特許第6749877号(P6749877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749877
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】冷却ファン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/04 20060101AFI20200824BHJP
   F01P 7/04 20060101ALI20200824BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20200824BHJP
   F01P 11/14 20060101ALI20200824BHJP
   F01P 11/16 20060101ALI20200824BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20200824BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   F01P5/04 C
   F01P7/04 B
   F01P5/06 510A
   F01P11/14 B
   F01P11/16 B
   E02F9/00 M
   B60K11/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-185409(P2017-185409)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60282(P2019-60282A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 幸次
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲二
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 浩司
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−068142(JP,A)
【文献】 特開平11−193719(JP,A)
【文献】 特開2009−024592(JP,A)
【文献】 特開平11−241615(JP,A)
【文献】 米国特許第09026255(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/04
B60K 11/04
E02F 9/00
F01P 5/06
F01P 7/04
F01P 11/14
F01P 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの冷媒を冷却するラジエータと、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、外気の温度を検出する外気温度センサと、前記冷媒を前記ラジエータに供給する経路上で、前記冷媒の温度に応じて前記経路を全閉から全開の間で開閉するサーモスタットと、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動され、前記ラジエータに冷却風を送風するための冷却ファンを回転させる油圧モータと、前記油圧ポンプからの吐出油の流れ方向を切り換えて前記油圧モータを正逆転させる方向切換弁と、前記冷却ファンの正・逆回転の繰り返し動作が所定の間隔時間毎に行われるように前記方向切換弁を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記外気温度センサから検出される外気温度と前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度との関係が予め規定された所定条件になったときに、前記間隔時間の設定を変更し、
前記所定条件は、前記外気温度センサから検出される外気温度が基準値よりも高い高温条件と基準値よりも低い低温条件とを含んでおり、
前記制御部は、前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度が前記低温条件下で第1設定温度になったとき、または前記高温条件下で前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度が前記第1設定温度よりも高い第2設定温度になったとき、前記間隔時間を初期設定された通常時間よりも短縮することを特徴とする冷却ファン制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の冷却ファン制御装置において、
