特許第6749880号(P6749880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6749880ピアスエレメントの打ち込み方法、エレメント複合体、および溶接用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6749880
(24)【登録日】2020年8月14日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】ピアスエレメントの打ち込み方法、エレメント複合体、および溶接用部材
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/00 20060101AFI20200824BHJP
   B21D 28/24 20060101ALI20200824BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20200824BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20200824BHJP
   B21D 37/14 20060101ALI20200824BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20200824BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B21D39/00 Z
   B21D28/24 C
   B21D28/34 C
   B21D28/34 D
   B21D39/03 A
   B21D37/14 H
   F16B5/04 C
   F16B4/00 N
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-199758(P2017-199758)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-72731(P2019-72731A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 高行
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0258635(US,A1)
【文献】 特開2014−104502(JP,A)
【文献】 特開2012−121060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0270229(US,A1)
【文献】 米国特許第03443617(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00 − 39/20
B21D 28/00 − 28/36
B21D 37/14
F16B 4/00
F16B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板材と、
上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定され、前記板材の厚み以下の厚みを有するピアスエレメントと、
前記下部よりも平面視において大きな先行パンチと、
前記先行パンチよりも平面視において大きな孔部を有するダイスと
を準備し、
前記板材を前記ダイスの前記孔部の上に配置し、
前記板材上であって前記孔部に対応する位置上に、前記ピアスエレメントと前記先行パンチとを順に上方から下方へ配置し、
前記ピアスエレメントを下方へ押圧することによって前記先行パンチを介して前記板材を打ち抜くとともに、前記ピアスエレメントを前記板材に埋め込むように打ち込み、
前記打ち込みにおける前記板材の塑性変形に起因して前記板材が前記くびれ部に噛み込むことで前記ピアスエレメントを前記板材に固定する
ことを含む、ピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項2】
前記板材を打ち抜く際、前記ピアスエレメントをエレメントホルダによって保持した状態で、前記エレメントホルダを下方へ押圧することによって、前記ピアスエレメントを下方へ押圧する、請求項1に記載のピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項3】
前記板材の打ち抜き前、前記先行パンチは、前記ピアスエレメントの直下において前記ピアスエレメントと、前記ピアスエレメントを前記板材に打ち込んだ際に破壊される強度の橋渡部を介して接続されており、
前記板材の打ち抜き時の負荷によって前記橋渡部を破壊し、前記先行パンチを前記ピアスエレメントから分離する、請求項1または請求項2に記載のピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項4】
