(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示のいくつかの態様及び特徴は、金属ストリップの供給可能なコイルを提供するのに適した金属物品(例えば、金属ストリップ)を鋳造し、圧延し、そして他の方法で製造するための分離型及び部分的分離型連続鋳造及び圧延ラインに関する。いくつかの実施例では、冷間圧延又は連続焼鈍固溶化熱処理(CASH)ラインの使用を必要とせず該金属物品を製造する。金属ストリップは、ベルト式鋳造機のような連続鋳造装置から連続鋳造され、場合によって鋳造後の焼入れで処理された後に、金属コイルに巻くことができる。熱間圧延の準備ができるまで、巻かれた鋳放し金属ストリップを格納することができる。鋳放し金属ストリップは、コイル格納中又は熱間圧延の直前に、熱間圧延前に再加熱を受けることができる。加熱された金属ストリップは、圧延温度に冷却し、1つ以上の圧延スタンドにより熱間圧延することができる。圧延された金属ストリップは、送出のために巻き取る前に、場合によって再加熱、焼入れすることができる。この最終のコイル状金属ストリップは、望ましい規格であり、製造施設への供給に望ましい物理的特性を有することができる。
【0007】
本開示のいくつかの態様及び特徴は、アルミニウム合金を高い凝固速度で鋳造し、その後に金属物品を熱間又は温間圧延してその厚さを少なくとも約30%又は約30%〜80%、40%〜70%、50%〜70%又は60%減少させてホットバンドを生成することに関する。いくつかの場合において、金属物品を熱間又は温間圧延する前に、それを約400℃〜580℃の金属ピーク温度で約10〜300秒、60〜180秒又は120秒維持することができるインライン炉を通過させることができる。ホットバンド製品は、最終ゲージ、最終ゲージ及び焼戻しにすることができ、又は冷間圧延及び固溶化熱処理のような更なる加工のために準備することができる。いくつかの場合において、インライン炉は、金熱間又は温間圧延中に5xxx系合金のより多くの厚さの減少を容易にすること特に有用である。本明細書で使用される用語「厚さの減少」とは、圧延の使用による断面の減少の形態を意味する。他の種類の断面減少は、押出された金属物品の直径の減少を含むことができる。熱間又は温間圧延は、それぞれ一種の熱間加工又は温間加工であり得る。熱間又は温間圧延の別の種類は、熱間押出又は温間押出を含むことができる。
【0008】
場合によっては、金属間化合物粒子の望ましい形状及びサイズは、連続鋳造(例えば、高い凝固速度で)、任意選択のインライン炉での加熱、及び厚さを約50%〜70%減少させるインライン熱間又は温間圧延によって達成することができる。金属間化合物粒子のこれらの望ましい形状およびサイズは、冷間圧延などのさらなる加工、ならびに曲げおよび成形などの使用者の使用を促進することができる。
【0009】
本明細書で使用される温度とは、必要に応じてピーク金属温度を指すことができる。同様に、特定の温度での持続時間への言及は、金属物品が所望のピーク金属温度に達した時から始まる持続時間を指すことができる(例えば、ランプアップ時間を除く)が、常にそうである必要はない。
【0010】
本開示の態様および特徴は、任意の適切な金属と共に使用され得るが、アルミニウム合金を鋳造し圧延するときに特に有効であり得る。特に、2xxx系、3xxx系、4xxx系、5xxx系、6xxx系、7xxx系、又は8xxx系のアルミニウム合金のような合金を鋳造するときに望ましい結果を得ることができる。例えば、本開示のいくつかの態様および特徴は、連続焼鈍固溶化熱処理を必要とせずに、5xxxおよび6xxx系合金を鋳造することを可能にする。別の例として、本開示のいくつかの態様および特徴は、従来の鋳造方法と比較して、7xxx系合金がより効率的で、より信頼性の高い鋳造を可能にする。この説明において、アルミニウム工業記号によって識別された合金、例えば「系」、「AA6xxx」、又は「6xxx」が参照される。アルミニウムとその合金の命名と識別に最も一般的に使用されている番号記号システムの理解のために、「鍛造アルミニウム及び鍛造アルミニウム合金の国際合金記号及び化学組成の制限」又は「鋳物及びインゴットの形のアルミニウム合金の合金記号及び化学組成の制限の登録記録」を参照し、どちらもアルミニウム工業会によって発行されている。
【0011】
場合によっては、本開示のいくつかの態様及び特徴は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン系材料、スチール、スチール系材料、マグネシウム、マグネシウム系材料、銅、銅ベースの材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、又は他の適切な金属、非金属、又は材料の組み合わせと共に使用するのに適している。材料が鋳造されている実施例が金属を含む場合、金属は鉄金属又は非鉄金属であり得る。
【0012】
伝統的には、連続鋳造装置によって製造された金属ストリップは熱間圧延機に直接供給され、それにより所定の厚さへと減少させる。連続鋳造の明らかな利点は、伝統的に、DC鋳造とは異なり、鋳放しの金属ストリップをプロセスラインに直接供給できることである。連続鋳造製品は圧延機に直接供給されるため、鋳造速度と圧延速度を慎重に一致させる必要があり、それにより使用不可能な製品、装置の損傷、又は危険な状態につながる可能性のある、望ましくない張力を金属ストリップに生じさせることを避ける。
【0013】
驚くべきことに、連続鋳造および圧延システムにおいて熱間圧延プロセスから鋳造プロセスを意図的に分離することによって有益な結果を達成することができる。連続鋳造プロセスを熱間圧延プロセスから分離することによって、鋳造速度と圧延速度とを厳密に一致させる必要がなくなる。むしろ、鋳造速度は金属ストリップに所望の特性を生じさせるように選択することができ、圧延速度は圧延装置の要件および制限に基づいて選択することができる。分離型連続鋳造及び圧延システムで、連続鋳造装置は、直ちに又はその後間もなく中間コイル又は移送コイルに巻かれる金属ストリップを鋳造することができる。中間コイルを格納するか又は直ちに圧延装置に運ぶことができる。圧延装置では、中間コイルは巻き戻され、それは金属ストリップが圧延装置を通過して熱間圧延され、そして他の方法で処理されることを可能にする。熱間圧延プロセスの最終結果は、特定の使用者にとって望ましい特性を有する金属ストリップである。金属ストリップは巻き取られ、金属ストリップで自動車部品を形成することができる自動車工場などに供給され得る。場合によっては、連続鋳造プロセスで最初に鋳造された後(例えば連続鋳造機によって)、金属ストリップを様々な点で加熱することができるが、金属ストリップは金属ストリップの固相線温度より低いように保持される。
【0014】
本明細書で使用される用語「分離」とは、鋳造装置と圧延スタンドとの間の速度リンクを取り除くことを指す。上述のように、連結システム(本明細書ではインラインシステムと呼ばれることもある)は連続鋳造装置を含み、該連続鋳造装置は圧延スタンドに直接供給し、そのため鋳造装置の出力速度を圧延スタンドの入力速度と一致させる必要がある。分離システムでは、鋳造速度は圧延スタンドの入力速度に関係なく設定することができ、圧延スタンドの速度は鋳造装置の出力速度に関係なく設定することができる。本明細書に記載の様々な実施例では、鋳造装置に第1速度で金属コイルを出力させ、その後そのコイルを第2速度で圧延用の圧延スタンドに供給させることによって鋳造装置を圧延スタンドから分離する。鋳造速度が所望の圧延速度が供給できる速度よりも速いことが望まれる場合には、鋳造装置と圧延スタンドとの間に配置されたアキュムレータの使用により、鋳造装置が鋳造金属ストリップを圧延スタンドに直接供給するときでさえも、鋳造装置の出力速度と圧延スタンドの入力速度との制限された分離を提供することが可能である。
【0015】
鋳造装置は、任意の適切な連続鋳造装置であってもよい。しかしながら、ベルト鋳造装置、例えばアメリカ特許番号6755236に記載されている「金属ストリップの連続ベルト鋳造のためのベルト冷却および誘導手段」と題されたベルト鋳造装置を使用して、驚くほど望ましい結果を達成することができ、その開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。場合によっては、高い熱伝導率を有する金属、例えば銅で製造されたベルトを有するベルト鋳造装置を使用して、特に望ましい結果を達成することができる。ベルト鋳造装置はベルトを含み、該ベルトは、他の値の熱伝導率を有する金属を使用することができるが、鋳造温度で1ケルビンあたり少なくとも250、300、325、350、375、又は400ワット/メートルの熱伝導率を有する金属で製造される。鋳造装置は任意の適切な厚さで金属ストリップを鋳造することができるが、望ましい結果は約7mm〜50mmの厚さで達成された。
【0016】
本開示のいくつかの態様は、アルミニウムマトリックス内の分散質の形成および分布を改善することができる。分散質は、凝固アルミニウム合金の第一相内に位置する他の固相の集合体である。鋳造、取り扱い、加熱、および圧延中のさまざまな要因は、金属ストリップ内の分散質のサイズおよび分布に大きく影響する可能性がある。分散質は、アルミニウム合金の曲げ性能および他の特性を助けることが知られており、約10nm〜約500nmのサイズが好ましく、金属ストリップ全体に亘って比較的均一に分布することが望ましい。場合によっては、所望の分散質は、約10nm〜100nm又は10nm〜500nmのサイズであってもよい。DC鋳造では、分散質の望ましい分布を生成するために長い均質化サイクル(例えば、15時間以上)が必要とされる。標準的な連続鋳造では、分散質は常に全く存在しないか又は少量で存在し、それはいかなる有益な効果も提供することができない。
【0017】
本開示のいくつかの態様は、金属ストリップ、ならびに望ましい分散質(例えば、望ましいサイズの望ましい分散質の分布)を有する金属ストリップを形成するためのシステムおよび方法に関する。場合によっては、鋳造装置は、金属ストリップの急速凝固(例えば、標準的なDC鋳造凝固よりも約10倍以上速い速度、例えば少なくとも少なくとも約1℃/秒、少なくとも少なくとも約10℃/秒、又は少なくとも少なくとも約100℃/秒で急速凝固する)及び急速冷却(例えば、少なくとも少なくとも約1℃/秒、少なくとも少なくとも約10℃/秒、又は少なくとも少なくとも約100℃/秒の速度で急速冷却する)を提供するように構成することができ、これは最終の金属ストリップの微細構造を改善することを容易にすることができる。場合によっては、凝固速度は、従来のDC鋳造の凝固速度の100倍以上であり得る。急速凝固により、凝固したアルミニウムマトリックス全体に非常に均一に分布した分散質形成元素の独特の分布を含む、独特の微細構造を得ることができる。この金属ストリップを急速冷却すること、例えば鋳造装置を出る際に金属ストリップを直ちに焼入れるか又はその後間もなく焼入れることは、分散質形成元素を固溶体に固定するのを容易にすることができる。次に、得られた金属ストリップを分散質形成元素で過飽和させることができる。次に、過飽和された金属ストリップを中間コイルに巻いて、分離された鋳造圧延システムでさらに処理することができる。場合によっては、所望の分散質形成元素には、マンガン、クロム、バナジウム及び/又はジルコニウムが含まれる。分散質形成元素で過飽和されるこの金属ストリップは、再加熱されると、均一に分布した望ましいサイズの分散質の析出を非常に急速に誘発する可能性がある。
【0018】
場合によっては、急速凝固および急速冷却は鋳造装置によって単独で行うことができる。鋳造装置は、分散質形成元素で過飽和された金属ストリップを製造するための十分な長さで十分な熱除去特性を有する。場合によっては、鋳造装置は、鋳造金属ストリップの温度を250℃、240℃、230℃、220℃、210℃あるいは200℃以下(他の値も使用できる)に低下させるための十分な長さで十分な熱除去特性を有する。一般的に、そのような鋳造装置はかなりのスペースを占めるか又は遅い鋳造速度で操作しなければならない。場合によっては、より小さくより速い鋳造装置が望まれる場合、金属ストリップは鋳造装置を出た直後又はその後間もなく焼入れることができる。鋳造装置の下流に1つ以上のノズルを配置することにより、金属ストリップの温度を250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、175℃、150℃、125℃あるいは100℃以下(他の値も使用できる)に低下させることできる。分散質形成元素を過飽和された金属ストリップに固定するように、焼入れは十分に急速又は速く発生することができる。
【0019】
伝統的には、得られる金属ストリップが望ましくない特性を有するため、急速凝固および急速冷却は避けられてきた。しかしながら、驚くべきことに、分散質形成元素で過飽和された金属ストリップが、所望の分散質配置を有する金属ストリップの効率的な前駆体であってもよいということが発見された。独特の分散質形成元素-過飽和された金属ストリップは、貯蔵中又は熱間圧延の直前などに再加熱することができ、それにより分散質形成元素の過飽和されたマトリックスを、所望の分布(例えば、均一に分布する)及び所望のサイズ(例えば、約10nm〜約500nm又は約10nm〜約100nm)の分散質を含有するストリップに変換する。金属ストリップは分散質形成元素中で過飽和されるため、望ましいサイズの分散質を析出させるための推進力は、非過飽和マトリックスの場合よりも大きい。言い換えれば、本明細書に開示されるような特定の急速凝固及び/又は冷却の態様は、金属ストリップを準備する又はプライミングするために使用することができ、その金属ストリップは後に短時間再加熱して所望の分散質配置を発生させることができる。例えば、本開示のいくつかの態様が、既存の技術(例えばDC鋳造)よりも10〜100倍短い再加熱時間で所望のサイズの分散質を析出させるために再加熱することができる分散質形成元素で過飽和された金属ストリップを製造できることが分かった。さらに、この再加熱が発生できる速度により、再加熱を熱間圧延ライン、例えば熱間圧延ラインの開始で行うことが可能になる。しかしながら、場合によっては、分散質形成元素で過飽和された金属ストリップの1つ以上のコイルは、熱間圧延ライン上で巻かれる前に再加熱することができる。望ましいサイズの分散質をより迅速に引き出すことができるため、望ましい金属ストリップを製造する際にかなりの時間とエネルギーを節約することができる。さらに、改善された分散質分布により、より少量の合金元素の使用で望ましい性能を達成することができる。言い換えれば、本開示のいくつかの態様及び特徴は、合金元素を従来のDC又は連続鋳造よりも効率的に利用することを可能にする。
【0020】
さらに、凝固速度、冷却(例えば焼入れ)速度、及び、再加熱時間のうちの1つ又は複数の操作を使用して、分散質サイズ及び分布を要求に応じて具体的に作り上げることができる。コントローラはシステムに結合されることにより、凝固速度、冷却速度及び再加熱時間を制御する。金属ストリップが特定の分散質配置(例えば、サイズ及び/又は分布)に起因する特定の特性を有することが望まれる場合、コントローラは様々な速度/時間を操作することにより、所望の金属ストリップを製造する。このようにして、所望の分散質配置を有する金属ストリップを要求に応じて製造することができる。分散質配置の制御が、合金元素がどのように利用されるかにおいて多かれ少なかれ効率を提供することができるため、分散質配置の要求に応じた制御により、コントローラは液体金属の特定の混合物の合金元素における偏差を補償することができる。例えば、ある所望の特性を有する納入可能な金属ストリップを製造するとき、コントローラは、システムの凝固速度、冷却速度及び/又は再加熱時間を調整することによって、鋳物間の合金元素の濃度のわずかな偏差を補償することができ、それにより合金元素の多かれ少なかれ効率的な使用法を提供する分散質配置を生成する(例えば、合金化元素の負の偏差が決定されるとき、より効率的な使用法が望ましい)。そのような補償は自動的に実行することができ、又は自動的にユーザに推奨することができる。
【0021】
中間コイルは熱間圧延の前に格納することができ、従って鋳造装置は熱間圧延スタンドが供給できる速度よりも速い速度で出力することができ、過剰の金属ストリップは熱間圧延スタンドが利用可能になるまで、巻かれた状態で格納される。格納場合には、中間コイルは任意に再加熱されてもよい。例えば、様々な種類のアルミニウム合金を用いて、中間ストリップを500℃以上、又は530℃以上の温度に再加熱することができる。再加熱温度は金属ストリップの固相線温度より低いように保持される。
【0022】
場合によっては、中間コイルは約100℃以上、200℃以上、300℃以上、又は400℃以上、又は500℃以上(他の値も使用できる)の温度に維持される。場合によっては、中間コイルは、不均一な半径方向力を最小にする方法で格納することができ、それは熱間圧延プロセス中の巻き戻しを防ぐ可能性がある。場合によっては、中間コイルは、コイルの横軸が垂直方向に延びるように垂直に格納されてもよい。場合によっては、中間コイルは、コイルの横軸は水平方向に延びるように水平に格納されてもよい。場合によっては、中間コイルを中央スピンドルから吊り下げ、従って、コイルのループを互いに、特にスピンドルの下に位置するコイルの部分に対して圧縮する重量を最小にすることができる。場合によっては、中間コイルは、水平軸(例えば、水平に格納されたときのコイルの横軸)を中心にして周期的又は連続的に回転することができる。
【0023】
熱間圧延プロセスの間、中間コイルは巻き戻され、表面処理され、再加熱され、所望の厚さに圧延され、再加熱後に圧延され、焼入れられ、供給のために巻かれてもよい。熱間圧延プロセスは、金属ストリップの厚さを減少させるように力を加えるための作業ロールをそれぞれ含む1つ以上の熱間圧延スタンドを含む。場合によっては、熱間圧延中の厚さの減少の総量は、約70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%又は15%以下(他の値も使用できる)であってもよい。熱間圧延は、比較的高速、例えば毎分約50〜約60メートル(m/分)の進入速度(他の進入速度も使用できる)(例えば、第1熱圧延スタンドに進入するときの金属ストリップの速度)で行うことができる。出口速度(例えば、最後の熱圧延スタンドを出るときの金属ストリップの速度)は、熱ロールスタンドによって与えられる厚さの減少の百分率のため、はるかに速くなり、他の出口速度が発生する可能性があるが、例えば約300〜約800m/分である。望ましい結果を得るために、熱間圧延は熱間圧延温度で行うことができる。熱間圧延温度は350℃程度であり、例えば340℃と360℃の間、330℃と370℃の間、330℃と380℃の間、300℃と400℃の間、又は250℃と400℃の間(他の範囲も使用できる)であってもよい。場合によっては、金属ストリップ用の望ましい熱間圧延温度はその合金再結晶温度であってもよい。場合によっては、金属ストリップの温度は、開始熱間圧延温度(例えば、金属ストリップが最初の熱間圧延スタンドに入るときの金属ストリップの温度)から、1つ以上の中間熱間圧延温度(例えば、隣接する2つの熱間圧延スタンド間の金属ストリップの温度)を通って、終了熱間圧延温度(例えば、最後の熱間圧延スタンドを出るときの金属ストリップの温度)まで移動することができる。他の範囲にも使用され得るが、これらの温度のいずれも、熱間圧延温度の上記した範囲内にあり得る。開始熱間圧延温度、任意スタンド間温度、及び終了熱間圧延温度は、同じであってよく(例えば、
図7を参照する)、あるいは、異なってよい(例えば、
図8を参照する)。
【0024】
場合によって、金属ストリップは、高温で熱間圧延プロセスに入ってよく、上記で開示されるように、熱間圧延システムに巻き解かれた直後に再加熱されてよい。この点での金属ストリップの温度は、500℃、510℃、520℃、又は530℃を超えてよいが、融点以下であるが他の範囲が使用可能である。熱間圧延スタンドに入る前に、金属ストリップを上記熱間圧延温度に冷却してよい。熱間圧延スタンドを通過した後、金属ストリップを場合によって圧延後温度まで加熱してよい。6xxx系及び7xxx系のアルミニウム合金のような熱処理形合金について、圧延後温度は、溶体化温度又は溶体化温度の付近であってよいが、5xxx系のアルミニウム合金のような非熱処理形合金については、圧延後温度は、再結晶温度であってよい。場合によって、例えば、非熱処理形合金について、特に金属ストリップが再結晶温度以上の温度(例えば、約350℃以上の温度)で熱間圧延プロセスから出る場合、圧延後加熱を使用しなくてよい。熱処理形合金について、圧延後温度又は溶体化温度は、合金によって異なってよいが、約450℃、460℃、470℃、480℃、490℃、500℃、510℃、520℃、530℃以上であってよい。場合によって、溶体化温度は、問題の合金の固相線温度より低い20℃〜40℃又は約20℃〜40℃であってよく、より好ましくは30℃であってよい。金属ストリップを圧延後温度まで再加熱した直後、又はその後、金属ストリップを焼入れしてよい。金属ストリップを150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、又は100℃以下での巻取温度で焼入れしてよいが、他の値を使用してもよい。次に、金属ストリップを巻いて送出してよい。この点で、コイル状金属ストリップは、所望の規格及び所望の焼戻しのような分布のための所望の物理的特性を有してよい。
【0025】
熱間圧延及び焼入れの後、金属ストリップは、所望の規格及びT4焼戻しのような焼戻しを有してよい。本出願では、合金の焼戻し又は状態を参照する。最も一般的に使用される合金の焼戻しの記載の理解のために、「合金及び質別記号体系に関する米国国家規格(ANSI)H35」を参照する。条件F又は焼戻しは、製作された時のアルミニウム合金のことを指す。条件O又は焼戻しは、アニール後のアルミニウム合金のことを指す。条件W又は焼戻しは、室温で不安定な焼戻しであってよいが、溶体化熱処理後のアルミニウム合金のことを指す。条件T又は焼戻しは、安定した焼戻しをもたらす特定の熱処理後のアルミニウム合金のことを指す。条件T3又は焼戻しは、溶体化熱処理(すなわち、溶体化)、冷間加工及び自然時効後のアルミニウム合金のことを指す。条件T4又は焼戻しは、溶体化熱処理(すなわち、溶体化)に続く自然時効後のアルミニウム合金のことを指す。条件T6又は焼戻しは、溶体化熱処理に続く人工時効後のアルミニウム合金のことを指す。条件T8又は焼戻しは、冷間加工に続く溶体化熱処理に続く人工時効後のアルミニウム合金のことを指す。
【0026】
場合によって、金属ストリップは、熱間圧延中に、高温(例えば、約550℃以上のような予熱温度より高い熱間圧延入口温度)で熱間圧延を開始し、熱間圧延プロセス中に金属ストリップを熱間圧延出口温度まで冷却させることにより、動的再結晶を受けてよい。場合によって、熱間又は温間圧延中の動的再結晶は、特定の温度で圧延中に、十分な歪みを引き起こすことに十分な力を金属物品に印加して金属物品を再結晶させることにより発生してよい。
【0027】
動的再結晶は、(例えば、再結晶温度を超えるまで)金属ストリップを再加熱して再結晶させる必要はなく、熱間圧延の直後に金属ストリップを焼入れすることができる。また、熱間圧延の直後に急速に焼入れすることにより、望ましくない析出物を回避してよい。特定の温度で、Mg
2Si相のような析出物は、経時的に形成され始まる。温度及びその温度で費やされる析出が1%〜90%完了するような析出物が急速に形成すると予想される時間に基づいて、高析出の領域を定義してよい。したがって、析出物形成を最小にするために、高析出の領域内で費やされる時間を最小にすることが望ましくなる可能性がある。動的再結晶とそれに続く急速な焼入れによって、金属ストリップが高析出の領域内の温度で費やす時間を最小にしてよい。場合によって、金属ストリップを熱間圧延及び焼入れをすることにより所望の冶金特性を達成してよく、ここで、金属ストリップは、第1熱間圧延スタンドに入る直前から焼入れ領域を出た直後まで単調に温度が低下する(例えば、熱間圧延及び焼入れプロセスを通じて温度が単調に低下する)。
