(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6750149
(24)【登録日】2020年8月17日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】フレキシブルな高圧バルーン
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20200824BHJP
【FI】
A61M25/10 540
A61M25/10 500
【請求項の数】23
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-531700(P2016-531700)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公表番号】特表2016-540561(P2016-540561A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014056159
(87)【国際公開番号】WO2015073114
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】14/280,328
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/933,708
(32)【優先日】2014年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/962,314
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511268649
【氏名又は名称】ティモシー エー.エム. シューター
【氏名又は名称原語表記】Timothy A.M. Chuter
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シューター,ティモシー,エー.エム.
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−523142(JP,A)
【文献】
特表2008−541835(JP,A)
【文献】
特表2005−502428(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0245665(US,A1)
【文献】
米国特許第6245040(US,B1)
【文献】
特表2008−529658(JP,A)
【文献】
特表2007−530158(JP,A)
【文献】
米国特許第6022359(US,A)
【文献】
特開平10−127791(JP,A)
【文献】
特開平8−215300(JP,A)
【文献】
特開平7−51383(JP,A)
【文献】
特開昭55−141253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内で処置を行う装置であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、前記近位端と遠位端との間に延びる縦軸とを有する管状部材と、
前記遠位端に保持されるノンコンプライアントタイプのバルーンであって、中央領域と、前記中央領域から前記管状部材の遠位端上の第1および第2の取付位置に移行する端部領域とを有し、収縮状態から拡張状態へと拡張可能なバルーンと、
支持構造体とを備え、前記支持構造体が、前記バルーンの外面の周囲に螺旋状に延びる複数の実質的に弾力性のないファイバを備えるとともに、前記支持構造体が、近位および遠位の取付位置のみで前記管状部材の遠位端または前記バルーンに取り付けられた端部を有しており、一方で前記近位および遠位の取付位置の間のファイバの中間領域は前記バルーンに取り付けられておらず、前記バルーンが膨らんだときに、前記ファイバの中間領域が前記バルーンの中央領域に対して移動することができるようになっていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記複数のファイバが、組み紐として形成されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
患者の体内で処置を行う装置であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、前記近位端と遠位端との間に延びる縦軸とを有する管状部材と、
前記遠位端に保持されるノンコンプライアントタイプのバルーンであって、中央領域と、前記中央領域から前記管状部材の遠位端上の第1および第2の取付位置に移行する端部領域とを有し、収縮状態から拡張状態へと拡張可能なバルーンと、
支持構造体とを備え、前記支持構造体が、前記バルーンの外面の周囲に螺旋状に延びる複数の実質的に弾力性のないファイバを備えるとともに、前記支持構造体が、近位および遠位の取付位置のみで前記管状部材の遠位端または前記バルーンに取り付けられた端部を有しており、一方で前記近位および遠位の取付位置の間のファイバの中間領域は前記バルーンに取り付けられておらず、前記バルーンが膨らんだときに、前記複数のファイバが前記バルーンの中央領域に対して移動することができるようになっており、
前記複数のファイバが、前記バルーンの外面の周囲に組み紐として形成されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の装置において、
バルーンは、当該バルーンが拡張して短くなると、1以上の円周方向を向く折り目を形成するよう構成され、それにより、前記バルーンの屈曲または湾曲が可能となっていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の装置において、
前記ファイバが、前記バルーンの拡張中に前記外面に沿ってスライドして、前記縦軸に対する前記1以上のファイバのねじれ角を増大させ、それにより、前記バルーンの端部領域を互いに向けて移動させて前記バルーンの全長を短縮するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記第1位置と第2位置との間の前記管状部材の遠位端が、前記バルーンの拡張中に縮小して前記遠位端の曲げに適応するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項2または3に記載の装置において、
前記複数のファイバのうちの1以上が、第1方向に螺旋状に巻き付けられ、前記複数のファイバのうちの1以上が、第2方向に螺旋状に巻き付けられ、その結果、1以上の交差位置でファイバが互いに重なり合い、前記1以上の交差位置でファイバが自由にスライドすることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項2または3に記載の装置において、
前記端部領域が、前記中央領域から前記管状部材の遠位端に取り付けられた端部に向けて、先細になり、前記ファイバが、前記バルーンの端部領域に沿ってスライドできるように、前記近位および遠位の取付位置においてのみ前記管状部材の遠位端に取り付けられていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項2または3に記載の装置において、
前記ファイバが、熱可塑性材料から形成され、前記ファイバのそれぞれの端部が互いに付着されて、前記バルーンの遠位領域に隣接する位置にカラーを形成することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2または3に記載の装置において、
最大に拡張されたときの前記バルーンの直径に対する、最大に拡張されたときの前記支持構造体の直径の比率が、130%以上150%以下であることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか1項に記載の装置において、
前記ファイバが前記近位および遠位の取付位置に取り付けられて、前記バルーンの膨張が、前記第1および第2の取付位置を互いに近付けるように前記支持構造体を再構成して、前記バルーンが前記管状部材の縦軸方向に伸長することを阻止するようになっていることを特徴とする装置。
【請求項12】
患者の体内で処置を行う装置であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、前記近位端と遠位端との間に延びる縦軸とを有する管状部材と、
前記遠位端に保持されるノンコンプライアントタイプのバルーンであって、中央領域と、前記中央領域から前記遠位端上の取付位置に移行する端部領域とを有し、収縮状態から拡張状態へと拡張可能なバルーンと、
支持構造体とを備え、前記支持構造体が、前記バルーンの外面の周囲に螺旋状に延びる複数の実質的に弾力性のないファイバを備えるとともに、前記支持構造体が、前記複数のファイバが前記バルーンの中央領域に対して移動できるように前記遠位端に取り付けられた端部を有しており、
前記複数のファイバが、前記バルーンの外面の周囲で組み紐として形成されており、
前記バルーンが収縮状態から拡張状態に拡張されるときに、前記縦軸方向における最初のバルーンの長さから、前記縦軸方向において前記バルーンを5パーセント以上20パーセント以下(5−20%)の長さを短縮するように前記組み紐が構成されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
患者の体内で処置を行う装置であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、前記近位端と遠位端との間に延びる縦軸とを有する管状部材と、
