特許第6749861号(P6749861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749861
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】加熱調理器の放熱板加熱構造
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20200824BHJP
【FI】
   A47J27/00 103N
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-82075(P2017-82075)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2018-175583(P2018-175583A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】貫名 明
(72)【発明者】
【氏名】坂口 洋一
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−155252(JP,A)
【文献】 特開2001−321266(JP,A)
【文献】 特開2010−240330(JP,A)
【文献】 特開2013−236796(JP,A)
【文献】 特開平09−313342(JP,A)
【文献】 特開平11−318699(JP,A)
【文献】 特開2003−275096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口の調理鍋が配設される調理器本体と、
前記調理器本体の上端開口を開閉可能に構成され、前記上端開口を閉じた閉姿勢において、前記調理鍋内と外部とを連通する蒸気通路が貫通する蓋体と、
前記蒸気通路の入口を構成する連通孔を有し、前記蓋体の前記調理鍋内を臨む側に備えられ、前記調理鍋の上端開口を密閉する内蓋とを備え、
前記内蓋の上面に沿った放熱面部位と、当該放熱面部位の外周近傍から蓋体側に立ち上る外周壁部位とを備え、前記蒸気通路が貫通する蒸気通路用貫通孔を備えた放熱板を備え、前記放熱板の上面に蓋体側加熱手段を備えた加熱調理器の放熱板加熱構造であって、
前記蓋体側加熱手段の加熱部が、通電状態で発熱するヒータ線と、少なくとも前記ヒータ線を覆う伝熱材料部とを備えて構成され、前記伝熱材料部が、前記ヒータ線を周回する周回部と当該ヒータ線の一側に張り出す張り出し部とを備え、前記ヒータ線が当該張り出し部を介して前記放熱板の前記外周壁部位に取付けられる構成で、
内周側に前記蒸気通路用貫通孔を備えた一方の外周壁加熱部において、前記ヒータ線を前記放熱面部位に近接位置させ、前記張り出し部を前記放熱面部位から離間させる形態で、前記外周壁部位と前記蒸気通路用貫通孔との間に、単一の前記ヒータ線が前記張り出し部を介して前記外周壁部位に取付けられ、
前記蒸気通路用貫通孔を挟んで前記一方の外周壁加熱部に対向する部位に対向側加熱部を備え、
前記対向側加熱部に設けられる他方の外周壁加熱部の内周側に内周側加熱部を備えるとともに温度センサ及び温度ヒューズを備えている放熱板加熱構造。
【請求項2】
前記内周側加熱部が、通電状態で発熱するヒータ線と、前記ヒータ線を覆う伝熱材料部とを有して構成される請求項1記載の放熱板加熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端開口の調理鍋が配設される調理器本体と、
前記調理器本体の上端開口を開閉可能に構成され、前記上端開口を閉じた閉姿勢において、前記調理鍋内と外部とを連通する蒸気通路が貫通する蓋体と、
前記蒸気通路の入口を構成する連通孔を有し、前記蓋体の前記調理鍋内を臨む側に備えられ、前記調理鍋の上端開口を密閉する内蓋とを備え、
前記内蓋の上面に沿った放熱面部位と、当該放熱面部位の外周近傍から蓋体側に立ち上る外周壁部位とを備え、前記蒸気通路が貫通する蒸気通路用貫通孔を備えた放熱板を備え、前記放熱板の上面に蓋体側加熱手段を備えた加熱調理器の放熱板加熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器の放熱板加熱構造が、特許文献1に紹介されている。