【0028】
場合によって、金属ストリップは、少ない初期焼入れの後に、又は初期焼入れなしで熱間圧延に入ってよい。熱間圧延中に、再結晶温度(例えば、550℃以上のような予熱温度)より高い熱間圧延入口温度から熱間圧延入口温度より低い熱間圧延出口温度まで、金属ストリップに温度を低下させてよい。熱間圧延入口温度から熱間圧延出口温度までの温度の低下は、単調な低下であってよい。熱間圧延中の温度の低下を実現するために、熱間圧延機の各スタンドは、金属ストリップから熱を抽出してよい。例えば、熱間圧延スタンドを十分に冷却して金属ストリップに熱間圧延スタンドを通過させることにより、熱間圧延スタンドのワークロールを通過している金属ストリップから熱を抽出してよい。場合によって、熱間圧延スタンド自体による熱の除去の代わりに、又はそれに加えて、潤滑剤又は他の冷却材料(例えば、空気又は水のような流体)の使用によって、熱間圧延スタンド間の金属ストリップから熱を抽出してよい。場合によって、最後及び最後から2番目の熱間圧延スタンドは、徐々に低下している温度で金属ストリップを圧延してよい。場合によって、最後及び最後から2番目の熱間圧延スタンドは、同じ又はほぼ同じ温度で金属ストリップを圧延してよい。
【0029】
焼入れ前に温度を上昇させる必要がある可能性があり、高析出の領域内での持続時間が長くなる可能性がある熱処理プロセス中の圧延後(例えば、熱間圧延後)の再結晶に頼る代わりに、本明細書に記載されているように、金属ストリップは、熱間圧延プロセス中に動的再結晶を受けてよい。動的再結晶は、十分に高い歪み速度及び十分に高い温度で金属ストリップを圧延することを含んでよい。動的再結晶は、熱間圧延機の最終圧延スタンドで発生してよい。動的再結晶は、加工中の金属ストリップの歪み速度と温度に依存する。Zener−Hollomonパラメータ(Z)は、式
【数1】
によって定義されてよく、ここで、
【数2】
は、歪み速度であり、Qは、活性化エネルギーであり、Rは、気体定数であり、Tは、温度である。Zener−Hollomonパラメータが所望の範囲内に入ると、再結晶が発生する。温度(例えば、熱間圧延出口温度)を最小にしながらこの範囲内に維持するために、金属ストリップは、より高い温度で必要となるよりも高い歪み速度を受けなければならない。したがって、最終熱間圧延スタンドの減少量(例えば、厚さ減少率)を最大にするか、あるいは急速焼入れに適した熱間圧延出口温度を達成することに適した減少量を少なくとも選択して、高析出の領域内で費やされる時間を最小にすることが望ましい場合がある。所望の全体的な厚さの減少を達成するために、前の1つ以上の熱間圧延スタンドによって提供される厚さの減少量を減少させることにより、最終熱間圧延スタンドに加えられる厚さの減少量を相殺してよい。
【0030】
さらに、高析出の領域内で費やされる時間を最小にするために、熱間圧延機を高速で運転することが望ましくなる場合がある。例えば、3つのスタンドを使用して金属ストリップを16mmから2mmの規格に減少させる熱間圧延機で、熱間圧延機の入口でのストリップの速度が約50m/minであると、熱間圧延機の出口でのストリップの速度が約400m/minとなる。したがって、高析出の領域内で適切な最小期間を達成するために、焼入れプロセスでは、金属ストリップが約400m/minの速度で進行する間に、金属ストリップの温度を約400℃(例えば、100℃まで)低下する必要があってよい。鋼のようないくつかの金属では、そのような急速焼入れは不可能であり、実行不可能であり、大型で高価で非効率的な装置を必要とし得る。アルミニウムにおいて、特に再結晶温度が初期熱間圧延スタンドから最終熱間圧延スタンドまでの厚さの減少の一部をシフトすることにより最小とされる場合、本明細書に記載されるような焼入れを提供することが可能である。さらに、熱間圧延プロセスが鋳造プロセスから分離される場合、熱間圧延プロセスは、本明細書に記載されるように、高速で進行することが許可される。熱間圧延プロセス中の高速は、高析出の領域内で費やされる時間を最小にすることに役立ってよい。さらに、本明細書に記載されるように、高い熱間圧延速度は、低い再結晶温度を達成するために必要とされる適切な高歪み速度を達成することを容易にしてよい。
【0031】
さらに、比較的薄い金属ストリップを使用することにより、析出物形成を最小にする動的再結晶化及び急速焼入れを容易にしてよい。本明細書に記載されるような比較的薄い規格で金属ストリップを鋳造することにより、熱間圧延プロセスは、高速で進行し、急速焼入れプロセスが続くことができ、これにより高析出の領域内で費やされる時間を減少させることができる。また、薄い規格は、熱間圧延速度を容易にすることができる。本明細書中に記載された動的再結晶及び急速焼入れのための技術は、T4焼戻しを担持し、予想よりも少ない量の析出物を有する金属ストリップ又は他の冶金製品の製造を容易にすることができる。例えば、本開示の特定の態様に従って製造された金属ストリップは、T4焼戻しを有し、約4.0%、3.9%、3.8%、3.7%、3.6%、3.5%、3.4%、3.3%、3.2%、3.1%、3.0%、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.3%、2.2%、2.1%、2.0%、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、又は0.1%以下のMg2Siの体積分率を有してよい。場合によって、本開示の特定の態様に従って製造された金属ストリップは、T4焼戻しを有し、約10%、9.9%、9.8%、9.7%、9.6%、9.5%、9.4%、9.3%、9.2%、9.1%、9%、8.9%、8.8%、8.7%、8.6%、8.5%、8.4%、8.3%、8.2%、8.1%、8%、7.9%、7.8%、7.7%、7.6%、7.5%、7.4%、7.3%、7.2%、7.1%、7%、6.9%、6.8%、6.7%、6.6%、6.5%、6.4%、6.3%、6.2%、6.1%、6%、5.9%、5.8%、5.7%、5.6%、5.5%、5.4%、5.3%、5.2%、5.1%、5%、4.9%、4.8%、4.7%、4.6%、4.5%、4.4%、4.3%、4.2%、又は4.1%以下のMg2Siの体積分率を有してよい。本明細書で使用されるように、Mg2Siの体積分率を言及すれば、鋳造される特定の合金中に形成され得るMg2Siの総量に対するMg2Siの体積分率を指してよい。Mg2Siの体積分率の百分率は、Mg2Siを形成する析出反応の完了の百分率を指してもよい。
【0032】
本開示の特定の態様及び徴は、鉄含有(Fe含有)金属間化合物のサイズ、形状、及びサイズ分布を調整する技術に関する。Fe含有金属間化合物の特性を調整することは、特に6xxx系の合金、特にアルミニウム自動車部品に必要な要求仕様に最適な製品性能を達成するために重要である。しかし、通常のDC鋳造は、ベータFe(β−Fe)をアルファFe(α−Fe)金属間化合物に変換するために長期間(例えば、数時間)の高温(例えば、>530℃)の均質化を必要としてよく、本開示の特定の態様は、望ましいFe含有金属間化合物を有する金属製品を製造することに適している。本明細書に記載されるように、本開示の特定の態様は、連続鋳造機から中間規格製品を製造することに関する。中間規格製品は、i)最終規格までの冷間圧延及び溶体化熱処理、ii)最終規格までの温間圧延及び溶体化熱処理、iii)最終規格までの熱間圧延、磁気ヒーターによる再加熱及びインライン焼入れの実行、iv)最終規格までの熱間圧延及び溶体化熱処理、又はv)最終規格までの熱間圧延とT4焼戻しを生成する動的再結晶により、T4焼戻し製品に仕上げられることができる。
【0033】
場合によっては、連続鋳造機から鋳造された金属ストリップは、巻かれる前に圧延(例えば、熱間圧延)されてよい。巻かれる前の圧延は、少なくとも30%以上もしくは一般的には50%〜75%程度の大幅な厚みの減少をもたらすことができる。場合によっては、追加のスタンドを使用してよいが、連続鋳造された金属ストリップを圧延する前に単一の熱間圧延スタンドで圧延するとより効果的な結果が見出された。場合によっては、連続鋳造後のこの高圧下(例えば、厚さの減少率が30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は75%以上)熱間圧延は、他の利点の中でも、金属ストリップ中のFe含有粒子を粉砕することを支援することができる。連続鋳造後及び巻き取り前に、圧延により金属ストリップの厚さを減少させる場合、巻戻しと巻取りとの間に金属ストリップの厚さは既に減少しているため、巻戻し後に行われる熱間圧延プロセスは、1つ少ない熱間圧延スタンド及び/又は1つ少ないパスですむ。
【0034】
場合によっては、金属ストリップをフラッシュ均質化することができる。フラッシュ均質化は、金属ストリップを、比較的短期間(例えば、約1分間〜10分間、例えば、30秒、45秒、1分間、1分30秒、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間又は10分間、又はその間の任意の範囲)で500℃より高い温度(例えば、500〜570℃、520〜560℃、又は約560℃)に加熱することを含んでよい。この加熱は、連続鋳造機と初期巻取りとの間、より具体的には、巻取り前に連続鋳造機と熱間圧延スタンドとの間、又はその熱間圧延スタンドと巻取りとの間に行われる。このフラッシュ均質化は、Fe含有金属間化合物(例えば、α又はβ型)のアスペクト比を減少させることに役立ち、また、これらの金属間化合物のサイズを減少させることができる。場合によっては、フラッシュ均質化(例えば、570℃で約2分間)は、Fe成分粒子の有益な球状化及び/又は精製を成功することができるが、より高温での広範囲の均質化を必要とする。
【0035】
場合によっては、本明細書に記載されるように、フラッシュ均質化と連続鋳造後の高圧下熱間圧延との組み合わせは、Fe含有粒子を精製する(例えば、粉砕する)ために特に有用であり得る。
【0036】
一つの例として、鋳造システムは、連続鋳造機、炉(例えば、トンネル炉)、熱間圧延スタンド、及びコイラーを含んでよい。場合によっては、熱間圧延スタンドの前及び/又は後に1回以上の焼入れを行う。熱間圧延スタンドは、少なくとも30%又は50〜70%の金属ストリップの厚さの減少率をもたらすことができる。熱間圧延スタンドの前の焼入れは、任意であってよいが、Fe含有粒子を効果的に粉砕し、析出特性を改善することができる。場合によっては、熱間圧延、焼入れ、及び巻取りの後、金属ストリップは、徐々に/急速に加熱し、比較的高温(例えば、>500℃)で浸漬した後、熱間圧延されてよい。場合によっては、熱間圧延、焼入れ、及び巻取りの後、金属ストリップは、比較的低い温度(例えば、<350℃)まで徐々に/急速に加熱した後に、温間圧延されてよい。熱間圧延、焼入れ、及び巻取りの後、金属ストリップは、さらなる熱処理なしで冷間圧延されてよい。本明細書に記載されるように、これらの様々な技術は、様々なFe成分サイズ分布のような、Fe含有粒子に関して様々な特性をもたらす。
【0037】
場合によっては、金属ストリップは、誘導ヒーター又は回転磁石ヒーターのような磁気ヒーターのような加熱装置を使用することによって、熱間圧延システム内の様々な箇所で再加熱されてよい。適切な回転磁石ヒーターの非限定的な例としては、2016年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/400,426号「回転磁石加熱誘導」に開示されているものが挙げられる。
【0038】
一般的に、熱間圧延システムの圧延スタンドは、例えば、圧延スタンドのロール及び/又は金属ストリップ自体に冷却剤を噴霧するノズルを含む冷却剤システムによって冷却される。この冷却剤システムは、金属ストリップを熱間圧延スタンドに通すことによって金属ストリップの厚さを減少させる機械的作用が金属ストリップの温度を上昇させないように十分な熱を抽出してよい。しかし、場合によっては、冷却剤システムによって加えられる冷却量を減少させることにより金属ストリップを意図的に再加熱できるので、金属ストリップを熱間圧延スタンドに通すことにより金属ストリップの厚さを減少させる機械的作用を可能にし、金属ストリップに正の温度変化を与えることができる。
【0039】
本明細書で使用されるように、様々な冷却及び/又は焼入れ装置は、1つ以上のノズルによって供給される冷却剤に関して説明されている。流体ベースであるか否か、ノズルベースであるか否かにかかわらず、他の機構を使用して、金属ストリップに急速冷却を提供することができる。いくつかの場合において、例えば、冷却剤を金属ストリップに搬送するためのホース、導管、タンク又は他のそのような構造からそのまま提供される大量の冷却剤を使用して、金属ストリップを冷却又は焼入れすることができる。
【0040】
本開示の態様及び特徴は、金属ストリップを製造することに関して本明細書で説明されるが、本開示の態様はまた、任意の好適なサイズ又は形態の金属製品、例えばホイル、シート、スラブ、プレート、シェート又は他の金属製品を製造するために使用されてもよい。
【0041】
これらの例示的な例は、本明細書で説明される一般的な主題を読者に紹介するために与えられ、かつ開示された概念の範囲を限定することを意図するものではない。以下の部分は、図面を参照して様々な追加の特徴及び実施例を説明するが、例示的な実施形態のように本開示を限定するために使用されるべきではなく、図面において、同じ番号は同じ要素を示し、方向の説明は例示的な実施形態を説明するために使用される。本明細書の実施例に含まれる要素は、縮尺通りに描かれていない。
【0042】
図1は、本開示の特定の態様に係る分離型金属鋳造圧延システム100を示す概略図である。分離型金属鋳造圧延システム100は、鋳造システム102、格納システム104及び熱間圧延システム106を含むことができる。分離型金属鋳造圧延システム100は、分離型サブシステムを有する単一の連続加工ラインであると考えられてよい。鋳造システム102によって鋳造された金属ストリップ110は、格納システム104及び熱間圧延システム106を通って下流方向に進むことができる。金属ストリップ110は、断続的に鋳造システム102によって製造され、格納システム104によって格納され、熱間圧延システム106によって熱間圧延されるため、分離型金属鋳造圧延システム100は連続的であると考えられてよい。いくつかの場合において、分離型金属鋳造圧延システム100は、単一の建物又は設備内に位置することができるが、いくつかの場合においては、分離型金属鋳造圧延システム100のサブシステムは、それぞれ個別に位置してもよい。いくつかの場合において、単一の鋳造システム102を1つ以上の格納システム104及び1つ以上の熱間圧延システム106に関連付けることができ、それにより、鋳造システム102が、単一の格納システム104又は熱間圧延システム106の速度若しくは許容可能な速度よりもはるかに高い速度で連続的に動作することを可能にする。
【0043】
鋳造システム102は、金属ストリップ110を連続的に鋳造する連続鋳造装置、例えばベルト式連続鋳造機108を含む。鋳造システム102は、ベルト式連続鋳造機108の直下流に、又はその直後に配置された急速焼入れシステム114を任意に含むことができる。鋳造システム102は、金属ストリップ110を中間コイル112に巻き取ることができる巻取装置を含むことができる。
【0044】
中間コイル112は、ベルト式連続鋳造機108を出る金属ストリップ110の一部分を蓄積し、かつ剪断機又は他の適切な装置によって金属ストリップを切断した後、別の位置に搬送することができ、その後、ベルト式連続鋳造機108を出る追加の金属ストリップ110から新しい中間コイル112を形成することを可能にし、したがってベルト式連続鋳造機108が連続的又は半連続的に動作することを可能にする。
【0045】
中間コイル112をそのまま熱間圧延システム106に提供してもよく、格納システム104内に格納及び/又は処理してもよい。格納システム104は、様々な格納機構、例えば、垂直又は水平の格納機構、及び周期的又は連続的に回転する格納機構を含むことができる。いくつかの場合において、中間コイル112を、格納システム104内に格納するときに予熱器116(例えば、炉)で予熱することができる。予熱は、中間コイル112が格納システム104内にある期間の一部又は全部において実行することができる。格納システム104内に格納した後、金属ストリップ110を熱間圧延システム106に提供することができる。
【0046】
熱間圧延システム106は、金属ストリップ110の厚さを、鋳放しの規格から供給に所望の規格まで減少させることができる。いくつかの場合において、供給に所望のゲージは、正確に又は約0.7mm〜4.5mmであっても、正確に又は約1.5mm〜3.5mmであってもよい。熱間圧延システム106は、金属ストリップ110の厚さを減少させるための一連の熱間圧延スタンド118を含むことができる。いくつかの場合において、一連の熱間圧延スタンド118は、単一の熱間圧延スタンドを含むことができるが、任意の数、例えば2つ、3つ、又はそれ以上の熱間圧延スタンドであってもよい。いくつかの場合において、大量の熱間圧延スタンド(例えば、3つ、4つ、又はそれ以上)を使用すると、所与の総厚さの減少(例えば、最初の熱間圧延スタンドの前から最後の熱間圧延スタンドの後までの厚さの減少)に対してより良い表面品質が得られ、それは、各圧延スタンドが金属の厚さをより少量減少させる必要があり、かつ一般に金属ストリップに与えられる表面欠陥がより少ないからである。熱間圧延システム106はさらに、金属ストリップの他の処理、例えば表面仕上げ(例えば、テクスチャ加工)、予熱及び熱処理を実行することができる。熱間圧延システム106を出る金属ストリップ110をそのまま、更なる処理機器(例えば、ブランキングマシン又は曲げ機械)に提供するか、又は供給可能なコイル120(例えば、完成したコイル)に巻いてもよい。本明細書で使用される供給可能という用語は、金属ストリップの顧客の所望の特性を有する金属製品、例えばコイル状金属ストリップを説明することができる。例えば、供給可能なコイル120は、依頼元装置製造業者の仕様を満たす物理的及び/又は化学的特性を有するコイル状金属ストリップを含むことができる。供給可能なコイル120は、Wの焼戻し又はTの焼戻しとすることができる。供給可能なコイル120は、必要に応じて格納、販売、出荷することができる。
【0047】
図1に示す分離型金属鋳造圧延システム100は、鋳造システム102の速度を熱間圧延システム106の速度から分離することを可能にする。図示のように、分離型金属鋳造圧延システム100は、中間コイル112を格納するための格納システム104を使用し、ベルト式連続鋳造機108を出る金属ストリップ110は、別個の単位に巻かれ、熱間圧延システム106がそれらを処理することに利用可能になるまで格納される。中間コイル112を格納する代わりに、いくつかの場合において、格納システム104は、第1速度で鋳造システム102から金属ストリップ110を受け入れて一連の移動ローラ間に蓄積するインラインアキュムレータを使用して、第1速度とは異なる第2速度で連続金属ストリップ110を熱間圧延システム106に供給することを可能にする。インラインアキュムレータは、鋳造システム102の所望の鋳造期間に基づいて、第1速度と第2速度との間の所定の期間の差に適応するようなにサイズ設定することができる。鋳造システム102が連続的に動作することが望まれるシステムにおいて、コイルベースの格納システム104が望ましい。
【0048】
図2は、本開示の特定の態様に係る分離型金属鋳造圧延システムを用いて様々なコイルを製造するタイミングチャート200である。タイミングチャート200は、コイルが鋳造システム202から格納システム204を通って、熱間圧延システム206を通るときの時間関数として、様々なコイルの各々の位置及びそれに対して実行されるプロセスを示す。鋳造システム202、格納システム204及び熱間圧延システム206は、
図1の分離型金属鋳造圧延システム100の鋳造システム102、格納システム104及び熱間圧延システム106とすることができる。
【0049】
上述のように、鋳造システム202は、中間コイルを鋳造することができる。ブロック222A、222B、222C、222D及び222Eはそれぞれ中間コイルA、B、C、D及びEの鋳造時間を表す。鋳造システム202は、特定の鋳造速度で各中間コイルを鋳造することができる。したがって、コイル鋳造時間228は、鋳造システム202が単一の中間コイルを鋳造して巻き取るために必要な時間を表すことができる。いくつかの場合において、鋳造システム202は、鋳造システム202が次の中間コイルを鋳造して巻き取るようにリセットされるリセット時間を経つ。他の場合において、鋳造システム202は、次の中間コイルの鋳造及び巻き取りを直ちに開始することができる。
図2に示すように、鋳造システム202は、中間コイルを連続的に繰り返して出力することができる。
【0050】
中間コイルを、格納及び/又は任意の処理(例えば、再加熱)のために、格納システム204に輸送することができる。ブロック224A、224B、224C、224D及び224Eはそれぞれ中間コイルA、B、C、D及びEの格納期間を表す。鋳造システム202の速度は熱間圧延システム206の速度から分離されるため、格納システム204は、利用可能な熱間圧延システム206の数と鋳造システム202及び熱間圧延システム206の速度に応じて、様々な時間量に任意の適切な数の中間コイルを格納することができる。
【0051】
いくつかの場合には、各中間コイルは、格納システム204内に最小格納時間230に留まることができ、該最小格納時間は、格納中に任意の処理を実行することに必要な最小時間とすることができる。いくつかの場合において、最小格納時間230は存在せず、かつ中間コイルは、熱間圧延システム206が中間コイルを受け入れることに利用可能である場合、格納せずに熱間圧延システム206に送達することができる。例えば、最小格納時間230がない場合、中間コイルAをそのまま熱間圧延システム206に送達し、かつブロック224Aが存在しない。
【0052】
熱間圧延システム206に提供される中間コイルは、供給可能なコイルに圧延又は処理されてよい。ブロック226A、226B、226C、226D及び226Eはそれぞれ中間コイルA、B、C、D及びEのための熱間圧延システム206がかかる時間を表す。熱間圧延システム206は、設定された速度で動作することができ、それにより、熱間圧延システム206内に中間ロールを熱間圧延又は処理することに必要な時間を表すコイル圧延時間232が生じる。
【0053】
分離する間、金属ストリップが1つのシステムから次のシステムに連続的に通過するとき、金属ストリップを鋳造、格納、熱間圧延するプロセスが連続的であるとされ得る。コイル鋳造時間228がコイル圧延時間232よりも短い場合、格納システム204は特に望ましい。コイル鋳造時間228とコイル圧延時間232との差は、全体的な鋳造期間(例えば、鋳造システム202は停止前に中間コイルを連続的に鋳造することが望まれる時間の長さ)の関数として、格納システム204の必要なサイズを決定することができる。
【0054】
