上げ、そのジャッキアップによりできた下部空間に、内槽側板9を搬入する。内槽側板9は、所定の溶接位置まで搬送し、隣り合う内槽側板9同士を溶接し、全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせる。次に、この内槽側板9の上端部を、ナックルプレート11の下端部に組み付ける。また、ナックルプレート11の上端部は、屋根架台7上で組んでいた内槽屋根14(タンクの屋根)の外周縁部に組み付ける。
【0023】
次に、屋根架台7を除去し、ジャッキアップ装置19によって、内槽屋根14、ナックルプレート11及び内槽側板9を含む揚体60を吊り上げる。ジャッキアップ装置19により内槽側板9の上下幅相当分だけ揚体60を上昇させたら、そのジャッキアップにより内槽側板9の下部にできた空間に、次の内槽側板9を搬入する。搬入した内槽側板9をタンク周方向に繋ぎ合わせたら、その上端と、揚体60の下端(内槽側板9)とを溶接する。このように、本手法では、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の溶接と、を交互に繰り返す。
【0024】
また、この工程中、
図2に示すように、内槽屋根14上で外槽屋根22(タンクの屋根)を組み立てる。外槽屋根22は、内槽屋根14と不図示の連結材で連結され、内槽屋根14と一体的に組み立てられる。また、ジャッキロッド19bのストローク分、揚体60をジャッキアップしたら、吊側のジャッキポイントを順次上方に盛り替える。吊側のジャッキポイントは、最終的に、側壁2の頂部2Aに変更する。側壁2の頂部2Aには、吊側架台70を連結可能な頂部サポート100を設置する。頂部サポート100は、コンクリート5を打設する外側の足場6bが残っているうちに設置することが好ましい。このように、吊側のジャッキポイントを盛り替えつつ、ジャッキアップ装置19による内槽側板9の上昇と、上昇した内槽側板9の下側への次の内槽側板9の溶接と、を交互に繰り返し、内槽側板9の最下段を除く第1の構造物9aを組み立てる。
【0025】
図3は、本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す説明図である。
本手法では、
図3に示すように、内槽側板9の最下段を、第1の構造物9aとは別にアニュラー部13上に組み立てる。門型架台10の解体後、内槽側板9の最下段をアニュラー部13上に載置したら、隣り合う内槽側板9同士を溶接し、全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせ、第2の構造物9bを組み立てる。第2の構造物9bを組み立てたら、基礎版1に設置された内槽アンカーストラップ4を取り付ける。また、側壁2の外部には、昇降階段23を設ける。また、側壁2の内側に、ポンプバレル25を搬入する。
【0026】
図4は、本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す説明図である。
次に、本手法では、
図4に示すように、第1の構造物9aをジャッキダウンし、第1の構造物9aの下端部を第2の構造物9bの上端部に降ろし、第1の構造物9aと第2の構造物9bとを溶接し、内槽30を組み立てる。本手法では、ジャッキアップ装置19による内槽30の組み立てから、内槽30の最下段の組み立てを分離し、内槽30の最下段である第2の構造物9bのアニュラー部13上への固定を前倒しで行っている。したがって、本手法では、例えば1カ月程度かかる内槽30のアニュラー部13上への固定がクリティカルパスとならず、従来手法よりも工期の短縮化を図ることができる。
【0027】
図5は、本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す説明図である。
内槽30が完成したら、外槽屋根22は、不図示の連結材による内槽屋根14との連結を解除し、最上段まで組み立てられた側壁2の上端部に据え付ける。また、外槽屋根22に屋根階段24を設ける。また、ポンプバレル25を設置する。また、ジャッキアップ装置19を撤去する。
その後、側壁2の緊張工事を行う。そして、工事口8の閉鎖後、水張りをして耐圧・気密試験を実施する。最後に、内槽30と側壁2との間の内外槽間15に保冷材44を配置し、また、内槽屋根14と外槽屋根22の間にも保冷材44を配置して保冷工事を行い、塗装工事、配管保冷工事を経てLNGタンク50が構築される。
【0028】
続いて、上述のLNGタンク50の構築方法において、側壁2の頂部2Aでジャッキアップ装置19を支持する頂部サポート100の構成について、
図6及び
図7を参照して詳しく説明する。
【0029】
図6は、本発明の実施形態における頂部サポート100を示す側面図である。
図7は、本発明の実施形態における頂部サポート100を示す平面図である。
頂部サポート100は、