前記遠位端に保持されるノンコンプライアントタイプのバルーンであって、中央領域と、前記中央領域から前記遠位端上の取付位置に移行する端部領域とを有し、収縮状態から拡張状態へと拡張可能なバルーンと、
支持構造体とを備え、前記支持構造体が、前記バルーンの外面の周囲に螺旋状に延びる複数の実質的に弾力性のないファイバを備えるとともに、前記支持構造体が、前記複数のファイバが前記バルーンの中央領域に対して移動できるように前記遠位端に取り付けられた端部を有しており、
前記複数のファイバが、前記バルーンの外面の周囲で組み紐として形成されており、
前記バルーンが収縮状態から拡張状態に拡張されるときに、前記縦軸方向における最初のバルーンの長さから、前記縦軸方向において前記バルーンを10パーセント以上30パーセント以下(10−30%)の長さを短縮するように前記組み紐が構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1項に記載の装置を用意する方法であって、
前記バルーンを拡張状態に膨らませ、それにより、前記バルーンが拡張する際に前記バルーンを短縮するように前記ファイバを再構成するステップと、
前記拡張状態において前記バルーンを湾曲形状に曲げて、それにより、前記バルーンをさらに前記湾曲形状に維持するように前記ファイバを再構成するステップと、
前記収縮状態に前記バルーンを収縮させるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記バルーンを膨らませたときに、前記湾曲形状を適用するように前記ファイバが前記バルーンの外面に沿ってスライドし、
前記収縮状態に前記バルーンが収縮した場合に、次に再び膨らませたときに前記バルーンが前記湾曲形状に付勢されるようになっていることを特徴とする方法。
【請求項16】
バルーンカテーテルを作成する方法であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、前記近位端と遠位端との間に延びる縦軸とを含む管状部材を提供するステップと、
第1端部領域と、第2端部領域と、それらの間の中央領域とを有するバルーンをノンコンプライアントタイプの材料から形成するステップと、
間隔を空けた第1および第2の取付位置で、前記端部領域を前記管状部材の遠位端に取り付けるステップと、
前記管状部材の遠位端の周囲で、前記バルーンを収縮状態に折り畳むか、または巻く動作のうちの少なくとも一方を行うステップと、
前記ファイバが前記バルーンの外面の周りで螺旋状に延びるように、前記バルーンを収縮状態にして、前記バルーンの周囲に複数の非弾性のファイバを配置するステップと、
前記ファイバの両端を、近位および遠位の取付位置のみにおいて前記管状部材の遠位端または前記バルーンに取り付けるステップであって、前記取付位置の間の前記ファイバの中間領域は前記バルーンに取り付けられておらず、前記ファイバの中間領域が、少なくとも前記バルーンの中央領域に沿って前記外面に対して前記ファイバが自由に移動できるステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
予め設定された軸方向の張力が、前記ファイバの第1端部と第2端部との間で前記ファイバの長さに沿って与えられるように、前記ファイバの両端が前記近位および遠位の取付位置に取り付けられていることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、
少なくとも第1ファイバが、第1螺旋方向に前記バルーンの周囲に螺旋状に巻かれ、少なくとも第2ファイバが、第2螺旋方向に前記バルーンの周囲に螺旋状に巻かれ、その結果、前記第1ファイバおよび第2ファイバが、1以上の交差位置で互いに重なり合って、当該1以上の交差位置で自由にスライドすることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法において、
前記管状部材を提供するステップが、前記取付位置間の前記管状部材の遠位端の一部分がフレキシブルとなるように前記管状部材の遠位端を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
前記取付位置間の前記管状部材の遠位端の一部分が、拡張位置へと付勢されるとともに、弾性的に軸方向に圧縮可能であり、膨張中に前記バルーンの短縮に適応することを特徴とする方法。
【請求項21】
カテーテルを作成する方法であって、
近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端とを有する管状部材を提供するステップと、
ノンコンプライアントタイプの材料からバルーンを形成するステップであって、前記バルーンが、膨張したときに予め設定されたサイズに膨張可能な中央円筒部分を含むようにする、ステップと、
前記管状部材の遠位端に前記バルーンの端部分を取り付けるステップと、
前記遠位端の周囲に前記バルーンを折り畳むか、または巻いて、収縮状態にするステップと、
前記収縮状態にある前記バルーンの周囲に、組み紐として形成された複数の実質的に非弾性のファイバを巻き付けるステップと、
前記ファイバの両端を、近位および遠位の取付位置のみにおいて前記管状部材の遠位端または前記バルーンの端部に取り付けるステップであって、前記取付位置の間における前記ファイバの中間部分は前記バルーンに取り付けられておらず、前記バルーンの膨張時に前記ファイバが、前記バルーンを短縮する軸方向の圧縮力を与えて完全に膨らんだバルーンのフレキシビリティを高めるように、前記ファイバが予め設定された長さを有するものであるステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項14または21に記載の方法において、
前記中間領域のファイバが、1以上の交差位置で互いに重なり合って、当該1以上の交差位置で自由にスライドすることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項14または21に記載の方法において、
前記ファイバが熱可塑性材料から作成されており、前記ファイバの両端が、前記近位および遠位の取付位置において、カラーを形成するようにともに取り付けられていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルおよび当該バルーンカテーテルの製造方法および使用方法に関する。より詳細には、本発明は、膨らんだときに柔軟性を維持するバルーンを含む血管形成カテーテル、並びに、そのようなカテーテルの製造方法および使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の血管形成バルーンは、一般的には、高い膨張圧に耐えるとともに、周囲の動脈の一部分が狭くて石灰化している場合においても体内で均一な予測可能な直径を達成する低弾力性材料から構成されている。一般的なバルーンは、円錐形端部の間の均一な直径の円筒部分と、バルーンの縦軸に沿って延びる中心カテーテルとを有する。高圧で膨らんだとき、バルーンの壁は、張力下に置かれ、かつ、バルーンは一般に、差動的な伸長能力を失い、その結果、硬直して真っ直ぐな形態に付勢された状態となる。そのようなバルーンは、拡張のためにバルーン上に圧着または保持されたバルーン拡張ステントに、この真っ直ぐな円筒形態を強いるものとなる。
【0003】
曲線状の動脈(例えば、冠状動脈、腎臓、大腿動脈など)における真っ直ぐなステントの存在は、特に動脈がよく動く場合に、応力またはひずみをステント構造体、動脈またはその両方に与える。結果として生じる反復的な微小な外傷は、しばしば壊滅的なフロー規制を生じるまで、炎症、過形成、再発性狭窄を誘発する。
【0004】
血管形成バルーンにフレキシビリティを与えるこれまでの試みにおいては、セグメント化、螺旋形状および弾力性バルーン材料が採用されていた。セグメント化されたバルーンは、セグメント化の程度に応じて様々な形態を取る。例えば、これまでのデバイスは、簡単に曲がる狭い介在セグメントを有する中心カテーテルに沿って引き延ばされた球状のバルーンを含んでいた。しかしながら、そのようなバルーンは、凹凸のあるセグメント化された形状をステントに強制することになるため、ステント送達には適していない。セグメント化されたバルーンが、セグメント間のギャップを取り除くほど膨らまされて、より完全に拡張されたステントを送達する場合、隣接するセグメントが互いに干渉してフレキシビリティの大半を損なう。
【0005】
提案されているその他のバルーンは、隣接するセグメントを含んでおり、それらは、連続的なバルーンにおける溝によって分割されている。それらの局所的な“ヒンジ箇所”は、差動的な伸長を強化するのにほとんど効果がなく、そのため、バルーンのフレキシビリティに与える効果は、それ程大きくない。その他のバルーンは、深い溝を有し、それらが、バルーン輪郭における膨らみを分けるが、それらもフレキシビリティに対してある程度の効果を有するのみである。
【0006】
また、螺旋形のバルーンは、フレキシビリティを増加させるために使用されているが、バルーンのワインディングが縦方向の連続性を阻み、その結果、バルーンの屈曲部の外側にある隣接するワインディングは離れることができるが、内側にある隣接するワインディングは密接並置に留まる。結果として得られる差動的な伸長の潜在力は、幾らかのフレキシビリティを与える。また、螺旋バルーンは、多腔構造による恩恵を受ける。構成バルーンの各々は、より狭くなり、よって、得られる螺旋状の構造物よりもフレキシブルとなる。しかしながら、そのような螺旋バルーンは、セグメント化されたバルーンと同じ多くの制限に悩まされている。それらは、完全に拡張していないステントを送達することになるか、あるいは、ギャップをなくすように膨らませ過ぎた場合に、フレキシビリティが小さくなる。さらに、バルーンが真っ直ぐである場合でも、その構成要素は、急な曲がりを有し、それらは、しっかり拘束しない限りは高圧膨張で真っ直ぐとされて、すぐに螺旋バルーンがバラバラになる。非弾性的でしっかりと巻かれた螺旋バルーンは、高圧膨張のときに潜在的にバラバラになる可能性がある。よりゆるく巻かれた螺旋バルーンは、より安定しているが、フレキシビリティが小さくなる。