図3は、本開示の特定の態様に係る分離型連続鋳造システム300を示す概略図である。分離型連続鋳造システム300は、連続鋳造装置、例えばベルト式連続鋳造機308を含む。ベルト式連続鋳造機308は、液体金属336を凝固させることに十分な冷却速度で液体金属336から熱を抽出できる対向するベルト334を含み、固体がベルト式連続鋳造機308から金属ストリップ310として排出される。ベルト式連続鋳造機308は、所望の鋳造速度で動作することができる。対向するベルト334は、任意の適切な材料で製造することができるが、いくつかの場合において、ベルト334は銅から製造される。ベルト式連続鋳造機308内の冷却システムは、液体金属336から十分な熱を抽出することができ、それによりベルト式連続鋳造機308を出る金属ストリップ310は200〜530℃の間の温度を有するが、他の範囲も使用することができる。
【0055】
いくつかの場合において、ベルト式連続鋳造機308を出る金属ストリップ310が200℃未満の温度を有するように金属から十分な熱を抽出するように構成されたベルト式連続鋳造機308を使用して、急速凝固及び急速冷却を達成することができる。他の場合において、ベルト式連続鋳造機308の直下流に、又はその直後に配置された焼入れシステム314によって、鋳造後の急速冷却を実行することができる。焼入れシステム314は、金属ストリップ310から十分な熱を抽出することができ、それにより、金属ストリップ310がベルト式連続鋳造機308を出る温度にかかわらず、金属ストリップは100℃以下の温度で焼入れシステム314を出る。一つの例として、焼入れシステム314は、約10秒以内に金属ストリップ310の温度を100℃以下に下げるように構成することができる。
【0056】
焼入れシステム314は、冷却剤342を金属ストリップ310に配布するための1つ以上のノズル340を含むことができる。冷却剤342を、適切な配管によってノズル340に連結された冷却剤源346からノズル340に供給することができる。焼入れシステム314は、金属ストリップ310に適用される冷却剤342の量を調整するために、1つ以上のバルブ344を含むことができ、バルブ344は、1つ以上のノズル340に関連するバルブ344、及び/又は冷却剤源346に関連するバルブ344を含む。いくつかの場合において、冷却剤源346は、冷却剤342の所望の温度を設定するための温度制御装置を含むことができる。コントローラ352は、バルブ344、冷却剤源346及び/又はセンサ350に動作可能に連結して、焼入れシステム314を制御することができる。センサ350は、金属ストリップ310の温度、例えば、金属ストリップ310が焼入れシステム314を出るときの金属ストリップ310の温度を決定する任意の適切なセンサとすることができる。検出された温度に基づいて、コントローラ352は、冷却剤342の温度又は冷却剤342の流量を調整して、金属ストリップ310が焼入れシステム314を出るときの金属ストリップ310の温度を所望のパラメータ内(例えば、100℃未満)に維持することができる。
【0057】
焼入れシステム314は、金属ストリップ310をある距離348冷却し始めるように配置することができ、該距離348部分の下流で、金属ストリップ310がベルト式連続鋳造機308を出る。距離348は、実行可能な限り小さくすることができる。いくつかの場合において、距離348は、5m、4m、3m、2m、1m、50cm、25cm、20cm、15cm、10cm、5cm、2.5cm、又は1cm以下である。
【0058】
焼入れシステム314を出る金属ストリップ310は、分散質形成要素の望ましい分布を有することができ、したがって本明細書に開示されるように、後続の分散質形成(例えば、分散質析出)の望ましい状態にあることができる。焼入れシステム314を出る金属ストリップ310は、巻取装置によって中間コイルに巻き取ることができる。
【0059】
図4は、本開示の特定の態様に係る中間コイル垂直格納システム400を示す概略図である。中間コイル垂直格納システム400は、
図1の格納システム104とすることができる。中間コイル垂直格納システム400は、中間コイル412、例えば、スピンドル452の周りに巻かれた金属ストリップ410を含む中間コイル412を格納するために使用することができる。中間コイル412は、垂直方向に持ち上げられ、そして、垂直支持体456を有する格納ラック454上に配置される。垂直支持体456は、スピンドル452と相互作用して、中間コイル412を垂直方向に確実に維持することができる。いくつかの場合において、垂直支持体456は、スピンドル452の開口部内に嵌合する拡張突出部とすることができるが、他の部材も使用することができる。いくつかの場合において、格納ラック454は、中間コイル412の金属ストリップ410を保管ラック454から間隔を空けて保持するための肩部458を含むことができる。いくつかの場合において、中間コイル412は、スピンドルのない金属ストリップ410を含むことができ、その場合に、垂直支持体456は、コイル状金属ストリップ410によって形成される中央開口部内に嵌合することができる。
【0060】
図5は、本開示の特定の態様に係る中間コイル水平格納システム500を示す概略図である。中間コイル水平格納システム500は、
図1の格納システム104とすることができる。中間コイル水平格納システム500は、中間コイル512、例えば、スピンドル552の周りに巻かれた金属ストリップ510を含む中間コイル512を格納するために使用することができる。中間コイル水平格納システム500は、中間コイル512のスピンドル552を水平方向に支持するための1つ以上の水平支持体562を含むことができる。いくつかの場合において、1つ以上の水平支持体562は、単一の構造体564、例えば壁又は他の適切な構造に固定されてよい。
【0061】
いくつかの場合において、中間コイル512は、格納中に回転方向560に回転することができる。回転は、周期的に(例えば、10分毎に30秒間回転する)又は連続的に発生することができる。いくつかの場合において、水平支持体562は、中間コイル512を回転させるモータ又は他の動力源を含むことができる。
【0062】
いくつかの場合において、中間コイル512は、スピンドルのない金属ストリップ510を含むことができ、その場合に、水平支持体562は、中間コイル512を水平方向に支持部材するスピンドル又は他の部材を含むことができる。いくつかの場合において、水平支持体は、コイル状金属ストリップ510により形成された中央開口からのそのようなスピンドルレス中間コイルを支持することができ、したがって、増加した重量が開口の下に重力的に位置する金属ストリップ510の部分に加えられることを回避する。しかしながら、いくつかの場合において、水平支持体562は、ローラ又は中間コイルの底部の下から中間コイルを水平方向に支持する他のそのような部材を含むことができる。いくつかの場合において、そのようなローラは、中間コイルの回転を容易にすることができる。
【0063】
図6は、本開示のいくつかの態様に係る、熱間圧延システム600を示す概略図である。熱間圧延システム600は、
図1の熱間圧延システム106とすることができる。熱間圧延システム600は、例えば、巻き戻し装置(例えば、巻き戻し機)により巻き戻された中間コイルの形で、金属ストリップ610を受け入れることができる。金属ストリップ610は、初期焼入れゾーン668、熱間圧延ゾーン670、熱処理ゾーン672及び熱処理焼入れゾーン674のような熱間圧延システム600の様々なゾーンを通過することができる。熱間圧延システムは、より少ない又はより多いゾーンを含むことができる。
【0064】
初期焼入れゾーン668では、金属ストリップ610を、熱間圧延ゾーン670内の熱間圧延に適した熱間圧延温度に冷却することができる。熱間圧延温度は、350℃又は約350℃であってもよいが、他の値が使用されてもよい。任意の適切な熱抽出装置は、初期焼入れ冷却剤680を金属ストリップ610に供給する初期焼入れノズル678のような初期焼入れゾーン668で使用することができる。様々なコントローラ及びセンサを、熱抽出装置が所望の量で冷却されることを保証するために使用することができる。初期焼入れゾーン668を、熱間圧延ゾーン670の直上流のような熱間圧延ゾーン670の上流に配置することができる。
【0065】
熱間圧延ゾーン670では、1つ以上の熱間圧延スタンドは、金属ストリップ610の厚さを減少させることができる。熱間圧延は、金属ストリップ610が350℃又は約350℃の熱間圧延温度にある時に金属ストリップ610の厚さを減少させることを含むことができる。各熱間圧延スタンドは、金属ストリップ610と直接接触する1対の作業ロール682及び作業ロール682を通して金属ストリップ610に圧延力を加える1対のバックアップロール684を含むことができる。デュオスタンド、クオルトスタンド、セクストスタンド又はゼロを含む任意の適切な数のバックアップロールを有する他のスタンドのような他のタイプの熱間圧延スタンドを使用することができる。様々な熱抽出装置を、熱間圧延中に発生した機械的誘発熱を打ち消すために、金属ストリップ610、作業ロール682及び/又はバックアップロール684上に使用することができる。
【0066】
熱処理ゾーン672では、1組の回転磁気ヒーター688のような加熱装置は、金属ストリップ610を加熱することができる。金属ストリップを、熱処理ゾーン672内で、500℃又は約500℃又はそれ以上の熱処理温度に加熱することができる。熱処理ゾーン672は、金属ストリップ610が熱間圧延ゾーン670を出た後にそれを急速に加熱することができる。様々なコントローラ及びセンサを、加熱装置が金属ストリップ610を熱処理温度に加熱することを保証するために、使用することができる。回転磁気ヒーター688は、金属ストリップ610と接触せずに、金属ストリップ610に近接して回転する電磁石又は永久磁石のローターを含むことができる。これらの回転磁気ヒーター688は、金属ストリップ610内に渦電流を誘導して、金属ストリップ610を加熱することができる変化磁界を生成することができる。
【0067】
いくつかの場合において、熱処理ゾーン672内で通常実行された加熱は、熱間圧延中に発生した機械的誘発熱に熱処理温度に向かって、又はそれまで、又はそれ以上に金属ストリップ610を加熱させることにより、熱間圧延ゾーン670において全体的又は部分的に実行される。したがって、熱処理ゾーン672の任意の追加の加熱装置(例えば、回転磁気ヒーター688)は、より少ない程度で使用されるか又は熱間圧延システム600から除外される。
【0068】
熱処理焼入れゾーン674では、金属ストリップ610を100℃又は約100℃の所望の出力温度まで急速に冷却することができる。いくつかの場合において、金属ストリップを所望の巻取温度(例えば、約100℃)以下に冷却し、その後、回転磁気ヒーターのような任意の適切な再加熱装置を使用して、金属ストリップを所望の巻取温度まで再加熱する。熱処理焼入れゾーン674を、熱処理ゾーン672の直下流に配置し、かつ金属ストリップ610が5秒以下又は1秒以下のような所望の期間よりも長くない間の熱処理温度以上に維持されることを保証するのに十分な距離にすることができる。いくつかの場合において、所望の期間は可能な限り短く、熱処理ゾーン672と熱処理焼入れゾーン674との間の距離を短くする。熱処理焼入れゾーン674は、熱処理焼入れ冷却剤692を金属ストリップ610に供給する1つ以上の熱処理焼入れノズル690を含むことができる。いくつかの場合において、熱処理焼入れ冷却剤692は、初期焼入れ冷却剤680と同じ冷却剤である。
【0069】
熱間圧延システム全体600にわたって、様々な支持ロール686を、熱間圧延システム600を通した金属ストリップ610の通過を容易にするために、使用することができる
【0070】
図7は、本開示のいくつかの態様に係る、熱間圧延システム700及びその上で圧延される金属ストリップ710の関連温度プロファイル701を示す組み合わせ概略図及びチャートである。熱間圧延システム700は、
図1の熱間圧延システム106とすることができる。
【0071】
熱間圧延システム700は、上流の巻き戻しから下流の巻き取りまで、予熱ゾーン794、初期焼入れゾーン768、熱間圧延ゾーン770、熱処理ゾーン772及び熱処理焼入れゾーン774を含む。温度プロファイル701は、金属ストリップ710が標準温度(例えば、点線で示された350℃)又は予熱温度(例えば、点線で示された530+℃)のいずれか1つで、熱間圧延システム700に入ることを示す。予熱温度で入ると、予熱ゾーン794は、金属ストリップ710にほとんどの追加の熱を加えるか又は全く加えない。しかしながら、所望の予熱温度よりも低い任意の温度(例えば、530℃以上)で入ると、予熱ゾーン794内の1つ以上の加熱装置は、金属ストリップ710に熱を加えて、金属ストリップの温度を所望の予熱温度以上に上昇させる。本明細書に開示されるように、金属ストリップ710の予熱(795)は、金属ストリップ710内の分散質配置を改善することができる。いくつかの場合において、予熱ゾーン794は、1組の回転永久磁石788を含むことができるが、他の加熱装置を使用することもできる。
【0072】
熱間圧延ゾーン770に入る前に、金属ストリップ710は、初期焼入れゾーン768内の初期焼入れ769を受けることができる。初期焼入れゾーン768では、1つ以上の初期焼入れノズル778により供給された初期焼入れ冷却剤780は、後続の熱間圧延(770)のために、金属ストリップ710の温度を熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで降下することができる。
【0073】
熱間圧延ゾーン770内の熱間圧延処理プロセスにおいて、作業ロール782を通してバックアップロール784から加えられる力のため、金属ストリップ710の厚さが減少する。熱間圧延により発生した機械的誘発熱を打ち消すために、1つ以上の圧延冷却剤ノズル796は、1つ以上の金属ストリップ710、作業ロール782又はバックアップロール784に圧延冷却剤798を供給することができる。したがって、温度プロファイル701に見られるように、熱間圧延ゾーン全体770にわたって、金属ストリップ710の温度を圧延温度又はその付近に維持することができる。
【0074】
熱処理ゾーン772では、金属ストリップ710は773を熱処理温度(例えば、500℃又はその付近又はそれ以上)に加熱することができる。熱処理ゾーン772は、1組の回転永久磁石788を含むことができるが、他の加熱装置を使用することもできる。熱処理焼入れゾーン774では、金属ストリップ710は775を、出力温度(例えば、100℃以下)のような熱間圧延温度以下の温度まで焼入れすることができる。熱処理焼入れゾーン774は、1つ以上の熱処理焼入れノズル790から熱処理焼入れ冷却剤792を供給することにより、金属ストリップ710を冷却することができる。いくつかの場合において、初期焼入れ冷却剤780、圧延冷却剤798及び熱処理焼入れ冷却剤792は、同じ冷却剤源を由来とするが、その必要はない。
【0075】
図8は、本開示のいくつかの態様に係る、意図的に過冷却された圧延スタンドを有する熱間圧延システム800及びその上で圧延される金属ストリップ810の関連温度プロファイル801を示す組み合わせ概略図及びチャートである。熱間圧延システム800は、
図1の熱間圧延システム106とすることができる。
【0076】
熱間圧延システム800は、上流の巻き戻しから下流の巻き取りまで、予熱ゾーン894、初期焼入れゾーン868、熱間圧延ゾーン870、熱処理ゾーン872及び熱処理焼入れゾーン874を含む。温度プロファイル801は、金属ストリップ810が標準温度(例えば、点線で示された350℃)又は予熱温度(例えば、点線で示された530+℃)のいずれか1つで、熱間圧延システム800に入ることを示す。予熱温度で入ると、予熱ゾーン894は、金属ストリップ810にほとんどの追加の熱を加えるか又は全く加えない。しかしながら、所望の予熱温度よりも低い任意の温度(例えば、530℃以上)で入ると、予熱ゾーン894内の1つ以上の加熱装置は、金属ストリップ810に熱を加えて、金属ストリップの温度を所望の予熱温度以上に上昇させる。本明細書に開示されるように、金属ストリップ810の予熱(895)は、金属ストリップ810内の分散質配置を改善することができる。いくつかの場合において、予熱ゾーン894は、1組の回転永久磁石888を含むことができるが、他の加熱装置を使用することもできる。
【0077】
熱間圧延ゾーン870に入る前に、金属ストリップ810は、初期焼入れゾーン868内の初期焼入れ869を受けることができる。初期焼入れゾーン868では、1つ以上の初期焼入れノズル878により供給された初期焼入れ冷却剤880は、後続の熱間圧延(870)のために、金属ストリップ810の温度を熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで降下することができる。
【0078】
熱間圧延ゾーン870内の熱間圧延プロセスにおいて、作業ロール882を通してバックアップロール884から加えられる力のため、金属ストリップ810の厚さが減少する。熱間圧延により発生した機械的誘発熱を打ち消すために、1つ以上の圧延冷却剤ノズル896は、1つ以上の金属ストリップ810、作業ロール882又はバックアップロール884に圧延冷却剤898を供給することができる。しかしながら、
図7の熱間圧延システム700とは対照的に、熱間圧延システム800は、意図的に過冷却された圧延スタンドを含む。機械的誘発熱を完全に打ち消すために、圧延冷却剤ノズル896に必要以下の圧延冷却剤898を加えることにより、圧延スタンド898が意図的に過冷却される。したがって、温度プロファイル801に見られるように、金属ストリップ810は、熱間圧延ゾーン870を通過する時に、その温度を、圧延温度以上に上昇させ、例えば、ターゲット熱処理温度に向かって、又はそれまで、又はそれ以上に上昇させることができる。いくつかの場合において、より少ない圧延冷却剤898を加えることに代わって、異なる温度又は異なる混合の圧延冷却剤898を使用してより少ない熱抽出を提供することができる。
【0079】
熱処理ゾーン872では、金属ストリップ810は873を熱処理温度(例えば、500℃又はその付近又はそれ以上)に加熱することができる。熱処理ゾーン872は、1組の回転永久磁石888を含むことができるが、他の加熱装置を使用することもできる。熱間圧延スタンドが意図的に過冷却されると、熱処理ゾーン872は、金属ストリップ810内の所望の熱処理温度を達成するために、ほとんどの追加の熱を加えるか又は全く加えない。
【0080】
熱処理焼入れゾーン874では、金属ストリップ810は875を出力温度(例えば、100℃以下)のような熱間圧延温度以下の温度まで焼入れすることができる。熱処理焼入れゾーン874は、1つ以上の熱処理焼入れノズル890から熱処理焼入れ冷却剤892を供給することにより、金属ストリップ810を冷却することができる。いくつかの場合において、初期焼入れ冷却剤880、圧延冷却剤898及び熱処理焼入れ冷却剤892は、同じ冷却剤源から由来するが、その必要はない。
【0081】
図9は、本開示のいくつかの態様に係る、分離型システムの第1変形形態及び分離型システムの第2変形形態に関連して金属ストリップを鋳造圧延するプロセスを示す組み合わせフローチャート及び概略図である。ブロック903で、金属ストリップを、ベルト式連続鋳造機のような連続鋳造装置を使用して鋳造することができる。金属ストリップを第1速度で鋳造することができる。ブロック905で、金属ストリップを、例えば、中間コイルの形で保管することができる。ブロック907で、金属ストリップを再加熱温度(例えば、550℃又は約500℃又はそれ以上)まで、又はそれ以上に再加熱することができる。いくつかの場合において、再加熱温度は400℃〜580℃又は約400℃〜580℃であってもよい。金属ストリップを再加熱期間に再加熱することができる。いくつかの場合において、再加熱期間は、6時間以下、2時間以下、1時間以下、5分間以下又は1分間以下であってもよい。いくつかの場合において、再加熱期間を、所望の量の分散質析出を誘発するために選択することができる。ブロック909で、金属ストリップを熱間圧延して金属ストリップの厚さを所望の厚さに減少させることができる。金属ストリップを、第1速度と異なる第2速度で熱間圧延することができる。第2速度は、第1速度より遅くてもよい。任意のブロック911で、送出のために金属ストリップを巻き取ることができる。
【0082】
図9の右側部分は、分離型鋳造圧延システムの第1変形形態901A及び分離型鋳造圧延システムの第2変形形態901Bのいくつかのサブシステムにより、プロセス900のどのブロックを実行することができるかを示す概略図である。
【0083】
第1変形形態901Aでは、ブロック903での鋳造は、鋳造システム902Aにより実行される。ブロック905での金属ストリップの保管及びブロック907での金属ストリップの再加熱は、保管システム904Aにより実行される。ブロック909での金属ストリップの熱間圧延及びブロック911での金属ストリップの任意の巻き取りは、熱間圧延システム906Aにより実行される。
【0084】
第2変形形態901Bでは、ブロック903での鋳造は、鋳造システム902Bにより実行される。ブロック905での金属ストリップの保管は、保管システム904Bにより実行される。ブロック907での金属ストリップの再加熱、ブロック909での金属ストリップの熱間圧延及びブロック911での金属ストリップの任意の巻き取りは、熱間圧延システム906Bにより実行される。
【0085】
図10は、本開示のいくつかの態様に係る、金属ストリップを鋳造圧延するプロセス1000を示す概略図である。ブロック1002で、ベルト式連続鋳造機のような連続鋳造装置は、金属ストリップを鋳造する。金属ストリップを第1速度で鋳造することができる。ブロック1004で、金属ストリップは、連続鋳造装置を出た時、例えば鋳造装置を直ちに出る時又はその直後に、それを焼入れ(例えば、急速冷却)することができる。ブロック1006で、金属ストリップを中間コイルに巻き取ることができる。
【0086】
ブロック1008で、中間コイルを保管することができる。中間コイルを保管することは、任意に、中間コイルを垂直方向又は水平方向に保管することを含むことができ、任意に、中間コイルを吊り下げる及び/又は中間コイルを回転させることを含むことができる。ブロック1008で、中間コイルを予熱温度まで任意に予熱することができる。
【0087】
ブロック1010で、金属ストリップを、例えば、熱間圧延システムの巻き戻し装置により、中間コイルから巻き戻すことができる。任意のブロック1014で、金属ストリップを再加熱温度に再加熱することができる。ブロック1008で中間コイルが再加熱温度に再加熱された場合、ブロック1014での再加熱は回避される。
【0088】
ブロック1016で、金属ストリップを熱間圧延温度に焼入れすることができる。ブロック1018で、金属ストリップを所望の厚さに熱間圧延することができる。金属ストリップを、第1速度と異なる第2速度で熱間圧延することができる。第2速度は、第1速度より遅くてもよい。
【0089】
任意のブロック1020で、金属ストリップを熱処理温度に加熱することができる。金属ストリップを熱処理温度に加熱することは、金属ストリップが熱間圧延ゾーンを出た後又はその直後に、金属ストリップに熱を急速に加えることを含むことができる。金属ストリップを熱処理温度に加熱することは、短期間に金属ストリップに熱を急速に加えることを含むことができる。ブロック1022では、金属ストリップを高速焼入れすることができる。ブロック1022での金属ストリップの高速焼入れは、所望の持続時間後にブロック1020の熱処理を停止することができる。ブロック1022での金属ストリップの高速焼入れは、金属ストリップの温度を、例えば、100℃又は100℃付近又は以下などの出力温度まで低下させることができる。任意のブロック1024では、金属ストリップは、供給可能なコイル(例えば、完成したコイル)に巻き取ることができる。ブロック1024では、金属ストリップは、顧客への供給に必要な物理的及び/又は化学的特性(例えば、所望の仕様に適合する特性)を有する。
