【文献】
C. CIFERRI,THE TRIMERIC SERINE PROTEASE HTRA1 FORMS A CAGE-LIKE INHIBITION COMPLEX WITH AN ANTI-HTRA1 ANTIBODY,BIOCHEMICAL JOURNAL,英国,2015年 9月18日,VOL: 472, NR: 2,PAGE(S): 169 - 181,URL,DOI: 10.1042/BJ20150601
【文献】
TIM CLAUSEN,HTRA PROTEASES: REGULATED PROTEOLYSIS IN PROTEIN QUALITY CONTROL,NATURE REVIEWS MOLECULAR CELL BIOLOGY,2011年 2月16日,VOL:12, NR:3,PAGE(S):152 - 162,URL,http://dx.doi.org/10.1038/nrm3065
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体が、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項2に記載の抗体。
抗体の産生方法であって、請求項14に記載の単離された核酸を含むベクターを含む宿主細胞を培養することと、前記抗体を前記宿主細胞または前記宿主細胞の培養培地から回収することと、を含む、前記方法。
前記HtrA1関連障害または前記眼障害が、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、またはポリープ状脈絡膜血管症である、請求項20に記載の医薬。
硝子体内に、眼内に、眼球内に、強膜近傍に、テノン嚢下に、超脈絡膜に(superchoroidally)、または局所に投与するための、請求項18〜27のいずれか1項に記載の医薬。
【発明を実施するための形態】
【0060】
I.定義
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0061】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、またはアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0062】
本発明の抗体との関連での「活性の」または「活性」または「生物学的活性」は、例えば、インビトロ及び/またはインビボで、その標的の生物学的活性に拮抗する(それを部分的または完全に阻害する)能力である。ある抗体の生物学的活性の一例は、その標的に関連する障害の状態、例えば、病状の測定可能な改善を達成する能力である。例えば、抗HtrA1抗体の場合、障害は、HtrA1関連障害、例えば、AMD(例えば、地図状萎縮)等であり得る。抗HtrA1抗体の活性は、関連動物モデルを使用した、結合アッセイ、活性アッセイ(例えば、FRETに基づく活性アッセイ(例えば、H2−Opt基質を使用して)、または質量分析に基づく活性アッセイ)を含むインビトロ試験もしくはインビボ試験、またはヒト臨床試験において決定され得る。別の例では、抗D因子抗体(例えば、抗HtrA1/抗D因子抗体)の場合、障害は、補体関連障害、例えば、補体関連眼障害等であり得る。抗D因子抗体の活性は、関連動物モデルを使用した、結合アッセイ、代替経路溶血アッセイ(例えば、代替経路補体活性または活性化の阻害を測定するアッセイ)を含むインビトロ試験もしくはインビボ試験、またはヒト臨床試験において決定され得る。
【0063】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」とは、結合対のメンバー間(例えば、抗体と抗原との間)の1:1の相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)で表され得る。親和性は、本明細書に記載の方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法により測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示の実施形態が、以下に記載されている。
【0064】
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)及び/またはフレームワーク領域(FR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性の改善がもたらされる抗体を指す。
【0065】
「抗HtrA1抗体」及び「HtrA1に特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がHtrA1の標的時に診断薬及び/または治療薬として有用であるように、十分な親和性でHtrA1に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非HtrA1タンパク質への抗HtrA1抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)により測定される、HtrA1への本抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、HtrA1に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(KD)を有する。ある特定の実施形態では、抗HtrA1抗体は、異なる種由来のHtrA1間で保存されるHtrA1のエピトープに結合する。抗HtrA1抗体は、例えば、本明細書または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2013/055998号に記載の任意の抗HtrA1抗体であり得る。
【0066】
「抗D因子抗体」及び「D因子に特異的に結合する抗体」という用語は、抗体が、例えば、補体活性化を阻害するか、または実質的に低減するような様式で、D因子の標的時に診断薬及び/または治療薬として有用であるように、十分な親和性でD因子に結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非D因子タンパク質への抗D因子抗体の結合の程度は、例えば、RIAにより測定される、D因子への本抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、D因子に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(KD)を有する。ある特定の実施形態では、抗D因子抗体は、異なる種由来のD因子間で保存されるD因子のエピトープに結合する。抗D因子抗体は、本明細書に記載されており、及び/または米国特許第8,067,002号、同第8,273,352号、及び同第8,268,310号、ならびに米国特許出願第14/700,853号(これらは各々、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている任意の抗D因子抗体であり得る。
【0067】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0068】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して表記される1つの残留「Fc」断片とが産生される。Fab断片は、重(H)鎖の可変領域ドメイン(VH)とともに全軽(L)鎖、及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab’)
2断片が産出され、これは、概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片に対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にさらなる数個の残基を有する点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)
2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0070】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異形Fc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、存在しない場合もある。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載される、EU指標とも称されるEU番号付けシステムに従う。
【0071】
「Fv」は、密接な非共有結合にある1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、かつ抗原結合特異性を抗体に与える6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各3つループ)が生じる。しかしながら、多くの場合、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0072】
「sFv」または「scFv」とも短縮される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に結合されるVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0073】
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間の対合が達成され、二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすように、VHドメインとVLドメインとの間にsFv断片(前段落を参照のこと)を短いリンカー(約5〜10個の残基)で構築することによって調製された小さい抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448,1993により完全に記載されている。
【0074】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体とは、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。ある特定の遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0075】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、参照抗体と比較して抗原の重複する組のアミノ酸残基と接触するか、または競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する抗体を指す。抗原と接触する抗体アミノ酸残基は、例えば、抗原と複合した抗体の結晶構造を決定することによって、または水素/重水素交換を行うことによって決定され得る。いくつかの実施形態では、5Å以内の抗原の抗体の残基が抗原と接触するとみなされる。いくつかの実施形態では、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原への結合を50%以上遮断し、逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する。例示の競合アッセイが本明細書に提供される。
【0076】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来する一方で、重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0077】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が持つ定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主なクラスの抗体:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2にさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0078】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、及びB細胞活性化が挙げられる。
【0079】
「フレームワーク」または「フレームワーク領域」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。
【0080】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために本明細書で同義に使用される。
【0081】
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1の216〜238(EU番号付け)または226〜251(Kabat番号付け)からの伸長と定義される。ヒンジは、3つのはっきりと異なる領域、上部、中央(例えば、コア)、及び下部ヒンジにさらに分類され得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、一般に、以下のように定義される。
【0082】
上部ヒンジは、配列EPKSCDKTHT(配列番号157)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、上部ヒンジは、216〜225位(EU番号付け)または226〜238位(Kabat番号付け)にそのアミノ酸を含む。
【0083】
中央(例えば、コア)ヒンジは、配列CPPC(配列番号122)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、コアヒンジは、226〜229位(EU番号付け)または239〜242位(Kabat番号付け)にそのアミノ酸を含む。
【0084】
下部ヒンジは、配列PAPELLGGP(配列番号158)を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、下部ヒンジは、230〜238位(EU番号付け)または243〜251位(Kabat番号付け)にそのアミノ酸を含む。
【0085】
「ヒト抗体」とは、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を持つ抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0086】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択時に最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群からである。一般に、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3にあるような下位群である。一実施形態では、VLの場合、下位群は、Kabat et al.(上記参照)にあるような下位群カッパIである。一実施形態では、VHの場合、下位群は、Kabat et al.(上記参照)にあるような下位群IIIである。
【0087】
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基により置き換えられている。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0088】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが配列の点で、抗体間で広範囲にわたって異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの長さにわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各9〜12アミノ酸長の「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性を有するより短い領域によって分離される15〜30個のアミノ酸を有するフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸長からなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、例えば、VLでは残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)、VHでは残基約26〜35(H1)、49〜65(H2)、及び95〜102(H3)(一実施形態では、H1は、残基約31〜35)からのアミノ酸残基、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、及び/または及び/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(例えば、VLでは残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、VHでは26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造の一部を結合し、ある場合には、その一部を形成するループを形成する3つの超可変領域によって結合された主にベータシート配置をとる4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRにより近接近して一緒に保持され、他の鎖由来の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照のこと)。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)に以下の配列:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4に出現する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0089】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」、「Kabatアミノ酸残基」、または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って、残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って、残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準の」Kabatにより番号付けられた配列との抗体の配列の相同性領域でのアライメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0090】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖残基1〜107及び重鎖残基1〜113)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されているEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書に別途述べられない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書に別途述べられない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(EU番号付けについては、例えば、米国仮出願第60/640,323号の図を参照のこと)。
【0091】
別途示されない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(上記参照)に従って本明細書で番号付けされる。
【0092】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害性薬剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0093】
「単離された抗体」という用語は、本明細書に開示される様々な抗体を説明するために使用されるとき、抗体が発現された細胞または細胞培養物から特定され、分離及び/または回収された抗体を意味する。その天然環境の混入成分は、典型的にはポリペプチドの診断的または治療的使用を妨害する材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)アプローチにより決定される、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評定方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79−87(2007)を参照されたい。好ましい実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を使用してN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して非還元条件または還元条件下でSDS−PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体としては、組換え細胞内のインサイツの抗体が挙げられるが、これは、ポリペプチド天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0094】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体が同一であり、及び/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する変異を含むか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能な変異形抗体を除き、かかる変異形は、一般に、少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、いずれの特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含むトランスジェニック動物の利用方法を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示の方法が本明細書に記載されている。
【0095】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、特に、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を網羅し、VH−VL単位が多重エピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープまたは異なる生物学的分子上の各エピトープに結合することができる)。かかる多重特異性抗体としては、全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディ、共有結合的または非共有結合的に結合された抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「多重エピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「二特異性」または「二重特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一の2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは、2つの抗原を認識することができる。二特異性により、抗体が単一のFabまたはIgG分子として高親和性で2つの異なる抗原と相互作用することが可能になる。一実施形態によれば、IgG1形態の多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合する。「単一特異性」とは、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
【0096】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0097】
抗体の標的分子への結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドもしくはエピトープ「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、非特異的相互作用とはある程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定され得る。例えば、特異的結合は、標的と同様の対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合によって決定され得る。この場合、特異的結合は、標識された標的のプローブへの結合が過剰な標識されていない標的によって競合的に阻害される場合に示される。本明細書で使用される「特異的結合」または特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープ「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば、10
−4M以下、あるいは10
−5M以下、あるいは10
−6M以下、あるいは10
−7M以下、あるいは10
−8M以下、あるいは10
−9M以下、あるいは10
−10M以下、あるいは10
−11M以下、あるいは10
−12M以下の標的に対するKD、または10
−4M〜10
−6Mまたは10
−6M〜10
−10Mまたは10
−7M〜10
−9Mの範囲のKDで分子によって提示され得る。当業者によって理解されるように、親和性及びKD値は、逆相関する。抗原に対する高親和性は、低KD値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、ある分子がいずれの他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく特定のポリペプチド上の特定のポリペプチドまたはエピトープに結合する結合を指す。
【0098】
「抗体をコードする核酸」とは、抗体重鎖及び軽鎖(またはその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内の核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。いくつかの実施形態では、核酸は、抗HtrA1抗体をコードする。他の実施形態では、核酸は、抗D因子抗体(例えば、抗HtrA1/抗D因子抗体)をコードし得る。
【0099】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用されるとき、それが結合している別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0100】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、同義に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が本明細書に含まれる。
【0101】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一の候補配列内のアミノ酸残基の百分率と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、当該技術分野の技術の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアライメントに適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が生み出したものであり、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)にユーザ文書とともに申請されており、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定されており、変動しない。
【0102】
ALIGN−2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:分数X/Yの100倍(式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN−2によってそのプログラムのAとBのアライメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%がBのAに対するアミノ酸配列同一性%に等しくないことが理解される。別途具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN−2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0103】
抗体を含むタンパク質は、それがインタクトな立体配座構造及び生物学的活性を本質的に保持する場合、「安定している」と考えられる。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技法が当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90に概説されている。「改善された安定性」を有する抗体変異形とは、出発参照抗体と比較してより安定した抗体変異形を指す。好ましくは、改善された安定性を有する抗体変異形は、特定のアミノ酸残基が、物理的安定性、及び/または化学的安定性、及び/または生物学的活性を改善し、及び/または天然抗体の免疫原性を低減する目的のために改変される参照(野生型)抗体の変異形である。
【0104】
「異性化」という用語は、概して、化学化合物が、その異性形態、すなわち、同じ化学組成を有するが、異なる構造または配置を有し、それ故に、一般に異なる物理的及び化学的特性を有する形態のうちのいずれかに形質転換される化学的プロセスを指す。アスパラギン酸異性化、すなわち、ポリペプチドの1つ以上のアスパラギン酸(DまたはAsp)残基(複数可)がイソアスパラギン酸残基(複数可)に形質転換されたプロセスが特に本明細書で使用される。例えば、Geigeret al.,J.Biol.Chem.262:785−94,1987を参照されたい。
【0105】
「脱アミド化」という用語は、概して、アミド官能基が有機化合物から除去される化学反応を指す。アスパラギン脱アミド化、すなわち、ポリペプチド(例えば、抗体)の1つ以上のアスパラギン(NまたはAsn)残基(複数可)がアスパラギン酸(DまたはAsp)に変換されたプロセス、すなわち、中性アミド側鎖が全体的な酸性特性を有する残基に変換されたプロセスが特に本明細書で使用される。例えば、Xie et al.,J.Pharm.Sci.88:8−13,1999を参照されたい。
【0106】
ポリペプチド分子(例えば、抗体)の「酸化」変異形は、元のポリペプチドの1つ以上のメチオニン(MまたはMet)またはトリプトファン(WまたはTrp)残基(複数可)がメチオニンの硫黄を介してスルホンまたはスルホキシドに変換されたポリペプチドである。酸化は、メチオニン(MまたはMet)をロイシン(LまたはLeu)またはイソロイシン(IまたはIle)に変換することによって防止され得る。例えば、Amphlettet al.,Pharm.Biotechnol.,9:1−140,1996を参照されたい。
【0107】
ある特定の特定された物理的または化学的プロセス(例えば、異性化、脱アミド化、または酸化)を経る傾向があるアミノ酸残基は、異性化、脱アミド化、または酸化等の特定されたプロセスを経る傾向を有すると特定された特定のタンパク質分子内の残基を指す。それらの傾向は、多くの場合、タンパク質の一次及び/または立体配座構造内のそれらの相対位置によって決定される。例えば、Asp−XXXモチーフ(式中、XXXは、Asp、Gly、His、Ser、またはThrであり得る)中の第1のAspが、同じタンパク質中のいくつかの他のAspがかかる傾向を有しない場合があるその隣接する残基の関与により、Asp異性化を経る傾向があることが示されている。特定のタンパク質分子内のある特定のプロセスを経る傾向がある残基を特定するためのアッセイは、当該技術分野で既知である。例えば、Cacia et al.,Biochem.35:1897−1903,1996を参照されたい。
【0108】
本明細書で同義に使用される「HtrAセリンペプチダーゼ1(HtrA1)」または「HtrA1」という用語は、別途示されない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然HtrA1を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないHtrA1、ならびに細胞内でのプロセシングから得られるHtrA1の任意の形態を包含する。この用語は、HtrA1の天然に存在する変異形、例えば、スプライス変異形または対立遺伝子変異形も包含する。例示のヒトHtrA1のアミノ酸配列が配列番号121に示される(
図29Aを参照のこと)。ヒトHtrA1のUniProt受託番号は、Q92743である。例示のマウスHtrA1のアミノ酸配列が配列番号155に示される(
図29Bを参照のこと)。マウスHtrA1のUniProt受託番号は、Q9R118である。本明細書に記載されるように、huHtrA1及びmuHtrA1のアミノ酸残基は、それぞれ、配列番号121及び配列番号155を参照して作製される。アミノ酸位置は、一文字アミノ酸コードに続く配列番号121または配列番号155内のその位置によって特定される(
図29Bを参照のこと)。
図29Aに示されるように、ヒトHtrA1の成熟配列は、配列番号121の23位のグルタミンから始まり、配列番号121の480位のプロリンで終わる配列、例えば、Q23〜P480を含む。ヒトHtrA1の例示の断片としては、アミノ酸D161〜K379を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる断片が挙げられる。HtrA1は、プロテアーゼ、セリン、11(IGF結合)(PRSS11)、ARMD7、HtrA、及びIGFBP5−プロテアーゼとしても当該技術分野で既知である。
【0109】
「HtrA1」という用語は、「HtrA1変異形」も包含し、これは、配列番号121または配列番号155等の天然配列HtrA1ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性HtrA1ポリペプチドを意味する。通常、HtrA1変異形は、天然HtrA1配列、例えば、配列番号121または配列番号155と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0110】
「HtrA1結合アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、HtrA1生物学的活性を中和、遮断、部分的もしくは完全に阻害、抑止、低減、または妨害することができる任意の分子を含む。HtrA1結合アンタゴニストとしては、HtrA1に結合し、かつHtrA1活性、例えば、インビトロで(例えば、H2−Opt基質もしくはカゼイン)またはインビボで基質を切断するHtrA1の能力(例えば、眼障害(例えば、AMD(例えば、地図状萎縮)の病状に寄与するHtrA1の能力)を中和、遮断、部分的もしくは完全に阻害、抑止、低減、または妨害することができる、抗HtrA1抗体、及びその抗体変異形、その抗原結合断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、及び非ペプチド小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
「D因子」という用語は、本明細書で使用されるとき、天然配列及び変異形D因子ポリペプチドを指す。D因子は、補体D因子(CFD)、C3前駆賦活体転換酵素、プロパージンD因子エステラーゼ、及びアジプシンとしても当該技術分野で既知である。
【0112】
「天然配列D因子」は、その調製様式にかかわらず自然界に由来するD因子ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。したがって、天然配列D因子は、自然界から単離され得るか、または組換え及び/または合成手段により産生され得る。成熟ヒトD因子タンパク質(例えば、NCBI参照配列NM_001928、配列番号126を参照のこと)等の成熟D因子タンパク質に加えて、「天然配列D因子」という用語は、具体的には、D因子の天然に存在する前駆体形態(例えば、タンパク分解的に切断されて活性形態を産生する不活性前タンパク質)、天然に存在する変異形形態(例えば、選択的にスプライスされた形態)、及びD因子の天然に存在する対立遺伝子変異形、ならびに自然界に由来するD因子ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するD因子分子の構造的立体配座変異形を包含する。ヒトD因子のUniProt受託番号は、P00746である。より高次の霊長類及び非ヒト哺乳動物を含む非ヒト動物のD因子ポリペプチドが、この定義に具体的に含まれる。
【0113】
「D因子変異形」とは、天然配列ヒトD因子ポリペプチド(例えば、NM_001928、配列番号126)等の天然配列D因子ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性D因子ポリペプチドを意味する。通常、D因子変異形は、成熟ヒトアミノ酸配列(例えば、NM_001928、配列番号126)と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0114】
「D因子結合アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、D因子生物学的活性を中和、遮断、部分的もしくは完全に阻害、抑止、低減、または妨害することができる任意の分子を含む。D因子結合アンタゴニストとしては、D因子に結合し、かつD因子活性、例えば、補体関連眼状態の病状に関与するD因子の能力を中和、遮断、部分的もしくは完全に阻害、抑止、低減、または妨害することができる、抗D因子抗体、及びその抗体変異形、その抗原結合断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、及び非ペプチド小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
「VEGFアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用されるとき、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低減するか、またはVEGF生物学的活性(1つ以上のVEGF受容体へのVEGF結合、VEGFシグナル伝達、ならびにVEGF媒介血管新生及び内皮細胞生存または増殖を含むが、これらに限定されない)を中和、遮断、阻害、抑止、低減、または妨害することができる分子を指す。例えば、VEGF生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、または妨害することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによってその効果を発揮することができる。VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGFに特異的に結合し、それにより1つ以上の受容体へのその結合を隔離する受容体分子及び誘導体、融合タンパク質(例えば、VEGF−Trap(Regeneron))、及びVEGF
