(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、工場内での検査ラインや製造するロボットの位置検知、あるいはセキュリティ、
その他様々な用途のために建物の屋内や屋外にカメラを設置することが行われているが、
そのようなカメラの中にはレンズ鏡筒を着脱できるように構成されたものがあり、該レン
ズ鏡筒については種々の構造のものが提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献
1及び2参照)。
【0003】
図5は、カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒の従来構造の一例
を示す側面図であり、図中の符号Bはカメラボディを示し、符号100は、該カメラボデ
ィBに着脱自在に装着されるレンズ鏡筒を示す。このレンズ鏡筒100は、複数の筒状部
101A,101Bから構成されていて、該筒状部101A,101Bを相対回転させる
ことによりフォーカスを調整するように構成されている。そして、符号102は、各筒状
部101A,101Bの回転位置がずれないように固定するための緩み止めビスを示して
いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような緩み止めビス102は小径のために締めにくいという問題
があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできるレンズ鏡筒を提供することを目的とする
ものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、
図1乃至
図3(a) 、及び
図6に例示するものであって、カメラ
ボディ(B)に着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒(1,2,3)において、
基端側(10a,20a,30a)が前記カメラボディ(B)に装着されると共に先端
側(10b,20b,30b)の内周面(10c,20c,30c)にネジ部(以下、「
固定筒側ネジ部」とする)(10d,20d,30d)が形成されてなる固定筒部(10
,20,30)と、
レンズ(A
1,A
2)を保持する筒状の部材であって、外周面(11a,21a,31
a)にネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)(11b,21b,31b)が形成さ
れると共に該可動筒側ネジ部(11b,21b,31b)が前記固定筒側ネジ部(10d
,20d,30d)に螺合された状態で前記固定筒部(10,20,30)の内側に移動
可能な状態で配置されてなる可動筒部(11,21,31)と、
前記可動筒側ネジ部(11b,21b,31b)に螺合された状態で前記固定筒部(1
0,20,30)の先端側(10b,20b,30b)に当接されることにより該固定筒
部(10,20,30)と前記可動筒部(11,21,31)との相対回転を抑制するよ
うに構成されたナット部材(12,22,32)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に係る発明において、
図2(a) (b) 、
図3(a) 及び
図6に詳示するように、前記可動筒部(21,31)が、前記可動筒側ネジ部(21b,
31b)を有する基端側可動筒部(210,310)と、該基端側可動筒部(210,3
10)に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部(211,311)と、該基端側可動
筒部(210,310)と該先端側可動筒部(211,311)との間に挟持された状態
で配置される固定絞り板(212,314)と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第2の観点の発明において、
図3(b) 乃至(d) に例示するよう
に、前記固定絞り板(212)の開口(不図示)と異なる大きさの開口(212Aa,2
12Ba,212Ca)を持つ取り替え用固定絞り板(212A,212B,212C)
、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1の観点の発明において、前記可動筒部における前記レンズ
(A
1,A
2)を保持する部分(以下、「レンズ保持部」とする)(
図1の符号11、図
3(a) の符号211,213参照)に貫通孔(
図1の符号11c、
図3(a) の符号211
c,213c参照)が形成され、
該貫通孔(11c,211c,213c)を介して該レンズ(A
1,A
2)の外周面と
該レンズ保持部(11,211,213)との間に接着剤(不図示)を充填できるように
構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、第1の観点の発明において、
図1及び
図2(a) (b) に例示する