【0090】
図11は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れなしで鋳造され、圧延される前に高温で貯蔵される金属ストリップの温度プロファイルを示すチャート1100である。チャート1100のX軸は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿った上流方向から下流方向へ(例えば、左から右へ)の距離を表す。チャート1100のY軸は、温度(℃)である。チャート1100のライン1102は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿って移動するときの金属の近似温度を表す。金属ストリップは、約560℃で鋳造装置を出るように示されているが、場合によっては、金属ストリップは、約350℃と450℃を含む、約200℃と560℃との間の温度で鋳造装置を出ることができる。
【0091】
鋳造後の焼入れが行われない場合、鋳造装置を出る金属ストリップの温度は、巻き取る前に低下しないか、又はわずかに低下する可能性がある。鋳造と熱間圧延との間に予熱(例えば、貯蔵中の予熱)が発生すると、金属ストリップは、高温(例えば、530℃又は530℃付近又は以上)に維持されてもよく、その温度又はその温度付近で熱間圧延システムに供給されてもよい。熱間圧延中に、金属ストリップは、少なくとも金属ストリップが熱間圧延システムの圧延スタンドを通過する期間、熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで温度を低下させることができる。金属ストリップは、出力温度(例えば、100℃又は100℃付近又は以下)まで焼入れされる前に、熱処理温度(例えば、500℃又は500℃付近又は以上)に急速に再加熱することができる。
【0092】
図12は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れをせずに、圧延前の予熱をする鋳造されている金属ストリップの温度プロファイルを示すチャート1200である。チャート1200のX軸は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿った上流方向から下流方向へ(例えば、左から右へ)の距離を表す。チャート1200のY軸は、温度(℃)である。チャート1200のライン1202は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿って移動するときの金属の近似温度を表す。金属ストリップは、約560℃で鋳造装置を出るように示されているが、場合によっては、金属ストリップは、約350℃と450℃を含む、約200℃と560℃との間の温度で鋳造装置を出ることができる。
【0093】
鋳造後の焼入れが行われない場合、鋳造装置を出る金属ストリップの温度は、巻き取る前に低下しないか、又はわずかに低下する可能性がある。熱間圧延システムで予熱がインラインで行われる場合(例えば、熱間圧延の直前)、金属ストリップは、貯蔵中に温度が低下し、約350℃で熱間圧延システムに入る可能性がある。熱間圧延システムで行われるインライン予熱は、金属ストリップの温度を予熱温度(例えば、530℃又は530℃付近又は以上)まで急速に上昇させることができる。再加熱の直後、金属ストリップは、熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで焼入れされ、少なくとも金属ストリップが熱間圧延システムの圧延スタンドを通過する期間に維持することができる。金属ストリップは、出力温度(例えば、100℃又は100℃付近又は以下)まで焼入れされる前に、熱処理温度(例えば、500℃又は500℃付近又は以上)に急速に再加熱することができる。
【0094】
図13は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れをして鋳造され、圧延される前に高温で貯蔵される金属ストリップの温度プロファイルを示すチャート1300である。チャート1300のX軸は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿った上流方向から下流方向へ(例えば、左から右へ)の距離を表す。チャート1300のY軸は、温度(℃)である。チャート1300のライン1302は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿って移動するときの金属の近似温度を表す。金属ストリップは、約560℃で鋳造装置を出るように示されているが、場合によっては、金属ストリップは、約350℃と450℃を含む、約200℃と560℃との間の温度で鋳造装置を出ることができる。
【0095】
鋳造後の焼入れが行われると、鋳造装置を出る金属ストリップの温度は、巻き取る前に急速に低下する可能性がある。この高速焼入れは、金属ストリップの温度を約500℃、400℃、300℃、200℃又は100℃又はそれらの以下に下げることができる。鋳造と熱間圧延との間に予熱(例えば、貯蔵中の予熱)が発生すると、金属ストリップは、高温(例えば、530℃又は530℃付近又は以上)に維持されてもよく、その温度又はその温度付近で熱間圧延システムに供給されてもよい。熱間圧延中に、金属ストリップは、少なくとも金属ストリップが熱間圧延システムの圧延スタンドを通過する期間、熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで温度を低下させることができる。金属ストリップは、出力温度(例えば、100℃又は100℃付近又は以下)まで焼入れされる前に、熱処理温度(例えば、500℃又は500℃付近又は以上)に急速に再加熱することができる。
【0096】
図14は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れをして鋳造され、圧延前に予熱された金属ストリップの温度プロファイルを示すチャート1400である。チャート1400のX軸は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿った上流方向から下流方向へ(例えば、左から右へ)の距離を表す。チャート1400のY軸は、温度(℃)である。チャート1400のライン1402は、分離型連続鋳造及び圧延システムに沿って移動するときの金属の近似温度を表す。金属ストリップは、約560℃で鋳造装置を出るように示されているが、場合によっては、金属ストリップは、約350℃と450℃を含む、約200℃と560℃との間の温度で鋳造装置を出ることができる。
【0097】
鋳造後の焼入れが行われると、鋳造装置を出る金属ストリップの温度は、巻き取る前に急速に低下する可能性がある。この高速焼入れは、金属ストリップの温度を約500℃、400℃、300℃、200℃又は100℃又はそれらの以下に下げることができる。金属ストリップは、温度が低下してもよく、又はコイリング中に加熱されてもよい。巻き取り中の金属ストリップの温度に応じて、金属ストリップは、温度が低下してもよく、又は巻き取り中に加熱されてもよい。金属ストリップは、約350℃で熱間圧延システムに入ることができるが、場合によっては、それ以下の温度で熱間圧延システムに入ることができる。熱間圧延システムで行われるインライン予熱は、金属ストリップの温度を予熱温度(例えば、530℃又は530℃付近又は以上)まで急速に上昇させることができる。再加熱の直後、金属ストリップは、熱間圧延温度(例えば、350℃又は350℃付近)まで焼入れされ、少なくとも金属ストリップが熱間圧延システムの圧延スタンドを通過する期間に維持することができる。金属ストリップは、出力温度(例えば、100℃又は100℃付近又は以下)まで焼入れされる前に、熱処理温度(例えば、500℃又は500℃付近又は以上)に急速に再加熱することができる。
【0098】
図15は、本開示のいくつかの態様による、分離型鋳造及び圧延システムを使用して鋳造された金属ストリップ1501と比較した、標準的なDC鋳造金属ストリップ1500についてのアルミニウム合金AA6014中の鉄含有(Fe含有)金属間化合物を示す一連の拡大画像である。金属ストリップ1500は、長い熱処理時間(例えば、約数時間又は約数日間)を含む標準的な直接チル鋳造技術に従って製造された。金属ストリップ1501は、本開示のいくつかの態様に従って製造された。
【0099】
金属ストリップ1500及び1501の画像を比較すると、DC鋳造金属ストリップ1500は、サイズが数十ミクロンである多くの大きな金属間化合物を示し、一方、金属ストリップ1501に見られる金属間化合物は、長さが数ミクロン以下である最大の金属間化合物でさえもはるかに小さい。金属間化合物のこれらの異なる配置は、DC鋳造金属ストリップ1500中の凝固が、金属ストリップ1501中の凝固と比較して相対的にゆっくり発生したことを示す。実際に、金属ストリップ1501の凝固は、DC鋳造金属ストリップ1500の凝固速度よりも約100倍速い速度で発生した。
【0100】
図16は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れをせずに鋳造された金属ストリップ1601と、鋳造後の焼入れをして鋳造された金属ストリップ1600とを比較する、550℃で1時間再加熱された6xxx系アルミニウム合金金属ストリップ中の分散質を示す一連の走査型透過電子顕微鏡写真である。金属ストリップ1600、1601のそれぞれは、
図1の連続鋳造システム102のような、本明細書に記載の連続鋳造システムを使用して製造され、しかしながら、金属ストリップ1600に使用される鋳造システムは、
図3の高速焼入れシステム314のような高速焼入れシステムを含んでいたが、金属ストリップ1601に使用される鋳造システムは、高速焼入れシステムを含まなかった。
【0101】
金属ストリップ1601は、約450℃で連続ベルト鋳造機から出て、3時間かけて約100℃まで空冷された。金属ストリップ1600は、約450℃で連続ベルト鋳造機から出て、約10秒以下で100℃まで直ちに焼入れされた。金属ストリップ1601及び金属ストリップ1600の両方は、550℃で1時間予熱された従来の抵抗炉で再加熱された。
【0102】
金属ストリップ1601の分散質配置は、大部分が大きすぎるか又は小さすぎる、ほんの少数の望ましいサイズの分散質を示す。対照的に、金属ストリップ1600の分散質配置は、望ましいサイズの分散質のよく分布した配置を示す。望ましいサイズの分散質は、平均して、10nm〜500nm又は10nm〜100nmの直径を有することができる。参考として、50nmのドット(例えば、中間範囲の望ましい分散質)及び100nmのドット(例えば、最大の望ましい分散質)が、各顕微鏡写真の左側に、顕微鏡写真の近似尺度で示される。
【0103】
連続鋳造後の即時焼入れのため、(例えば、示されるように再加熱される前の)金属ストリップ1600への前駆体金属ストリップは、アルミニウムマトリックス内で過飽和に保持された、小型でよく分散した多くの分散質形成元素を含んでいた。分散質形成元素で過飽和されたこのマトリックスは、
図16に示される望ましい分散質配置を生成するために再加熱できる前駆体金属として独特に有利である。金属ストリップ1600への前駆体金属ストリップが再加熱されると、分散質は、過飽和マトリックスから示された所望の分散質配置に析出し始めた。対照的に、鋳造後の焼入れをせずに、金属ストリップ1601の分散質配置は、よく分布されず、望ましくない大きな分散質を含む。
【0104】
図17は、本開示のいくつかの態様に係る、従来の半連続鋳造技術を用いて製造された7xxx系金属ストリップと、分離型連続鋳造及び圧延を用いて製造された7xxx系金属ストリップと、の降伏強度及び3点曲げ試験結果を比較するチャート1700である。チャート1700は、従来の直接チル鋳造技術と比較して、本明細書に開示される分離型連続鋳造及び圧延システムを使用することによって、同じ3点曲げ特性を達成することができると同時に、より改善された(例えば、15%改善された)降伏強度を達成することができることを示す。
【0105】
図18は、本開示のいくつかの態様に係る、従来の半連続鋳造技術を用いて製造された6xxx系金属ストリップ、分離型連続鋳造及び圧延を用いて製造された6xxx系金属ストリップ、との降伏強度及び固溶化熱処理浸漬時間結果を比較するチャート1800である。チャート1800は、所望の降伏強度特性(例えば、290MPa又は290MPa付近)が、通常、従来の半連続鋳造技術を用いた金属鋳造のための固溶化温度(例えば、520℃又は520℃付近)で少なくとも60秒の浸漬時間を必要とすることを示す。しかしながら、本明細書に開示される分離型連続鋳造及び圧延システムを使用する金属鋳造については、固溶化温度でゼロ秒の浸漬時間で所望の降伏強度特性を達成することができる。
【0106】
従来のDC鋳造技術は、様々な強化粒子を溶液に戻すために、この60秒の浸漬時間を必要とする。しかしながら、本開示の様々な態様による金属鋳造物中の粒子の望ましい配置のため、金属をその温度に数秒、1秒、さらには0.5秒以上保持する必要はなく、金属ストリップを固溶化温度まで単に加熱することによって、所望の強度を達成することができる。
【0107】
この浸漬時間の大幅な節約は、固溶化熱処理が熱間圧延機とインラインで行われることが望ましい場合に特に重要である。金属ストリップは、熱間圧延スタンドの出口で約300m/minから800m/min以上の速度で移動することができるので、DC鋳造金属ストリップに60秒の浸漬を提供するのに必要な処理ラインの量は、300〜800メートルを超えることができる。対照的に、本開示の様々な実施形態に従って製造された金属ストリップのための所望の浸漬時間を提供するのに必要な処理ラインの量は、無視できる。この距離は、実質的にゼロであるか、又は加熱装置(例えば回転磁気ヒーター)とそのすぐ下流の焼入れ装置との間に必要な最小距離と同じくらい小さくすることができる。
【0108】
図19は、本開示のいくつかの態様による、鋳造後の焼入れをせずに鋳造された金属ストリップ1901と、鋳造後の焼入れをして鋳造された金属ストリップ1900とを比較する、550℃で8時間再加熱されたAA6111アルミニウム合金金属ストリップ中の分散質を示す一連の走査型透過電子顕微鏡写真である。金属ストリップ1900、1901のそれぞれは、
図1の連続鋳造システム102のような、本明細書に記載の連続鋳造システムを使用して製造され、しかしながら、金属ストリップ1900に使用される鋳造システムは、
図3の高速焼入れシステム314のような高速焼入れシステムを含んでいたが、金属ストリップ1901に使用される鋳造システムは、高速焼入れシステムを含まなかった。
【0109】
金属ストリップ1901は、約450℃で連続ベルト鋳造機から出て、3時間かけて約100℃まで空冷された。金属ストリップ1900は、約450℃で連続ベルト鋳造機から出て、(例えば、約10秒以下で100℃まで)直ちに焼入れされた。金属ストリップ1901と1900の両方は、540℃まで50℃/時の速度で徐々に再加熱され、そして540℃で8時間保持された。
【0110】
金属ストリップ1901の分散質配置は、粗い分散質及びほんの少数の望ましいサイズの分散質を示す。対照的に、金属ストリップ1900の分散質配置は、望ましいサイズの多くの分散質のよく分布した配置を示す。望ましいサイズの分散質は、平均して、10nm〜500nm又は10nm〜100nmの直径を有することができる。参考のために、50nmのドット(例えば、中間範囲の望ましい分散質)、100nmのドット及び500nmのドットが、各顕微鏡写真の左側に、顕微鏡写真の近似尺度で示される。
【0111】
連続鋳造後の即時焼入れのため、(例えば、示されるように再加熱される前の)金属ストリップ1900への前駆体金属ストリップは、アルミニウムマトリックス内で過飽和に保持された、小型でよく分散した多くの分散質形成元素を含んでいた。分散質形成元素で過飽和されたこのマトリックスは、
図19に示される望ましい分散質配置を生成するために再加熱できる前駆体金属として独特に有利である。金属ストリップ1900への前駆体金属ストリップが再加熱されると、分散質は、過飽和マトリックスから示された所望の分散質配置に析出し始めた。対照的に、鋳造後の焼入れをせずに、金属ストリップ1901の分散質配置は、それほど分布されず、より少なくより粗い分散質を含む。
【0112】
図20は、本開示のいくつかの態様による、熱間圧延及び焼入れ中にアルミニウム金属ストリップのMg
2Siの析出を示すチャート2000である。チャート2000は、6xxx系のアルミニウム合金のようなアルミニウム合金について、特定の温度で費やされた時間に応じたMg
2Siの予想される析出を示す。強析出ゾーン2001が示される。強析出ゾーン2001の境界は、1%〜90%の間(例えば、0.01〜0.9の体積分率の間)のMg
2Siの予想される析出を示す。したがって、ラインが強析出ゾーン2001の左端を横切るとき、そのラインに続く金属は、約1%のMg
2Siの析出を有すると予想され、それは、ラインが強析出ゾーン2001の右端を横切るまで成長し、この点でそのラインに続く金属は、少なくとも90%のMg
2Siの析出を有すると予想される。例えば、約400℃で保持された金属は、約1.7秒までのMg
2Siの約1%以下の析出を有すると予想され、その温度で407秒維持されると、Mg
2Siの少なくとも90%の析出を有すると予想される。高析出ゾーン2001内では、Mg
2Siの析出は、急速に実行し、1%から90%の析出まで急速に移行する。したがって、いくつかの場合において、金属ストリップが高析出ゾーン2001内で費やす時間量を最小化することが望ましい場合がある。いくつかの場合において、Mg
2Si又は他の任意の析出物の所望の体積分率を達成するために計算された特定の時間量の後に、高析出ゾーン2001から出ることが望ましい場合がある。
【0113】
ライン2003は、焼入れを含む熱間圧延の前、期間、及び後の金属ストリップの温度を示し、ここで、金属ストリップは、熱間圧延の前に予熱され、冷却され、再結晶温度より低い熱間圧延温度で圧延され、次に熱間圧延後に加熱され、最後に焼入れされる。ライン2003は、金属ストリップが初期焼入れゾーン768、熱間圧延ゾーン770、熱処理ゾーン772、及び熱処理焼入れゾーン774を通過する時に、
図7の金属ストリップ710のような金属ストリップの温度に追従することができる。
【0114】
ライン2003は、熱間圧延温度までの温度の初期低下を示す。金属ストリップは、第1圧延スタンド2007、第2圧延スタンド2009、及び第3圧延スタンド2011を通過することを含むことができる熱間圧延プロセス全体にわたって熱間圧延温度のままである。ライン2003は、金属ストリップが第の圧延スタンド2009及び第3圧延スタンド2011を通過する時に、Mg
2Siの高析出ゾーン2001内にあることに留意される。ライン2003は、金属ストリップが熱間圧延後に熱処理され、次に焼入れされることを示すことができる。点2005は、焼入れの開始時間を示す。
【0115】
ライン2003は、約2.5秒で高析出ゾーン2001に入り、約19.2秒で高析出ゾーン2001から出るため、高析出ゾーン2001内で約16.7秒を費やす。いくつかの場合において、ライン2003は、焼入れが開始すると温度が急速に低下する前に、温度が高析出ゾーン2001の最も左側に上昇するにつれて、熱処理の終わり近くで高析出ゾーン2001から短時間出る。
【0116】
ライン2013は、焼入れを含む熱間圧延の前、その間、及びその後の金属ストリップの温度を示し、ここで、金属温度は、最終的に焼入れされる前に、熱間圧延中に徐々に冷却される。ライン2013は、熱間圧延ゾーン2170及び熱処理焼入れゾーン2174を通過する時に、
図21の金属ストリップ2110のような金属ストリップの温度に追従することができる。
【0117】
ライン2013は、熱間圧延前の初期焼入れを少し示すかあるいは全く示さない。むしろ、金属ストリップは、熱間圧延中に、再結晶温度(例えば、530℃以上のような予熱温度)よりも高い熱間圧延入口温度から、熱間圧延入口温度より低い熱間圧延出口温度まで低下させることができる。ライン2013に示す熱間圧延中の温度低下を実現するために、熱間圧延機の各スタンドは、金属ストリップから熱を抽出することができる。熱処理プロセス中に、金属ストリップは、圧延後(例えば、熱間圧延後)の再結晶に頼る代わりに、熱間圧延プロセス中に動的再結晶を行うことができる。ライン2013は、第1熱間圧延スタンドの直前から焼入れプロセスの直後までの単調減少経路に追従することができる。
【0118】
Mg
2Siのような析出物の析出を制御することが望ましい場合がある。いくつかの場合において、析出量を最小化するか、又は予め設定された所望の量に制御することができる。例えば、析出を最小化することを望む場合、高析出ゾーン2001内で費やされる時間量を最小化することができる。高析出ゾーン2001内で費やされる時間量を最小化するために、金属ストリップは、熱間圧延出口温度で最終熱間圧延スタンドから出ることができ、その後、実質的な析出が予想される温度より低い温度(例えば、その特定の時間枠について高析出領域2001より低い温度)に急速に焼入れすることができる。したがって、熱間圧延出口温度を最小化すること、及び/又は焼入れ中の冷却速度を最大化することが望ましい場合がある。本明細書に記載されるように、最終熱間圧延スタンド(例えば、第3熱間圧延スタンド2021)の減少量(例えば、厚さ減少率)を最大化するか、又は高速焼入れに適した熱間圧延出口温度を達成するのに適した減少量を少なくとも選択して、高析出ゾーン2001内で費やされる時間を最小化することが望ましい場合がある。例えば、いくつかの場合において、第1熱間圧延スタンド2017、第2熱間圧延スタンド2019、及び第3熱間圧延スタンド2021のそれぞれで行われる減少量は、50%の減少率(例えば、16mmから8mm、次いで8mmから4mm、さらに4mmから2mm)であってもよい。いくつかの場合において、第3熱間圧延スタンド2021で行われる減少量は、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又は70%を超えることができる。
【0119】
熱間圧延出口温度は任意の適切な温度であってもよい。いくつかの場合において、金属が、約450℃、445℃、440℃、435℃、430℃、425℃、420℃、415℃、410℃、405℃、400℃、395℃、390℃、385℃、380℃、375℃、370℃、365℃、360℃、355℃、350℃、345℃、340℃、335℃、330℃、325℃、320℃、315℃、310℃、305℃、又は300℃以下の熱間圧延出口温度で最終熱間圧延スタンドから出るように、熱間圧延プロセス中に相当量の熱を除去することが望ましい場合がある。いくつかの場合において、熱間圧延出口温度は、約375℃〜405℃、380℃〜400℃、385℃〜395℃、又は約390℃であることが望ましい場合がある。再結晶温度より高い温度で第1熱間圧延スタンド2017に入り、金属ストリップが第2熱間圧延スタンド2019及び第3熱間圧延スタンド2021を通過する時に温度を熱間圧延出口温度まで低下させることにより、動的再結晶は、熱間圧延プロセス中に金属ストリップ内で行うことができる。他の数の圧延スタンドを使用することができる。
【0120】
チャート2000に示すように、ライン2003は、約3.1秒で高析出ゾーン2001に入り、約7.4秒で高析出ゾーン2001から出るため、高析出ゾーン2001内で約4.3秒を費やす。したがって、ライン2013の高析出ゾーン2001の内の持続時間は、ライン2003の高析出ゾーン2001内の持続時間の約25%であってもよい。この持続時間の差は、Mg
2Si又は他の析出物の析出量に実質的に影響を与えることができる。チャート2000は、MG