前記制御部は、前記間隔時間が前記通常時間よりも短縮された後に、前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度が前記低温条件下で前記第1設定温度よりも低い低温側基準値になったとき、または前記高温条件下で前記第2設定温度よりも低い高温側基準値になったときに、前記間隔時間を前記通常時間に戻すことを特徴とする冷却ファン制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の冷却ファン制御装置において、
前記第1設定温度と前記低温側基準値は、前記サーモスタットが全閉から全開する冷媒の温度範囲内に規定されていることを特徴とする冷却ファン制御装置。
【請求項4】
請求項またはに記載の冷却ファン制御装置において、
前記第2設定温度は、前記サーモスタットが全開する冷媒の温度以上に規定されていることを特徴とする冷却ファン制御装置。
【請求項5】
請求項に記載の冷却ファン制御装置において、
前記制御部は、前記間隔時間が前記通常時間よりも短縮された後に前記エンジンを停止したときに、前記間隔時間を前記通常時間に戻すことを特徴とする冷却ファン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の作業機械に搭載されるラジエータを冷却するための冷却ファン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダ等の作業機械のエンジンの冷却水(冷媒)を冷却するために、作業機械にはラジエータと、ラジエータに冷却風(外気)を送風する冷却ファンが搭載されている。冷却ファンはエンジンから独立して駆動される油圧モータによって駆動され、冷却ファンを回転させることでラジエータに対して冷却風を送り込むことができる。このような冷却ファンは、送風方向が一方向であると、塵埃が冷却風とともにラジエータに送り込まれて目詰まりの原因となる。そこで、冷却ファンの駆動を正逆回転制御することで、正回転中にラジエータに詰まった塵埃を、逆回転によって生じる冷却風の逆流によって除去するようにした冷却ファン制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷却ファン制御装置は、所定時間経過毎に自動的に冷却ファンの回転方向を切り換える自動モードと、オペレータの任意のタイミングによって冷却ファンの回転方向を切り換える手動モードとを有し、オペレータが手動で冷却ファンを正逆回転制御している場合に限ってエンジンの回転数に上限値を設定することにより、油圧回路を構成する油圧モータやバルブ等に大きな負荷がかからないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4825006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却ファン制御装置では、自動モード設定時に、冷却ファンの回転方向が所定時間経過毎に自動的に切り換えられるため、冷却ファンの正回転中にラジエータに詰まった塵埃を逆回転によって除去することができる。しかしながら、冷却ファンの正逆回転の切り換え動作が一定の時間経過毎(例えば30分毎)に繰り返し行われるため、冷却ファンが逆回転される前にラジエータが目詰まりしてしまうことがあり、その場合、十分な冷却能力を発揮できなくなってエンジンのオーバーヒート等の不具合が発生する虞がある。
【0006】
なお、冷却ファンの正逆回転を行う間隔時間を予め短く設定(例えば15分毎)しておけば、ラジエータが目詰まりする前に冷却風の逆流によって塵埃を除去しやすくなるが、冷却ファンを正逆回転する反転動作時は油圧回路内の圧力が急上昇し、油圧回路を構成する油圧モータやバルブ等に過度な負荷がかかるため、稼働時間内での冷却ファンの正逆回転を行う回数が増えてしまうと、油圧モータやバルブ等の部品寿命が短くなってしまうという別の問題が発生する。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、ラジエータの目詰まりを適切に除去することができると共に、油圧回路を構成する油圧ポンプ等の耐久性を向上させることが可能な冷却ファン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の冷却ファン制御装置は、エンジンと、前記エンジンの冷媒を冷却するラジエータと、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、外気の温度を検出する外気温度センサと、前記冷媒を前記ラジエータに供給する経路上で、前記冷媒の温度に応じて前記経路を全閉から全開の間で開閉するサーモスタットと、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