121−ゲロニン(Peregrine)が、本発明の方法で有用なVEGFアンタゴニストとして含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFポリペプチドのアンタゴニスト変異形、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的な小分子RNA、VEGFを標的とするリボザイム、VEGFに対するペプチボディ、及びVEGFアプタマーも含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFRに結合するポリペプチド、抗VEGFR抗体、及びその抗原結合断片、ならびにVEGFRに結合し、それによりVEGF生物学的活性(例えば、VEGFシグナル伝達)を遮断、阻害、抑止、低減、または妨害する誘導体、または融合タンパク質も含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFまたはVEGFRに結合し、かつVEGF生物学的活性を遮断、阻害、抑止、低減、または妨害することができる非ペプチド小分子も含まれる。したがって、「VEGF活性」という用語は、VEGFのVEGF媒介生物学的活性を具体的に含む。ある特定の実施形態では、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベルまたは生物学的活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。いくつかの実施形態では、VEGF特異的アンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8−109)、VEGF(1−109)、またはVEGF
165である。
【0116】
本明細書で使用されるとき、VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGFR2抗体及び関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap−Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ−アフリベルセプト(ziv−aflibercept)(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP−0250、バヌシズマブ(VEGF−ANG2)、及びUS2001/0236388に開示される二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ、及びラニビズマブ)、及び非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0117】
「抗VEGF抗体」、「VEGFに結合する抗体」、及び「VEGFに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がVEGFの標的時に診断薬及び/または治療薬として有用であるように、十分な親和性でVEGFに結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非VEGFタンパク質への抗VEGF抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)により測定される、VEGFへの本抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、VEGFに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、異なる種由来のVEGF間で保存されるVEGFのエピトープに結合する。
【0118】
ある特定の実施形態では、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または状態を標的とし、かつそれを妨害する際に治療薬として使用され得る。また、本抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供され得る。かかるアッセイは、当該技術分野で既知であり、抗体の標的抗原及び意図される用途に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ、腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載のもの)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)及び補体媒介細胞傷害性(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号)、ならびにアゴニスト活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照のこと)が挙げられる。抗VEGF抗体は、通常、VEGF−BまたはVEGF−C等の他のVEGF相同体にも、PIGF、PDGF、またはbFGF等の他の成長因子にも結合しない。一実施形態では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されたモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(BV、AVASTIN(登録商標))として既知の抗体を含むが、これらに限定されない、Presta et al.(1997)Cancer Res.57:4593−4599に従って生成された組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。
【0119】
「LUCENTIS(登録商標)」または「rhuFab V2」としても既知の抗VEGF抗体「ラニビズマブ」は、ヒト化親和性成熟抗ヒトVEGF Fab断片である。ラニビズマブは、Escherichia coli発現ベクターでの標準の組換え技術方法及び細菌発酵によって産生される。ラニビズマブはグリコシル化されておらず、約48,000ダルトンの分子量を有する。WO98/45331及びUS2003/0190317を参照されたい。さらなる好ましい抗体としては、各々参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるPCT出願公開第WO2005/012359号及び同第WO2005/044853号に記載のG6またはB20シリーズ抗体(例えば、G6−31、B20−4.1)が挙げられる。さらなる好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号、同第6,054,297号、WO98/45332、WO96/30046、WO94/10202、EP0666868B1、米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号、ならびにPopkov et al.,Journal of Immunological Methods 288:149−164(2004)を参照されたい。他の好ましい抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、またはあるいは残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが挙げられる。さらなる抗VEGF抗体としては、PCT出願公開第WO2009/155724号に記載の抗VEGF抗体が挙げられる。
【0120】
「IL−6結合アンタゴニスト」という用語は、IL−6と、インターロイキン−6受容体(IL−6R)(CD126とも呼ばれる)及び/またはgp130(CD130とも呼ばれる)等のその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル変換を低減、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子を指す。例示のIL−6結合アンタゴニストとしては、例えば、抗IL−6アンタゴニスト(抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics)を含む)及び抗IL−6Rアンタゴニスト(抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)を含む)が挙げられる。「小分子」は、約600未満、好ましくは約1000ダルトン未満の分子量を有すると本明細書で定義される。
【0121】
「障害」とは、本抗体での治療から利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の障害にかかりやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患が挙げられる。本明細書で治療される障害の非限定的な例としては、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害が挙げられる。
【0122】
「HtrA1関連障害」という用語は、本明細書で使用されるとき、最も広義に、異常なHtrA1発現または活性に関連する任意の障害または状態を指す。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害は、非定型症状がHtrA1レベルまたは活性により身体において局所的(例えば、眼)及び/または全身的に現れ得る過剰なHtrA1レベルまたは活性に関連する。例示のHtrA1関連障害としては、HtrA1関連眼障害が挙げられ、これには、例えば、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)ならびに乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、地図状萎縮(GA)を含む)を含む加齢性黄斑変性症(AMD)が挙げられるが、これに限定されない。
【0123】
本明細書で使用されるとき、「眼障害」という用語は、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)ならびに乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、地図状萎縮(GA)を含む)等の加齢性黄斑変性症(AMD)を含む黄斑変性疾患を含む眼障害、糖尿病性網膜症(DR)及び他の虚血関連網膜症、眼内炎、ブドウ膜炎、脈絡膜血管新生(CNV)、未熟児網膜症(ROP)、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、糖尿病性黄斑浮腫、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD(例えば、GA)である。
【0124】
「補体関連障害」という用語は、最も広義に使用され、過剰なまたは制御不能な補体活性化に関連する障害を含む。それらには、心肺バイパス手術中の補体活性化;急性心筋梗塞、動脈瘤、脳卒中、出血性ショック、挫滅外傷、多臓器不全、血液量減少性ショック、腸虚血、または虚血を引き起こす他の事象後の虚血−再灌流による補体活性化が含まれる。補体活性化は、炎症状態、例えば、重度の熱傷、内毒素血症、敗血症性ショック、成人呼吸窮迫症候群、血液透析、アナフィラキシーショック、重度の喘息、血管性浮腫、クローン病、鎌状赤血球貧血、溶連菌感染後糸球体腎炎、及び膵臓炎にも関連することが示されている。この障害は、薬物有害反応、薬物アレルギー、IL−2誘導血管漏出症候群、またはX線撮影造影剤アレルギーの結果であり得る。これには、自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、リウマチ性関節炎、アルツハイマー病、及び多発性硬化症も含まれる。補体活性化は、移植片拒絶反応にも関連する。補体活性化は、補体関連眼障害等の眼障害にも関連する。
【0125】
「補体関連眼障害」という用語は、最も広義に使用され、全ての眼状態を含み、それらの病状は、補体の古典経路及び代替経路、特に、代替経路を含む補体を伴う。補体関連眼障害としては、黄斑変性疾患、例えば、全ての病期の加齢性黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性及び他の虚血関連網膜症、眼内炎、ブドウ膜炎、ならびに他の眼内新生血管疾患、例えば、糖尿病性黄斑浮腫、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、AMDには、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、地図状萎縮(GA)を含む)が含まれる。さらなる一例では、乾燥(非滲出性)AMDは、硬性ドルーゼン、軟性ドルーゼン、地図状萎縮、及び/または色素凝集の存在を含み得る。早期AMDは、例えば、複数の小型〜1つ以上の非広範な中型のドルーゼンを含み得る。中等度AMDは、例えば、広範な中型ドルーゼン〜1つ以上の大型ドルーゼンを含み得る。例えば、Ferris et al.,AREDS Report No.18、Sallo et al.,Eye Res,34(3):238−40,2009、Jager et al.,New Engl.J.Med.,359(1):1735,2008を参照されたい。さらなる一例では、中等度乾燥AMDは、大型の融合性ドルーゼンを含み得る。さらなる一例では、地図状萎縮は、光受容体及び/または網膜色素上皮(RPE)欠損を含み得る。さらなる一例では、地図状萎縮の領域は、小さい場合も大きい場合もあり、及び/または黄斑領域または周辺網膜内にあり得る。一例では、補体関連眼障害は、中等度乾燥AMDである。一例では、補体関連眼障害は、地図状萎縮である。一例では、補体関連眼障害は、湿潤AMD(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))である。
【0126】
上述のリストは包括的ではなく、疾患または障害が様々なカテゴリー内に入り得ることが理解される。例えば、AMDは、いくつかの例では、HtrA1関連障害、眼障害、及び補体関連障害としてカテゴリー化され得る。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「投与する」とは、対象に、化合物(例えば、本発明の抗HtrA1抗体、本発明の抗HtrA1抗体をコードする核酸)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、本発明の抗HtrA1抗体を含む薬学的組成物)のある投薬量を与える方法を意味する。本明細書に記載の方法で利用される組成物は、例えば、硝子体内(例えば、硝子体内注射により)、眼内(例えば、眼注射により)、眼球内(例えば、眼内注射により)、強膜近傍(例えば、強膜近傍注射により)、テノン嚢下(例えば、テノン嚢下注射により)、超脈絡膜(superchoroidally)(例えば、超脈絡膜(superchoroidal)注射により)、局所(例えば、点眼薬により)、筋肉内、静脈内、皮内、経皮(percutaneously)、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、腫瘍内経口、腹腔、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼窩内、経口、経皮(transdermally)、吸入により、注射により、埋め込みにより、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリーム剤中で、または脂質組成物中で投与され得る。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与され得る。投与方法は、様々な要素(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて異なり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、抗HtrA1抗体、抗D因子抗体、及び抗HtrA1/抗D因子抗体)は、硝子体内注射により投与される。
【0128】
1つ以上のさらなる治療薬と「組み合わせた」投与は、同時(並行)投与及び任意の順序での連続投与を含む。
【0129】
「長時間作用型送達」、「徐放性」、及び「制御放出」という用語は、概して、治療薬(例えば、本発明の抗体)の長期放出もしくは延長放出または生物学的利用能を達成するための製剤、剤形、デバイス、または他の種類の技術を使用する送達機構を説明するために使用される。これは、細胞、組織、臓器、関節、領域等を含む(が、これらに限定されない)、全身循環もしくは対象、または対象における局所活性部位への薬物の長期放出もしくは延長放出または生物学的利用能を提供する技術を指し得る。さらに、これらの用語は、製剤もしくは剤形からの薬物の放出を長引かせるか、または延長させるために使用される技術を指し得るか、またはそれらは、対象への薬物の生物学的利用能もしくは薬物動態もしくは作用持続時間を長引かせるか、または延長させるために使用される技術を指し得るか、またはそれらは、製剤によって誘発される薬力学的効果を長引かせるか、または延長させるために使用される技術を指し得る。
【0130】
「長時間作用型製剤」、「徐放性製剤」、または「制御放出製剤」とは、長時間作用型送達を提供するために使用される薬学的製剤、剤形、または他の技術である。一態様では、制御放出は、治療薬の局所生物学的利用能、特に、眼球送達との関連での眼球滞留時間を改善するために使用される。「増加した眼球滞留時間」とは、送達された眼薬が質(例えば、活性)の観点及び量(例えば、有効量)の観点の両方で有効な状態のままである送達後期間を指す。高用量及び制御放出に加えて、またはその代わりに、眼薬は、PEG化等により翻訳後に修飾されて、増加したインビボ半減期を達成することができる。
【0131】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」とは、必要な投薬量及び必要な期間にわたって所望の治療結果または予防結果を達成するのに有効な量を指す。
【0132】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。「対象」は、「患者」であり得る。
【0133】
「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含む治療薬の商用パッケージ内に習慣的に含まれる指示を指すために使用される。
【0134】
「薬学的に許容される担体」とは、対象に非毒性の活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
「薬学的製剤」という用語は、含有される活性成分の生物学的活性が有効であるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できない程度に毒性の追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0136】
本明細書で使用されるとき、「治療」(及びその文法的変形、例えば、「治療する」または「治療すること」)とは、治療される個体の自然経過を変更しようとする臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかに行われ得る。望ましい治療効果としては、疾患または障害の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患または障害の任意の直接または間接的病理学的帰結の軽減、疾患進行速度の低減、疾患または障害状態の改善または寛解、及び緩解または予後改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患もしくは障害の発症を遅延させるために、または疾患または障害の進行を遅らせるために使用される。いくつかの例では、障害は、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害、例えば、AMD(例えば、GA)である。
【0137】
「単離された」核酸分子とは、それが通常関連する核酸の天然源中の少なくとも1つの混入核酸分子から特定及び分離される核酸分子である。単離された核酸分子は、それが自然界で見られる形態または設定以外である。したがって、単離された核酸分子は、天然細胞内に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にある抗体を通常発現させる細胞内に含まれる核酸分子を含む。
【0138】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列としては、例えば、プロモーター、任意に、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することで知られている。
【0139】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれているときに「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されるか、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に作動可能に連結されるか、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置付けられる場合に、コード配列に作動可能に連結される。概して、「作動可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が連続的であり、分泌リーダーの場合、連続的であり、リーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続的でなくてもよい。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣例に従って使用される。
【0140】
本明細書で使用されるとき、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、同義に使用され、全てのかかる表記が子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という単語には、初代対象細胞及び導入数にかかわらずそれに由来する培養物が含まれる。全ての子孫は、故意または不慮の変異により、DNA含有量が正確に同一でない場合があることも理解される。最初に形質転換された細胞内でスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。はっきりと異なる表記が意図される場合、それは、文脈から明らかであろう。
【0141】
本明細書で使用されるとき、「ライブラリ」とは、複数の抗体または抗体断片配列(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)、またはこれらの配列をコードする核酸を指し、これらの配列は、例えば、本明細書に記載されるように、これらの配列に導入される変異形アミノ酸の組み合わせの点で異なる。
【0142】
「変異」とは、野生型配列等の参照ヌクレオチド配列に対するヌクレオチド(複数可)の欠失、挿入、または置換である。
【0143】
本明細書で使用されるとき、「コドンセット」とは、所望の変異形アミノ酸をコードするために使用される一組の異なるヌクレオチドトリプレット配列を指す。一組のオリゴヌクレオチドは、例えば、コドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの全ての可能な組み合わせを表し、かつ所望のアミノ酸群をコードするであろう配列を含む、固相合成によって合成され得る。コドン表記の標準形式は、IUBコードのものであり、当該技術分野で既知である。コドンセットは、典型的には、イタリック体の3つの大文字、例えば、
等で表される。ある特定の位置での選択されたヌクレオチド「縮重」を有するオリゴヌクレオチドの合成は、当該技術分野で周知であり、例えば、TRIMアプローチ(Knappek et al.,J.Mol.Biol.296:57−86,1999、Garrard et al.,Gene 128:103,1993)である。ある特定のコドンセットを有するかかる組のオリゴヌクレオチドは、商用核酸合成機(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)を使用して合成され得るか、または商業的に入手され得る(例えば、Life Technologies,Rockville,MDから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成された一組のオリゴヌクレオチドは、典型的には、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、差異は、全体配列内のコドンセットによって確立される。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、例えば、クローニング目的に有用な制限酵素部位も含み得るが、必ずしも含むわけではない。
【0144】
「ファージディスプレイ」とは、変異形ポリペプチドが、ファージ、例えば、線維状ファージ粒子の表面上のコートタンパク質の少なくとも一部に融合タンパク質としてディスプレイされる技法である。ファージディスプレイの有用性は、ランダム化されたタンパク質変異形の大きいライブラリが標的抗原に高親和性で結合する配列のために迅速かつ効率的に選別され得るという事実にある。ペプチド及びタンパク質ライブラリのファージ上でのディスプレイは、特異的結合特性を有するものについて何百万ものポリペプチドをスクリーニングするために使用されている。多価ファージディスプレイ法は、線維状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかへの融合によりランダム小ペプチド及び小タンパク質をディスプレイするために使用されている。例えば、Wells et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.,3:355−362,1992、及びそれに引用される文献を参照されたい。一価ファージディスプレイにおいて、タンパク質またはペプチドライブラリは、遺伝子IIIまたはその一部に融合され、野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で、低レベルで発現され、これにより、ファージ粒子が融合タンパク質のコピーを1つディスプレイするか、または1つもディスプレイしないようになる。結合力効果は、選別が内因性リガンド親和性に基づくように多価ファージに対して低減され、ファージミドベクターが使用され、これにより、DNA操作が簡略化される。例えば、Lowman et al.,Methods:A companion to Methods in Enzymology,3:205−216,1991を参照されたい。
【0145】
出発または参照ポリペプチドの「変異形」または「変異体」(例えば、参照抗体またはその可変ドメイン(複数可)/HVR(複数可))とは、(1)出発または参照ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、かつ(2)天然変異誘発または人工(人造)変異誘発のいずれかにより出発または参照ポリペプチドから得られたポリペプチドである。かかる変異形は、例えば、本明細書で「アミノ酸残基改変」と称される、目的とするポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換を含む。したがって、変異形HVRとは、出発または参照ポリペプチド配列(ソース抗体または抗原結合断片のもの等)に対して変異形配列を含むHVRを指す。アミノ酸残基改変とは、この文脈では、出発または参照ポリペプチド配列(参照抗体またはその断片のもの等)内の対応する位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終変異形または変異体構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の機能的特性を有することを条件とする。グリコシル化部位の数または位置の変化等のアミノ酸変化により、ポリペプチドの翻訳後プロセスも改変され得る。
【0146】
「野生型(WT)」もしくは「参照」配列または「野生型」もしくは「参照」タンパク質/ポリペプチド、例えば、参照抗体のHVRまたは可変ドメインの配列は、変異形ポリペプチドが変異の導入により得られる参照配列であり得る。一般に、所与のタンパク質の「野生型」配列は、自然界で最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然界で最も一般的に見られるその遺伝子の配列である。変異は、天然プロセスまたは人為的手段のいずれかにより「野生型」遺伝子(ひいては、それがコードするタンパク質)に導入され得る。かかるプロセスの産物は、最初の「野生型」タンパク質または遺伝子の「変異形」または「変異体」形態である。
【0147】
「参照抗体」とは、本明細書で使用されるとき、抗体またはその断片を指し、その抗原結合配列が鋳型配列の役割を果たし、そこで本明細書に記載の基準に従う多様化が行われる。抗原結合配列は、一般に、抗体可変領域、好ましくは少なくとも1つのHVRを含み、好ましくはフレームワーク領域を含む。
【0148】
「濃縮された」とは、本明細書で使用されるとき、実体(例えば、アミノ酸残基改変)が、対応する参照ライブラリ(例えば、選別されていないライブラリ、または異なる抗原もしくは非関連抗原について選別されたライブラリ)と比較して、選別されたライブラリ内により高い頻度で存在することを意味する。対照的に、「枯渇した」とは、実体(例えば、アミノ酸残基改変)が、対応する参照ライブラリ(例えば、選別されていないライブラリ、または異なる抗原もしくは非関連抗原について選別されたライブラリ)と比較して、選別されたライブラリ内でより低い頻度で存在することを意味する。「中立」という用語は、アミノ酸残基変異形を特定する方法に関して使用されるとき、実体が濃縮も枯渇もしていないことを意味し、言い換えれば、それが、対応する参照ライブラリ(例えば、選別されていないライブラリ、または異なる抗原もしくは非関連抗原について選別されたライブラリ)と比較して、選別されたライブラリ内でおよそ同じ頻度で存在することを意味する。
【0149】
「等電点(pI)」とは、分子(例えば、抗体等のタンパク質)が正味電荷を持たないpHを意味し、当該技術分野で「pH(I)」または「IEP」とも称される。
【0150】
II.組成物及び方法
本発明は、HtrA1に結合する新規の抗体、ならびにそれを作製及び使用する方法(例えば、治療的使用及び診断的使用のため)を提供する。本発明の抗体は、例えば、様々な障害、例えば、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害、例えば、加齢性黄斑変性症(例えば、地図状萎縮)の診断または治療に有用である。
【0151】
A.例示の抗HtrA1抗体
一態様では、本発明は、HtrA1に特異的に結合する抗体に部分的に基づく。本発明の抗体は、例えば、障害、例えば、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害、例えば、加齢性黄斑変性症(例えば、地図状萎縮)の治療または診断に有用である。
【0152】
本発明は、HtrA1に特異的に結合する単離された抗体を提供する。いくつかの例では、HtrA1は、ヒトHtrA1(huHtrA1)である。他の例では、HtrA1は、マウスHtrA1(muHtrA1)である。ある特定の例では、本発明の抗HtrA1抗体は、100nM以下(例えば、100nM以下、10nM以下、5nM以下、2.5nM以下、1nM以下、100pM以下、10pM以下、1pM以下、または0.1pM以下)のKDでhuHtrA1に特異的に結合する。例えば、いくつかの例では、本発明の抗HtrA1抗体は、1nM以下(例えば、1nM以下、900pM以下、800pM以下、700pM以下、600pM以下、550pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、150pM以下、125pM以下、100pM以下、75pM以下、50pM以下、25pM以下、または1pM以下)のKDでhuHtrA1に特異的に結合する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約40pM〜約700pM(例えば、約40pM〜約700pM、約40pM〜約600pM、約40pM〜約550pM、約40pM〜約500pM、約40pM〜約400pM、約40pM〜約300pM、約40pM〜約250pM、約50pM〜約200pM、約50pM〜約175pM、約50pM〜約150pM、約50pM〜約125pM、約70pM〜約125pM、または約50pM〜約125pM)のKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約110pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約60pMのKDでhuHtrA1に結合する。前述のKD値のうちのいずれかは、例えば、本明細書に記載されるように、例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定される、huHtrA1のプロテアーゼドメイン(PD)(huHtrA1−PD)に対する本発明の抗HtrA1抗体の結合親和性(例えば、本発明の抗HtrA1抗体のFab)を表し得る。
【0153】
いくつかの例では、本発明の抗HtrA1抗体は、HtrA1の活性を阻害することができる。いくつかの例では、本抗体は、10nM以下(例えば、10nM以下、5nM以下、2nM以下、1.5nM以下、1nM以下、900pM以下、800pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、100pM以下、50pM以下、または1pM以下)の50%阻害濃度(IC50)でhuHtrA1−PDのプロテアーゼドメインの活性を阻害する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約0.25nM〜約1nM(例えば、約0.25nM〜約1nM、約0.25nM〜約0.9nM、約0.25nM〜約0.8nM、約0.25nM〜約0.7nM、約0.25nM〜約0.6nM、約0.25nM〜約0.5nM、または約0.25nM〜約0.4nM)のIC50でhuHtrA1−PDの活性を阻害する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約0.3nMのIC50でhuHtrA1−PDの活性を阻害する。前述の例のうちのいずれにおいても、阻害活性は、インビトロでのFRETに基づく遮断アッセイ測定値であり得る。いくつかの例では、インビトロでのFRETに基づく遮断アッセイは、H2−Optプローブの切断(例えば、(Mca)IRRVSYSF(Dnp)KK(配列番号152)を含む。前述の例のうちのいずれにおいても、IC50値は、huHtrA1−PD活性を阻害する二価形式(例えば、IgG形式)での抗HtrA1の能力に基づき得る。
【0154】
本発明は、HtrA1エピトープに特異的に結合する単離された抗体も包含し、HtrA1エピトープは、Arg190、Leu192、Pro193、Phe194、及びArg197からなる群から選択されるHtrA1タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を含み、アミノ酸番号付けは、ヒトHtrA1前駆体タンパク質の番号付けを参照する。一実施形態では、ヒトHtrA1前駆体タンパク質は、配列番号121の配列を有する。一実施形態では、HtrA1エピトープは、Leu192、Pro193、及びArg197からなる群から選択されるHtrA1タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を含む。一実施形態では、HtrA1エピトープは、Leu192、Pro193、及びArg197からなる群から選択されるHtrA1タンパク質の少なくとも2つのアミノ酸を含む。特定の一実施形態では、HtrA1エピトープは、HtrA1アミノ酸Leu192、Pro193、及びArg197を含む。別の実施形態では、HtrA1エピトープは、HtrA1アミノ酸Arg190、Leu192、Pro193、及びArg197を含む。さらなる実施形態では、HtrA1エピトープは、HtrA1アミノ酸Arg190、Leu192、Pro193、Phe194、及びArg197を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、抗HtrA1抗体は、HtrA1に結合する場合、アミノ酸Arg190、Leu192、Pro193、Phe194、及びArg197のうちの1つ以上から4オングストローム以下に位置付けられる。いくつかの実施形態では、抗体と1つ以上のアミノ酸との間の距離は、例えば、実施例に記載の結晶学方法を使用して、結晶学により決定される。
【0156】
いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)DSEX
1H(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1(式中、X
1がMetまたはLeuである)、(b)GVDPETX
2GAAYNQKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
2がGluまたはAspである)、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVX
3FIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
3がGluまたはAsnである)、(e)ATSX
4LAS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR−L2(式中、X
4が、Asn、His、またはGluである)、及び(f)QQWX
5SX
6PWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
5がSerまたはTyrであり、X
6がAlaまたはAsnである)から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つの超可変領域(HVR)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号1〜6のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。
【0157】
例えば、抗HtrA1抗体は、(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号3または7〜11のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。
【0158】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の重鎖可変ドメイン(VH)フレームワーク領域(FR):(a)EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYX
1FX
2(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR−H1(式中、X
1がLysまたはThrであり、X