2Siの析出を示すが、他の析出物についても同様のチャートが存在し、同様の原理を適用することができる。
【0121】
図21は、本開示のいくつかの態様に係る、熱間圧延システム2100及びその上で圧延される金属ストリップ2110の関連温度プロファイル2101を示す組み合わせ概略図及びチャートである。熱間圧延システム2100は、
図1の熱間圧延システム106とすることができ、
図20のライン2013に関して概説した原理に基づいて動作することができる。
【0122】
熱間圧延システム2100は、上流の巻き戻しから下流の巻き取りまで、任意の予熱ゾーン2194、熱間圧延ゾーン2170、及び焼入れゾーン2174を含む。温度プロファイル2101は、金属ストリップ2110が標準温度(例えば、点線で示された350℃)又は予熱温度(例えば、点線で示された530+℃)のいずれか1つで、熱間圧延システム2100に入ることを示す。予熱温度で入ると、予熱ゾーン2194は、金属ストリップ2110に追加の熱を少し加えるかあるいは全く加えない。しかしながら、所望の予熱温度よりも低い任意の温度(例えば、530℃以上)で入ると、予熱ゾーン2194内の1つ以上の加熱装置は、金属ストリップ2110に熱を加えて、金属ストリップの温度を所望の予熱温度以上に上昇させる。本明細書に開示されるように、金属ストリップ2110の予熱2195は、金属ストリップ2110内の分散質配置を改善することができる。いくつかの場合において、予熱ゾーン2194は、1組以上の回転永久磁石2188を含むことができるが、他の加熱装置を使用することもできる。
【0123】
熱間圧延ゾーン2170に入る前に、金属ストリップ2110は、初期焼入れを少し行うかあるいは全く行わない。したがって、金属ストリップ2110は、熱間圧延ゾーン2170に入る時、高温(例えば、約530℃以上)を有することができる。
【0124】
熱間圧延ゾーン2170内の熱間圧延プロセス中に、作業ロール2182を通してバックアップロール2184から加えられる力のため、金属ストリップ2110の厚さを減少させることができる。熱間圧延により発生した機械的誘発熱を打ち消して金属ストリップ2110に冷却効果を与えるために、1つ以上の圧延冷却剤ノズル2196は、1つ以上の金属ストリップ2110、作業ロール2182又はバックアップロール2184に圧延冷却剤2198を供給することができる。冷却剤2198は、潤滑油、空気、水、又はそれらの混合物のような任意の適切な冷却剤であってもよい。したがって、温度プロファイル2101に見られるように、金属ストリップ2110の温度は、熱間圧延ゾーン2170の全体にわたって熱間圧延入口温度(例えば、約530℃以上)から熱間圧延入口温度より低い熱間圧延出口温度(例えば、約400℃)まで単調に低下させることができる。いくつかの場合において、動的再結晶を確実に実行しながら、熱間圧延出口温度を最小化することが望ましい場合がある。この最小化は、例えば、比較的高速の厚さ減少を伴う比較的高速の圧延を介してなど、最終圧延スタンドで高速度の歪みを維持することによって達成することができる。
【0125】
金属ストリップ2110を、熱間圧延ゾーン2170から出た直後に(例えば、再加熱することなく)焼入れすることができる。焼入れゾーン2174では、金属ストリップ2110を、出力温度(例えば、100℃以下)のような、熱間圧延出口温度以下の温度まで焼入れすることができる(2175)。熱処理焼入れゾーン2174は、1つ以上の焼入れノズル2190から焼入れ冷却剤2192を供給することにより、金属ストリップ2110を冷却することができる。いくつかの場合において、圧延冷却剤2198及び焼入れ冷却剤2192は、同じ冷却剤源から由来するが、その必要がない。
【0126】
図22は、本開示のいくつかの態様に係るホットバンド連続鋳造システム2200を示す概略図である。ホットバンド連続鋳造システム2200は、特定の冶金学的特性を改善するためのいくつかのインライン追加を備える、
図3の分離された連続鋳造システム300と同様の部分的に分離された連続鋳造システムであってもよい。ホットバンド連続鋳造システム2200は、任意に最終ゲージと最終焼戻しにあるコイル状ホットバンド2212を製造することができる。いくつかの場合において、本明細書で説明するように、ホットバンド2212を、中間コイルとして使用し、かつ、さらに処理することができる。しかしながら、いくつかの場合において、ホットバンド2212自体は、所望のゲージと、任意に焼戻しの状態で、最終製品であってもよい。
【0127】
ホットバンド連続鋳造システム2200は、双ベルト式連続鋳造機2208のような連続鋳造装置を含むが、双ロール鋳造機のような他の連続鋳造装置を使用することもできる。ベルト式連続鋳造機2208は、液体金属2236を凝固させるのに十分な冷却速度で液体金属2236から熱を抽出することができる対向するベルトを含み、この冷却速度は、固体がベルト式連続鋳造機2208から金属ストリップ2210として流出する。ベルト式連続鋳造機2208から出る時の金属ストリップ2210の厚さは50mm以下であってもよいが、他の厚さが使用されてもよい。ベルト式連続鋳造機2208は、所望の鋳造速度で作動することができる。対向するベルトは、任意の適切な材料で製造することができるが、いくつかの場合において、ベルトは銅で製造される。ベルト式連続鋳造機2208内の冷却システムは、液体金属2236から十分な熱を抽出することができ、それによりベルト式連続鋳造機2208から出る金属ストリップ2210の温度が、他の範囲も使用できるにもかかわらず、200℃〜530℃の間にある。いくつかの場合において、ベルト式連続鋳造機2208から出る温度(例えば、ピーク金属温度)は、約350℃〜約450℃であってもよい。
【0128】
いくつかの場合において、任意の均熱炉2217(例えば、トンネル炉)を、ベルト式連続鋳造機2208の出口付近のベルト式連続鋳造機2208の下流に配置することができる。均熱炉2217の使用は、金属ストリップ2210の横方向の幅にわたって均一な温度プロファイルを達成することを容易にすることができる。さらに、均熱炉2217が金属ストリップ2210をフラッシュ均質化することができ、これにより熱間又は温間圧延中の鉄成分の分解が改善された金属ストリップ2210を製造することができる。いくつかの場合において、ベルト式連続鋳造機2208と均熱炉2217との間に任意のピンチロール2215を配置することができる。いくつかの場合において、任意の一組の磁気ヒーター2288(例えば、磁気ローター又は回転軸を中心に回転する磁石)を、ベルト式連続鋳造機又はピンチロール2215と均熱炉2217との間に配置することができる。磁気ヒーター2288は、金属ストリップ2210の温度を均熱炉2217の温度又はほぼその温度まで上昇させることができ、この温度は、約570℃(例えば、500〜570℃、520〜560℃、又は約560℃もしくは570℃)であってもよい。均熱炉2217は、ベルト式連続鋳造機2208の出口速度で移動しながら、金属ストリップ2210が、約1分〜10分、又は好ましくは1分〜3分、又は好ましくは約2分で均熱炉2217を通過するのを可能にするのに十分な長さであってもよい。
【0129】
いくつかの場合において、圧延スタンド2284を、均熱炉2217の下流及び巻取装置の上流に配置することができる。圧延スタンド2284は、熱間圧延スタンド又は温間圧延スタンドであってもよい。いくつかの場合において、温間圧延は、400℃以下であるが冷間圧延温度を超える温度で実行し、そして、熱間圧延は、400℃を超えるが溶融温度以下の温度で実行する。圧延スタンド2284は、金属ストリップ2210の厚さを少なくとも30%、あるいは50%〜75%減少させることができる。圧延後焼入れ2219は、圧延スタンド2284から出た後の金属ストリップ2210の温度を低下させることができる。圧延後焼入れ2219は、
図3を参照して説明したように、分散質形成に関連するもののような有益な冶金学的特性を付与することができる。いくつかの場合において、2つ、3つ、又はそれ以上といった1つ以上の圧延スタンド2284を使用することができるが、複数である必要はない。
【0130】
いくつかの場合において、任意の圧延前焼入れ2213は、均熱炉2217と圧延スタンド2284との間の金属ストリップ2210の温度を低下させることができ、これにより金属ストリップ2210に有益な冶金学的特性を付与することができる。圧延前焼入れ2213及び/又は圧延後焼入れ2219は、金属ストリップ2210の温度を約200℃/秒の速度で低下させることができる。圧延前焼入れ2213は、金属ストリップ2210のピーク金属温度を約350℃〜約450℃に低下させることができるが、他の温度も使用することができる。
【0131】
巻き取る前に、金属ストリップ2210は、エッジトリマー2221によってエッジトリミングを行うことができる。巻き取り中、金属ストリップ2210はホットバンド2212のコイルに巻くことができ、ホットバンド2212のコイルが所望の長さ又はサイズに達すると、剪断機2223は金属ストリップ2210を分割することができる。いくつかの場合において、ホットバンド2212は、巻かれなくてもよいが、他のプロセスに直接供給されてもよい。いくつかの場合において、巻き取りは、約50℃〜約400℃の温度で実行することができる。
【0132】
ブロック2286によって示すように、ホットバンド2212は最終ゲージにあることができる。このような場合、圧延スタンド2284は、金属ストリップ2210の厚さをホットバンド2212に望ましい最終ゲージまで減少させるように構成することができる。いくつかの場合において、ブロック2287によって示すように、ホットバンド2212は最終ゲージ及び焼戻しにあることができる。このような場合、圧延スタンド2284は、金属ストリップ2210の厚さをホットバンド2212に望ましい最終ゲージまで減少させるように構成することができ、他の焼戻しを使用することもできるが、温度をホットバンド連続鋳造システム2200を通して注意深く制御して、O焼戻し又はT4焼戻しのような望ましい焼戻しを達成することができる。いくつかの場合において、ブロック2289によって示すように、ホットバンド2212を格納し、中間コイルを参照して上述したように任意に再加熱し、次いで仕上げ、冷間圧延、及び/又は熱処理することができる。ホットバンド連続鋳造システム2200を使用して製造されたホットバンド2212は、冷間圧延により適した微細構造を有することができる。例えば、ホットバンド連続鋳造システム2200を使用して製造された6xxxシリーズアルミニウム合金ホットバンドは、冷間圧延時に問題のあるボイドと亀裂発生部位を引き起こす可能性がある標準的な金属間化合物よりも冷間圧延によりよく反応する、より小さく球状化した金属間化合物を有することができる。
【0133】
場合によっては、連続鋳造後にインラインで、熱間圧延又は温間圧延の前の少なくとも約1.5分又は2分に、少なくとも約560℃又は570℃のピーク金属温度で、約50%〜70%の厚さの減少を有し、金属ストリップ2210を均熱炉2217内に均熱するとき、ホットバンド2212は、6xxx及び5xxx系のアルミニウム合金中の望ましい鉄粒子分布(例えば、鉄成分の分解及び球状化)を含むことができる。鉄粒子分布は、ホットバンド2212を使用して製造された金属製品の亀裂発生部位および変形性において、重要な役割を果たすことができる。本開示の特定の態様を使用して、ホットバンド2212は、高度に粉砕および球状化された鉄成分で製造されてもよく、したがって、変形性が改善され、かつ割れ感受性が低くなる。
【0134】
いくつかの代替実施形態では、圧延スタンド2284は均熱炉2217の上流(例えば、左側、
図22参照)に配置されてもよい。そのような位置には、望ましい結果を生み出すことができるが、厚さが比較的高く減少(例えば、50%〜70%)する結果として、金属ストリップ2210の速度が増加するため、より長い均熱炉2217を必要とし、したがって、より高い設置コスト、運用コストおよび物理的な設置面積を必要とする。いくつかの代替実施形態では、追加の均熱炉は圧延スタンド2284の下流に配置されてもよく、厚さの減少後に金属ストリップ2210の温度をさらに制御することができる。しかしながら、圧延後の金属ストリップの速度増加は、比較的大きな設置面積およびより高い付随コストを有する追加の均熱炉を必要とする。
【0135】
図23は、本開示の特定の態様による、熱間圧延および焼入れ中にアルミニウム金属ストリップのMg
2Siの析出を示すチャート2300である。チャート2300は
図20のチャート2000と類似し、6xxx系のアルミニウム合金のようなアルミニウム合金について、特定の温度で費やされた時間によるMg
2Siの予想される析出を示す。
図20の高析出領域2001と類似する高析出領域2301が示されている。
【0136】
線2303は、本開示の特定の態様による、処理された金属ストリップの温度を示し、ここで、金属ストリップは温間圧延温度に冷却され、さらに冷却されながら温間圧延され、その後、さらに冷却される。冷却されている間の温間圧延はさらにセクション2307で起こる。金属ストリップの時間および温度を制御することによって、温度線2303が高析出領域2301の外側に留まり、Mg
2Siの析出を最小化することができる。
【0137】
場合によっては、金属ストリップは温間圧延されながら2つの圧延スタンドに通されてもよい。第1噛み合い(例えば、第1圧延スタンドのローラ間)において、金属ストリップは、十分に低い温度に焼入れされてもよく、そのように、望ましくない金属間化合物(例えば、Mg
2Si)の析出を回避する。第2噛み合いにおいて、金属ストリップは、十分な力で薄くされてもよく、そのように、第2噛み合いに入ったときに、金属ストリップの温度で再結晶する。
【0138】
線2305は、本開示の特定の態様による、処理された金属ストリップの温度を示し、ここで、金属ストリップは鋳造から圧延まで、高温(例えば、約510℃、515℃、又は517℃以上)に維持される。圧延後に、金属ストリップは急速に焼入れされてもよく、したがって、金属ストリップの温度線2305が高析出領域2301内に留まる時間量を最小化することができる。この場合、金属ストリップは、少なくとも部分的に圧延中の高温のために、非加工硬化粒子構造を保持することができる。
【0139】
図24は、本開示の特定の態様による、熱金属帯を鋳造するためのプロセス2400を示すフローチャートである。ブロック2402において、連続鋳造装置、例えば、ベルト鋳造機を使用して、金属ストリップを鋳造することができる。連続鋳造装置、例えば、ベルト鋳造機の使用は、急速な凝固速度を確実にすることができる。
【0140】
任意選択のブロック2404において、ベルト鋳造機を出た後に、金属ストリップをフラッシュ均質化することができる。フラッシュ均質化は、金属ストリップを均熱温度(例えば、約400℃〜580℃、又はより好ましくは約570℃〜580℃)に選択的に再加熱し、かつ金属ストリップを均熱温度にある時間維持することを含むことができる。持続時間は、約10〜300秒、60〜180秒、又は120秒であり得る。
【0141】
フラッシュ均質化は、大きい及び/又はブレード状の金属間化合物を粉砕及び/又は球状化するのに特に有用であり得る。例えば、AA6111およびAA6451合金は、鋳造時に比較的大きい金属間化合物を有することができ、金属間化合物は本明細書に開示されるように、フラッシュ均質化によって改善されてもよい。しかしながら、AA5754合金は、針状又はブレード状の金属間化合物として製造されないので、AA5754及び類似の合金について、フラッシュ均質化を省略することができる。場合によっては、フラッシュ均質化をいつ使用するか、およびフラッシュ均質化をいつ使用しないかの決定は、鉄対シリコンの比に基づいて行われてもよく、ここで、より高いシリコン含有量(例えば、シリコン対鉄の比率が1:5以上)の合金は、フラッシュ均質化によって利益を得ることができる。場合によっては、より低いシリコン含有量(例えば、シリコン対鉄の比が1:5以下)を有する合金は、フラッシュ均質化なしで、又はより低い温度(例えば、約500℃〜約520℃)でのフラッシュ均質化で、望ましく鋳造されてもよい。
【0142】
場合によっては、特定の合金に対して、低い温度でフラッシュ均質化を行うことができる。例えば、7xxx系の合金は、約350℃〜480℃の温度でうまくフラッシュ均質化されてもよい。
【0143】
任意選択のブロック2406において、熱間圧延又は温間圧延の前に、金属ストリップを冷却することができる。場合によっては、特にクロムの析出を抑制したい場合に、熱間圧延又は温間圧延の前に金属ストリップを冷却することが有益であり得る。ブロック2406における冷却は、金属ストリップを約350℃〜約450℃の温度に冷却することを含むが、他の温度を使用することができる。
【0144】
ブロック2408において、厚さの減少が少なくとも約30%、かつ約80%未満である場合に、金属ストリップを熱間圧延又は温間圧延することができる。場合によっては、厚さの減少は少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、又は75%であり得る。場合によっては、ブロック2408における熱間圧延又は温間圧延は、圧延中に(例えば、圧延スタンドのロール間の噛み合い内で)金属ストリップを焼入れすることを選択的に含むことができ、しかしながら、そうである必要がない。場合によっては、ブロック2408における熱間圧延又は温間圧延は、金属ストリップを500℃、505℃、510℃、515℃、520℃、又は525℃以上の温度に維持しながら行われる。
【0145】
ブロック2410において、熱間圧延又は温間圧延後に、金属ストリップを焼入れすることができる。ブロック2410における焼入れは、200℃/秒などの高速で、金属ストリップを冷却することを含むことができるが、他の速度を使用することもできる。ブロック2410における焼入れは、金属ストリップの温度を約50℃〜400℃、例えば、50℃〜300℃に低下させることができるが、他の温度を使用することができる。
【0146】
ブロック2412において、金属ストリップをホットバンドとして巻き取ることができる。ホットバンドは、最終ゲージ及び焼戻し、最終ゲージ、又は中間ゲージにあることができる。最終ゲージ及び焼戻し、又は最終ゲージであれば、巻き取られたホットバンドはさらにその用途のために、顧客に配達されてもよい。中間ゲージである場合、ホットバンドは、再加熱、圧延(例えば、冷間圧延又は熱間圧延)、熱処理、又は他の方法で最終製品に加工されてもよく、そのように顧客に配達される。
【0147】
任意選択のブロック2414において、ホットバンドを再加熱して、以下の実施例に含まれる本明細書に記載の冶金学的性質をさらに改善することができる。
【0148】
図25は、本開示の特定の態様による、ホットバンド連続鋳造システム2500を示す概略図である。ホットバンド連続鋳造システム2500は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200と同一又は類似であり得るが、追加の供給コイル2513を有する。ホットバンド連続鋳造システム2500は、鋳造モードおよび加工モードで動作することができる。鋳造モードでは、ホットバンド連続鋳造システム2500は、連続ベルト鋳造機2508を利用して、金属ストリップ2510を製造することができ、次いで、金属ストリップをホットバンド連続鋳造システム2500の様々な構成要素を通して方向付けることができ、例えば、金属ストリップ2510を圧延スタンド2584に通すことを含む、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200に関して示される。
【0149】
しかしながら、加工モードでは、ホットバンド連続鋳造システム2500は、追加の供給コイル2513から、少なくとも圧延スタンド2584を含むホットストリップ連続鋳造システム2500の1つ以上の構成要素に、金属ストリップ2510(例えば、最終ゲージではないホットバンド)を提供することができる。追加の供給コイル2513からの金属ストリップ2510は、圧延(例えば、熱間圧延又は温間圧延)された後に、ホットバンド2512のコイルに巻かれてもよい。
【0150】
したがって、同じ圧延スタンド2584は、連続鋳造されたばかりの金属ストリップのインライン圧延と、以前に鋳造され巻かれた金属ストリップ2510の圧延との両方にされてもよい。連続鋳造装置が修理を必要とするとき、又は液体金属2536が調製されるのを待っているときに、加工モードにおけるホットバンド連続鋳造システム2500の動作は特に有用であり得る。
【0151】
図26は、本開示の特定の態様による、連続鋳造システム2600を示す概略図である。連続鋳造システム2600は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200と類似するが、連続鋳造装置2608を使用して、金属ストリップを鋳造する連続鋳造機の代わりに、押出可能な金属物品2610(例えばビレット)を鋳造する。押出可能な金属物品2610は、
図22の金属ストリップ2210を参照して上述したものと同一又は類似の装置を使用して、同一又は類似の加工を行うことができるが、圧延スタンドはダイ2684と交換することができる。連続鋳造システム2600は、コイル状製品2612を製造することができる。コイル状製品2612は、
図22のホットバンド2212と類似し、最終ゲージ、最終ゲージ及び焼戻しにあるか、又はさらなる加工のために中間ゲージにあることができる。
【0152】
図27は、本開示の特定の態様による、押出金属製品を鋳造するためのプロセス2700を示すフローチャートである。ブロック2702において、ビレットなどの押出可能な金属物品を連続鋳造装置を使用して鋳造することができる。連続鋳造装置の使用は急速な凝固速度を確実にすることができる。
【0153】
任意選択のブロック2704において、鋳造装置を出た後に、押出可能な金属物品をフラッシュ均質化することができる。フラッシュ均質化は、押出可能な金属物品を均熱温度(例えば、約400℃〜580℃、又はより好ましくは約570℃〜580℃)に選択的に再加熱し、かつ押出可能な金属物品を均熱温度にある時間維持することを含むことができる。持続時間は、約10〜300秒、60〜180秒、又は120秒であり得る。
【0154】
フラッシュ均質化は、大きい及び/又はブレード状の金属間化合物を粉砕及び/又は球状化するのに特に有用であり得る。例えば、AA6111およびAA6451合金は、鋳造時に比較的大きい金属間化合物を有することができ、金属間化合物は本明細書に開示されるように、フラッシュ均質化によって改善されてもよい。しかしながら、AA5754合金は、針状又はブレード状の金属間化合物として製造されないので、AA5754及び類似の合金について、フラッシュ均質化を省略することができる。場合によっては、フラッシュ均質化をいつ使用するか、およびフラッシュ均質化をいつ使用しないかの決定は、鉄対シリコンの比に基づいて行われてもよく、ここで、より高いシリコン含有量(例えば、シリコン対鉄の比率が1:5以上)の合金は、フラッシュ均質化によって利益を得ることができる。場合によっては、より低いシリコン含有量(例えば、シリコン対鉄の比が1:5以下)を有する合金は、フラッシュ均質化なしで、又はより低い温度(例えば、約500℃〜約520℃)でのフラッシュ均質化で、望ましく鋳造されてもよい。
【0155】
場合によっては、特定の合金に対して、低い温度でフラッシュ均質化を行うことができる。例えば、7xxx系の合金は、約350℃〜480℃の温度でうまくフラッシュ均質化されてもよい。
【0156】