動され、前記ラジエータに冷却風を送風するための冷却ファンを回転させる油圧モータと、前記油圧ポンプからの吐出油の流れ方向を切り換えて前記油圧モータを正逆転させる方向切換弁と、前記冷却ファンの正・逆回転の繰り返し動作が所定の間隔時間毎に行われるように前記方向切換弁を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記外気温度センサから検出される外気温度と前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度との関係が予め規定された所定条件になったときに、前記間隔時間の設定を変更し、前記所定条件は、前記外気温度センサから検出される外気温度が基準値よりも高い高温条件と基準値よりも低い低温条件とを含んでおり、前記制御部は、前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度が前記低温条件下で第1設定温度になったとき、または前記高温条件下で前記冷媒温度センサから検出される冷媒温度が前記第1設定温度よりも高い第2設定温度になったとき、前記間隔時間を初期設定された通常時間よりも短縮することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却ファン制御装置によれば、ラジエータの目詰まりを適切に除去することができると共に、油圧回路を構成する油圧ポンプ等の耐久性を向上させることができる。前述した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の冷却ファン制御装置が適用される作業車両の一例として挙げたホイールローダを示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る冷却ファン制御装置を含む油圧回路の構成図である。
図3】冷却ファンの正逆転動作を行う間隔時間とラジエータの冷却水温度との関係を示すタイミングチャートである。
図4】冷却ファンの正逆転動作を行う間隔時間の設定変更についての処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1図4を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却ファン制御装置が搭載される作業車両の一例であるホイールローダ100の側面図である。図1に示すように、ホイールローダ100は、アーム111、バケット112、タイヤ113等を有する前フレーム110と、運転室121、エンジン室122、タイヤ123等を有する後フレーム120とで構成される。エンジン室122にはエンジン(不図示)が搭載されており、後フレーム120の後方にはカウンタウェイト124が取り付けられている。
【0013】
アーム111はアームシリンダ117の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(クラウドまたはダンプ)する。前フレーム110と後フレーム120とはセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後フレーム120に対し前フレーム110が左右に屈折する。
【0014】
エンジン室122の後方には、ラジエータフレーム135と冷却ファンユニット150とが配設されている。ラジエータフレーム135は後フレーム120に固定されており、このラジエータフレーム135には、後述する図2に示した、エンジン1の冷却水(冷媒)を冷却するラジエータ8や、作動油を冷却するオイルクーラ9が取り付けられている。冷却ファンユニット150はラジエータフレーム135の後方に配設されており、この冷却ファンユニット150は、後述する図2に示した、油圧モータ3で駆動される冷却ファン4を備えている。
【0015】
後フレーム120には、図2に示すように、エンジン1や冷却ファン制御装置を含む油圧回路が搭載されている。この油圧回路は、エンジン1と、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2から吐出される圧油によって駆動される油圧モータ3と、油圧モータ3によって回転される冷却ファン4と、油圧ポンプ2からの吐出油の流れ方向を切り換えて冷却ファン4を正逆回転させる方向切換弁5と、油圧モータ3の回転速度を調節するための可変リリーフ弁6と、方向切換弁5や可変リリーフ弁6を制御するコントローラ7等を含むように構成されている。油圧モータ3は、ラジエータ8とオイルクーラ9に冷却風(外気)を送風する冷却ファン4を回転させる。
【0016】
エンジン1の回転数は運転室121に配設されたアクセルペダル10の操作量(踏み込み量)の増加に伴い上昇し、エンジン回転数が上昇すると、油圧ポンプ2の回転数が上昇してポンプ吐出量が増大する。