2がThr、Lys、またはArgである)、(b)WVRQAPGQGLEWIG(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RATITRDTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCTR(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0159】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の軽鎖可変ドメイン(VL)FR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKPLIS(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0160】
例えば、いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の6つのHVR:(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYKFT(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQAPGQGLEWIG(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RATITRDTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCTR(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H4を含む。さらなる例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKPLIS(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、APEG.LC3.HC3である。
【0161】
別の例では、いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の6つのHVR:(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETDGAAYNQKFKG(配列番号123)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVNFIH(配列番号124)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号125)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)QVQLQQSGAELVRPGASVTLSCKASGYTFT(配列番号25)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVKQTPVHGLEWIG(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)KATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCTR(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTSVTVSS(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−H4を含む。さらなる例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)NIVVTQSPASLAVSLGQRATISC(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYYC(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGGGTKLEIK(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−L4を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号23のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号24のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、15H6(m15H6とも称される)である。
【0162】
別の例では、抗HtrA1抗体は、(a)SYIMS(配列番号39)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)YISNGGGTTYYSDTIKG(配列番号40)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)QNFRSDGSSMDY(配列番号41)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASESVDSYGKSFMH(配列番号42)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)LASKLES(配列番号43)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQNNEDPYT(配列番号44)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号39〜44のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。
【0163】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の重鎖可変ドメインFR:(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号47)またはEVKLVESGGGLVEPGGSLKLACVASGFTFS(配列番号57)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号48)またはWVRQTPEKRLEWVA(配列番号58)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号49)またはRFTISRDNAKNTLYLQMSTLKSEDTAIYFCAR(配列番号59)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号50)またはWGQGTAVTVSS(配列番号60)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0164】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号51)またはNIVVTQSPASLAVSLGQRATISC(配列番号61)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号52)またはWYQQKPGQPPKLLIY(配列番号62)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC(配列番号53)またはGVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYYC(配列番号63)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号54)またはFGGGTKLEIK(配列番号64)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0165】
例えば、いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の6つのHVR:SYIMS(配列番号39)、(b)YISNGGGTTYYSDTIKG(配列番号40)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)QNFRSDGSSMDY(配列番号41)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASESVDSYGKSFMH(配列番号42)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)LASKLES(配列番号43)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQNNEDPYT(配列番号44)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号47)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号48)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号49)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号50)のアミノ酸配列を含むFR−H4を含む。さらなる例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIVMTQSPDSLAVSLGERATINC(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号52)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYC(配列番号53)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号54)のアミノ酸配列を含むFR−L4を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号45のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、h19B12.v1である。
【0166】
別の例では、いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の6つのHVR:SYIMS(配列番号39)、(b)YISNGGGTTYYSDTIKG(配列番号40)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)QNFRSDGSSMDY(配列番号41)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASESVDSYGKSFMH(配列番号42)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)LASKLES(配列番号43)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQNNEDPYT(配列番号44)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EVKLVESGGGLVEPGGSLKLACVASGFTFS(配列番号57)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQTPEKRLEWVA(配列番号58)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISRDNAKNTLYLQMSTLKSEDTAIYFCAR(配列番号59)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTAVTVSS(配列番号60)のアミノ酸配列を含むFR−H4を含む。さらなる例では、抗HtrA1抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)NIVVTQSPASLAVSLGQRATISC(配列番号61)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号62)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYYC(配列番号63)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGGGTKLEIK(配列番号64)のアミノ酸配列を含むFR−L4を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号55のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号56のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、19B12(m19B12とも称される)である。
【0167】
別の例では、本発明の抗HtrA1抗体は、抗体20E2軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれ、配列番号66及び65)のHVRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ(ここで、(i)HVR−L1配列が、配列番号66のKabatアミノ酸残基24〜34を含み、HVR−L2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜56を含み、HVR−L3配列が、Kabatアミノ酸残基89〜97を含み、(ii)HVR−H1配列が、配列番号65のKabatアミノ酸残基31〜35を含み、HVR−H2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜65を含み、HVR−H3配列が、Kabatアミノ酸残基95〜102を含む)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに抗体20E2の上述のHVRのうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号65または配列番号65の配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号66または配列番号66の配列と少なくとも約90%配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0168】
別の例では、本発明の抗HtrA1抗体は、抗体3A5軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれ、配列番号68及び67)のHVRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ(ここで、(i)HVR−L1配列が、配列番号68のKabatアミノ酸残基24〜34を含み、HVR−L2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜56を含み、HVR−L3配列が、Kabatアミノ酸残基89〜97を含み、(ii)HVR−H1配列が、配列番号67のKabatアミノ酸残基31〜35を含み、HVR−H2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜65を含み、及びHVR−H3配列が、Kabatアミノ酸残基95〜102を含む)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに抗体3A5の上述のHVRのうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号67または配列番号67の配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号68または配列番号68の配列と少なくとも約90%配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0169】
別の例では、本発明の抗HtrA1抗体は、抗体12A5軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれ、配列番号70及び69)のHVRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ(ここで、(i)HVR−L1配列が、配列番号70のKabatアミノ酸残基24〜34を含み、HVR−L2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜56を含み、HVR−L3配列は、Kabatアミノ酸残基89〜97を含み、(ii)HVR−H1配列が、配列番号69のKabatアミノ酸残基31〜35を含み、HVR−H2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜65を含み、HVR−H3配列が、Kabatアミノ酸残基95〜102を含む)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに抗体12A5の上述のHVRのうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号69または配列番号69の配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号70または配列番号70の配列と少なくとも約90%配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0170】
いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号21、23、76、77、78、93〜101、106、もしくは107のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号22、24、72〜74、81〜92、105、もしくは108のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの例では、本抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号72のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号74のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号84のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号100のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号101のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号86のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号96のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号82のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号88のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号81のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号89のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号73のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号90のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号83のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号84のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号85のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号84のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号95のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号84のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号84のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号104のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号105のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号105のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号108のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号108のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0171】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYX
1FX
2(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR−H1(式中、X
1がLysまたはThrであり、X
2がThr、Lys、またはArgである)、(b)WVRQAPGQGLEWIG(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RATITRDTSTSTAYLELSSLRSEDTAVYYCTR(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。他の例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の重鎖可変ドメインFR:(a)QVQLQQSGAELVRPGASVTLSCKASGYTFT(配列番号25)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVKQTPVHGLEWIG(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)KATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCTR(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTSVTVSS(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0172】
いくつかの例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKPLIS(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。他の例では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)NIVVTQSPASLAVSLGQRATISC(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGQPPKLLIY(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYYC(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGGGTKLEIK(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0173】
いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、(a)配列番号45、55、65、67、もしくは69のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号46、56、66、68、もしくは70のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの例では、本抗体は、配列番号45のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号46のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号55のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号56のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号65のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号66のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号68のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの例では、本抗体は、配列番号69のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号70のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
【0174】
いくつかの例では、本発明は、HtrA1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、本抗体は、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、本明細書でAPEG.LC3.HC3と称される抗体等である。
【0175】
いくつかの例では、本発明は、HtrA1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、本抗体は、(a)配列番号45のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、本明細書でh19B6.v1と称される抗体等である。
【0176】
ある特定の例では、本発明は、前述の抗体のうちのいずれか1つと同じエピトープに結合する抗HtrA1抗体を提供する。いくつかの例では、本発明は、HtrA1への結合について前述の抗体のうちのいずれか1つと競合する抗HtrA1抗体を提供する。
【0177】
ある特定の実施形態では、前述の抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、以下の特性:(i)1つの可変ドメイン:1つのHtrA1三量体サブユニットの比率でHtrA1に結合する(例えば、Fabが3つのFab:1つのHtrA1三量体の比率でHtrA1三量体に結合し、IgGが3つのIgG:2つのHtrA1三量体の比率でHtrA1三量体に結合する)、(ii)2つの可変ドメインを含む抗体の場合、米国特許出願公開第2013/0129743号の
図9に示されるものと同様の「ケージ」の形成をもたらす様式でHtrA1に結合する、(iii)HtrA1の三量体形成を阻止しない、(iv)マウスHtrA1と交差反応する、(v)HtrA2、HtrA3、及び/またはHtrA4と交差反応しない、(vi)抗HtrA1抗体YW505.94.28aと競合的にHtrA1に結合する(例えば、WO2013/055998を参照のこと)、(vii)HtrA1とal−アンチトリプシン(AlAT)との間の複合体形成を阻害するという特性のうちの1つ以上を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、前述の抗体のうちのいずれかと同じエピトープに結合する抗体を提供する。
【0178】
さらなる一態様では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗HtrA1抗体は、以下のC節「抗体特性及び特徴」の1〜8節に記載の特徴のうちのいずれかを単独または組み合わせで組み込み得る。
【0179】
B.例示の抗D因子抗体
本発明は、例えば、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害(例えば、AMD(例えば、地図状萎縮))を含む障害の治療方法で、本発明の抗HtrA1抗体と使用され得る抗D因子抗体を提供する。本発明は、HtrA1及びD因子に特異的に結合する多重特異性(例えば、二重特異性)抗体(例えば、抗HtrA1/抗D因子抗体)も提供する。任意の好適な抗D因子抗体が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。非限定的な例として、本明細書に記載されており、及び/または米国特許第8,067,002号、同第8,268,310号、同第8,273,352号、及び/または米国特許出願第14/700,853号に記載されているいずれの抗D因子抗体も、本発明の組成物及び方法に使用され得る。
【0180】
例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、かつHB12476と指定されるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体166−32またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体は、(a)配列番号136もしくは配列番号136の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号137もしくは配列番号137の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体は、配列番号136のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号137のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗D因子モノクローナル抗体166−32等である。いくつかの例では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体166−32のヒト化誘導体である。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体166−32と同じエピトープに結合する。いくつかの例では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体166−32に由来する抗体断片である。いくつかの例では、モノクローナル抗体166−32に由来する抗体断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、または(Fab’)
2断片である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体166−32に由来する本抗体断片は、Fabである。
【0181】
いくつかの例では、モノクローナル抗体166−32のヒト化誘導体は、本発明の組成物及び方法で用いられ得る。例えば、例えば米国特許第8,067,002号に記載のモノクローナル抗体166−32のいずれのヒト化誘導体も、本発明の組成物及び方法に使用され得る。米国特許第8,067,002号に記載のモノクローナル抗体166−32の例示のヒト化誘導体は、例えば、ヒト化抗D因子抗体クローン番号111、番号56、番号250、及び番号416を含む。ヒト化抗D因子抗体クローン番号111、番号56、番号250、及び番号416のVH及びVLドメインのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第8,067,002号の
図5に示されている。いくつかの例では、抗D因子抗体は、抗D因子抗体クローン番号111、番号56、番号250、もしくは番号416またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0182】
いくつかの例では、修飾または変異形ヒト化抗D因子抗体、及びその断片が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。例えば、例えば米国特許第8,273,352号に記載のヒト化抗D因子抗体クローン番号111の任意の修飾または変異形バージョン、例えば、抗体クローン238または238−1が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。いくつかの例では、抗D因子抗体は、抗D因子抗体クローン238もしくは238−1またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0183】
いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYAX
1DFKG(配列番号110)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
1がAspまたはGluである)、(c)EGGVX
1N(配列番号111)のアミノ酸配列を含むHVR−H3(式中、X
1がAsnまたはSerである)、(d)ITSTX
1IX
2X
3DMN(配列番号112)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
1がAspまたはSerであり、X
2がAspまたはGluであり、X
3がAspまたはSerである)、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSX
1SLPYT(配列番号114)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
1がAspまたはGluである)から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号109〜114のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、以下の6つのHVR:(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYAX
1DFKG(配列番号110)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
1がAspまたはGluである)、(c)EGGVX
1N(配列番号111)のアミノ酸配列を含むHVR−H3(式中、X
1がAsnまたはSerである)、(d)ITSTX
1IX
2X
3DMN(配列番号112)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
1がAspまたはSerであり、X
2がAspまたはGluであり、X
3がAspまたはSerである)、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSX
1SLPYT(配列番号114)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
1がAspまたはGluである)を含む。
【0184】
例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYADDFKG(配列番号115)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)EGGVNN(配列番号116)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)ITSTDIDDDMN(配列番号117)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSDSLPYT(配列番号118)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号109、113、または115〜118のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、以下の6つのHVR:(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYADDFKG(配列番号115)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)EGGVNN(配列番号116)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)ITSTDIDDDMN(配列番号117)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSDSLPYT(配列番号118)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。
【0185】
いくつかの例では、抗D因子抗体は、(a)配列番号119、131、もしくは132のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号120、133、134、もしくは135のうちのいずれか1つまたはその配列と少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVH及び(b)にあるようなVLを含む。例えば、いくつかの例では、本抗体は、配列番号119のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号120のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。他の例では、本抗体は、配列番号131のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号133のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。他の例では、本抗体は、配列番号131のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号134のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。他の例では、本抗体は、配列番号131のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号135のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。他の例では、本抗体は、配列番号132のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号135のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。
図30に示される抗D因子抗体のうちのいずれか、またはその変異形、またはその断片が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、配列番号119のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号120のアミノ酸配列を含むVLドメイン。いくつかの例では、抗D因子抗原結合抗体断片は、CAS登録番号1278466−20−8を有するランパリズマブである。
【0186】