任意選択のブロック2706において、押出可能な金属物品を押出する前に、熱間又は温間押出温度でダイを通して冷却することができる。熱間又は温間押出温度での押出は、1種の熱間加工又は温間加工であり得る。場合によっては、特にクロムの析出を抑制したい場合に、熱間押出又は温間押出の前に、押出可能な金属物品を冷却することが有益であり得る。ブロック2706における冷却は、押出可能な金属物品を約350℃〜約450℃の温度に冷却することを含むが、他の温度を使用することができる。
【0157】
ブロック2708において、直径の減少(例えば、断面の減少)が少なくとも約30%、かつ約80%未満である場合に、押出可能な金属物品を熱間押出又は温間押出することができる。場合によっては、直径の減少は少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、又は75%であり得る。場合によっては、ブロック2708における熱間押出又は温間押出は、押出中に(例えば、ダイ内で)金属物品を焼入れすることを選択的に含むことができるが、そうである必要がない。場合によっては、ブロック2708における熱間押出又は温間押出は、金属物品を500℃、505℃、510℃、515℃、520℃、又は525℃以上の温度に維持しながら行われる。
【0158】
ブロック2710において、押出金属物品(例えば、押出後の押出可能な金属物品)を熱間押出又は温間押出後に焼入れすることができる。ブロック2710における焼入れは、200℃/秒などの高速で、押出金属物品を冷却することを含むことができるが、他の速度を使用することもできる。ブロック2710における焼入れは、押出金属物品の温度を約50℃〜400℃、例えば、50℃〜300℃に低下させることができるが、他の温度を使用することもできる。
【0159】
ブロック2712において、押出金属物品をコイル状又は他の方法で保管することができる。押出金属物品は、最終ゲージ及び焼戻し、最終ゲージ、又は中間ゲージにあることができる。最終ゲージ及び焼戻し、又は最終ゲージであれば、押出金属物品はさらにその用途のために、顧客に配達されてもよい。中間ゲージにある場合、押出金属物品は、再加熱、さらに押出(例えば、冷間押出又は熱間押出)、熱処理、又は他の方法で最終製品に加工されてもよく、そのように顧客に配達される。
【0160】
任意選択のブロック2714において、押出金属物品を再加熱して、以下の実施例に含まれるホットバンドに関して本明細書に記載のように、冶金学的性質をさらに改善することができる。
【0161】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、それを限定するものではない。それどころか、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の精神から逸脱することなく、それら自体を当業者に示唆することができる、様々な実施形態、修正形態および同等物に及ぼすことができることが明確に理解されるべきである。
【0162】
本開示の特定の態様および特徴を使用して、様々な合金を試験した。アルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、合金の総重量に基づく重量百分率(wt%)で記載されている。各合金の特定の例において、残りはアルミニウムであり、不純物の合計に対して、最大wt%は0.15%である。表1に、およその固相線温度およびソルバス温度を含む、いくつかのそのような合金を示す。
【表1】
【0163】
表1は、一般的な5xxx、6xxx、および7xxx系の合金のいくつかの例を示すが、他の5xxx、6xxx、および7xxx系の合金は存在することができ、その成分(例えば、合金元素)が異なる重量百分率で存在し、残りはアルミニウムおよび任意選択の微量(例えば0.15%以下)の不純物を含む。結晶粒微細化剤及び脱酸剤などの随伴元素、又は他の添加剤が存在してもよい。
【0164】
合金AA6111およびAA6451は、本明細書に記載の方法にしたがって製造された。合金AA6111およびAA6451を、11mmのゲージを有するスラブに連続的に鋳造した。表2に示すように、合金AA6111は、さらに様々な温度と様々な時間で実施したフラッシュ均質化手順を受けた。
【表2】
【0165】
図28は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm2)当たりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。サンプルAは、開示されたフラッシュ均質化手順又は熱間圧延を受けていない鋳放しのAA6111合金であった。サンプルBは、さらに熱間圧延することなく、開示されたフラッシュ均質化を受けた連続鋳造AA6111の11cmのスラブであった。サンプルCは、開示されたフラッシュ均質化を受け、厚さが50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6111の11cmのスラブであった。サンプルDは、開示されたフラッシュ均質化を受け、350℃の温度まで室温の水で熱的に焼入れされ、厚さが50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6111の11cmのスラブであった。サンプルEは、任意のフラッシュ均質化(表2参照)を受け、50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6111の11cmのスラブであった。サンプルFは、任意のフラッシュ均質化(表2参照)を受け、50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6111の11cmのスラブであった。サンプルA(鋳放しAA6111のスラブ)は、広い粒径分布およびFe成分の微細化の欠如を示す広いピークを示した。サンプルC(開示されたフラッシュ均質化を受け、50%減少するように熱間圧延された、AA6111を鋳造した11mmのスラブ)は、Fe構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。サンプルDおよびE(任意の低温フラッシュ均質化を受け、サンプルDについて400℃、サンプルEについて380℃)は、広い粒径分布を示し、それはFe構成粒子の微細化が少ないことを示した。
【0166】
図29は、本明細書に記載の方法に従って処理したAA6111合金中のFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。
図29のパネルA、B、C、D、EおよびFは、それぞれ
図28のサンプルA、B、C、D、EおよびFと相互関係がある。パネルAは、サンプルA中の大きな針状のFe構成粒子2401を示す(表2参照)。パネルBは、AA6111合金が熱間圧延を受けることなく、開示されたフラッシュ均質化を受けた後のFe構成粒子の微細化(すなわち、粉砕)を示す(サンプルB、表2)。パネルCは、サンプルC中のFe構成粒子のさらなる微細化を示す。AA6111合金を連続鋳造した11mmゲージのスラブは、開示されたフラッシュ均質化を受け、さらに厚さが50%減少するための熱間圧延を受けた。パネルCは、
図28中のサンプルCとして描かれた対数正規分布適合によって証明されるように、より多くの微細化を示す。パネルDは、サンプルCに見られる微細化と同様のサンプルDにおけるFe構成粒子の微細化を示す。AA6111合金を連続鋳造した11mmゲージのスラブは、開示されたフラッシュ均質化を受け、さらに厚さが50%減少するように熱間圧延する前の350℃までの水焼入れを受けた。パネルEは、サンプルEに存在するFe構成粒子および溶解しないケイ化マグネシウム(Mg
2Si)粒子の微細化の欠如を示す。AA6111合金を連続鋳造した11mmのスラブは、400℃でフラッシュ均質化を1分間受け、次いで厚さが50%減少するように熱間圧延された。パネルFは、サンプルFに存在するFe構成粒子および溶解しないケイ化マグネシウム(Mg
2Si)粒子の微細化の欠如を示す。AA6111合金を連続鋳造した11mmのスラブは、滞留時間のない380℃でのフラッシュ均質化を受け、次いで厚さが50%減少するように熱間圧延された。
【0167】
図30は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm
2)あたりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。サンプルC、サンプルDおよびサンプルE(表2参照)は、厚さが50%減少するように熱間圧延された後に、追加の均質化をさらに受けた。追加の均質化手順を表3に要約する。
【表3】
【0168】
開示されたフラッシュ均質化を受け、50%減少するように熱間圧延された後に、様々な温度でのさらなる均質化が続いた全てのサンプルは、Fe構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。高温フラッシュ均質化(例えば、570℃、サンプルCおよびサンプルD(試験G、H、VおよびW))は、低温フラッシュ均質化(例えば、400℃以下、サンプルE(試験I、J、XおよびY))よりも多くのFe成分粒子の微細化を示し続けた。
【0169】
図31は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm
2)あたりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。これらのフラッシュ均質化試験のそれぞれについて、11mmの金属ストリップを2mmに熱間圧延した。場合によっては、最初の熱間圧延(例えば、「Q1」減少)を50%の厚さの減少で行い、続いて68%の最終の厚さの減少で2mmのストリップを得た。場合によっては、最初の熱間圧延を70%の厚さの減少で行い、続いて40%の最終の厚さの減少で2mmのストリップを得た。追加の均質化および熱間圧延パラメータを表4に要約する。
【表4】
【0170】
開示されたフラッシュ均質化を受け、最初に少なくとも50%減少するように熱間圧延された後、さらなる均質化および所望のゲージ(例えば、2mm)までの熱間圧延が続いた全てのサンプルは、Fe−構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。開示されたフラッシュ均質化を受けたサンプル(例えば、570℃で5分間、サンプルCおよびサンプルD、試験G、H、Z、AA、ABおよびAC)は、低温フラッシュ均質化を受けたサンプル(例えば、400℃、サンプルE、試験I、J、ADおよびAE)より純粋なFe構成粒子の狭い分布を示し、開示された高温フラッシュ均質化を使用する場合、さらなる均質化を必要としないことを示唆した。
【0171】
図32は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm
2)あたりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。サンプルF(表2参照)は、さらに追加の均質化、厚さが70%減少するためのさらなる熱間圧延を受け(すなわち、サンプルFは、厚さがさらに20%減少するように最初に熱間圧延された)、かつ鋳放しAA6111合金を連続鋳造した11mmのスラブ(サンプルA、表2参照)と比較した。鋳放しAA6111合金は開示されたフラッシュ均質化を受けなかった。鋳放しAA6111合金は、サンプルFと同様の追加の均質化および熱間圧延を受けた。パラメータを表5に要約する。
【表5】
【0172】
開示されたフラッシュ均質化を受け、次いで少なくとも50%減少するように熱間圧延された後、追加の均質化および所望のゲージ(例えば、2mm)までの熱間圧延が続いた全てのサンプルは、Fe−構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。開示されたフラッシュ均質化を受けなかったサンプルは、Fe−構成粒子の微細化が少ないことを示した。
【0173】
表6に示すように、合金AA6451は、さらに様々な温度と様々な時間で実施したフラッシュ均質化手順を受けた。
【表6】
【0174】
図33は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm
2)あたりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。サンプルAAA(青い実線で示す)は、開示されたフラッシュ均質化手順又は熱間圧延を受けなかった鋳放しAA6451であった。サンプルCCC(小さな緑色の破線で示す)は、開示されたフラッシュ均質化を受け、厚さが50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6451の11cmのスラブであった。サンプルDDD(紫色の一点鎖線で示す)は、開示されたフラッシュ均質化を受け、350℃の温度まで室温の水で熱的に焼入れされ、厚さが50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6451の11cmのスラブであった。サンプルEEE(黒色の二点鎖線で示す)は、任意のフラッシュ均質化(表2参照)を受け、50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6451の11cmのスラブであった。サンプルFFF(オレンジ色の実線で示す)は、任意のフラッシュ均質化(表2参照)を受け、50%減少する(すなわち、6.5mmゲージ)ように熱間圧延された連続鋳造AA6451の11cmのスラブであった。サンプルAAA(鋳放しAA6451のスラブ)は、広い粒径分布およびFe成分の微細化の欠如を示す広いピークを示した。サンプルCCC(開示されたフラッシュ均質化を受け、50%減少するように熱間圧延された、AA6451を鋳造した11mmのスラブ)は、Fe構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。サンプルDDDおよびEEE(任意の低温フラッシュ均質化を受け、サンプルDDDについて400℃、サンプルEEEについて380℃)は、広い粒径分布を示し、それはFe構成粒子の微細化が少ないことを示した。
【0175】
図34は、本明細書に記載の方法に従って製造された合金の粒径に対する1平方ミクロン(μm
2)あたりの鉄(Fe)−構成粒子の対数正規数密度分布を示すグラフである。サンプルFFF(表2参照)は、さらに追加の均質化、厚さが70%減少するためのさらなる熱間圧延を受け(すなわち、サンプルFFFは、厚さがさらに20%減少するように最初に熱間圧延された)、かつ鋳放しAA6451合金を連続鋳造した11mmのスラブ(サンプルAAA、表2参照)と比較した。鋳放しAA6451合金は開示されたフラッシュ均質化を受けなかった。鋳放しAA6451合金は、サンプルFFFと同様の追加の均質化および熱間圧延を受けた。パラメータを表7に要約する。
【表7】
【0176】
開示されたフラッシュ均質化を受け、厚さが少なくとも50%減少するように熱間圧延された後、追加の均質化および所望のゲージ(例えば、2mm)までの熱間圧延が続いた全てのサンプル(UUを除く)は、Fe−構成粒子の微細化を示す狭い粒径分布を示した。開示されたフラッシュ均質化を受けなかったサンプルは、Fe−構成粒子の微細化が少ないことを示した。サンプルUUは、開示されたフラッシュ均質化(例えば、570℃で5分間)を受け、直ちに厚さが70%減少するように熱間圧延され、さらなる均質化および追加の40%の熱間圧延後にFe構成粒子の優れた微細化を示した。
【0177】
図35、
図36および
図37は、AA6014アルミニウム合金の微細構造を示す顕微鏡写真である。
図35は、19mmゲージの厚さを有するスラブに連続鋳造され、冷却し貯蔵され、予熱されて11mmの厚さに熱間圧延され、さらに6mmの厚さに熱間圧延され、「R1」と呼ばれるAA6014アルミニウム合金を示す。予熱は、(i)1分間で550℃まで加熱するか、又は(ii)30秒間で420℃まで加熱するという2つの条件下で冷却したスラブを加熱することによって行った。圧延方向を矢印3001で示す。
図35は、熱間圧延後の結晶粒径および再結晶度への影響を示す。
図36は、10mmゲージの厚さを有するスラブに連続鋳造され、冷却し貯蔵され、予熱されて5.5mmの厚さに熱間圧延され、「R2」と呼ばれるAA6014アルミニウム合金の微細構造を示す。予熱は、(i)1分間で550℃まで加熱するか、又は(ii)30秒間で420℃まで加熱するという2つの条件下で冷却したスラブを加熱することによって行った。圧延方向を矢印3101で示す。
図36は、熱間圧延後の結晶粒径および再結晶度への影響を示す。
図37は、19mmゲージの厚さを有するスラブに連続鋳造され、冷却し貯蔵され、11mmの厚さに冷間圧延され、予熱され、そして6mmの厚さに熱間圧延され、「R3」と呼ばれるAA6014アルミニウム合金の微細構造を示す。予熱は、(i)1分間で550℃まで加熱するか、又は(ii)30秒間で420℃まで加熱するという2つの条件下で冷却したスラブを加熱することによって行った。圧延方向を矢印3201で示す。
図37は、熱間圧延後の結晶粒径および再結晶度への影響を示す。
【0178】
図38は、AA6014アルミニウム合金の成形性に対する予熱の効果を示すグラフである。AA6014アルミニウム合金は、それぞれ「R1、R2及びR3」と呼ばれ、
図30〜32について上述したような加熱および圧延処理を受けた。AA6014アルミニウム合金を550℃の温度で1分間予熱すると(「HO1」と呼ばれる、各群の左側のヒストグラム)、20°未満の内側曲げ角度によって示される優れた成形性を有するアルミニウム合金が得られた。AA6014アルミニウム合金を420℃の温度で1分間予熱すると(「HO2」と呼ばれる、各群の右側のヒストグラム)、比較的高い内側曲げ角度(例えば、20°を超える)によって示される非常に低い成形性を有するアルミニウム合金が得られた。全てのサンプルを、熱間圧延(「WQ」と呼ばれる)後に水で焼入れし、曲げ試験の前に10%予め引っ張った。
【0179】
図39は、AA6111金属の11.3mmゲージ断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα1、α2、α3、α5およびα6は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造された金属を示す。パネルα1は、大きな針状のFe構成粒子を有する鋳放し金属を示す。パネルα4は、非常に大きなFe構成粒子を有する直接チル鋳造システムからの同等の金属片を示す。パネルα2、α3、α5およびα6の全ては、それぞれ鋳造後に均熱炉(例えば、
図22の均熱炉2217)内で、540℃、550℃、560℃および570℃のピーク金属温度で2分間加熱された。パネルα2、α3、α5およびα6のそれぞれにおいて、より小さいFe成分が見られ、パネルα6において最も小さい。さらに、パネルα6を除くパネルにおいて、球状化はほとんど見られない。
【0180】
図40は、
図39を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径(ECD)を示すグラフである。
図40のグラフは、対数正規確率密度関数に基づく。本明細書で使用される円相当径は、粒子(例えば、Fe成分粒子)の面積を測定し、同じ総面積を有する円の直径を決定することによって計算することができる。言い換えれば、
【数3】
にて表される。
【0181】
図41は、
図39を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比を示すグラフである。
図41のグラフは、対数正規確率密度関数に基づく。アスペクト比は、第1方向における粒子の長さを垂直方向における粒子の幅で割ることによって決定することができる。アスペクト比は、粒子によって受けた球状化の量を示すことができる。
【0182】
図42は、
図39を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0183】
図43は、
図39を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0184】
図39〜43は、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化によって、特に約570℃の温度でより小さいFe成分を得ることができることを示す。さらに、フラッシュ均質化におけるより高いピーク金属温度は、より微細な粒子を示すように見える。最後に、実質的な球状化(例えば、より小さいアスペクト比)は、約570℃のピーク金属温度に達するときに明らかであり、より低い温度では球状化はほとんどない。
【0185】
図44はAA6111金属の11.3mmゲージ断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα7、α8、α9およびα11は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造された金属を示す。パネルα7は、大きな針状のFe構成粒子を有する鋳放し金属を示す。パネルα10は、非常に大きなFe構成粒子を有する直接チル鋳造システムからの同等の金属片を示す。パネルα11は、570℃のピーク金属温度で2分間の均質化を受けさせた後の直接チル鋳造システムからの同等の金属片を示す。パネルα8、α9およびα12の全ては、それぞれ鋳造後に均熱炉(例えば、
図22の均熱炉2217)内で、1分間、2分間および3分間の期間にわたって570℃のピーク金属温度に加熱された。パネルα8、α9およびα11のそれぞれにおいて、より小さいFe成分が見られ、パネルα11において最も小さい。より長い浸漬時間は、より多くの球状化を示し、望ましい球状化は2分間と3分間で得られた。直接チル鋳造インゴットの2分間の浸漬は、微細構造の顕著な変化を示されなかった。
【0186】
図45は、
図44を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0187】
図46は、
図44を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0188】
図45及び46は、特に570℃又は約570℃の温度で、少なくとも1又は2分間又は約1又は2分間の浸漬時間で、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化によって、より小さなFe成分を達成できることを示す。
【0189】
図47は、AA6111金属の11.3mmゲージ断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα13は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され、(例えば、
図22の均熱炉2217を使用して)565℃で5分間フラッシュ均質化され、次いで熱間圧延が行われない金属を示す。パネルα14、α15、α16、α17、α18、およびα19は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され、(例えば、
図22の均熱炉2217を使用して)565℃で5分間フラッシュ均質化され、次いで10%、20%、30%、40%、50%、60%、および70%の厚さの減少で(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)それぞれ熱間圧延された金属を示す。その後の厚さのより高い減少がより小さな利益をもたらすプラトーが存在するように見えるが、フラッシュ均質化とそれに続くより高い熱間圧下の後により小さなFe成分が示される。
【0190】
図48は、
図47を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0191】
図49は、