前記板材の打ち抜き前、前記先行パンチは前記ピアスエレメントに電磁力で吸着されており、
前記板材の打ち抜き後、前記電磁力を解除することによって前記先行パンチを前記ピアスエレメントから分離する、請求項1または請求項2に記載のピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項5】
前記板材の打ち抜き後、押し具によって前記先行パンチを前記孔部から下方へ押し出して落下させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項6】
前記下部は、前記上部よりも平面視において小さい、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のピアスエレメントの打ち込み方法。
【請求項7】
上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定され、打ち込まれて固定される板材の厚み以下の厚みを有する本体と、
前記本体の直下に配置され、前記下部よりも平面視において大きな先行パンチと、
前記下部と前記先行パンチとを、前記板材に打ち込んだ際に破壊される強度で接続する橋渡部と
を備える、エレメント複合体。
【請求項8】
板材と、
上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定され、前記板材の厚み以下の厚みを有するピアスエレメントと
を備え、
前記ピアスエレメントは、請求項7のエレメント複合体を用いて前記板材に埋め込まれ、前記くびれ部において前記板材を噛み込むことで前記板材に固定されている、溶接用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアスエレメントの打ち込み方法、エレメント複合体、および溶接用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの金属部材を接合する方法の一つとして、エレメントアークスポット溶接と称する方法が知られている。エレメントアークスポット溶接では、一方の金属部材に設けた孔部に他方の金属部材と同種の金属製の介在部品を装着し、この介在部品と他方の金属部材とをアークスポット溶接する。即ち、エレメントアークスポット溶接は、介在部品を介して間接的に2つの金属部材を一体化する技術である。有利なことに、エレメントアークスポット溶接は、2つの金属部材を直接溶接せず介在部品を介して溶接するため、一般に接合困難とされる異種金属の接合が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、エレメントアークスポット溶接法の一例として、鋼製ピアスメタル(介在部品)を用いたスポット溶接によって、鋼製部材とアルミニウム合金部材とを接合する方法が開示されている。この方法では、まず、アルミニウム合金部材を溶接に適した態様に加工する。具体的には、アルミニウム合金部材に孔部を形成し、鋼製ピアスメタルをこの孔部に装着することで、アルミニウム合金部材を溶接用部材に加工する。次に、溶接用部材の鋼製ピアスメタルと鋼製部材とをスポット溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−22622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているエレメントアークスポット溶接には、上記の溶接用部材を形成する際に3つの課題がある。第1に、アルミニウム合金部材の孔部に鋼製ピアスメタルを取り付けた状態で溶接前に運搬すると、鋼製ピアスメタルは固定されていないためアルミニウム合金部材から脱落するおそれがある。第2に、アルミニウム合金部材に孔部を予め設ける必要があるため、通常の溶接に比べて工数が増加する。第3に、鋼製ピアスメタルがアルミニウム合金部材に完全に埋め込まれていないため、アルミニウム合金部材の表面に鋼製ピアスメタルが突出しており、部分的に厚みが増加しているため、溶接用部材としての汎用性を欠く。
【0006】