別の例では、いくつかの例では、抗D因子抗体は、例えば、米国特許第8,268,310号に記載の20D12抗体であるか、またはそれに由来する。一例では、抗D因子抗体は、抗体20D12軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれ、配列番号128及び127)のHVRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ(ここで、(i)HVR−L1配列が、配列番号128のKabatアミノ酸残基24〜34を含み、HVR−L2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜56を含み、HVR−L3配列が、Kabatアミノ酸残基89〜97を含み、(ii)HVR−H1配列が、配列番号127のKabatアミノ酸残基31〜35を含み、HVR−H2配列が、Kabatアミノ酸残基50〜65を含み、HVR−H3配列が、Kabatアミノ酸残基95〜102を含む)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに抗体20D12の上述のHVRのうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む。
【0187】
いくつかの例では、抗D因子抗体は、(a)配列番号127もしくは配列番号127の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号128もしくは配列番号128の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体は、配列番号127のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号128のアミノ酸配列を含むVLドメインを含み、抗D因子抗体20D12等である。いくつかの例では、抗D因子抗体は、配列番号129のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号130のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの例では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体20D12のヒト化誘導体である。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体20D12またはそのヒト化誘導体と同じエピトープに結合する。いくつかの例では、抗D因子抗体は、モノクローナル抗体20D12またはそのヒト化誘導体に由来する抗体断片である。いくつかの例では、モノクローナル抗体20D12またはそのヒト化誘導体に由来する抗体断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、または(Fab’)
2断片である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体20D12またはそのヒト化誘導体に由来する抗体断片は、Fabである。
【0188】
いくつかの例では、前述の抗D因子抗体のうちのいずれかの断片(例えば、抗原結合断片)が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。本発明の抗体断片は、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、scFv、(scFv)
2、dAb、超可変領域(HVR)断片、線状抗体、一本鎖抗体分子、ミニボディ、ダイアボディ、または抗体断片から形成される多重特異性抗体であり得る。さらなる一実施形態では、網膜の実質的に全てに浸透することができる抗D因子抗体断片(例えば、抗原結合断片)が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。なおさらなる一実施形態では、網膜の全厚みを通じて浸透することができる抗D因子抗体断片(例えば、抗原結合断片)が、本発明の組成物及び方法に使用され得る。
【0189】
いくつかの例では、本発明は、ヒト化抗D因子抗体の使用を含み得、かかる抗体のFab断片は、単回硝子体内注射による哺乳類(例えば、ヒト)の眼の中への投与後少なくとも3、5、7、10、または12日間の半減期を有する。別の実施形態では、本発明は、ヒト化抗D因子抗体の使用を含み得、かかる抗体のFab断片は、単回硝子体内注射による哺乳類(例えば、ヒト)の眼の中への投与後少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、または115日間にわたって代替経路(AP)補体活性化を阻害する。別の実施形態では、本発明は、ヒト化抗D因子抗体の使用を含み得、代替経路(AP)補体活性化を阻害するかかる抗体のFab断片の濃度は、単回硝子体内注射による哺乳類(例えば、ヒト)の眼の中への投与後少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85日間にわたって網膜組織内で維持される。別の実施形態では、本発明は、ヒト化抗D因子抗体の使用を含み得、代替経路(AP)補体活性化を阻害するかかる抗体のFab断片の濃度は、単回硝子体内注射による哺乳類(例えば、ヒト)の眼の中への投与後少なくとも80、85、90、95、100、105、110、または115日間にわたって硝子体液中で維持される。一例では、本発明は、本抗D因子抗体の断片(例えば、抗原結合断片)の使用を含む。
【0190】
いくつかの例では、前述の抗D因子抗体のうちのいずれかは、その一価形態で、約20nM以下のKDでD因子に結合する(例えば、D因子に対するFab断片としての抗体のKD)。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、その一価形態で、約10nM以下のKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、その一価形態で、約5nM以下のKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、その一価形態で、約2nM以下のKDでD因子に結合する。例えば、いくつかの例では、本抗体は、その一価形態で、約0.5pM〜約2nM(例えば、約0.5pM、約1pM、約2pM、約3pM、約4pM、約5pM、約6pM、約7pM、約8pM、約9pM、約10pM、約15pM、約20pM、約25pM、約50pM、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM、約625pM、約650pM、約675pM、約700pM、約725pM、約750pM、約775pM、約800pM、約825pM、約850pM、約875pM、約900pM、約925pM、約950pM、約975pM、約1nM、約1.1nM、約1.2nM、約1.3nM、約1.4nM、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、または約2nM)のKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その一価形態で、約0.5pM〜約100pMのKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その一価形態で、約0.5pMのKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その一価形態で、約10pM未満のKDでD因子に結合する。
【0191】
いくつかの例では、前述の抗D因子抗体のうちのいずれかは、その二価形態で、約10nM以下のKDでD因子に結合する(例えば、D因子に対するIgGとしての抗体のKD)。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、その二価形態で、約5nM以下のKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、その二価形態で、約2nM以下のKDでD因子に結合する。例えば、いくつかの例では、本抗体は、その二価形態で、約0.5pM〜約2nM(例えば、約0.5pM、約1pM、約2pM、約3pM、約4pM、約5pM、約6pM、約7pM、約8pM、約9pM、約10pM、約15pM、約20pM、約25pM、約50pM、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM、約625pM、約650pM、約675pM、約700pM、約725pM、約750pM、約775pM、約800pM、約825pM、約850pM、約875pM、約900pM、約925pM、約950pM、約975pM、約1nM、約1.1nM、約1.2nM、約1.3nM、約1.4nM、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、または約2nM)のKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その二価形態で、約0.5pM〜約100pMのKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その二価形態で、約0.5pMのKDでD因子に結合する。いくつかの例では、本抗体は、その二価形態で、約10pM未満のKDでD因子に結合する。
【0192】
さらなる一態様では、上述の実施形態のうちのいずれかによる抗D因子抗体は、以下のC節「抗体特性及び特徴」の1〜8節に記載の特徴のうちのいずれかを単独または組み合わせで組み込み得る。
【0193】
C.抗体特性及び特徴
本明細書に記載の抗体(例えば、上述の抗HtrA1抗体及び抗D因子抗体、ならびに以下に記載の抗HtrA1/抗D因子抗体)、ならびに本明細書に記載の方法に使用するための抗体のうちのいずれかは、以下の1〜8節に記載の特徴のうちのいずれかを単独または組み合わせで有し得る。
【0194】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗HtrA1抗体、抗D因子抗体、または二重特異性抗HtrA1抗D因子抗体)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(KD)を有する。例えば、いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、約10nM以下のKDでヒトHtrA1(huHtrA1)に結合する。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、約5nM以下のKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本明細書に提供される抗体は、約2nM以下のKDでhuHtrA1に結合する。例えば、いくつかの例では、本抗体は、約25pM〜約2nM(例えば、約25pM、約50pM、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM、約625pM、約650pM、約675pM、約700pM、約725pM、約750pM、約775pM、約800pM、約825pM、約850pM、約875pM、約900pM、約925pM、約950pM、約975pM、約1nM、約1.1nM、約1.2nM、約1.3nM、約1.4nM、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、または約2nM)のKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約600pM(例えば、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM)のKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約500pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約400pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約300pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約200pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約150pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約125pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約75pM〜約100pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約80pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約60pMのKDでhuHtrA1に結合する。いくつかの例では、本抗体は、約40pMのKDでhuHtrA1に結合する。
【0195】
一実施形態では、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。一実施形態では、RIAは、目的とする抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて行われる。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、滴定系列の非標識抗原の存在下で、Fabを最小濃度の(
125I)標識抗原と平衡化し、その後、抗Fab抗体でコーティングされたプレートと結合している抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照のこと)。このアッセイの条件を確立するために、マイクロタイター(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2w/v%のウシ血清アルブミンで2〜5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[
125I]−抗原を、目的とするFabの連続希釈物と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599(1997)における抗VEGF抗体Fab−12の評定と一致する)。その後、目的とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。その後、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥した時点で、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間にわたって計数する。20%以下の最大結合をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0196】
別の実施形態によれば、KDは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用したアッセイは、約10応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で行われる。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)は、供給業者の指示に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈された後、5μL/分の流量で注入されて、およそ10応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質が得られる。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンが注入されて、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)が、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)−20)界面活性剤を有するPBS(PBST)中におよそ25μL/分の流量で注入される。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は、単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(KD)は、k
off/k
on比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上述の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が10
6M
−1s
−1を超える場合、オン速度は、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗−抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。KDは、以下の実施例に記載されるようにBIACORE(登録商標)SPRアッセイを使用して測定することもできる。
【0197】
2.抗体安定性
本発明は、例えば、参照抗HtrA1抗体と比較して、安定性が強化された抗体を提供する。抗体の安定性は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、分光法(例えば、質量分光法)、示差走査蛍光定量法(DSF)、円偏光二色性(CD)、内在性タンパク質蛍光、示差走査熱量測定、光散乱(例えば、動的光散乱(DLS)及び静的光散乱(SLS)、自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)を使用して決定され得る。抗HtrA1抗体は、例えば、参照抗HtrA1抗体と比較して、溶融温度(T
m)、凝集温度(T
agg)、または安定性の他の測定基準の高まりを有し得る。
【0198】
本発明は、参照抗HtrA1抗体と比較して、低減された脱アミド化を有する抗体を提供する。脱アミド化は、本明細書に記載されるように、及び/または当該技術分野で既知の方法を使用して低減または阻止され得る。本発明は、参照抗HtrA1抗体と比較して、例えば、低減された酸化(例えば、トリプトファン酸化(例えば、LC−W91位で))を有する抗体も提供する。酸化(例えば、トリプトファン酸化)は、本明細書に記載されるように、及び/または当該技術分野で既知の方法を使用して低減または阻止され得る。本発明は、参照抗HtrA1抗体と比較して、例えば、低減された異性化を有する抗体も提供する。異性化は、本明細書に記載されるように、及び/または当該技術分野で既知の方法を使用して低減または阻止され得る。
【0199】
3.抗体断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv、及びscFv断片、及び以下に記載の他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York),pp.269−315(1994)を参照されたく、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、かつ増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)
2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0200】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0201】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照のこと)。
【0202】
抗体断片は、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク分解、ならびに組換え宿主細胞による産生(例えば、E.coliまたはファージ)を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製され得る。
【0203】
いくつかの例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗HtrA1抗体)は、Fabである。いくつかの実施形態では、Fabは、重鎖定常領域のヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ)にトランケーションを含む。いくつかの実施形態では、Fab重鎖定常領域は、221位(EU番号付け)で終端する。いくつかの実施形態では、221位のアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基(D221)である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖定常領域は、配列番号156のアミノ酸配列またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号160の重鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号159の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号160の重鎖アミノ酸配列及び配列番号159の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fabは、IgG1 Fabである。
【0204】
いくつかの例では、Fabは、HtrA1に結合し、(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号3または7〜11のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。いくつかの例では、かかるFabは、重鎖定常領域のヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ)にトランケーションを含み得る。いくつかの実施形態では、Fab重鎖定常領域は、221位(EU番号付け)で終端する。いくつかの実施形態では、221位のアミノ酸残基は、Asp(D221)である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖定常領域は、配列番号156のアミノ酸配列またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、Fabは、以下の6つのHVR:(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含み、配列番号156のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域をさらに含む。
【0205】
いくつかの例では、Fabは、HtrA1に結合し、(a)配列番号21のアミノ酸配列またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号22のアミノ酸配列またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、及び(c)重鎖定常領域のヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ)でのトランケーションを含む。いくつかの実施形態では、Fab重鎖定常領域は、221位(EU番号付け)で終端する。いくつかの実施形態では、221位のアミノ酸残基は、Asp(D221)である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖定常領域は、配列番号156のアミノ酸配列またはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号160の重鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号159の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号160の重鎖アミノ酸配列及び配列番号159の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0206】
いくつかの例では、Fabは、HtrA1に結合し、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むVLドメイン、及び(c)配列番号156のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0207】
4.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変ドメイン)及びヒト定常ドメインを含む。さらなる一例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0208】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、かつFR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0209】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングについて記載)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェイシング」について記載)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャフリング」について記載)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)にさらに記載されている。
【0210】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)を参照のこと)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照のこと)、及びFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
5.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk et al.,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に記載されている。
【0212】
ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、または動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含む。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活性化される。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標)技術について記載)、米国特許第7,041,870号(K−M MOUSE(登録商標)技術について記載)、ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載)も参照されたい。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0213】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について説明されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体についても、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)に記載されている。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマについて記載)に記載の方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)についても、Vollmersand Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)に記載されている。
【0214】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法は、以下に記載されている。
【0215】
6.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性または活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が、当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.,in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)にさらに記載されている。
【0216】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中でランダムに組換えられ、その後、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングされる。ファージは、典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)によって説明されるように、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴うことなく、単一抗体源を広範囲の非自己抗原及び自己抗原に提供することができる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)によって説明されるように、幹細胞由来の再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、かつランダム配列を含むPCRプライマーを使用して、高度に可変のCDR3領域をコードし、再編成をインビトロで達成することによっても合成的に作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0217】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書でヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0218】
7.多重特異性抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体は、HtrA1の2つの異なるエピトープに結合し得る。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、HtrA1に対するものであり、他方は、任意の他の抗原(例えば、第2の生物学的分子、例えば、D因子)に対するものである。したがって、二重特異性抗体は、HtrA1及びD因子に対する結合特異性を有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。本明細書に記載の抗HtrA1抗体のうちのいずれかを使用して、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、例えば、抗HtrA1/抗D因子二重特異性抗体を操作することができる。本明細書に記載されており、及び/または当該技術分野で既知の抗D因子抗体のうちのいずれかを使用して、かかる抗HtrA1/抗D因子二重特異性抗体を操作することができる。
【0219】
例えば、いくつかの例では、(a)DSEX
1H(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1(式中、X
1がMetまたはLeuである)、(b)GVDPETX
1GAAYNQKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
1がGluまたはAspである)、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVX
3FIH(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
3がGluまたはAsnである)、(e)ATSX
4LAS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR−L2(式中、X
4が、Asn、His、またはGluである)、及び(f)QQWX
5SX
6PWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
5がSerまたはTyrであり、X
6がAlaまたはAsnである)から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号1〜6のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む、HtrA1に特異的に結合する第1の結合ドメインを含む二重特異性抗HtrA1抗体は、D因子に結合する第2の結合ドメインを有し得る。D因子に特異的に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYAX
1DFKG(配列番号110)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
1がAspまたはGluである)、(c)EGGVX
1N(配列番号111)のアミノ酸配列を含むHVR−H3(式中、X
1がAsnまたはSerである)、(d)ITSTX
1IX
2X
3DMN(配列番号112)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
1がAspまたはSerであり、X
2がAspまたはGluであり、X
3がAspまたはSerである)、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSX
1SLPYT(配列番号114)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
1がAspまたはGluである)から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号109〜114のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。
【0220】
例えば、いくつかの例では、(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号3または7〜11のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含む、HtrA1に特異的に結合する第1の結合ドメインを含む二重特異性抗HtrA1抗体は、D因子に結合する第2の結合ドメインを有し得る。D因子に特異的に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYADDFKG(配列番号115)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)EGGVNN(配列番号116)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)ITSTDIDDDMN(配列番号117)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSDSLPYT(配列番号118)のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVR、または上述のHVRのうちの1つ以上の組み合わせ、ならびに配列番号109、113、または115〜118のうちのいずれか1つと少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異形を含み得る。
【0221】
特定の実施形態では、本発明は、HtrA1及びD因子の両方に特異的に結合する二重特異性抗HtrA1抗体を提供し、本抗体は、以下の6つのHVR:(a)DSEMH(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GVDPETEGAAYNQKFKG(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)GYDYDYALDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASSSVEFIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)ATSNLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQWSSAPWT(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、HtrA1に特異的に結合する第1の結合ドメイン、ならびに以下の6つのHVR:(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYADDFKG(配列番号115)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)EGGVNN(配列番号116)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)ITSTDIDDDMN(配列番号117)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSDSLPYT(配列番号118)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、D因子に特異的に結合する第2の結合ドメインを含む。いくつかの例では、第2の結合ドメインは、抗D因子抗原結合抗体断片ランパリズマブの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む。
【0222】
いくつかの例では、二重特異性抗HtrA1抗体は、(a)配列番号21または配列番号21の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号22または配列番号22の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む、HtrA1に特異的に結合する第1の結合ドメインを含み(例えば、APEG.LC3.HC3)、D因子に結合する第2の結合ドメインを有し得る。D因子に特異的に結合する第2の結合ドメインは、例えば、(a)配列番号119または配列番号119の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号120または配列番号120の配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含み得る。いくつかの例では、D因子に特異的に結合する第2の結合ドメインは、(a)抗D因子抗原結合抗体断片ランパリズマブまたはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)抗D因子抗原結合抗体断片ランパリズマブまたはその配列と少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含み得る。
【0223】