図47を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0192】
図48および49は、特に約40%〜70%の厚さの減少において、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延によって、より小さなFe成分を達成できることを示す。50%〜70%の熱間圧下は比較的同程度の量の崩壊を提供するように思われるが、より高い熱間圧下はFe構成粒子のより多くの崩壊を示す。
【0193】
図50は、3.7〜6mmゲージのバンドを得るために様々な処理経路を経た後のAA6111金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα20は、約3.7〜6mmゲージに再圧延された直接チル鋳造金属を示す。パネルα21、α22、α23、α24、α25、およびα26は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され、(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)ある程度の熱間圧延を受けた金属を示す。パネルα21、α22、およびα23はフラッシュ均質化を受けなかったが、パネルα24、α25、およびα26はフラッシュ均質化を受けた。パネルα21およびα24は45%の厚さの減少を受け、パネルα22およびα25は45%の厚さの減少および2時間にわたる530℃への再加熱を受け、かつパネルα23およびα26は60%の厚さの減少を受けた。フラッシュ均質化とそれに続くより高い熱間圧下の後、より小さいFe構成粒子が見られた。また、熱間圧延後の再加熱は、球状化を促進するように思われた。
【0194】
図51は、
図50を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0195】
図52は、
図50を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0196】
図51および52は、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延、特にフラッシュ均質化なしの熱間圧延により、より小さなFe成分を達成できることを示す。また、熱間圧延後の再加熱は、球状化を改善するように思われた。
【0197】
図53は、2.0mmゲージのストリップを得るために様々な処理経路を経た後のAA6111金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα27は、2.0mmの最終ゲージに圧延された直接チル鋳造金属を示す。パネルα28、α29、α30、α31、α32、α33、およびα34は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造された金属を示す。パネルα31は、連続鋳造され、次いで2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。パネルα28、α29、α30、α32、α33、およびα34は、(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)ある程度の熱間圧延を受けた。パネルα28、α29、およびα30はフラッシュ均質化を受けなかったが、パネルα32、α33、およびα34はフラッシュ均質化を受けた。パネルα28およびα32は、熱間圧延により厚さが45%減少し、続いて2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。パネルα29およびα33は、熱間圧延下で厚さが45%減少し、2時間530℃に再加熱され、次いで2.0mmの最終ゲージに温間圧延された。パネルα30およびα34は、熱間圧延下で厚さが60%減少し、続いて2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。
【0198】
図54は、
図53を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0199】
図55は、
図53を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0200】
図54および55は、特に熱間圧延および冷間圧延のみと比較した場合、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延および再加熱によって、より小さなFe成分を達成できることを示す。熱間圧延後の再加熱は、Fe成分粒子の球状化の改善を示した。連続鋳造後の冷間圧延はある程度のFe成分粒子の崩壊を示したが、それは望ましい球状化を達成しなかった。
【0201】
加えて、曲げ試験は、曲げ試験を実施するドイツ自動車工業会(VDA)の238−100規格と試験を2.0mmに正規化する232−200規格とに従って
図53からのサンプルに対して行われた。パネルα27、α28、α29、α30、α31、α32、α33、およびα34からのサンプルは、80°、79°、75°、67°、66°、96°、102°および95°のアルファ(外部)曲げ角度をそれぞれ達成した。
【0202】
図56は、2.0mmゲージのストリップを得るために様々な処理経路を経た後のAA6111金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルα35、α36、α37、およびα38は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され(例えば、
図22の均熱炉2217を使用して)フラッシュ均質化され、かつ(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)45%の厚さの減少で熱間圧延された金属を示す。その後、パネルα35、α36、およびα37は530℃の温度で2時間再加熱されるのに対して、パネルα38は直ちに2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。再加熱後、パネルα35は2.0mmの最終ゲージに温間圧延された。再加熱後、パネルα36は50%の厚さの減少で再び熱間圧延され、次いで焼入れされ、そして2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。再加熱後、パネルα37は焼入れされ、かつ2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。
【0203】
図57は、
図56を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値及び分布データを示すグラフである。
【0204】
図58は、
図56を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値および分布データを示すグラフである。
【0205】
図57および58は、特に熱間圧延および冷間圧延のみと比較した場合、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延および再加熱によって、より小さなFe成分を達成できることを示す。熱間圧延後の再加熱は、Fe成分粒子の球状化の改善を示した。連続鋳造後の冷間圧延はある程度のFe成分粒子の崩壊を示したが、それは望ましい球状化を達成しなかった。
【0206】
加えて、曲げ試験は、曲げ試験を実施するドイツ自動車工業会(VDA)の238−100規格と試験を2.0mmに正規化する232−200規格とに従って
図56からのサンプルに対して行われた。パネルα35、α36、α37、およびα38からのサンプルは、96°、95°、104°、および93°のアルファ(外部)曲げ角度をそれぞれ達成した。
【0207】
図59は、3.7〜6mmゲージのバンドを得るために様々な処理経路を経た後のAA6451金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルβ1は、約3.7〜6mmゲージに再圧延された直接チル鋳造金属を示す。パネルβ2、β3、β4、β5、β6、β7、およびβ8は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造された金属を示す。パネルβ2は鋳放しの6mmのストリップを示す。パネルβ2、β3、β4、β6、β7、およびβ8は、(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)ある程度の熱間圧延を受けた。パネルβ2、β3、およびβ4はフラッシュ均質化を受けなかったが、パネルβ6、β7、およびβ8はフラッシュ均質化を受けた。パネルβ2およびβ6は、再加熱なしで厚さが45%減少した。パネルβ3およびβ6は、厚さが45%減少し、かつ2時間530℃に再加熱された。パネルβ4およびβ8は、再加熱なしで厚さが60%減少した。フラッシュ均質化とそれに続くより高い熱間圧下の後、より小さいFe構成粒子が見られた。また、熱間圧延後の再加熱は、球状化を促進するように思われた。注目すべきことに、パネルβ3に見られるダークスポットはさらなる試験に基づいて異常であると決定された。
【0208】
図60は、
図59を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値および分布データを示すグラフである。
【0209】
図61は、
図59を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値および分布データを示すグラフである。
【0210】
図60および61は、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延、特にフラッシュ均質化なしの熱間圧延により、より小さなFe成分を達成できることを示す。また、熱間圧延後の再加熱は、球状化を改善するように思われた。
【0211】
図62は、2.0mmゲージのストリップを得るために様々な処理経路を経た後のAA6451金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルβ9は、2.0mmの最終ゲージに圧延された直接チル鋳造金属を示す。パネルβ10、β11、β12、β13、β14、β15、およびβ16は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造された金属を示す。パネルβ13は、連続鋳造され、次いで2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。パネルβ10、β11、β12、β14、β15,およびβ16は、(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)ある程度の熱間圧延を受けた。パネルβ10、β11、およびβ12はフラッシュ均質化を受けなかったが、パネルβ14、β15、およびβ16はフラッシュ均質化を受けた。パネルβ10およびβ14は、熱間圧延下で厚さが45%減少し、続いて2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。パネルβ11及びβ15は、熱間圧延下で厚さが45%減少し、2時間530℃又は約530℃に再加熱され、次いで2.0mmの最終ゲージに温間圧延された。パネルβ12およびβ16は、熱間圧延下で厚さが60%減少し、続いて2.0mmの最終ゲージに冷間圧延された。
【0212】
図63は、
図62を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値および分布データを示すグラフである。
【0213】
図64は、
図62を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値および分布データを示すグラフである。
【0214】
図63および64は、特に熱間圧延および冷間圧延のみと比較した場合、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延および再加熱によって、より小さなFe成分を達成できることを示す。熱間圧延後の再加熱は、Fe成分粒子の球状化の改善を示した。連続鋳造後の冷間圧延はある程度のFe成分粒子の崩壊を示したが、それは望ましい球状化を達成しなかった。
【0215】
加えて、曲げ試験は、曲げ試験を実施するドイツ自動車工業会(VDA)の238−100規格と試験を2.0mmに正規化する232−200規格とに従って
図62からのサンプルに対して行われた。パネルβ9、β10、β11、β12、β13、β14、β15、およびβ16からのサンプルは、70°、67°、88°、75°、65°、75°、80°および81°のアルファ(外部)曲げ角度をそれぞれ達成した。
【0216】
図65は、2.0mmゲージのストリップを得るために鋳造され冷間圧延されたAA6451金属の断面におけるMg2Si溶融およびボイドを示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真および光学顕微鏡写真である。パネルβ17、β18、β21、およびβ22はSEM顕微鏡写真であるのに対して、パネルβ19、β20、β23、およびβ24は光学顕微鏡写真である。本開示のプロセスを経ることなく、各サンプルは連続鋳造され、次いで冷間圧延された。パネルβ17、β18、β19、およびβ20は、(例えば、固溶化熱処理なしの)F焼戻し下での金属に基づくものであるのに対して、パネルβ21、β22、β23、およびβ24は、(例えば、追加の固溶化熱処理を有する)T4焼戻し下での金属に基づくものである。結果は、冷間圧延されたサンプルの固溶化熱処理が、少なくとも部分的にF焼戻し中の粗い鋳放しMg2Siの存在によるものであり得る多数のボイドを示すことを示す。従って、金属間化合物の微細構造の改良が望ましいT4焼戻し生成物を得るのに有益であり得ることは明らかである。
【0217】
図66は、2.0mmゲージのストリップを得るために様々な処理経路を経た後のAA6451金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルβ25、β26、β27、およびβ28は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され、その後、(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)熱間圧延されて厚さが45%減少した金属を示す。その後、パネルβ25は、530℃で2時間再加熱され、続いて最終ゲージに温間圧延された。その後、パネルβ26は530℃で2時間再加熱され、続いて熱間圧延により厚さがさらに50%減少し、次いで水焼入れされ、その後最終ゲージに冷間圧延された。その後、パネルβ27は530℃で2時間再加熱され、次いで水焼入れされ、その後最終ゲージに冷間圧延された。その後、パネルβ28は冷間圧延された。最終ゲージにおける最も改善されたFe成分の球状化は、金属ストリップがフラッシュ均質化され、熱間又は温間圧延され、次いで予熱され、その後最終ゲージに冷間圧延される前に水焼入れされたときに見出された。
【0218】
図67は、
図66を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子の円相当径の中央値および分布データを示すグラフである。
【0219】
図68は、
図66を参照して図示し説明された金属片中のFe構成粒子のアスペクト比の中央値および分布データを示すグラフである。
【0220】
図67および
図68は、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延および再加熱によって、特にその後の水焼入れおよび最終ゲージまでの冷間圧延と組み合わせると、より小さいFe成分を得ることができることを示す。均質化(例えば、再加熱)は球状化に有益であり得、そして均質化後の焼入れは粒子分布に有益であり得ることが決定された。
【0221】
加えて、曲げ試験は、曲げ試験を実施するドイツ自動車工業会(VDA)の238−100規格と試験を2.0mmに正規化する232−200規格とに従って
図66からのサンプルに対して行われた。パネルβ25、β26、β27、およびβ28からのサンプルは、75°、67°、78°、および71°のアルファ(外部)曲げ角度をそれぞれ達成した。
【0222】
図69は、AA5754金属の断面におけるFe構成粒子を示す一連の走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真である。パネルγ4は、直接チル鋳造され、かつ最終ゲージに減少した金属を示す。パネルγ1、γ2、γ3、γ5、およびγ6は、
図22のホットバンド連続鋳造システム2200の連続ベルト鋳造機2208などの連続鋳造装置を使用して鋳造され、かつ様々な厚さの減少で(例えば、
図22の圧延スタンド2284を使用して)熱間圧延された金属を示す。パネルγ1、γ2、γ5、およびγ6は、熱間圧延前にフラッシュ均質化されなかったが、パネルγ3およびγ7は、熱間圧延前にフラッシュ均質化された。パネルγ1は最終ゲージまで50%熱間圧延された。パネルγ2は最終ゲージまで70%熱間圧延された。パネルγ3は最終ゲージまで70%熱間圧延された。パネルγ5は50%熱間圧延され、次いで最終ゲージまでさらに冷間圧延された。パネルγ6は70%熱間圧延され、次いで最終ゲージまでさらに冷間圧延された。パネルγ7は70%熱間圧延され、次いで最終ゲージまでさらに冷間圧延された。金属ストリップを連続鋳造し、フラッシュ均質化し、次いで熱間圧延したときに、最も改善されたFe構成粒子の崩壊及び/又は球状化が見出されたことが分かった。
【0223】
図70は、
図69を参照して図示し説明した金属片内のFe構成粒子の円相当径の中央値および分布データを示すグラフである。
【0224】
図71は、
図69を参照して図示し説明した金属片内のFe構成粒子のアスペクト比の中央値および分布データを示すグラフである。
【0225】
図70および
図71は、特にフラッシュ均質化を行わない熱間圧延と比較するとき、連続鋳造金属物品のフラッシュ均質化とそれに続く熱間圧延を介して、より小さいFe成分を達成できることを示す。
【0226】
加えて、曲げ試験は、曲げ試験を実施するドイツ自動車工業会(VDA)の238−100規格と試験を2.0mmに正規化する232−200規格とに従って
図69から選択されたサンプルに対して行われた。パネルγ5およびγ7からのサンプルは、それぞれ160°および171°のアルファ(外部)曲げ角度を達成した。
【0227】
図示した実施形態を含む実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的でのみ提示されており、網羅的であること又は開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。その多数の修正、適合、および使用は、当業者には明らかであろう。
【0228】
以下で使用されるように、一連の実施例へのいかなる言及も、これらの実施例のそれぞれへの言及として分離的に理解されるべきである(例えば、「実施例1〜4」は「実施例1、2、3、又は4」として理解される)。
【0229】
実施例1は金属鋳造加工システムを示し、該金属鋳造加工システムは、第1速度で金属ストリップを鋳造する連続鋳造装置と、第1速度とは異なる第2速度で動作する熱間圧延スタンドとを含む。
【0230】
実施例2は実施例1のシステムを示し、該システムは、金属ストリップを中間コイルに巻き取るために連続鋳造装置に動作可能に結合された巻取装置と、中間コイルを収容し、そして、金属ストリップを熱間圧延スタンドの噛合部に提供するために、熱間圧延スタンドに動作可能に結合された巻出装置とをさらに含む。
【0231】
実施例3は実施例2のシステムを示し、該システムは、中間コイルを受ける予熱装置をさらに含む。
【0232】
実施例4は実施例2又は実施例3のシステムを示し、該システムは、中間コイルを垂直方向に格納する格納システムをさらに含む。
【0233】
実施例5は実施例2〜4のシステムを示し、該システムは、中間コイルを格納する格納システムをさらに含み、該格納システムは中間コイルを回転させるモータを含む。
【0234】
実施例6は実施例1〜5のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの下流に配置された熱源と、熱源の直下流に配置された急冷システムとをさらに含む。
【0235】
実施例7は実施例1〜6のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの下流に配置された予熱熱源と、予熱熱源と熱間圧延スタンドとの間に配置された急冷システムとをさらに含む。
【0236】
実施例8は実施例1又は実施例6〜7のシステムを示し、該システムは、第1速度と第2速度との間の差を吸収するために、連続鋳造装置と熱間圧延スタンドとの間に動作可能に配置されたアキュムレータをさらに含む。
【0237】
実施例9は実施例1〜8のシステムを示し、該システムは、連続鋳造装置の直下流に配置された後打ち急冷装置をさらに含む。
【0238】
実施例10は実施例1〜9のシステムを示し、連続鋳造装置がベルト式鋳造装置である。
【0239】
実施例11は金属鋳造加工システムを示し、該金属鋳造加工システムは、金属ストリップを鋳造するベルト式連続鋳造装置と、金属ストリップを中間コイルに巻き取るために連続鋳造装置に関連付けられた巻取装置と、中間コイルを収容し、そして、金属ストリップの厚さを所望の厚さに減少させるために、少なくとも1つの熱間圧延スタンドに動作可能に結合された巻出装置とを含む。
【0240】
実施例12は実施例11のシステムを示し、該システムは、中間コイルを受ける予熱装置をさらに含む。
【0241】
実施例13は実施例11又は実施例12のシステムを示し、該システムは、中間コイルを垂直方向に格納する格納システムをさらに含む。
【0242】
実施例14は実施例11〜13のシステムを示し、該システムは、中間コイルを格納する格納システムをさらに含み、該格納システムは中間コイルを回転させるモータを含む。
【0243】
実施例15は実施例11〜14のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの下流に配置された熱源と、熱源の直下流に配置された急冷システムとをさらに含む。
【0244】
実施例16は実施例11〜15のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの下流に配置された予熱熱源と、予熱熱源と熱間圧延スタンドとの間に配置された急冷システムとをさらに含む。
【0245】
実施例17は実施例11〜16のシステムを示し、該システムは、連続鋳造装置の直下流に配置された後打ち急冷装置をさらに含む。
【0246】
実施例17.5は実施例11〜17のシステムを示し、ベルト式連続鋳造装置が金属ストリップを鋳造していないときに金属ストリップの厚さを減少させるために、少なくとも1つの熱間圧延スタンドはベルト式連続鋳造装置と巻取装置との間に配置される。
【0247】
実施例18は鋳造圧延方法を示し、該鋳造圧延方法は、第1速度で金属ストリップを連続鋳造すること、第2速度で金属ストリップを熱間圧延することを含み、第1速度は第2速度とは異なる。
【0248】
実施例19は実施例18の方法を示し、該方法は、鋳造された金属ストリップを中間コイルに巻くことをさらに含み、金属ストリップを熱間圧延することは、中間コイルを巻き出すことを含む。
【0249】
実施例20は実施例19の方法を示し、該方法は、中間コイルを予熱することをさらに含む。
【0250】
実施例21は実施例19又は実施例20の方法を示し、該方法は、中間コイルを垂直方向に格納することをさらに含む。