本発明は、介在部品(ピアスエレメント)が板材から脱落し難く、製造工数の増加を抑制し、厚みが均一な溶接用部材を製造するピアスエレメントの打ち込み方法を提供することを課題とする。また、この方法に適したエレメント複合体を提供することを課題とする。また、ピアスエレメントが脱落し難く、製造工数の増加を抑制し、厚みが均一な溶接用部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、金属製の板材と、上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定され、前記板材の厚み以下の厚みを有するピアスエレメントと、前記下部よりも平面視において大きな先行パンチと、前記先行パンチよりも平面視において大きな孔部を有するダイスとを準備し、前記板材を前記ダイスの前記孔部の上に配置し、前記板材上であって前記孔部に対応する位置上に、前記ピアスエレメントと前記先行パンチとを順に上方から下方へ配置し、前記ピアスエレメントを下方へ押圧することによって前記先行パンチを介して前記板材を打ち抜くとともに、前記ピアスエレメントを前記板材に埋め込むように打ち込み、前記打ち込みにおける前記板材の塑性変形に起因して前記板材が前記くびれ部に噛み込むことで前記ピアスエレメントを前記板材に固定することを含む、ピアスエレメントの打ち込み方法を提供する。
【0008】
この構成によれば、上記3つの課題を克服してピアスエレメントを板材に打ち込むことができる。具体的には、第1に、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際、板材がこのくびれ部内に塑性流動し、ピアスエレメントが板材を噛み込むため、ピアスエレメントを板材に固定できる。従って、ピアスエレメントが板材から脱落することを防止できる。第2に、板材を打ち抜く工程と、板材にピアスエレメントを打ち込む工程とを同時に行うことができるため、ピアスエレメントを装着するための孔部を板材に予め設ける必要がない。このとき、打ち抜いた板材の打抜片は、ダイスの孔部を通じて下方へ落下する。従って、製造工数の増加を抑制できる。第3に、ピアスエレメントの厚みが板材の厚み以下であり、板材にピアスエレメントを埋め込むように打ち込むため、板材の表面にピアスエレメントが突出せず、厚みを均一にして、ピアスエレメントが打ち込まれた板材(溶接用部材)を形成できる。ここで、平面視とは、板材の主面に垂直な方向から見ることをいう。このとき、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ後、先行パンチは、ダイスの孔部を通じて下方へ落下する。
【0009】
前記板材を打ち抜く際、前記ピアスエレメントをエレメントホルダによって保持した状態で、前記エレメントホルダを下方へ押圧することによって、前記ピアスエレメントを下方へ押圧してもよい。
【0010】
この構成によれば、エレメントホルダによってピアスエレメントを保持できるため、板材にピアスエレメントを安定して打ち込むことができる。
【0011】
前記板材の打ち抜き前、前記先行パンチは、前記ピアスエレメントの直下において前記ピアスエレメントと、前記ピアスエレメントを前記板材に打ち込んだ際に破壊される強度の橋渡部を介して接続されており、前記板材の打ち抜き時の負荷によって前記橋渡部を破壊し、前記先行パンチを前記ピアスエレメントから分離してもよい。
【0012】
この構成によれば、橋渡部によってピアスエレメントと先行パンチとを一体化できるため、ピアスエレメントと先行パンチとを打ち込み位置に配置することが容易となり、即ち位置決めが容易となる。また、ピアスエレメントを打ち込むまでピアスエレメントの直下に先行パンチを配置できる。仮に、先行パンチをピアスエレメントの直下に配置することなくピアスエレメントを板材に打ち込むと、バリが発生するおそれがある。これに対し、ピアスエレメントの直下に先行パンチを配置すると、先行パンチが先に板材を打ち抜き、板材に孔部を形成した状態でピアスエレメントを挿入できるため、上記バリの発生を抑制できる。このとき、通常の穿孔加工と同様に、先行パンチが板材を打ち抜く際にバリを発生させることは考えられるが、ダイスの孔部と先行パンチとの間のクリアランスをバリが発生し難い数値にすることでバリの発生を抑制できる。これにより、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際、ピアスエレメントと先行パンチとの間の接続が解かれ、ピアスエレメントと先行パンチとを分離できる。
【0013】
前記板材の打ち抜き前、前記先行パンチは前記ピアスエレメントに電磁力で吸着されており、前記板材の打ち抜き後、前記電磁力を解除することによって前記先行パンチを前記ピアスエレメントから分離してもよい。
【0014】
この構成によれば、ピアスエレメントを打ち込むまで先行パンチをピアスエレメントに電磁吸着させることができる。従って、前述と同様に、ピアスエレメントの直下に先行パンチを配置できるため、板材を打ち抜く際のバリの発生を抑制できる。特に、電磁力は吸着/分離の切り替えが容易であり、ピアスエレメントの打ち込み後に先行パンチをピアスエレメントから分離することが容易である。
【0015】
前記板材の打ち抜き後、押し具によって前記先行パンチを前記孔部から下方へ押し出して落下させてもよい。
【0016】