この文献には、加熱調理器の小型化、高機能化に伴って平面部分が制限される放熱板4を加熱するための加熱板3に、ヒータ線5をしっかりと貼着する技術が開示されている。
【0003】
この技術では、ヒータ線5をアルミニウム箔6によって貼着する。ヒータ線5を貼着するための十分な平面を確保することができない細幅部分では、傾斜面や曲面といった上下方向の変形面を形成し、この部分にアルミニウム箔6を貼着することによって広い貼着面積(伝熱面積でもある)を確保する。ヒータ線5は、その径方向の両側部においてアルミニウム箔6を延設して貼着される。
【0004】
従来、この種の蓋体側加熱手段に求められる加熱量はほぼ40W以下であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−321266号公報
【特許文献2】特開2013−236796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、近年、本発明の出願人は、特許文献2において、この蓋体側加熱手段(蓋ヒータ25)を配置する放熱板24の内径側に、調圧弁43A,43Bを収納する弁収容部33A、33Bをそれぞれ設け、これら収納室33A,33Bの下流側に蒸気ユニット35を繋げ、この蒸気ユニット35に設けられた排気口36から蒸気を排気する構成を提案している。
【0007】
この構成では、蓋体19の下、内蓋27上に、調理鍋10内と外部とを連通する蒸気通路(各弁収容室33A、33B及び蒸気ユニット35)を設けることとなるが、蒸気とともに調理鍋10から流入してくる液状物質(とくにおねば)を、この蒸気通路で分離しようとすると、蒸気通路を屈曲通路とすることが好ましい。
【0008】
このように蒸気から液状物質を分離しようとする場合、蒸気通路の構成をできるだけ複雑にする必要が生じるが、制限された容積内にその目的を達成することができる屈曲経路を形成しようとすると、当然にその蒸気通路構成部材の占有容積が嵩み、蓋体側加熱手段に割り当てることができる容積(平面視での面積)が制限される。
【0009】
一方、蓋体側加熱手段に関しては、その保温機能を高めたい等の目的から、その加熱量を従来の倍程度にまで高めたいという要求がある。この場合、蓋体側加熱手段を構成するヒータ線の単位長当たりの発熱量を増加させることも考えられるが、加熱調理器等で採用可能なヒータ線に於ける単位長当たりの発熱量(W/m)に制限があるため、ヒータ線の線長を長くする必要が生じる。
例えば、その加熱量と倍にしようとすると、現在のヒータ線の線長に対して、その線長が倍となり、従来の貼着構造では対応できない。即ち、放熱板24の径は、一般に大きくないためヒータ線の線長を倍にしようとすると、所謂、二重巻きとする必要が生じるのである。
このように、二重巻きとする場合、従来構造では、実質的に対応できない。
【0010】
上記実情に鑑み、本発明の主たる課題は、蒸気通路を複雑化するためにその占有容積が増加しても、必要な加熱量を確保でき、蓋体側加熱手段に求められる高加熱化に対応できる加熱調理器の放熱板加熱構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための、
上端開口の調理鍋が配設される調理器本体と、
前記調理器本体の上端開口を開閉可能に構成され、前記上端開口を閉じた閉姿勢において、前記調理鍋内と外部とを連通する蒸気通路が貫通する蓋体と、
前記蒸気通路の入口を構成する連通孔を有し、前記蓋体の前記調理鍋内を臨む側に備えられ、前記調理鍋の上端開口を密閉する内蓋とを備え、
前記内蓋の上面に沿った放熱面部位と、当該放熱面部位の外周近傍から蓋体側に立ち上る外周壁部位とを備え、前記蒸気通路が貫通する蒸気通路用貫通孔を備えた放熱板を備え、前記放熱板の上面に蓋体側加熱手段を備えた加熱調理器の放熱板加熱構造の特徴構成は、
前記蓋体側加熱手段の加熱部が、通電状態で発熱するヒータ線と、少なくとも前記ヒータ線を覆う伝熱材料部とを備えて構成され、前記伝熱材料部が、前記ヒータ線を周回する周回部と当該ヒータ線の一側に張り出す張り出し部とを備え、前記ヒータ線が当該張り出し部を介して前記放熱板の前記外周壁部位に取付けられる構成で、