多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照のこと)、ならびに「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)を参照のこと)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)を参照のこと)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと)、及び例えば、Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)に記載されるように三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0224】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
【0225】
本明細書における抗体または断片は、HtrA1、ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820を参照のこと)。
【0226】
8.抗体変異形
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異形(例えば、1つ以上のアミノ酸残基改変を含む抗体変異形)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、その抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を有することを条件とする。
【0227】
a)置換、挿入、及び欠失変異形
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換型変異誘発のための目的とする部位としては、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換が、表1の「好ましい置換」という見出しの下に示される。より実質的な変化が、表1の「例示の置換」という見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的とする抗体に導入され得、その産物が、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【0228】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0229】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの別のクラスとの交換を伴う。
【0230】
一種の置換型変異形は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基及び/またはFR残基の置換を伴う。一般に、さらなる研究のために選択される結果として得られた変異形(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、安定性の増加、発現の増加、pIの改変、及び/または免疫原性の低減)における修飾(例えば、改善)を有し、及び/または親抗体の実質的に保持されたある特定の生物学的特性を有する。例示の置換型変異形は、例えば、本明細書に記載の技法等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。手短に言えば、1つ以上のHVR残基が変異され、変異形抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0231】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVRで行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照のこと)、及び/または抗原と接触する残基で行われ得、結果として得られた変異形VHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリの構築及びそれから再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.,in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリが作製される。その後、ライブラリがスクリーニングされて、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6個の残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。HVR−H3及びHVR−L3が特に標的とされることが多い。
【0232】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVRで行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であり得る。上述の変異形VH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つより多くのアミノ酸置換を含まないかのいずれかである。
【0233】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のFR内で生じ得る。かかる改変は、例えば、抗体親和性及び/または安定性(例えば、溶融温度の上昇によって評定される)を改善し得る。
【0234】
修飾するためのフレームワーク領域残基またはHVR領域残基の例としては、可能な脱アミド化部位(すなわち、アスパラギン(NもしくはAsn))、酸化部位(すなわち、メチオニン(MもしくはMet)またはトリプトファン(WもしくはTrp))、またはピログルタミン酸変換部位(すなわち、グルタミン(QもしくはGln))が挙げられ、かかる部位での修飾により、それぞれ、脱アミド化及び/または酸化及び/またはピログルタミン酸変換が阻止または低減される。
【0235】
脱アミド化変異形の形成を阻止または低減するために、アスパラギン(NもしくはAsn)が、アラニン(AもしくはAla)、グルタミン(QもしくはGln)、またはセリン(SもしくはSer)に変異され得る。酸化変異形の形成を阻止または低減するために、メチオニン(Met)またはトリプトファン(WもしくはTrp)が、ロイシン(L)またはイソロイシン(I)に変異され得る。ピログルタミン酸変異形の形成を阻止または低減するために、グルタミン(QもしくはGln)が、グルタミン酸(EまたはGlu)に変異され得る。例えば、Amphlett et al.,Pharm.Biotechnol.,9:1−140,1996を参照されたい。あるいは、または加えて、フレームワーク領域残基の1つ以上の改変(例えば、置換)は、親抗体のFc領域においてであり得る。
【0236】
変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、抗体と抗原との相互作用が影響を及ぼされたかを決定する。さらなる置換が、最初の置換に機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が、置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異形がスクリーニングされて、それらが所望の特性を有するかを決定することができる。
【0237】
アミノ酸配列挿入としては、長さが1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異形としては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのため)またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0238】
b)グリコシル化変異形
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0239】
本抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳類細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合により一般に結合した分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.,TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」内のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体変異形を作製するために行われ得る。
【0240】
一実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異形が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載のMALDI−TOF質量分析により測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対して、Asn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体内のわずかな配列変異により、297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位と300位との間にも位置し得る。かかるフコシル化変異形は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する公報の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US 2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.,J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004)、Yamane−Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986)、米国特許出願第2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adams et al.,特に実施例11))、ならびにノックアウト細胞株、例えば、アルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane−Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006)、及びWO2003/085107を参照のこと)が挙げられる。
【0241】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される二分されたオリゴ糖を有する抗体変異形がさらに提供される。かかる抗体変異形は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異形の例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異形も提供される。かかる抗体変異形は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異形は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0242】
c)Fc領域変異形
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異形が生成され得る。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸残基改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。ある特定の実施形態では、本発明は、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要または有害である用途に望ましい候補となる全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗体変異形を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(それ故に、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、Fc(RIIIのみを発現する一方で、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464貢の表3に要約されている。
【0243】
目的とする分子のADCC活性を評定するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059−7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985)、米国特許第5,821,337号、ならびにBruggemann et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.,Mountain View,CA、及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性活性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデル、例えば、Clynes et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示される動物モデルにおいて評定され得る。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg et al.,Blood 103:2738−2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照のこと)。
【0244】
低下したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体としては、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
【0245】
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異形について記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照のこと)。
【0246】
ある特定の実施形態では、抗体変異形は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されるように、C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の改変(すなわち、改善または低減のいずれか)をもたらす改変がFc領域内で行われる。
【0248】
増加した半減期、及び母体IgGの胎児への移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))が、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を内部に有するFc領域を含む。かかるFc変異形としては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上の置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域変異形の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738−40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0249】
d)システイン操作された抗体変異形
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の到達可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の到達可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー−薬物部分にコンジュゲートして、本明細書にさらに記載されるように、イムノコンジュゲートを作製することができる。ある特定の実施形態では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちのいずれか1つ以上が、システインで置換され得る。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0250】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つより多くのポリマーが結合している場合、それらは同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/またはタイプは、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下にてある療法で使用されるか等を含むが、これらに限定されない考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
【0251】
抗体−ポリマーコンジュゲートは、抗体をポリマーで誘導体化するのに好適な任意の技法を使用して作製され得る。本発明が、抗体または抗体断片とポリマーとの間のいずれかの特定のタイプの結合を利用するコンジュゲートに限定されないことが理解される。
【0252】
一態様では、本発明のコンジュゲートは、ポリマーが親抗体の特異的部位(複数可)に共有結合している種、すなわち、ポリマー結合が親抗体または抗体断片における特定の領域または特定のアミノ酸残基(複数可)に標的とされる種を含む。ポリマーの部位特異的コンジュゲーションは、最も一般的には、親抗体または抗体断片におけるシステイン残基への結合によって達成される。かかる実施形態では、カップリング化学は、例えば、親抗体におけるジスルフィド架橋にはないシステイン残基の遊離スルフヒドリル基を利用し得る。ポリマーは、親抗体の遊離スルフヒドリル基またはチオール基(複数可)と特異的に反応することができる任意の官能基、例えば、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフラート、テシラート(tesylate)、アジリジン、エキシラン、及び5−ピリジル官能基で活性化され得る。ポリマーは、米国特許第4,179,337号及び同第7,122,636号、ならびにJevsevar et al.,Biotech.J.5:113−128,2010に記載のプロトコル及びシステム等の選択されるカップリングシステムの化学に好適な任意のプロトコルを使用して親抗体にカップリングされ得る。
【0253】
一実施形態では、親抗体に天然に存在する1つ以上のシステイン残基(複数可)は、ポリマーコンジュゲーションのための結合部位(複数可)として使用される。別の実施形態では、1つ以上のシステイン残基(複数可)は、特異的結合部位(複数可)をポリマーに提供する目的のために、親抗体における選択された部位(複数可)に操作される。
【0254】
一態様では、本発明は、抗体断片−ポリマーコンジュゲートを包含し、抗体断片は、Fabであり、ポリマーは、軽鎖と重鎖を連結する鎖間ジスルフィド結合を通常形成するFab断片の軽鎖または重鎖内の1つ以上のシステイン残基に結合する。
【0255】
別の態様では、本発明は、抗体断片−ポリマーコンジュゲートを包含し、抗体断片は、Fab’であり、ポリマー結合は、Fab’断片のヒンジ領域に標的とされる。一実施形態では、抗体断片のヒンジ領域に天然に存在する1つ以上のシステイン残基(複数可)は、ポリマーに結合するために使用される。別の実施形態では、1つ以上のシステイン残基は、特異的結合部位(複数可)をポリマーに提供する目的のために、Fab’断片のヒンジ領域に操作される。一実施形態では、本発明のFab断片(例えば、抗HtrA1 Fab断片、抗D因子Fab断片、または抗HtrA1/抗D因子Fab断片)は、1つの結合部位をポリマーコンジュゲーションに提供する目的のために、C’末端に1つのシステインを付加することによって修飾される。別の実施形態では、本発明のFab断片は、2つの結合部位をポリマーコンジュゲーションに提供する目的のために、C’末端に4つの追加の残基、Cys−Pro−Pro−Cys(配列番号122)を付加することによって修飾される。
【0256】
1つの一般的に使用される抗体コンジュゲーションは、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーが抗体の定常領域に共有結合するPEG化である。米国特許第4,179,337号及び同第7,122,636号を参照されたい。異なるサイズ(例えば、約500D〜約300,000D)及び形状(例えば、直鎖状または分岐状)のPEGポリマーが知られており、当該分野で広く使用されている。本発明に有用なポリマーは、商業的に入手され得る(例えば、Nippon Oil and Fats、Nektar Therapeutics、Creative PEGWorks)か、または従来の化学手技を使用して市販の出発材料から調製され得る。PEG化は、抗体薬物の物理的及び化学的特性を変化させ、安定性の改善、免疫原性の低減、循環寿命の延長、ならびに滞留時間の増加等の薬物動態挙動の改善をもたらし得る。別の実施形態では、本明細書に記載の任意の抗体(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)が、ヒアルロン酸(HA)コンジュゲートされ得る。
【0257】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600−11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞には害を及ぼさないが、非タンパク質性部分を抗体−非タンパク質性部分の近位の細胞が死滅する温度に加熱する波長を含むが、これに限定されない。
【0258】
f)等電点変異形
本発明は、改変された等電点を有する抗体変異形を提供する。例えば、本発明は、参照抗HtrA1抗体と比較して、例えば、低減された等電点(pI)を有する抗体変異形を提供する。いくつかの例では、表面電荷は、生理学的pHで減少する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約8以下(例えば、約8、約7、約6、約5、または約4)のpIを有する。いくつかの例では、本抗体は、約4〜約8(例えば、約4、約5、約6、約7、または約8)のpIを有する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約5〜約7(例えば、約5、約6、または約7)のpIを有する。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、約5〜約6(例えば、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、または約6)のpIを有する。
【0259】
本発明の抗体は、例えば、所与の位置の野生型アミノ酸残基を、より低いpIを有するアミノ酸で置換することによって、減少したpIを有するように操作され得る。アミノ酸のpIは、当該技術分野で既知のアミン(−NH
2)、カルボン酸(−COOH)、及びアミノ酸の側鎖のpKa値に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態では、表面曝露アミノ酸残基は、抗体のpIを減少させるために置換され得る。一実施形態では、表面曝露アミノ酸残基は、グルタミン酸(E)で置換され得る。一実施形態では、表面曝露アミノ酸残基は、アスパラギン酸(D)で置換され得る。
【0260】
D.組換え方法及び組成物
本明細書に記載の抗体のうちのいずれか(例えば、抗HtrA1抗体)は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態では、本明細書に記載の抗HtrA1抗体をコードする単離された核酸が提供される。かかる核酸は、本抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、本抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。さらなる一実施形態では、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる一実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。かかる一実施形態では、宿主細胞は、(1)本抗体のVLを含むアミノ酸配列及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)本抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それで形質転換されている)。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗HtrA1抗体を作製する方法が提供され、本方法は、本抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、上に提供されるように、本抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、本抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0261】
抗HtrA1抗体の組換え産生について、例えば、上述の抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞でのさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクターに挿入される。かかる核酸は、従来の手技を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離及び配列決定され得る。
【0262】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌中で産生され得る。細菌中での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254(E.coli中での抗体断片の発現について記載)も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0263】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす菌及び酵母菌株を含む。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210−215(2006)を参照されたい。
【0264】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞とともに使用され得る多数のバキュロウイルス菌株が特定されている。
【0265】
植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載)を参照されたい。
【0266】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合された哺乳類細胞株が有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例には、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7)、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載の293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982)に記載のTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞がある。他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、DHFR
−CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、及び骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0、及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268(2003)を参照されたい。
【0267】
E.アッセイ
本明細書に提供される抗HtrA1抗体(例えば、抗HtrA1抗体及び抗HtrA1/抗D因子抗体)は、当該技術分野で既知の様々なアッセイによって特定され得るか、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性についてスクリーニングされ得るか、または特徴付けられ得る。
【0268】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIACORE(登録商標))等の既知の方法によって、その抗原結合活性について試験される。
【0269】
一態様では、抗原結合活性(例えば、KDによって示される)は、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用したアッセイは、約10応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で行われる。一実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)は、供給業者の指示に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈された後、5μL/分の流量で注入されて、およそ10応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質が得られる。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンが注入されて、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)が、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)−20)界面活性剤を有するPBS(PBST)中におよそ25μL/分の流量で注入される。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は、単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(KD)は、k
off/k
on比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上述の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が10
6M
−1s
−1を超える場合、オン速度は、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗−抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。KDは、以下の実施例に記載されるようにBIACORE(登録商標)SPRアッセイを使用して測定することもできる。
【0270】
別の態様では、競合アッセイを使用して、HtrA1への結合について本明細書に記載の抗体と競合する抗体を特定することができる。ある特定の実施形態では、かかる競合抗体は、本明細書に記載の抗体によって結合される、同じエピトープ(例えば、直線状または立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示の方法が、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」,Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。
【0271】
例示の競合アッセイでは、固定化HtrA1が、HtrA1に結合する第1の標識抗体と、HtrA1への結合について第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化HtrA1が、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のHtrA1への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰な結合していない抗体が除去され、固定化HtrA1に関連する標識の量が測定される。固定化HtrA1に関連する標識の量が対照試料と比較して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がHtrA1への結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0272】
2.活性アッセイ
一態様では、生物学的活性を有するその抗HtrA1抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物学的活性は、例えば、HtrA1の1つ以上の生物学的活性を阻害、遮断、拮抗、抑制、妨害、調節、及び/または低減することを含み得る。かかる生物学的活性をインビボ及び/またはインビトロで有する抗体も提供される。
【0273】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、かかる生物学的活性について試験される。ある特定の実施形態では、抗HtrA1抗体は、HtrA1に結合し、例えば、以下の実施例に記載のH2−Opt基質、α−カゼイン、β−カゼイン、もしくはBODIPY(登録商標)FLカゼイン基質、または任意の他の好適なHtrA1基質を含む1つ以上のHtrA1基質に対するそのセリンプロテアーゼ活性を低減または阻害する。ある特定の実施形態では、抗HtrA1抗体は、50nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、3nM、2.5nM、2nM、1nM、800pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM未満、またはそれ未満のIC
50で、1つ以上のHtrA1基質に対するHtrA1セリンプロテアーゼ活性を阻害する。ある特定の実施形態では、抗HtrA1抗体は、U.S.2013/0129743の実施例10に記載の一定露光マウスモデル等の眼疾患モデルにおいて、光受容細胞を分解から保護するか、外顆粒層の厚さを保護するか、または網膜電図機能活性を保護する。
【0274】
抗D因子抗体、またはその変異形もしくは断片(例えば、抗原結合断片)が、D因子に結合し、かつ生物学的効果、例えば、代替経路溶血の阻害を発揮することができるかを決定するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,273,352号の実施例2に記載のものを含む、ウサギ赤血球(RBC)を使用した溶血阻害アッセイが使用され得る。かかる溶血阻害は、標準的なアッセイ(Kostavasili et al.,J.Immunology 158:1763−72,1997、Wiesmann et al.,Nature 444:159−60,2006)を使用して決定され得る。かかるアッセイにおける補体活性化は、血清または血漿で開始され得る。血清または血漿中のD因子の適切な濃度(Pascual et al.,Kidney International 34:529−536,1998;Complement Facts Book,Bernard J.Morley and Mark J.Walport,editors,Academic Press(2000)、Barnum et al.,J.Immunol.Methods,67:303−309,1984)は、Pascual et al.(上記参照)及びBarnum et al.(上記参照)、ならびに米国特許第8,273,352号の実施例4等の参考文献に記載されているものを含む、当該技術分野で既知の方法に従って日常的に決定され得る。本明細書に記載の抗D因子抗体は、一般に、D因子に関連する生物学的活性を阻害することができる。例えば、18μg/mL(血液中のヒトD因子のモル濃度の約1.5倍と同等、抗D因子抗体対D因子のモル比約1.5:1)の濃度で、抗体による代替補体活性の顕著な阻害が観察され得る(例えば、米国特許第6,956,107号を参照のこと)。
【0275】
3.安定性アッセイ
一態様では、抗HtrA1抗体の安定性(例えば、熱安定性)を決定するためのアッセイが提供される。例えば、抗体の安定性は、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、示差走査蛍光定量法(DSF)、円二色性(CD)、内在性タンパク質蛍光、示差走査熱量測定、分光法、光散乱(例えば、動的光散乱(DLS)及び静的光散乱(SLS)、自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)を使用して決定され得る。アッセイの安定性は、例えば、AAPH応力試験及び/または熱応力試験との関連で、例えば、実施例4に記載の質量分析を使用して、本明細書に記載されるように決定され得る。
【0276】
F.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗HtrA1抗体のうちのいずれかは、生物学的試料中のHtrA1の存在の検出に有用である。「検出すること」という用語は、本明細書で使用されるとき、定量的検出または定性的検出を包含する。ある特定の実施形態では、生物学的試料は、光受容細胞、網膜色素上皮細胞、外顆粒層の細胞、内顆粒層、ミュラー細胞、毛様体上皮、または網膜組織を含む試料等の細胞または組織を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、体液、例えば、硝子体または血液を含む。
【0277】
一実施形態では、診断または検出方法に使用するための抗HtrA1抗体が提供される。さらなる一態様では、生物学的試料中のHtrA1の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施形態では、本方法は、HtrA1への抗HtrA1抗体の結合を許容する条件下で、生物学的試料を本明細書に記載の抗HtrA1抗体と接触させることと、抗HtrA1抗体とHtrA1との間で複合体が形成されるかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。一実施形態では、例えば、HtrA1が患者の選択のためのバイオマーカーである場合、抗HtrA1抗体が、抗HtrA1抗体での治療に適格な対象を選択するために使用される。
【0278】
ある特定の実施形態では、抗HtrA1抗体での治療に好適な患者は、HtrA1プロモーター多型rs11200638(G/A)等のHtrA1遺伝子またはHtrA1対照配列中の1つ以上の多型を検出することによって特定され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、DeWan et al.,Science 314:989−992,2006を参照のこと)。
【0279】
本発明の抗体を使用して診断され得る例示の障害としては、HtrA関連障害、眼障害、補体関連障害、及び子癇前症が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合には、眼障害としては、例えば、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、地図状萎縮(GA)を含む)を含むAMD、糖尿病性網膜症(DR)、未熟児網膜症(ROP)、またはポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0280】