ように、前記固定筒部(
図2(a) (b) の符号20参照)の外周面に形成された凹凸部であ
る固定筒側ローレット(同図の符号20e参照)、及び/又は、前記可動筒部(
図1の符
号11参照)の外周面に形成された凹凸部である可動筒側ローレット(同図の符号11d
参照)、を備え、
前記ナット部材(12,22)は、前記固定筒側ローレット(20e)及び/又は前記
可動筒側ローレット(11d)と異なる形状及び/又は異なる色で形成されていることを
特徴とする。
【0013】
本発明の第6、7の観点は、
図6に例示するものであって、第1の観点の発明において
、前記可動筒部(31)が保持するレンズ(A
1,A
2)の光軸方向(C)に該可動筒部
(31)を付勢するように前記固定筒部(30)と該可動筒部(31)との間に配置され
た弾性部材としてスプリング部材(
図6の符号33参照)、を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従
って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点によれば、建物の屋内や屋外に長年固定されて様々な振動を受ける
カメラボディに装着される場合でも、前記ナット部材によって前記固定筒部と前記可動筒
部との相対回転を抑制でき、前記振動等に伴うフォーカスやズームのズレ等を防止するこ
とができる。また、前記ナット部材は、
図5に例示した緩み止めビスに比べて大径である
ため、締めやすく緩みにくいという効果を奏する。
【0016】
ところで、レンズ鏡筒に使用する絞りが可変絞りの場合は、設置場所状況(工場での振
動、工場での製造用アームなどの可動物体にカメラを設置した場合における該アームから
受ける振動)、地震、その他の要因に伴う振動によって絞り羽根どうしが擦れ、粉塵が発
生して画像のノイズの原因になったりするおそれも考えられる。しかしながら、第2及び
第3の観点の発明によれば、可変絞りではなく固定絞り板を使用しているため、そのよう
な問題も解消できる。
【0017】
本発明の第4の観点によれば、レンズ鏡筒をカメラボディに長期間に亘って取り付けて
おく場合でも、各レンズの適正位置からの位置ズレを防止することができる。
【0018】
本発明の第5の観点によれば、前記固定筒側ローレットと前記可動筒側ローレットと前
記ナット部材とを視覚と触覚とで明確に区別できる。
【0019】
本発明の第6、7の観点によれば、前記固定筒側ネジ部と前記可動筒側ネジ部との間に
多少のガタ(スラスト方向のガタ)があったとしても前記固定筒部と前記可動筒部との前
記光軸方向への相対移動は前記ナット部材で締め付けるまでの間は前記スプリング部材に
よって制限されることとなり、該相対移動に伴うフォーカス等のズレを防止することがで
きる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1乃至
図4、及び
図6に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
本発明に係るレンズ鏡筒は、カメラボディに着脱可能となるように構成されたものであ
る。このレンズ鏡筒は、
図1、
図2(a) (b) 、
図3(a) 及び
図6に符号1,2,3で例示
するものであって、
・ 基端側(光軸方向Cに沿った一端側の意)10a,20a,30aが前記カメラボデ
ィBに装着されると共に先端側(光軸方向Cに沿った他端側の意)10b,20b,30
bの内周面10c,20c,30cにピッチネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)
10d,20d,30dが形成されてなる固定筒部10,20,30と、
・ レンズA
1,A
2を保持する筒状の部材であって、外周面11a,21a,31aに
ピッチネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)11b,21b,31bが形成される
と共に該可動筒側ネジ部11b,21b,31bが前記固定筒側ネジ部10d,20d,
30dに螺合された状態で前記固定筒部10,20,30の内側に前記光軸方向Cに移動
可能な状態で配置されてなる可動筒部11,21,31と、
・ 前記可動筒側ネジ部11b,21b,31bに螺合された状態で前記固定筒部10,
20,30の先端側10b,20b,30bに当接されることにより該固定筒部10,2
0,30と前記可動筒部11,21,31との相対回転を抑制するように構成されたナッ
ト部材(リングナット)12,22,32と、
を備えている。なお、前記ナット部材12,22,32は、経年変化を受けにくい硬質の
材料(好ましくは金属)で形成されていると良い。
【0023】
本発明によれば、建物の屋内や屋外に長年固定されて様々な振動を受けるカメラボディ
Bに装着される場合でも、前記ナット部材12,22,32によって前記固定筒部10,
20,30と前記可動筒部11,21,31との相対回転を抑制でき、前記振動等に伴う