内周側に前記蒸気通路用貫通孔を備えた一方の外周壁加熱部において、前記ヒータ線を前記放熱面部位に近接位置させ、前記張り出し部を前記放熱面部位から離間させる形態で、前記外周壁部位と前記蒸気通路用貫通孔との間に、単一の前記ヒータ線が前記張り出し部を介して前記外周壁部位に取付けられ、
前記蒸気通路用貫通孔を挟んで前記一方の外周壁加熱部に対向する部位に対向側加熱部を備え、
前記対向側加熱部に設けられる他方の外周壁加熱部の内周側に内周側加熱部を備えるとともに温度センサ及び温度ヒューズを備える点にある。
【0012】
本構成によれば、
ヒータ線に伝熱部材部を備える構成において、その伝熱部材部を周回部とその周回部から一側に張り出す張り出し部を有する構造とする。そして、その張り出し部の取付け部位を放熱板の外周壁部位とする。結果、この外周壁加熱部は、その部位が占有する放熱面部位に沿った厚み(平面視での厚みで、例えば、図4に示すZ1部の厚み)を極端に薄くできる。よって、制限された箇所に所定の加熱機能を果たす加熱部を適切に設けることができる。
さらに、一方の外周壁加熱部において、ヒータ線を放熱面部位に近接位置させ、張り出し部を放熱面部位から離間させる形態で、外周壁部位と蒸気通路用貫通孔との間に、単一のヒータ線が張り出し部を介して放熱板の前記外周壁部位に取付けられる構造とすることで、蒸気通路用貫通孔と外周壁部位との間の狭い空間を利用して取付けられる。
【0013】
また、この一方の前記外周壁加熱部と、当該蒸気通路用貫通孔を挟んで対向する側に対向側加熱部を備え、
この対向側加熱部に設けられる他方の外周壁加熱部の内周側に、内周側加熱部を備えるとともに温度センサ及び温度ヒューズを備えている。
【0014】
結果、対向側加熱部に他方の外周壁加熱部に加えて内周側加熱部を設けることで、所定の周回部位(対向側加熱部)に二重巻構造の加熱部を構成でき、線長を長くするという加熱量の増大に対応できる。
また、対向側加熱部は、前記蒸気通路用貫通孔を挟んで、前記一方の外周壁加熱部とは反対側に設けるため、内側加熱部を設け、さらには温度センサ及び温度ヒューズを配することができる。
【0015】
本発明に係る加熱料理器の放熱板加熱構造の特徴構成は、
前記内周側加熱部が、通電状態で発熱するヒータ線と、前記ヒータ線を覆う伝熱材料部とを有して構成される点にある。
【0016】
本構成によれば、内周側加熱部においても伝熱材料部を介して放熱面部位の加熱を良好に行える。
【0018】
本構成によれば、対向側加熱部に、蓋体側加熱手段で必要となる機能部位を配置することが可能となるとともに、この部位での加熱の均等化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
蓋体側加熱手段に求められる高加熱化に対応できるとともに、蒸気通路を複雑化するためにその占有容積が増加しても、必要な加熱量を確保できる加熱調理器の放熱板加熱構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る加熱調理器の放熱板加熱構造の実施形態であって、一部を切欠いて示す炊飯器全体の側面図、
図2】炊飯器の放熱板を調理鍋側から見た図(内蓋、内蓋カバーを取外し、蒸気通路の構成を調圧弁の配置とともに示す図)
図3】(a)放熱板における蓋ヒータの配置・貼着構成を示す図、(b)図3(a)のIIIb−IIIb断面を示す図
図4図3(a)のIV領域の詳細を示す断面図(部分拡大図を含む)
図5】二重巻き構造の蓋ヒータの別実施形態を示す断面図(部分拡大図を含む)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る実施形態の加熱調理器である圧力式の炊飯器100を示す。
この炊飯器100は、上端開口の有底筒状をなす内鍋(調理鍋)10を着脱可能に収容する炊飯器本体(調理器本体)11と、炊飯器本体11に開閉可能に取り付けられた蓋体19とを備えている。
【0023】