いくつかの実施形態では、子癇前症は、本発明の抗体を使用して診断され得る。いくつかの実施形態では、HtrA1の参照レベルと比較した、対象由来の試料中のHtrA1のレベルの増加は、対象が子癇前症を有するか、またはそれに感受性であることを示し得る。例えば、Teoh et al.Placenta 36(9):990−995,2015を参照されたい。いくつかの実施形態では、血清HtrA1レベルは、本発明の抗体を使用して検出され得る。他の実施形態では、胎盤HtrA1レベルは、本発明の抗体を使用して検出され得る。
【0281】
ある特定の実施形態では、標識抗HtrA1抗体が提供される。標識としては、直接検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度の高い標識、化学発光標識、及び放射性標識等)、ならびに間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用により検出される酵素またはリガンド等の部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示の標識には、放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3H、及び
131I、希土類キレートまたはフルオレセイン等のフルオロフォア及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされたウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等の複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定したフリーラジカル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0282】
本発明の別の実施形態では、抗体が標識されなくてもよく、その存在は、抗体に結合する標識抗体を使用して検出され得る。
【0283】
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ等の任意の既知のアッセイ法に用いられ得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)。
【0284】
競合結合アッセイは、限られた量の抗体との結合について試験試料分析と競合する標識標準物の能力に依存する。試験試料中の抗原の量は、抗体に結合する標準物の量に反比例する。結合する標準物の量の決定を容易にするために、抗体は、抗体に結合する標準物及び分析が結合していないまま留まる標準物及び分析から好都合に分離され得るように、一般に、競合前または競合後に不溶化される。
【0285】
サンドイッチアッセイは、各々が検出されるべきタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合することができる2つの抗体の使用を伴う。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料分析物は、固体支持体上に固定化された第1の抗体によって結合され、その後、第2の抗体が分析物に結合し、それにより不溶性の三成分複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第2の抗体は、それ自体が検出可能な部分で標識され得る(直接サンドイッチアッセイ)か、または検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を使用して測定され得る(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの種類は、ELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分は、酵素である。
【0286】
免疫組織化学について、試料は新鮮なものであっても凍結されたものであってもよく、または例えば、パラフィン包埋され、ホルマリン等の保存剤で固定されてもよい。
【0287】
G.診断キット
便宜上、本発明の抗体(例えば、抗HtrA1抗体または抗HtrA1/抗D因子抗体)は、キットで、すなわち、所定量の試薬と診断アッセイを行うための説明書とのパッケージ化された組み合わせで提供され得る。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、酵素(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアを提供する基質前駆体)によって必要とされる基質及び補因子を含む。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、遮断緩衝液または溶解緩衝液)等の他の添加物が含まれ得る。様々な試薬の相対量を広く変化させて、アッセイの感受性を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供することができる。特に、試薬は、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、乾燥粉末、通常、凍結乾燥された乾燥粉末として提供され得る。
【0288】
H.薬学的製剤
抗体またはその抗体変異形(例えば、本発明の抗HtrA1抗体または抗HtrA1/抗D因子抗体)の治療製剤は、所望の純度を有するポリペプチドを、当該技術分野で典型的に用いられる任意の「薬学的に許容される」担体、賦形剤、または安定剤(これらは全て「賦形剤」と呼ばれる)と混合することによって、凍結乾燥された製剤または水溶液として保存するために調製され得る。例えば、緩衝剤、安定剤、保存剤、等張剤、非イオン性洗浄剤、抗酸化剤、及び他の種々の添加物。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16
th edition,A.Osol,Ed.(1980)を参照されたい。かかる添加物は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性でなければならない。
【0289】
緩衝剤は、生理学的条件に近い範囲のpHを維持する助けとなる。それらは、好ましくは、約2mM〜約50mMの範囲の濃度で存在する。本発明での使用に好適な緩衝剤としては、有機酸及び無機酸、ならびにその塩、例えば、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物等)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物等)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物等)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物等)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物等)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物等)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物等)、及び酢酸緩衝液(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物等)が挙げられる。加えて、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、及びトリス等のトリメチルアミン塩が挙げられる。
【0290】
保存剤は、微生物成長を遅らせるために添加されてもよく、0.2w/v%〜1w/v%の範囲の量で添加され得る。本発明での使用に好適な保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3−ペンタノールが挙げられる。
【0291】
しばしば「安定剤」として知られる等張剤は、本発明の液体組成物の等張性を確保するために添加されてもよく、これには、多価糖アルコール、好ましくは三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが含まれる。
【0292】
安定剤は、幅広い区分の賦形剤を指し、その機能は、増量剤から、治療薬を可溶化するかまたは変性もしくは容器壁への付着の防止に役立つ添加物にまで及ぶ範囲であり得る。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上述のもの);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等のアミノ酸;イノシトール等のシクリトールを含む、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロール等の有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグルコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム等の還元剤を含有する硫黄;低分子量ポリペプチド(すなわち、<10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、及びグルコース等の単糖類;ラクトース、マルトース、及びスクロース等の二糖類;ならびにラフィノース等の三糖類;ならびにデキストラン等の多糖類であり得る。安定剤は、活性タンパク質1重量部当たり0.1〜10,000重量の範囲で存在し得る。
【0293】
非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療用タンパク質(例えば、抗体)の可溶化を助けるために、かつ振動誘発性凝集から治療用タンパク質を保護するために添加されてもよく、これは、タンパク質の変性を引き起こすことなく製剤が剪断表面応力に曝露されることも可能にする。好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(184、188等)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80等)が挙げられる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mL〜約1.0mg/mL、好ましくは約0.07mg/mL〜約0.2mg/mLの範囲で存在し得る。
【0294】
さらなる種々の賦形剤としては、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、及びビタミンE)、及び共溶媒が挙げられる。本明細書における製剤は、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて、1つよりも多くの活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物も含有し得る。例えば、製剤中にHtrA1結合アンタゴニスト(例えば、抗HtrA1抗体)及びD因子結合アンタゴニスト(例えば、抗D因子抗体)を含むことが望ましい場合がある。別の例では、湿潤AMD等の望ましくない血管新生に関連する眼障害を治療するために、VEGFアンタゴニスト療法、例えば、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)等の抗血管新生療法をさらに提供することが望ましい場合がある。かかる活性成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0295】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロフェア(microphere)、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、あるいはマクロエマルジョン中に封入されてもよい。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,A.Osal,Ed.(1980)に開示されている。
【0296】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、抗体またはその抗体変異形もしくは断片(例えば、抗原結合断片)を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性調製物の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とエチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)等の分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレンビニルアセテート及び乳酸−グリコール酸等のポリマーが100日間にわたる分子の放出を可能にする一方で、ある特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長期間にわたって体内に留まる場合、それらは、37℃の水分への曝露の結果として変性または凝集し、生物学的活性の損失及び免疫原性の変化の可能性をもたらし得る。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な戦略が講じられ得る。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド相互交換による分子間S−S結合形成であると発見された場合、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加物を使用すること、及び特定のポリマーマトリクス組成物を開発することによって、安定化が達成され得る。
【0297】
I.治療方法及び組成物
本明細書に提供される抗HtrA1抗体(例えば、抗HtrA1抗体及び抗HtrA1/抗D因子抗体)のうちのいずれも、治療方法に使用され得る。
【0298】
一態様では、薬剤として使用するための抗HtrA1抗体が提供される。さらなる態様では、本発明は、HtrA1関連障害の治療に使用するための抗HtrA1抗体を提供する。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、地図状萎縮(GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの例では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。
【0299】
別の実施形態では、本発明は、眼障害の治療に使用するための抗HtrA1抗体を提供する。いくつかの例では、眼障害は、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GAを含む)を含むAMD;糖尿病性網膜症(DR)及び他の虚血関連網膜症;眼内炎;ブドウ膜炎;脈絡膜血管新生(CNV);未熟児網膜症(ROP);ポリープ状脈絡膜血管症(PCV);糖尿病性黄斑浮腫;病理学的近視;フォン・ヒッペル・リンドウ病;眼ヒストプラスマ症;網膜中心静脈閉塞症(CRVO);角膜血管新生;または網膜血管新生である。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD(例えば、進行性乾燥AMD(例えば、GA))である。
【0300】
別の態様では、治療方法に使用するための抗HtrA1抗体が提供される。ある特定の例では、本発明は、HtrA1関連障害を有する対象の治療方法に使用するための抗HtrA1抗体を提供し、本方法は、抗HtrA1抗体の有効量を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの例では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。
【0301】
別の例では、本発明は、眼障害を有する対象の治療方法に使用するための抗HtrA1抗体を提供し、本方法は、抗HtrA1抗体の有効量を個体に投与することを含む。いくつかの例では、眼障害は、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GAを含む)を含むAMD;DR及び他の虚血関連網膜症;眼内炎;ブドウ膜炎;CNV;ROP;PCV;糖尿病性黄斑浮腫;病理学的近視;フォン・ヒッペル・リンドウ病;眼ヒストプラスマ症;CRVO;角膜血管新生;または網膜血管新生である。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD(例えば、進行性乾燥AMD(例えば、GA))である。
【0302】
いくつかの例では、本発明は、対象における網膜または光受容細胞変性の阻害に使用するための抗HtrA1抗体を提供する。他の例では、本発明は、対象の眼におけるHtrA1セリンプロテアーゼ活性の阻害に使用するための抗HtrA1抗体を提供する。上述の使用のうちのいずれかによる「対象」は、ヒトであり得る。
【0303】
本発明は、薬剤の製造または調製における抗HtrA1抗体の使用を提供する。例えば、一例では、薬剤は、HtrA1関連障害の治療用である。さらなる例では、薬剤は、HtrA1関連障害の治療方法に使用するためのものであり、本方法は、HtrA1関連障害を有する対象に薬剤の有効量を投与することを含む。薬剤の前述の使用のうちのいずれにおいても、本方法は、例えば、以下に記載の少なくとも1つの追加の治療薬の有効量を個体に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの例では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。
【0304】
別の例では、薬剤は、眼障害の治療方法に使用するためのものであり、本方法は、眼障害を有する対象に薬剤の有効量を投与することを含む。いくつかの例では、眼障害は、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GAを含む)を含むAMD;DR及び他の虚血関連網膜症;眼内炎;ブドウ膜炎;CNV;ROP;PCV;糖尿病性黄斑浮腫;病理学的近視;フォン・ヒッペル・リンドウ病;眼ヒストプラスマ症;CRVO;角膜血管新生;または網膜血管新生である。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD(例えば、進行性乾燥AMD(例えば、GA))である。
【0305】
本発明は、HtrA1関連障害の治療方法を提供する。一実施形態では、本方法は、HtrA1関連障害を有する対象に抗HtrA1抗体の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの例では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。さらなる例では、本方法は、以下に記載の少なくとも1つの追加の治療薬の有効量を個体に投与することをさらに含む。上述の方法のうちのいずれかによる「対象」は、ヒトであり得る。
【0306】
本発明は、眼障害の治療方法を提供する。一実施形態では、本方法は、眼障害を有する対象に抗HtrA1抗体の有効量を投与することを含む。いくつかの例では、眼障害は、湿潤(滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥(非滲出性)AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GAを含む)を含むAMD;DR及び他の虚血関連網膜症;眼内炎;ブドウ膜炎;CNV;ROP;PCV;糖尿病性黄斑浮腫;病理学的近視;フォン・ヒッペル・リンドウ病;眼ヒストプラスマ症;CRVO;角膜血管新生;または網膜血管新生である。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD(例えば、進行性乾燥AMD(例えば、GA))である。
【0307】
本発明は、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害の治療を必要とする対象におけるHtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害の治療方法を提供し、本方法は、対象に、HtrA1結合アンタゴニスト及び/またはD因子結合アンタゴニストの治療有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害または補体関連障害は、眼障害である。いくつかの実施形態では、眼障害は、AMD、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病性黄斑浮腫、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症、角膜血管新生、及び網膜血管新生からなる群から選択される。いくつかの例では、眼障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの例では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。前述の実施形態のうちのいずれにおいても、HtrA1−結合アンタゴニストは、抗HtrA1抗体またはその抗原結合断片、例えば、本明細書に記載の任意の抗HtrA1抗体またはその抗原結合断片であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合抗体断片は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFV、及び(Fab’)
2断片からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗原結合抗体断片は、Fabである。いくつかの実施形態では、Fabは、重鎖定常領域のヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ)にトランケーションを含む。いくつかの実施形態では、Fab重鎖定常領域は、221位(EU番号付け)で終端する。いくつかの実施形態では、221位のアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖定常領域は、配列番号156のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fabは、IgG1 Fabである。いくつかの例では、D因子結合アンタゴニストは、抗D因子抗体またはその抗原結合断片、例えば、本明細書に記載の抗D因子抗体のうちのいずれかである。
【0308】
別の態様では、本発明は、HtrA1関連障害、眼障害、及び/または補体関連障害の治療のための薬剤の製造における、HtrA1及びD因子の両方に特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合抗体断片の使用を提供する。いくつかの実施形態では、HtrA1関連障害及び/または補体関連障害は、眼障害である。いくつかの例では、眼障害は、湿潤AMD(早期、中等度、及び進行性湿潤AMDを含む)及び乾燥AMD(早期、中等度、及び進行性乾燥AMD(例えば、GA)を含む)を含むAMDである。いくつかの実施形態では、AMDは、進行性乾燥AMD(例えば、GA)である。二重特異性抗体は、本明細書に記載の抗HtrA1抗体のうちのいずれかに由来する、HtrA1に特異的に結合する結合ドメインを含み得る。二重特異性抗体は、本明細書に記載の抗D因子抗体のうちのいずれかに由来する、D因子に特異的に結合する結合ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、抗原結合抗体断片は、Fab断片または(Fab’)
2断片である。
【0309】
本明細書に記載され、及び/または当該技術分野で既知である抗D因子抗体またはその抗原結合断片のうちのいずれも、前述の方法または使用のうちのいずれかに使用され得る。例えば、いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、以下の6つのHVR:(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYAX
1DFKG(配列番号110)のアミノ酸配列を含むHVR−H2(式中、X
1がAspまたはGluである)、(c)EGGVX
1N(配列番号111)のアミノ酸配列を含むHVR−H3(式中、X
1がAsnまたはSerである)、(d)ITSTX
1IX
2X
3DMN(配列番号112)のアミノ酸配列を含むHVR−L1(式中、X
1がAspまたはSerであり、X
2がAspまたはGluであり、X
3がAspまたはSerである)、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSX
1SLPYT(配列番号114)のアミノ酸配列を含むHVR−L3(式中、X
1がAspまたはGluである)を含む。いくつかの例では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、以下の6つのHVR:(a)GYTFTNYGMN(配列番号109)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINTYTGETTYADDFKG(配列番号115)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)EGGVNN(配列番号116)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)ITSTDIDDDMN(配列番号117)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)GGNTLRP(配列番号113)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)LQSDSLPYT(配列番号118)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号119のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号120のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。いくつかの例では、VHドメインは、配列番号119のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、VLドメインは、配列番号120のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、抗D因子抗原結合抗体断片は、CAS登録番号1278466−20−8を有するランパリズマブである。
【0310】
本発明の抗体が哺乳動物の治療に使用され得ることが企図される。一実施形態では、本抗体は、例えば、前臨床データを得る目的のために、非ヒト哺乳動物に投与される。治療される例示の非ヒト哺乳動物としては、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、齧歯類(例えば、マウス及びラット)、ならびに前臨床試験が行われる他の哺乳動物が挙げられる。かかる哺乳動物は、治療される疾患のための確立された動物モデルであってもよく、または目的とする抗体の毒性を研究するために使用されてもよい。これらの実施形態の各々において、用量漸増試験が哺乳動物において行われ得る。
【0311】
さらなる一態様では、本発明は、例えば、上述の治療方法のうちのいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗HtrA1抗体のうちのいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗HtrA1抗体のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗HtrA1抗体のうちのいずれかと、例えば、以下に記載の少なくとも1つの追加の治療薬とを含む。
【0312】
本明細書に記載の治療的使用及び方法のうちのいずれにおいても、抗HtrA1抗体は、Fabであり得る。いくつかの実施形態では、Fabは、重鎖定常領域のヒンジ領域(例えば、上部ヒンジ領域)にトランケーションを含む。いくつかの実施形態では、Fab重鎖定常領域は、221位(EU番号付け)で終端する。いくつかの実施形態では、221位のアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基である。いくつかの実施形態では、Fabの重鎖定常領域は、配列番号156のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fabは、IgG1 Fabである。
【0313】
眼疾患または状態の予防または治療のための本発明の抗体(及び任意の追加の治療薬)は、例えば、眼内、眼球内、及び/または硝子体内注射、及び/または強膜近傍注射、及び/またはテノン嚢下注射、及び/または超脈絡膜(superchoroidal)注射、及び/または点眼薬及び/または軟膏の形態の局所投与を含むが、これらに限定されない任意の好適な手段によって投与され得る。本発明のかかる抗体は、Intraocular Drug Delivery,Jaffe,Jaffe,Ashton,and Pearson,editors,Taylor&Francis(March 2006)等の参考文献に記載されているものを含む、様々な方法、例えば、硝子体への化合物の徐放を可能にするデバイス及び/またはデポーとして硝子体内に送達され得る。一例では、デバイスは、化合物を長時間にわたって放出するミニポンプ、及び/またはマトリックス、及び/または受動拡散システム、及び/またはカプセル化された細胞の形態であり得る(Intraocular Drug Delivery,Jaffe,Jaffe,Ashton,and Pearson,editors,Taylor&Francis(March 2006)。局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、及び病巣内投与を含むが、これらに限定されない他の投与方法も使用され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。
【0314】
眼内、眼球内、または硝子体内投与のための製剤は、当該技術分野で既知の方法によって、かつ賦形剤を使用して調製され得る。効率的な治療のための重要な特徴は、眼を通した適切な浸透である。薬物が局所送達され得る眼の前部の疾患とは異なり、網膜疾患は、典型的には、より部位特異的なアプローチから利益を得る。点眼薬及び軟膏は、眼の後部にほとんど浸透せず、血液眼関門が、全身投与された薬物の眼組織への浸透を妨げる。したがって、AMD及びCNV等の網膜疾患を治療するための薬物送達方法の選択肢は、典型的には、直接硝子体内注射である。硝子体内注射は、通常、患者の状態、ならびに送達される薬物の特性及び半減期に応じた間隔で繰り返される。眼球内(例えば、硝子体内)浸透のために、通常、より小さなサイズの分子が好ましい。
【0315】
眼は、眼内薬物送達を困難にし得る多くの生物物理学的及び解剖学的特徴を有する。例えば、血液眼関門は、感染症から眼を保護するための防衛機構であるが、同時に、特に眼の後部の疾患の場合、薬物の浸透を困難にする。結果的に、有効性を改善するために、薬物のオンサイト生物学的利用能(例えば、眼内滞留時間)を達成及び維持するための高用量投与がしばしば望ましい。一方で、眼の後部の限られたスペースは、送達される薬物量を制限し、次いで、薬物が高濃度製剤で送達されることが好ましい場合がある。
【0316】
眼障害(例えば、AMD(例えば、地図状萎縮))を有する患者は、治療薬の長時間作用型/徐放送達からも利益を得ることができる。より少ない頻度での投薬は、患者に利便性の向上を提供し得、感染率の低下及び臨床効果の増大の潜在的利益を有する。高用量薬物の制御放出は、薬物の副作用を最小限に抑えることもできる。長時間作用型送達のための2つの有望な系は、PLGAベースの固体インプラント及び埋め込み型ポート送達系(PDS)である。両方の系は、長時間にわたってほぼゼロ次放出動態を提供する可能性を有する。PLGAインプラントの場合、タンパク質薬物が疎水性ポリマーマトリックス中にカプセル化され、薬物放出は、ポリマーの緩徐な加水分解によって達成される。放出速度は、薬物負荷、ポリマー疎水性、またはポリマー分子量を変化させることによって制御され得る。PDSは、硝子体への放出がチタンフリットを含む多孔質金属膜によって制御される再充填可能なデバイスである。リザーバが低容量であるため、高いタンパク質濃度がPDSでの効果的な送達に必要とされる。
【0317】
高濃度及び長時間作用型送達に加えて、またはその代わりに、タンパク質薬物が天然または合成ポリマーと共有結合でコンジュゲートされる、ポリシアリル化、HES化(ヒドロキシエチルデンプンとのコンジュゲーション)、及びPEG化等の翻訳後修飾によって、薬物の生物学的利用能(例えば、眼内滞留時間)の増加が達成または促進され得る。例えば、Chen et al.,Expert.Opin.Drug Deliv.8:1221−36,2011、Kontermann,BioDrugs 23:93−109,2011を参照されたい。ポリマーポリエチレングリコール(PEG)のタンパク質への共有結合であるPEG化は、抗体断片治療薬の半減期の延長に特に有用な確立された技術である。Jevsevar et al.,Biotech.J.5:113−128,2010。
【0318】
薬物が曝露される条件は、使用される送達系によって異なる。固体PLGAインプラントへの組み込みの場合、凍結乾燥または噴霧乾燥された薬物が使用される。インプラントは、溶融押出プロセスを使用して製造され、それにより、薬物が90℃に近い温度に短時間曝露される。薬物は、放出中、固体状態のままであるが、PLGAの分解は、薬物を低pH環境に曝露し得る。対照的に、PDSを用いて送達される薬物は、液体状態で高濃度に維持され、生理学的イオン強度及びpHで還元環境として特徴付けられる硝子体に曝露される。
【0319】
特定の眼障害または状態の治療に有効となる抗体またはその抗体変異形の量は、障害または状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定され得る。可能な場合、ヒトにおける試験前に、最初にインビトロで、その後、有用な動物モデル系において用量反応曲線及び本発明の薬学的組成物を決定することが望ましい。
【0320】
追加の好適な投与手段には、非経口、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所的治療が所望される場合、病巣内投与が含まれる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短期であるか長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注射等の注射によるものであってもよい。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。いくつかの例では、抗HtrA1抗体は、静脈内、筋肉内、皮内、経皮(percutaneously)、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹腔内、腹腔、脳室内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼窩内、経口、局所、経皮(transdermally)、吸入により、注射により、埋め込みにより、注入により、持続注入により、標的細胞を直接浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリーム剤中で、または脂質組成物中で投与され得る。
【0321】
AMDまたはCNV等の眼障害(例えば、補体関連眼障害)の治療の有効性は、眼内疾患の評価に一般的に使用される様々な終点によって測定され得る。例えば、失明が評価され得る。失明は、例えば、ベースラインから所望の時点までの最高矯正視力(BCVA)の平均値の変化による測定(例えば、BCVAが、早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)視力表及び4メートルの試験距離での評定に基づく場合)、ベースラインと比較して所望の時点で15文字未満の視力を喪失した対象の割合の測定、ベースラインと比較して所望の時点で15文字以上の視力を獲得した対象の割合の測定、所望の時点で20/2000以下のスネレン視力を有する対象の割合の測定、NEI視覚機能アンケートの測定、例えば蛍光眼底造影による所望の時点でのCNVのサイズ及びCNVの漏出量の測定等を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知であり、及び/または本明細書に記載される任意の方法によって評価され得る。例えば、眼の検査の実施、眼内圧の測定、視力の評定、細隙灯圧の測定、眼内炎症の評定等を含むが、これらに限定されない眼の評定が行われ得る。
【0322】
疾患の予防または治療について、本発明の抗体の適切な投薬量は(単独で、または1つ以上の他の追加の治療薬と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的または治療目的のために投与されるか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に依存する。抗体は、一度に、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与であるか、または持続注入によるかにかかわらず、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.4mg/kg、0.6mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kg)の抗体が、患者への投与のための初期候補投薬量であり得る。いくつかの実施形態では、使用される抗体は、約0.01mg/kg〜約45mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約35mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約25mg/kg、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、約0.01mg/kg〜約15mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、または約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。1つの典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得る。状態に応じて数日間以上にわたる反復投与の場合、治療は、一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。
【0323】