【0017】
エンジン1とラジエータ8との間を連結する管路L5にサーモスタット11が設けられており、エンジン1の熱によって上昇した冷却水は、サーモスタット11が介設された管路L5を経由してラジエータ8に流れ込み、ラジエータ8で冷却された後、管路L6を介して再びエンジン1に戻る。サーモスタット11は、冷却水をエンジン1からラジエータ8に供給する管路L5上で、冷却水の温度に応じて経路を全閉から全開の間で開閉する。
【0018】
本実施形態で用いられているサーモスタット11は、開度0%となる全閉温度が85℃であり、開度100%となる全開温度が95℃である。すなわち、サーモスタット11に触れている冷却水温度が85℃まではサーモスタット11が全閉しており、冷却水温度が85℃を超えるとサーモスタット11が徐々に開き始めて開口面積が増加し、冷却水温度が95℃に達するとサーモスタット11が全開する。
【0019】
図示省略されているが、ファン回転用の油圧ポンプ2とは別にエンジン1により駆動される作業用の油圧ポンプを備えており、作動油は、タンク12から当該油圧ポンプで吸い上げられて吐出され、コントロールバルブを経由してオイルクーラ9へ流れ込み、オイルクーラ9で冷却された後、再びタンク12に戻る。
【0020】
エンジン1と油圧ポンプ2とはエンジン1の出力軸1aを介して互いに接続されており、油圧ポンプ2はエンジン1により駆動される。油圧ポンプ2と油圧モータ3との間には方向切換弁5が設けられており、油圧ポンプ2と方向切換弁5とは管路L1により接続されている。方向切換弁5と油圧モータ3とは管路L2,L3により接続されており、方向切換弁5とタンク12との間には管路L4が設けられている。油圧モータ3と冷却ファン4とは油圧モータ3の出力軸3aを介して互いに接続されており、冷却ファン4は油圧モータ3によって回転される。
【0021】
油圧ポンプ2から吐出される圧油が油圧モータ3に供給されると、油圧モータ3と冷却ファン4が回転し、油圧モータ3に供給された油はタンク12に戻る。冷却ファン4が回転すると、冷却ファン4からラジエータ8とオイルクーラ9に向けて冷却風が送風され、冷却風との熱交換によりエンジン冷却水および作動油が冷却される。なお、ラジエータ8における冷却ファン4に対向する面には、図示せぬ防塵フィルタが設けられている。
【0022】
方向切換弁5は電磁式切換弁であり、コントローラ7からの制御信号に応じて、L位置(正転側)またはM位置(逆転側)に切り換わる。方向切換弁5がL位置(正転側)にあると、油圧ポンプ2からの圧油が管路L1,L2を介して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3と冷却ファン4が正方向に回転する。油圧モータ3に供給された油は管路L3,L4を介してタンク12に戻る。方向切換弁5がM位置(逆転側)に切り換わると、油圧ポンプ2からの圧油が管路L1,L3を介して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3と冷却ファン4が逆方向に回転する。油圧モータ3に供給された油は管路L2,L4を介してタンク12に戻る。
【0023】
可変リリーフ弁6は電磁式の可変リリーフ弁であり、管路L1と管路L4との間に介設されている。油圧ポンプ2の吐出側の管路L1には吐出側圧力を検出する圧力センサ13が設けられており、この圧力センサ13で検出された吐出側圧力の情報はコントローラ7に入力される。
【0024】
コントローラ7は、CPU、ROM、RAMなどの記憶装置、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ7は制御ライン14で可変リリーフ弁6と接続されており、可変リリーフ弁6は、コントローラ7からの出力電流値(指示値)に応じて、油圧ポンプ2から油圧モータ3へ供給される圧油の最高圧を規定し、油圧ポンプ2の吐出側圧力を制御する。コントローラ7は可変リリーフ弁6の設定リリーフ圧を制御すること、すなわち、油圧モータ3の入口側圧力である油圧ポンプ2の吐出側圧力を制御することにより、冷却ファン4の回転速度を制御できる。また、可変リリーフ弁6は制御ライン15でコントローラ7と接続されており、コントローラ7では、可変リリーフ弁6からのフィードバック電流値が検出される。
【0025】
コントローラ7には、冷却水温度センサ16からの冷却水温度の情報と、外気温度センサ17からの外気温度の情報がそれぞれ入力されている。冷却水温度センサ16は冷却水の温度を検出するセンサであり、ラジエータ8の上流側の管路等に設けられている。外気温度センサ17は外気の温度を検出するセンサであり、外気が触れる車体の外表面の所定位置に設けられている。
【0026】