この構成によれば、先行パンチをダイスの孔部から落下させることが容易となる。特に、ダイスの孔部の径と、先行パンチの径とが近しい場合、先行パンチが孔部に詰まり、落下しないことも考えられるが、押し具によって先行パンチを下方へ押し出すことができるため、先行パンチを確実に落下させることができる。
【0017】
前記下部は、前記上部よりも平面視において小さくてもよい。
【0018】
この構成によれば、くびれ部への板材の塑性流動を促進でき、ピアスエレメントを板材に強く噛み込ませることができる。詳細には、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際、下部が平面視において比較的小さいため、板材が下部を乗り越えてくびれ部に塑性流動し易い。また、上部が平面視において比較的大きいため、くびれ部に塑性流動した板材が上部を乗り越え難くなっている。そのため、塑性流動した板材がくびれ部に残存し、ピアスエレメントが板材を強く噛み込んだ状態にできる。
【0019】
本発明の第2の態様は、上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定された本体と、前記本体の直下に配置され、前記下部よりも平面視において大きな先行パンチと、前記下部と前記先行パンチとを、板材に打ち込んだ際に破壊される強度で接続する橋渡部とを備える、エレメント複合体を提供する。
【0020】
この構成によれば、エレメント複合体を使用して板材を加工するとき、ピアスエレメントを板材に打ち込むと同時に先行パンチによって板材を打ち抜くことができる。従って、板材の加工工数の増加を抑制できる。また、くびれ部を設けたことによってピアスエレメントを板材に噛み込ませることができるため、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際に脱落し難くできる。また、橋渡部によって本体と先行パンチとを一体化しているため、エレメント複合体として一体に製造できる。また、橋渡部の強度は、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際、橋渡部が破壊される程度の強度である。これにより、ピアスエレメントを板材に打ち込んだ際、本体と先行パンチとの間の接続が解かれ、ピアスエレメントと先行パンチとを分離できる。
【0021】
本発明の第3の態様は、板材と、上部と、下部と、前記上部および前記下部を繋ぎ、前記上部および前記下部よりも平面視において小さな連結部とを有し、前記上部の下面、前記下部の上面、および前記連結部の側面によってくびれ部が画定され、前記板材の厚み以下の厚みを有するピアスエレメントとを備え、前記ピアスエレメントは、前記板材に埋め込まれ、前記くびれ部において前記板材を噛み込むことで前記板材に固定されている、溶接用部材を提供する。
【0022】
この構成によれば、前述の3つの課題を解決した溶接用部材を提供できる。即ち、ピアスエレメントが板材から脱落することを防止でき、製造工数の増加を抑制でき、厚みを均一にできる溶接用部材を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ピアスエレメントが板材から脱落し難く、製造工数の増加を抑制し、厚みが均一な溶接用部材を製造するピアスエレメントの打ち込み方法を提供できる。また、この方法に適したエレメント複合体を提供できる。また、ピアスエレメントが脱落し難く、製造工数の増加を抑制し、厚みが均一な溶接用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第1工程を示す断面図。
図2】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第2工程を示す断面図。
図3】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第3工程を示す断面図。
図4】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第4工程を示す断面図。
図5】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第5工程を示す断面図。
図6】本発明の一実施形態に係るピアスエレメントの打ち込み方法の第6工程を示す断面図。
図7】ピアスエレメントが打ち込まれた板材(溶接用部材)の断面図。
図8】スポット溶接された接合体の断面図。
図9】エレメント複合体の斜視図。
図10】エレメント複合体の正面図。
図11】エレメント複合体の側面図。
図12】エレメント複合体の平面図。
図13】エレメント複合体の下面図。
図14】エレメント複合体の断面図。
図15図10のA−A線に沿った橋渡部の断面図。
図16図15の橋渡部の第1変形例を示す断面図。
図17図15の橋渡部の第2変形例を示す断面図。