【0007】
弾力性材料から構成されたバルーンは、非弾力性材料から構成された同様のバルーンよりも柔軟性がある。しかしながら、弾力性バルーンは、抵抗が最小の方向に拡張する傾向があり、それにより、狭い領域を非処置のままとし、弱い領域における動脈を破裂させ、かつ/または血管形成の意図した領域を超えて拡がることから、バルーン血管形成に必要とされる高圧に耐えることができない。また、弾力性バルーンは、ステント拡張を開始させるのに十分な力を生成することができないことがある。弾力性材料からなる初期の血管形成バルーンは、より高い作動圧力でバルーンの形状および寸法を制御しようとして、種々の組み紐、メッシュおよび覆いの適用により、その後補強されていた。
【0008】
また、あらゆる種類の外部の組み紐、覆いおよび織物が、最大作動圧力をさらに増加させるために、低弾力性の壁の中に埋め込まれてきた。しかしながら、高圧バルーンの低弾力性壁内への組み紐の統合は、組み紐の角度の変化を妨げる。そのようなバルーンの組み紐は、バルーンの膨張および収縮とともに、開放および閉鎖が自由ではなく、あるいは短縮および伸長が自由ではない。その結果、組み紐の存在は、バルーンを短くすること、縦方向に向く壁の張力を緩和すること、壁に余分な折り目を生じること、あるいはバルーンのフレキシビリティを向上させることの役には立たない。
【0009】
したがって、高圧に膨張されたときに寸法安定性とフレキシビリティを保持するバルーンに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、バルーンカテーテルを対象とし、より詳細には、膨張時にフレキシビリティを維持する
ノンコンプライアント(non−compliant)のバルーンを含む血管形成バルーンカテーテルと、そのようなバルーンカテーテルを作成および使用する方法とを対象とする。
【0011】
例示的な実施形態では、膨張可能な血管形成バルーンは、組み紐(braid)、覆い(wrap)、メッシュなどのような支持構造体を含むように構成することができ、この支持構造体は、例えば、バルーン膜の周囲に巻き付けられるか、バルーン膜の外部に配置されることにより、バルーン膜により保持される。支持構造体は、バルーンが相対的に高い膨張圧においても湾曲または屈曲できるように、バルーンが膨らまされたときに高いフレキシビリティを保持することを可能にする。
【0012】
概して、バルーンアセンブリは、所定長さを有するカテーテルと、カテーテル上、例えばカテーテルの遠位端に配置される膨張可能なバルーンであって、例えば2つの実質的に円錐形状または先細の端部分の間に実質的に円筒形状の中間部を有するバルーンと、1または複数の位置で、例えばバルーンの円筒形状部分よりも近位側の第1位置と、バルーンの円筒形状部分よりも遠位側の第2位置とで、カテーテル上にまたはカテーテルに沿って固定される支持構造体とを含み、バルーンの膨張が、第1位置と第2位置を互いに近付けるように支持構造体を再構成して、カテーテルに対してバルーンが縦方向に伸長するのを阻止する。
【0013】
バルーンの拡張中、バルーンの直径の増加は、支持構造体のワイヤ、ファイバまたはその他の構成要素を、第1および第2位置間またはその他のバルーン取付部間の最短経路からそらすことができる。支持構造体のファイバは、伸長する能力を僅かしか有していないため、支持構造体のバルーン誘起の拡張は、バルーンの近位端および遠位端を互いに向けて引き寄せる短縮を伴う必要がある。このため、バルーンが膨らんだときに、それらファイバに与えられる張力は、バルーンの円筒状部分の膜壁における縦方向を向く張力を置換または相殺する。さらなる膨張は、バルーンに1またはそれ以上の小さな冗長的な周方向の折り目をもたらすこともできる。この冗長性と小さい縦方向を向く壁張力の組合せは、完全に膨らまされたときでさえも、バルーンをフレキシブルなものとする。
【0014】
例示的な一実施形態では、支持構造体は、バルーン膜の外側にあり、バルーン表面に対して自由に動くことができる。他の変形例では、支持構造体は、バルーンを覆う薄い弾性層の表面上に接着または配置されるか、バルーンの粘着層間に挟まれる等されるものであってもよい。さらに、単一の螺旋状に巻かれたファイバが使用されているが、他の変形例は、組み紐、覆いおよびメッシュなどに構成された複数(例えば、2またはそれ以上)のファイバを利用することもある。
【0015】
支持ファイバのメッシュとして構成された支持構造体は、ファイバを伸長させるのではなく、ファイバを再配列することにより、編組ステントとほぼ同じように曲げることができる。さらに、そのようなファイバのメッシュを再配列するのにほんの僅かなエネルギーしか必要ではないため、支持ファイバは、バルーンの湾曲または屈曲に対する抵抗をほとんど示さない。さらに、組み紐、覆いまたはメッシュとして構成される支持構造体におけるファイバの数を増加させることは、例えばファイバ間の距離を短くすることにより、かつ/またはファイバにかかる負荷をさらに分配することにより、ファイバ間の空間におけるバルーンの部分による膨れ(bulging)を低減または除去することができる。
【0016】
使用されるファイバの数または支持構造体の構成に関わらず、支持構造体は、ファイバの形状に形成された実質的に弾性力のない材料(例えば、ナイロン、ニチノール、Kevlar Vectraon、 Spectra、ダクロン、Dyneema、Terlon(PBT)、Zylon(PBO)、ポリイミド(PIM)、超高分子量ポリエチレンなど)から形成することができ、それらファイバは、例えばステント装着および/または血管内送達のために、バルーンを収縮させたときに薄型形態に潰されるのに十分な柔軟性を有するものとされる。支持構造体も、ステント展開または血管形成処置のためにバルーンが膨らまされるときに、展開態様に再構成されるのに十分な柔軟性を有する。
【0017】
支持構造体が2またはそれ以上のファイバを含む場合、それらは、交差する位置で自由にスライドするものであっても、あるいは1またはそれ以上の交差位置で互いに接続または連結されるものであってもよい。
【0018】
支持構造体のファイバとバルーンの縦軸との間の傾斜(pitch)または角度は、特定の用途における所望の機械的特性に基づいて、変化するものであってもよい。例えば、相対的に低い傾斜(ファイバが、最初にバルーンの縦軸にほぼ平行に向けられていること)は、膨張に対する抵抗を最小化することがある。縦軸にほぼ垂直な相対的に高い傾斜は、完全に拡張したバルーンのフレキシビリティを最適化したり、かつ/または、その直径に、有限の上限を加えることがある。また、高い傾斜は、拡張中における直径に対する長さの変化の比率を高めることもある。また、傾斜は、単一のバルーンの長さに沿って変化することもある。例えば、端部分内の相対的に低い傾斜は、それらの形状および長さを安定化させる一方で、円筒形状部分における相対的に高い傾斜は、より高いフレキシビリティを提供することができる。
【0019】
支持構造体の動作の下でバルーンが短くなる際に、バルーン内のカテーテルの一部分も、例えばバルーンの短縮に適応するように、短くなるように構成されるものであってもよい。例示的な実施形態では、支持する組み紐、覆い、またはカテーテルのバネ要素は、座屈を防ぎ、ワイヤルーメンの潰れを防ぎ、かつ/または、支持構造体のその取付部を介して、除去するために薄型状態にバルーンが戻るのを補助することができる。
【0020】
一実施形態によれば、患者の体内で処置を行う装置が提供され、この装置は、近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端と、それらの間に延びる縦軸とを有する管状部材と、前記遠位端に保持される
ノンコンプライアントバルーンであって、中央領域と、前記中央領域から前記遠位端上の取付位置に移行する端部領域とを有し、収縮状態から拡張状態へと拡張可能なバルーンと、支持構造体とを備え、前記支持構造体が、前記バルーンの外面の周囲に螺旋状に延びる1またはそれ以上の実質的に弾力性のないファイバを備えるとともに、前記支持構造体が、前記1またはそれ以上のファイバが前記バルーンの中央領域に対して移動することができるように、前記遠位端に取り付けられた端部を備える。
【0021】
別の実施形態によれば、医療処置を行う方法が提供され、この方法は、管状部材上の
ノンコンプライアントバルーンを収縮状態とし、前記バルーン上の1またはそれ以上の弾性力のないファイバを薄型態様として、患者の体内に管状部材の遠位端を導入するステップと、体腔内の病変内に前記バルーンを配置させるステップと、前記バルーンを拡張状態に拡張させて、前記1またはそれ以上のファイバを再構成し、それにより前記バルーンが拡張したときに前記バルーンを短縮させるステップとを備える。
【0022】
別の実施形態によれば、カテーテルを作成する方法が提供され、この方法は、近位端と、患者の体内に導入するようにサイズ設定された遠位端とを有する管状部材を提供するステップと、