コントローラ7は、ラジエータ8の防塵フィルタに詰まった塵埃を除去するために、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返し動作が所定の間隔時間毎に行われるように方向切換弁5を制御する。
【0027】
図3は、冷却ファン4の回転方向を正逆転に切り換える間隔時間と冷却水温度センサ16から検出される冷却水温度との関係を示すタイミングチャートである。コントローラ7の記憶装置には、外気温度センサ17から検出される外気温度TAと、冷却水温度センサ16から検出される冷却水温度TWと、冷却ファン4の正逆転動作を行う間隔時間TSとの関係を対応付けたテーブルが記憶されている。詳細については後述するが、このテーブルに基づいて、コントローラ7は、外気温度TAと冷却水温度TWの予め設定された所定条件になったときに、間隔時間TSを通常時間TS1と短縮時間TS2のいずれか一方に変更する。
【0028】
コントローラ7は、外気温度センサ17で検出された外気温度TAに応じて、図3(a)に示すテーブルと図3(b)に示すテーブルのいずれか一方を選択し、選択したテーブルを参照して、冷却水温度センサ16で検出された冷却水温度TWに応じて、間隔時間TSを通常時間TS1と短縮時間TS2のいずれか一方に設定する。
【0029】
図3(a)に示すテーブルは、外気温度TAが基準値(例えば30℃)よりも低いとき(外気温度TA<30℃)に選択される。この低温条件下において、コントローラ7は、冷却水温度TWが第1設定温度TW1(例えば91℃)になったときに、間隔時間TSを初期設定された通常時間TS1(例えば30分)から短縮して短縮時間TS2(例えば20分)に設定変更し、その後に冷却水温度TWが第1設定温度TW1よりも低い低温側基準値TW3(例えば88℃)になったときに、間隔時間TSの設定変更を解除して短縮時間TS2から通常時間TS1に戻す。
【0030】
図3(b)に示すテーブルは、外気温度TAが基準値(30℃)を超えたとき(外気温度TA≧30℃)に選択される。この高温条件下において、コントローラ7は、冷却水温度TWが第1設定温度TW1よりも高い第2設定温度TW2(例えば95℃)になったときに、間隔時間TSを初期設定された通常時間TS1(30分)から短縮して短縮時間TS2(20分)に設定変更し、その後に冷却水温度TWが第2設定温度TW2よりも低い高温側基準値TW4(例えば90℃)になったときに、間隔時間TSの設定変更を解除して短縮時間TS2から通常時間TS1に戻す。
【0031】
ここで、外気温度TAが基準値よりも低い低温条件下において、第1設定温度TW1はサーモスタット11が全開状態となる冷却水温度(95℃)以下に規定されており、第1設定温度TW1と低温側基準値TW3は、サーモスタット11が全閉から全開する冷却水の温度範囲内に規定されている。また、外気温度TAが基準値よりも高い高温温条件下において、第2設定温度TW2はサーモスタット11が全開状態となる冷却水温度(95℃)以上に規定されており、高温側基準値TW4は、低温側基準値TW3よりも高温でサーモスタット11が全閉から全開する冷却水の温度範囲内に規定されている。
【0032】
なお、間隔時間TSが通常時間TS1に設定されている場合、コントローラ7は、方向切換弁5のL位置で冷却ファン4を30分間正回転させた後に、方向切換弁5をM位置に切り換えて冷却ファン4を1分間だけ逆回転させ、その後に方向切換弁5をL位置に切り換えて冷却ファン4を再び30分間正回転させるという動作を繰り返す。一方、間隔時間TSが短縮時間TS2に設定された場合、コントローラ7は、方向切換弁5のL位置で冷却ファン4を20分間正回転させた後に、方向切換弁5をM位置に切り換えて冷却ファン4を1分間だけ逆回転させ、その後に方向切換弁5をL位置に切り換えて冷却ファン4を再び20分間正回転させるという動作を繰り返す。
【0033】
コントローラ7は、次のように各部を制御することで、外気温度TAと冷却水温度TWに基づいて、冷却ファン4を正逆回転させる方向切換弁5を制御する。図4は、冷却ファン4の正逆転動作を行う間隔時間TSの設定変更についての処理内容を示すフローチャートである。ホイールローダ100の不図示のイグニッションスイッチがオン操作されると、図4に示す処理を行うプログラムが起動されて、コントローラ7で繰り返し実行される。
【0034】
ステップS1において、コントローラ7は、外気温度センサ17から検出される外気温度TAの情報、および、冷却水温度センサ16から検出される冷却水温度TWの情報を取得して、ステップS2へ進む。
【0035】
ステップS2において、コントローラ7は、外気温度センサ17で検出した外気温度TAが基準値(30℃)以上であるか否かを判定する。ステップS2で否定判定(No)されると、すなわち、外気温度TAが30℃よりも低い低温条件下ではステップS3へ進み、コントローラ7は、図3(a)に示すテーブルを参照して、以下に説明するような冷却ファン制御を実行する。