図18】エレメント複合体の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1から図6は、一実施形態に係るピアスエレメント10の打ち込み方法の第1から第6工程をそれぞれ示す断面図である。本実施形態では、これらの工程を経て、図7に示すように、ピアスエレメント10が打ち込まれた板材20(溶接用部材1)が製造される。また、図8に示すように、このようなピアスエレメント10が打ち込まれた板材20は、溶接によって、他の板材30と一体化される。
【0027】
図1に示すように、第1工程(準備工程)では、本実施形態に係るピアスエレメント10の打ち込み方法に使用する各部材を準備する。具体的には、ダイス40と、板材20と、先行パンチ50と、ピアスエレメント10と、エレメントホルダ60とを準備する。
【0028】
ダイス40は、プレス金型の受け型に対応し、上面が平坦であり、平面視円形の孔部41を有している。本実施形態では、孔部41の直径は、例えば10.1mm程度である。また、孔部41の形状は、円形に限定されず、先行パンチ50およびピアスエレメント10の形状に応じて変更され得る。
【0029】
板材20は、金属製であり、本実施形態では例えば5000系ないし6000系のアルミニウム合金製である。板材20は、後述するように、ピアスエレメント10に打ち抜かれることができる程度の厚みを有している。本実施形態では、板材20の厚みは、例えば2.0mm程度である。
【0030】
先行パンチ50は、プレス金型の押し型に対応し、概ね円柱状であり、平面視においてダイス40の孔部41の径よりわずかに小さな径を有している。本実施形態のように板材20がアルミニウム合金製の場合、先行パンチ50と孔部41との間のクリアランスは、板材20の厚みの5%程度が好ましい。従って、本実施形態では、先行パンチ50と孔部41との間のクリアランスを0.1mm程度としている。このクリアランスによると、後述するように板材20を打ち抜く際にバリの発生を抑制できる。この寸法関係から、本実施形態では、先行パンチ50の直径は、例えば9.9mm程度となっている。
【0031】
ピアスエレメント10は、上部11、下部12、および上部11と下部12を繋ぐ連結部13を有する。上部11、下部12、および連結部13は、平面視においてそれぞれ同心の円形である。下部12は上部11よりも小径であり、連結部13は下部12よりも小径である。また、ピアスエレメント10は、板材20よりも薄い。本実施形態では、上部11の直径は例えば10.5mm程度であり、上部11の高さは例えば0.8mm程度である。また、下部12の直径は例えば9.7mm程度であり、下部12の高さは例えば0.6mm程度である。また、連結部13の直径は例えば9.3mm程度であり、連結部13の高さは例えば0.6mm程度である。従って、本実施形態では、ピアスエレメント10の高さは、2.0mm程度となり、板材20の厚みと同じとなっている。ピアスエレメント10がこのような形状を有することによって、上部11の下面、下部12の上面、および連結部13の側面によってくびれ部14が画定される。ピアスエレメント10は、中央に、上部11、下部12、および連結部13を貫通する貫通孔15を有している。貫通孔15は、後述するエレメントホルダ60の凸部62を挿入できる形状となっている。ピアスエレメント10は、金属製であり、本実施形態では例えば鋼鉄製であり、後述する他の板材30と同種金属であってかつ軟性であることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、先行パンチ50とピアスエレメント10は、橋渡部51によって接続されている。橋渡部51は、ピアスエレメント10の貫通孔15の周囲に360°連続的に延在する環状構造を有している(図15参照)。本実施形態では、橋渡部51の高さは例えば0.2mmであり、橋渡部51の径方向の厚みは例えば0.2mmである。そのため、先行パンチ50は、ピアスエレメント10の直下に配置される。このような橋渡部51は、後述するように板材20の打ち抜き時の負荷によって破壊される程度の強度を有している。従って、ピアスエレメント10を板材20に打ち込んだ際、ピアスエレメント10と先行パンチ50との間の接続が解かれ、ピアスエレメント10と先行パンチ50とを分離できる。なお、橋渡部51の形状は、平面視において、環状に限定されず、そのような環状を間欠的に分断させた形状、または柱状構造を所定間隔で複数設けた形状であってもよい(図16,17参照)。さらに言えば、橋渡部51は必ずしも設ける必要はなく、先行パンチ50とピアスエレメント10は、分離されていてもよい。
【0033】
第1工程(準備工程)では、前述のように先行パンチ50とピアスエレメント10とが一体となっており、この一体となった部品をエレメント複合体と称する。
【0034】