ノンコンプライアントタイプの材料からバルーンを形成するステップであって、前記バルーンが、膨張したときに予め設定されたサイズに膨張可能な中央円筒部分を含むようにする、ステップと、前記管状部材の遠位端に前記バルーンの端部分を取り付けるステップと、前記遠位端の周囲に前記バルーンを折り畳むか、または巻いて、収縮状態にするステップと、前記収縮状態にある前記バルーンの周囲に1またはそれ以上のファイバを巻き付けるステップと、前記バルーンの端部分に隣接する位置に1またはそれ以上の実質的に弾性力のないファイバの端部を取り付けるステップとを含み、前記バルーンの膨張時に前記1またはそれ以上のファイバが、前記バルーンを短縮する軸方向の圧縮力を与えて完全に膨らんだバルーンのフレキシビリティを高めるように、前記1またはそれ以上のファイバが予め設定された長さを有する。例示的な実施形態では、ファイバは、例えばバルーンの屈曲に適応すべく、バルーンの外面上で自由にスライドまたは移動するように、バルーンの周囲に編まれるものであってもよい。代替的には、バルーンの外面は、バルーンが拡張したときにファイバとバルーン間の係合を強化するために、相対的に高い摩擦仕上げを有するものであってもよい。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、近位端および遠位端を含む管状部材と、収縮状態で前記遠位端上に位置する非弾性のバルーンと、薄型形態で前記バルーン上に位置する複数の非弾性のファイバとを備えるバルーンカテーテルを用意する方法が提供される。前記バルーンは、拡張状態に膨張され、それにより、前記バルーンが拡張する際に前記バルーンを短縮するように前記ファイバを再構成するものであってもよい。例えば、ファイバは、例えばバルーンの屈曲に適応すべく、バルーンの外面上で自由にスライドするように、バルーン上に組み紐またはメッシュで与えられるものであってもよい。バルーンは、拡張されると、拡張状態において湾曲形状に曲げられ、それにより、バルーンをさらに前記湾曲形状に維持するようにファイバを再構成するものであってもよい。例えば、ファイバは、湾曲形状に適応すべくバルーンの外面に沿ってスライドするものであってもよく、かつ/または、1またはそれ以上の折り目がバルーンに形成されるものであってもよい。その後、バルーンは、例えば次に再膨張されるときに湾曲形状に付勢されるように、収縮状態に収縮されるものであってもよい。
【0024】
例示的な実施形態では、ファイバは、バルーンが湾曲形状に屈曲するときにバルーンの外面上を移動することができ、その結果、ファイバが、湾曲の内側に向けて移動するか、かつ/または、バルーンおよび/または管状部材上の張力を減少させ、それにより、よじれを生じることなくバルーンの曲げを促進することができる。例えば、ファイバは、湾曲の内側に向けて移動することができ、それにより、ファイバに非対称的な張力を生成し、それが、バルーン上に同様の非対称的な力を及ぼして、さもなければバルーンを真っ直ぐに伸ばし得る外部から加えられる曲げ力にも関わらず、湾曲形状を維持することができる。このため、この種のバルーンは、“形状記憶”を示すことができ、膨らまされていないバルーンが真っ直ぐでフレキシブルであったとしても、バルーンは、一旦湾曲形状に膨らまされると、再び膨らまされたときに実質的に同じ湾曲形状に戻ることができる。この現象が生じ得るのは、ファイバがバルーンの拡張によって張力が与えられるときに非対称的な組み紐の分布がバルーンの形状のみに影響を与えるためである。バルーンがその非拡張状態にあるときは、組み紐ファイバは、僅かな張力しか有しておらず、バルーンの形状にほとんど影響を与えることはない。別の実施形態では、組み紐は、実質的に安定した状態を維持するように構成される、例えば、バルーンが導かれる形状に関係無く、外面に亘って均一に分布するものであってもよい。このため、この実施形態においては、ファイバは、バルーンが外部から加えられる力の作用下で形を変えるときに、外面上を容易にスライドすることができる。
【0025】
例えば、バルーンが医療処置に向けて準備される場合は、バルーンを収縮状態として、カテーテルの遠位端を、患者の体内に導入し、体腔内の病変内またはその他の治療面に配置するようにしてもよい。その後、体腔内でバルーンを膨らませた後、バルーンを病変内で湾曲形状へと付勢するようにしてもよい。例えば、収縮したバルーンを湾曲した体腔内に配置して、その湾曲形状が体腔内の湾曲形状とほぼ整列されるように、バルーンの向きを調整するようにしてもよい。このため、バルーンが膨らまされたときは、バルーンは、湾曲形状へと拡張することができ、それにより体腔を広げながらも、真っ直ぐに伸びるリスクあるいは体腔の壁に望ましくない応力がかかるリスクを最小化することができる。
【0026】
本発明に対する必要性および本発明の利用を含むその他の態様および特徴は、添付の図面を併用して、以下の説明を検討することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
なお、図面に示す例示的な装置は、必ずしも一定の縮尺率で描かれている訳ではなく、それよりもむしろ、例示の実施形態の様々な態様および特徴を示すことに重点が置かれている。図面は、例示的な実施形態を示している。
【
図1】
図1Aは、細長いカテーテルに配置された血管形成バルーンの一実施例の側面図を示している。
図1Bは、組み紐、覆い、メッシュ等として、バルーン周囲に巻かれた一組のファイバを含む支持構造体の側面図を示している。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、支持構造体を有するバルーンの代替的な実施形態の側面図であって、支持構造体が、バルーンが萎んだときの薄型態様にある状態、バルーンが膨らんだときの展開態様にある状態をそれぞれ示している。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、支持構造体を有する膨らんだバルーンの側面図であって、支持構造体が膨らんだときの状態と、湾曲または屈曲したときの状態を示している。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、バルーン上に支持構造体がない、膨らんだ長さを有する例示的な血管形成バルーンの側面図を示している。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、真っ直ぐな態様および湾曲または屈曲した態様にある支持構造体を有する膨らんだバルーンの側面図を示している。
【
図6】
図6は、交差位置で互いに固定または連結された、例えば2またはそれ以上のファイバにより支持構造体が構成された変形例の側面図を示している。
【
図7】
図7は、ファイバがカテーテルの縦軸に対して相対的に高い傾斜または角度を有するように形成されたさらに別の変形例を示している。
【
図8】
図8は、支持構造体を形成するために3本のファイバが使用されたさらに別の変形例の側面図を示している。
【
図9】
図9は、様々な傾斜または巻線密度でバルーンに沿った領域を形成するためにどのようにファイバが使用されるのかを示すさらに別の変形例を示している。
図9Aは、
図9のバルーンの第1端部の詳細図である。
【
図10】
図10は、バルーンカテーテルのさらに別の実施形態の側面図を示しており、この実施形態においては、支持構造体のファイバがバルーンの外面と摩擦係合して、湾曲した姿勢で膨らんだときにバルーンが真っ直ぐになるのに対して抵抗するようになっている。
【
図11】
図11は、支持構造体を含むバルーンカテーテルのさらに別の実施形態の側面図であり、ここでは、支持構造体が、膨らんだときに湾曲形状に曲げられるようにバルーンを付勢する1またはそれ以上のファイバの非対称配置を含むものとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般に、本明細書に記載の装置および方法は、例えば、近位端部分および遠位端部分(例えば、円錐状またはその他のテーパ状の端部分)を含むとともにそれら端部の間にほぼ円筒形状の部分を備えるバルーン搭載カテーテルまたはその他の管状部材を含む、血管形成および/またはその他の血管内処置を行うためのカテーテル、および/または患者の体内の体腔を別の方法で処置するためのカテーテルに関するものである。また、バルーンは、組み紐、覆いおよびメッシュ等として与えられる1またはそれ以上のワイヤまたはその他のファイバのような支持構造体も含み、それが、バルーン膜の周囲に巻き付けられる。支持構造体は、バルーンの全長に亘って、取り囲み、支持し、かつ/または延在することにより、支持を与えながらもバルーンに対して自由に動くことができ、それにより、バルーンが高いフレキシビリティを保持することを可能とし、かつ/またはバルーンが屈曲または湾曲することを可能とし、かつ/または相対的に高い膨張圧力においても、曲がった形状から真っ直ぐになるのに抵抗することができる。バルーンが高摩擦外面を含む場合、支持構造体は、膨張時にバルーンと係合することができ、それにより、バルーンが展開された場合に、バルーンの形状が、膨らむ前の形状、例えば体腔に対応する曲がった形状またはその他の非直線的な形状から、変化するのに抵抗することができる。
【0029】
バルーンの拡張中、バルーンの増加する直径は、支持構造体のファイバを互いに引き離し、それにより、その縦軸に沿って支持構造体を短くすることができる。この支持構造体の短縮は、バルーンの近位端と遠位端を互いに引き寄せる。このため、バルーン自体が完全に膨張する際に、それらファイバに与えられる張力は、バルーンの円筒部分の膜壁における縦方向の張力に置き換わるか、またはそれを相殺する。したがって、負荷がなくなったとき、バルーンの円筒部分の膜壁は、自由に差動的に伸長することができ、それにより、完全に膨らんだときでさえもバルーンの屈曲および/または高いフレキシビリティを可能にする。
【0030】
図面を参照すると、