いくつかの例では、本発明の抗HtrA1抗体の固定用量が、例えば、眼に投与される。いくつかの例では、約0.1mg〜約10mgまたは約5〜15mg、例えば、約0.1mg/眼〜約0.5mg/眼、約0.5mg/眼〜約1mg/眼、約1mg/眼〜約1.5mg/眼、約1.5mg/眼〜約2mg/眼、約2mg/眼〜約2.5mg/眼、約2.5mg/眼〜約3mg/眼、約3mg/眼〜約3.5mg/眼、約3.5mg/眼〜約4mg/眼、約4mg/眼〜約4.5mg/眼、約4.5mg/眼〜約5mg/眼、約5mg/眼〜約5.5mg/眼、約5.5mg/眼〜約6mg/眼、約6mg/眼〜約6.5mg/眼、約6.5mg/眼〜約7mg/眼、約7mg/眼〜約7.5mg/眼、約7.5mg/眼〜約8mg/眼、約8mg/眼〜約8.5mg/眼、約8.5mg/眼〜約9mg/眼、約9mg/眼〜約9.5mg/眼、または約9.5mg/眼〜約10mg/眼の本発明の抗HtrA1抗体が眼に投与される。いくつかの例では、抗体は、約0.1mg/眼〜約2mg/眼、約0.1mg/眼〜約3mg/眼、約0.1mg/眼〜約5mg/眼、約0.1mg/眼〜約6mg/眼、約0.1mg/眼〜約7mg/眼、約0.1mg/眼〜約8mg/眼、約0.1mg/眼〜約9mg/眼、約0.1mg/眼〜約10mg/眼、約0.5mg/眼〜約2mg/眼、約0.5mg/眼〜約3mg/眼、約1mg/眼〜約3mg/眼、または約2mg/眼〜約5mg/眼で使用される。いくつかの例では、約0.5mg/眼、約1mg/眼、約1.5mg/眼、約2mg/眼、約2.5mg/眼、約3mg/眼、約3.5mg/眼、約4mg/眼、約4.5mg/眼、約5mg/眼、約5.5mg/眼、約6mg/眼、約6.5mg/眼、約7mg/眼、約7.5mg/眼、約8mg/眼、約8.5mg/眼、約9mg/眼、約9.5mg/眼、約10mg/眼、またはそれ以上の抗HtrA1抗体の固定用量が使用される。特定の例では、例えば、抗HtrA1抗体の固定用量が、約2mg/眼で投与される。
【0324】
いくつかの実施形態では、用量は、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、11週間に1回、または12週間に1回投与され得る。
【0325】
HtrA1結合アンタゴニスト(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)は、単独で、または少なくとも第2の治療化合物と組み合わせて投与され得る。HtrA1結合アンタゴニスト(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)及び任意の第2の治療化合物の投与は、同時に、例えば単一の組成物として、または2つ以上のはっきりと異なる組成物として、同じまたは異なる投与経路を使用して行われ得る。あるいは、または加えて、投与は、任意の順序で連続して行われ得る。ある特定の実施形態では、分単位から日単位、週単位、月単位の範囲の間隔が、2つ以上の組成物の投与間に存在し得る。例えば、HtrA1結合アンタゴニスト(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)が最初に投与され、続いて、第2の治療化合物が投与され得る。しかしながら、同時投与、またはHtrA1結合アンタゴニスト(例えば、本発明の抗HtrA1抗体)前の第2の治療化合物の投与も企図される。一例では、HtrA1結合アンタゴニストは、抗HtrA1抗体、例えば、本明細書に記載されるか、または当該技術分野で既知の任意の抗HtrA1抗体である。一例では、第2の治療化合物は、D因子結合アンタゴニストである。さらなる一例では、D因子結合アンタゴニストは、抗D因子抗体、例えば、本明細書に記載されるか、または当該技術分野で既知の任意の抗D因子抗体である。特定の実施形態では、抗D因子抗体は、ランパリズマブである。さらなる実施形態では、抗D因子抗体は、1〜15mgの用量で、例えば、10mgの用量で投与される。特定の実施形態では、ランパリズマブは、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。ある特定の実施形態では、追加の治療薬は、眼における望ましくない血管新生に関連する眼障害、例えば、湿潤AMD等の治療に好適な治療薬である。好適な治療薬としては、例えば、VEGFアンタゴニスト(例えば、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)を含む抗VEGF抗体及び抗体断片、及び抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、アフリベルセプト(VEGF Trap−Eye;EYLEA(登録商標)))等の抗血管新生薬;補体因子C2アンタゴニスト(例えば、抗CFC2抗体を含む)等の補体系の阻害剤;ならびにIL−6結合アンタゴニスト(例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))及びEBI−031(Eleven Biotherapeutics))等の抗炎症剤が挙げられる。他の実施形態では、望ましくない眼内血管新生に関連する疾患または障害の治療は、抗HtrA1抗体及び光線力学療法(例えば、MACUGEN(商標)またはVISUDYNE(商標)による)の組み合わせを伴う。
【0326】
上述のかかる併用療法は、併用投与(同じまたは別個の製剤中に2つ以上の治療薬が含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療薬(複数可)の投与前、投与と同時に、及び/または投与後に行われ得る。一実施形態では、HtrA1結合アンタゴニスト(例えば、抗HtrA1抗体)の投与及び追加の治療薬の投与は、互いに約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に行われる。
【0327】
上述の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗HtrA1抗体の代わりに、またはそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使用して行われ得ることが理解される。
【0328】
J.製品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。本製品は、容器と、容器上のもしくは容器に関連するラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、静脈注射用溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、それ自体で、または別の組成物と組み合わせて、状態の治療、予防、及び/または診断に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選択した状態を治療するために使用されることを示す。さらに、本製品は、(a)本発明の抗体を含む組成物を内部に収容した第1の容器と、(b)さらなる細胞傷害性薬剤、またはさもなければ治療薬を含む組成物を内部に収容した第2の容器とを含み得る。本発明のこの実施形態における製品は、組成物が特定の状態を治療するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、または加えて、本製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【実施例】
【0329】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上述の概要を考慮して、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0330】
[HtrA1に結合する安定した高効力の高親和性抗体の開発]
以下の実験の目標は、HtrA1に対してより高い効力及びより高い親和性を有する新たな抗HtrA1抗体を発見することであった。
【0331】
最初に、mHtrA1ノックアウトマウスを作製した。恐らくマウス及びヒトHtrA1タンパク質が98%の配列同一性を共有するため、HtrA1を発現するマウスからハイブリドーマを作製する最初の試みが成功しなかったため、ノックアウトマウスを使用する必要があった。
【0332】
次に、HtrA1ノックアウトマウスをmHtrA1のプロテアーゼドメインで免疫化した。結果として得られたハイブリドーマをELISAによりスクリーニングし、75個のELISA陽性クローンを特定した。これらの75個のクローンを、HtrA1プロテアーゼ基質の切断を阻害する能力について試験した。75個中10個のクローンが、HtrA1プロテアーゼ活性を阻害することを示した。
【0333】
これらのクローンのうちの7個を、それらのプロテアーゼ活性を阻害する能力、ヒト及びマウスHtrA1に結合する能力、及びmuHtrA3及びmuHtrA4よりmuHtrA1に選択的に結合する能力に基づいて、さらなる分析のために選択した。これらの7個のクローンをさらなるスクリーニングに供し、4個が、対照抗体YW505.94と比較して、HtrA1に対する効力が改善されていることが見出された。これらの抗体のうちの2個、15H6及び9B12を、効力及び選択性を含むそれらの好ましい分子プロファイルに基づいて、さらなる開発のために選択した。
【0334】
以下に概説するように、選択された抗体の超可変領域をヒトフレームワークにグラフトした。これらの残基を個別に交換し、かつヒト及びマウスHtrA1への結合を試験することによって、マウス軽鎖Vernier参照の重要性を15H6について試験した。1つの置換が結合を消失させ、2つの置換が結合を減少させ、2つの置換がマウスHtrA1への結合にのみ影響し、3つの置換は結合に著しい影響を与えなかった。これらの3つの置換を抗体15H6.v1に導入して、抗体15H6.v2を作製した。
【0335】
その後、15H6.v2を操作して、安定性を改善した。酸化(HVR−L3におけるW91)、クリッピング(HVR−LCにおけるN94 P95)、及び脱アミド化(HVR−H2におけるD55 G56)をもたらし得る潜在的に不安定な残基を特定した。W91の置換は、結合に実質的に影響を与えた。N94位での4つの置換を試験した。これらの置換のうちの2つは結合に影響を与えたが、2つをさらなる分析のために選択した。D55位での4つの置換を試験した。これらの置換のうちの1つのみが、親分子に匹敵する結合を示した。
【0336】
次のステップは、HtrA1に対するh15H6.v2結合の親和性を改善することであった。第1のステップとして、ディープシーケンシングを使用して、h15H6.v2の構造/機能関係を調べた。この実験で試験した多くの個々の変異のうち、およそ19の個々の変異がHtrA1に対する親和性を改善することが見出された。最も遅いオフ速度を有するLC及びHC変異の組み合わせを含む抗体を設計及び試験し、HtrA1に対する効力及び親和性が改善された変異形抗体を特定した。最善の親和性及び効力を有する変異形も操作して、上述の安定化置換を導入した。結果として得られた変異形のうち、h15H6.v4がHtrA1に対して最も高い効力を有することが見出された。
【0337】
HtrA1に結合したFab形式でのh15H6.v4の構造を、X線結晶学及び電子顕微鏡法により決定した。この構造分析は、h15H6.v4 FabがHtrA1タンパク質の「LAループ」に密接に結合することを明らかにした。h15H6.v4により結合されるエピトープは、対照抗体YW505.94により結合されるものとははっきりと異なる。本発明が任意の特定の機構に拘束されるようには意図されていないが、h15H6.v4とHtrA1のLAループとの間の密接な相互作用が、YW505.94と比較して、この抗体の親和性及び効力の著しい改善を説明することが可能である。
【0338】
上述の実験は、以下により詳細に概説される。
【0339】
実施例1:ハイブリドーマアプローチを使用した抗HtrA1抗体の生成
A.培地及び抗体
CLONACELL(商標)−HY Medium B(カタログ番号03802)、Medium C(カタログ番号03803)、Medium D(カタログ番号03804)、及びMedium E(カタログ番号03805)を、StemCell Technologiesから入手した。電気融合に使用されるCYTOFUSION(登録商標)Medium C(カタログ番号LCM−C)を、Cyto Pulse Sciencesから入手した。アロフィコシアニン(APC)標識ヤギF(ab’)
2抗マウスIgを、SouthernBiotech(カタログ番号1012−11)から入手し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG Fc抗体を、Sigmaから入手した。TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)One Component HRP Microwell Substrate(カタログ番号TMBW−1000−01)及びTMB Stop Reagent(カタログ番号BSTP−1000−01)を、BioFx Laboratoriesから入手した。
【0340】
B.マウスのインビボでの免疫化
5匹のHtrA1ノックアウトマウス(HtrA1.noneo.BALB.ko.C1−3)を、3〜4日間隔で合計12回のブーストでの足蹠注射(マウス1匹当たり2μg/注射)、続いて、リン酸緩衝生理食塩水中での抗原での2回の融合前ブーストにより、モノホスホリル脂質A/トレハロースジコリノミコレートアジュバント中に懸濁させた精製されたHisタグ付き組換えマウスHtrA1プロテアーゼドメイン(本明細書においてmuHtrA1−PD−His(配列番号153)と称され、WO2013/055998の実施例2を参照されたい)で免疫化した。最後のブーストの3日後、免疫化されたマウスの脾臓及びリンパ節由来のリンパ球を収集し、単離した。WO2013/055998の実施例2に記載されるように、muHtrA1−PD−Hisを精製により注射のために調製した。
【0341】
C.細胞融合、ハイブリドーマスクリーニング、及びサブクローニング
2匹のマウス(番号748及び749)から単離したマウス脾臓細胞を、Cyto Pulse CEEF−50装置(Cyto Pulse Sciences)を使用して、SP2/0骨髄腫細胞(American Type Culture Collection)と融合させた。手短に言えば、CYTOFUSION(登録商標)Medium Cで2回洗浄した後、単離した脾臓細胞及びSP2/0細胞を1:1比で混合し、その後、CYTOFUSION(登録商標)Medium C中に1000万細胞/mLの濃度で再懸濁させた。電気融合を製造業者の指針に従って行った。融合した細胞を、7%CO
2インキュベータ内で、CLONACELL(商標)−HY Medium C中、37℃で一晩培養した。翌日、融合した細胞を遠心分離し、その後、10mLのCLONACELL(商標)−HY Medium C中に再懸濁させ、その後、選択的試薬ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT)を含有する90mLのメチルセルロース系CLONACELL(商標)−HY Medium Dと穏やかに混合した。細胞を40×100mmのペトリ皿(カタログ番号351029、Becton Dickinson)にプレーティングし、7%CO
2インキュベータ内で、37℃で成長させた。10日間インキュベートした後、1429個の単一ハイブリドーマクローンを、CLONEPIX(商標)システム(Genetix,United Kingdom)を使用して採取し、200μL/ウェルCLONACELL(商標)−HY Medium Eを有する15×96ウェル細胞培養プレート(番号353075、Becton Dickinson)に移した。ハイブリドーマ培養培地を交換し、3日後、ハイブリドーマ上清を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってスクリーニングして、muHtrA1−PD−Hisへの結合についてアッセイした。
【0342】
ELISAを標準プロトコルに従って行った。手短に言えば、96ウェルマイクロタイターELISAプレート(Greiner,Germany)を、100μL/ウェルのmuHtrA1−PD−HisまたはhuHtrA1−PD−His(配列番号154)で、0.05Mの炭酸緩衝液(pH9.6)中2μg/mLで、4℃で一晩コーティングした。洗浄緩衝液(PBS中0.05%TWEEN(登録商標)20、Sigma)で3回洗浄した後、プレートを、BSAを有する100μLのELISAアッセイ希釈剤で遮断した。100μLの培養上清または希釈した精製モノクローナル抗体(mAb)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG Fcと1時間インキュベートした。3回洗浄した後、結合した酵素を、100μL/ウェルのTMB基質(BioFX Laboratories)を5分間添加することによって検出した。反応を、100μL/ウェルの停止試薬(BioFX Laboratories)を添加することによって停止させ、続いて、色を吸光度650nm(A
650nm)で検出した。105個の初期ELISA陽性上清を特定した。3日間増殖及び培養した後、これらのクローンを後続のELISAで再スクリーニングし、105個のクローンのうちの75個が、muHtrA1−PD−Hisへの結合について依然としてELISA陽性であることを確認した(
図1A及び1B)。これらの75個のクローンの大半は、ヒトHtrA1プロテアーゼドメインにも結合した(
図1A及び1B)。
【0343】
次に、75個のELISA陽性クローンを、インビトロアッセイを使用して試験して、ヒトHtrA1プロテアーゼドメイン(huHtrA1−PD−His、配列番号154)による基質の切断を阻害するハイブリドーマ上清の能力を評定した。ENZCHEK(登録商標)Green Fluorescence Protease Assay(ThermoFisher Scientific)アッセイを使用した。このアッセイは、基質としてpH非感受性緑色蛍光BODIPY(登録商標)FL色素で高度に標識されたカゼイン誘導体を用いる。BODIPY(登録商標)FL色素の蛍光を、全長標識基質において分子内消光する。huHtrA1−PDによる基質の切断は、蛍光BODIPY(登録商標)FL標識ペプチドを放出し、蛍光シグナルの増加をもたらす(
図2A)。手短に言えば、ハイブリドーマ上清及びHtrA1−PD(20nM hHtrA1−PD、40μLのhHtrA1−PD:60μLの上清)を、最終体積200μL中緩衝液(50mM Tris、200mM NaCl、0.25%CHAPS、pH8.0)中で、37℃で20分間インキュベートした。5μg/mLのBODIPY(登録商標)FL標識基質を添加し、蛍光(ミリ相対蛍光単位(mRFU)/分)を20分間読み取った。この遮断アッセイを使用して、75個のクローンのうちの10個が、ヒトHtrA1−PD媒介基質切断を阻害することが見出された(
図2B及び2C)。
図3A及び3Bは、huHtrA1−PDと比較した、muHtrA1−PDの活性を阻害するクローンのサブセットの能力の比較を示す。
【0344】
限界希釈による少なくとも2ラウンドの単一細胞サブクローニング後、様々な特性を有する7個のクローン(20E2、19B12、12A5、3A5、15H6、15E3、及び19G10)をスケールアップし、上清を抗体精製及びさらなる評定のために収集した。これらのクローンを、インビトロでHtrA1活性を阻害する能力及びmuHtrA3(19B12)への結合に部分的に基づいて選択した。これらの7個のクローンを、免疫組織化学においてmuHtrA1を検出する能力、ならびにマウスHtrA3−PD及びマウスHtrA4−PDに結合する能力(ELISAにより評定)についても試験した。表2は、これらの7個のクローンの定性的特性の要約を示す。
表2:抗体精製のために選択された7個の最終クローンの特性
【0345】
次のステップは、上で選択された7個の抗体が、FRETアッセイで測定した場合、HtrA1媒介切断を阻害するかを決定することであった。
【0346】
ハイブリドーマ上清を、タンパク質A親和性クロマトグラフィーにより精製し、続いて、滅菌濾過し(0.2μm孔径、Nalge Nunc International,NY,USA)、PBS中に4℃で保存した。機能アッセイでさらに試験する前に、精製したモノクローナル抗体をELISA及びFACSにより確認した。精製したmAbのアイソタイプをISOSTRIP(商標)マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche Diagnostics Corporation)により決定した。
【0347】
精製した抗体を、FRETに基づく遮断アッセイ(例えば、H2−Optアッセイ)において、HtrA1の活性を阻害する能力について試験した。このアッセイでは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET、フェルスター共鳴エネルギー移動とも称される)基質の切断を阻害する抗体の能力を決定した。1600Daの分子量を有するFRETペプチド基質H2−Optは、ドナーMca(7−メトキシクマリン−4−イル−アセチル)及びアクセプター(クエンチャー)Dnp(N−2,4−ジニトロフェニル)を含む。FRETペプチド基質の全長配列は、(Mca)IRRVSYSF(Dnp)KK(配列番号152)である。インタクトなペプチド基質では、消光部分Dnpは、Mcaドナーの蛍光を消光する。FRETペプチド基質のタンパク分解的切断は、フルオロフォア及びクエンチャーを分離させ、それによりMca蛍光の消光を緩和し、蛍光シグナルの増加をもたらす(
図4A)。このアッセイを、以下の実施例3のF節に記載のH2−Optアッセイ条件を使用して行った。蛍光強度の経時的増加は、基質の加水分解の程度に関連する。抗体を、5nM、50nM、及び500nMの濃度で試験した。精製した抗HtrA1抗体のうちの5つ(15H6、19B12、3A5、12A5、及び20E2)は、ヒト及びマウスHtrA1−PD媒介基質切断を遮断する能力を保持した(
図4B及び4C)。
【0348】
次に、全長HtrA1媒介基質切断を阻害する精製した抗体の能力を試験した。精製した全長(FL)muHtrA1またはhuHtrA1を使用して、前段落に記載のFRETに基づく遮断アッセイを用いた。muHtrA1−FL及びhuHtrA1−FLを、WO2013/055998の実施例2に記載されるように精製した。15H6及び19B12を含む精製された抗体は、huHtrA1−FL(
図5A〜5B)及びmuHtrA1−FL(
図5C〜5D)の活性を阻害した。このアッセイでは、クローン15H6は、huHtrA1−FLを0.7nMのIC50で阻害し、これは、陽性対照抗体YW505.94のIC50と比較して約2倍改善された。15H6は、muHtrA1−FLを1.1nMのIC50で阻害し、これは、陽性対照抗体YW505.94と比較して約5倍改善された。クローン19B12は、huHtrA1−FLを1.4nMのIC50で阻害し、muHtrA1−FLを1.0nMのIC50で阻害した。選択された抗体を、以下のD節に記載されるように配列決定した。これらの5つの抗体の配列を、
図6A及び
図6Bに示す。2つの抗体15H6及び19B12を、それらの効力及びそれらの選択性を含むそれらの好ましい分子プロファイルに基づいてさらなる開発のために選択した。これらの抗体の再編成については、以下のE節に記載される。
【0349】
D.ハイブリドーマクローンからの抗体配列決定
i.96ウェル形式でcDNA末端の5’−高速増幅(5’−RACE)を使用したハイブリドーマ細胞からの可変領域遺伝子配列のクローニング
各ハイブリドーマクローンについて、約25μLの対数期増殖細胞(0.5〜1.0×10
6細胞/mL)を、組織培養プレートから96ウェルU底プレートのウェルに移した。その後、150μLの冷1倍PBSを添加して細胞を洗浄した後、1000rpmで5分間スピンダウンした。上清を除去し、細胞ペレットを25μLの冷1倍PBS中に再懸濁させた。
【0350】
ii.逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)反応
以下からなるマスターミックスをエッペンドルフチューブ内で調製した(50ウェル用):2.5μLのRNASEOUT(商標)(Invitrogen番号10777019)、12.5μLの10倍合成緩衝液(5倍SUPERSCRIPT(登録商標)緩衝液)、12.5μLのジチオスレイトール(DTT)(0.1M Invitrogen番号P/NY00147)、6.25μLのdNTP(10mM Invitrogen番号18427−013)、12.5μLの2.5%ノニルフェノキシポリエトキシエタノール(NP−40)、2mg/mLで6.25μLのウシ血清アルブミン(BSA)(BioLabs番号9001S)、25μLのRACE4muHCプライマー(PCRグレード水中、1:100)(軽鎖(LC)の配列決定のためのRace 3カッパプライマーの代用)、37.5μLのPCRグレード水、及び10μLのSUPERSCRIPT(登録商標)3酵素(Invitrogen番号18080−093)。Race4muHC縮重プライマーヌクレオチド配列は、TTT YTT GTC CAC CKT GGT GCT GC(配列番号139)であり、ここで、Yは、CまたはTをコードし、Kは、GまたはTをコードする。Race 3カッパプライマーヌクレオチド配列は、GTA GAA GTT GTT CAA GAA G(配列番号140)である。
【0351】
その後、2.5μL/ウェルのマスターミックスを96ウェルPCR反応プレートに移した。1μLの細胞/ウェルをプレートに添加し、プレートを30秒間の短時間にわたって回転させ、その後、プレートを振盪した。プレートをPCR機内に設置し、プログラムを45℃で30分間、続いて、50℃で30分間に設定した。このプレートをプレートAとラベル付けした。
【0352】
iii.テーリング反応
10倍ストックテーリング緩衝液を、以下の成分で作製した(50ウェル用):5μLの1M MgCl
2、5μLの0.1M DTT、5μLの1M Tris(pH7.5)、10μLの100mM dGTP、及び25μLのPCRグレード水。
【0353】
作業溶液を、以下の成分で作製した(50ウェル用):50μLの10倍ストックテーリング緩衝液、312.5μLのPCRグレード水、及び12.5μLの300単位ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)(Promega番号M828A/C)。
【0354】
その後、この作業溶液をPCR反応プレートAに7.5μL/ウェルで添加した。その後、プレートAをPCR機内に37℃で1時間、続いて、65℃で5分間置いた。このプレートをプレートA/Bとラベル付けして、このプレートのテーリングを区別した。
【0355】
iv.第1のPCR反応
以下からなるマスターミックスを15mLファルコンチューブ内で調製した(50ウェル用):1050μLのPCRグレード水、500μLの5倍GC cDNA PCR反応緩衝液、500μLのGC−melt試薬(Clontech番号S1091)、50μLの順方向プライマーDC5dn、50μLのRace7muHC(LCのためのRace 2カッパプライマー)、50μLのdNTP(10mM)、及び50μLのGC ADVANTAGE(登録商標)ポリメラーゼ(Clontech番号S1088)。Race7muHC縮重プライマーヌクレオチド配列は、CAR GTC AMD GTC ACT GRC TCA G(配列番号141)であり、ここで、Rは、AまたはGのいずれかをコードし、Mは、AまたはCのいずれかをコードし、Dは、GまたはAまたはTのいずれかをコードする。Race 2カッパプライマーヌクレオチド配列は、GAG GCA CCT CCA GAT GTT AAC(配列番号142)である。
【0356】
その後、45μLのこのマスターミックスを新たなPCR反応プレートのウェルに移し、その後、プレートA/Bからの鋳型1μLを添加した。その後、このプレートをPCR機内に置き、以下に列記されるように、アニーリング温度の低下を伴うタッチダウンPCR法の下で起動させた。このプレートをプレートCとラベル付けした。
【0357】
タッチダウンPCR法:
96℃で4分間
[96℃で45秒間、64℃で30秒間、68℃で90秒間]を3サイクル、[96℃で45秒間、61℃で30秒間、68℃で90秒間]を3サイクル、[96℃で45秒間、58℃で30秒間、68℃で90秒間]を3サイクル、[96℃で45秒間、57℃で30秒間、68℃で90秒間]を3サイクル、[96℃で45秒間、55℃で30秒間、68℃で90秒間]を3サイクル
[96℃で45秒間、52℃で30秒間、68℃で90秒間]を25サイクル
68℃で5分間、続いて、4℃で保持。
【0358】
その後、3μLのPCR産物を2%臭化エチジウム(EtBr)E−GEL(登録商標)上で泳動させ、バンドを確認した。ExoI/エビアルカリホスファターゼ(SAP)を10μL/ウェルで添加し、PCR機内に37℃で45分間、続いて、85℃で15分間置いた。ExoI/SAPマスターミックスを50ウェル用に作製した:2.5μLの20単位/μLエキソヌクレアーゼI(Fermentas番号EN0582)、25μLのSAP(USB番号70092Y)、472.5μLのPCRグレード水。PCR産物の1:4希釈物を水中で作製した。Race7muHCプライマーを重鎖(HC)の配列決定に使用し、Race7.1muLCプライマーをLCの配列決定に使用した。Race7.1muLCプライマーヌクレオチド配列は、ACT GCT CAC TGG ATG GTG GGA AG(配列番号143)である。
【0359】
v.ゲル濾過及び質量分析特徴付け
ゲル濾過分析のために、200mM K
2PO
4、250mM KCl、pH7.0を移動相として使用して、10mLの精製試料をTSK−GEL(登録商標)Super SW3000(4.6mm内径×30cm、TOSOH Bioscience)に0.35mL/分で注入した。およそ2mgの精製IgGを、50mMジチイオレイトール(dithioreitol)で、37℃で20分間にわたって還元し、PLRP−Sカラム(Agilent)及びアセトニトリル勾配を使用してオンライン逆相分離した後に、飛行時間型(TOF)質量分析(Agilent LC/MS 6224)により分析した。インタクトな質量を、MassHunter定性分析ソフトウェア(Agilent)を使用して収集されたm/zスペクトルの最大エントロピー逆重畳積分により決定した。
【0360】
vi.結果
19B12、20E2、3A5、12A5、及び15H6の重鎖可変領域(VH)の配列を、
図6Aに示す。19B12、20E2、3A5、12A5、及び15H6の軽鎖可変領域(VL)の配列を、
図6Bに示す。これらのクローンは、特有の重鎖及び軽鎖を有する。質量分析データは、配列データを裏付けた(表3及び4を参照のこと)(例えば、Bos et al.Biotechnol.Bioeng.112(9):1832−1842,2015を参照のこと)。
表3:質量分析により決定されたHC質量
表4:質量分析により決定されたLC質量
【0361】
E.抗体15H6及び19B12の再編成
i.抗体15H6及び19B12のTOPO(登録商標)クローニング
TOPO(登録商標)クローニングを行って、5’−RACE PCR産物(上述のもの)の直接配列決定から得られた抗体クローン15H6及び19B12の可変領域配列を確認した。TOPO(登録商標)TAクローニング反応を、pCR(商標)4−TOPO(登録商標)TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen K4575−02)マニュアルに記載されるように行った。手短に言えば、2μLのPCR産物、2μLの水、1μLのpCR(商標)4−TOPO(登録商標)ベクター、及び1μLの含塩溶液をチューブ内で組み合わせ、混合し、室温で5分間インキュベートした。その後、反応物を氷上に置き、2μLのこのTOPO(登録商標)クローニング反応物をONE−SHOT(登録商標)化学的にコンピテントなTOP10 Escherichia coli細胞(Invitrogen K4575−02)の解凍バイアルに添加し、ピペッティングせずに混合した。反応物を氷上で5〜30分間インキュベートした。その後、細胞を振盪せずに42℃で30秒間熱ショックした。チューブを直ちに氷に移した。250μLの室温SOC培地を添加した。チューブに蓋をし、37℃で1時間、200rpmで水平に振盪した。次に、各形質転換体から50μLを、50μg/mLのカルベニシリンを含有する予め加温したLB寒天プレート上に広げた。プレートを37℃で一晩インキュベートし、コロニーを翌日採取し、プラスミド精製を行った。配列を確認し、各々TOPO(登録商標)ベクター中の15H6 VH及びVL配列、ならびに19B12 VH及びVL配列を含有する特定のウェルを、無制限クローニングにおけるソースベクターとして使用するために選択した。
【0362】
ii.mIgG2aへの無制限クローニング
TOPO(登録商標)ベクターにおける重鎖及び軽鎖可変領域を、LCについて以下の方法でPCRミックスを設定することによって増幅した:0.5μLの鋳型DNA(ミニプレップソースベクター)、4μLの15H6 VL順方向プライマー、4μLの15H6 VL逆方向プライマー、2μLの10mM dNTP、20μLの5倍HF緩衝液、1μLのPHUSION(登録商標)ポリメラーゼ(F−549L、Thermo Scientific、2U/μL)、及び68.5μLの水。HCのクローニングのための反応ミックスを、15H6 VH順方向及び逆方向プライマーを使用したこと以外は、同じ方法で設定した。19B12 PCRミックスを、19B12プライマーを使用したこと以外は、15H6ミックスと同じ方法で設定した。プライマー配列は、以下の通りであった:
【0363】
15H6 VL順方向プライマーヌクレオチド配列:GCA ACT GCA ACT GGA GTA CAT TCA CAA ATT GTT CTC TCC CAG TCT CC(配列番号144)。
【0364】
15H6 VL逆方向プライマーヌクレオチド配列:GGA TAC AGT TGG TGC AGC ATC AGC CCG TTT GAT TTC CAG CTT GG(配列番号145)。
【0365】
15H6 VH順方向プライマーヌクレオチド配列:GCA ACT GCA ACT GGA GCG TAC GCC CAG GTC CAG CTG CAG CAG TCT GG(配列番号146)。
【0366】
15H6 VH逆方向プライマーヌクレオチド配列:GGG CCC TTG GTG GAG GCT GAG GAG ACG GTG ACT GAG GTT CCT TGA CCC(配列番号147)。
【0367】
19B12 VL順方向プライマーヌクレオチド配列:GCA ACT GCA ACT GGA GTA CAT TCA AAC ATT GTG GTG ACC CAA TCT CC(配列番号148)。
【0368】
19B12 VL逆方向プライマーヌクレオチド配列:GGA TAC AGT TGG TGC AGC ATC AGC CCG CTT TAT TTC CAG CTT GG(配列番号149)。
【0369】
19B12 VH順方向プライマーヌクレオチド配列:GCA ACT GCA ACT GGA GCG TAC GCC GAG GTG AAG CTG GTG GAA TCT GGG GGA GG(配列番号150)。
【0370】
19B12 VH逆方向プライマーヌクレオチド配列:GGG CCC TTG GTG GAG GCT GAG GAG ACG GTG ACT GCG GTT CCT TGA CCC(配列番号151)。
【0371】
PCRサイクル条件は、以下の通りであった:
98℃で30秒間
[98℃で15秒間、68℃で30秒間、72℃で35秒間]を35サイクル
72℃で10分間
【0372】
増幅したVH及びVLをプライマーとして使用して、15H6 LCについて以下の方法でPCRミックスを設定することによって鋳型DNAを増幅した:1.25μLの鋳型mIgG2a PRKベクターDNA(1:10希釈のミニプレップ)、0.5μLの15H6 VL PCR産物(100〜200ng/μL)、1μLの10mM dNTP、10μLのHF緩衝液(5倍)、1μLのPHUSION(登録商標)ポリメラーゼ、及び35.75μLの水。15H6 HC PCRミックスを、15H6 VH PCR産物を使用したこと以外は、同じ方法で設定した。19B12 PCRミックスを、19B12 PCR産物を使用したこと以外は、同じ方法で設定した。
【0373】
PCRサイクル条件は、以下の通りであった:
98℃で30秒間
[98℃で15秒間、68℃で30秒間、72℃で4分間]を25サイクル
72℃で10分間
【0374】
その後、18μLのPCR反応物を新たなチューブに移し、チューブを定期的に回転させながら、2μLのDpnI(番号RO176L、NEB 20,000U/mL)で、37℃で2時間消化した。30μLのコンピテントなNOVABLUE SINGLES(商標)コンピテント細胞(Novagen、70181)を、製造業者の指示に従って1μLのDpnI消化物で形質転換した。手短に言えば、細胞を解凍し、DNAを添加し、細胞を氷上で5分間インキュベートした後に、30秒間熱ショックし、氷上に2分間戻し、続いて、SOC培地を添加した。25μLまたは50μLを50μg/mLカルベニシリン含有プレート上にプレーティングし、37℃で一晩置いた。コロニーを翌日採取し、プラスミド精製をミニプレップにより行い、プラスミドを配列決定した。
【0375】
iii.抗体精製
293細胞上清からの自動精製を、500mLのMCA96ヘッドを有するTecan Freedom EVO(登録商標)200液体処理システム上で行った。手短に言えば、IgGを、20mLのMABSELECT SURE(商標)樹脂(Glygen Corp.,Columbia,Maryland&GE Healthcare,Pittsburgh,Pennsylvania)をカスタム充填した先端カラムを使用して捕捉した。1倍PBS(pH7.4)で洗浄した後、IgGを160mLの50mMリン酸(pH3)中に溶出し、12mLの20倍PBS(pH11)で中和した。MABSELECT SURE(商標)先端カラムを0.1MのNaOH中で取り除き、1倍PBS(pH7.4)で再生して、最大15回連続使用した。同様に、Fabを、20mLのGAMMABIND(商標)Plus樹脂(Glygen Corp&GE Healthcare)をカスタム充填した先端カラムを使用して捕捉し、続いて、1倍PBS(pH7.4)で洗浄した。Fabを190mLの10mMクエン酸(pH2.9)中に溶出し、19mLの0.4M Tris(pH8.7)で中和した。GAMMABIND(商標)Plus先端カラムを6Mグアニジンで取り除き、1倍PBS(pH7.4)で再生して、最大15回連続使用した。
【0376】
iv.組換え15H6及び19B12抗体は、元の遮断活性を保持する
huHtrA1−FL活性を阻害する組換え15H6及び19B12抗体の能力を、上述のC節に記載のFRET遮断アッセイを使用して評価した。これらの両方の組換え抗体は、ハイブリドーマ由来の抗体から決定されるように、それらの元の遮断活性を保持した(
図7A及び7B)。組換え15H6抗体がおよそ0.7nMのIC50を有した一方で、組換え19B12抗体は、およそ1.2nMのIC50を有し、これは、ハイブリドーマ由来の抗体の活性を反映した(
図7A及び7B)。
【0377】
実施例2:抗HtrA1ハイブリドーマ抗体15H6及び19B12のヒト化
A.抗HtrA1抗体15H6のヒト化
マウス15H6抗体(m15H6とも称される)の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)配列をヒト抗体コンセンサス配列とアラインし、ヒトコンセンサス軽鎖カッパI(huκ1)及びヒトコンセンサス重鎖下位群I(huVH1)を最も近いヒトフレームワークと特定した(
図8A及び8B)。
【0378】
m15H6軽鎖及び重鎖の超可変領域(HVR)を、各超可変領域に別個のオリゴヌクレオチドを使用したKunkel変異誘発(例えば、Kunkel et al.,Methods Enzymol.154:367−382,1987を参照のこと)によって、それぞれ、huκI及びhuVH1コンセンサスアクセプターフレームワークにグラフトして、抗体クローンh15H6.v1を生成した(