エレメントホルダ60は、円柱状の台部61と、台部61の下面中央から下方へ延びる凸部62とを有している。凸部62は、台部61と同心であり、台部61よりも小径の円柱状である。
台部61と凸部62には、同心軸方向にそれらを貫通する貫通孔63が設けられている。貫通孔63の内部には、ばね部材64とエジェクタピン(押し具)65が収容されている。エジェクタピン65は、フランジ部65aと、フランジ部65aから下方へ延びるピン本体65bとを備える。フランジ部65aは扁平な円柱状であり、ピン本体65bは長い円柱状である。フランジ部65aは、平面視において、ピン本体65bと同心に形成され、ピン本体65bよりも大径である。貫通孔63の下端部の径はピン本体65bを通過させるがフランジ部65aを通過させない程度の大きさとなっている。従って、エジェクタピン65は、ばね部材64によって下方へ付勢されても、エレメントホルダ60から下方へ抜け落ちない。
【0035】
図2に示すように、第2工程(配置工程)では、板材20をダイス40の孔部41の上に配置する。また、エレメントホルダ60の凸部62をピアスエレメント10の貫通孔15に挿入する。そして、板材20上であってダイス40孔部41に対応する位置上に、エレメントホルダ60とピアスエレメント10と先行パンチ50とを順に上方から下方へ配置する。
【0036】
図3に示すように、第3工程(打ち抜き工程)では、ピアスエレメント10をエレメントホルダ60によって保持した状態でエレメントホルダ60を下方へ移動させることで、ピアスエレメント10を下方へ押圧する。これにより、先行パンチ50を介して板材20を打ち抜く。この打ち抜き時の負荷によって、橋渡部51は破壊され、先行パンチ50はピアスエレメント10から分離される。
【0037】
図4に示すように、第4工程(第1分離工程)では、第3工程で板材20から打ち抜かれた打抜片21を孔部41から下方へ落下させる。
【0038】
図5に示すように、第5工程(打ち込み工程)では、第3工程および第4工程の板材20の打ち抜きおよび打抜片21の分離に続いて、ピアスエレメント10を板材20に埋め込むように打ち込む。ここで、埋め込むようにとは、打ち込まれたピアスエレメント10が板材20の上下から突出しない態様のことをいう。本実施形態では、ピアスエレメント10と板材20の厚みが同じであるため、ピアスエレメント10を板材20に埋め込むことができる。ピアスエレメント10が板材20に打ち込まれると、板材20がくびれ部14に塑性流動し、ピアスエレメント10が板材20を噛み込んだ状態となる。これにより、ピアスエレメント10が板材20に固定される。
【0039】
図6に示すように、第6工程(第2分離工程)では、先行パンチ50を孔部41から下方へ落下させる。このとき、先行パンチ50は、エジェクタピン65によって下方へ押し出されている。次いで、図7に示すように、エレメントホルダ60をピアスエレメント10から分離する。
【0040】
図7に示すように、本実施形態のピアスエレメント10の打ち込み方法によって形成された溶接用部材1では、ピアスエレメント10が板材20に埋め込まれており、上下面が平坦である。また、ピアスエレメント10がくびれ部14において板材20を噛み込んでいる。
【0041】
図8に示すように、溶接用部材1は、ピアスエレメント10と同種金属(本実施形態では鋼鉄製)の他の板材30と重ねて配置された状態で、ピアスエレメント10と板材20とがスポット溶接される。溶接の態様は、アーク溶接などであり得る。
【0042】
図9から図14は、本実施形態に使用されるエレメント複合体の斜視図、正面図、側面図、平面図、下面図、および断面図である。特に、背面図は、正面図と同一であるため、省略している。また、右側面図と左側面図は同一であるため、合わせて側面図として示している。さらに言えば、図10図11に、正面図と側面図を分けて図示しているが、正面図と側面図は同一である。
【0043】
また、図15は、図10のA−A線に沿った橋渡部51の断面図である。図15に示すように、本実施形態では、橋渡部51は、360°連続的に延在する環状構造を有している。ただし、橋渡部51の形状はこれに限定されず、図16および図17に変形例を示すように、柱状構造の橋渡部51を複数設けてもよい。
【0044】