図1Aおよび1Bは、装置8の例示的な実施形態を示しており、当該装置は、後で詳細に述べるように、バルーン10を保持する血管形成カテーテル12を含み、バルーン10が、当該バルーンの外部に、例えば1またはそれ以上のワイヤまたはその他のファイバ(2本のファイバ52,54が示されている)を含む支持構造体50を有する。概して、カテーテル12は、例えばハンドルまたはハブ(図示省略)を含む近位端と、患者の体内に導入するようにサイズおよび/または形状が設定された遠位端12bと、それらの間に延在して縦軸12dを大まかに規定する1またはそれ以上のルーメン12cとを含む。例えば、膨張媒体の供給源、例えば近位端(図示省略)のハンドルまたはハブに連結されたシリンジ(膨張ガスまたは生理食塩水のような流体が充填されたシリンジ)と、バルーン10の内部との間を繋げる膨張ルーメン12cを設けるようにしてもよい。任意選択的には、1またはそれ以上の追加的なルーメン、例えば、近位端のポートと遠位端の出口(図示省略)との間に延びるガイドワイヤまたは器具ルーメンを設けるようにしてもよい。
【0031】
図1Aは、(
図1Bに示すように、支持構造体50を配置する前の)カテーテル12に配置された血管形成バルーン10の例示的な実施形態を示しており、このバルーンは、収縮または送達状態(図示省略)と、
図1Aに示すような拡張状態との間で移行されるものとなっている。拡張状態では、バルーン10は、概して、実質的に円筒形状の中央部分18と、近位部分14および遠位部分16とを含み、その一方または両方が、円錐形に形成され、テーパが付けられ、または中央部分18からカテーテル12の外壁へと遷移するものとなっている。それぞれの部分14,16の各々は、例えば取付位置20,22で、様々な固定機構、例えば接着剤による結合、融合、音波溶接および外部カラーなど(図示省略)のうちの1またはそれ以上を用いて、カテーテル12の遠位端12bに取り付けられるものであってもよい。
【0032】
バルーン10の膜は、
低コンプライアントまたはノンコンプライアントタイプの材料を含むものであってもよい。得られた
ノンコンプライアントバルーン10は、相対的に高い圧力の膨張に耐えることができる。本明細書において、“
ノンコンプライアント”は、バルーン10が、例えば閾値圧力に対して、初期の膨張時に、例えば中央部分18に沿って実質的に均等な直径を有する、予め設定された拡張形状に拡張することを意味している。圧力が上昇して閾値圧力を超えると、バルーン10のサイズおよび/または形状は実質的に変わらないままとなり、それにより、例えば、バルーン10が、バルーン10を取り囲む隣接身体構造に向かって外側に半径方向に圧力を加えることを可能にする。例えば、バルーン膜は、実質的に弾性力のない材料から形成することができ、最初の拡張および内部圧力を提供するとともに、例えば、例示的な実施形態では約5気圧と20気圧との間(5−25atm)とされる破裂または機能停止圧力に達するまで、最小限の追加的な拡張で予め設定された拡張形状を実質的に維持するように構成されている。
【0033】
このため、バルーン10が拡張したとき、バルーン膜は、バルーン10のすべての部分で実質的に等しい力を生成することができる。例えば、
図1Aに示すように、例えば膨張媒体(膨張ガスまたは生理食塩水のような流体など)によって、バルーン10を膨らませたとき、バルーン10の内部に含まれる流体がバルーン膜の壁に対して圧力24をかける。バルーン10の近位部分14に流体圧力24によってもたらされる合力26は、カテーテル12の縦軸に対してある角度で突き出ているように見える。バルーン10の遠位部分16に流体圧力24によってもたらされる同様の合力28も、カテーテル12の縦軸に対してある角度で突き出ているように見える。
【0034】
合力26,28の各々は、縦方向を向く力の成分30,32をそれぞれ含み、それらが互いに反対方向を向いている。平衡状態において、近位部分14の縦方向を向く力の成分30は、カテーテル12とバルーン10との間の取付部からの反力34と、バルーンの膜壁における縦方向を向く張力38との和と等しくかつ反対向きである。同様に、遠位部分16の縦方向を向く力の成分32は、カテーテル12とバルーン10との間の取付部からの反力36と、バルーンの膜壁における縦方向を向く張力40との和と等しくかつ反対向きである。さらに、縦方向を向く張力が存在しないとき、中央部分18の壁における周方向を向く引張力44が、半径方向を向く力46を生成して、圧力42によってもたらされる外向きの力と釣り合う。
【0035】
図1Bに示すように、支持構造体50のファイバ52,54は、例えば組み紐、覆い、メッシュ等として、バルーン10の周囲に螺旋状に巻かれ、それらは、バルーン10によって保持され、例えば、1またはそれ以上の位置でバルーン10および/またはカテーテル12にほぼ永続的に取り付けられる。例えば、バルーン10が、折り畳まれ、巻かれ、または収縮状態に移行された状態で、支持構造体50のファイバ52,54は、本明細書の別の箇所に記載されているように、バルーン10の外面の周囲に巻き付けられ、かつ/またはバルーン外面を取り囲み、かつ、カテーテル12の遠位端12bおよび/またはバルーン10の端部に連結されるものであってもよい。任意選択的には、例えば支持構造体50の薄型態様を最小化するために、かつ/または収縮態様でバルーン10を拘束するために、予め設定された軸方向の張力が、巻き付けられたときにファイバ52,54に加えられ、ファイバ52,54の端部がカテーテル12に対して取り付けられたときに維持されるものであってもよい。
【0036】
支持構造体50は、この変形例では、2本のファイバ52,54として示されており、それらファイバは、バルーン10の表面の周りで互いにずらして配置されるとともに、例えば反対の螺旋方向に、バルーン10の外面の周囲にともに螺旋状に巻かれており、その結果、ファイバ52,54がバルーン10の長さに沿って1またはそれ以上の回数互いに重なるものとなっている。この実施形態では、バルーン10上でファイバ52,54によって誘発されるねじれは、互いに相殺されて、バルーン10に与える最終的なひねりは実質的にゼロとなる。代替的には、ファイバ52,54が、例えば約180度(180°)互いに実質的にずれた状態を維持するように、ファイバは、同じ螺旋方向に巻かれるものであってもよい(図示省略)。しかしながら、この代替例において、ファイバは、バルーンの周りにねじれを与える可能性があり、それが望ましくないひねりを引き起こす可能性がある。
【0037】
ファイバ52,54は、例えばそれぞれのバルーン取付位置20,22に隣接する、近位および遠位の取付位置56,58のみで、カテーテル12および/またはバルーン10の何れかに取り付けられるものとして示されているが、取付位置56,58間のファイバ52,54の長さ部分は、バルーン10に固定されないままとなっている。このため、支持構造体50は、バルーン膜の外側に配置され、例えば少なくとも中央部分18に沿って、そして任意選択的には端部分14,16に沿って、バルーンの外面に対して自由に動くことができる。例示的な実施形態では、ファイバ52,54の端部は、次の取付方法のうちの1またはそれ以上によって、バルーン膜の取付位置20,22上でカテーテルの遠位端12bに取り付けられるものであってもよく、その取付方法には、ファイバ52,54の端部をカテーテル12の周囲に巻き付けること、それら端部をカテーテル12上のカラーに固定すること(図示省略)、それら端部をカテーテル12および/またはバルーン膜の端部などに接着剤で固定、融合、熱溶接または音波溶接することが含まれる。例示的な実施形態では、例えばすり切れを防止しかつ/またはバルーン10の端部への取付を容易にするために、例えばファイバ52,54の端部が一緒に融合されてバルーン膜の各端部に別々のカラーを形成するように、ファイバ52,54が、成形および/または融合することができる熱可塑性材料から形成されるものであってもよい。支持構造体50は、本明細書に記載したものに加えて、あらゆる長さのカテーテルおよび様々なバルーン構造に適用することができる。
【0038】
ファイバ52,54の組み紐により支持されるバルーン10の機械的特性は、最大限に拡張した組み紐の直径と、最大限に拡張したバルーンの直径との比率によって決まる。例えば、最大限に拡張した組み紐の直径(すなわち、バルーン10とは独立に、ファイバ52,54の組み紐がカテーテル12上で拡張され得る最大直径)が、最大限に拡張したバルーン10の直径の約130パーセント(130%)未満である場合には、特にバルーンの端部間の中央領域において、組み紐がバルーンの拡張を制限することがある。この比率により、バルーンが最大拡張でドッグボーン形状(すなわち、中央領域よりも端部に向かって大きくなる形状)となり、最も制限される中央部分が、制限されていない全直径に達しない結果となり得る。最大限に拡張した組み紐の直径が、最大限に拡張したバルーンの直径の約150パーセント(150%)以上である場合には、バルーンは、実質的に均一な曲率の滑らかな弧を(特に、高い曲げ度合いで)形成することができなくなる。実際のところ、バルーンは、急激な曲げにより連結された相対的に真っ直ぐな一連のセグメントを形成し得る。したがって、バルーンに対する最大限に拡張した組み紐の直径の比率は、約120パーセントと160パーセントとの間(120−160%)、または約130パーセントと150パーセントとの間(130−150%)であることが望ましいことがある。
【0039】
代替的には、2本のファイバ52,54が示されているが、支持構造体50のその他の変形例は、本明細書の別の箇所に記載されているその他の実施形態と同様に、用途に応じて、3本以上のファイバ、例えば合計でまたは各方向に、例えば約2と100の間(2−100)、10と80の間(10−80)、20と50の間(20−50)のファイバを含む、反対方向に巻かれて組み紐、覆い、メッシュなどに構成された1またはそれ以上のセットのファイバを使用するものであってもよい。
【0040】