図6に示すように、側壁2の頂部2Aに設置され、側壁2の内壁面2a側でジャッキアップ装置19を支持するものである。頂部サポート100は、アンカーボルト101と、ベースプレート102と、サポート本体103と、を有する。
【0030】
アンカーボルト101は、側壁2の外壁面2bに対し垂直(水平方向)に複数埋め込まれている。本実施形態では、アンカーボルト101の先端が、コンクリート5に埋め込まれた躯体5aに接続されている。
ベースプレート102は、側壁2の外壁面2bに複数のアンカーボルト101を介して取り付けられている。このベースプレート102には、ロッド連結部102aが接合されている。
【0031】
サポート本体103は、側壁2の頂部2Aに垂直(鉛直方向)に立設している。サポート本体103は、
図7に示すように、左右一対の構造体104a,104bと、左右一対の構造体104a,104bに支持された支持部105と、から形成されている。左右一対の構造体104a,104bは、
図6及び
図7に示すように、複数の鉄骨鋼材とロッドなどで組まれたものであり、要所で連結材104cを介して連結されている。
【0032】
支持部105は、
図6に示すように、ジャッキアップ装置19の吊側架台70を着脱自在に取り付け可能な取付プレート107を有する。取付プレート107には、挿通孔107aが鉛直方向に間隔をあけて複数形成されている。この取付プレート107は、
図7に示すように、左右一対で設けられている。挿通孔107aには、図示しない取付ボルトが挿通され、当該取付ボルトは、吊側架台70と取付プレート107とを締結固定する。これにより、ジャッキアップ装置19が支持部105に支持される。
【0033】
左右一対の構造体104a,104bはそれぞれ、
図6に示す、台座部110と、第1の梁部120(梁部)と、柱部130と、第2の梁部140と、第1の連結部150(連結部)と、第2の連結部160と、第3の連結部170と、を有する。
台座部110は、側壁2の頂部2Aに複数のアンカーボルト108を介して固定されている。この台座部110は、I形鋼などの鉄骨鋼材から形成できる。アンカーボルト108は、側壁2の頂部2Aに対し垂直(鉛直方向)に複数埋め込まれ、台座部110の下部フランジを側壁2の頂部2Aに固定する。
【0034】
第1の梁部120は、台座部110の上部フランジに、複数のボルト121を介して固定されている。第1の梁部120は、I形鋼などの鉄骨鋼材から形成できる。ボルト121は、第1の梁部120の下部フランジを、台座部110の上部フランジに固定する。第1の梁部120は、側壁2の外壁面2b側に張り出すように、台座部110に片持ち支持されている。側壁2の外壁面2bよりも外側に張り出した第1の梁部120の先端には、ロッド連結部122,123が接合されている。ロッド連結部122は、第1の梁部120の下部フランジの下面に接合されている。また、ロッド連結部123は、第1の梁部120の上部フランジの上面に接合されている。
【0035】
柱部130は、第1の梁部120の上部フランジに接合されている。柱部130は、I形鋼などの鉄骨鋼材から形成できる。この柱部130は、台座部110の直上に配置され、第1の梁部120の上部フランジから鉛直上方に立設している。柱部130の頂部(サポート本体103の頂部103A)近傍には、取付ボルトを介して支持部105を取り付ける取付プレート132が接合されている。
【0036】
第2の梁部140は、柱部130の中腹部の背面側に接合されている。第2の梁部140は、I形鋼などの鉄骨鋼材から形成できる。第2の梁部140は、第1の梁部120よりも上方で、側壁2の外壁面2b側に張り出すように、柱部130に片持ち支持されている。側壁2の外壁面2bよりも外側に張り出した第2の梁部140の先端には、ロッド連結部141が接合されている。ロッド連結部141は、第2の梁部140の下部フランジの下面に接合されている。
【0037】
第1の連結部150は、第1の梁部120とベースプレート102とを斜めに連結している。第1の連結部150のベースプレート102(側壁2の外壁面2b)に対する角度αは、約45度に設定されている。第1の連結部150は、ベースプレート102のロッド連結部102aにピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド151と、第1の梁部120のロッド連結部122にピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド152と、ロッド151,152を連結する長さ調節部153と、を有する。長さ調節部153は、ロッド151,152と螺合する円筒状の部材であり、内部にネジが切られている。この長さ調節部153を回転させることで、第1の連結部150の長さを調節することができる。
【0038】