【0251】
実施例22は実施例19〜21の方法を示し、該方法は、中間コイルを格納することをさらに含み、中間コイルを格納することは、中間コイルを周期的又は連続的に回転させることを含む。
【0252】
実施例23は実施例18〜22の方法を示し、該方法は、金属ストリップを熱間圧延した後に金属ストリップを熱処理することをさらに含み、金属ストリップを熱処理することは、金属ストリップに熱を加えること、金属ストリップを直ちに急冷することを含む。
【0253】
実施例24は実施例18〜23の方法を示し、該方法は、金属ストリップを熱間圧延する前に金属ストリップを再加熱することをさらに含み、金属ストリップを再加熱することは、金属ストリップを熱間圧延温度よりも高い温度に加熱すること、金属ストリップを熱間圧延温度まで急冷することを含む。
【0254】
実施例25は実施例18又は実施例23〜24の方法を示し、該方法は、金属ストリップをアキュムレータに通すことをさらに含み、アキュムレータは、第1速度と第2速度との間の差を補償する。
【0255】
実施例26は実施例18〜25の方法を示し、金属ストリップを連続鋳造することは、一対のローラに液体金属を通して液体金属から熱を抽出して液体金属を凝固させることを含む。
【0256】
実施例27は中間金属製品を示し、該中間金属製品は、連続鋳造装置内において7mm〜50mmのストリップ厚さで液体金属を冷却することによって形成された固体アルミニウムの第一相と、合金元素を含む第二相とを含み、合金元素は、新たに凝固した金属を溶体化温度未満の温度に急速冷却することによって第一相において過飽和になる。
【0257】
実施例28は実施例27の金属製品を示し、該金属製品は、中間コイルに巻かれた金属ストリップの形状で形成される。
【0258】
実施例30は実施例27〜28の中間金属製品を加熱することによって得られた金属ストリップを示し、金属ストリップは第一相全体に均一に分布した分散質を含み、分散質は10nm〜500nmの平均サイズを有する。
【0259】
実施例30は金属鋳造システムを示し、該金属鋳造システムは、金属ストリップを鋳造する連続鋳造装置と、金属ストリップが連続鋳造装置を出るときに金属ストリップを急速冷却するのに十分な冷却剤を金属ストリップに供給するために、連続鋳造装置に隣接して配置された少なくとも1つのノズルとを含む。
【0260】
実施例31は実施例30のシステムを示し、連続鋳造装置は、金属ストリップを7mm〜50mmの厚さに鋳造するように配置される。
【0261】
実施例32は実施例30又は実施例31のシステムを示し、少なくとも1つのノズルは、金属ストリップが連続鋳造装置を出るときに10秒以内に金属ストリップを100℃以下の温度に急速冷却するように配置される。
【0262】
実施例33は実施例30〜32のシステムを示し、該システムは、金属ストリップを溶体化温度以上の温度に加熱するために少なくとも1つのノズルの下流に配置された再加熱器をさらに含む。
【0263】
実施例34は実施例33のシステムを示し、溶体化温度は、金属ストリップ内の金属の固相線温度よりも約30℃低い。場合によっては、溶体化温度は、金属ストリップ内の金属の固相線温度よりも約25℃〜35℃低い。
【0264】
実施例34.5は実施例33又は実施例34のシステムを示し、溶体化温度は450℃以上である。
【0265】
実施例35は実施例33又は実施例34のシステムを示し、該システムは、金属ストリップを溶体化温度よりも低い温度に急冷するために再加熱器の下流に配置された急冷装置をさらに含み、急冷装置は、金属ストリップを溶体化温度以上の温度に2時間以下の期間にわたって保つことを可能にするのに適した再加熱器から間隔を置いて配置される。
【0266】
実施例36は実施例35のシステムを示し、急冷装置と再加熱器との間の距離は、金属ストリップを溶体化温度以上の温度に1時間以下の期間にわたって保つことを可能にするのに適している。
【0267】
実施例37は実施例35のシステムを示し、急冷装置と再加熱器との間の距離は、金属ストリップを溶体化温度以上の温度に5分間以下の期間にわたって保つことを可能にするのに適している。
【0268】
実施例38は実施例30〜37のシステムを示し、連続鋳造装置はベルト式鋳造機である。
【0269】
実施例39は実施例30〜38のシステムを示し、該システムは、金属ストリップを中間コイルに巻き取るために少なくとも1つのノズルの下流に配置された巻取装置をさらに含む。
【0270】
実施例40は方法を示し、該方法は、連続鋳造装置を用いて金属ストリップを連続鋳造すること、金属ストリップが連続鋳造装置を出るときに金属ストリップを急冷することを含む。
【0271】
実施例41は実施例40の方法を示し、金属ストリップを連続鋳造することは、金属ストリップを7mm〜50mmの厚さに連続鋳造することを含む。
【0272】
実施例42は実施例40又は実施例41の方法を示し、金属ストリップを急冷することは、金属ストリップが連続鋳造装置を出るときに10秒以内に金属ストリップを100℃以下の温度に冷却するのに十分な冷却剤を金属ストリップに加えることを含む。
【0273】
実施例43は実施例40〜42の方法を示し、該方法は、金属ストリップを急冷した後に金属ストリップを再加熱することをさらに含み、金属ストリップを再加熱することは、金属ストリップを溶体化温度に加熱することを含む。
【0274】
実施例44は実施例43の方法を示し、溶体化温度は480℃以上である。
【0275】
実施例45は実施例43又は実施例44の方法を示し、該方法は、金属ストリップを再加熱した後に金属ストリップを急冷して金属ストリップを溶体化温度以下に冷却することをさらに含み、急冷は、金属ストリップを溶体化温度以上の温度に2時間以下の期間にわたって保つことを可能にした後に行われる。
【0276】
実施例46は実施例45の方法を示し、期間は1時間以下である。
【0277】
実施例47は実施例45の方法を示し、期間は1分間以下である。
【0278】
実施例48は実施例40〜47の方法を示し、金属ストリップを連続鋳造することは、一対のローラに液体金属を通して液体金属から熱を抽出して液体金属を凝固させることを含む。
【0279】
実施例49は実施例40〜48の方法を示し、該方法は、金属ストリップを急冷した後に金属ストリップを中間コイルに巻き取ることをさらに含む。
【0280】
実施例50は実施例1〜5又は実施例8〜10のいずれかのシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの直下流に配置された急冷システムをさらに含み、熱間圧延スタンドは、熱間圧延中に金属ストリップを動的に再結晶させるために再結晶温度よりも高い温度で金属ストリップを受けるように配置される。
【0281】
実施例50.5は実施例1〜5又は実施例8〜10のいずれかのシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの直下流に配置された急冷システムをさらに含み、熱間圧延スタンドは、圧延温度で金属ストリップを受けるように配置され、金属ストリップの厚さを減少させ、圧延温度で金属ストリップを再結晶させるのに十分な力を金属ストリップに加えるように構成される。
【0282】
実施例51は実施例50のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの上流に配置されて、熱間圧延スタンドにおける金属ストリップの再結晶温度よりも高い温度に金属ストリップを加熱する熱源をさらに含む。
【0283】
実施例51.5は実施例50.5のシステムを示し、該システムは、熱間圧延スタンドの上流に配置されて金属ストリップを圧延温度に加熱する熱源をさらに含む。
【0284】
実施例52は実施例50〜51.5のシステムを示し、熱間圧延スタンドおよび急冷システムは、熱間圧延スタンドの直前から急冷システムの直後まで金属ストリップの温度を単調に低下させるように配置される。
【0285】
実施例53は実施例11〜14又は実施例17のシステムを示し、該システムは、少なくとも1つの熱間圧延スタンドの直下流に配置された急冷システムをさらに含み、少なくとも1つの熱間圧延スタンドは、金属ストリップが少なくとも1つの熱間圧延スタンドの最下流の熱間圧延スタンドを通過するときに金属ストリップを動的に再結晶させるために、再結晶温度よりも高い温度で金属ストリップを受けるように配置される。
【0286】
実施例53.5は実施例11〜14又は実施例17のシステムを示し、該システムは、少なくとも1つの熱間圧延スタンドの直下流に配置された急冷システムをさらに含み、少なくとも1つの熱間圧延スタンドの最下流の熱間圧延スタンドは、圧延温度で金属ストリップを受けるように配置され、金属ストリップの厚さを減少させ、圧延温度で金属ストリップを再結晶させるのに十分な力を金属ストリップに加えるように構成される。
【0287】
実施例54は実施例53のシステムを示し、該システムは、少なくとも1つの熱間圧延スタンドのすべての上流に配置されて、最下流の熱間圧延スタンドにおける金属ストリップの再結晶温度よりも高い温度に金属ストリップを加熱する熱源をさらに含む。
【0288】
実施例54.5は実施例53.5のシステムを示し、該システムは、少なくとも1つの熱間圧延スタンドのすべての上流に配置されて、圧延温度以上の温度に金属ストリップを加熱する熱源をさらに含む。
【0289】
実施例55は実施例53又は実施例54のいずれかのシステムを示し、少なくとも1つの熱間圧延スタンド及び急冷システムは、少なくとも1つの熱間圧延スタンドのすべての直前から急冷システムの直後まで金属ストリップの温度を単調に低下させるように配置される。
【0290】
実施例56は実施例18〜22又は実施例25〜26の方法を示し、該方法は、金属ストリップを熱間圧延した直後に金属ストリップを急冷することをさらに含み、金属ストリップを熱間圧延することは、再結晶温度よりも高い温度で金属ストリップを最終熱間圧延スタンドに通過させることを含む。
【0291】
実施例57は実施例56の方法を示し、該方法は、金属ストリップを熱間圧延する直前に金属ストリップを予熱することをさらに含む。
【0292】
実施例58は実施例56又は実施例57の方法を示し、金属ストリップの温度は、金属ストリップの熱間圧延及び金属ストリップの急冷の間に、再結晶温度よりも高い温度から単調に低下する。
【0293】
実施例59は方法を示し、該方法は、金属ストリップを再結晶温度よりも高い温度に予熱すること、金属ストリップを熱間圧延することを含み、金属ストリップを熱間圧延することは、再結晶温度よりも高い温度で金属ストリップを最終熱間圧延スタンドに通過させること、金属ストリップを急冷することを含み、金属ストリップを急冷することは、金属ストリップを熱間圧延した直後に行われる。
【0294】
実施例59.5は方法を示し、該方法は、金属ストリップを圧延温度以上の温度に予熱すること、圧延温度で金属ストリップを最終熱間圧延スタンドに通過させると共に、金属ストリップの厚さを減少させ、圧延温度で金属ストリップを再結晶させるのに十分な力を金属ストリップに加えることを含む金属ストリップを熱間圧延すること、金属ストリップを熱間圧延した直後に行われる金属ストリップを急冷することを含む。
【0295】
実施例60は実施例59又は実施例59.5の方法を示し、金属ストリップを熱間圧延することは、金属ストリップが第1熱間圧延スタンドに入るときから金属ストリップが最終熱間圧延スタンドを出るときまで金属ストリップの温度を単調に低下させることを含む。
【0296】
実施例61は実施例59又は実施例59.5の方法を示し、金属ストリップを熱間圧延することは、金属ストリップの熱間圧延中に金属ストリップが第1熱間圧延スタンドに入るときから金属ストリップを急冷した直後まで金属ストリップの温度を単調に低下させることを含む。
【0297】
実施例62は実施例59〜61の方法を示し、金属ストリップを熱間圧延することは、最終熱間圧延スタンドにおける厚さの減少率を1つ以上の先行する熱間圧延スタンドよりも大きくすることを含む。
【0298】
実施例63は実施例59〜62の方法を示し、金属ストリップを熱間圧延することは、複数の作業ロールを用いて金属ストリップから熱を抽出することを含む。
【0299】
実施例64は、実施例63の方法を示し、金属ストリップから熱を抽出することは、金属ストリップに最終熱間圧延スタンドを通過させるときに、金属ストリップの温度を所望の温度にするのに十分な熱を抽出することを含み、所望の温度は、最終熱間圧延スタンドを用いて金属ストリップの厚さを減少させることに関連する歪み速度に基づいて決定される。
【0300】
実施例64.5は、実施例63の方法を示し、金属ストリップから熱を抽出することは、金属ストリップの温度を圧延温度にするのに十分な熱を抽出することを含み、圧延温度は、最終熱間圧延スタンドを用いて金属ストリップの厚さを減少させることに関連する歪み速度に基づいて決定される。
【0301】
実施例65は、実施例63の方法を示し、最終熱間圧延スタンドは、予め設定された厚さ減少率で金属ストリップの厚さを減少させるように構成され、予め設定された厚さ減少率と所望の温度は、金属ストリップ内に析出物が形成する期間を最小化するように決定される。
【0302】
実施例66は、実施例63の方法を示し、最終熱間圧延スタンドは、予め設定された厚さ減少率で金属ストリップの厚さを減少させるように構成され、予め設定された厚さ減少率と圧延温度は、金属ストリップを所望量の析出物形成にするように決定される。
【0303】
実施例67は、実施例65又は66の方法を示し、析出物はMg2Siである。
【0304】
実施例68は、実施例59〜67の方法で製造された冶金製品を示し、冶金製品は、T4規格に焼戻しされ、かつ4.0%以下のMg2Si析出物の体積分率を含む。
【0305】
実施例69は、実施例59〜67の方法で製造された冶金製品を示し、冶金製品は、T4規格に焼戻しされ、かつ3.0%以下のMg2Si析出物の体積分率を含む。
【0306】
実施例70は、実施例59〜67の方法で製造された冶金製品を示し、冶金製品は、T4規格に焼戻しされ、かつ2.0%以下のMg2Si析出物の体積分率を含む。
【0307】
実施例71は、実施例59〜67の方法で製造された冶金製品を示し、冶金製品は、T4規格に焼戻しされ、かつ1.0%以下のMg2Si析出物の体積分率を含む。
【0308】
実施例72は、実施例11〜17のシステムを示し、少なくとも1つの熱間圧延スタンドは、ベルト式連続鋳造装置と巻取装置の間に配置されて、ベルト式連続鋳造装置が金属ストリップを鋳造していないときに、金属ストリップの厚さを減少させる。
【0309】
実施例73は、中間金属製品を示し、該中間金属製品は、連続鋳造装置内で液体金属を7mm〜50mmのストリップ厚さに冷却することによって形成された固体アルミニウムの第一相と、合金元素を含む第二相とを含み、第二相は、第一相と第二相を約30%〜80%の断面の減少率で熱間又は温間加工することによって球状化される。場合によっては、断面の減少率は、約50%〜70%である。
【0310】
実施例73.5は、実施例73の中間金属製品を示し、熱間又は温間加工は、熱間又は温間圧延を含み、断面の減少率は、厚さの減少率である。
【0311】
実施例74は、実施例73の金属製品を示し、金属製品は、コイルに巻かれた金属ストリップの形状に形成される。
【0312】
実施例75は、実施例73〜74の金属製品を示し、第二相は、さらに、熱間又は温間加工の前に、第一相及び第二相における約450℃〜580℃のピーク金属温度を約1〜3分間維持することによって球状化される。
【0313】
実施例75.5は、実施例73〜74の金属製品を示し、第二相は、さらに、第一相及び第二相におけるピーク金属温度を、金属製品の固相線温度より約15℃〜45℃低いように維持することによって球状化され、ピーク金属温度は、熱間又は温間加工の前に、約1〜3分間維持される。
【0314】
実施例76は、金属鋳造システムを示し、該金属鋳造システムは、金属ストリップを鋳造する連続鋳造装置と、連続鋳造装置の下流に配置されて、金属ストリップを受け取り、熱間又は温間圧延温度で金属ストリップの厚さを約50%〜70%減少させる1つ以上の圧延スタンドとを含む。
【0315】
実施例77は、実施例76のシステムを示し、連続鋳造装置は、金属ストリップを7mm〜90mmの厚さに鋳造するように構成される。
【0316】
実施例78は、実施例76又は77のシステムを示し、熱間又は温間圧延温度は、少なくとも約400℃である。
【0317】
実施例79は、実施例76〜78のシステムを示し、該システムは、連続鋳造装置と圧延スタンドとの間に一直線に配置されて、金属ストリップの固相線温度より約15℃〜45℃低いピーク金属温度に金属ストリップを約1〜3分間維持する均熱炉をさらに含む。場合によっては、ピーク金属温度は、約450℃〜580℃に維持される。
【0318】
実施例80は、実施例76〜79のシステムを示し、1つ以上の圧延スタンドは、金属ストリップの厚さの50%〜70%の減少率を達成できる単一圧延スタンドを含む。
【0319】
実施例81は、実施例76〜80のシステムを示し、連続鋳造装置はベルト式鋳造機である。
【0320】
実施例82は、実施例76〜81のシステムを示し、該システムは、1つ以上の圧延スタンドの下流に配置され、金属ストリップをコイルに巻き取る巻取装置をさらに含む。
【0321】
実施例83は、連続鋳造装置を用いて金属ストリップを連続鋳造すること、金属ストリップが連続鋳造装置を出た後、金属ストリップを約50%〜70%の厚さの減少率で熱間又は温間圧延することを含む方法を示す。
【0322】
実施例84は、実施例83の方法を示し、金属ストリップを連続鋳造することは、金属ストリップを7mm〜50mmの厚さに連続鋳造することを含む。
【0323】
実施例85は、実施例83又は84の方法を示し、熱間又は温間圧延は、少なくとも約400℃の温度での熱間圧延を含む。
【0324】
実施例86は、実施例83〜85の方法を示し、該方法は、金属ストリップの鋳造と金属ストリップの圧延の間に、金属ストリップの固相線温度より約15℃〜45℃低いピーク金属温度を約1〜3分間維持することをさらに含む。場合によっては、ピーク金属温度は、約450℃〜580℃に維持される。
【0325】
実施例87は、実施例86の方法を示し、金属ストリップを熱間又は温間圧延することは、単一圧延スタンドを用いて、金属ストリップの厚さを約50%〜70%減少させることを含む。
【0326】
実施例88は、実施例83〜87の方法を示し、金属ストリップを連続鋳造することは、液体金属に一対のローラを通過させて、液体金属から熱を抽出し、かつ液体金属を凝固させることを含む。
【0327】
実施例89は、実施例83〜88の方法を示し、金属ストリップを温間又は熱間圧延した後、金属ストリップをコイルに巻き取ることをさらに含む。
【0328】
実施例90は、実施例83〜89の方法を示し、金属ストリップを熱間又は温間圧延することは、圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱を抽出すること、金属ストリップに力を加えて金属ストリップの厚さを減少させることを含み、力を加えるときに、加えられた力は、金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶させるのに十分である。
【0329】
実施例91は、実施例90の方法を示し、熱を抽出すること、および、力を加えることは、単一圧延スタンドで行われる。
【0330】
実施例92は、実施例90の方法を示し、熱を抽出することは、第1圧延スタンドで行われ、力を加えることは、後続の圧延スタンドで行われる。
【0331】
実施例93は、アルミニウム金属製品を示し、厚さが約35mm以下の厚さに減少する連続鋳造アルミニウム合金を含み、連続鋳造アルミニウム合金は、少なくとも0.2重量%の量で存在する鉄を含み、鉄系金属間化合物粒子の円相当径の中央値は、約0.8μm未満である。
【0332】
実施例94は、実施例93のアルミニウム金属製品を示し、鉄系金属間化合物粒子の円相当径の中央値は、約0.75μm未満である。
【0333】
実施例95は、実施例93のアルミニウム金属製品を示し、鉄系金属間化合物粒子の円相当径の中央値は、約0.65μm未満である。
【0334】
実施例96は、実施例93〜95のアルミニウム金属製品を示し、鉄系金属間化合物粒子の中央アスペクト比は、約4未満である。
【0335】
実施例97は、実施例93〜96のアルミニウム金属製品を示し、連続鋳造アルミニウム合金は、最終規格にある。
【0336】
実施例98は、実施例93〜97のアルミニウム金属製品を示し、アルミニウム合金は、約2.0mmの規格にある。
【0337】
実施例99は、実施例93〜98のアルミニウム金属製品を示し、アルミニウム合金は、6xxx系のアルミニウム合金である。
以下の態様を付け加える。
[21]金属ストリップを熱間又は温間圧延することが、
圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱の抽出すること;および
金属ストリップの厚さを減少させるために金属ストリップに力を加える際に、加えられた力が金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶化させるのに十分な力であるように力を加えること、を包含する。
[22]熱を抽出すること、および、力を加えることは、単一圧延スタンドで行われる、21に記載の方法。
[23]熱を抽出することは、第1圧延スタンドで行われ、力を加えることは、後続の圧延スタンドで行われる方法。
[24]第1速度で金属ストリップを鋳造する連続鋳造装置;および
第1速度と異なる第2速度で動作する熱間圧延スタンド
を包含する金属鋳造加工システム。
[25]金属ストリップを鋳造するベルト式連続鋳造装置;
前記ベルト式連続鋳造装置に関連付けられ、前記金属ストリップを中間コイルに巻き取る巻取装置;および
前記中間コイルを受け取り、前記金属ストリップを所望の厚さに減少させる少なくとも1つの熱間圧延スタンドに操作可能に結合された巻出装置、
を含む金属鋳造加工システム。
[26]第1速度での金属ストリップを連続鋳造すること;および
前記第1速度と異なる第2速度で前記金属ストリップを熱間圧延すること
を包含する鋳造圧延方法。
[27]連続鋳造装置内で液体金属を7mm〜50mmのストリップ厚さに冷却することによって形成された固体アルミニウムの第一相;および
新たに凝固した金属を溶体化温度未満の温度に急速冷却することによって第一相において過飽和にされる合金元素を含む第二相
を含む中間金属製品。
[28]金属ストリップを鋳造する連続鋳造装置;および
連続鋳造装置に隣接して配置されて、前記金属ストリップが連続鋳造装置を出るときに前記金属ストリップを急速冷却するのに十分な冷却剤を前記金属ストリップに供給される少なくとも1つのノズル
を包含する金属鋳造システム。
[29]連続鋳造装置を用いた金属ストリップを連続鋳造すること;および
前記金属ストリップが前記連続鋳造装置を出るときに、前記金属ストリップを急速焼入れすること、を包含する方法。
[30]金属ストリップを圧延温度以上の温度に予熱すること;および
前記圧延温度で前記金属ストリップに最終熱間圧延スタンドを通過させると共に、前記金属ストリップの厚さを減少させ、前記圧延温度で前記金属ストリップを再結晶させるのに十分な力を前記金属ストリップに加えることを含む前記金属ストリップを熱間圧延すること;および
前記金属ストリップを熱間圧延した直後に行われる前記金属ストリップの焼入れすること
を包含する方法。
[31]厚さが約35mm以下のストリップ厚さに減少する連続鋳造アルミニウム合金を含み、前記連続鋳造アルミニウム合金は、少なくとも0.2重量%の量で存在する鉄を含み、鉄系金属間化合物粒子の円相当径の中央値は約0.8μm未満である、アルミニウム金属製品。