本実施形態によれば、下記の3つの効果を奏してピアスエレメント10を板材20に打ち込むことができる。具体的には、第1に、ピアスエレメント10を板材20に打ち込んだ際、板材20がくびれ部14内に塑性流動し、ピアスエレメント10が板材20を噛み込むため、ピアスエレメント10を板材20に固定できる。従って、ピアスエレメント10が板材20から脱落することを防止できる。第2に、板材20を打ち抜く工程と、板材20にピアスエレメント10を打ち込む工程とを同時に行うことができるため、ピアスエレメント10を装着するための孔部を板材20に予め設ける必要がない。従って、製造工数の増加を抑制できる。第3に、ピアスエレメント10の厚みが板材20の厚み以下であり、板材20にピアスエレメント10を埋め込むように打ち込むため、板材20の表面にピアスエレメント10が突出せず、厚みを均一にして、ピアスエレメント10が打ち込まれた板材20(溶接用部材1)を形成できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、エレメントホルダ60によってピアスエレメント10を保持できるため、板材20にピアスエレメント10を安定して打ち込むことができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、橋渡部51によるピアスエレメント10と先行パンチ50の一体化構造によって、ピアスエレメント10と先行パンチ50とを打ち込み位置に配置することが容易となり、即ち位置決めが容易となる。また、ピアスエレメント10を打ち込むまでピアスエレメント10の直下に先行パンチ50を配置できる。仮に、先行パンチ50をピアスエレメント10の直下に配置することなくピアスエレメント10を板材20に打ち込むと、バリが発生するおそれがある。これに対し、ピアスエレメント10の直下に先行パンチ50を配置すると、先行パンチ50が先に板材20を打ち抜き、板材20に孔部を形成した状態でピアスエレメント10を挿入できるため、上記バリの発生を抑制できる。このとき、通常の穿孔加工と同様に、先行パンチ50が板材20を打ち抜く際に、バリを発生させることは考えられるが、ダイス40の孔部41と先行パンチ50との間のクリアランスをバリが発生し難い数値にすることでバリの発生を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、エジェクタピン65によって、先行パンチ50をダイス40の孔部41から落下させることが容易となる。特に、ダイスの孔部の径と、先行パンチの径とが近しい場合、先行パンチが孔部に詰まり、落下しない可能性も考えられるが、押し具によって先行パンチを下方へ押し出すことができるため、先行パンチを確実に落下させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、くびれ部14への板材20の塑性流動を促進でき、ピアスエレメント10を板材20に強く噛み込ませることができる。詳細には、ピアスエレメント10を板材20に打ち込んだ際、下部12が平面視において比較的小さいため、板材20が下部12を乗り越えてくびれ部14に塑性流動し易い。また、上部11が平面視において比較的大きいため、くびれ部14に塑性流動した板材20が上部11を乗り越え難くなっている。そのため、塑性流動した板材20がくびれ部14に残存し、ピアスエレメント10が板材20を強く噛み込んだ状態にできる。
【0049】
図18に示すように、上記実施形態の変形例として、ピアスエレメント10には貫通孔15(図1等参照)が設けられておらず、有底の穴部16が設けられていてもよい。この場合、溶接の態様は、アーク溶接またはレーザ溶接等であり得る。
【0050】
また、先行パンチ50を電磁力によってピアスエレメント10に吸着させてもよい。具体的には、板材20を打ち抜き前は、先行パンチ50を電磁力によってピアスエレメント10に吸着させ、板材20の打ち抜き後は、電磁力を解除し、ピアスエレメント10から先行パンチ50を分離してもよい。
【0051】
本変形例によれば、ピアスエレメント10を打ち込むまで先行パンチ50をピアスエレメント10に電磁吸着させることができる。従って、前述と同様に、ピアスエレメント10の直下に先行パンチ50を配置できるため、板材20を打ち抜く際のバリの発生を抑制できる。特に、電磁力は吸着/分離の切り替えが容易であり、ピアスエレメント10の打ち込み後に先行パンチ50をピアスエレメント10から分離することが容易である。
【0052】
以上より、本発明の具体的な実施形態および変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、各部材の材質は、上記に示したものに限定されず、任意の材料であり得る。また、各部材の平面視の形状は円形に限らず多角形状等、任意であり得る。
【符号の説明】
【0053】
1 溶接用部材
10 ピアスエレメント
11 上部
12 下部
13 連結部
14 くびれ部
15 貫通孔
16 穴部
20 板材
21 打抜片
30 板材
40 ダイス
41 孔部
50 先行パンチ
51 橋渡部
60 エレメントホルダ
61 台部
62 凸部
63 貫通孔
64 ばね部材
65 エジェクタピン(押し具)
65a フランジ部
65b ピン本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18