第2の連結部160は、第1の梁部120と第2の梁部140とを鉛直方向で連結している。第2の連結部160は、第2の梁部140のロッド連結部141にピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド161と、第1の梁部120のロッド連結部123にピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド162と、ロッド161,162を連結する長さ調節部163と、を有する。長さ調節部163は、ロッド161,162と螺合する円筒状の部材であり、内部にネジが切られている。この長さ調節部163を回転させることで、第2の連結部160の長さを調節することができる。
【0039】
第3の連結部170は、第2の梁部140とサポート本体103の頂部103Aとを斜めに連結している。第3の連結部170の第2の梁部140に対する角度βは、約45度に設定されている。第3の連結部170は、I形鋼などの鉄骨鋼材から形成できる。第3の連結部170は、第2の梁部140の上部フランジの上面と、柱部130の頂部背面とに接合されている。
【0040】
次に、上記構成の頂部サポート100の作用について、
図8を参照して説明する。
【0041】
図8は、本発明の実施形態における頂部サポート100の作用を示す説明図である。
頂部サポート100は、側壁2の頂部2Aに設置され、側壁2の内壁面2a側でジャッキアップ装置19を支持する。サポート本体103の柱部130には、ジャッキアップ装置19を支持する支持部105が取り付けられており、サポート本体103は、支持部105に荷重Fを受ける。そうすると、側壁2の頂部2Aを支点としたモーメントが発生し、サポート本体103は、側壁2の内壁面2a側に向かって回転し(倒れ)ようとする。
【0042】
ここで、本実施形態のサポート本体103は、側壁2の外壁面2b側に張り出す第1の梁部120と、第1の梁部120とベースプレート102とを連結する第1の連結部150と、を有している。この構成によれば、支持部105が荷重Fを受け、側壁2の頂部2Aを支点としてサポート本体103が内壁面2a側に回転しようとすると、その回転を抑えようとする荷重F1が、第1の連結部150を介して側壁2の外壁面2bに対して角度αをもって伝わる。
【0043】
そうすると、この荷重F1が分解され、側壁2の外壁面2bには、アンカーボルト101のせん断荷重F11だけでなく、アンカーボルト101の引き抜き荷重F12が作用する。このため、サポート本体103の回転を抑える荷重F1を、アンカーボルト101のせん断荷重F11と、アンカーボルト101の引き抜き荷重F12とにバランスよく分配することができる。したがって、荷重F1を、アンカーボルト101のせん断荷重F11のみで受ける従来の構成と比べて、アンカーボルト101のせん断荷重F11を減らすことができ、これにより、アンカーボルト101の本数を削減することができる。
【0044】
また、本実施形態のサポート本体103は、第1の梁部120よりも上方で、側壁2の外壁面2b側に張り出す第2の梁部140と、第1の梁部120と第2の梁部140とを連結する第2の連結部160と、第2の梁部140とサポート本体103の頂部103Aとを連結する第3の連結部170と、を有する。この構成によれば、荷重Fが、サポート本体103の頂部103Aから、第3の連結部170、第2の連結部160、第1の連結部150を経由して、側壁2の外壁面2bに伝わるため、モーメントの支点から最も離れたサポート本体103の頂部103Aにおける変位を効果的に抑制することができる。
【0045】
支持部105が荷重Fを受けると、第3の連結部170は、サポート本体103の頂部103Aから荷重F3を受ける。荷重F3は、第3の連結部170を介して第2の梁部140に対して角度βをもって伝わる。そうすると、荷重F3が分解され、第2の梁部140には、鉛直方向の荷重F31と、水平方向の荷重F32が作用する。水平方向の荷重F32は、柱部130からの反力によって相殺される。鉛直方向の荷重F31は、第2の連結部160を介して第1の梁部120に対して荷重F2として作用する。荷重F2は、鉛直方向の荷重であり、第1の梁部120には、水平方向の荷重がかからない。このため、第1の梁部120と台座部110との間にせん断荷重をかけないようにすることができ、両者をボルト121による取り合いにすることができる。これにより、台座部110から上部を容易に分離して資材化することができる。
【0046】
本実施形態の第1の連結部150は、長さ調節部153を有する。この構成によれば、第1の連結部150の長さを調節することにより、モーメントによって上方に撓もうとする第1の梁部120(点線で示す)を水平姿勢にすることができる。また、本実施形態の第2の連結部160も、長さ調節部163を有する。この構成によれば、第2の連結部160の長さを調節することにより、モーメントによって上方に撓もうとする第2の梁部140(点線で示す)を水平姿勢にすることができる。これにより、支持部105の位置が下がらず、支持部105を規定位置に戻すことができ、ジャッキアップ装置19が支持する揚体60の高さ変動を抑制することができる。