カテーテル12自体は、一般に、近位端と遠位端12bの間の長さが、約80センチメートルと150センチメートルとの間の範囲(80−150cm)であり、外径が、約1ミリメートルと3ミリメートルとの間(1−3mmまたは3−9Fr)である。バルーン10は、紡錘形状を有し、全体の長さが、約10ミリメートルと100ミリメートルの間(10−100mm)であり、中央領域18に沿う拡張時の直径が、約2ミリメートルと12ミリメートルの間(2−12mm)である。バルーン10は、テーパが付けられた遠位先端またはその他の非侵襲的な遠位先端に隣接するカテーテル12の遠位端12bに取り付けられるものであってもよい。バルーン10は、低弾性の熱可塑性材料、例えば、中〜高デュロメータのPEBAX、ナイロンまたはPETなどから形成されるものであってもよい。
【0041】
一般に、使用するファイバの数または支持構造体50の形態に関係無く、1または複数のファイバは、実質的に弾性力のない材料から形成することができ、その結果、各ファイバは、通常の使用条件中に、実質的に軸方向に伸びまたは伸長し、破断し、または機能しなくなることはない。例示的な実施形態では、1または複数のファイバは、様々な材料、例えば、ナイロン、ニチノール、Kevlar Vectraon、 Spectra、ダクロン、Dyneema、Terlon(PBT)、Zylon(PBO)、ポリイミド(PIM)、超高分子量ポリエチレンまたはポリエステルなどから形成することができる。1または複数のファイバは、例えば押出、より小さい繊維の織りまたは編み、機械加工、成形、エッチング、材料堆積などによって、実質的に丸みを帯びたまたは平らな、中実または中空の、リボン、ワイヤまたはその他の繊維形状に形成することができる。例示的な実施形態では、ファイバの直径またはその他の最大断面寸法を、約0.001インチと0.010インチの間、例えば、約0.002インチと0.003インチの間とすることができる。結果として得られるファイバは、例えば、ステントクリンピングまたはローディングおよび/または血管内送達のために、バルーン10がその収縮状態に萎んだときに、薄型形態に潰れるように適切にフレキシブルであってもよい。また、支持構造体50は、各ファイバのその長さに沿った塑性または弾性伸びを実質的に生じることなく、例えば、ステント展開または血管形成術のために、バルーン10がその拡張状態へと膨らんだときに、展開態様に再構成されるように適切にフレキシブルである。
【0042】
任意選択的には、支持構造体50の1またはそれ以上のファイバは、例えば、1またはそれ以上の化合物、例えば1またはそれ以上の治療化合物が1またはそれ以上のファイバの細孔内に取り込まれるように、多孔質なものであってもよい。代替的には、1またはそれ以上のファイバは、そのような化合物および/またはその他の材料、例えば、カテーテル12が患者の体内に導入されたときに外部画像処理を使用して支持構造体を画像化するのを容易にする放射線不透過性またはその他の材料によって被覆されるものであってもよい。追加的または代替的には、1またはそれ以上の化合物が、バルーン10の外面に被覆され、埋め込まれ、または取り込まれるものであってもよい。バルーン10が収縮状態に移行されたときは、例えばバルーン10が膨らまされかつ支持構造体50のファイバ52,54が離れてバルーン10の外面を曝すまでは、バルーン10の周囲の支持構造体50は、少なくとも部分的に、その化合物を例えば摩耗から保護することができ、かつ/または露出を最小化することができ、バルーンが膨らまされた後で、化合物が周囲の組織および/または体腔内に放出されるものとなる。
【0043】
支持ファイバのメッシュとして構成された支持構造体50は、例えばそのファイバを伸ばすのではなく再配列させることにより、編まれたステントとほぼ同じ様に曲がる。さらに、そのようなファイバのメッシュを再配列するのに必要なエネルギーは僅かであるため、支持ファイバがバルーン10の湾曲または屈曲に対して与える抵抗も僅かなものとなる。さらに、組み紐、覆いまたはメッシュとして構成される支持構造体50のファイバ数の増加は、本明細書の別の箇所に記載されているように、例えばファイバ間の距離を短くすることで、かつ/またはファイバに負荷をさらに分配することで、ファイバ間の隙間における部分のバルーンの膨出を減少または除去することができる。例えば、
図10に示すように、バルーン110の周囲に螺旋形のメッシュに巻かれた約2と20の間(2−20)のファイバ152を含む支持構造体150を保持するバルーン110を含むカテーテル112を提供することもできる。
【0044】
追加的には、バルーン10が膨らんだときに、本明細書の別の箇所に記載されているように、バルーン10に与える圧力誘起の力に、支持構造体50が極僅かな影響を与えるか、または実質的に影響を与えないように、支持構造体50は、その近位および遠位取付位置56,58で取り付けられるものであってもよい。動作中、バルーン10が
図1Bに示すように拡張状態に拡張されて、それにより支持構造体50が自ら再構成する際に、支持構造体50のファイバは、
図1Bに示される引張反力60,64が示すように、それぞれの縦軸の各々に沿って張力を与えることができる。反力60,64はそれぞれ、縦方向の反力62,66によって示されるように、それぞれ縦方向を向く力成分を部分的に含むことができる。それら反力62,66は、支持構造体50の近位および遠位取付位置56,58を、例えばカテーテル12の縦軸12dとほぼ平行に、互いに引き寄せ、それにより、バルーン10の取付位置20,22を互いに引き寄せるとともに、2つの取付位置56,58間で(可逆的に短くなるように設計された)カテーテル12の少なくとも中央領域18を軸方向に圧縮する。
【0045】
このため、バルーン10が拡張して支持構造体50により短縮される際に、バルーン10の膜壁における縦方向に向けられた張力38,40は取り除かれ、その結果、当該張力38,40が縦方向に向けられた力の成分30,32に抵抗することはない。バルーン10の拡張は、支持構造体50のファイバの螺旋経路を長くするため、ファイバは、ピンと張って、バルーン10の端部を互いに引っ張り、または引き寄せる。そして、これは、バルーン10および支持構造体50が湾曲または屈曲に対する柔軟性を保持して、例えば、バルーン10が相対的に高い圧力で膨らんだときにも血管内壁に適合することを可能にする。これは、そのような支持構造体50を有していないバルーン10よりも先に進んでいる。そのようなバルーン10は膨らんだときに真っ直ぐになって同じ程度の柔軟性で湾曲または屈曲することができないからである。
【0046】
支持構造体50の存在下では、第1の方向に沿うバルーン10の壁の張力と、別の方向に沿う壁の張力との間に一定の関係は存在しない。それは、バルーン10上の支持構造体50のファイバに沿う縦方向を向く力の成分が、バルーン壁に沿う張力の縦方向成分と置き換わるか、それに打ち勝ち、その結果、バルーン10に沿う縦方向成分がゼロに減少または低下するか、またはゼロに近付くからである。このため、縦方向に負荷が取り除かれた壁は、バルーン10の湾曲または屈曲に対して僅かな抵抗しか示さない。
【0047】
一変形例では、カテーテル12が、例えばバルーン10の端部間の遠位端12b上に、バルーン10が短くなる際にカテーテル12が可逆的に短くなるのを可能にする“衝撃吸収帯”(図示省略)をさらに含む。これは、相対的により大きい縦方向の冗長性(longitudinal redundancy)、対向する壁間の差動的な伸長(differential lengthening)の増加、および/または曲げに対する抵抗の低下をもたらすことができる。これらの衝撃吸収帯は、(例えば、孔が形成されたニチノールのハイポチューブ、圧縮バネなどのような図示省略の様々な付勢機構を介して)バネ荷重がかけられるものであってもよく、それにより、バルーン10が収縮するときに初期の長さに実質的に戻るのを容易にすることができる。代替的には、カテーテル12の遠位端12bは、例えばバルーン10の取付位置20,22間で、高いフレキシビリティを有することができ、それにより、例えば
図3Aに示す実施形態と同様に、また本明細書の別の箇所に記載されているように、バルーン10が短くなる際に、遠位端12bをほぼ線形から螺旋またはその他の非線形の形状に移行させることが可能になる。
【0048】
図2Aおよび2Bを参照すると、カテーテル12と、支持構造体50を有するバルーン10とを含む装置8の別の例示的な実施形態が示されている。
図2Aにおいては、バルーン10がその収縮または送達状態で、支持構造体50がその薄型形態でそれぞれ示され、一方、
図2Bにおいては、バルーン10がその拡張状態で、支持構造体50がその展開態様でそれぞれ示されている。この実施形態では、支持構造体50が単一のファイバ54を含み、このファイバが、バルーン10および/またはカテーテル12に近位または遠位の取付位置56,58で取り付けられるとともに、バルーン10の外面の周囲に巻き付けられ、あるいは巻かれている。この実施形態では、分かり易くするために、単一のファイバ54が示されているが、本明細書中の他の実施形態と同様に、複数のファイバが使用されるものであってもよい。結果として得られる薄型の形態は、
図2Aに示すように、L1の全体収縮長さを有し、ファイバ54が、カテーテル12の縦軸12dに対して、初期のファイバ組み紐の角度αを形成するものであってもよい。
図2Bに示すように、バルーン10を膨らませると、ファイバ54によって取られる螺旋経路の直径が大きくなるに連れて、バルーン10内のカテーテル12の部分が短くなり、かつ、カテーテル12の縦軸12dに対して、初期のファイバの角度αよりも大きい、拡張および再構成されたファイバ組み紐の角度α+δを形成する。ファイバ54は実質的に弾性性のない材料から形成されているため、ファイバ54自体は、その螺旋経路が拡大する際に、伸びることができず、ファイバ54内の引張応力が増加する。それにより、バルーン10は、その支持構造体50によって長さがさらに短くなり、膜壁に沿う張力の緩和によりフレキシビリティを保持することができる。膨らんだバルーンの長さL2は、初期の収縮したバルーンの長さL1よりも小さいものとして示されている。