炊飯器本体11は、上下端を開口した筒状をなす胴体12と、胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付けた肩体14とからなる外装体を備えている。肩体14の略中央には開口部が設けられ、この開口部の下側が、内鍋10の収容部とされている。内鍋10の下には、内鍋10の底を誘導加熱する本体側加熱手段である誘導加熱コイル15が配置されている。
【0024】
蓋体19は、上板20と下板21とを有する外装体を備え、炊飯器本体11の上部を覆うものである。上板20の正面側には、蓋体19を開放するための開放操作部材22が配設され、その内部に炊飯器本体11への閉塞状態を維持するためのロック機構(図示省略)が設けられている。下板21は、炊飯器本体11の背部に形成されたヒンジ接続部23に回転可能に装着されている。
【0025】
図1に示す閉状態で内鍋10の側に位置する下板21の下(内)側面には放熱板24が配設されている。そして、放熱板24の上側面には、内鍋10内を加熱する蓋体側加熱手段である蓋ヒータ25が配設されている。後述するように、この蓋ヒータ25は、各構成部品を配設するための蒸気通路用貫通孔24aを避けて迂回するように配設されている。
【0026】
内鍋10を臨む放熱板24の内面側には、内鍋10の上端開口を閉塞する内蓋27が着脱可能に配設されている。この内蓋27は放熱板24より大きい金属板からなり、外周部に内鍋10の上端開口の内周部を密閉するシール部材28が枠部材29を介して固定されている。枠部材29には、下板21に形成した被係合部(図示省略)に係合される係合部(図示省略)が設けられている。本実施形態では、この内蓋27の内鍋10側(下側)に内蓋カバー66を設けているが、内蓋カバー66に関しては後述する。
【0027】
蓋体19の下部、内蓋27の上には、内鍋10の内部で発生した蒸気sを外部に排気するための蒸気通路32が形成されている。通常状態においては、この蒸気通路32の入口は、内蓋27に配設した低圧側の調圧弁43の連通孔46となる。
【0028】
さて、図1は、炊飯器100において低圧側の調圧弁43が配置された幅方向の断面を示している。一方、図2は、内蓋27、内蓋カバー66を取外した状態における放熱板24を内鍋10側から見た図である。これら図1図2に、内鍋10で発生する蒸気sの流れを示した。
【0029】
本実施形態の炊飯器100には、内蓋27に、図1に断面で示す低圧側の調圧弁43が装着される他、高圧側の調圧弁43hが、低圧側の調圧弁43の同図裏側に備えられる。図2において、蒸気sの流れ方向である蒸気通路32に関して、各調圧弁43、43hを仮想線(二点鎖線)で示した。
【0030】
内蓋27の上に形成される蒸気通路32は、各調圧弁43、43hに対する弁収容室としての第1室32aと、この第1室32aに下流側でつながる第2室32bとを、炊飯器100の前後方向(図1の左右方向)に備えて構成されている。そして、この第2室32bの蒸気通路32の下手側に蓋体19を貫通して排気路35を設け、その外部端である排気口36から蒸気sを排気するように構成されている。
【0031】
また、図2からも判明するように、第1室32aは、図1に示す調圧弁43(低圧側の調圧弁)を収容する低圧側第1室32a1と高圧側の調圧弁43hを収容する高圧側第1室32a2を備えて構成されている。
各室間に渡る蒸気sの経路は、通常状態では、概略、低圧側の調圧弁43、低圧側第1室32a1、高圧側第1室32a2、第2室32bとなる。
【0032】
内鍋10内の圧力が過度に上昇した場合は、上記の経路を経る流れとともに、直接高圧側の調圧弁43hから高圧側第1室32a2に蒸気sが流入し、第2室32bに流入する。
【0033】
本実施形態の炊飯器100に関して、通常状態における蒸気sの流れを説明すると、内鍋10内の蒸気sは、内蓋カバー66を介して内蓋カバー66と内蓋27との間に流入し、この内蓋27に備えられた調圧弁43内を通って、第1室32a内に流入する。具体的には、低圧側の調圧弁43から低圧側第1室32a1に流入し、図1の紙面裏方向である炊飯器幅方向に流れ、高圧側の調圧弁43hを収容する高圧側第1室32a2に流入する。これら室32a1,32a2間の移流は、内蓋27の上側近傍としている。その後、高圧側第1室32a2内を上昇する蒸気sは、この室32a2の天面に設けられた開口hoから上側に抜けるとともに、炊飯器100の後側に流れ、第2室32bに流入する。そして、この第2室32bを通って上板20に着脱可能に配設した排気路35に流入し、この排気路35内を通って、排気口36から外部へ排出される。