なお、第3の連結部170では、撓みの影響は少ないため、ロッドではなく鉄骨鋼材としており、これによりコストを削減することができる。
【0047】
このように、上述の本実施形態によれば、側壁2の頂部2Aに設置され、側壁2の内壁面2a側でジャッキアップ装置19を支持する頂部サポート100であって、側壁2の外壁面2bに埋め込まれたアンカーボルト101と、アンカーボルト101に取り付けられたベースプレート102と、側壁2の頂部2Aに立設し、ジャッキアップ装置19を支持するサポート本体103と、を有し、サポート本体103は、側壁2の外壁面2b側に張り出す第1の梁部120と、第1の梁部120とベースプレート102とを連結する第1の連結部150と、を有する、という構成を採用することによって、側壁2の頂部2Aを支点とした回転を抑制するのに必要なアンカーボルト101の本数を削減することができる。
【0048】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、第3の連結部170が鉄骨鋼材である構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、
図9に示すように、第3の連結部170が長さ調節部174を有するロッドであってもよい。
図9に示すように、第2の梁部140の上部フランジの上面には、ロッド連結部142が接合されている。また、柱部130の頂部背面には、ロッド連結部133が接合されている。第3の連結部170は、第2の梁部140のロッド連結部142にピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド172と、柱部130のロッド連結部133にピンを介して水平軸回りに回転可能に連結されたロッド173と、ロッド172,173を連結する長さ調節部174と、を有する。この構成によれば、柱部130と第2の梁部140との間においても長さ調節することができる。
【0050】
また、例えば、上記実施形態では、第1の連結部150が長さ調節部153を有するロッドである構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、
図10に示すように、第1の連結部150が三角板154であってもよい。
図10に示すように、第1の梁部120の下部フランジの下面には、取付ボルトを介して三角板154を取り付ける取付プレート124が接合されている。三角板154は、ベースプレート102に接合される接合部155を有する。この構成によっても、サポート本体103の回転を抑えようとする反力が、ある角度で側壁2の外壁面2bに伝わり、当該回転を抑えることができる。なお、第1の連結部150は、第1の梁部120とベースプレート102とを連結できるものであれば、三角板154でなくともよい(例えば四角形の板などであってもよい)。
【0051】
また、例えば、上記実施形態では、第1の連結部150のベースプレート102(側壁2の外壁面2b)に対する角度αが、約45度に設定されている構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。角度αは、例えば、30°〜60°の範囲で設定することもできる。すなわち、上記実施形態のように、角度αが45度であれば、アンカーボルト101のせん断荷重F11と引き抜き荷重F12を等しくバランスさせることができるが、アンカーボルト101の強度特性に応じて、せん断荷重F11及び引き抜き荷重F12のいずれか一方を他方に比べて大きくしてもよい。
【0052】
また、例えば、上記実施形態では、サポート本体103が第2の梁部140を有する構成について説明したが、第2の梁部140がない構成であってもよい。例えば、サポート本体103の頂部103Aと、第1の梁部120とを直接連結してもよい。
【0053】
また、例えば、上記実施形態では、サポート本体103がジャッキアップ装置19を支持する構成について説明したが、サポート本体103が支持する物体は、ジャッキアップ装置19に限定されない。例えば、サポート本体103は、吊り足場や、ホイストクレーンなどを支持する構成であってもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、頂部サポート100が側壁2の内壁面2a側で物体を支持する構成について説明したが、例えば、頂部サポート100が側壁2の外壁面2b側で物体を支持する構成であってもよい。この場合、頂部サポート100は、第1の連結部150を介して側壁2の内壁面2aに連結される。
【0055】
また、本実施形態においては、頂部サポート100を円筒状のLNGタンク50の側壁2の頂部2Aに設置したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、頂部サポート100は、矩形状のタンクの壁の頂部に設置してもよい。また、壁であれば、例えば、水をせき止める堰などの頂部に、頂部サポート100を設置してもよい。