【0049】
図3Aおよび3Bを参照すると、膨らんで湾曲または屈曲されたときの装置8’のさらに別の実施形態が示されており、この装置は、カテーテル12’を含み、このカテーテルは、その上に、支持構造体(分かりやすくするために図示省略)を有する膨らんだバルーン10’を含む。
図3Aに示すように、バルーン10’が拡張してその支持構造体により短くなると、バルーン内部を通るカテーテル12’の部分12e’が縦方向に圧縮されて、バルーン10’自体が、その長さに沿って、1またはそれ以上の円周方向を向く折り目60’を形成することができる。それら折り目60’は、バルーン10’の円筒形状の中央部分18’の対向する壁間における差動的な伸長を可能にして、それにより、例えば
図3Bに示すように、(本明細書の別の箇所に記載されているように、
ノンコンプライアントバルーンが拡張したときに一般に与えられる剛性により、そのようなバルーン10’が通常はすることができない)バルーン10’の屈曲または湾曲を可能にする。これは、(
図3Aに示すように)バルーン10’が膨らんで真っ直ぐとなったときに、バルーン10’の対向するそれぞれの側壁S1,S2が実質的に等しいが、(
図3Bに示すように)バルーン10が湾曲または屈曲したときに、第1側壁の長さS1が長くなり、反対の第2側壁の長さS2が短くなり、その結果、第1側壁の長さS1が湾曲したバルーン10’の外側半径を形成し、第2側壁の長さS2が内側半径を形成し、S1≫S2となることによって、示されている。一旦バルーン10’が湾曲または屈曲すると、支持構造体は、従来の高圧バルーンとは異なり、バルーン10’が湾曲または屈曲状態を保つことを可能にする。
【0050】
本明細書に記載されているように、膨らんだバルーン上の支持構造体の効果の更なる説明として、
図4Aおよび4Bは、バルーン70と一体化した支持構造体を有していない、膨らんだ長さL1を備える例示的な従来の血管形成バルーン70の側面図を示している。
図4Bは、バルーン70が湾曲した血管内で膨らんだときなど、軸外力がバルーン70にかかるときの、真っ直ぐな構成に対するバルーン70の最小限の湾曲または屈曲を示している。これは、
図5Aおよび5Bの側面図に示すように、バルーン10と一体化された支持構造体50を有するカテーテル12とは対照的であり、それは、
図2Aおよび
図2Bに示す装置8、または本明細書のその他の実施形態と同様のものとすることができる。単一のファイバ54’が、バルーン10上に螺旋状に配置されるものとして示されているが、これは、例示的なものであることが意図されており、あらゆる追加的なファイバが、本明細書の別の箇所に記載されているように、支持構造体に利用されるものであってもよい。
【0051】
支持されていないバルーン70と同様の高圧で膨らませたとき、支持構造体50を有するバルーン10は、膨張中に全体のバルーン長さを僅かに短くさせ、バルーン10およびカテーテル12の遠位端12bにおける張力を緩和し、湾曲した体腔において展開されたときにバルーン10の内側と外側間の差動的な伸長を可能にする冗長性を与える。例えば、
図4Aに示す支持されていないバルーンは、膨張中に実質的に変化しない長さL1を有する。これに対して、支持構造体50を有するバルーン10は、L1と同様の収縮した長さを未だ有しているが、膨張時には、初期長さL1よりも短い長さL2を有することができる。さらに、結果として得られる
図5Aおよび5Bのバルーン10は、
図4Bに示すように曲げに抵抗する支持されていないバルーン70とは異なり、
図5Bの側面図に示すように、湾曲または屈曲時においてその柔軟性を実質的に維持することができる。
【0052】
さらに追加的な変形例では、支持構造体が、バルーン上に様々な異なる形態に構成されるものであってもよい。
図6は、例示的な実施形態の側面図を示しており、この実施形態では、支持構造体が、2またはそれ以上のファイバ、例えば、バルーン10の周囲に互いに対して反対方向に巻かれて示されている2本のファイバ80,82で構成されるものであってもよく、それらが、交差位置84で互いに接続または連結されている。例えば、ファイバがバルーン10の周囲で螺旋状に延びるときにそれらが互いに重なるか、交差する交差位置84において、ファイバ80,82は、互いに結ばれ、固定され、繋がれ、結合され、取り付けられ、または連結され、その結果、バルーン10が拡張したときにファイバ80,82が交差位置84を中心に回転または曲がることができる。一実施形態において、ファイバ80,82は、交差位置84の各々で連結されるものであってもよく、代替的には、ファイバ80,82は、幾つかの交差位置84のみで、例えば、1つまたは2つおきの交差位置で連結されるものであってもよい。2本のファイバ80,82が示されているが、本明細書の別の箇所に記載されているように、単一のファイバまたは3以上のファイバが、利用されるものであってもよい。
【0053】
図7は、さらに別の変形例を示しており、この例では、ファイバ80,82がカテーテル12の縦軸12dに対して相対的に高い傾斜または角度を規定するように形成されている。バルーン10がその拡張状態に拡張する際に、支持構造体は、ファイバ80,82が受ける追加的な巻回により、相対的に高い密度構造を規定するものであってもよい。相対的に低い傾斜または巻き角度を有する支持構造体は、バルーン10の拡張に僅かな抵抗しか与えないが、相対的に高い傾斜または巻き角度は、高いフレキシビリティを有するバルーンアセンブリを提供することができる。また、高い傾斜は、バルーン10が拡張したときに、例えば
図6に示す実施形態と比べて、直径に対する長さ変化の比率を増加させることもできる。
【0054】
図8は、支持構造体の形成に3本のファイバ80,82,84が使用されるさらに別の実施形態の側面図を示している。任意選択的には、その他の各々にあるように、この実施形態では、ファイバ80,82,84が、1またはそれ以上の交差位置で、互いに結ばれ、固定され、取り付けられ、または連結され、または、個々のファイバが、互いに連結されずに、例えば上下の編みまたはその他のパターンで、単に上下に横たわるものであってもよい。
【0055】
図9は、様々な傾斜、巻き密度および/またはその他の機械的特性を有するバルーン10に沿った領域を形成するために支持構造体のファイバ80がどのように使用され得るかを説明するさらに別の実施形態を示している。例えば、バルーン10の第1部分90は、
図9Aに示すように、カテーテル12の縦軸12dに対して相対的に低い傾斜または巻き角度を規定するファイバ80を有するものであってもよい。バルーン10の第2部分92は、図示のように、第1部分90に対して、かつカテーテル12の縦軸12dに対して、相対的に高い傾斜または巻き角度を規定するファイバ80を有するものであってもよい。この実施形態および本明細書に記載されているその他の実施形態においては、記載の実施形態の何れかが、バルーン10の所望の屈曲またはその他の機械的特性に応じて、様々な傾斜のファイバ角度を有する1またはそれ以上の領域を組み込むものであってもよい。さらに、支持構造体は、様々な傾斜または巻き角度を有する2またはそれ以上の領域を有するように構成されるものであってよく、それら領域の各々が、任意選択的に、バルーン10に沿う長さも同様に変化するものであってもよい。
【0056】
任意選択的には、実施形態の何れかにおいては、1またはそれ以上の層が支持構造体上に設けられるものであってもよい(図示省略)。例えば、
図1Aおよび1Bに示す装置8を参照すると、弾性材料の相対的に薄い外側層(図示省略)が、例えばバルーン10の端部20,22で、またはそれらを超えた位置に、カテーテル12に取り付けられた支持構造体上に設けられるものであってもよい。外側層は、滑らかな材料から形成されるものであってもよく、あるいはその内面および外面の一方または両方に滑らかなコーティングを含むものであってもよい。このため、バルーン10の拡張およびそれによる支持構造体50の再構成の間に、外側層は、支持構造体50と、バルーン10上に載せられたステントまたはその他のプロテーゼ(図示省略)との間の移行を与えることができる。拡張中に、支持構造体の1またはそれ以上のファイバが角度を変えるか、かつ/または再構成する際に、ねじり力またはその他の円周方向の力が、外側層により吸収されて、プロテーゼには伝達されず、それにより、拡張中にプロテーゼを元の形状に維持することができる。
【0057】
使用中、本明細書中の装置の何れかは、患者の体内の医療処置を実行するために使用されるものであってもよい。例えば、
図1Aおよび1Bに示す装置8を参照すると、患者の血管系内の狭窄またはその他の病変を拡張または処置するために、血管形成処置が実行されるものであってもよい。収縮状態(図示省略)にあるバルーン10により、カテーテル12の遠位端12bは、従来の介入手順と同様に、例えばガイドカテーテル、ガイドワイヤおよび/またはその他の器具(図示省略)とともに、例えば患者の大腿血管、頸動脈またはその他の末梢血管における経皮の入口部位から、患者の血管系内に導入されるものであってもよい。遠位端12bは、病変を横切ってバルーン10を配置させるために、進められるか、かつ/またはカテーテル12の近位端から導かれる。バルーン10および支持構造体50は、例えば曲がった血管またはその他の非線形血管内に位置する病変内においても、曲がりくねった生体構造を通って前進することを可能にする程度にフレキシブルであってもよい。
【0058】