フォーカスやズームのズレ等を防止することができる。また、前記ナット部材12,22
,32は、
図5に例示した緩み止めビス102に比べて大径であるため、締めやすく緩み
にくいという効果を奏する。
【0024】
ところで、建物の屋内や屋外に固定するカメラの場合、地震や他の要因に伴う振動によ
ってレンズ鏡筒内部の部品同士が擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりす
るおそれも考えられる。しかしながら、本発明に係るレンズ鏡筒1,2,3の場合、前記
ナット部材12,22,32は前記固定筒部10,20,30の先端側10b,20b,
30bの全体に接触していることからその接触面積は比較的大きくなるため、地震等の振
動を受けても粉塵は発生しにくくなり、そのような問題も解消できる。
【0025】
この場合、前記可動筒部は、
図2(a) (b) 、
図3(a) 及び
図6に符号21,31で詳示
するように、前記可動筒側ネジ部21b,31bを有する基端側可動筒部210,310
と、該基端側可動筒部210,310に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部211
,311と、該基端側可動筒部210,310と該先端側可動筒部211,311との間
に挟持された状態で配置される固定絞り板212,314と、を有するようにしても良い
。例えば、前記先端側可動筒部211,311の内周面又は外周面にピッチネジ部(不図
示)を形成すると共に、前記基端側可動筒部210,310の外周面又は内周面にピッチ
ネジ部(不図示)を形成しておいて、該先端側可動筒部211,311を該基端側可動筒
部210,310に着脱できるように構成しておくと良い。また、レンズA
1,A
2は2
つのレンズ群に分けておいて、一方のレンズ群A
1は前記基端側可動筒部210,310
(図に示す例では、該基端側可動筒部210,310の内部に着脱自在に支持されている
筒状の部材213,313)に保持させ、他方のレンズ群A
2は先端側可動筒部211,
311に保持させるようにすると良い。したがって、前記固定絞り板212,314は、
これら2つのレンズ群A
1,A
2の間に配置されることとなる。このように構成すること
により(すなわち、レンズを2つのレンズ群A
1,A
2に分けると共に、これら2つのレ
ンズ群A
1,A
2の間に前記固定絞り板212,314を配置することにより)、フォー
カス調整時の収差変動(つまり、フォーカス調整の影響でレンズ系の収差の変動(悪化)
)を抑えることができる。なお、該固定絞り板212,314は、開口(絞り開口)を有
する円板状のものにすると良い。
【0026】
図4(a) 〜(c) に例示するような可変絞り312の場合、地震や他の要因に伴う振動に
よって絞り羽根どうしが擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりするおそれ
も考えられる。しかしながら、上述のような固定絞り板212を使用した場合にはそのよ
うな粉塵の発生やノイズの発生を抑制できるという効果を奏する。
【0027】
そして、前記固定絞り板212,314は、前記先端側可動筒部211,311を前記
基端側可動筒部210,310から取り外すことにより交換可能に構成しておくと良い。
【0028】
さらに、
図3(b) 〜(d) に例示するように、前記固定絞り板212の開口(不図示)と
異なる大きさの開口212Aa,212Ba,212Caを持つ取り替え用固定絞り板2
12Aa,212Ba,212Caを1枚又は複数枚備えておいて、適宜取り替えられる
ように構成しておくと良い。例えば、カメラボディBを設置する場所が屋外等の明るい場
所である場合には、同図(b) に例示するような一番小さな開口212Aaを持つ取り替え
用固定絞り板212Aaをレンズ鏡筒2に取り付けると良く、屋内の廊下などの暗い場所
である場合には、同図(c) や(d) に例示するような大きな開口212Ba,212Caを
持つ取り替え用固定絞り板212Ba,212Caをレンズ鏡筒2に取り付けると良い。
なお、これらの固定絞り板212,212A,212B,212Cの板厚は、遮光性と機
械的強度を確保するという観点からは厚い方が好ましく、光学的には薄い方が好ましいが
、全てを満足させるという観点からは0.05〜0.1mmの範囲が好ましい。
【0029】
ところで、前記可動筒部における前記レンズA1,A2を保持する部分(以下、「レン
ズ保持部」とする)(
図1の符号11、
図3(a) の符号211,213参照)に貫通孔1
1c,211c,213cを形成しておいて、該貫通孔11c,211c,213cを介
して該レンズA
1,A
2の外周面と該レンズ保持部11,211,213との間に接着剤
(不図示)を充填できるように構成しておくと良い。そのように構成した場合には、該レ
ンズA
1,A
2の外周面と該レンズ保持部11,211,213との間に接着剤を流し込