即ち、本実施形態では、蒸気通路32は、内蓋27の上部に第1室(低圧側第1室32a1、高圧側第1室32a2)、第2室32bおよび排気路35を経る経路とされている。ここで、この蒸気通路32は、低圧側第1室32a1,高圧側第1室32a2間の移流は、内蓋27の上側近傍とされ、高圧側第1室32a2、第2室32b間の移流は、高圧側第1室32a2の天面に設けられた開口hoを介するとともに、その開口hoから後方に位置する第2室32bへの流れとなるため、複雑な屈曲経路でできている。
【0034】
蒸気通路32の入口に設ける弁機構に関して低圧側の調圧弁43を例に説明する。
図1に示すように、内蓋27には、その上面側に調圧弁43が配設され、これらによって内鍋10内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能としている。
【0035】
調圧弁43は、内蓋27上に構成される第1室32a(具体的には低圧側第1室32a1)内で内蓋27の上部に配設している。調圧弁43は内蓋27に対して内鍋10の側である下側から配設される弁座45を備え、この弁座45にカバー48を設けている。カバー48には、低圧側第1室32a1に連通する通気孔49が設けられている。
【0036】
さらに、調圧弁43には、カバー48の内部に連通孔46を閉塞するための弁体51と、この弁体51を閉塞位置(下向き)に移動させる作動受部材52と、これらの間に配設したスプリング53とを備えている。
弁体51は、駆動手段であるステッピングモータMの駆動により作動受部材52が下向きに移動されると、スプリング53を介して弁体51で連通孔46を閉塞する。また、作動受部材52の移動量(付勢力)の調節により、1.00〜1.30atmの範囲で、内鍋10内を昇圧可能である。
【0037】
一方、高圧側の調圧弁43hに関しては、その配設位置は先に説明した高圧側第1室32a2とされ、内蓋27の上部に配設される点において同様である。図示省略の弁座、カバー、高圧側第1室32a2に連通する通気孔を備えている点においても変わりはない。ただし、高圧側の調圧弁43hは、内鍋10内の圧力が最高圧に達した場合に弁を開放する機能から、通常状態で弁座に当接して弁を閉状態とするとともに、内鍋10内の圧力が上昇した場合に、その蒸気圧で浮き上がるボール状の錘(図示省略)を備え、この錘が浮き上がった状態で高圧側の調圧弁43hは開状態となる。高圧側の調圧弁43hの調整圧(閉状態から開状態となる場合の圧力)は、低圧側の調圧弁43の最高調整圧、上記の例では、1.30atmとできる。
【0038】
前記内蓋カバー66は、内蓋27における内鍋10内を臨む側に装着され、蒸気通路32の入口である調圧弁43の連通孔46が目詰まりすることを防止するものである。この内蓋カバー66はステンレス製であり、平面視において蓋ヒータ25の下側を覆うように、放熱板24と略同一直径の円板状に形成されている。
【0039】
先にも説明したように、内鍋10を加熱することにより発生した蒸気sは、内蓋カバー66の側部に設けられた通気部71から内蓋カバー66内に流入する。
【0040】
以上が、本発明に係る炊飯器100(加熱調理器の一例)の概要である。
従って、この加熱調理器は以下の構造を備えている。
【0041】
以下、本発明の対象である、蓋ヒータ25の放熱板24への取付け構造である「放熱板加熱構造」に関して説明する。
図3からも判明するように、放熱板24は、内蓋27の上面に沿った放熱面部位24bと、当該放熱面部位24bの外周近傍から蓋体19側に立ち上る外周壁部位24cとを備えている。蒸気通路32が貫通する蒸気通路用貫通孔24aは、放熱面部位24bを貫通して構成されており、その貫通形状は、先に説明した蒸気通路32を成す第1室32a、第2室32bを形成する部材が内径側に位置される形状とされている。
【0042】