病変内に配置されると、バルーン10を膨らませて、当該バルーン10を拡張状態に移行し、それにより、支持構造体50をその展開態様に再構成させる。バルーン10が湾曲した病変内に配置されると、支持構造体50は、病変に対応する湾曲した形状にバルーン10を実質的に維持することができる。例えば、支持構造体50は、バルーン10を短縮および/または再構成させ、例えば、バルーン10の内半径および/またはその他の領域内に1またはそれ以上の折り目を生成し、それにより、バルーン10の
ノンコンプライアントタイプの材料に関わらず、病変の湾曲形状に適合するのに十分なフレキシビリティを提供することができる。
【0059】
任意選択的には、処置の前に、バルーン10が“形状記憶”を示すように、例えばバルーン10を所望の湾曲またはその他の形状に付勢するように、バルーン10を用意することができる。例えば、処置の直前に、バルーン10を、所望の湾曲形状(例えば、所望の曲率半径を有する単純な曲線、または必要に応じて、より複雑な形状)に曲げられている間に、完全に拡張した(例えば、ほぼ真っ直ぐな)状態に膨らませ、それにより、バルーン10を湾曲形状にさらに維持するために、支持構造体50を再構成させるようにしてもよい。例えば、ファイバ52,54が、湾曲形状に適合するようにバルーン10の外面に沿ってスライドするようにしてもよく、かつ/または1またはそれ以上の折り目が、バルーン10に形成されるようにしてもよい。その後、バルーン10は収縮状態に再び収縮されるようにしてもよい。
【0060】
一旦湾曲形状に拡張されると、バルーン10は、(収縮状態における)間隔収縮および再構成に関わらず、再膨張時に実質的に同じ形状をとる。例えば、膨らんだバルーンを強制的に曲げることにより、または膨張されていないバルーンを曲げて、新しい形状を維持したままバルーンを再び膨らませることにより、必要に応じて、(膨張状態における)新たな形状を、バルーンに与えることができる。
【0061】
この特徴は、内腔器具類が湾曲した経路を横切らなければならないときに有用であることがある。例えば、従来の拡張器に十分な曲げを引き起こして、屈曲部、分岐点、狭窄部の周囲でシースの移動を可能とすることがしばしば難しい場合がある。それらの状況下では、体腔の真っ直ぐな区間またはシースの真っ直ぐな区間を介して導入することがそれほど難しくない場合には、拡張器の固定された湾曲部が、適度に有用であることがある。膨らまされていない形状記憶バルーンは、バルーン膨張が曲げを引き起こすシースの先端を僅かに超えた位置において、閉塞性病変内に容易に挿入できる程度にフレキシブルであってもよい。その後、シースは、閉塞性病変を過ぎて対象となる管腔内に、適切にサイズ調整されたバルーンとともに、またはバルーンを超えて、進められるものであってもよい。
【0062】
代替的な実施形態において、任意選択的には、例えば同様の形状の病変内でバルーン10を湾曲形状で固定するために、バルーン10の外面は、拡張中に支持構造体50とバルーン10との間の係合を強化するように構成されるものであってもよい。例えば、バルーン10の外面が、高摩擦処理またはコーティングを含み、それにより、支持構造体50が拡張中にバルーン10と摩擦係合して、湾曲形状を維持するとともに、拡張中のバルーン10の真っ直ぐな伸びに抵抗することができる。このバルーンの真っ直ぐな伸びは、バルーン10が拡張される血管内に望ましくない応力を生じさせることがある。
【0063】
例えば、
図10は、本明細書中のその他の実施形態とほぼ同様に構成された、バルーン110および支持構造体150を含むカテーテル112を示している。支持構造体150は、組み紐に織り込まれた複数の実質的に弾性力のないファイバ154を含む。図示の実施形態は、各螺旋方向に巻かれた単一のファイバ154のみを含むが、必要に応じて、例えば、各方向に巻かれた2乃至10のファイバを含む、より密度の高い組み紐またはメッシュを与えるようにしてもよい。バルーン110の膨張は、支持構造体150のファイバ154に外向きの力を与え、それにより、バルーン110よりも近位側および遠位側のそれらの取付位置の間でファイバ154に張力を与える。こうして張力を与えたら、支持構造体150のファイバ154は、バルーン110の外面110aに僅かな窪みを付け、例えば、バルーン表面の僅かなキルティングを形成する(
図10では目立つように強調されている)。
【0064】
任意選択的には、バルーン110の外面110aは、ファイバ154とバルーン110との間の係合を強化するために、高摩擦コーティング、テクスチャまたはその他の特徴を有する。結果として得られるファイバ154とバルーン150との間の摩擦は、例えば湾曲した管腔またはその他の形状の管腔内で、バルーン110が膨らまされたときに定位置で、それらの両方を実質的に固定することができ、それは、バルーン110およびバルーン110内のカテーテル112の遠位端112bの曲げまたはその後の真っ直ぐになる動きに抵抗することができる。任意選択的には、カテーテル112を通る作動ルーメン112cが開放した状態を保ち、例えば1またはそれ以上の器具をそこに受け入れることができるようにしながら、カテーテル112の遠位端112bは、湾曲した形状に適応するように構成されるものであってもよい。ファイバ154とバルーン110との間の摩擦係合により、カテーテル112の遠位端112bは、曲がり易い状態から曲がり難い状態に移行することができ、それは、アクセス部位から介入部位への急な方向の変化を要求するインターベンショナル処置において有用である場合がある。
【0065】
図11を参照すると、別の実施形態では、カテーテル212が設けられ、ここでは、膨らまされたときに支持構造体250がバルーン210を所定の湾曲形状に拡張させるように付勢するものとなっている。カテーテル212は、本明細書中の他の実施形態と同様に、概して、近位端(図示省略)、遠位端212b、作動ルーメン212c、膨張ルーメン212fおよび縦軸212dを含む。さらに、カテーテル212は、本明細書中の他の実施形態と同様に構成され得る、バルーン210および支持構造体250を含む。図示のように、支持構造体250は、バルーン210の外面210aの周りで非対称的に配置された単一のファイバ254を含むことができ、例えば、ファイバ254が、複数の円周ループ254aを規定し、それらがバルーン210の外面の周りに延び、隣接するループ254a間の単一の縦方向または軸方向の区間254bによって互いに連結され、縦方向の区間254bが、バルーン210の一側に沿って互いに整列されている。
【0066】
このようなファイバ254の構成の結果として、ファイバ254は、バルーン210が膨らまされたときに張力が与えられて、バルーン210の一側に反対側よりも大きなけん引力を及ぼし、
図11に示すように、例えば縦方向の区間254bを含む側の周囲で、カテーテル212に曲げを生じさせる。このため、バルーン210を、曲がった病変内に配置させて、その後に、膨らませることができ、また、バルーン210が膨らまされたときにファイバ254が遠位端212bを曲がった向きで維持することができる。代替的には、バルーン210は、遠位端210を実質的に真っ直ぐな態様から曲がった態様に変えるように拡張させることができ、それにより、例えば、体腔または患者の体内のその他の管へのアクセスを容易にすることができる。例えば、遠位端212bは、作動ルーメン212cの出口212eを分岐管またはその他の管に向けるように湾曲または屈曲させることができ、それにより、作動ルーメン212cから対象となる管内にガイドワイヤ、カテーテルおよび/またはその他のデバイスを進めることを可能にして、例えば分岐カテーテル法を容易なものとすることができる。
【0067】
任意選択的には、カテーテル212は、例えば放射線不透過性材料、エコー源性材料またはその他の材料から形成される1またはそれ以上のマーカ(図示省略)を含むことができ、それらが、遠位端212b、バルーン210および/またはファイバ254の所望位置に設けられ、それにより、外部造影、例えば、蛍光透視法、超音波検査などを使用して、バルーン210およびファイバ254の位置および/または向きを識別するのを容易にする。例えば、バルーン210上に非対称的に配置されて、例えばファイバ254の縦方向の区間254bと位置合わせされたマーカを設けることができ、それにより、体管内のファイバ254の向きを識別するのを容易にすることができる。このため、ユーザは、遠位端212bが導かれる分岐または湾曲部の近くに縦方向の区間254bが向けられるまで、カテーテル212をその近位端から回転させて、バルーン210およびファイバ254を回転させることができる。
【0068】
別の選択肢においては、ステントまたはその他のプロテーゼ(図示省略)が、バルーン10上で、本明細書中のカテーテルの何れか、例えば、
図1Aおよび1Bのカテーテル12に保持されるものであってもよく、また、バルーン10が拡張されたときに病変内でプロテーゼが拡張および/または展開されるものであってもよい。
【0069】
任意選択的には、(本明細書中の実施形態の何れかの)バルーン10は、例えば病変内で、かつ/または患者の血管系内の1またはそれ以上のその他の位置に配置された後に、1またはそれ以上の回数、収縮および膨張されるものであってもよい。処置が完了したら、バルーン10を収縮状態に収縮させて、支持構造体50を薄型の形態に再構成することができ、カテーテル12を患者の体から取り除くことができる。
【0070】
上述した装置および方法の適用は、血管形成バルーンに限定されるものではなく、その他の様々な膨張可能なバルーンへの適用を含むことができる。本発明を実施するための上述したアセンブリおよび方法の変更、実行可能なものとしての様々な変形例間の組合せ、並びに、当業者に自明な本発明の態様の変形例は、請求項の範囲内に含まれることが意図されている。