むことができ、レンズ鏡筒2をカメラボディBに長期間に亘って取り付けておく場合でも
、各レンズA
1,A
2の適正位置からの位置ズレを防止することができる。
【0030】
次に、本発明に係るレンズ鏡筒2の設置方法について説明する。
【0031】
該レンズ鏡筒2の設置に際しては、前記固定筒部20の基端側20aを前記カメラボデ
ィBに装着して固定する。この際、該基端側20aと該カメラボディBとの間には接着剤
を塗布しておいて振動に伴う前記固定筒部20の緩みを防止するようにすると良い。
【0032】
該固定筒部20を前記カメラボディBに取り付けた後は、カメラ(つまり、前記カメラ
ボディB及び前記レンズ鏡筒2)を設置する場所を実際に見て、最適な大きさの開口の固
定絞り板212,212A,212B又は212Cを選択し、該選択した固定絞り板21
2,212A,212B又は212Cを前記基端側可動筒部210と前記先端側可動筒部
211との間に入れ込む。この際、該基端側可動筒部210と該先端側可動筒部211と
が当接する部分(例えば、不図示のピッチネジ部)に接着剤を塗布しておいて、それらの
可動筒部210,211が振動などで緩まないようにしておくと良い。そして、該基端側
可動筒部210には前記ナット部材22を取り付けると共に、該基端側可動筒部210を
前記固定筒部20に取り付けると良い。なお、緩み防止を目的とした接着剤の塗布は、前
記カメラボディBや前記レンズ鏡筒2を設置する前の段階で行うことができることから、
該接着剤を塗布し易いように該カメラボディBや該レンズ鏡筒2の姿勢を自由に動かすこ
とができ、接着剤の塗布作業を効率良く行うことができる。また、上述した実施例では、
・ 前記固定筒部20の前記カメラボディBへの取り付け
・ 前記固定絞り板の前記可動筒部21への取り付け
・ 該可動筒部21の前記固定筒部20への取り付け
の順で各工程を実施しているが、各工程の実施順序を変えても良い。
【0033】
その後、前記レンズ鏡筒2を取り付けたカメラボディBを所定の場所に設置し、前記可
動筒部21を回転させてフォーカス調整を行い、該調整が完了した時点で前記ナット部材
22によって固定する。このフォーカス調整は、カメラボディBを現場に設置した状態で
行わなければならず、フォーカスの固定(つまり、可動筒部21と固定筒部20との相対
回転の抑制)を接着剤により行おうとした場合には、カメラボディBの設置状態や設置姿
勢によっては接着剤を塗布することが困難なこともあり得る。例えば、該カメラボディB
を天井や軒先に吊すような場合には該カメラボディBを該天井や軒先に吊した状態で接着
剤を塗布する必要があるが、作業者は無理な姿勢で接着剤の塗布作業を行わなければなら
ず、接着剤が意図しない箇所に流れ込んだり垂れたりしてしまうおそれもある。また、該
接着剤が十分に硬化する前に振動(例えば、風による揺れや、近くの道路を走行する自動
車からの振動)でフォーカスがずれてしまうおそれもある。しかし、本発明によれば、フ
ォーカスの固定は前記ナット部材22によって行うようになっているので、そのような問
題を解消できる。
【0034】
ところで、
・
図2(a) (b) に例示するように、前記固定筒部20の外周面に形成された凹凸部であ
る固定筒側ローレット20e、
及び/又は、
・
図1に例示するように、前記可動筒部11の外周面に形成された凹凸部である可動筒
側ローレット11d
を備えるようにし、しかも、前記ナット部材12,22は、前記固定筒側ローレット20
e及び/又は前記可動筒側ローレット11dと異なる形状及び/又は異なる色で形成する
と良い。そのようにした場合には、前記固定筒側ローレット20eと前記可動筒側ローレ
ット11dと前記ナット部材12,22とを視覚と触覚とで明確に区別でき、誤操作等を
防止することができる。特に、異なる色で形成した場合には、製品マニュアルでの解説も
わかりやすく表示できるという効果を奏する。
【0035】
ところで、
図6に例示するように、前記固定筒部30と前記可動筒部31との間に弾性
部材33を配置しておいて、該可動筒部31を光軸方向(つまり、前記レンズ鏡筒3の光
軸方向であって、前記可動筒部31が保持するレンズA
1,A
2の光軸方向)Cに付勢す
るようにすると良い。そのようにした場合には、前記固定筒側ネジ部30dと前記可動筒
側ネジ部31bとの間に多少のガタ(スラスト方向のガタ)があったとしても前記固定筒
部30と前記可動筒部31との前記光軸方向Cへの相対移動は前記ナット部材32で締め
付けるまでの間は前記スプリング部材33によって制限されることとなり、該相対移動に
伴うフォーカス等のズレを防止することができる。ここで、前記弾性部材33としては、
前記可動筒部31を前記固定筒部30から離れる方向(
図6では右方向であって、前記ナ
ット部材32の締め付けにより移動される方向)に付勢するコイルスプリング部材(具体
的には、圧縮コイルスプリング)が好ましいが、コイルスプリング部材以外のスプリング
部材はもちろんのこと、他の弾性部材を使っても同様の構成が実現できる。