【0036】
まず、ステップS3において、コントローラ7は、冷却水温度センサ16で検出した冷却水温度TWが第1設定温度TW1(91℃)以上であるか否かを判定する。ステップS3で否定判定(No)されるとステップS8へ進み、コントローラ7は、ステップS8において、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを初期設定された通常時間TS1(30分)毎に繰り返す。すなわち、ラジエータ8を流れる冷媒の冷却水温度TWが91℃まで上昇していない場合、コントローラ7は、方向切換弁5のL位置で冷却ファン4を30分間正回転させた後に、方向切換弁5をM位置に切り換えて冷却ファン4を1分間だけ逆回転させ、その後に方向切換弁5をL位置に切り換えて冷却ファン4を再び30分間正回転させるという冷却ファン制御を繰り返し実行する。
【0037】
また、ステップS3で肯定判定(Yes)されると、すなわち、ラジエータ8を流れる冷媒の冷却水温度TWが91℃以上になると、ステップS4へ進んで間隔時間TSの時間短縮を作動させてステップS5へと進む。
【0038】
コントローラ7は、ステップS5において、初期設定された通常時間TS1(30分)を短縮時間TS2(20分)に設定変更し、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを短縮時間TS2毎に行うファン制御を実行する。すなわち、コントローラ7は、方向切換弁5のL位置で冷却ファン4を20分間正回転させた後に、方向切換弁5をM位置に切り換えて冷却ファン4を1分間だけ逆回転させ、その後に方向切換弁5をL位置に切り換えて冷却ファン4を再び20分間正回転させるという動作を繰り返す。これにより、冷却ファン4の正回転中にラジエータ8の防塵フィルタに付着した塵埃が目詰まりする前に、冷却ファン4の逆回転によって塵埃が速やかに除去されるため、ラジエータ8の目詰まりに起因するエンジン1のオーバーヒート等を確実に防止することができる。
【0039】
ステップS5で短縮時間TS2のファン制御が実行されると、コントローラ7は、ステップS6において、冷却水温度センサ16で検出した冷却水温度TWが低温側基準値TW3(88℃)以下になったか否かを判定する。ステップS6で否定判定(No)されるとステップS5に戻り、ステップS6で肯定判定(Yes)されるとステップS7へ進む。
【0040】
コントローラ7は、ステップS7で間隔時間TSの設定変更を解除してステップS8へ進み、ステップS8で間隔時間TSを短縮時間TS2から通常時間TS1(30分)に戻す。すなわち、間隔時間TSが短縮時間TS2に設定変更された後に、ラジエータ8を流れる冷媒の冷却水温度TWが低温側基準値TW3(88℃)まで下がると、コントローラ7は、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを通常時間TS1毎に行う冷却ファン制御を実行する。
【0041】
ステップS8において、コントローラ7は、前述したように、方向切換弁5のL位置で冷却ファン4を30分間正回転させた後に、方向切換弁5をM位置に切り換えて冷却ファン4を1分間だけ逆回転させ、その後に方向切換弁5をL位置に切り換えて冷却ファン4を再び30分間正回転させるという冷却ファン制御を実行する。これにより、短縮時間TS2の設定時に増えてしまった稼働時間内での冷却ファン4の正逆回転を行う回数が減じられるため、冷却ファン4の正逆回転に伴う回路構成部品(油圧モータ3や方向切換弁5等)への過度な負荷が軽減され、回路構成部品の耐久性を向上させることができて燃費の低減効果にもなる。
【0042】
一方、ステップS2で肯定判定(Yes)されると、すなわち、外気温度TAが30℃以上の高温条件下になるとステップS10へ進み、コントローラ7は、図3(b)に示すテーブルを参照して、以下に説明するような冷却ファン制御を実行する。
【0043】
まず、ステップS10において、コントローラ7は、冷却水温度センサ16で検出した冷却水温度TWが第2設定温度TW2(95℃)以上であるか否かを判定する。ステップS10で否定判定(No)されるとステップS15へ進み、コントローラ7は、ステップS15において、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを初期設定された通常時間TS1(30分)毎に繰り返す。
【0044】
また、ステップS10で肯定判定(Yes)されると、すなわち、ラジエータ8を流れる冷媒の冷却水温度TWが95℃以上になると、ステップS11へ進んで間隔時間TSの時間短縮を作動させてステップS12へと進む。
【0045】