図3(b)の右側及び図4に示す、IIIb−IIIb断面図からも判明するように、蒸気通路用貫通孔24aの外周側端部から放熱板24の外周壁部位24cまでの余裕は極めて制限される。
【0043】
本発明に係る蓋ヒータ25は、所要の加熱量を得るためのヒータ長とされており、一対の接続端子25aを介して、温度センサ25bとしてのサーミスタ、温度ヒューズ25cが備えられている。さらにその両端に外部接続端子25dが備えられている。
【0044】
図4にも示すように、蓋ヒータ25は、通電状態で発熱するヒータ線Hwと、少なくともヒータ線Hwを覆うアルミニウム箔である伝熱材料部Haとを有して構成され、この伝熱材料部Haが、ヒータ線Hwを周回する周回部Ha1と当該ヒータ線Hwの一側部に張り出す張り出し部Ha2とを備え、当該張り出し部Ha2を介して放熱板24の外周壁部位24cに取付けられている。当該周回部Ha1は一部が放熱面部位24bに接している。本発明では、この加熱部を「外周壁加熱部Z1」と呼ぶ。この実施形態では、取付けは両面粘着テープTを使用している。
【0045】
一方、図3からも判明するように、外周壁加熱部Z1を外れた周壁近傍に、前記外周壁加熱部Z1との別の対向側加熱部Z2が備えられ、先に説明した接続端子25aを介して、温度センサ25bとしてのサーミスタ、温度ヒューズ25c等を配設している。
【0046】
炊飯が終了した後の保温時には、蓋ヒータ25の下側を覆うように内蓋カバー66を設けているため、蓋ヒータ25の熱が米飯に直接加わることはない。そのため、米飯からの過剰な水分の放出を抑制できる。しかも、内蓋カバー66の上面(内蓋27との間)には、むらし工程での蒸気や保温中の蒸気による結露水が付着する場合があるが、蓋ヒータ25の加熱量を適切に調整することで、過度に結露水が発生することを防止できる。炊飯過程において、適度の水分量を調整して、米飯の潤いも確保できる。
【0047】
〔別実施形態〕
なお、本発明の加熱調理器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0048】
(1) 先にも示したように、本発明の一の課題は、ヒータ長の確保にあるため、外周壁加熱部Z1の内周側に、通電状態で発熱するヒータ線Hwと、少なくともヒータ線Hwを覆う伝熱材料部Haとを有して構成し、別の内周側加熱部Z3を備えてもよい。この別実施形態を図5に示した。
【0049】
(2) 前記実施形態では、調圧弁43,43hを搭載したが、一方の調圧弁だけを設けた構成としてもよい。勿論、調圧弁43,43hを搭載しない非圧力式の炊飯器としても、本発明の構成は有効である。ただし、本発明においては、蓋体19の下、内蓋27の上に設ける蒸気通路32が複雑化され、蒸気sとともに、蒸気通路32に流入してくるおねば等の液状有用物質を分離可能な構造を採用するものとする。
【0050】
(3) 前記実施形態では、内蓋カバー66を搭載したが、内蓋カバーを搭載することのない構成であってもよい。
【0051】
(4) 前記実施形態では、伝熱材料部Haの外周壁部位24cへの取り付けに両面粘着テープTを使用する例を示したが、この取り付けに使用する手段は、如何なる手段であってもよい。
【0052】
(5) さらに、前記実施形態では、炊飯器を例に挙げて説明したが、所定の調理物を加熱して調理する加熱調理器であれば同様に適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 内鍋(調理鍋)
11 炊飯器本体(調理器本体)
15 誘導加熱コイル(本体側加熱手段)
19 蓋体
24 放熱板
24a 蒸気通路用貫通孔
24b 放熱面部位
24c 外周壁部位
25 蓋ヒータ(蓋体側加熱手段)
27 内蓋
32 蒸気通路
32a 第1室
32a1 低圧側第1室(第1室)
32a2 高圧側第1室(第1室)
32b 第2室
43 低圧側の調圧弁(調圧弁)
43h 高圧側の調圧弁(調圧弁)
46 連通孔
Hw ヒータ線
Ha アルミニウム箔(伝熱材料部)
Ha1 周回部
Ha2 張り出し部
Z1 外周壁加熱部
Z2 対向側加熱部
Z3 内周側加熱部
s 蒸気

図1
図2
図3
図4
図5