図8A及び8B)。このプロセスでは、m15H6 VLのHVR−L1の24〜34位、HVR−L2の50〜56位、及びHVR−L3の89〜97位をhuκIコンセンサスアクセプターにグラフトし、m15H6 VHのHVR−H1の26〜35位、HVR−H2の49〜65位、及びHVR−H3の95〜102位をhuGIコンセンサスアクセプターにグラフトした。軽鎖のフレームワーク領域2(FR−L2)内の46位、47位、及び49位、ならびに重鎖のフレームワーク領域3(FR−L3)内の67位、69位、71位、及び93位も、ヒト化プロセスに含め、これは、Foote及びWinterが、抗体と抗原との複合体の結晶構造について分析し、これらの位置が、HVR構造を調整し、かつ抗原に適合するように微調整することができる「Vernier」ゾーンとしての役割を果たすフレームワーク残基の一部であると見出したためである(Foote et al.,J.Mol.Biol.224:487−499,1992)(
図8A〜8B)。ヒト及びマウスHrtA1のFab形式でのm15H6及びh15H6.v1の結合親和性を、以下のC節の小節iiに記載のBIACORE(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)結合分析により測定した(
図9A〜9D)。表5は、この分析の結果を要約する。
表5:m15H6及びh15H6.v1のHtrA1への動態結合分析
【0379】
h15H6.v1におけるマウスVernier残基の重要性をさらに評価するために、この抗体をファージ上にディスプレイし、個々のVernierマウス残基(LC:P46、W47、S49;HC:A67、L69、A71、及びT93)をヒト残基(LC:L46、L47、Y49;HC:V67、I69、R71、及びA93)で置き換えて、点変異変異形を生成した。全ての7変異形をヒトまたはマウスHtrA1に対するファージ競合ELISAに供して、結合親和性(ファージIC50に関して、以下のC節の小節iを参照のこと)を決定した。結果は、LC−P46L変異形がヒトHtrA1及びマウスHtrA1の両方へのh15H6.v1結合を完全に消失させたことを示した。LC−S49Y変異形は、ヒト及びマウスHtrA1への結合を約10倍低減した(
図10A及び10B)。HC変異形HC−A67VもHC−T93Aもいずれも、マウスHtrA1への結合にのみ影響を及ぼし、ヒトHtrA1への結合には影響を及ぼさなかった(
図10A及び10B)。他の変異形、LC−W47L、HC−L69I、及びHC−A71Rは、ヒト及びマウスHtrA1への結合のいかなる有意な低下も示さなかった(
図10A及び10B)。したがって、抗体クローンh15H6.v1を、以下の変異:LC−W47L、HC−L69I、及びHC−A71Rを付加することによってさらに操作して、抗体クローンh15H6.v2を生成した(
図8A及び8Bを参照のこと)。
【0380】
抗体クローンh15H6.v2の化学的安定性分析により、HVRにおけるいくつかの潜在的に不安定な残基または残基対:HVR−L3におけるW91(酸化)、HVR−L3におけるN94 P95(クリッピング)、及びHVR−H2におけるD55 G56(異性化)が特定された。例えば、以下の実施例4を参照されたい。HVR−L3におけるW91酸化に対処するために、2つの変異形(LC−W91Y及びLC−W91L)を生成し、BIACORE(商標)SPR結合分析のためにFabとして産生した。以下の表6に要約される結果は、位置LC−W91が結合親和性に重要であり、置換がヒト及びマウスHtrA1への結合に約20〜50倍影響を与えたことを示した(
図11A及び11B)。
表6:h15H6.v2 LC−W91変異形のHtrA1への動態結合分析
【0381】
HVR−L3の位置LC−N94 LC−P95でのクリッピングについて、h15H6.v2の4つの変異形(LC−N94A LC−P95(APとも称される)、LC−N94E LC−P95(EPとも称される)、LC−N94Q LC−P95(QPとも称される)、及びLC−N94S LC−P95(SPとも称される))を生成し、BIACORE(商標)結合分析のためにFabとして産生した。結果は、AP及びEP変異形がヒトHtrA1と同様の結合親和性を示し、QP及びSP変異形がヒトHtrA1に対する結合親和性をおよそ2倍低減させたことを示した(
図12A〜12B)。この分析の結果を要約する表を
図12Bに示す。
【0382】
HVR−H2の残基HC−D55 HC−G56での異性化について、4つの変異形(HC−D55A HC−G56(AGとも称される)、HC−D55E HC−G56(EGとも称される)、HC−D55S HC−G56(SGとも称される)、及びHC−D55 HC−G56A(DAとも称される))を生成し、BIACORE(商標)結合分析のためにFabとして産生した。結果は、EG変異形のみがヒトHtrA1に対して同等の結合親和性を示し、重鎖55位及び/または56位のこれらの変異形の残りがヒトHtrA1に対する結合親和性を2〜3倍低減させたことを示した(
図13A及び13B)。この分析の結果を要約する表を
図13Bに示す。
【0383】
これらの結果に基づいて、変異形AP(HVR−L3)及びEG(HVR−H2)の両方を抗体クローンh15H6.v2の配列に導入して、抗体クローンh15H6.v2.APEG(h15H6.v3またはAP_EGとも称される)を生成した(
図8A及び8Bを参照のこと)。このクローンを、LC−N94E LC−P95 HC−D55E HC−G56(EP_EGとも称される)、LC−N94Q LC−P95 HC−D55E HC−G56(QP_EGとも称される)、及びLC−N94S LC−P95 HC−D55E HC−G56(SP_EGとも称される)を含むh15H6.v2のいくつかの他の変異形と比較した。BIACORE(商標)SPR分析は、h15H6.v2.APEGがh15H6.v2に対して同等の結合親和性を保持したことを示した(
図14A及び14B)。この分析の結果を要約する表を
図14Bに示す。HtrA1活性の活性を遮断するこれらの変異形の能力を、実施例1に記載のFRETに基づく遮断アッセイを使用して決定した(
図14C及び14D)。Fab形式でのこれらの変異形のpIもソフトウェアプログラムSMACK(例えば、Sharma et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:18601,2014を参照のこと)を使用して決定し、抗VEGF Fabラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))と比較して表7に示す。
表7:H15H6.v2変異形のpI
【0384】
B.抗HrtA1ハイブリドーマ抗体19B12のヒト化
マウス抗体19B12(m19B12とも称される)のVL及びVHのアミノ酸配列をヒトコンセンサス配列とアラインし、ヒトコンセンサス軽鎖カッパIV(huκ4)及びヒトコンセンサス重鎖下位群III(huVH3)を最も近いヒトフレームワークと特定した(
図15A〜15B)。
【0385】
m19B12軽鎖及び重鎖の超可変領域を、各超可変領域に別個のオリゴヌクレオチドを使用したKunkel変異誘発によって、それぞれ、huκ4及びhuVH3コンセンサスアクセプターフレームワークにグラフトして、本明細書で抗体クローンh19B12.v1と称される直接HVRグラフト変異形を生成した。このプロセスでは、19B12 VLのHVR−L1の24〜34位、HVR−L2の50〜56位、及びHVR−L3の89〜97位をhuκ4コンセンサスアクセプターにグラフトし、19B12 VHのHVR−H1の26〜35位、HVR−H2の50〜65位、及びHVR−H3の95〜102位をhuGIIIコンセンサスアクセプターにグラフトした(
図15A〜15B)。
【0386】
m19B12及びh19B12.v1(Fab形式)の結合親和性を、以下のC節の小節iiに記載のアプローチを使用したBIACORE(商標)SPR(
図16A−16D)を使用して決定した。この分析の結果を以下の表8に要約する。h19B12.v1のヒトHtrA1への平衡結合定数(KD)は、m19B12と比較して、ヒト化後におよそ2倍改善された(表8)。
表8:m19B12またはh19B12.v1のHtrA1への動態結合分析
【0387】
C.材料及び方法
i.ファージIC50を決定するためのファージ競合ELISA
MAXISORP(商標)マイクロタイタープレートをPBS中2μg/mLのヒトHtrA1−PD−Hisで2時間コーティングし、その後、PBST緩衝液(PBS中0.5%BSA及び0.05%TWEEN(登録商標)20)で、室温で1時間遮断した。培養上清から精製されたファージを、組織培養マイクロタイタープレート内でPBST緩衝液中連続希釈されたヒトまたはマウスHtrA1と1時間インキュベートし、その後、混合物の80μLをヒトHtrA1でコーティングされたウェルに15分間にわたって移して、結合していないファージを捕捉した。プレートをPBT緩衝液(PBS中0.05%TWEEN(登録商標)20)で洗浄し、HRPコンジュゲート抗M13抗体(Amersham Pharmacia Biotech)を40分間にわたって添加した(PBST緩衝液中1:5000)。プレートをPBT緩衝液で洗浄し、テトラメチルベンジジン基質(Kirkegaard and Perry Laboratories,Gaithersburg,MD)を添加することによって現像した。450nmでの吸光度を溶液中の標的濃度の関数としてプロットして、ファージIC50を決定した。これを、ファージの表面にディスプレイされたFabクローンの親和性推定値として使用した。
【0388】
ii.BIACORE(商標)による抗体親和性決定
抗HtrA1 Fabの結合親和性を単一サイクル動態により決定するために、BIACORE(商標)T100機器での(SPR)測定を使用した。手短に言えば、シリーズSセンサチップCM5を、供給業者の指示に従って1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)試薬で活性化し、ストレプトアビジン(Pierce)をカップリングしておよそ2500応答単位(RU)を達成し、その後、反応していない基を1Mエタノールアミンで遮断した。
【0389】
動態測定のために、ビオチン化ヒトまたはマウスHtrA1−PD−Hisを最初に10μL/分の流量で注入して、3つの異なるフローセル(FC)でおよそ150RUを捕捉し(参照の役割を果たしたFC1を除く)、その後、低(0.48nM)〜高(300nM)のHBS−P緩衝液(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)中抗HtrA1 Fabの5倍連続希釈物を注入間で再生せずに同じサイクルで交互に注入した(流量30μL/分)。センサグラムを記録し、参照及び緩衝液減算に供した後に、BIACORE(商標)T100評価ソフトウェア(バージョン2.0)で評価した。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純な一対一ラングミュア結合モデルを使用して計算した。平衡解離定数(KD)をk
off/k
on比として計算した。
【0390】
実施例3:抗HtrA1抗体クローンh15H6.v2の親和性成熟
A.h15H6.v2親和性成熟NNKライブラリ構築及びパニング
抗HtrA1抗体クローンh15H6.v2の親和性をさらに改善するために、ファージライブラリを、20個全てのアミノ酸をコードするNNK縮重コドンを使用して32個のコドンでランダム化された軽鎖HVR残基(すなわち、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3)または重鎖HVR残基(すなわち、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3)残基のいずれかを有する一価FabファージディスプレイのためのFab−amber形式の変異形h15H6.v2から構築した(例えば、Brenner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(12):5381−5383,1992を参照のこと)。ライブラリを、3つの軽鎖または重鎖HVRの各々における1つのNNK変異を許容するように設計した。結果として生じたライブラリDNAをE.coli XL1細胞に電気穿孔して、およそ10
9個の形質転換体を得た。いくつかの例では、ソフトランダム化ライブラリ及びNNKエピスタシスをPCT/US2015/055672に記載されるように用いた。ファージライブラリを、SUPER遮断(商標)PBS緩衝液(Pierce)及び0.05%TWEEN(登録商標)20中750mMのNaClと30分間インキュベートし、その後、ニュートラアビジンで捕捉されたビオチン化HtrA1−Hisタグに第1のパニングラウンドにわたって適用して、HtrA1とファージとの間の非特異的荷電相互作用を低減した。その後の2ラウンドでは、減少した濃度のビオチン化huHtrA1−PD−His抗原を溶液中の競合相手として1000倍非ビオチン化HtrA1とともに使用して、選択ストリンジェンシーを増加させた。パニング戦略の概略図については、
図17を参照されたい。
【0391】
B.h15H6.v2親和性成熟ライブラリのディープ配列決定
ディープ配列決定のために、ファージミド二本鎖DNAを、初期ファージライブラリ及び第3の選択ラウンド由来のファージミドベクターを持つE.coli XL−1細胞から単離した。精製DNAを、PHUSION(登録商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用したVL及びVH領域の限定サイクルPCRに基づく増幅の鋳型として使用した。PCR産物をアガロースゲル抽出及び浄化(Qiagen Gel Extraction Kit)により精製した。溶出アンプリコンDNAを、TRUSEQ(商標)DNA Sample Prep kit(Illumina)を使用した標準のIlluminaライブラリ調製方法を用いて、ディープ配列決定ライブラリ調製物の基準として使用した。アダプターでライゲートしたライブラリを単一のPCRサイクルに供し、必要に応じて200bpまたは300bpの挿入サイズで対合末端配列決定を使用してIllumina MISEQ(登録商標)で配列決定して、アンプリコンの全長をカバーした。
【0392】
C.h15H6.v2親和性成熟ライブラリのディープ配列決定分析
配列決定データを、統計プログラミング言語R(例えば、R Core Team,R:A language and environment for statistical computing,2013を参照のこと)及びShortReadパッケージ(Morgan et al.,Bioinformatics 25(19):2607−2608,2009を参照のこと)を使用して分析した。品質管理(QC)を、各HVR配列が正しい長さについての検査を受け、かつNNK変異を最大1つのみ有し、非NNK変異を有しないよう許可された特定されたHVR配列で行った。位置重み行列を、あらゆるランダム化された位置の全ての変異の頻度を計算することによって生成した。各変異の濃縮比を、先に記載されるように(Fowler et al.,Nature Methods 7(9):741−746,2010)、選別された試料における所与の位置での所与の変異の頻度を選別されていない試料における全く同じ変異の頻度と分けることによって計算した。軽鎖HVR位置及び重鎖HVR位置における各変異の濃縮比を示すヒートマップを、それぞれ、
図18A及び18Bに示す。
【0393】
高濃縮比を有する軽鎖または重鎖ライブラリ由来の単一変異を選択して、クローニングのために合成してFlagタグを含む哺乳類Fab発現構築物にして、Fab−Flagタグ融合タンパク質を生成した。重鎖または軽鎖をコードするプラスミドを30mL発現のために293T細胞にトランスフェクトし、Fabを抗Flagカラムで精製した。
【0394】
単一変異を含む精製したFabを、BIACORE(商標)SPR分析(以下のD節を参照のこと)を使用して結合親和性を決定するために使用した。単一変異の親和性データを表9に要約する。オフ速度は、h15H6.v2の値約0.0016と比較して、約0.0013〜約0.004の範囲であった。変異形LC3(LC−N31E)は、オフ速度を15H6.v2に対して2〜3倍改善した。
表9:ディープスキャニング変異誘発によって特定されたh15H6.v2変異の結合親和性
【0395】
D.さらなる親和性改善のための選択された変異形の組み合わせ
重鎖または軽鎖NNKライブラリ由来の単一変異の大半が、親クローンh15H6.v2に対してHtrA1に対する結合親和性を改善しなかった(表9)。最も遅いオフ速度を有する変異形を軽鎖(LC3、LC4、及びLC7)変異形ならびに重鎖(HC1、HC2、HC3、及びHC5)変異形の両方から選択して、組み合わせ変異体を生成した。これらの組み合わせ変異体は、変異形軽鎖及び変異形重鎖の両方を含んだ。BIACORE(商標)動態分析を、組み合わせ変異体を使用して(以下のC節に記載されるように)行った。組み合わせ変異体LC3.HC3、LC3.HC1、及びLC7.HC2は、親Fab(h15H6.v2)に対して2〜3倍の親和性改善を有した(表10)。
表10:HtrA1への組み合わせ変異体結合の動態分析
【0396】
次に、LC変異体(LC37=LC3_LC7、LC347=LC3_LC4_LC7)及びHC変異体(HC13=HC1_HC3、HC23=HC2_HC3)をさらに組み合わせた。これらの変異体を、親和性動態分析のために自己切断及び脱アミド化を回避するように、HVR−L3 N94A及びHVR−H2 D55E変異形(すなわち、AP_EG、実施例2を参照のこと)を組み込むことによってさらに修飾した。
【0397】
APEG.LC3.HC1、APEG.LC3.HC3(h15H6.v4)、APEG.LC37.HC13、APEG.LC37.HC23、APEG.LC347.HC13、及びAPEG.LC347.HC23が、上位のクローンであり、h15H6.v2に対して平均して3倍〜5倍の改善を有した(
図20)。これらの変異形のVL及びVHアミノ酸配列を、それぞれ、
図21A及び21Bに示す。これらのクローンの配列を、コンピュータによる分析を使用してHVR−L3 W91での酸化の潜在的リスクにより分析した(Sharma et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 111:18601,2014)。APEG.LC3.HC3(h15H6.v4)、APEG.LC37.HC13、及びAPEG.LC347.HC13を、h15H6.v3と同等のリスクとランク付けした。他のものは、h15H6.v2よりも危険性が高かった。
【0398】
E.BIACORE(登録商標)SPRによるFab親和性決定
HtrA1の選択されたFab変異形の結合親和性を決定するために、BIACORE(商標)T200機器でのSPR測定を行った。手短に言えば、シリーズSセンサチップCM5を、供給業者の指示に従って1−EDC及びNHS試薬で活性化し、抗His抗体をカップリングして200〜300応答単位(RU)を達成し、その後、反応していない基を1Mエタノールアミンで遮断した。動態測定のために、およそ5nMのhuHtrA1−PD−Hisを最初に10μL/分の流量で注入して、2つの異なるフローセル(FC)でおよそ100RUを捕捉した(参照の役割を果たしたFC1を除く)。次に、低(0.8nM)〜高(50nM)のHBS−P緩衝液(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20)中Fabの5倍連続希釈を注入した(流量30μL/分)。HtrA1に対する結合応答を、RUを空のフローセルから除することによって補正した。センサグラムを記録し、参照及び緩衝液減算に供した後に、BIACORE(登録商標)T200評価ソフトウェア(バージョン2.0)で評価した。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純な一対一ラングミュア結合モデルを使用して計算した。平衡解離定数(KD)をk
off/k
on比として計算した。
【0399】
F.HtrA1 FRETに基づく遮断アッセイ(H2−Opt遮断アッセイ)におけるh15H6.v2変異形の阻害活性
選択された親和性成熟h15H6.v2変異形を、HtrA1活性を阻害する能力について試験した。H2−Opt基質((Mca)IRRVSYSF(Dnp)KK)を使用したインビトロでのFRETに基づく遮断アッセイを行った。H2−Opt遮断アッセイを、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0129743A1号の実施例3に記載されるように行った。手短に言えば、HtrA2の基質として当初説明されたペプチドH2−Opt(Mca−IRRVSYSF(Dnp)KK)(配列番号152)(例えば、Martins et al.,J.Biol.Chem.278:49417−27,2003を参照のこと)を、標準のHBTUを用いたカップリング手技を使用してFmoc−Lys(Boc)−wang樹脂上で合成した。Fmoc−Lys(DNP)−−OH(Anaspec)をP5’位に組み込んだ。ペプチドを最大P5(Mca、7−メトキシ−クマリン、Aldrich)まで合成し、その後、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシラン、及び水を使用して固体支持体から室温で2時間にわたって切断した。ペプチドをエチルエーテルから沈殿させ、酢酸、アセトニトリル、水で抽出し、凍結乾燥させた。粗標識ペプチドを溶解し、アセトニトリル/水を使用して分取逆相C18カラムで精製した。精製した画分をプールし、凍結乾燥させ、液体クロマトグラフィー/質量分析(PE/Sciex)により分析し、それらの計算された質量と一致していることを見出した。
【0400】
HtrA1を、96ウェル黒色光学底プレート(Nalge Nunc Int.,Rochester、N.Y.)中で、アッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0)、200mM NaCl、0.25%CHAPS)中で連続希釈した抗HtrA1抗体と37℃で20分間インキュベートした。DMSO中ペプチド基質Mca−IRRVSYSF(Dnp)KK(配列番号152)(H2−Opt)の10mM原液を水中で12.5μMに希釈し、37℃で予温し、その後、反応混合物に添加した。蛍光シグナル(励起328nm、発光393nm)の増加をSPECTRAMAX(登録商標)M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,Calif.)で測定し、H2−Opt切断の線形速度(mRFU/分)を決定した。
【0401】
図22Aは、本質的に上述のように行った3つの独立したH2−Optアッセイ実験の結果の要約を示す。クローンの大半が、h15H6.v2の約0.39nMと比較して、約0.4nm〜約0.5nMの範囲のIC50値を有した。抗HtrA1抗体APEG.LC3.HC3(h15H6.v4とも称される)は、このアッセイで、約0.386nMで最良のIC50値を示した(
図22A)。
図22Bは、この分析からの代表的なプロットを示す。概して、親和性成熟h15H6.v2変異形は、h15H6.v2と比較してHtrA1の最大阻害の改善を示し(
図22A)、最大阻害値は、約78%〜約96%の範囲であった。
【0402】
FRETに基づくH2−Opt遮断アッセイを使用して、HtrA1活性を阻害するh15H6.v4を含むh15H6.v2変異形の異なる抗体形式の能力を評価した。H2−Optアッセイを、アッセイ条件が、1nM huHtrA1−PD酵素、1.25μM H2−Opt基質、50mM Tris(pH8)、200mM NaCl、0.25%CHAPSであったことを除いて、本質的に表術のように行った。結果を、相対蛍光単位(RFU)/秒速度(50〜1000秒)または2000秒での終点RFU値に基づいて分析した。
図23A〜23Hは、huHtrA1−PDの活性を阻害するFab形式でのh15H6.v2の能力とIgGまたはFab形式でのh15H6.v4の能力を比較する例示の独立した実験の結果を示す。抗HtrA1抗体YW505.94a(WO2013/055988を参照のこと)は、陽性対照の役割を果たした。
図24A及び24Bは、それぞれ、RFU/秒アプローチを使用して分析した第1の組の3つの独立した実験からのIC50結果及びIC90結果の要約を示す。
図25A及び25Bは、それぞれ、h15H6.v4 FabのRFU/秒または終点RFUアプローチを使用して分析した第2の組の3つの独立した実験からのIC50結果及びIC90結果の要約を示す。
【0403】
G.質量分析に基づく活性アッセイにおけるAPEG.LC3.HC3(h15H6.v4)の遮断能力
インタクトな全長基質(α−カゼイン)のhuHtrA1−PD媒介切断を阻害するAPEG.LC3.HC3(h15H6.v4)の能力を、質量分析(MS)に基づく活性アッセイを使用して評定した。この実施例では、抗HtrA1抗体h15H6.v4を、HtrA2に対するアンタゴニストとして説明されているHtrAプロテアーゼの小分子阻害剤ucf−101(別名Omi)と比較した(Cilenti et al.,J.Biol.Chem.278(13):11489−11494,2003)。タンデム質量タグ(TMT)同重体質量タグ化標識を、h15H6.v4またはucf−101の存在下でHtrA1によるα−カゼイン切断のMSに基づく定量に用いた。α−カゼインは、HtrA1:Ser72、Thr95、及びSer157によって切断され得る3つのP1’残基を有した。
【0404】
TMTDUPLEX(商標)同重体質量タグ化試薬を使用して、α−カゼイン標準物及びアッセイ試料を差次的に標識し、インタクトなα−カゼインを定量した。TMTDUPLEX(商標)試薬は、第一級アミン(−NH2)基の不可逆的共有結合標識のためにNHS活性化される複数の組の同重体化合物(すなわち、同じ質量及び構造、別名アイソトポマー)である。各同重体試薬は、質量レポータータグ部分中に異なる数の重同位体を含有し、それにより、試料特定及び相対定量のためのタンデムMS/MS中に特有のレポーター質量がもたらされる。
【0405】
100mM重炭酸トリエチルアンモニウム、100nM huHtrA1、100μg/mL α−カゼイン、及び阻害剤(すなわち、ucf−101またはh15H6.v4)を37℃で18時間インキュベートした(最終体積20μL)(消化溶液)。別個に、同様の溶液を阻害剤なしで生成し、同様にインキュベートした(対照溶液)。h15H6.v4 Fabを3.12nM〜100nMの範囲の濃度で試験し、陽性対照小分子阻害剤ucf−101を2nm〜250nMの範囲の濃度で試験した。
【0406】
タンデム質量タグ(TMTDUPLEX(商標))原液を、販売業者(Thermo Fisher Scientific)に推奨されるように生成した。5μLのTMT−126を消化溶液に添加し、5μLのTMT−127を対照溶液に添加した。室温で1時間インキュベートした後、上述の溶液を等体積基準で合わせた。試料をLC−MSに供し、高エネルギーC−トラップ解離(HCD)を使用して最も強力なイオンピークの断片化により定量し、断片化後の126/127のレポーターイオン強度比を使用して、消化溶液中の濃度を決定した。
【0407】
滴定曲線は、本アッセイがインタクトなα−カゼインを正確に定量したことを示した(
図26B)。このアッセイでは、h15H6.v4 Fabは、約45nMのIC50(IC90=約71nM)でインタクトなα−カゼインのhuHtrA1−PD媒介切断を阻害した。この値は、77μMのIC50を有した小分子阻害剤ucf−101と比較して、顕著に改善された。
【0408】
H.内因性HtrA1活性アッセイにおけるh15H6.v2親和性成熟変異形の遮断能力
ウサギ眼モデルにおける内因性HtrA1活性を阻害するh15H6.v2親和性成熟変異形の能力を評定した。内因性HtrA1活性アッセイについて、HtrA1分泌細胞(ヒトC32メラノーマ細胞)由来の培地をHtrA1源として使用した。例えば、Ciferri et al.Biochem J.September 18,2015,DOI:10.1042/BJ20150601を参照されたい。この内因性アッセイでは、組換えHtrA1 H2−Optアッセイと比較して、およそ10倍高い濃度のHtrA1が存在し(例えば、
図28を参照のこと)、これは、内因性HtrA1及び組換えHtrA1を使用してH2−Optアッセイで観察される異なるIC50値を説明すると考えられることに留意されたい。
図27A〜27Cは、内因性HtrA1アッセイの結果を示す。具体的には、クローンAPEG.LC3.HC3(h15H6.v4)は、約1.125nMのIC50を有し(
図27C)、最大阻害は約80.1%であった。
【0409】
I.選択されたh15H6.v2変異形の特性の要約
抗HtrA1抗体クローンh15H6.v2の選択された誘導体の動態結合及び阻害活性を、BIACORE SPR分析及びFRETに基づくH2−Opt活性アッセイを使用して比較した。最大阻害を決定するために、陽性対照及び陰性対照を使用して、0%阻害(酵素のみ、阻害剤なし)及び100%阻害(酵素なし)を決定した。この比較の結果を
図28に示す。
【0410】
実施例4:抗HtrA1抗体の分子評定分析
抗HtrA1抗体クローンh15H6.v2、h15H6.v2.APEG(h15H6.v3とも称される)、及びAPEG.LC3.HC3(h15H6.v4とも称される)を、安定性特性について分子評定(MA)分析で試験した。抗HtrA1抗体クローンh19B12.v1も試験した。手短に言えば、抗HtrA1抗体(1mg/mL)を、フリーラジカルを生成することで既知の小分子であるAAPH(2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩)を有する化学条件下での応力(例えば、Ji et al.,J.Pharm.Sci.98(12):4485−4500,2009を参照のこと)、ならびに様々なpHでの熱条件下での応力(40℃、pH5.5での2週間の熱応力試験)(例えば、Zhang et al.,J.Chromatography A 1272:56−64,2013を参照のこと)について試験した。
【0411】
表11は、h15H6.v2のMA分析結果とh15H6.v3のMA分析結果との間の比較を示す。顕著に、HVR−L3におけるLC−W91は、AAPH応力後にh15H6.v2及びh15H6.v3の両方において酸化の増加を有した(それぞれ、約84.5%及び約86.4%)。表12は、h15H6.v4のMA分析の結果を示す。驚くべきことに、h15H6.v4の場合のHVR−L3におけるLC−W91での酸化は、h15H6.v2及びh15H6.v3と比較して低減し、h15H6.v2及びh15H6.v3の場合のおよそ84.5〜86.4%の酸化増加と比較して、AAPH応力後に26.5%しか酸化が増加しなかった。この改善は、APEG.LC3.HC3がh15H6.v3と比較して2つしか置換を有さず(すなわち、FR−H1領域におけるHC−T28K及びHVR−L1におけるLC−N31E)、これらはいずれも導入されて親和性を改善し、これらはいずれもLC−W91の酸化に影響を与えないと予想されたため、予想外であった。このMA分析に使用したh15H6.v4抗体を、単一カラム精製手技を使用して調製した。2カラム精製手技を使用して調製した抗体を使用してh15H6.v4のMA分析を繰り返すと、LC−W91がAAPH応力下で不安定であることを示した。2カラム精製を使用して精製した材料で行ったAAPH応力評定の結果が、単一カラム精製材料がAAPH応力評定を妨害した混入物質を含有していたため、単一カラム精製手技により精製した材料を使用して得た結果とは異なったと考えられる。
表11:h15H6.v2及びh15H6.v3のMA特性
表12:h15H6.v4(APEG.LC3.HC3)のMA特性
【0412】
表13は、抗HtrA1抗体クローンh19B12.v1のMA分析の結果を示す。HVR−H2におけるHC−N52a HC−G53を不安定であると決定し、脱アミド化増加は49%であった。したがって、h19B12.v1のこれらのHVR−H2位置(例えば、HC−N52aE、HC−N52aS、HC−N52aS、及びHC−N52a HC−G53A)での置換は、安定性を改善すると予想される。
表13:h19B12.v1のMA特性
【0413】
実施例5:HtrA1に結合したh15H6.v4 Fabの構造
HtrA1に結合したh15H6.v4 Fabの構造をX線結晶学及び電子顕微鏡法により決定した。結果は、h15H6.v4 Fab HtrA1エピトープがHtrA1のLAループのターンを含むアミノ酸によって主に形成されることを実証した。
【0414】
ペプチド合成:
HtrA1タンパク質の領域に対応するペプチドを、当該技術分野で周知の方法を使用して生成した。例えば、Atherton,E.,et al.(1978).J.Chem Soc.Chem.Commun.13:537−539を参照されたい。
【0415】
結晶化:
0.15M NaCl、20mM Tris(pH7.5)中10mg/mL h15H6.v4 Fab(1mL)を、HtrA1のLAループ内にアミノ酸を含有する1mgのペプチド(3倍モル過剰ペプチド/タンパク質)と4℃で一晩インキュベートした。Fab−ペプチド複合体を、2M硫酸アンモニウム、0.2M酢酸カリウムを使用して結晶化した。
【0416】
X線精密化:
h15H6.v4 Fab/HtrA1ペプチド結晶を収集し、30%グリセロールを母液に添加し、その後、液体窒素中に急浸漬することによって作製された抗凍結剤溶液中に浸漬することによって回折分析のために保存した。データをSSRLビームライン12−2で収集し、XDSを使用して処理した(Kabasch W(2010)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.266:125−32)。Fab−ペプチド複合体の分子置換を、CCP4における探索プローブとしてFab構造を使用して達成した(Winn MD et al.(2011)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.67:235−42)。厳密なボディ精密化後、ペプチドのFo−Fc密度を確認することができた。その後、ループA(RKLPFSKREVPV)由来のHtrA1プロテアーゼドメイン残基の一部(PDB 3TJO)を、Emsley et al.(2010)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.66:125−32に本質的に記載されるように、密度にフィットさせた。
【0417】
Phenixにおけるいくつかの精密化ラウンド(Adams PD et al.(2010)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.66:213−21)を利用した。Busterにおける最終精密化ラウンド(Bricogne G et al.(2011)により、R値をR=16.8%にし、Rfree=19.8%、2.1Å分解能であった。
【0418】
HtrA1に結合したFab15H6.v4の電子顕微鏡法(EM)構造
EM撮像のために、4μLのHtrA1−hFab15H6.v4複合体を、新たにグロー放電された連続炭素400メッシュ銅格子(Electron Microscopy Sciences)上で30秒間インキュベートした。インキュベートした後、試料を、2w/v%ギ酸ウラニル(SPI Supplies)溶液を使用して陰性染色した。過剰な染色溶液をワットマン紙で拭き取り、格子を空気乾燥させた。HtrA1−Fab15H6.v4試料を、LaB6フィラメントを装備し、かつ低用量条件下にて120keVで動作するTecnai−12 BioTween(FEI)で分析した。画像を、見かけの倍率62,000倍(1ピクセル当たり2.22Å)の4k×4k CCDカメラ(Gatan Inc.)を使用して収集した。128pxのボックスサイズを有する27346個の粒子を、EMAN2分布に含まれたe2dogpicker.pyルーチン下で入手可能な遊走アルゴリズムを使用して半自動的に選定した(Tang L et al.(2007)J.Chem.Inf.Model.47:1438−45)。その後、これらの粒子を、ソフトウェアスイートRelionを使用して参照なしの2次元分類に供した(Scheres SH(2012)J.Struct.Biol.180:519−30)。HTRA1三量体と結合したFabとの間の柔軟性を考慮して、Relionの3次元分類アルゴリズムを使用して、60Åの分解能にローパスフィルタリングしたHtrA1三量体(PDB ID 3TJO)の結晶構造を出発モデルとして使用した5つの3次元体積を生成した。これらの体積の各々を、RelionのRefine3Dアルゴリズムを使用して最後に精密化した。HTRA1三量体及びFab15H6.v4の結晶構造の原子密度を、Chimeraのフィットインマップアルゴリズムを使用してEM密度にフィットさせた(Pettersen EF et al.,2004)。J.Comput.Chem.25:1605−12(2004)。
【0419】
アラニン置換を使用したHtrA1に結合したFab15H6.v4 Fabの構造の検証
上述の構造研究は、Fab15H6.v4 FabがHtrA1タンパク質のループ「A」と密接に相互作用することを実証した。これを確認するために、ヒトHtrA1配列の残基190〜201(この番号付けは、前駆体タンパク質の番号付けに対応する)に対応するペプチドを合成し、上述のように表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してh15H6.v4 Fabへの結合について試験した。ペプチド(LA−pep1)は、0.4nMのKD値を有する15H6.v4 Fabとの強力な結合相互作用を示した。表14を参照されたい。
【0420】
このペプチド配列におけるアラニン置換は、15H6.v4 Fabへの結合を減少させる(LA−pep2、LA−pep5)か、または完全に消失させる(LA−pep3、LA−pep4、LA−pep5)。これらの生物物理学的結果は、上述かつ
図32A及び32Bの構造研究と一致し、15H6.v4に対する結合エピトープがHtrA1のLAループのターンを含むアミノ酸によって主に形成されることを実証する。
【0421】
対照的に、YW505.94 Fabは、LA−pep1にも、変異体形態のうちのいずれにも結合しなかった(表14)。これは、YW505.94 Fabとh15H6.v4がHtrA1に結合するために互いに競合するという事実にもかかわらず、これらの2つのFabのエピトープがはっきりと異なることを示す。YW505.94 FabのエピトープがループB及びCに中心がある一方で、15H6.v4 Fabのエピトープは、LAループの先端を主に含む。本発明が任意の特定の機構に拘束されるようには意図されていないが、h15H6.v4とHtrA1のLAループとの間の密接な相互作用が、YW505.94と比較して、この抗体の親和性及び効力の著しい改善を説明することが可能である。
表14:15H6.v4 Fab及びYW505.94 FabへのHtrA1ループA(LA)ペプチド結合
*NB:最大1μMで結合検出されず、**親和性損失=K
D変異体/K
D野生型。
【0422】
前述の発明が理解の明確化のために例証及び実施例により多少詳しく記載されているが、これらの記述及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。