コントローラ7は、ステップS12において、初期設定された通常時間TS1(30分)を短縮時間TS2(20分)に設定変更し、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを短縮時間TS2毎に行う冷却ファン制御を実行する。
【0046】
ステップS12で短縮時間TS2の冷却ファン制御が実行されると、コントローラ7は、ステップS13において、冷却水温度センサ16で検出した冷却水温度TWが高温側基準値TW4(90℃)以下になったか否かを判定する。ステップS13で否定判定(No)されるとステップS12に戻り、ステップS13で肯定判定(Yes)されるとステップS14へ進む。
【0047】
コントローラ7は、ステップS14で間隔時間TSの設定変更を解除してステップS15へ進み、ステップS15で間隔時間TSを短縮時間TS2から通常時間TS1(30分)に戻す。すなわち、間隔時間TSが短縮時間TS2に設定変更された後に、ラジエータ8を流れる冷媒の冷却水温度TWが高温側基準値TW4(90℃)まで下がると、コントローラ7は、冷却ファン4の正・逆回転の繰り返しを通常時間TS1毎に行う冷却ファン制御を実行する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る冷却ファン制御装置では、ラジエータ8が目詰まりしていない場合の冷却性能に基づいて想定水温(第1設定温度TW1、第2設定温度TW2)を設定しておき、この想定水温よりも実際の冷却水温度TWが高くなったら目詰まり状態と判断して、冷却ファン4の正・逆回転を行う間隔時間TSを初期設定された時間よりも短縮するようにしたので、ラジエータ8が目詰まりする前に適切に除去することができると共に、油圧回路を構成する油圧ポンプ2等の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、外気温度が低い場合と高い場合の複数条件を設定し、外気温度TA<基準温度(30℃)かつ冷却水温度TW≧第1設定温度TW1になった低温条件下で、間隔時間TSを初期設定された通常時間TS1から短縮時間TS2に短縮すると共に、外気温度TA≧基準温度かつ冷却水温度TW≧第2設定温度TW2になった高温条件下で、間隔時間TSを初期設定された通常時間TS1から短縮時間TS2に短縮するようにしたので、ラジエータ8の実際の目詰まり状態に近いタイミングで冷却ファン4を正・逆回転させることができる。
【0050】
また、間隔時間TSが短縮時間TS2に短縮された後に、冷却水温度TWが第1設定温度TW1よりも低い低温側基準値TW3になったとき、あるいは第2設定温度TW2よりも低い高温側基準値TW4になったときに、間隔時間TSが初期設定された通常時間TS1に戻されるため、油圧回路を構成する油圧モータ3や方向切換弁5等に過度な負荷がかかることを防止できる。すなわち、ラジエータ8が目詰まり状態に近くなると間隔時間TSが短縮され、ラジエータ8の目詰まり状態が解除されると間隔時間TSが初期設定に戻るため、短縮時間TS2の設定時に増えてしまった稼働時間内での冷却ファン4の反転動作回数を減らすことができ、回路構成部品の耐久性を向上させることができると共に、燃料の消費量を低減することができる。
【0051】
なお、本実施形態において、低温条件下で用いられる第1設定温度TW1と低温側基準値TW3は、サーモスタット11が全閉から全開する冷却水の温度範囲内(85℃<TW<95℃)に規定されており、高温条件下で用いられる第2設定温度TW2、サーモスタット11が全開する冷却水の温度以上に規定されている。ただし、第1設定温度TW1と第2設定温度TW2の設定温度は必ずしも上記実施形態に限定されず、例えば、第2設定温度TW2をサーモスタット11が全開する冷却水温度(95℃)よりも僅かに低い温度に設定しても良い。
【0052】
また、上記した実施形態において、間隔時間TSが短縮時間TS2に短縮された後、冷却水温度TWが低温側基準値TW3や高温側基準値TW4まで下がる前にエンジンが停止した場合は、間隔時間TSの設定変更を解除し、間隔時間TSを初期状態の通常時間TS1に戻すことが好ましい。
【0053】
また、上記した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
3 油圧モータ
4 冷却ファン
5 方向切換弁
6 可変リリーフ弁
7 コントローラ(制御部)
8 ラジエータ
9 オイルクーラ
10 アクセルペダル
11 サーモスタット
12 タンク
13 圧力センサ
14,15 制御ライン
16 冷却水温度センサ(冷媒温度センサ)
17 外気温度センサ
TA 外気温度
TS 間隔時間
TS1 通常時間
TS2 短縮時間
TW 冷却水温度(冷媒温度)
TW1 第1設定温度
TW2 第2設定温度
TW3 低温側基準値
TW4 高温側基準値
図1
図2
図3
図4